【文献】
龍岡照久 他,鉄塔鋼管内外環境の腐食性評価,材料と環境討論会講演集,日本,2014年11月12日,Vol.61st,Page.291-294
【文献】
龍岡照久 他,大気環境の腐食性評価と広範な腐食速度マップの作成,材料と環境討論会講演集,日本,2013年 9月10日,Vol.60th,Page.195-198
【文献】
龍岡照久、佐藤義則、鈴木貴雄,Fe/Ag,Zn/Ag,Al/Ag-対ACM型腐食センサーを用いた送電設備の環境評価,腐食防食シンポジウム資料,日本,2008年,Vol.165th,Page.49-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異なる推定地点における測定結果に関する情報を推定するために用いられる複数の第1の検出器を複数の第1の測定点に設置するとともに、異なる前記推定地点における測定結果に関する情報を推定するために用いられない1以上の第2の検出器を1以上の第2の測定点に設置し、前記第1の検出器および前記第2の検出器を用いて金属材料の腐食に関する測定が行われた結果に基づいて前記腐食に関する評価を行う腐食評価方法であって、
前記第1の測定点に設置された前記第1の検出器による第1の測定結果を取得し、
前記第1の測定点とは異なる前記第2の測定点に設置された前記第2の検出器による第2の測定結果を取得し、
前記第1の測定点および前記第2の測定点とは異なる前記推定地点における測定結果に関する情報を前記第1の測定結果に基づいて推定した推定結果を取得し、
前記第1の測定結果、前記第2の測定結果および前記推定結果に基づいて、前記第1の測定点、前記第2の測定点および前記推定地点を含む領域について前記腐食に関する評価を行う、
腐食評価方法。
異なる推定地点における測定結果に関する情報を推定するために用いられる複数の第1の検出器を複数の第1の測定点に設置するとともに、異なる前記推定地点における測定結果に関する情報を推定するために用いられない1以上の第2の検出器を1以上の第2の測定点に設置し、前記第1の検出器および前記第2の検出器を用いて金属材料の腐食に関する測定が行われた結果に基づいて前記腐食に関する評価を行う腐食評価方法であって、
前記第1の測定点に設置された前記第1の検出器による第1の測定結果を取得し、
前記第1の測定点とは異なる前記第2の測定点に設置された前記第2の検出器による第2の測定結果を取得し、
前記第1の測定点および前記第2の測定点とは異なる前記推定地点における測定結果に関する情報を前記第1の測定結果に基づいて推定した推定結果を取得し、
前記第1の測定結果、前記第2の測定結果および前記推定結果に基づいて、前記第1の測定点、前記第2の測定点および前記推定地点を含む領域について前記腐食に関する地図を生成する、
腐食評価方法。
前記第2の測定点は、河川の近傍、河川の横断箇所、産業廃棄物の処理場あるいは焼却場の近傍、主要道路の融雪塩散布箇所、霧あるいは海霧が長時間発生する箇所のうちのいずれかの測定点である、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の腐食評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態の説明に使用する図面では、説明の便宜上、各構成部のサイズあるいは複数の構成部同士のサイズ比が実際のものとは異なる部分もある。
【0014】
[ACMセンサー]
図1は、本発明の一実施形態に係るACMセンサー11の概略的な構成を示す図(正面図)である。
図2は、本発明の一実施形態に係るACMセンサー11の概略的な構成を示す図(A−A断面図)である。
図2は、
図1(正面図)に対するA−A断面図である。
図1および
図2には、説明の便宜上、XYZ直交座標系を示してある。
【0015】
ACMセンサー11は、金属材料の腐食に関する情報として、金属材料の腐食速度を測定することが可能である。
概略的には、ACMセンサー11は、2種類の異種の金属を互いに絶縁した状態で樹脂中に埋め込み、両者の端部を環境に露出して、両者の金属の間に水膜が連結したときに流れる腐食電流を測定して金属の腐食速度を測定する。ACMセンサー11は、例えば、大気の環境の腐食性を定量的に評価するために用いられる。
【0016】
ACMセンサー11は、鋼基板21と、導電部材22と、絶縁部材23と、導線41、42と、電流計測器51を備える。
鋼基板21の表面に、絶縁部材23および導電部材22が積層されている。
