特許第6828764号(P6828764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828764
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】細胞移植装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20210128BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A61M37/00 514
   C12M1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-68174(P2019-68174)
(22)【出願日】2019年3月29日
(65)【公開番号】特開2020-162983(P2020-162983A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年9月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 賢洋
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/042818(WO,A1)
【文献】 特表2015−531644(JP,A)
【文献】 特表2007−503876(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0264043(US,A1)
【文献】 国際公開第2019/064653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61M 5/178
A61M 5/32
A61L 27/38
A61L 27/56
A61L 27/58
A61L 31/14
C12M 1/00
C12M 1/26
C12M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の対象領域に、細胞を含む移植物を配置するための細胞移植装置であって、
1つの方向に沿って延びる針状部であって、当該針状部の先端部に開口する流路を内部に有する前記針状部と、
前記流路の途中で当該流路を横断する繊維状物から構成される留止部と、を備え、
前記針状部は、前記針状部内を吸引する機構に接続されており、
前記流路の途中から前記開口までの側壁に囲まれる領域が、前記針状部内の吸引により前記開口から入った液状体が含む前記移植物を、前記吸引によって形成される負圧により当該領域に留めて前記液状体を収容する収容部として機能し、前記針状部の延びる方向における前記収容部の長さは、前記針状部の延びる方向と直交する方向における前記収容部の最大幅以上である
細胞移植装置。
【請求項2】
生体内の対象領域に、細胞を含む移植物を配置するための細胞移植装置であって、
1つの方向に沿って延びる針状部であって、当該針状部の先端部に開口する流路を内部に有する前記針状部を備え、
前記針状部は、前記針状部内を吸引する機構に接続されており、
前記流路の内径は、前記流路における前記針状部の先端部から基端部に向かう途中において、前記移植物が通ることの可能な大きさから前記移植物が通ることの不可能な大きさへ変化し、
前記流路の途中から前記開口までの側壁に囲まれる領域が、前記針状部内の吸引により前記開口から入った液状体が含む前記移植物を、前記吸引によって形成される負圧により当該領域に留めて前記液状体を収容する収容部として機能し、前記針状部の延びる方向における前記収容部の長さは、前記針状部の延びる方向と直交する方向における前記収容部の最大幅以上である
細胞移植装置。
【請求項3】
前記収容部における前記側壁の内周面は、円筒状を有する
請求項1または2に記載の細胞移植装置。
【請求項4】
幹細胞性を有する細胞を含む前記移植物を、前記対象領域に配置するために用いられる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞移植装置。
【請求項5】
複数の前記針状部を備える
請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞移植装置。
【請求項6】
前記収容部における前記側壁の内周面は、前記液状体が含む液体の蒸発を抑えるための表面層を有する
請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞移植装置。
【請求項7】
前記収容部の容積は、0.001μL以上1μL以下である
請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞移植装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の移植に用いられる細胞移植装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から採取した細胞の培養に基づき得られた移植物を、生体の皮内や皮下へ移植する技術が開発されている。例えば、毛を作り出す器官である毛包の形成に寄与する細胞群を精製し、この細胞群を皮内へ移植することによって、毛髪を再生させることが試みられている。
