特許第6828819号(P6828819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828819
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】水素酸素反応装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 5/00 20060101AFI20210128BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20210128BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20210128BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20210128BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20210128BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20210128BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20210128BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20210128BHJP
【FI】
   C01B5/00 A
   C01B3/56 Z
   C01B13/02 Z
   H01M8/00 Z
   H01M8/0656
   H01M8/04 Z
   B64D27/24
   !H01M8/10 101
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-528337(P2019-528337)
(86)(22)【出願日】2018年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2018000313
(87)【国際公開番号】WO2019008799
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2019年12月24日
(31)【優先権主張番号】特願2017-131199(P2017-131199)
(32)【優先日】2017年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】谷内 雄作
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−216720(JP,A)
【文献】 特開2000−072405(JP,A)
【文献】 特開2015−116545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 5/00
B64D 27/24
C01B 3/56
C01B 13/02
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/0656
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素との反応を促進する反応触媒が充填された反応領域を有する反応容器と、
前記反応容器内へ水素又は酸素が主体の水素酸素混合ガスを導入する導入部と、
前記反応容器に対して一方の端部が挿入され、前記反応領域と接する領域を有すると共に、前記反応領域と接する領域の少なくとも一部は水蒸気透過膜により形成される水蒸気配管と、
前記反応容器内の気体を外部に排出する排出部と、
前記反応容器の外部において前記水蒸気配管を冷却する冷却部と、
を有する水素酸素反応装置。
【請求項2】
前記導入部は前記反応領域の一方側の端部に設けられ、前記排出部は前記反応領域の前記一方側の端部とは逆側の他方側の端部に設けられる、請求項1に記載の水素酸素反応装置。
【請求項3】
複数の前記水蒸気配管が、前記反応容器内に挿入される、請求項1に記載の水素酸素反応装置。
【請求項4】
複数の前記水蒸気配管が、前記反応容器内に挿入される、請求項2に記載の水素酸素反応装置。
【請求項5】
前記反応触媒が充填された第2反応領域を有する第2反応容器と、
前記反応容器と前記第2反応容器との境界に設けられる水素選択透過膜と、
前記第2反応容器に対して一方の端部が挿入され、前記第2反応領域と接する領域を有すると共に、前記第2反応領域と接する領域の少なくとも一部は水蒸気透過膜により形成される第2水蒸気配管と、
前記第2反応容器内の気体を外部に排出する第2排出部と、
を有し、
前記冷却部は、前記第2反応容器の外部において前記第2水蒸気配管を冷却する、請求項1に記載の水素酸素反応装置。