鋼基板21に設けられた所定箇所(接続箇所31)に導線41の一端が接続されており、導電部材22に設けられた所定箇所(接続箇所32)に導線42の一端が接続されている。当該導線41の他端および当該導線42の他端は、電流計測器51に接続されている。
【0017】
なお、
図2では、
図1に示される導電部材22を導電部材22a、22bとして示してあり、
図1に示される絶縁部材23を絶縁部材23a、23bとして示してある。
また、
図2の例では、水膜71を示してある。
また、鋼基板21は例えば鉄(Fe)から構成されており、導電部材22は例えば銀(Ag)から構成されている。
【0018】
ここで、ACMセンサー11が設置された位置(地点)の環境が乾燥状態であり、当該ACMセンサー11の表面に何も堆積していないときには、絶縁部材23により鋼基板21と導電部材22とが絶縁される。このとき、鋼基板21と導電部材22との間に電位は発生せず、電流計測器51により電流は計測されない。
【0019】
一方、ACMセンサー11の表面(本例では、
図1に示される面)において、鋼基板21と導電部材22とを絶縁して配置した部分に、雨あるいは露により水膜71が形成されるときがある。このとき、鋼基板21と導電部材22との間が水膜71により電気的に連結され、これらの金属の間に電位差が発生して、当該電位差により電流(ガルバニック電流)が生じる。一般に、鋼材料あるいは亜鉛材料の腐食量に対して相関があることから、電流計測器51によりガルバニック電流を測定して、腐食速度を定量的に評価することが可能である。
【0020】
なお、金属の腐食性に影響を与える因子としては、例えば、温度、湿度、降雨、大気中を飛来している海塩あるいは腐食性ガス(SOx)などがある。ACMセンサー11は、これら複雑な環境因子により電気化学的に発生する鋼の腐食電流を直接計測することができる。このため、ACMセンサー11の出力電流値を解析することで、環境の腐食性を直接的かつ定量的に評価することが可能である。
【0021】
[ACMセンサーの取り付け]
図3は、本発明の一実施形態に係るACMセンサー11の取り付けの概略的な構成を示す図である。
図3の例では、鉄塔1021に、6個のACMセンサー1031~1033、1071〜1073(それぞれ、ACMセンサー11の例)が取り付けられている。なお、本実施形態では、それぞれのACMセンサー1031~1033、1071〜1073は、温湿度センサー(図示せず)と共に、取り付けられる。
【0022】
また、鉄塔1021の外側では、当該鉄塔1021の高い方から低い方に向かって順に、アルミニウム(Al)を用いたACMセンサー1031、亜鉛(Zn)を用いたACMセンサー1032、鉄(Fe)を用いたACMセンサー1033が設けられている。これにより、例えば、上部のACMセンサーから腐食生成物が脱落した後における下部のACMセンサーへの付着の影響を小さく(例えば、最小に)することが可能であり、センサーの感度を良好とすることが図られている。
また、鉄塔1021の内側では、当該鉄塔1021の高い方から低い方に向かって順に、アルミニウム(Al)を用いたACMセンサー1071、亜鉛(Zn)を用いたACMセンサー1072、鉄(Fe)を用いたACMセンサー1073が設けられている。これにより、例えば、上部のACMセンサーから腐食生成物が脱落した後における下部のACMセンサーへの付着の影響を小さく(例えば、最小に)することが可能であり、センサーの感度を良好とすることが図られている。
【0023】
なお、鉄塔1021の外側に設けられるACMセンサー1031~1033と、鉄塔1021の内側に設けられるACMセンサー1071~1073とは、それぞれ独立した環境にあり、鉄塔1021の外側のACMセンサー1031~1033と鉄塔1021の内側のACMセンサー1071~1073との配置関係は任意であってもよい。例えば、鉄塔1021の外側のACMセンサー1031~1033と、鉄塔1021の内側のACMセンサー1071~1073とで、任意の側の3個のACMセンサー(一式)が他の側の3個のACMセンサー(一式)よりも高い位置に設けられてもよく、または、鉄塔1021の外側のACMセンサー1031~1033と、鉄塔1021の内側のACMセンサー1071~1073とで、高い方から低い方へ1個ずつ交互に並べられて配置されてもよい。
【0024】
鉄塔1021またはその付近などに、データを記憶する装置(データロガー1041)が設けられる。