【0003】
毛包は、上皮系細胞と間葉系細胞との相互作用により形成される。毛髪の良好な再生のためには、移植された細胞群から、正常な組織構造を有して周期的な毛髪の形成能力を有する毛包が生じることが望ましい。そこで、こうした毛包を形成可能な細胞群の製造方法について、様々な研究開発が行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/073625号
【特許文献2】国際公開第2012/108069号
【特許文献3】特開2008−29331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、移植に際しては、培養容器等の容器に入れられている移植物が、生体における移植の対象領域へ移される。この対象領域への移植物の搬送工程において、細胞が乾燥すると、細胞膜やタンパク質の構造が変化して細胞群の機能が失活する虞がある。
【0006】
本発明は、移植の対象領域への搬送中に細胞が乾燥することを抑えることのできる細胞移植装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する細胞移植装置は、生体内の対象領域に、細胞を含む移植物を配置するための細胞移植装置であって、1つの方向に沿って延びる針状部であって、当該針状部の先端部に開口する流路を内部に有する前記針状部を備え、前記流路の途中から前記開口までの側壁に囲まれる領域が、前記開口から入った液状体が含む前記移植物を当該領域に留めて前記液状体を収容する収容部として機能し、前記針状部の延びる方向における前記収容部の長さは、前記針状部の延びる方向と直交する方向における前記収容部の最大幅以上である。
【0008】
細胞移植装置は、収容部に移植物を収容した状態で針状部を対象領域に刺した後に、移植物を針状部の開口から放出する。ここで、上記構成によれば、液状体に移植物と共に含まれる液体が収容部内で移植物を取り囲み、移植物よりも先端側に上記液体が充填されている状態で、移植物を収容部に収容することができる。したがって、移植の対象領域までの搬送中に細胞が乾燥することを抑えられる。
【0009】
上記構成において、前記収容部における前記側壁の内周面は、円筒状を有してもよい。
上記構成によれば、移植物と内周面との接触に起因した移植物の損傷や変形を抑えられる。また、球形に近似される移植物を液体で取り囲んで収容することに適した形状の収容部が実現される。
【0010】
上記構成において、細胞移植装置は、幹細胞性を有する細胞を含む前記移植物を、前記対象領域に配置するために用いられてもよい。
上記構成によれば、組織の形成能力が高い幹細胞性を有する細胞を対象領域まで搬送する際に、細胞が乾燥することを抑えられる。したがって、移植後の組織の形成が円滑に進む。
【0011】
上記構成において、細胞移植装置は、複数の前記針状部を備えてもよい。
上記構成によれば、複数の針状部に移植物を一括して収容すること、および、複数の針状部から移植物を一括して放出することが可能である。したがって、細胞の移植の効率を高めることができる。そして、移植の対象領域までの搬送中に細胞が乾燥することを各針状部で抑えることが可能であるため、針状部間において搬送後の細胞の状態にばらつきが生じることも抑えられる。
【0012】
上記構成において、前記収容部における前記側壁の内周面は、前記液状体が含む液体の蒸発を抑えるための表面層を有してもよい。
上記構成によれば、移植の対象領域までの搬送中に細胞が乾燥することがさらに抑えられる。
【0013】
上記構成において、前記収容部の容積は、0.001μL以上1μL以下であってもよい。
上記構成によれば、移植物が、発毛または育毛に寄与する細胞の集合体である場合に、細胞の乾燥を抑えるために十分な量の液体を収容部に収容可能であるとともに、収容部が過度に大きくなることが抑えられるため、移植物の取り込みの際に、一旦は収容部へ収容された移植物が収容部から出ることが抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移植の対象領域への搬送中に細胞が乾燥することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】細胞移植装置の一実施形態について、単一の針状部を備える細胞移植装置の側面構造を示す図。
図2】一実施形態の細胞移植装置であって、複数の針状部を備える細胞移植装置の側面構造を示す図。
図3】一実施形態の細胞移植装置の第1例について、断面構造を示す図。
図4】一実施形態の細胞移植装置の第1例について、留止部が配置された第1管の平面構造および側面構造を示す図。
図5】一実施形態の細胞移植装置の第1例について、針状部の断面構造を示す図。
図6】一実施形態の細胞移植装置の第2例について、断面構造を示す図。
図7】一実施形態の細胞移植装置を用いた移植方法における細胞移植装置と移植物を保持するトレイとの配置を示す図。
図8】一実施形態の細胞移植装置を用いた移植方法における移植物の収容工程を示す図。
図9】一実施形態の細胞移植装置を用いた移植方法における移植物の収容工程を示す図。