【請求項6】
前記反応触媒が充填された第2反応領域を有する第2反応容器と、
前記反応容器と前記第2反応容器との境界に設けられる水素選択透過膜と、
前記第2反応容器に対して一方の端部が挿入され、前記第2反応領域と接する領域を有すると共に、前記第2反応領域と接する領域の少なくとも一部は水蒸気透過膜により形成される第2水蒸気配管と、
前記第2反応容器内の気体を外部に排出する第2排出部と、
を有し、
前記冷却部は、前記第2反応容器の外部において前記第2水蒸気配管を冷却する、請求項2に記載の水素酸素反応装置。
【請求項7】
前記反応触媒が充填された第2反応領域を有する第2反応容器と、
前記反応容器と前記第2反応容器との境界に設けられる水素選択透過膜と、
前記第2反応容器に対して一方の端部が挿入され、前記第2反応領域と接する領域を有すると共に、前記第2反応領域と接する領域の少なくとも一部は水蒸気透過膜により形成される第2水蒸気配管と、
前記第2反応容器内の気体を外部に排出する第2排出部と、
を有し、
前記冷却部は、前記第2反応容器の外部において前記第2水蒸気配管を冷却する、請求項3に記載の水素酸素反応装置。
【請求項8】
前記反応触媒が充填された第2反応領域を有する第2反応容器と、
前記反応容器と前記第2反応容器との境界に設けられる水素選択透過膜と、
前記第2反応容器に対して一方の端部が挿入され、前記第2反応領域と接する領域を有すると共に、前記第2反応領域と接する領域の少なくとも一部は水蒸気透過膜により形成される第2水蒸気配管と、
前記第2反応容器内の気体を外部に排出する第2排出部と、
を有し、
前記冷却部は、前記第2反応容器の外部において前記第2水蒸気配管を冷却する、請求項4に記載の水素酸素反応装置。
【請求項9】
再生型燃料電池システムで用いられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水素酸素反応装置。
【請求項10】
航空機に搭載される再生型燃料電池システムで用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水素酸素反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素酸素反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水電解装置は、両面に触媒層が設けられた電極膜の一方の面側に水を供給し、外部電源を用いて通電することにより、水を分解して酸素と水素を生じさせる(例えば、特許文献1参照)。酸素及び水素は、電極膜の一方の面側と他方の面側でそれぞれ発生するので、個別に回収してタンク等に運搬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−39493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水電解装置において発生した酸素又は水素を回収する際に、僅かながら回収対象の気体とは異なる種類の気体が混合される場合がある。この場合、回収した気体の純度が低下してしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、水素又は酸素が主体の水素酸素混合ガスから、主体とは異なる成分の気体を好適に除去することが可能な水素酸素反応装置を提供することを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る水素酸素反応装置は、水素と酸素との反応を促進する反応触媒が充填された反応領域を有する反応容器と、前記反応容器内へ水素又は酸素が主体の水素酸素混合ガスを導入する導入部と、前記反応容器に対して一方の端部が挿入され、前記反応領域と接する領域を有すると共に、前記反応領域と接する領域の少なくとも一部は水蒸気透過膜により形成される水蒸気配管と、前記反応容器内の気体を外部に排出する排出部と、前記反応容器の外部において前記水蒸気配管を冷却する冷却部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の水素酸層反応装置によれば、水素又は酸素が主体の水素酸素混合ガスから、主体とは異なる成分の気体を好適に除去することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る水素酸素反応装置を適用可能な再生型燃料電池システムの概略を説明する図である。
図2】再生型燃料電池システムにおける水電解装置と水素タンク・酸素タンクとの間の装置構成を説明する図である。
図3】実施形態に係る水素酸素反応装置の構成を説明する図である。