それぞれのACMセンサー1031〜1033、1071〜1073は、コネクター1052、1054、1056、1082、1084、1086が設けられたケーブル1051、1053、1055、1081、1083、1085を備える。
データロガー1041は、それぞれのACMセンサー1031〜1033、1071〜1073に対して、コネクター1062、1064、1066、1092、1094、1096が設けられたケーブル1061、1063、1065、1091、1093、1095を備える。
そして、それぞれのACMセンサー1031〜1033、1071〜1073の側のコネクター1052、1054、1056、1082、1084、1086と、データロガー1041の側のそれぞれのコネクター1062、1064、1066、1092、1094、1096とが通信可能に接続される。これにより、それぞれのACMセンサー1031〜1033、1071〜1073は所定の時間ごとの出力電流を測定した結果のデータをデータロガー1041に送信し、データロガー1041は当該データを受信して記憶する。
【0025】
データロガー1041に記憶されたデータに基づいて、人による作業または装置による処理によって、大気環境における腐食性を評価することが可能である。
なお、
図3の例では、鉄塔1021の高所にACMセンサー1031〜1033、1071〜1073が設けられる構成が示されるが、他の構成例として、鉄塔1021の脚部などにACMセンサー1031〜1033、1071〜1073が設けられてもよい。
また、鉄塔1021以外の電力設備にACMセンサーが設けられてもよい。
また、ACMセンサー1031〜1033、1071〜1073は、暴露により腐食して劣化するため、適切なデータを取得するためには、定期的な交換が行われることが好ましい。一例として、所定の期間ごとに、ACMセンサー1031〜1033、1071〜1073の交換およびデータロガー1041の電池の交換が行われて、当該データロガー1041に記憶されたデータが収集されてもよい。回収されたACMセンサー1031〜1033、1071〜1073によって、付着物の調査などが行われてもよい。
【0026】
また、
図3の例では、6個のACMセンサー1031〜1033、1071〜1073に対して1個の共通のデータロガー1041が設けられる構成が示されるが、他の構成例として、それぞれのACMセンサー1031〜1033、1071〜1073ごとに異なるデータロガーが設けられてもよい。
また、
図3の例では、測定地点となる1箇所のところに6個のACMセンサー1031〜1033、1071〜1073が設けられる構成が示されるが、これに限定されず、例えば、測定地点となる1箇所のところに1個以上の任意の数のACMセンサーが設けられてもよい。
また、例えば、コネクター1052、1054、1056、1082、1084、1086、1062、1064、1066、1092、1094、1096の部分に、防水用の保護テープが巻かれてもよい。
また、本実施形態では、鉄塔1021の外側および内側のそれぞれについて、3個のACMセンサー(ACMセンサー1031〜1033、または、ACMセンサー1071〜1073)が一式として配置される場合を示したが、必ずしもこれに限定されず、1個以上の任意の数のACMセンサーが設けられてもよい。また、ACMセンサーの材質としては、任意の材質(例えば、アルミニウム、亜鉛、鉄など)が用いられてもよい。また、複数のACMセンサーを配置する場合であって、それぞれのACMセンサーの材質が異なる場合に、これら複数のACMセンサーの並び順序(配置)としては、任意の順序が用いられてもよい。
なお、例えば、鉄塔1021の外側と内側のうちの一方のみにACMセンサーが設けられてもよい。具体例として、L材などのアングル材(例えば、山形のもの)を用いた鉄塔などにおいて、鉄塔の外側と内側の両方にACMセンサーが設けられて測定が行われる場合がある。
【0027】
[腐食速度の評価の処理]
以下で、腐食速度の評価の処理について説明する。なお、以下に示す処理の手順は一例であり、他の任意の処理およびその順序が用いられてもよい。
【0028】
<処理1:腐食速度マップを生成する範囲(領域)およびACMセンサーを設置する数などの決定>
まず、腐食速度マップを生成する範囲を決定し、当該範囲においてACMセンサー11を設置する数などを決定する。なお、このような決定は、例えば、現地の調査が行われた結果に基づいて為されてもよい。
【0029】
