(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1鉄筋構造材が、前記第1脚ロッドに装着されて前記第1板状ベースの内面と前記第1固定ロッドとの間に位置するPコーンを含み、前記第1脚前部の第1狭窄部分が、前記Pコーンの頂部と底部との間である該Pコーンの内側に位置し、前記第2鉄筋構造材が、前記第2脚ロッドに装着されて前記第2板状ベースの内面と前記第2固定ロッドとの間に位置するPコーンを含み、前記第2脚前部の第2狭窄部分が、前記Pコーンの頂部と底部との間である該Pコーンの内側に位置している請求項1に記載の外壁用鉄筋構造物。
前記外壁用鉄筋構造物では、前記第1主鉄筋の上下端筋と該第1主鉄筋の第1および第2ラチス筋と前記第1鉄筋ブリッジとのうちの少なくとも1つが前記基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結され、前記第2主鉄筋の上下端筋と該第2主鉄筋の第1および第2ラチス筋と前記第2鉄筋ブリッジとのうちの少なくとも1つが前記基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結されている請求項3に記載の外壁用鉄筋構造物。
前記外壁用鉄筋構造物では、前記第1板状ベースと前記第2板状ベースとがそれら板状ベースの間に位置して前後方向へ延びる複数のセパレーターによって連結される請求項1ないし請求項4いずれかに記載の外壁用鉄筋構造物。
前記主鉄筋が、前記鉄筋ブリッジから前方へ離間して上下方向へ延びる上端筋と、前記鉄筋ブリッジの固定ロッドに固着されて上下方向へ延びる一対の下端筋と、前記上端筋と前記下端筋との間で前後方向へ波状に曲折を繰り返しながら上下方向へ延びる一対の第1および第2ラチス筋とから形成され、前記第1および第2ラチス筋が、前記上端筋に固定されて凸状に折れ曲がる凸部と、前記下端筋に固定されて凹状に折れ曲がる凹部と、前記凸部と前記凹部との間に延びる中間部とを有し、前記第1および第2ラチス筋の中間部が、前記凸部から前記凹部に向かって末広がりになっている請求項6または請求項7に記載の外壁用鉄筋構造物。
前記外壁用鉄筋構造物では、前記板状ベースおよび前記外断熱材が該板状ベースと該外断熱材との間に位置して前後方向へ延びる複数のセパレーターによって連結される請求項6ないし請求項9いずれかに記載の外壁用鉄筋構造物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の外壁用構造物は、四角柱状の角形鋼管柱の間に延びる耐火性外壁および内壁板とそれら板の間に配置された断熱材とから形成され、角形鋼管柱の間に鉄筋やコンクリートが存在せず、外壁構造物に鉄筋コンクリート製と同等の十分な強度を持たせることができないのみならず、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができない。この外壁用構造物は、四角柱状の角形鋼管柱の間に延びる耐火性外壁および内壁板において外壁用構造物に作用する各種の応力を支えなければならず、地震による激しい揺れが作用した場合、その揺れに耐えきれずに耐火性外壁および内壁板が倒壊するおそれがあり、また、津波におそわれた場合、その水圧に耐えきれず耐火性外壁および内壁板が押し流されるおそれがあり、外壁の安全性を確保することができない。さらに、耐火性外壁と内壁板との間に押出法ポリスチレンフォーム製の断熱材が介在するだけであるから、遮音性が低く、建造物の周囲の騒音を遮断することができない。
【0005】
なお、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工するには、鉄筋を配筋しつつ型枠を組み立て、型枠にコンクリートを打設し、打設したコンクリートの養生期間が経過した後、型枠を取り外す。したがって、鉄筋の配筋作業や型枠の組立作業、型枠の取り外し作業が必要になり、その分の工期を要するのみならず、鉄筋の配筋技術や型枠の組立技術が必要となり、鉄筋の配筋技術を備えた鉄筋工や型枠の組立技術を備えた型枠工以外の作業者が打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、高い強度を有し、地震による激しい揺れや津波の水圧に耐えることができ、建造物の地震による倒壊や建造物の津波による流失を防ぐことが可能な打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる外壁用鉄筋構造物を提供することにある。本発明の他の目的は、遮音性や耐火性に優れ、周囲の騒音を遮断することが可能であって火災に強い打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる外壁用鉄筋構造物を提供することにある。本発明の他の目的は、鉄筋の配筋技術や型枠の組立技術を必要とせず、短い工期で打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる外壁用鉄筋構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、建造物の基礎に連接され、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁の施工に使用される外壁用鉄筋構造物である。
【0008】
前記前提における本発明の第1の特徴は、外壁用鉄筋構造物が、建造物の基礎から上方へ延びていて建造物の横方向へ並ぶ複数の第1鉄筋構造材と、第1鉄筋構造材の反対側に位置して第1鉄筋構造材に対向し、建造物の基礎から上方へ延びていて建造物の横方向へ並ぶ複数の第2鉄筋構造材とから形成され、第1鉄筋構造材が、上下方向へ延びる所定面積の第1板状ベースと、第1板状ベースの内面に配置されて上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第1鉄筋ブリッジと、それら第1鉄筋ブリッジに設置されて上下方向へ延びる第1主鉄筋とから形成され、第2鉄筋構造材が、第1板状ベースに対向して上下方向へ延びる所定面積の第2板状ベースと、第2板状ベースの内面に配置されて上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第2鉄筋ブリッジと、それら第2鉄筋ブリッジに設置されて上下方向へ延びていて第1主鉄筋から横方向へ所定寸法離間して第1主鉄筋に隣接する第2主鉄筋とから形成され、第1鉄筋ブリッジが、第1板状ベースの内面から
第2板状ベースに向かって前方へ離間して横方向へ延びていて第1主鉄筋を固定する第1固定ロッドと、第1固定ロッドの両端から第1板状ベースに向かって前後方向へ延びる一対の第1脚ロッドとを備え、第2鉄筋ブリッジが、第2板状ベースの内面から
第1板状ベースに向かって前方へ離間して横方向へ延びていて第2主鉄筋を固定する第2固定ロッドと、第2固定ロッドの両端から第2板状ベースに向かって前後方向へ延びる一対の第2脚ロッドとを備え、第1脚ロッドが、第1板状ベースを貫通して第1板状ベースの外面から露出し、固定手段によって第1鉄筋ブリッジを第1板状ベースに取り付ける第1脚後部と、第1板状ベースの内面と第1固定ロッドとの間に位置して前後方向へ延びる第1脚前部とを有し、第1脚前部が、第1脚前部の残余部分よりも太さが小さく、第1脚前部を折曲するように第1脚後部に力を加えることで第1脚前部を二分可能な第1狭窄部分を有し、第2脚ロッドが、第2板状ベースを貫通して第2板状ベースの外面から露出し、固定手段によって第2鉄筋ブリッジを第2板状ベースに取り付ける第2脚後部と、第2板状ベースの内面と第2固定ロッドとの間に位置して前後方向へ延びる第2脚前部とを有し、第2脚前部が、第2脚前部の残余部分よりも太さが小さく、第2脚前部を折曲するように第2脚後部に力を加えることで第2脚前部を二分可能な第2狭窄部分を有し、コンクリートを打設する打設スペースが、第1板状ベースと第2板状ベースとの間に画成されていることにある。
【0009】