図10】一実施形態の細胞移植装置を用いた移植方法における針状部を皮膚に刺す工程を示す図。
図11】一実施形態の細胞移植装置を用いた移植方法における移植物の配置工程を示す図。
図12】一実施形態の細胞移植装置を用いた移植方法に、複数の針状部を備える細胞移植装置を用いる場合の当該装置とトレイとの配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図12を参照して、細胞移植装置の一実施形態を説明する。
[移植物]
本実施形態の細胞移植装置は、生体へ移植物として細胞群を移植するために用いられる。移植の対象領域は、皮内および皮下の少なくとも一方、あるいは、臓器等の組織である。まず、移植される対象である細胞群について説明する。
【0017】
移植対象の細胞群は、複数の細胞を含む。細胞群は、凝集された複数の細胞の集合体であってもよいし、細胞間結合により結合した複数の細胞の集合体であってもよい。あるいは、細胞群は、分散した複数の細胞から構成されてもよい。また、細胞群を構成する細胞は、未分化の細胞であってもよいし、分化が完了した細胞であってもよいし、細胞群は、未分化の細胞と分化した細胞とを含んでいてもよい。細胞群は、例えば、細胞塊(スフェロイド)、原基、組織、器官、オルガノイド、ミニ臓器等である。
【0018】
細胞群は、対象領域に配置されることによって、生体における組織形成に作用する能力を有する。こうした細胞群の一例は、幹細胞性を有する細胞を含んだ細胞凝集体である。移植対象の細胞群は、例えば、皮内または皮下に配置されることにより、発毛または育毛に寄与する。こうした細胞群は、毛包器官として機能する能力、毛包器官へ分化する能力、毛包器官の形成を誘導もしくは促進する能力、あるいは、毛包における毛の形成を誘導もしくは促進する能力等を有する。また、細胞群は、色素細胞もしくは色素細胞に分化する幹細胞等のように、毛色の制御に寄与する細胞を含んでいてもよい。また、細胞群は、血管系細胞を含んでいてもよい。
【0019】
具体的には、本実施形態における移植対象の細胞群の一例は、原始的な毛包器官である毛包原基である。毛包原基は、間葉系細胞と上皮系細胞とを含む。毛包器官では、間葉系細胞である毛乳頭細胞が、毛包上皮幹細胞の分化を誘導し、これによって形成された毛球部にて毛母細胞が分裂を繰り返すことにより、毛が形成される。毛包原基は、こうした毛包器官に分化する細胞群である。
【0020】
毛包原基は、例えば、毛乳頭等の間葉組織に由来する間葉系細胞と、バルジ領域や毛球基部等に位置する上皮組織に由来する上皮系細胞とを、所定の条件で混合培養することによって形成される。ただし、毛包原基の製造方法は上述の例に限定されない。また、毛包原基の製造に用いられる間葉系細胞と上皮系細胞との由来も限定されず、これらの細胞は、毛包器官由来の細胞であってもよいし、毛包器官とは異なる器官由来の細胞であってもよいし、多能性幹細胞から誘導された細胞であってもよい。
【0021】
[細胞移植装置の全体構成]
図1が示すように、細胞移植装置100は、針状部10と、針状部10を支持する支持部50とを備えている。針状部10は、1つの方向に沿って延びる筒状を有し、言い換えれば、中空の針形状を有する。針状部10の外形は、その先端部が、生体における移植の対象の部位を刺すことの可能な形状を有していれば特に限定されない。針状部10の先端部は、例えば、円筒をその延びる方向に対して斜めに切断した形状を有し、尖っている。
【0022】
支持部50は、針状部10とは別々に形成された部材であってもよいし、針状部10と一体に形成されていてもよい。支持部50の外形は特に限定されない。
支持部50が針状部10とは別々に形成された部材である場合、支持部50は、針状部10の先端部から延びる部分の外側を囲み、針状部10を支持している。例えば、支持部50が有する孔に針状部10が通されることによって、支持部50に針状部10が組み付けられている。針状部10の先端部とその付近は、針状部10の延びる方向に沿って、支持部50から突き出している。
支持部50が針状部10と一体に形成されている場合、針状部10は支持部50の表面から突き出している。
【0023】
針状部10と支持部50とが別々の部材であるか一体に形成されているかに関わらず、針状部10のなかで支持部50から突き出している部分には、少なくとも、移植の際に生体の対象領域に進入する部分が含まれる。対象領域が皮内または皮下である場合、針状部10のなかで支持部50から突き出している部分の長さは、例えば、200μm以上6mm以下であることが好ましい。
【0024】
針状部10を形成するための材料は特に限定されない。針状部10は、例えば、シリコンや、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等の金属材料から形成されていてもよいし、汎用のプラスチック、医療用のプラスチック、および、化粧品用のプラスチック等の高分子材料から形成されていてもよい。高分子材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、アクリル、ウレタン樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、エポキシ樹脂、および、これらの樹脂の共重合材料等が挙げられる。また、針状部10は、ポリアクリル等の電離放射線硬化型材料や、ウレタンやエポキシ等の熱硬化型材料から形成されてもよい。支持部50を形成するための材料も特に限定されず、支持部50は、例えば、上述の針状部10の材料として例示した材料から形成されればよい。針状部10と支持部50との材料は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、針状部10および支持部50の各々は、2種類以上の材料の組み合わせによって形成されていてもよい。