従来手法では、腐食速度マップを作成する場合、データロガーおよびACMセンサーを設置する地点(基準点)を、例えば半径約10[km]の円の領域(地域)であれば5〜8箇所程度決定して、それぞれの基準点でACMセンサー11により測定を行う必要があった。しかしながら、このような従来手法では、データロガーおよび配線の設置などの負担が大きかった。
【0030】
これに対して、改良された手法(一例として、特許文献2に記載された手法)では、例えば、半径約10[km]の円の領域の腐食速度マップを生成する場合、データロガーとACMセンサーを設置する地点(基準点)を1箇所決定し、データロガー無しでACMセンサーのみを設置する地点(周辺地点)を4〜6箇所程度決定すればよい。
このような改良された手法では、ACMセンサーのみを周辺地点に設置し、所定の期間が経過した後に、当該ACMセンサーを持ち帰って、腐食速度の評価を行うことが可能である。
【0031】
さらに、より広範な領域の腐食速度マップを生成する場合には、例えば、半径約10[km]の円の領域の場合の測定群を増やしていく方法を用いることが可能である。
具体例として、半径約20[km]の円の領域の場合,データロガーおよびACMセンサーを設置する地点を5箇所決定し、ACMセンサーのみを設置する地点を16箇所程度決定する。つまり、半径約10[km]の円の領域の場合における測定群を4個設置し、半径約20[km]の円の中心の位置にデータロガーおよびACMセンサーを設置するイメージで、半径約20[km]の円の領域の全体を網羅する。
【0032】
<処理2:腐食速度マップを生成する範囲における特異点の抽出>
腐食速度マップを生成する範囲における特異点を抽出(決定)する。
例えば、広範な領域の腐食速度マップを生成する場合、すべての地点について腐食速度を測定することは難しい場合(現実的に不可能な場合)がある。
そこで、腐食速度を測定する地点を広範な領域の中から選定(決定)する。この選定にあたっては、広範な領域から特殊な腐食性環境を有する地点(特異点)を除く必要がある。
【0033】
ここで、特殊な腐食性環境としては、例えば、河川の近傍、河川の横断箇所、産業廃棄物の処理場あるいは焼却場の近傍、主要道路の融雪塩散布箇所、霧あるいは海霧が長時間発生する箇所、などがある。なお、特殊な腐食性環境であると判定する条件としては、例えば、測定あるいは評価などの実施の状況などに鑑みて、任意に設定されてもよい。
【0034】
一例として、河川の近傍、あるいは河川の横断箇所は、相対湿度が高い場合、降雨の発生頻度が高い場合、あるいは降雨の時間が長い場合があるため、特殊な腐食環境とされてもよい。
一例として、産業廃棄物の処理場あるいは焼却場の近傍は、腐食に影響を及ぼす塩素あるいは硫黄を含むガス成分が多く排出されるため、特殊な腐食環境とされてもよい。
一例として、主要道路の融雪塩散布箇所は、腐食に大きな影響を及ぼす塩化カルシウム、塩化マグネシウムあるいは塩化ナトリウムが融雪塩に含まれているため、特殊な腐食環境とされてもよい。
一例として、霧あるいは海霧が長時間発生する箇所は、設備が濡れている時間が長いことから、腐食速度が大きくなるため、特殊な腐食環境とされてもよい。
【0035】
<処理3:特異点を除く条件において、ACMセンサーによる測定を行う地点(測定点)の決定>
腐食速度マップを生成する範囲において、特異点を除く地点の中で、ACMセンサーによる測定を行う地点を決定する。この場合、特異点を除いて複数の測定点を配置するため、例えば、複数の測定点の配置が均等な配置とはならないことが多いと考えられるが、均等な配置が用いられてもよい。ここで、測定点を決定する方法としては、任意の方法が用いられてもよい。
【0036】
一例として、半径約10[km]の円の領域の場合、1箇所の地点にデータロガー1041およびACMセンサー11を設置し、4箇所の地点にACMセンサー11(データロガー無し)を設置する。
一例として、半径約20[km]の円の領域の場合、5箇所の地点にデータロガー1041およびACMセンサー11を設置し、16箇所の地点にACMセンサー11(データロガー無し)を設置する。
【0037】
<処理4:特異点における腐食速度の測定>
特異点における金属材料の腐食速度を測定する。この測定の方法としては、一例として、ACMセンサー11により測定を行う方法が用いられてもよいが、他の例として、暴露試験片により測定を行う方法が用いられてもよい。
【0038】
例えば、特殊な腐食性環境の腐食性は厳しいため、自らが腐食しながら電流を取り出す自己消耗型センサーであるACMセンサーでは、交換周期が短くなり、交換作業などの負担が大きくなる場合がある。