前記第1の特徴を有する本発明の一例としては、第1鉄筋構造材が、第1脚ロッドに装着されて第1板状ベースの内面と第1固定ロッドとの間に位置するPコーンを含み、第1脚前部の第1狭窄部分が、Pコーンの
頂部と底部との間であるPコーンの内側に位置し、第2鉄筋構造材が、第2脚ロッドに装着されて第2板状ベースの内面と第2固定ロッドとの間に位置するPコーンを含み、第2脚前部の第2狭窄部分が、Pコーンの
頂部と底部との間であるPコーンの内側に位置している。
【0010】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、第1主鉄筋が、第1鉄筋ブリッジから
第2鉄筋ブリッジに向かって前方へ離間して上下方向へ延びる上端筋と、第1鉄筋ブリッジの第1固定ロッドに固着されて上下方向へ延びる一対の下端筋と、上端筋と下端筋との間で前後方向へ波状に曲折を繰り返しながら上下方向へ延びる一対の第1および第2ラチス筋とから形成され、第2主鉄筋が、第2鉄筋ブリッジから
第1鉄筋ブリッジに向かって前方へ離間して上下方向へ延びる上端筋と、第2鉄筋ブリッジの第2固定ロッドに固着されて上下方向へ延びる一対の下端筋と、上端筋と下端筋との間で前後方向へ波状に曲折を繰り返しながら上下方向へ延びる一対の第1および第2ラチス筋とから形成され、第1および第2ラチス筋が、上端筋に固定されて凸状に折れ曲がる凸部と、下端筋に固定されて凹状に折れ曲がる凹部と、凸部と凹部との間に延びる中間部とを有し、第1および第2ラチス筋の中間部が、凸部から凹部に向かって末広がりになっている。
【0011】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、外壁用鉄筋構造物では、第1主鉄筋の上下端筋と第1主鉄筋の第1および第2ラチス筋と第1鉄筋ブリッジとのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結され、第2主鉄筋の上下端筋と第2主鉄筋の第1および第2ラチス筋と第2鉄筋ブリッジとのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結されている。
【0012】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、外壁用鉄筋構造物では、第1板状ベースと第2板状ベースとがそれら板状ベースの間に位置して前後方向へ延びる複数のセパレーターによって連結される。
【0013】
前記前提における本発明の第2の特徴は、外壁用鉄筋構造物が、建造物の基礎から上方へ延びていて建造物の横方向へ並ぶ複数の鉄筋構造材と、それら鉄筋構造材の
外側であって鉄筋構造材の直前に配置された外断熱材とから形成され、鉄筋構造材が、上下方向へ延びる所定面積の板状ベースと、板状ベースの内面に配置されて上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の鉄筋ブリッジと、それら鉄筋ブリッジに設置されて上下方向へ延びる主鉄筋とから形成され、鉄筋ブリッジが、板状ベースの内面から
主鉄筋に向かって前方へ離間して横方向へ延びていて主鉄筋を固定する固定ロッドと、固定ロッドの両端から
板状ベースに向かって前後方向へ延びる一対の脚ロッドとを備え、脚ロッドが、板状ベースを貫通して板状ベースの外面から露出し、固定手段によって鉄筋ブリッジを板状ベースに取り付ける脚後部と、板状ベースの内面と固定ロッドとの間に位置して前後方向へ延びる脚前部とを有し、脚前部が、脚前部の残余部分よりも太さが小さく、脚前部を折曲するように脚後部に力を加えることで脚前部を二分可能な狭窄部分を有し、コンクリートを打設する打設スペースが、板状ベースと外断熱材との間に画成されていることにある。
【0014】
前記第2の特徴を有する本発明の一例としては、外壁用鉄筋構造物が、脚ロッドに装着されて
板状ベースの内面と固定ロッドとの間に位置するPコーンを含み、脚前部の狭窄部分が、Pコーンの
頂部と底部との間であるPコーンの内側に位置している。
【0015】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、主鉄筋が、鉄筋ブリッジから前方へ離間して上下方向へ延びる上端筋と、鉄筋ブリッジの固定ロッドに固着されて上下方向へ延びる一対の下端筋と、上端筋と下端筋との間で前後方向へ波状に曲折を繰り返しながら上下方向へ延びる一対の第1および第2ラチス筋とから形成され、第1および第2ラチス筋が、上端筋に固定されて凸状に折れ曲がる凸部と、下端筋に固定されて凹状に折れ曲がる凹部と、凸部と凹部との間に延びる中間部とを有し、第1および第2ラチス筋の中間部が、凸部から凹部に向かって末広がりになっている。
【0016】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、外壁用鉄筋構造物では、外断熱材が
それら鉄筋構造材の外側であって鉄筋構造材を形成する主鉄筋の上端筋の直前に設置され、鉄筋ブリッジと上下端筋と第1および第2ラチス筋とのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結されている。
【0017】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、外壁用鉄筋構造物では、板状ベースおよび外断熱材が板状ベースと外断熱材との間に位置して前後方向へ延びる複数のセパレーターによって連結される。
【発明の効果】
【0018】
第1の特徴を有する外壁用鉄筋構造物によれば、それが複数の第1鉄筋構造材と第1鉄筋構造材に対向する複数の第2鉄筋構造材とから形成され、第1板状ベースと第2板状ベースとの間に画成された打設スペースにコンクリートが打設されるから、コンクリートに曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力が作用したとしても、第1および第2鉄筋構造材によってそれらの外力に十分に抵抗することが可能な強度を有する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を作ることができ、高い強度を有する頑丈な外壁を施工することができる。外壁用鉄筋構造物は、それから作られた鉄筋コンクリート外壁が高い強度を有するから、地震による激しい揺れや津波の水圧に十分に耐えることができ、地震による建造物の倒壊を防ぐことが可能であって津波による建造物の流失を防ぐことが可能な打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。また、打設スペースに打設されたコンクリートが優れた遮音性と優れた耐火性とを有するから、建造物の周囲の騒音を遮断することが可能であって火災に強い打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。外壁用鉄筋構造物は、第1および第2脚後部の固定手段によって第1および第2鉄筋ブリッジが第1および第2板状ベースに取り付けられ、第1および第2脚前部を折曲するように第1および第2脚後部に力を加え、第1および第2狭窄部分において第1および第2脚前部を二分することで、第1および第2鉄筋構造材のうちの第1および第2脚後部がつながる第1および第2脚前部の略下半分と第1および第2板状ベースとを取り外すことができるから、打設スペースに打設されたコンクリートのコンクリート面が露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を容易に施工することができる。外壁用鉄筋構造物は、第1および第2主鉄筋や第1および第2鉄筋ブリッジが鉄筋となり、第1および第2板状ベースが型枠になるから、鉄筋の配筋作業や型枠の組立作業、型枠の取り外し作業をする必要はなく、短い工期で打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を構築することができるとともに、鉄筋の配筋技術や型枠の組立技術を必要とせず、鉄筋の配筋技術を備えた鉄筋工や型枠の組立技術を備えた型枠工以外の作業者でも打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。