【0025】
細胞移植装置100が備える針状部10の数は特に限定されず、細胞移植装置100は、図1が示すように単一の針状部10を備えていてもよいし、図2が示すように複数の針状部10を備えていてもよい。細胞移植装置100が複数の針状部10を備える場合、複数の針状部10の配置は特に限定されず、複数の針状部10は規則的に並んでいてもよいし、不規則に並んでいてもよい。また、細胞移植装置100が複数の針状部10を備える場合、1つの支持部50が、すべての針状部10を一括して支持することが好ましい。すなわち、複数の針状部10が1つの支持部50に支持されることで、複数の針状部10が一体となった細胞移植装置100を構成していることが好ましい。
【0026】
発毛または育毛に寄与する細胞群を移植する場合、複数の針状部10の配置に応じて、皮膚の表面に沿った方向における細胞群の配置が決まり、すなわち、細胞群が移植された部分に生える毛の配置が概ね決まる。例えば毛包原基のように、発毛または育毛に寄与する細胞の集合体を移植する場合、単位面積当たりの針状部10の密度は、1個/cm以上400個/cm以下であることが好ましく、さらには、20個/cm以上100個/cm以下であることが好ましい。針状部10の密度が上記下限値以上であれば、移植された細胞群に基づき発毛した毛の密度が、頭髪として十分な密度になる。針状部10の密度が上記上限値以下であれば、針状部10の密度と同等の密度で皮膚の内部に配置された細胞群に対して、栄養分が行きわたりやすく、毛包および毛の形成が好適に進む。
【0027】
また、発毛または育毛に寄与する細胞群を移植する場合、互いに隣り合う針状部10の中心間の距離である隣接間隔は、1mm以上4mm以下であることが好ましい。隣接間隔が上記下限値以上であれば、細胞移植装置100の形成が容易である。隣接間隔が上記上限値以下であれば、移植された細胞群に基づき発毛した毛の密度が、頭髪として十分な密度になる。
【0028】
[針状部の詳細構成]
針状部10は、先端部に開口する内部流路を有し、内部流路の途中から開口までの領域が、移植物とその保護液とを含む液状体を収容する収容部として機能する。収容部の具体的な構成の例として、繊維状物の配置によって収容部を形成する第1例と、内部流路の流路断面積の変化によって収容部を形成する第2例とを説明する。
【0029】
図3が示すように、第1例の針状部10である針状部10Aは、支持部50とは別体の部材である。図3においては、細胞移植装置100が単一の針状部10Aを備える場合を例示しているが、上述のように、細胞移植装置100は複数の針状部10Aを備えてもよい。
【0030】
針状部10Aは、針状部10Aの先端部を含む第1管11と、第1管11よりも大きい流路断面積を有する第2管12とを備えている。第1管11と第2管12との各々は、針状部10Aの延びる方向に沿って延びる。第1管11の先端部は、針状部10Aの先端部を構成し、開口13を有する。第2管12は、第1管11の基端部に接続されている。針状部10Aの内部に区画される内部流路14は、針状部10Aの延びる方向に沿って延び、開口13に通じている。
【0031】
例えば、第1管11の開口13を除く部分と第2管12との各々は、一定の内径を有する円筒状であり、第2管12の内径は、第1管11の内径よりも大きい。第1管11と第2管12との接続部分において、第1管11の端部は第2管12の端部に挿入されている。
【0032】
なお、第1管11と第2管12との各々の管は、先端部と基端部とに開口を有し、これらの開口が管内の空間を通じて連通している構成を有していればよく、円筒状に延びる構造体に限られない。第1管11と第2管12との各々の管の外形は、円柱状であってもよく、錐体状であってもよく、角柱体状であってもよく、特に限定されない。また、第1管11と第2管12との各々の管の内部に区画される空間の形状は、円柱状であってもよく、錐体状であってもよく、角柱体状であってもよく、特に限定されない。
【0033】
細胞移植装置100は、針状部10Aにおける流路断面積が変わる箇所、すなわち、第2管12内において第1管11の基端部と隣り合う箇所に、繊維状物21から構成された留止部20を備えている。留止部20は、内部流路14の途中で内部流路14を横断する。留止部20は、留止部20に対して針状部10Aの先端側から基端側へ、保護液を通す一方で移植物が通ることを抑える。移植物の通過を抑えることが可能であれば、留止部20を構成する繊維状物21の本数、材質、配置は特に限定されない。
【0034】
図4は、留止部20の一例について、留止部20が配置されている状態での第1管11の基端部を、針状部10Aの延びる方向に沿った方向と、針状部10Aの延びる方向に直交する方向とから見た図である。