これに対して、暴露試験片を用いた測定(暴露試験による測定)の場合、通常の一般的な環境(特殊な腐食性環境ではない環境)では、測定を3年間〜5年間、場合によっては10年間程度、継続的に行う必要がある。しかしながら,特殊な腐食性環境の腐食性は厳しいため、特殊な腐食性環境では、暴露試験を約1年間行えば腐食速度を推定することが可能であると考えられる。
【0039】
上記のことから、特異点(特殊な腐食性環境の地点)では、好ましい一例として、暴露試験片を1年間(あるいは、その程度)設置した後に、当該暴露試験片を持ち帰って、腐食速度の評価を行う。この腐食速度の評価方法としては、任意の方法が用いられてもよく、例えば、初期(暴露前)の重量の測定結果と暴露後であって除錆後の重量の測定結果に基づいて、重量の減少量を算出し、その結果に基づいて腐食速度を評価する方法が用いられてもよい。
【0040】
<処理5:腐食速度マップの生成>
特異点以外の地点である一般的な腐食性環境の地点(説明の便宜上、「一般点」ともいう。)を測定点として得られた腐食速度に関するデータと、特異点を測定点として得られた腐食速度に関するデータに基づいて、腐食速度の分布を表す地図情報(腐食速度マップ)を生成する。この場合、例えば、特異点を考慮するときには、特異点を考慮しないときと比べて、腐食速度マップの精度が向上する。
【0041】
ここで、例えば、原則として、一般点の腐食速度データと気象因子および地形因子を用いた重回帰分析により、腐食速度マップを生成する。このように一般点の腐食速度データに基づいて腐食速度マップを生成する際に、測定点以外の地点(非測定点)における腐食速度を推定する方法としては、任意の方法が用いられてもよく、一例として、特許文献1に記載された方法が用いられてもよい。
他の例として、非測定点における腐食速度を推定する方法として、測定点の腐食速度データの値を用いて、非測定点における腐食速度の値を補間する方法が用いられてもよい。この補間の方法として、複数の測定点の腐食速度データの値について非測定点における平均値(例えば、空間的な位置に基づく平均値)または重み付け平均値を使用する方法が用いられてもよく、あるいは、非測定点に対して最も近い距離にある測定点の腐食速度データの値を(そのまま)使用する方法などが用いられてもよい。
【0042】
一例として、特異点の位置データ(例えば、緯度と経度のデータ)に対して、一般点の腐食速度データから推定した腐食速度マップにおける同じ位置データを検出する。そして、当該特異点の位置データにおける腐食速度データ(特異点の腐食速度データ)と、一般点の腐食速度データから推定した腐食速度マップにおける同じ位置データでの腐食速度データ(一般点から推定された腐食速度データ)とを比較して、特異点の腐食速度の方が一般点から推定された腐食速度よりも大きいと判定した場合、その位置データについては特異点の腐食速度データを採用するように腐食速度マップを書き換える。反対に、この比較の結果、特異点の腐食速度の方が一般点から推定された腐食速度よりも小さいと判定した場合には、例えば、その位置データについては、一般点から推定された腐食速度データを採用してもよく、または、特異点の腐食速度データを採用するように腐食速度マップを書き換えてもよい。
【0043】
ここで、一般点から推定された腐食速度データに基づく腐食速度マップに、特異点の腐食速度データを反映する場合、それぞれの特異点である1箇所の地点が地図(腐食速度マップ)上で小さくなり、人が視覚的に確認しづらい状況が発生することがあり得ると考えられる。このような状況は、当該地図(当該腐食速度マップ)の解像度などにも依存し得る。このような状況としては、例えば、腐食速度マップが画面などに表示されるときに、1箇所の地点(1箇所の特異点)が1ドット〜数ドットといった小さな点となるような状況が考えられる。
このようなときには、例えば、特異点に関する情報を個別に管理する構成が用いられてもよい。一例として、すべての測定点(一般点および特異点)について位置データと腐食速度データとを対応付けるテーブル(例えば、一覧表のデータ)を記憶部に記憶する構成とし、それぞれの特異点の位置データと腐食速度データとの対応を当該テーブルに分かり易く補記することが行われてもよい。
【0044】
また、一般点から推定された腐食速度データに基づく腐食速度マップに、特異点の腐食速度データを反映しない場合などに、例えば、特異点に関する情報を個別に管理する構成が用いられてもよい。