図4】変形例に係る水素酸素反応装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一形態に係る水素酸素反応装置は、水素と酸素との反応を促進する反応触媒が充填された反応領域を有する反応容器と、前記反応容器内へ水素又は酸素が主体の水素酸素混合ガスを導入する導入部と、前記反応容器に対して一方の端部が挿入され、前記反応領域と接する領域を有すると共に、前記反応領域と接する領域の少なくとも一部は水蒸気透過膜により形成される水蒸気配管と、前記反応容器内の気体を外部に排出する排出部と、前記反応容器の外部において前記水蒸気配管を冷却する冷却部と、を有する。
【0010】
上記の水素酸素反応装置によれば、導入から水素及び酸素の混合ガスを導入し、反応容器内の反応領域において反応触媒により水素と酸素とから水蒸気を形成させた後に、排出部から外部に排出する構成としている。反応領域において水蒸気を形成させることで、混合ガスに含まれる水素及び酸素のうち、主体となる成分とは異なる成分の割合を減らすことができるため、水素及び酸素が混合される気体から主体とは異なる成分の気体を除去することが可能となる。また、水素酸素反応装置では、反応領域に対して挿入される水蒸気透過膜を有する水蒸気配管と、冷却部とにより、反応領域内で発生した水蒸気を外部に排出することを可能としている。したがって、反応領域における反応触媒を利用した水素と酸素との反応効率が向上される。そのため、水素又は酸素が主体の水素酸素混合ガスから、主体とは異なる成分の気体を好適に除去することが可能となる。
【0011】
前記導入部は前記反応領域の一方側の端部に設けられ、前記排出部は前記反応領域の前記一方側の端部とは逆側の他方側の端部に設けられる態様とすることができる。
【0012】
上記のように、導入部が反応領域の一方側の端部に設けられ、排出部が反応領域の一方側の端部とは逆側の他方側の端部に設けられる構成とすることで、反応領域を通過した気体を排出部から好適に排出することができる。したがって、排出部から主体とは異なる成分が好適に除去された気体を排出することができる。
【0013】
複数の前記水蒸気配管が、前記反応容器内に挿入される態様とすることができる。
【0014】
上記のように複数の水蒸気配管が反応容器内に挿入されている場合、反応領域から水蒸気配管への水蒸気の移動がより促進されるため、主体となる成分とは異なる成分の除去をさらに高い効率で行うことができる。
【0015】
前記反応触媒が充填された第2反応領域を有する第2反応容器と、前記反応容器と前記第2反応容器との境界に設けられる水素選択透過膜と、前記第2反応容器に対して一方の端部が挿入され、前記第2反応領域と接する領域を有すると共に、前記第2反応領域と接する領域の少なくとも一部は水蒸気透過膜により形成される第2水蒸気配管と、前記第2反応容器内の気体を外部に排出する第2排出部と、を有し、前記冷却部は、前記第2反応容器の外部において前記第2水蒸気配管を冷却する態様とすることができる。
【0016】
上記の水素酸素反応装置によれば、反応容器と第2反応容器との間に水素選択透過膜が設けられるため、反応容器内の気体のうち水素成分が第2反応容器へ移動するため、反応容器内では、導入された混合ガスと比較して酸素成分の割合が高められる。したがって、反応容器内に酸素主体の水素酸素混合ガスを導入した場合は、主体となる成分の割合が高められる。このように酸素成分の割合が高められた状態で、反応領域における反応触媒による水素と酸素との反応による水蒸気の形成が行われると、酸素成分の割合がさらに高められた気体が排出部から排出される。このように、第2反応容器を有する構成とすることで、反応容器に対して酸素主体の水素酸素混合ガスを導入した場合に、下部の排出部から排出されるガスにおける酸素の純度がさらに高められる。
【0017】
上記の水素酸素反応装置は、再生型燃料電池システムで用いられる態様とすることができる。また、上記の水素酸素反応装置は、航空機に搭載される再生型燃料電池システムで用いられる態様とすることができる。
【0018】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1を参照して、本実施形態の水素酸素反応装置を適用可能な再生型燃料電池システムの概略を説明する。この再生型燃料電池システムは、たとえば航空機等の移動体に搭載され得る。再生型燃料電池システムは、積載量の制限があり、水素・酸素の再利用が必要となる航空機に特に適している。再生型燃料電池システムは、水電解装置1と、水電解装置1に接続された外部電源2とを備える。水電解装置1は、外部電源2からの通電により、水供給装置5から供給された水を電気分解し、水素と酸素を発生させる。再生型燃料電池システムは、燃料電池3と、燃料電池3に接続された電力負荷4とを備える。燃料電池3は、水素タンク6に貯蔵された水素及び酸素タンク7に貯蔵された酸素を原料として発電を行う。燃料電池3は、たとえば固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)である。