【0019】
第1鉄筋構造材が第1脚ロッドに装着されて第1板状ベースの内面と第1固定ロッドとの間に位置するPコーンを含み、第1脚前部の第1狭窄部分がPコーンの内側に位置し、第2鉄筋構造材が第2脚ロッドに装着されて第2板状ベースの内面と第2固定ロッドとの間に位置するPコーンを含み、第2脚前部の第2狭窄部分がPコーンの内側に位置している外壁用鉄筋構造物は、Pコーンの内側にコンクリートが打設されることはなく、Pコーンの内側に位置する第1および第2狭窄部分において第1および第2脚前部を容易に二分することができるとともに、第1および第2鉄筋構造材のうちの第1および第2脚後部がつながる第1および第2脚前部の略下半分と第1および第2板状ベースとを簡単に取り外すことができるから、コンクリート面が露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を容易に施工することができる。外壁用鉄筋構造物は、Pコーンの内側にコンクリートが存在せず、第1および第2狭窄部分において第1および第2脚前部を二分したときに、第1および第2脚前部においてコンクリートが破損することがないから、第1および第2脚ロッドの周辺におけるコンクリート補修を必要とせず、コンクリート補修の手間を省くことができ、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を短い工期で効率よく施工することができる。
【0020】
第1主鉄筋が上下方向へ延びる上端筋と上下方向へ延びる一対の下端筋と前後方向へ波状に曲折を繰り返しながら上下方向へ延びる一対の第1および第2ラチス筋とから形成され、第2主鉄筋が上下方向へ延びる上端筋と上下方向へ延びる一対の下端筋と前後方向へ波状に曲折を繰り返しながら上下方向へ延びる一対の第1および第2ラチス筋とから形成され、第1および第2ラチス筋が上端筋に固定されて凸状に折れ曲がる凸部と下端筋に固定されて凹状に折れ曲がる凹部と中間部とを有し、第1および第2ラチス筋の中間部が凸部から凹部に向かって末広がりになっている外壁用鉄筋構造物は、第1および第2主鉄筋が鉄筋トラスを形成し、鉄筋トラスを形成する第1および第2主鉄筋と打設スペースに打設されたコンクリートとが一体になることで、コンクリートに曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力が作用したとしても、それらの外力に十分に抵抗することが可能な強度を有する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。
【0021】
第1主鉄筋の上下端筋と第1主鉄筋の第1および第2ラチス筋と第1鉄筋ブリッジとのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結され、第2主鉄筋の上下端筋と第2主鉄筋の第1および第2ラチス筋と第2鉄筋ブリッジとのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結されている外壁用鉄筋構造物は、第1主鉄筋の上下端筋と第1および第2ラチス筋と第1鉄筋ブリッジとのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結され、第2主鉄筋の上下端筋と第1および第2ラチス筋と第2鉄筋ブリッジとのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結されることで、建造物の基礎と一体になった優れた強度の外壁を作ることができ、強い衝撃に十分に耐えることが可能な鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。
【0022】
第1板状ベースと第2板状ベースとがそれら板状ベースの間に位置して前後方向へ延びる複数のセパレーターによって連結される外壁用鉄筋構造物は、第1板状ベースと第2板状ベースとを複数のセパレーターによって連結することで、第1板状ベースと第2板状ベースとの間の打設スペースに打設されたコンクリートの側圧が第1および第2板状ベースに作用したとしても、それら板状ベースに変形が生ずることはなく、構造計算された設計どおりの強固な鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。
【0023】
第2の特徴を有する外壁用鉄筋構造物によれば、それが複数の鉄筋構造材とそれら鉄筋構造材の外側に配置された外断熱材とから形成され、外断熱材と鉄筋構造材の板状ベースとの間の打設スペースにコンクリートが打設されるから、コンクリートに曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力が作用したとしても、鉄筋構造材によってそれらの外力に十分に抵抗することが可能な強度を有する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を作ることができ、高い強度を有する頑丈な外壁を施工することができる。外壁用鉄筋構造物は、それから作られた鉄筋コンクリート外壁が高い強度を有するから、地震による激しい揺れや津波の水圧に十分に耐えることができ、地震による建造物の倒壊を防ぐことが可能であって津波による建造物の流失を防ぐことが可能な打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。また、打設スペースに打設されたコンクリートが優れた遮音性と優れた耐火性とを有するから、建造物の周囲の騒音を遮断することが可能であって火災に強い打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。外壁用鉄筋構造物は、脚後部の固定手段によって鉄筋ブリッジが鉄板ベースに取り付けられ、脚ロッドの脚前部を折曲するように脚後部に力を加え、狭窄部分において脚前部を二分することで、鉄筋構造材のうちの脚後部がつながる脚前部の略下半分と鉄板ベースとを取り外すことができるから、打設スペースに打設されたコンクリートのコンクリート面が露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を容易に施工することができる。外壁用鉄筋構造物は、主鉄筋や鉄筋ブリッジが鉄筋となり、鉄板ベースや外断熱材が型枠になるから、鉄筋の配筋作業や型枠の組立作業、型枠の取り外し作業をする必要はなく、短い工期で打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を構築することができるとともに、鉄筋の配筋技術や型枠の組立技術を必要とせず、鉄筋の配筋技術を備えた鉄筋工や型枠の組立技術を備えた型枠工以外の作業者でも打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。
【0024】
脚ロッドに装着されて鉄板ベースの内面と固定ロッドとの間に位置するPコーンを含み、脚前部の狭窄部分がPコーンの内側に位置している外壁用鉄筋構造物は、Pコーンの内側にコンクリートが打設されることはなく、Pコーンの内側に位置する狭窄部分において脚ロッドの脚前部を容易に二分することができるとともに、鉄筋構造材のうちの脚後部がつながる脚前部の略下半分と鉄板ベースとを簡単に取り外すことができるから、コンクリート面が露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を容易に施工することができる。外壁用鉄筋構造物は、Pコーンの内側にコンクリートが存在せず、狭窄部分において脚ロッドの脚前部を二分したときに、脚ロッドの脚前部においてコンクリートが破損することがないから、脚ロッドの周辺におけるコンクリート補修を必要とせず、コンクリート補修の手間を省くことができ、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を短い工期で効率よく施工することができる。
【0025】