一例として、すべての測定点(一般点)について位置データと腐食速度データとを対応付けるテーブル(例えば、一覧表のデータ)を記憶部に記憶する構成とし、それぞれの特異点の位置データと腐食速度データとの対応を当該テーブルに分かり易く補記することが行われてもよい。
他の例として、特異点(のみ)について位置データと腐食速度データとを対応付けるテーブルを記憶部に記憶して、当該テーブルを個別管理する構成が用いられてもよい。この構成では、例えば、一般点(のみ)について位置データと腐食速度データとを対応付けるテーブルと、特異点(のみ)について位置データと腐食速度データとを対応付けるテーブルとが、別のテーブルとして設けられてもよい。
なお、通常、特異点の数は、一般点の数と比べて少ないと考えられる。
【0045】
<測定点における腐食速度データから非測定点における腐食速度データを推定する処理>
図4は、本発明の一実施形態に係る測定点における腐食速度データから非測定点における腐食速度データを推定する処理の流れの一例を示す図である。
また、
図4に示される処理の手順は一例であり、他の任意の処理およびその順序が用いられてもよい。
【0046】
(ステップS1)
一般点の測定点における腐食速度の測定を行う。
(ステップS2)
一般点の測定点における腐食速度の測定結果に基づいて、測定点以外の点(非測定点)の領域にも及ぶ腐食速度の推定式を生成する。
(ステップS3)
生成された腐食速度の推定式に基づいて、非測定点における腐食速度を推定する。
【0047】
(ステップS4)
特異点の測定点における腐食速度の推定を行う。
ここで、ステップS1における一般点の測定点における測定と、ステップS4における特異点の測定点における測定とは、例えば、同じ期間(同じ開始タイミングおよび同じ終了タイミング)で行われてもよく、同じ程度の期間で行われてもよく、あるいは、異なる期間で行われてもよい。例えば、一般点の測定点における測定結果と、特定点の測定点における測定結果とを組み合わせるときに、互いに関連性があること(つまり、測定状況などが関係すること)が好ましい。
【0048】
(ステップS5)
一般点の測定点における測定結果と、非測定点における推定結果と、特定点の測定点における測定結果とを組み合わせて、腐食速度マップを生成する。
【0049】
<基準ACMセンサーによる測定結果から被評価ACMセンサーによる測定結果に応じた腐食速度を推定する処理>
図5は、本発明の一実施形態に係る基準ACMセンサーによる測定結果から被評価ACMセンサーによる測定結果に応じた腐食速度を推定する処理の流れの一例を示す図である。
なお、
図5の例では、特許文献2に記載された方法を用いた場合を示すが、他の任意の方法が用いられてもよい。
また、
図5に示される処理の手順は一例であり、他の任意の処理およびその順序が用いられてもよい。
また、
図4に示されるような処理と、
図5に示されるような処理は、例えば、任意の一方が用いられてもよく、または、両方が組み合わされて用いられてもよい。
【0050】
ここで、基準ACMセンサーは、データロガー1041と共に設けられたACMセンサー11であり、当該基準ACMセンサーによる測定結果のデータが当該データロガー1041に記憶される。
また、被評価ACMセンサーは、データロガーが共に設けられていないACMセンサー11であり、当該被評価ACMセンサーによる測定結果のデータはデータロガーに記憶されない。
【0051】
(ステップS21)
基準ACMセンサーによる測定を行う。
(ステップS22)
ステップS21における測定結果に基づいて、電気量を算出する。
【0052】
(ステップS23)
基準ACMセンサーおよび被評価ACMセンサーについて、恒温恒湿条件下における測定を行う。
(ステップS24)
ステップS23における測定結果に基づいて、出力電流を算出する。
ここで、ステップS23およびステップS24の処理は、例えば、ステップS21およびステップS22の処理に対して、事前に行われてもよく、事後に行われてもよく、または、他のタイミングで行われてもよい。
【0053】
(ステップS25)
ステップS22における算出結果と、ステップS24における算出結果に基づいて、被評価ACMセンサーの電気量を算出する。
(ステップS26)
ステップS25における算出結果に基づいて、被評価ACMセンサーの位置(測定点)における腐食速度を推定する。
【0054】
ここで、ACMセンサー11による測定結果に基づく評価としては、様々な評価が行われてもよい。このような評価として、例えば、複数の測定点および非測定点について、所定期間(例えば、所定月数または所定年数など)における腐食速度に関する評価が行われてもよい。また、ACMセンサー11に対する付着物の種類あるいは濃度などを調査(測定)して、腐食要因に関する評価が行われてもよい。