【0020】
この再生型燃料電池システムでは、貯蔵燃料が有効な間は燃料電池3によって発電を行い水が生成されて水タンク8に貯蔵される。燃料を消費した後は外部電源2を利用し、水タンク8に貯蔵された水を水電解装置1で水素及び酸素に分解する。生成された水素および酸素は、所定圧力で水素タンク6および酸素タンク7に貯蔵され、燃料電池3に再度供給されて発電が行われる。この再生型燃料電池システムは高いエネルギー密度を有しており、リチウムイオン電池等の他の二次電池と比較すると2分の1から3分の1の重量になっている。このように軽量化されている点で、この再生型燃料電池システムは、移動体への搭載に有利である。
【0021】
本実施形態に係る水素酸素反応装置は、再生型燃料電池システムにおいて、水電解装置1の後段に設けられる。
【0022】
図2において、水電解装置1と後段の水素タンク6及び酸素タンク7との間に設けられる各装置について説明する。水電解装置1では、水素と酸素とが分離して回収されるが、水電解装置1から水素ガスとして回収された気体は、純水素ガスではなく、水電解装置1に含まれる水に由来する水蒸気と、水電解装置1において生成された酸素の一部と、が含まれた混合ガスとなっている。したがって、水電解装置1と水素タンク6との間には、水電解装置1からの水素が主体の混合ガスから、水蒸気成分を除去する気液分離装置11と、酸素成分を水素と反応して水を生成することにより酸素成分を除去する水素酸素反応装置20(20A)と、が設けられる。
【0023】
同様に、水電解装置1から酸素ガスとして回収された気体は、酸素だけではなく、水電解装置1に含まれる水に由来する水蒸気と、水電解装置1において生成された水素の一部と、が含まれる。したがって、水電解装置1と酸素タンク7との間には、水電解装置1からの酸素が主体の混合ガスから、水蒸気成分を除去する気液分離装置12と、酸素成分を水素と反応して水を生成することにより酸素成分を除去する水素酸素反応装置20(20B)と、が設けられる。
【0024】
なお、気液分離装置11,12において除去された水蒸気(水)及び、水素酸素反応装置20A,20Bにおいて除去された水は、水電解装置1に返送されて、水素及び酸素の生成等に利用される。
【0025】
本実施形態に係る水素酸素反応装置20は、このように、水電解装置1の後段に設けられて、水素又は酸素が主体の水素酸素混合ガスから、主体ではない成分のガスを除去する装置である。除去対象の成分のガスとは、水素主体の混合ガスの場合には酸素であり、酸素主体の混合ガスの場合には水素である。なお、水素酸素反応装置20A,20Bは同一構造を有しているので、以下の実施形態では、水素酸素反応装置20として説明する。
【0026】
次に、図3を参照しながら、水素酸素反応装置20の概略構造を説明する図である。図3に示すように、水素酸素反応装置20は、水素及び酸素の反応触媒が充填された反応領域Sを含む反応容器21と、反応容器21内に挿入される水蒸気配管22と、水蒸気配管22を冷却する冷却部23と、反応容器21内に水素又は酸素の一方が主体の水素酸素混合ガスを導入する導入部24と、反応領域Sを通過した気体を排出する排出部25と、を有する。
【0027】
水素酸素反応装置20の反応容器21内の反応領域Sは、水素と酸素との反応を促進する反応触媒が充填されることで形成されている。反応触媒は、水素と酸素との反応に係る触媒であれば特に限定されないが、例えば、白金(Pt)を用いることができる。また、導入部24は、反応容器21の上部に取り付けられていて、気液分離装置(気液分離装置11又は気液分離装置12)からの混合ガス(水素又は酸素の一方が主体の水素酸素混合ガス)を反応容器21内に導入する機能を有する。また、排出部25は、反応容器21の下部に取り付けられていて、反応容器21内の気体を外部に排出する機能を有する。排出部25から排出された気体は後段のタンク(水素タンク6又は酸素タンク7)へ運ばれる。
【0028】
水蒸気配管22は、反応容器21の下方から反応容器21を貫通し、反応容器21内の反応領域S内にその一部が挿入される配管である。水蒸気配管22の一方の端部は、反応領域S内に設けられる。この水蒸気配管22のうち、反応領域Sと接する領域の少なくとも一部は、水蒸気透過膜により形成される。水蒸気透過膜とは、混合ガスの成分である水素及び酸素を(ほぼ)透過せず、水蒸気を選択的に透過することが可能な膜である。このような膜としては、例えば、モイスチャーコントロールチューブ(SMC社製)、ナフィオン(Nafion)膜等が挙げられるが、これらに限定されない。水蒸気配管22において反応領域Sと接する領域のうち、水蒸気透過膜が占める面積はより広くすることができる。水蒸気透過膜が占める面積をより大きく確保することで、水蒸気配管22の内外での水蒸気の移動を好適に行うことができる。したがって、水蒸気配管22は反応領域Sと接する領域をより広くすると共に、当該領域のうち水蒸気透過膜が占める面積を大きくすることで、水蒸気の移動をより促進することができる。