主鉄筋が上下方向へ延びる上端筋と上下方向へ延びる一対の下端筋と前後方向へ波状に曲折を繰り返しながら上下方向へ延びる一対の第1および第2ラチス筋とから形成され、第1および第2ラチス筋が上端筋に固定されて凸状に折れ曲がる凸部と下端筋に固定されて凹状に折れ曲がる凹部と中間部とを有し、第1および第2ラチス筋の中間部が凸部から凹部に向かって末広がりになっている外壁用鉄筋構造物は、主鉄筋が鉄筋トラスを形成し、鉄筋トラスを形成する主鉄筋と打設スペースに打設されたコンクリートとが一体になることで、コンクリートに曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力が作用したとしても、それらの外力に十分に抵抗することが可能な強度を有する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。
【0026】
外断熱材が主鉄筋の上端筋の直前に設置され、鉄筋ブリッジと上下端筋と第1および第2ラチス筋とのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結されている外壁用鉄筋構造物は、鉄筋ブリッジと上下端筋と第1および第2ラチス筋とのうちの少なくとも1つが基礎から上方へ延びる基礎鉄筋に連結されることで、建造物の基礎と一体になった優れた強度の外壁を作ることができ、強い衝撃に十分に耐えることが可能な鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。
【0027】
板状ベースおよび外断熱材が板状ベースと外断熱材との間に位置して前後方向へ延びる複数のセパレーターによって連結される外壁用鉄筋構造物は、板状ベースと外断熱材とを複数のセパレーターによって連結することで、外断熱材と板状ベースとの間の打設スペースに打設されたコンクリートの側圧が板状ベースや外断熱材に作用したとしても、板状ベースや外断熱材に変形が生ずることはなく、構造計算された設計どおりの強固な鉄筋コンクリート外壁を施工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一例として示す外壁用構造物10Aの側面図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る外壁用構造物の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、一例として示す第1および第2鉄筋構造材12a,12bの斜視図であり、
図3は、第1および第2鉄筋構造材12a,12bの部分拡大側面図である。
図4は、第1および第2鉄筋構造材12a,12bの正面図であり、
図5は、第1および第2鉄筋構造材12a,12bの部分拡大正面図である。
図1では、外壁用構造物10Aの頂部に天井鉄筋構造材48が設置されている。
図1〜
図4では、上下方向を矢印A、横方向を矢印Bで示し、前後方向を矢印Cで示す。
【0030】
外壁用構造物10Aは、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48a(
図9参照)の施工に使用される。外壁用構造物10Aは、
図1に示すように、建造物の基礎11から上方へ延びていて建造物の横方向へ並ぶ複数の第1鉄筋構造材12aと、建造物の基礎11から上方へ延びていて建造物の横方向へ並ぶ複数の第2鉄筋構造材12bとから形成されている。外壁用構造物10Aでは、第2鉄筋構造材12bが第1鉄筋構造材12aの反対側に位置して第1鉄筋構造材12aに対向している。
【0031】
第1鉄筋構造材12aは、所定面積を有して上下方向へ延びる第1鉄板ベース13a(第1板状ベース)と、第1鉄板ベース13aの内面19に配置された複数の第1鉄筋ブリッジ14aと、第1鉄筋ブリッジ14aに配置された第1主鉄筋15aと、第1鉄筋ブリッジ14aに装着されたPコーン16(プラスチックコーン)と(ナット31(固定手段)およびワッシャ38を含む)から形成されている。第2鉄筋構造材12bは、第1板状ベース13aに対向し、所定面積を有して上下方向へ延びる第2鉄板ベース13b(第2板状ベース)と、第2鉄板ベース13bの内面19に配置された複数の第2鉄筋ブリッジ14bと、第2鉄筋ブリッジ14bに配置され、第1主鉄筋15aから横方向へ所定寸法離間して第1主鉄筋15aに隣接する第2主鉄筋15bと、第2鉄筋ブリッジ14bに装着されたPコーン16と(ナット31(固定手段)およびワッシャ38を含む)から形成されている。
【0032】
第1および第2鉄板ベース13a,13bは、上下方向へ延びる両側縁部17と横方向へ延びる両端縁部18とを有するとともに、フラットな内面19およびフラットな外面20を有する。第1および第2鉄板ベース13a,13bの内面19には剥離剤が塗布されている。第1および第2鉄板ベース13a,13bには、鉄板の他に、アルミニウム板やステンレス板等を使用することができる。また、鉄板ベースの他に、化粧合板やプリント合板等の木質系板状ベース、各種の合成樹脂から作られた合成樹脂系板状ベースのいずれかを使用することもできる。第1および第2鉄板ベース13a,13bには、その内面19から前方へ凸となる複数の凸条21(凸部)が形成されている。それら凸条21は、上下方向へ延びるとともに、横方向へ所定寸法離間して並んでいる。
【0033】
第1および第2鉄板ベース13a,13bには、その内外面19,20を貫通する複数の貫通孔22が穿孔されている。第1および第2鉄板ベース13a,13bの一方の側縁部17には、第1係合部23が作られ、他方の側縁部17には、第2係合部24が作られている。第1係合部23は、鉄板ベース13a,13bの外面20側に折れ曲がるフックであり、鉄板ベース13a,13bの一方の側縁部17を折り曲げることから作られている。第2係合部24は、鉄板ベース13a,13bの内面19側に折れ曲がるフックであり、鉄板ベース13a,13bの他方の側縁部17を折り曲げることから作られている。
【0034】
第1鉄板ベース13aは、一方の鉄板ベース13aの第1係合部23(フック)に他方の鉄板ベース13aの第2係合部24(フック)を嵌め込み、それら係合部23,24どうしを互いに係合させることで、第1鉄板ベース13aを横方向へつなげ、複数の鉄板ベース13aを連結した状態で横方向へ並べることができる。第2鉄板ベース13bは、一方の鉄板ベース13bの第1係合部23(フック)に他方の鉄板ベース13bの第2係合部24(フック)を嵌め込み、それら係合部23,24どうしを互いに係合させることで、第2鉄板ベース13bを横方向へつなげ、複数の鉄板ベース13bを連結した状態で横方向へ並べることができる。なお、第1および第2鉄板ベース13a,13bの縦横寸法や厚み寸法、面積に特に制限はなく、縦横寸法や厚み寸法、面積を自由に変えることができる。
【0035】
それら第1鉄筋ブリッジ14aは、鉄棒から作られ、第1鉄板ベース13aの内面19において上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。第1鉄筋ブリッジ14aは、第1鉄板ベース13aの内面19から前方へ離間して横方向へ直状に延びる第1固定ロッド25aと、第1固定ロッド25aの両端から第1鉄板ベース13aに向かって前後方向へ直状に延びる一対の第1脚ロッド26aとを有する。第1脚ロッド26aは、鉄棒(第1固定ロッド25a)の両端部を折り曲げることから作られている。
【0036】
第1脚ロッド26aは、第1鉄板ベース13aの貫通孔22に挿通されて鉄板ベース13aを貫通し、第1鉄板ベース13aの外面20から後方へ露出(延出)して前後方向へ延びる第1脚後部27aと、第1鉄板ベース13aの内面19から前方へ露出(延出)して前後方向へ延びる第1脚前部28aとを有する。第1脚後部27aには、螺子(固定手段)が形成されている。第1脚前部28aは、第1鉄板ベース13aの内面19と第1固定ロッド25aとの間に位置している。第1脚前部28aの略中央には、脚前部28aの残余部分29よりも厚み寸法が小さい(太さが残余部分29よりも細い)第1狭窄部分30aが形成されている。