また、例えば、複数の測定点および非測定点に対応する位置に腐食速度の値を示す情報を記載した地図(腐食速度マップ)が生成されてもよい。当該情報としては、例えば、数値が用いられてもよく、あるいは、色または模様などが用いられてもよい。
また、例えば、測定対象(一例として、鉄塔)ごとに、腐食速度などの情報を一覧とした表が生成されてもよい。
【0055】
[実施形態において利用することが可能な技術]
特許第5066955号(特許文献1に対応した特許文献)に開示された技術内容を示す。当該技術内容の一部または全部が、本実施形態において、利用されてもよい。
一例として、金属材料の腐食速度を目的変数としその腐食速度に影響を与える環境因子と地形因子を説明変数とする重回帰分析を行うにあたり、少なくとも説明変数の一つとして相対湿度0%〜100%に応じて重み付けした仮想ぬれ時間を含め、この仮想濡れ時間は、変化する相対湿度に応じて異なる重み係数を変化する相対湿度に対応した時間に乗算して得られた乗算値を総和して求め、測定した金属材料の腐食速度に基づき重回帰分析法により腐食速度推定式を求め、求めた腐食速度推定式に基づいて非測定エリアの金属材料の腐食速度を推定演算して求めるものであって、前記仮想ぬれ時間の重み付けは、腐食速度を推定演算する対象エリアごとにその対象エリアの金属材料への付着物量、付着物の種類、環境条件、気象条件、地形条件のうち少なくともいずれか一つを考慮に入れて重み付けをする腐食速度評価方法である。
一例として、腐食速度評価方法において、前記仮想ぬれ時間の重み付けは、前記ACMセンサーで検出した金属材料の腐食速度、暴露試験で求めた金属材料の腐食速度、または実際の部材を構成する金属材料の腐食状況から求めた腐食速度に基づいて重み付けをする。
一例として、腐食速度評価方法において、前記推定演算して求めた金属材料の腐食速度に基づいて、広範囲な地域における金属材料の腐食速度マップを作成する。
【0056】
特許第4724649号(特許文献2に対応した特許文献)に開示された技術内容を示す。当該技術内容の一部または全部が、本実施形態において、利用されてもよい。
一例として、実構造物の表面部位に、出力電流の経時データが測定可能なようにデータロガーを接続し、一定期間設置された基準ACMセンサーの経時出力電流データに基づいて、電気量を求め、これと並行して、実構造物の異なる表面部位に、データロガーを接続する代わりにアノードとカソード間を導通させた状態で被評価ACMセンサーを一定期間設置する工程(1)と、該被評価ACMセンサーを、基準ACMセンサーとともに恒温恒湿条件下に置き、それぞれの出力電流を測定する工程(2)と、工程(2)における前記基準ACMセンサーの出力電流と前記被評価ACMセンサーの出力電流との関係および、基準ACMセンサーの電気量に基づいて、前記被評価ACMセンサーの電気量を求める工程(3)と、工程(3)で求めた被評価ACMセンサーの電気量と、予め設定した電気量と腐食速度との関係に基づいて、実構造物の推定腐食速度を求める工程(4)とを有するACMセンサーによる構造物の腐食速度推定方法である。
一例として、ACMセンサーによる構造物の腐食速度推定方法において、前記被評価ACMセンサーの表面の付着物を分析し解析電流値を求める工程(2−2)と、 該被評価ACMセンサーの恒温恒湿条件下での測定出力電流値と前記解析電流値との相関関係から、被評価ACMセンサーの測定出力電流値を補正する工程(2−3)とを有する。
一例として、ACMセンサーによる構造物の腐食速度推定方法において、付着物の分析は、付着イオンの種類と量を分析する。
一例として、ACMセンサーによる構造物の腐食速度推定方法において、前記付着物の分析データに基づき、予め被評価ACMセンサーを塩素イオン量が多いグループとそれ以外のグループとにグループ分けした後、各グループごとに解析電流値を求める。
一例として、ACMセンサーによる構造物の腐食速度推定方法において、前記グループ分けは、工程(2)で測定された測定電流値に異常値が認められた場合に実行する。
一例として、ACMセンサーによる構造物の腐食速度推定方法において、前記構造物を構成する材料が、鋼、亜鉛、又はアルミニウムである。
一例として、ACMセンサーによる構造物の腐食速度推定方法において、前記電気量が、積算電気量(C)又は日平均電気量(C/day)である。
【0057】
[実施形態のまとめ]