【0035】
図4が示す例では、留止部20は、複数本の繊維状物21がメッシュ状に配置された構成を有し、第1管11の基端部に被せられている。各繊維状物21は、第1管11の基端部を跨ぐように配置されている。言い換えれば、繊維状物21の両端は、第1管11の外周面上に固定され、繊維状物21はその一端から他端へ第1管11の端面上を通って延びている。
【0036】
留止部20を、針状部10Aの延びる方向に沿った方向から見ると、繊維状物21が位置している領域と、隣り合う繊維状物21の隙間の領域とが存在する。繊維状物21の径、本数、交差態様の調整によって、上記隙間の大きさの調整が可能であり、これによって、留止部20の通過性能、すなわち、移植物の通しにくさと保護液の通しやすさとを調整することができる。
【0037】
なお、上記例に限らず、留止部20は、1本あるいは複数本の繊維状物21が第1管11の基端部に掛け渡されることにより構成されていてもよい。
繊維状物21は、糸状に細長くのびる構造体であれば、その材料は限定されない。繊維状物21は、一般的な繊維に限らず、ワイヤー状に加工された構造体や、管状に加工された構造体であってもよい。繊維としては、綿、麻、亜麻、ラミー、ジュート等の植物繊維、毛、絹等の動物繊維、鉱物繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維等が利用可能である。なお、1本の繊維状物21は、複数本の繊維が縒り合わされた構成を有していてもよい。
【0038】
図5が示すように、留止部20から開口13までの間において側壁に囲まれる領域が、移植物と保護液とを収容する収容部30として機能する。第1管11が円筒状に延びる場合、上記側壁の内周面は円筒状に延び、収容部30は円柱状の空間となる。
【0039】
針状部10Aの延びる方向における収容部の長さLは、針状部10Aの延びる方向と直交する方向における収容部30の最大幅D以上である。第1管11が、内径が一定の円筒状に延びる場合、最大幅Dは、当該内径であり、すなわち、針状部10Aの延びる方向と直交する断面において、第1管11の側壁に囲まれる円形領域の直径である。
【0040】
図6が示すように、第2例の針状部10である針状部10Bは、支持部50と一体に形成されている。図6においては、細胞移植装置100が複数の針状部10Bを備える場合を例示しているが、上述のように、細胞移植装置100は単一の針状部10Bを備えてもよい。
【0041】
針状部10Bは、その内部に、内部流路15を有している。内部流路15は、針状部10Bの延びる方向に沿って延び、先端部の開口13に通じている。また、内部流路15は、針状部10Bを貫通して支持部50の内部へ延びている。
【0042】
内部流路15は、大径部16と、大径部16よりも小さい流路断面積を有する小径部17とを有している。大径部16は、小径部17に対して針状部10Bの先端側に配置されており、大径部16の先端側に開口13が位置する。大径部16の流路断面積は、針状部10Bが延びる方向と直交する断面において、大径部16の側壁が囲む領域の面積であり、小径部17の流路断面積は、針状部10Bが延びる方向と直交する断面において、小径部17の側壁が囲む領域の面積である。
【0043】
例えば、大径部16と小径部17との各々は、一定の内径を有する円筒状に延び、小径部17の内径は、大径部16の内径よりも小さい。大径部16の内径は、移植物が大径部16を通ることが可能な大きさを有し、小径部17の内径は、移植物が小径部17を通ることが不可能な大きさを有する。例えば、大径部16の内径は、移植物の最大径として想定される長さよりも大きく、小径部17の内径は、移植物の最小径として想定される長さよりも小さい。
【0044】
上記構成によれば、開口13から内部流路15に入った移植物は、保護液の流れとともに大径部16を通った後、小径部17には入らずに大径部16に留まる。このように、流路断面積が変わる箇所から開口13までの間において側壁に囲まれる領域が、移植物と保護液とを収容する収容部31として機能する。大径部16が円筒状に延びる場合、上記側壁の内周面は円筒状に延び、収容部31は円柱状の空間となる。
【0045】
針状部10Bにおいても、針状部10Bの延びる方向における収容部31の長さLは、針状部10Bの延びる方向と直交する方向における収容部31の最大幅D以上である。大径部16が、内径が一定の円筒状に延びる場合、最大幅Dは、当該内径であり、すなわち、針状部10Bの延びる方向と直交する断面において、大径部16の側壁に囲まれる円形領域の直径である。
【0046】
以下、第1例と第2例とに共通する収容部の構成について説明する。
最大幅Dは、収容される移植物の大きさに応じて設定される。最大幅Dが移植物の径よりも十分に大きければ、移植物が収容部30,31に入りやすく、また、移植物が収容部30,31内で側壁に触れて摩擦が生じることが抑えられるため、細胞群の機能が低下することを抑えられる。
【0047】
具体的には、移植物が、発毛または育毛に寄与する細胞群であって、細胞塊や原基等の細胞の集合体である場合、移植物である細胞群を球体に近似したときの当該球体の直径、すなわち、細胞群に外接する最小の球の直径は、0.1mmから1.0mm程度となる。