【0037】
第1脚ロッド26aでは、第1脚後部27aの螺子(固定手段)にナット31(固定手段)が螺着されることで、第1鉄筋ブリッジ14aが第1鉄板ベース13aに取り付けられている。第1脚ロッド26aでは、その第1脚前部28aを折曲するように第1脚後部27aに力を加えることで第1狭窄部分30aが折れ、それによって第1脚前部28aを略前半分と第1脚後部27aがつながる略後半分とに二分(略前半分と第1脚後部27aがつながる略後半分とに分離)することができる。
【0038】
それら第2鉄筋ブリッジ14bは、鉄棒から作られ、第2鉄板ベース13bの内面19において上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。第2鉄筋ブリッジ14bは、第2鉄板ベース13bの内面19から前方へ離間して横方向へ直状に延びる第2固定ロッド25bと、第2固定ロッド25bの両端から第2鉄板ベース13bに向かって前後方向へ直状に延びる一対の第2脚ロッド26bとを有する。第2脚ロッド26bは、鉄棒(第2固定ロッド25b)の両端部を折り曲げることから作られている。
【0039】
第2脚ロッド26bは、第2鉄板ベース13bの貫通孔22に挿通されて鉄板ベース13bを貫通し、第2鉄板ベース13bの外面20から後方へ露出(延出)して前後方向へ延びる第2脚後部27bと、第2鉄板ベース13bの内面19から前方へ露出(延出)して前後方向へ延びる第2脚前部28bとを有する。第2脚後部27bには、螺子(固定手段)が形成されている。第2脚前部28bは、第2鉄板ベース13bの内面18と第2固定ロッド25bとの間に位置している。第2脚前部28bの略中央には、脚前部28bの残余部分29よりも厚み寸法が小さい(太さが残余部分29よりも細い)第2狭窄部分30bが形成されている。
【0040】
第2脚ロッド26bでは、第2脚後部27bの螺子(固定手段)にナット31(固定手段)が螺着されることで、第2鉄筋ブリッジ14bが第2鉄板ベース13bに取り付けられている。第2脚ロッド26bでは、その第2脚前部28bを折曲するように第2脚後部27bに力を加えることで第2狭窄部分30bが折れ、それによって第2脚前部28bを略前半分と第2脚後部27bがつながる略後半分とに二分(略前半分と第2脚後部27bがつながる略後半分とに分離)することができる。
【0041】
第1主鉄筋15aは、第1鉄筋ブリッジ14aに連結されて上下方向へ延び、第2主鉄筋15bは、第2鉄筋ブリッジ14bに連結されて上下方向へ延びている。第1および第2鉄筋構造材12a,12bでは、2つの主鉄筋が使用されているが、主鉄筋の数に特に制限はなく、第1および第2鉄板ベース13a,13bの面積や主鉄筋の大きさ等に応じて鉄板ベース13a,13bに配置する主鉄筋の数を自由に決めることができる。第1および第2主鉄筋15a,15bは、1本の上端筋32と2本(一対)の下端筋33と2本(一対)の第1および第2ラチス筋34とから形成されている。上端筋32と下端筋33と第1および第2ラチス筋34とからなる主鉄筋15a,15bは、鉄筋トラスを形成している。
【0042】
上端筋32は、鉄棒またはその周面に複数の節(リブ)を有する異形鉄棒(異形鉄筋)から作られている。上端筋32は、第1および第2鉄筋ブリッジ14a,14b(第1および第2鉄板ベース13a,13bの内面19)から前方へ離間して上下方向へ直状に延びている。各主鉄筋15a,15bにおいて横方向へ並ぶ上端筋32の上下方向の長さ寸法や太さは略同一であり、それら上端筋32が横方向へ並行して並んでいる。上端筋32の太さについて特に制限はなく、施工する外壁の大きさや外壁に必要な強度に合わせて上端筋32の太さを自由に変えることができる。
【0043】
それら下端筋33は、鉄棒またはその周面に複数の節(リブ)を有する異形鉄棒(異形鉄筋)から作られている。下端筋33は、第1および第2ラチス筋34の内側に位置し、上端筋32の後方であって上端筋32の横方向両側に位置している。それら下端筋33は、第1および第2鉄板ベース13a,13bの内面19から前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びている。なお、下端筋33が第1および第2ラチス筋34の外側に位置していてもよい。
【0044】
各主鉄筋15a,15bにおいて横方向へ並ぶ下端筋33の上下方向の長さ寸法や太さは略同一であり、それら下端筋33が横方向へ並行して並んでいる。それら下端筋33は、鉄筋ブリッジ14a,14bの固定ロッド25a,25bと交差する部分(交差箇所)が固定ロッド15a,15bにスポット溶接されることで鉄筋ブリッジ14a,14b(固定ロッド15a,15b)に溶着(固着)されている。下端筋33の太さについて特に制限はなく、施工する外壁の大きさや外壁に必要な強度に合わせて下端筋33の太さを自由に変えることができる。
【0045】
第1および第2ラチス筋34は、鉄棒を折り曲げることから作られている。それらラチス筋34は、上端筋32と下端筋33との間に位置し、第1および第2鉄板ベース13a,13bの内面19から前方へ所定寸法離間している。各主鉄筋15a,15bにおいて横方向へ並ぶ第1および第2ラチス筋34の太さは略同一である。なお、ラチス筋34の太さについて特に制限はなく、施工する外壁の大きさや外壁に必要な強度に合わせてラチス筋34の太さを自由に変えることができる。
【0046】
第1および第2ラチス筋34は、上端筋32と下端筋33との間において前後方向へ波状に曲折(起伏)を繰り返しながら上下方向へ延びている。それらラチス筋34は、上端筋32の側に位置して凸状に折れ曲がる凸部35と、下端筋33の側に位置して凹状に折れ曲がる凹部36と、凸部35および凹部36の間において上下方向へ傾斜して延びる中間部37とを有する。
【0047】
各ラチス筋34の前後方向へ波状に曲折を繰り返す角度は一定であり、単位長さ(たとえば1m)当たりのラチス筋34の曲折を繰り返す回数は同一である。ラチス筋34の前後方向へ波状に曲折を繰り返す角度は自由に変えることができ、その角度を調節(単位長さ当たりのラチス筋34の曲折を繰り返す回数を調節)することで、ラチス筋34の凸部36どうしの上下方向の離間寸法を調節することができ、ラチス筋34の凹部37どうしの上下方向の離間寸法を調節することができる。
【0048】
第1および第2ラチス筋34は、上端筋32を挟んで横向へ対称型に配置されている。したがって、横向に並ぶそれらラチス筋34の凸部35どうしの位置が一致し、中間部37どうしの位置が一致しているとともに、凹部36どうしの位置が一致している。それらラチス筋34は、上下方向に隣接する凸部35どうしの離間寸法が等しく、凸部35が上下方向へ等間隔で並んでいるとともに、上下方向に隣接する凹部36どうしの離間寸法が等しく、凹部36が上下方向へ等間隔で並んでいる。
【0049】
第1および第2ラチス筋34は、
図3に示すように、第1および第2鉄板ベース13a,13bに対して垂直ではなく、鉄板ベース13a,13bに対して所定角度で傾斜し、その凸部35から凹部36に向かって中間部37が横方向外方へ末広がりになっている。それらラチス筋34の傾斜角度について特に制限はなく、その傾斜角度を自由に変えることができる。それらラチス筋34の凸部35は、上端筋32の周面に当接し、凸部35のうちの上端筋32と交差(当接)する部分(交差箇所)が上端筋32にスポット溶接されることで上端筋32に溶着(固定)されている。それらラチス筋34の凹部36は、下端筋33の周面に当接し、凹部36のうちの下端筋33と交差(当接)する部分(交差箇所)が下端筋33にスポット溶接されることで下端筋33に溶着(固定)されている。
【0050】
Pコーン16は、合成樹脂から作られて円錐台形状に成型されている。Pコーン16は、第1脚ロッド26aの第1脚前部28aに装着され、第1鉄板ベース13aの内面19と第1固定ロッド25aとの間に位置し、第2脚ロッド26bの第2脚前部28bに装着され、第2鉄板ベース13bの内面19と第2固定ロッド25bとの間に位置している。Pコーン16の頂部には、第1脚ロッド26aの第1脚前部28aに挿通されたワッシャ38が位置し、第2脚ロッド26bの第2脚前部28bに挿通されたワッシャ38が位置している。Pコーン16の内側には、第1脚ロッド26aの第1脚前部28aに形成された第1狭窄部分30aが位置し、第2脚ロッド26bの第2脚前部28bに形成された第2狭窄部分30bが位置している。