以上のように、本実施形態に係る腐食評価方法では、腐食に関する測定結果に基づいて、腐食に関する測定結果が得られていない箇所における腐食に関する情報を推定するに際して、一般点と特異点について、別々に測定を行うことにより、腐食に関するマップの精度を向上させることが可能である。
このように、本実施形態に係る腐食評価方法では、金属材料の腐食に関する測定を行ったデータに基づいて、このような測定が行われていない地点(非測定点)における金属材料の腐食に関する情報を推定するに際して、当該非測定点が特殊な腐食性環境を有するときにおいても、精度よく腐食に関する評価(例えば、腐食速度の評価など)を行うことができる。
また、本実施形態に係る腐食評価方法では、例えば、広い範囲の腐食に関する情報を推定する場合に、大幅な人件費の削減および資材代の削減が可能である。
【0058】
ここで、本実施形態では、一般点の測定点について、金属材料の腐食速度をACMセンサーで測定する構成を示したが、他の構成例として、金属材料の腐食速度を暴露試験で求める構成、あるいは、金属材料の腐食速度を実際の金属材料の腐食状況から求める構成などが用いられてもよい。また、同様に、特異点の測定点についても、金属材料の腐食速度を測定する方法として、任意の方法が用いられてもよい。
なお、本実施形態は、例えば、電力設備以外の分野に適用されてもよい。
【0059】
<構成例>
一構成例として、検出器(例えば、ACMセンサー11または暴露試験片)を用いて金属材料(例えば、鉄塔などの構成部分など)の腐食に関する測定が行われた結果に基づいて腐食に関する評価を行う腐食評価方法であって、第1の測定点(例えば、一般点の測定点)に設置された第1の検出器による第1の測定結果を取得し、第1の測定点とは異なる第2の測定点(例えば、特異点である測定点)に設置された第2の検出器による第2の測定結果を取得し、第1の測定点および第2の測定点とは異なる推定地点(推定を行う対象の地点)における測定結果に関する情報を前記第1の測定結果に基づいて推定した推定結果(例えば、検出器による測定結果に対応する推定情報)を取得する、腐食評価方法である。
一構成例として、腐食評価方法において、第1の測定結果、第2の測定結果および推定結果に基づいて、第1の測定点、第2の測定点および推定地点を含む領域について腐食に関する評価を行う。
一構成例として、腐食評価方法において、第1の測定結果、第2の測定結果および推定結果に基づいて、第1の測定点、第2の測定点および推定地点を含む領域について腐食に関する地図(例えば、腐食速度などのマップ)を生成する。
一構成例として、腐食評価方法において、腐食に関する評価として、腐食速度の評価を行う。
一構成例として、腐食評価方法において、複数の検出器が配置される(例えば、
図3の例)。
一構成例として、腐食評価方法において、複数の検出器が鉄塔の外側と内側に配置される(例えば、
図3の例)。
一構成例として、腐食評価方法において、検出器は、ACMセンサーであり、高い方から低い方に向かって、アルミニウムを用いたACMセンサーと、亜鉛を用いたACMセンサーと、鉄を用いたACMセンサーの順に配置される(例えば、
図3の例)。
一構成例として、腐食評価方法において、検出器は、ACMセンサーまたは暴露試験片である。
一構成例として、腐食評価方法において、第2の測定点は、第1の測定点の腐食性とは異なる特殊な腐食性環境を有する地域に設定される。なお、第1の測定点は、通常の一般の腐食性環境を有する地域に設定される。
一構成例として、腐食評価方法において、第1の測定点の数と比べて、第2の測定点の数は、少ない。
【0060】
以上の実施形態に係る腐食評価方法における処理の一部または全部をコンピュータなどからなる装置(腐食評価装置)により実行する構成が用いられてもよい。当該腐食評価装置は、例えば、人(ユーザ)により行われる操作に応じて処理を実行する機能を備えてもよく、または、あらかじめ定められた情報(例えば、プログラムおよびパラメーター)に基づいて処理を実行する機能を備えてもよく、あるいは、これら両方の機能を組み合わせて備えてもよい。
【0061】
以上に示した実施形態に係る装置(例えば、腐食評価装置)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティング・システム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)あるいは電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。