【0048】
細胞群の上記近似直径が0.1mmのとき、最大幅Dは、0.15mm以上であることが好ましく、細胞群の上記近似直径が1.0mmのとき、最大幅Dは、1.05mm以上であることが好ましい。
【0049】
また、最大幅Dが大きすぎると、針状部10の幅が大きくなって、針状部10における生体を刺す機能が低下する。また、針状部10への移植物の取り込みの際に、一旦は収容部30,31へ収容された移植物が収容部30,31内で動くうちに収容部30,31から出やすくなる。それゆえ、最大幅Dは2.0mm以下であることが好ましい。
【0050】
すなわち、移植物が、発毛または育毛に寄与する細胞の集合体である場合、最大幅Dは、0.15mm以上2.0mm以下であることが好ましく、さらに、0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0051】
収容部30,31の長さLは、上述のように、最大幅D以上である。これにより、保護液が収容部30,31内で移植物を取り囲み、移植物よりも先端側に保護液が充填されている状態で、移植物と保護液とを収容部30,31に収容することができる。
【0052】
移植物の取り込みや放出に際して、移植物が収容部30,31内で側壁に触れることを抑えるためには、長さLは、15mm以下であることが好ましい。
収容部30,31の容積は、収容される移植物の大きさに応じて、移植物の体積よりも大きくなるように設定される。
【0053】
細胞群の上記近似直径が0.1mmのとき、細胞群の体積は約0.0005μLとなる。この場合、保護液が生理食塩水や培地等の水系の液体であるとき、30秒で約0.0009μLの蒸発が生じるため、収容部30,31の容積は0.001μL以上であることが好ましい。また、細胞群の上記近似直径が1.0mmのとき、細胞群の体積は約0.523μLとなる。細胞群の体積の増大に伴い、細胞群の移動速度が遅くなるため、移植物の取り込みや放出に要する時間が長くなる傾向がある。したがって、細胞群の体積が増大するほど、収容部30,31に収容可能な保護液の体積が増大することが好ましい。それゆえ、細胞群の上記近似直径が1.0mmのとき、収容部30,31の容積は0.75μL以上であることが好ましい。特に、手作業で細胞移植装置100を操作する場合には、移植物の取り込みから放出までに要する作業時間が長くなりやすいため、収容部30,31の容積は1μLであることが好ましい。
【0054】
一方で、収容部30,31の体積が大きすぎると、収容部30,31への移植物および保護液の収容に時間がかかる。また、針状部10への移植物の取り込みの際に、一旦は収容部30,31へ収容された移植物が収容部30,31から出やすくなる。それゆえ、収容部30,31の容積は1μL以下であることが好ましい。
すなわち、移植物が、発毛または育毛に寄与する細胞の集合体である場合、収容部30,31の容積は、0.001μL以上1μL以下であることが好ましい。
【0055】
なお、移植物の搬送中に蒸発しない程度の十分な量の保護液と共に移植物が収容部30,31に収容されている条件下においては、移植物の保持位置が針状部10の開口13に近いほど、内周面との接触による移植物の損傷や変形が抑えられ、また、移植物の放出が円滑に進みやすい。また、収容部30,31における側壁の内周面が円筒状であれば、移植物が内周面に接したときの接触面積を小さくすることが可能であり、移植物の損傷や変形が抑えられるため好ましい。
【0056】
収容部30,31を囲む側壁の内周面には、保護液の蒸発を抑えるためのコーティング処理が施されていることが好ましい。換言すれば、上記内周面は、保護液の蒸発を抑えるための表面層を有することが好ましい。
【0057】
コーティング処理によって形成される表面層の材料は、生体および移植物との適合性を有する材料であることが好ましく、さらに、針状部10や保護液との接触によって変質しにくい材料であることがより好ましい。具体的には、表面層の材料として、グリコールやグリセリン等のアルコール類、エーテル類、エステル類、植物油やシリコーン等のオイル、シランカップリング剤、および、これらの混合物を用いることができる。
【0058】
表面層は、例えば、界面活性剤としての機能、あるいは、油膜として界面を簡易的に封止する機能を有し、保護液の蒸発を抑える。保護液の特性に応じて、表面層の材料は水溶性であってもよいし、非水溶性であってもよい。また、表面層は、内周面に固定された状態で保護液の蒸発を抑える機能を発揮してもよいし、保護液内へ溶出することによって保護液の蒸発を抑える機能を発揮してもよい。
【0059】
[移植方法]
細胞移植装置100を用いた移植物の移植方法を説明する。以下では、細胞移植装置100が、第1例の針状部10Aを備える場合を図示するが、細胞移植装置100が、第2例の針状部10Bを備える場合も、移植の手順および収容部の機能は同様である。
【0060】
図7が示すように、移植前において、移植物Cgは、培養容器等のトレイ70に保護液Plと共に保持されている。例えば、図7が示すように、移植物Cgと保護液Plとは、トレイ70が有する凹部71に入れられている。トレイ70における移植物Cgと保護液Plとの保持態様は、凹部71に移植物Cgと保護液Plとが保持される形態に限らず、例えば、トレイ70が有する平面上に移植物Cgと保護液Plとが配置されていてもよい。