【0051】
第1および第2鉄筋構造材12a,12bでは、脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bにワッシャ38を挿通するとともに、脚前部28a,28bにPコーン16を装着(挿通)し、脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bに形成された狭窄部分30a,30bをPコーン16の内側に位置させた後、鉄板ベース13a,13bに形成された貫通孔22に脚ロッド26a,26bの脚後部27a,27bを挿入する。貫通孔22に脚後部27a,27bを挿入すると、鉄板ベース13a,13bの外面20から後方へ脚ロッド26a,26bの脚後部27a,27bが露出し、Pコーン16の頂部がワッシャ38に当接するとともに、Pコーン16の底部が鉄板ベース13a,13bの内面19に当接する。鉄板ベース13a,13bの外面20に露出する脚後部27a,27b(螺子)にナット31を螺着して鉄筋ブリッジ14a,14bを鉄板ベース13a,13bに取り付けることで、鉄筋構造材12a,12bが組み立てられる。
【0052】
外壁用鉄筋構造物10Aは、建造物の基礎11の上に設置され、基礎11に連接されている。外壁用鉄筋構造物10Aでは、第1鉄筋構造材12aが室内側に位置し、第2鉄筋構造材12bが室外側に位置した状態でそれら鉄筋構造材12a,12bが基礎11に連結されている。外壁用鉄筋構造物10Aでは、第1主鉄筋15aの上下端筋32,33および第1および第2ラチス筋34と第1鉄筋ブリッジ14aとが基礎11から上方へ延びる基礎鉄筋39に連結され、第2主鉄筋15bの上下端筋32,33および第1および第2ラチス筋34と第2鉄筋ブリッジ14bとが基礎11から上方へ延びる基礎鉄筋39に連結されている。
【0053】
基礎鉄筋39と第1および第2主鉄筋15a,15bとは、結束線(図示せず)を利用して連結されている。なお、第1主鉄筋15aの上下端筋32,33と第1主鉄筋15aの第1および第2ラチス筋34と第1鉄筋ブリッジ14aとのうちの少なくとも1つが基礎鉄筋11に連結され、第2主鉄筋15bの上下端筋32,33と第2主鉄筋15bの第1および第2ラチス筋34と第2鉄筋ブリッジ14bとのうちの少なくとも1つが基礎鉄筋11に連結されていればよい。
【0054】
外壁用鉄筋構造物10Aでは、第1鉄板ベース13aと第2鉄板ベース13bとがそれら鉄板ベース13a,13bの間に位置して前後方向へ延びる複数のセパレーター40によって連結される。第1鉄板ベース13aと第2鉄板ベース13bとの間には、コンクリート41を打設する打設スペース42が画成されている。それらセパレーター40は、第1および第2鉄板ベース13a,13bの所定の部位に穿孔されたセパ挿通孔に挿通され、第1および第2鉄板ベース13a,13b(第1および第2鉄筋構造材12a,12b)を連結している。セパレーター40の両端部には、型枠緊結金具43(フォームタイ(登録商標))と丸パイプ44(単管パイプ)とPコーン45(プラスチックコーン)とが設置されている。丸パイプ44は、型枠緊結金具43と鉄板ベース13a,13bとの間に位置し、型枠緊結金具43の座金46によって鉄板ベース13a,13bに設置されている。
【0055】
外壁用鉄筋構造物10Aでは、第1鉄筋構造材12aの第1主鉄筋15aの上端筋32が第2鉄筋構造材12bの第2鉄板ベース13bの近傍に位置し、第2鉄筋構造材12bの第2主鉄筋15bの上端筋32が第1鉄筋構造材12aの第1鉄板ベース13aの近傍に位置するとともに、第1鉄筋構造材12aの第1主鉄筋15aのラチス筋34と第2鉄筋構造材12bの第2主鉄筋15bのラチス筋34とが横方向へ隣り合っている。
【0056】
外壁用鉄筋構造物10Aでは、互いに対向する第1鉄板ベース13aと第2鉄板ベース13bとが型枠を形成し、第1および第2鉄筋ブリッジ14a,14bと第1および第2主鉄筋15a,15bとが鉄筋を形成する。外壁用鉄筋構造物10Aの頂部には、L字状のアングル材47が固定手段によって固定され、アングル材47を介して水平方向へ並ぶ複数の天井鉄筋構造材12が設置されている。
【0057】
天井鉄筋構造材12は、天井の面積と略同一面積となるように、複数の天井鉄筋構造材12が水平方向へ連結されている。それら天井鉄筋構造材12は、アングル材47の側に位置する側縁部および端縁部がアングル材47の水平部分に連接されている。天井鉄筋構造材12は、第1および第2鉄筋構造材12a,12bと同一であり、所定面積を有する鉄板ベース13(板状ベース)と、鉄板ベース13の内面に配置された複数の鉄筋ブリッジ14と、鉄筋ブリッジ14に配置された主鉄筋15と、鉄筋ブリッジ14に装着されたPコーン16と(ナット32およびワッシャ38を含む)から形成されている。鉄板ベース13や鉄筋ブリッジ14、主鉄筋15は、第1および第2鉄筋構造材12a,12bのそれらと同一である。天井鉄筋構造材12の鉄板ベース13が型枠になり、アングル材47の垂直部分がコンクリート41の漏れを防ぐ堤防になる。
【0058】
図6は、コンクリート41を打設した後の
図1と同様の図であり、
図7は、脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bを二分した状態の拡大図である。
図8は、鉄板ベース13a,13bを取り外した状態の拡大図であり、
図9は、完成した鉄筋コンクリート外壁48aの側面図である。
図10は、鉄筋コンクリート外壁48aの部分拡大図である。
【0059】
外壁用鉄筋構造物10Aでは、
図6に示すように、第1鉄板ベース13aと第2鉄板ベース13bとの間の打設スペース42にコンクリート41が打設される。打設スペース42にコンクリート41が打設されると、鉄筋ブリッジ14a,14bおよび主鉄筋15a,15b(上端筋32、下端筋33、第1および第2ラチス筋34)がコンクリート41に埋没する。天井鉄筋構造材12では、鉄板ベース13の内面にコンクリート41が所定の被り寸法で打設される。鉄板ベース13の内面にコンクリート41が打設されると、鉄筋ブリッジ14および主鉄筋15(上端筋32、下端筋33、第1および第2ラチス筋34)がコンクリート41に埋没する。
【0060】
打設スペース42や天井鉄筋構造材12にコンクリート41を打設し、コンクリート41の養生期間が経過してコンクリート41が硬化した後、脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bを折曲するように鉄板ベース13a,13bの外面20から後方に露出(延出)する脚ロッド26a,26bの脚後部27a,27bに力を加え、脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bを二分する。脚後部27a,27bに力を加えるには、たとえば、ナット31から露出する脚後部27a,27bの周面を金槌やモンキーレンチ、バール等で殴打して脚後部27a,27bを折曲する。または、ナット31から露出する脚後部27a,27bをペンチやモンキーレンチで挟持し、ペンチやモンキーレンチの柄をひねって脚後部27a,27bを折曲する。
【0061】
脚ロッド26a,26bの脚後部27a,27bを折曲するように脚後部27a,27bに力を加えると、