【0029】
また、水蒸気配管22のうち、反応容器21内に挿入される領域は、反応領域Sと接しない領域であっても、水蒸気透過膜により形成されていてもよい。ただし、反応容器21外の水蒸気配管22は、水蒸気透過能を有しない材料が選択される。反応容器21外の水蒸気配管22が水蒸気透過能を有している場合、水蒸気が水蒸気配管22から外部に拡散する可能性がある。
【0030】
なお、図3では、反応容器21に対して1本の水蒸気配管22が挿入されているが、水蒸気配管22は複数設けられていてもよい。
【0031】
冷却部23は、反応容器21の外部において水蒸気配管22を冷却する機能を有する。冷却温度は、水蒸気配管22内の水蒸気を液化できる温度であれば特に限定されない。なお、冷却部23により冷却されて液化された水(水蒸気)は、水電解装置1に返送される(図2参照)。
【0032】
上記の水素酸素反応装置20では、導入部24から反応容器21内に導入された混合ガスは、反応触媒が充填された反応領域Sを経て下方に移動する。この間に、反応触媒の作用により、混合ガス内の水素と酸素とが反応し、水蒸気となる。この反応領域Sで発生した水蒸気は、水蒸気配管22の水蒸気透過膜を通過し、図3の矢印Aに示すように、水蒸気配管22内へ移動する。また、反応容器21内の混合ガスにおいては、水蒸気の発生により、混合ガスのうち主体となる成分とは異なる成分が減少する。したがって、主体となる成分の割合が高められた(純度が高められた)気体(水素又は酸素)が排出部25から反応容器21外へ排出される。
【0033】
一方、水蒸気配管22内に導入された水蒸気は、冷却部23により冷却されて液化した後、水素酸素反応装置20から外部に排出される。液化された水蒸気が外部に排出されることで、水蒸気配管22内の水蒸気の割合が低下するため、再び反応容器21内で発生した水蒸気が水蒸気透過膜を経て水蒸気配管22内に導入される。このように、反応容器21内の反応領域Sに対して水蒸気配管22が挿入され、反応容器21内で発生した水蒸気が水蒸気透過膜を介して水蒸気配管22内に移動する。したがって、反応容器21内での水蒸気の滞留を抑制することができる。
【0034】
このように、本実施形態に係る水素酸素反応装置20によれば、導入部24から水素及び酸素の混合ガスを導入し、反応容器21内の反応領域Sにおいて反応触媒により水素と酸素とから水蒸気を形成させた後に、排出部25から外部に排出する構成としている。反応領域Sにおいて水蒸気を形成させることで、混合ガスに含まれる水素及び酸素のうち、主体となる成分とは異なる成分の割合を減らすことができる。そのため、排出部25から排出される気体においては、主体となる成分とは異なる成分の割合が低減される。このように、水素酸素反応装置20によれば、水素及び酸素が混合される気体から一方の気体を好適に除去することが可能となる。
【0035】
水素酸素反応装置20では、反応領域Sに対して挿入される水蒸気透過膜を有する水蒸気配管22と、冷却部23とにより、反応領域S内で発生した水蒸気を外部に排出することを可能としている。したがって、反応領域Sにおける反応触媒を利用した水素と酸素との反応効率が向上されている。
【0036】
従来から、水素と酸素とが混合された混合ガスから一方側の成分を除去する方法として、反応触媒を利用して水素と酸素とから水(水蒸気)を形成して除去する方法が検討されていた。しかしながら、反応触媒を用いて水蒸気を形成して除去するだけでは、主体となる成分とは異なる成分の除去が十分ではなく、主体となる成分の純度を十分に高めることができない場合があることが確認された。反応触媒を利用した水の形成だけでは2種類の成分の分離が不十分である理由としては、例えば、水素と酸素との反応により形成された水蒸気が反応触媒に付着することで、反応触媒が失活することが考えられる。これに対して、本実施形態の水素酸素反応装置20では、水蒸気透過膜を有する水蒸気配管22を介して反応領域Sから水蒸気を排出する構成を有することで、反応領域Sの反応触媒が失活することを防ぐことができる。したがって、反応触媒による水素と酸素との反応効率が向上し、主体となる成分とは異なる成分の除去をより高い効率で行うことができる。
【0037】
なお、反応容器21に対して複数の水蒸気配管22が挿入されている場合、反応領域Sからの水蒸気配管22への移動がより促進されるため、主体となる成分とは異なる成分の除去をさらに高い効率で行うことができる。