【0061】
保護液Plは、細胞の生存を阻害し難い液体であればよく、また、生体に注入された場合に生体に与える影響の小さい液体であることが好ましい。例えば、保護液Plは、生理食塩水、ワセリンや化粧水等の皮膚を保護する液体、あるいは、これらの液体の混合物である。保護液Plは、栄養成分等の添加成分を含んでいてもよい。また、トレイ70が培養容器であって、移植物Cgがトレイ70にて培養される場合、保護液Plは、細胞の培養のための培地であってもよいし、培地から交換された液体であってもよい。移植物Cgと保護液Plとを含む液状体は、低粘度の流体、あるいは、高粘度の流体であり得る。
【0062】
細胞移植装置100は、開口13から、移植物Cgを針状部10の内部に取り込む。より詳細には、トレイ70にて、移植物Cgが保護液Plと共に位置する部分に、針状部10の先端部が向けられ、保護液Plと共に移植物Cgが針状部10に取り入れられる。例えば、図7が示すように、凹部71と針状部10との位置が合わせられた後、図8が示すように、凹部71に針状部10の先端部が入れられる。そして、例えば、内部流路14内の空気が、針状部10に接続された機構によって吸引されることによって、図9が示すように、保護液Plと共に移植物Cgが開口13から内部流路14に引き込まれる。
【0063】
ここで、開口13から内部流路14に入った移植物Cgは、保護液Plの流れとともに内部流路14内を基端側に向けて移動する。収容部30の基端は保護液Plを通すため、保護液Plは、吸引の流れに従って、収容部30を越えてさらに基端側に向けて流れる。一方、収容部30の基端は移植物Cgを通さないため、移植物Cgは、収容部30内に留められる。吸引が停止されることによって、収容部30に、移植物Cgが保護液Plと共に収容される。
【0064】
そして、収容部30に移植物Cgと保護液Plとが収容された状態で、細胞移植装置100が、生体における移植の対象領域まで運ばれる。本実施形態においては、収容部30の長さLが収容部31の最大幅D以上であり、最大幅Dは、移植物の径よりも大きい。したがって、保護液Plが収容部30内で移植物Cgを取り囲み、移植物Cgよりも先端側に保護液Plが充填されている状態で、移植物Cgと保護液Plとを収容部30に収容することができる。保護液Plは、経時と共に徐々に蒸発していくが、収容部30内において、移植物Cgよりも先端側に保護液Plが充填されているため、移植の対象領域への搬送中に細胞が乾燥することが抑えられる。
【0065】
針状部10は微細な構造体であって、収容部30に収容される保護液Plの量も少ないため、わずかな搬送時間でも保護液Plの蒸発によって収容部30内の液面が基端側に近づきやすい。したがって、移植物の搬送に長い時間を要することが想定される場合には、長さLを大きく設定することが好ましい。
【0066】
移植物Cgと保護液Plとを収容した細胞移植装置100が、生体の例えば皮膚である対象部位まで運ばれると、図10が示すように、皮膚Skに針状部10が刺される。これにより、針状部10の先端部が皮膚Skの内部に進入して、移植の対象領域に開口13が配置される。発毛または育毛に寄与する細胞群を移植しようとする場合、対象領域は、皮内および皮下の少なくとも一方である。
【0067】
図11が示すように、例えば、針状部10に接続された機構から内部流路14に空気が送り込まれることによって、収容部30内の移植物Cgは保護液Plと共に押し出され、開口13から出る。これにより、対象領域に移植物Cgが配置される。その後、針状部10は皮膚Skから引き抜かれる。
【0068】
以上により、移植物Cgの対象領域への移植が完了する。細胞移植装置100を用いた上記移植方法によれば、移植物Cgをトレイ70から取り出して移植の対象領域へ配置するまでを1つの装置によって連続して行うことができるため、細胞の円滑な移植が可能である。また、皮膚のように伸縮性の高い組織に対しても、組織の伸縮に追従しつつ組織内に進入して、対象領域へ移植物Cgを配置することができる。
【0069】
図12は、複数の針状部10を備える細胞移植装置100を用いた移植方法の一工程を示す。
複数の針状部10を備える細胞移植装置100を用いる場合、移植物Cgの収容に際しては、各針状部10と移植物Cgとが向かい合うように、細胞移植装置100とトレイ70との位置が合わせられることによって、複数の針状部10に一括して移植物Cgを収容することができる。移植物は、各針状部10に1つずつ収容されることが好ましい。また、各針状部10から移植物Cgを放出することによって、複数の移植物Cgを一括して対象領域に配置することができる。したがって、移植の効率がより高められる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の細胞移植装置によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)収容部30,31の長さLが最大幅D以上であるため、収容部30,31内で保護液Plが移植物Cgを取り囲み、移植物Cgよりも先端側に保護液Plが充填されている状態で、移植物Cgを収容部30,31に収容することができる。したがって、移植の対象領域までの搬送中に細胞が乾燥することを抑えられる。