図7に示すように、脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bに形成された狭窄部分30a,30bが折れ、狭窄部分30a,30bにおいて脚前部28a,28bが分かれ、脚前部28a,28bが略上半分と脚後部27a,27bがつながる略下半分とに二分(略上半分と脚後部27a,27bがつながる略下半分とに分離)される。Pコーン16の内側にコンクリート41が打設されることがないから、狭窄部分30a,30bを容易に折ることができ、Pコーン16の内側に位置する狭窄部分30a,30bにおいて脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bを容易に二分することができる。また、Pコーン16の内側にコンクリート41が存在せず、狭窄部分30a,30bにおいて脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bを二分したときに、脚ロッド26a,26bの脚前部28a,28bにおいてコンクリート41が破損することはなく、脚ロッド26a,26bの周辺におけるコンクリート補修を必要としない。
【0062】
狭窄部分30a,30bを折り、脚前部28a,28bを二分した後、
図8に示すように、二分された脚前部28a,28bのうちの脚後部27a,27bがつながる脚前部28a,28bの略下半分(ナット31を含む)と鉄板ベース13,13a,13bとを後方に移動させ、脚後部27a,27bがつながる脚前部28a,28bの略下半分と鉄板ベース13,13a,13bとを鉄筋構造材12a,12bや天井鉄筋構造材12から取り外すとともに、Pコーン16を鉄筋構造材12a,12bや天井鉄筋構造材12から取り外す。
【0063】
脚後部27a,27bがつながる脚前部28a,28bの略下半分と鉄板ベース13,13a,13bとを鉄筋構造材12a,12bや天井鉄筋構造材12から取り外すと、硬化したコンクリート41のコンクリート面が内壁面や外壁面に露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48aが完成するとともに、硬化したコンクリート41のコンクリート面が天井面に露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリートスラブ49が完成する。打設スペース42や天井鉄筋構造材12において硬化したコンクリート41は、鉄筋ブリッジ14,14a,14bおよび主鉄筋15,15a,15b(上端筋32、下端筋33、第1および第2ラチス筋34)と一体化している。
【0064】
外壁用鉄筋構造物10Aは、それが複数の第1鉄筋構造材12aと第1鉄筋構造材12aに対向する複数の第2鉄筋構造材12bとから形成され、第1鉄板ベース13a(第1板状ベース)と第2鉄板ベース13b(第2板状ベース)との間に画成された打設スペース42にコンクリート41が打設されるから、コンクリート41に曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力が作用したとしても、第1および第2鉄筋構造材12a,12bによってそれらの外力に十分に抵抗することが可能な強度を有する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48aを作ることができ、高い強度を有する頑丈な鉄筋コンクリート外壁48aを施工することができる。なお、天井鉄筋構造材12を利用することで、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリートスラブ49を施工することができる。
【0065】
外壁用鉄筋構造物10Aは、それから作られた鉄筋コンクリート外壁48aが高い強度を有するから、地震による激しい揺れや津波の水圧に十分に耐えることができ、地震による建造物の倒壊を防ぐことが可能であって津波による建造物の流失を防ぐことが可能な打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48aを施工することができる。また、第1鉄板ベース13aと第2鉄板ベース13bとの間の打設スペース42に打設されたコンクリート41が優れた遮音性と優れた耐火性とを有するから、建造物の周囲の騒音を遮断することが可能であって火災に強い打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48aを施工することができる。
【0066】
外壁用鉄筋構造物10Aは、脚ロッド26a,26bの第1および第2脚後部27a,27bにナット31を螺着することで第1および第2鉄筋ブリッジ14a,14bが第1および第2鉄板ベース13a,13bに取り付けられ、第1および第2脚前部28a,28bを折曲するように第1および第2脚後部27a,27bに力を加え、第1および第2狭窄部分30a,30bにおいて第1および第2脚前部28a,28bを二分することで、第1および第2鉄筋構造材12a,12bのうちの第1および第2脚後部27a,27bがつながる第1および第2脚前部28a,28bの略下半分と第1および第2鉄板ベース13a,13bとを取り外すことができるから、打設スペース42に打設されたコンクリート41のコンクリート面が露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48aを容易に施工することができる。
【0067】
外壁用鉄筋構造物10Aは、第1および第2主鉄筋15a,15bや第1および第2鉄筋ブリッジ14a,14bが鉄筋となり、第1および第2鉄板ベース13a,13bが型枠になるから、鉄筋の配筋作業や型枠の組立作業、型枠の取り外し作業をする必要はなく、短い工期で打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48aを構築することができるとともに、鉄筋の配筋技術や型枠の組立技術を必要とせず、鉄筋の配筋技術を備えた鉄筋工や型枠の組立技術を備えた型枠工以外の作業者でも打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48aを施工することができる。
【0068】
図11は、他の一例として示す外壁用構造物10Bの側面図であり、
図12は、コンクリート41を打設した後の
図11と同様の図である。
図13は、完成した鉄筋コンクリート外壁48bの側面図であり、
図14は、鉄筋コンクリート外壁48bの部分拡大図である。外壁用構造物10Bは、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48b(
図13参照)の施工に使用される。
【0069】
外壁用構造物10Bは、建造物の基礎11から上方へ延びていて建造物の横方向へ並ぶ複数の鉄筋構造材12と、それら鉄筋構造材12の直前に配置された複数の外断熱材50とから形成されている。鉄筋構造材12は、所定面積を有して上下方向へ延びる鉄板ベース13(板状ベース)と、鉄板ベース13の内面に配置された複数の鉄筋ブリッジ14と、鉄筋ブリッジ14に配置された主鉄筋15と、鉄筋ブリッジ14に装着されたPコーン16と(ナット31(固定手段)およびワッシャ38を含む)から形成されている(
図2〜
図5参照)。
【0070】
鉄板ベース13は、鉄筋構造材12a,12bのそれと同一であり、上下方向へ延びる両側縁部17と横方向へ延びる両端縁部18とを有するとともに、フラットな内面19およびフラットな外面20を有する。鉄板ベース13には、その内面19から前方へ凸となる複数の凸条21(凸部)が形成されている。それら凸条21は、上下方向へ延びるとともに、横方向へ所定寸法離間して並んでいる。
【0071】
鉄板ベース13には、その内外面19,20を貫通する複数の貫通孔22が穿孔されている。鉄板ベース13の一方の側縁部17には、第1係合部23が作られ、他方の側縁部17には、第2係合部24が作られている。第1係合部23や第2係合部24は、鉄板ベース13a,13bのそれらと同一である。鉄板ベース13は、一方の鉄板ベース13の第1係合部23(フック)に他方の鉄板ベース13の第2係合部24(フック)を嵌め込み、それら係合部23,24どうしを互いに係合させることで、各鉄板ベース13を横方向へつなげ、複数の鉄板ベース13を連結した状態で横方向へ並べることができる。
【0072】