【0038】
(変形例)
次に、変形例に係る水素酸素反応装置について、図4を参照しながら説明する。図4に示す水素酸素反応装置30は、図3に示す水素酸素反応装置20と比較して、以下の点が相違する。すなわち、水素酸素反応装置30では、反応容器21の周囲を囲むように第2反応容器31が設けられる。そして、反応容器21と第2反応容器31との間は水素選択透過膜32により区切られている。
【0039】
水素酸素反応装置30では、反応容器21の反応領域Sの周囲が水素選択透過膜32となっている。水素選択透過膜32は、水素及び酸素のうち、水素を選択的に透過する機能を有する。ただし、水素選択透過膜32は、酸素透過性を有してもよい。すなわち、水素選択透過膜32は、酸素透過性よりも水素透過性が高い膜である。ただし、酸素透過性と水素透過性との差が大きいほうが、水素選択透過膜32として好適に用いられる。
【0040】
水素選択透過膜32の外側に設けられる第2反応容器31においても、反応触媒による反応領域S(第2反応領域)が形成される。また、第2反応容器31に対しても、水蒸気透過膜を有する水蒸気配管33(第2水蒸気配管)が挿入される。水蒸気配管22と同様に、反応領域Sと接する領域の少なくとも一部は、水蒸気透過膜により形成される。なお、第2反応容器31に挿入される水蒸気配管33の数も、水蒸気配管22と同様に適宜変更することができる。
【0041】
また、水素酸素反応装置30の冷却部23は、反応容器21からの水蒸気配管22と、第2反応容器31からの水蒸気配管33の両方を冷却する。さらに、第2反応容器31においても下部に排出部34(第2排出部)が取り付けられている。排出部34は、第2反応容器31内の気体を外部に排出する機能を有する。排出部34から排出された気体は後段のタンクへ運ばれる。なお、冷却部23は、水蒸気配管22,31毎に個別に設けられていてもよい。
【0042】
上記の水素酸素反応装置30は、酸素主体の水素酸素混合ガスからの水素の除去に好適に用いられる。ここで、水素酸素反応装置30において、導入部24から反応容器21内に酸素主体の混合ガスが導入されたとする。反応容器21内に導入された混合ガスは、反応触媒が充填された反応領域Sを経て下方に移動する。この間に、反応触媒の作用により、混合ガス内の水素と酸素とが反応し、水蒸気となる。この反応領域Sで発生した水蒸気は、水蒸気配管22の水蒸気透過膜を通過し、図4の矢印Aに示すように、水蒸気配管22内へ移動する。
【0043】
また、反応容器21内の混合ガスにおいては、水蒸気の発生により、混合ガスのうち主体となる成分とは異なる成分が減少する。したがって、主体となる成分の割合が高められた(純度が高められた)気体(ここでは、酸素)が排出部25から反応容器21外へ排出される。
【0044】
さらに、図4の矢印Bに示すように、反応容器21内の水素及び酸素の一部が水素選択透過膜32を介して反応容器21から第2反応容器31へ移動する。水素選択透過膜32を通過する気体の量は、水素のほうが酸素よりも多くなる。したがって、第2反応容器31内では、水素成分のほうが高くなる、すなわち、水素主体の状態となる。第2反応容器31内にも反応触媒により反応領域Sが形成されているため、反応触媒の作用により、混合ガス内の水素と酸素とが反応し、水蒸気となる。この反応領域Sで発生した水蒸気は、第2反応容器31に挿入された水蒸気配管33の水蒸気透過膜を通過し、水蒸気配管33内へ移動する。
【0045】
また、第2反応容器31内の混合ガスにおいては、水蒸気の発生により、混合ガスのうち主体となる成分とは異なる成分(ここでは、酸素)が減少する。したがって、主体となる成分の割合が高められた(純度が高められた)状態で、気体(ここでは、水素)が排出部34から第2反応容器31外へ排出される。
【0046】
なお、水蒸気配管22,33内に導入された水蒸気は、いずれも、冷却部23により冷却されて液化した後、水素酸素反応装置30から外部に排出される。液化された水蒸気が外部に排出されることで、水蒸気配管22,33内の水蒸気の割合が低下するため、再び反応容器21及び第2反応容器31内で発生した水蒸気が水蒸気透過膜を経て水蒸気配管22,33内に導入される。このように、反応容器21及び第2反応容器31のいずれにおいても、水蒸気配管22,33が挿入されることで、水蒸気が水蒸気透過膜を介して水蒸気配管22,33内に移動する。したがって、反応容器21及び第2反応容器31内での水蒸気の滞留を抑制することができる。
【0047】