【0071】
(2)収容部30,31における側壁の内周面が円筒状を有する形態であれば、移植物Cgと内周面との接触に起因した移植物の損傷や変形を抑えられる。また、移植物Cgである細胞群は球形に近似される形状を有しているため、こうした形状の細胞群を保護液Plで取り囲んで収容することに適した形状の収容部30,31が実現される。
【0072】
(3)収容部30,31における側壁の内周面が、保護液Plの蒸発を抑えるための表面層を有する形態であれば、移植の対象領域までの搬送中に細胞が乾燥することがさらに抑えられる。
【0073】
(4)収容部30,31の容積が、0.001μL以上1μL以下であれば、移植物が、発毛または育毛に寄与する細胞の集合体である場合に、細胞の乾燥を抑えるために十分な量の保護液Plを収容部30,31に収容可能である。さらに、収容部30,31が過度に大きくなることが抑えられるため、移植物の取り込みの際に、一旦は収容部30,31へ収容された移植物が収容部30,31から出ることが抑えられる。
【0074】
(5)細胞移植装置100が、複数の針状部10を備える形態であれば、複数の針状部10に移植物Cgを一括して収容すること、および、複数の針状部10から移植物Cgを一括して放出することが可能である。したがって、細胞の移植の効率をさらに高めることができる。そして、移植の対象領域までの搬送中に細胞が乾燥することを各針状部10で抑えることが可能である。そのため、針状部10間において搬送後の細胞の状態にばらつきが生じることも抑えられる。
【0075】
[変形例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・収容部30,31を囲む側壁の内周面は、円筒状に限らず、角筒状や楕円筒状であってもよい。すなわち、針状部10の延びる方向と直交する断面において、上記側壁が囲む領域は円形でなくてもよい。こうした場合、上記断面にて上記側壁が囲む領域における最大の幅が、最大幅Dである。
【0076】
・第1例の針状部10Aの内部流路14において、留止部20が配置される位置は、流路断面積が変わる箇所でなくてもよい。例えば、留止部20は、第2管12内において第1管11の基端部から離れた位置に配置されていてもよいし、第1管11内に配置されていてもよい。また、第1管11および第2管12の流路断面積の各々は一定でなくてもよい。あるいは、針状部10Aは内径が一定の1つの管から構成されていてもよく、すなわち、内部流路14の流路断面積は一定であってもよい。留止部20の配置位置に応じて、繊維状物21は、例えば、針状部10Aを貫通して針状部10Aの外周面に端部が固定されるように針状部10Aに組み付けられてもよい。また、支持部50と一体に形成される針状部10において、内部流路に留止部20が配置されることによって、収容部が形成されてもよい。要は、繊維状物21から構成される留止部20の配置によって、移植物が内部流路の途中から開口13までの側壁に囲まれる領域に留められ、この領域が収容部として機能すればよい。内部流路の流路断面積が収容部内で変化し、針状部10の延びる方向において、収容部の径が一定ではない場合、最も大きい径の長さが、最大幅Dである。
【0077】
・第2例の針状部10Bは、支持部50とは別々に形成された部材であってもよい。また、内部流路15の流路断面積は、3段階以上に変化してもよい。要は、流路断面積の変化によって、移植物が内部流路の途中から開口13までの側壁に囲まれる領域に留められ、この領域が収容部として機能すればよい。内部流路の流路断面積が収容部内で変化し、針状部10の延びる方向において、収容部の径が一定ではない場合、最も大きい径の長さが、最大幅Dである。
【0078】
・上記実施形態では、収容部の例として、繊維状物の配置によって収容部を形成する第1例と、内部流路の流路断面積の変化によって収容部を形成する第2例とを説明した。これに限らず、収容部の基端は、保護液を通す一方で移植物を通さない構造を有していればよい。言い換えれば、収容部は、内部流路の途中から開口13までの側壁に囲まれる領域に、開口13から入った液状体が含む移植物を留めて当該液状体を収容することが可能に構成されていればよい。
【0079】
・移植物としての細胞群は、発毛または育毛に寄与する細胞群でなくてもよく、皮内および皮下の少なくとも一方、あるいは、臓器等の組織に配置されることによって、所望の効果を発揮する細胞群であればよい。例えば、皮膚領域に移植される細胞群は、皮膚における皺の解消や保湿状態の改善等、美容用途での効果を発揮する細胞群であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10,10A,10B…針状部、11…第1管、12…第2管、13…開口、14,15…内部流路、16…大径部、17…小径部、20…留止部、21…繊維状物、30,31…収容部、50…支持部、70…トレイ、100…細胞移植装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12