上記の水素酸素反応装置30では、反応容器21内の気体が移動可能な第2反応容器31が設けられると共に、反応容器21と第2反応容器31との間に水素選択透過膜32が設けられる。したがって、反応容器21内の水素成分が第2反応容器31へ移動する。そして、反応容器21内では、導入された混合ガスと比較して酸素成分の割合が高められる。反応容器21内に酸素主体の水素酸素混合ガスを導入した場合は、主体となる成分の割合が高められるということになる。このように酸素成分の割合が高められた状態で、反応領域Sにおける反応触媒による水素と酸素との反応による水蒸気の形成が行われた場合、排出部25から排出される気体からは水素が効果的に除去される。したがって、酸素成分の割合がさらに高められた気体が排出部25から排出される。このように、水素酸素反応装置30によれば、水素酸素反応装置20と比較して、反応容器21に対して酸素主体の水素酸素混合ガスを導入した場合に、下部の排出部25から排出されるガスにおける酸素の純度がさらに高められる。
【0048】
上記の水素酸素反応装置30では、酸素主体の水素酸素混合ガスを導入した際に排出部25から排出される酸素の純度を高めるために、反応容器21と第2反応容器31との境界に水素選択透過膜32を設けている。そして、第2反応容器31に対して水素を優先的に移動させる構成としている。ただし、水素選択透過膜32に代えて酸素を選択的に透過することができる透過膜を取り付けた場合、上記と逆の構成を実現することができる。具体的には、水素主体の水素酸素混合ガスを導入した際に排出部25から排出される水素の純度を高めるために、反応容器21と第2反応容器31との間に酸素を選択的に透過することができる透過膜を設けている。このような構成とすると、反応容器21から第2反応容器31に対して酸素を優先的に移動させる構成を実現できる。したがって、排出部25から排出される水素の純度を高めることが可能となる。
【0049】
なお、水素酸素反応装置30では、反応容器21の周囲に第2反応容器31が設けられる場合について説明したが、反応容器21と第2反応容器31とは、水素選択透過膜32を介して接続されていればよく、反応容器21と第2反応容器31との位置関係は特に限定されない。例えば、反応容器21と第2反応容器31とが隣接して配置する構成であってもよい。また、反応容器21及び第2反応容器31の形状についても適宜変更することができる。
【0050】
また、水素酸素反応装置30では、水素選択透過膜32が、反応容器21における反応領域Sの周囲全面に設けられている例を示しているが、水素選択透過膜32は、反応容器21における反応領域Sの周囲全面である必要はない。水素選択透過膜32は、上述のように、反応容器21に導入された混合ガスから水素を選択して分離する機能を有している。したがって、水素選択透過膜32は、排出部25よりも導入部24に近い側に設けられていたほうが、水素の分離を好適に行うことができ、排出部25から排出される酸素の純度を好適に高めることができる。
【0051】
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の水素酸素反応装置では、導入部24が反応領域Sに対して上方であって、排出部25が反応領域Sに対して下方である場合について説明したが、反応容器21に対する導入部24及び排出部25の配置は特に限定されない。ただし、導入部24は反応領域Sの一方側の端部に設けられ、排出部25は反応領域Sの一方側の端部とは逆側の他方側の端部に設けられる構成とすると、反応領域Sを通過した気体を排出部25から排出することができるため、水蒸気の形成によって純度が高められた気体を排出部25から排出することができる。
【0052】
また、水蒸気配管22,33の形状も適宜変更することができる。上記実施形態では、水蒸気配管22,33は、上下方向に延びる形状である場合を示しているが、例えば、水蒸気配管22に設けられる水蒸気透過膜における反応領域に対向する面積を大きくするために、水蒸気配管の形状を変更してもよい。
【0053】
このように、上記実施形態で説明した水素酸素反応装置20,30の構成は適宜変更することができる。
【0054】
また、水素酸素反応装置20,30は、上述の再生型燃料電池システムにおける水電解装置の後段での水素と酸素との分離とは異なる用途に用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の水素酸素反応装置によれば、水素又は酸素が主体の水素酸素混合ガスから、主体とは異なる成分の気体を好適に除去することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 水電解装置
6 水素タンク
7 酸素タンク
11,12 気液分離装置
20,20A,20B,30 水素酸素反応装置
21 反応容器
22 水蒸気配管
23 冷却部
24 導入部
25 排出部
31 第2反応容器
32 水素選択透過膜
33 水蒸気配管(第2水蒸気配管)
34 排出部(第2排出部)
S 反応領域
図1
図2
図3
図4