それら鉄筋ブリッジ14は、鉄筋構造材12a,12bのそれと同一であり、鉄板ベース13の内面19において上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。鉄筋ブリッジ14は、鉄板ベース13の内面19から前方へ離間して横方向へ直状に延びる固定ロッド25と、固定ロッド25の両端から鉄板ベース13に向かって前後方向へ直状に延びる一対の脚ロッド26とを有する。
【0073】
脚ロッド26は、鉄板ベース13の貫通孔22に挿通されて鉄板ベース13を貫通し、鉄板ベース13の外面20から後方へ露出(延出)して前後方向へ延びる脚後部27と、鉄板ベース13の内面19から前方へ露出(延出)して前後方向へ延びる脚前部28とを有する。脚後部27には、螺子(固定手段)が形成されている。脚前部28は、鉄板ベース13の内面19と固定ロッド25との間に位置している。脚前部28の略中央には、脚前部28の残余部分29よりも厚み寸法が小さい(太さが残余部分29よりも細い)狭窄部分30が形成されている。
【0074】
脚ロッド26では、脚後部27の螺子(固定手段)にナット31(固定手段)が螺着されることで、鉄筋ブリッジ14が鉄板ベース13に取り付けられている。脚ロッド26では、その脚前部28を折曲するように脚後部27に力を加えることで狭窄部分30が折れ、それによって脚前部27を略前半分と脚後部27がつながる略後半分とに二分(略前半分と脚後部27がつながる略後半分とに分離)することができる。
【0075】
主鉄筋15は、鉄筋構造材12a,12bのそれと同一であり、鉄筋ブリッジ14に連結されて上下方向へ延びている。主鉄筋15は、1本の上端筋32と2本(一対)の下端筋33と2本(一対)の第1および第2ラチス筋34とから形成されている。上端筋32と下端筋33と第1および第2ラチス筋34とからなる主鉄筋15は、鉄筋トラスを形成している。上端筋32や下端筋33、第1および第2ラチス筋34は、鉄筋構造材12a,12bの主鉄筋15a,15bのそれらと同一である。
【0076】
Pコーン16は、脚ロッド26の脚前部28に装着され、板状ベース13の内面19と固定ロッド25との間に位置している。Pコーン16の頂部には、脚ロッド26の脚前部28に挿通されたワッシャ38が位置している。Pコーン16の内側には、脚ロッド26の脚前部28に形成された狭窄部分30が位置している。
【0077】
外断熱材50(ボード状断熱材)は、所定の厚み寸法を有するとともに、鉄板ベースと略同一の面積を有し、その平面形状が上下方向へ長い矩形に成形されている。外断熱材50は、それら鉄筋構造材12の外側(上端筋32の直前)に配置されている。外断熱材50には、押出発泡ポリスチレンフォーム(スタイロフォーム)(発泡プラスチック)が使用されている。外断熱材50には、押出発泡ポリエチレンフォームの他に、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォーム、PET樹脂発泡体等(発泡プラスチック)を使用することもできる。
【0078】
鉄筋構造材12では、脚ロッド26の脚前部28にワッシャ38を挿通するとともに、脚前部28にPコーン16を装着(挿通)し、脚ロッド26の脚前部28に形成された狭窄部分30をPコーン16の内側に位置させた後、鉄板ベース13に形成された貫通孔22に脚ロッド26の脚後部27を挿入する。貫通孔22に脚後部27を挿入すると、鉄板ベース13の外面20から後方へ脚ロッド26の脚後部27が露出し、Pコーン16の頂部がワッシャ38に当接するとともに、Pコーン16の底部が鉄板ベース13の内面19に当接する。鉄板ベース13外面20に露出する脚後部27(螺子)にナット31を螺着して鉄筋ブリッジ14を鉄板ベース13に取り付けることで、鉄筋構造材12が組み立てられる。
【0079】
外壁用鉄筋構造物10Bは、建造物の基礎11の上に設置され、基礎11に連接されている。外壁用鉄筋構造物10Bでは、鉄筋構造材12が室内側に位置し、外断熱材50が室外側に位置した状態で鉄筋構造材12が基礎11に連結されている。外壁用鉄筋構造物10Bでは、主鉄筋15の上下端筋32,33および第1および第2ラチス筋34と鉄筋ブリッジ14とが基礎11から上方へ延びる基礎鉄筋39に連結されている。基礎鉄筋39と主鉄筋15とは、結束線(図示せず)を利用して連結されている。なお、主鉄筋15の上下端筋32,33と主鉄筋15の第1および第2ラチス筋34と鉄筋ブリッジ14とのうちの少なくとも1つが基礎鉄筋11に連結されていればよい。
【0080】
外壁用鉄筋構造物10Bでは、鉄板ベース13および外断熱材50が鉄板ベース13と外断熱材50との間に位置して前後方向へ延びる複数のセパレーター40によって連結される。鉄板ベース13と外断熱材50との間には、コンクリート41を打設する打設スペース42が画成されている。それらセパレーター40は、鉄板ベース13および外断熱材50の所定の部位に穿孔されたセパ挿通孔に挿通され、鉄板ベース13および外断熱材50(鉄筋構造材12および外断熱材50)を連結している。セパレーター40の両端部には、型枠緊結金具43と丸パイプ44(単管パイプ)とPコーン45とが設置されている。丸パイプ44は、型枠緊結金具43と鉄板ベース13との間に位置するとともに、型枠緊結金具43と外断熱材50との間に位置し、型枠緊結金具43の座金46によって鉄板ベース13や外断熱材50に設置されている。
【0081】
外壁用鉄筋構造物10Bでは、互いに対向する鉄板ベース13と外断熱材50とが型枠を形成し、鉄筋ブリッジ14と主鉄筋15とが鉄筋を形成する。外壁用鉄筋構造物10Bの頂部には、L字状のアングル材47が固定手段によって固定され、アングル材47を介して水平方向へ並ぶ複数の天井鉄筋構造材12が設置されている。天井鉄筋構造材12は、外壁用鉄筋構造物10Aにおいて説明したそれと同一である。
【0082】
外壁用鉄筋構造物10Bでは、
図12に示すように、鉄板ベース13と外断熱材50との間の打設スペース42にコンクリート41が打設される。打設スペース42にコンクリート41が打設されると、鉄筋ブリッジ14および主鉄筋15(上端筋32、下端筋33、第1および第2ラチス筋34)がコンクリート41に埋没する。天井鉄筋構造材12では、鉄板ベース13の内面にコンクリート41が所定の被り寸法で打設される。鉄板ベース13の内面にコンクリート41が打設されると、鉄筋ブリッジ14および主鉄筋15(上端筋32、下端筋33、第1および第2ラチス筋34)がコンクリート41に埋没する。
【0083】
打設スペース42や天井鉄筋構造材12にコンクリート41を打設し、コンクリート41の養生期間が経過してコンクリート41が硬化した後、脚ロッド26の脚前部28を折曲するように鉄板ベース13の外面20から後方に露出(延出)する脚ロッド26の脚後部27に力を加え、脚ロッド26の脚前部28を二分する。脚後部27に力を加える手順は、外壁用鉄筋構造物10Aのそれと同一である。
【0084】
脚ロッド26の脚後部27を折曲するように脚後部27に力を加えると、脚ロッド26の脚前部28に形成された狭窄部分30が折れ、狭窄部分30において脚前部28が分かれ、脚前部28が略上半分と脚後部27がつながる略下半分とに二分(略上半分と脚後部27がつながる略下半分とに分離)される(
図7参照)。Pコーン16の内側にコンクリート41が打設されることがないから、狭窄部分30を容易に折ることができ、Pコーン16の内側に位置する狭窄部分30において脚ロッド26の脚前部28を容易に二分することができる。また、Pコーン16の内側にコンクリート41が存在せず、狭窄部分30において脚ロッド26の脚前部28を二分したときに、脚ロッド26の脚前部28においてコンクリート41が破損することはなく、脚ロッド26の周辺におけるコンクリート補修を必要としない。
【0085】
狭窄部分30を折り、脚前部28を二分した後、二分された脚前部28のうちの脚後部27がつながる脚前部28の略下半分(ナット31を含む)と鉄板ベース13とを後方に移動させ、脚後部27がつながる脚前部28の略下半分と鉄板ベース13とを鉄筋構造材12や天井鉄筋構造材12から取り外すとともに、Pコーン16を鉄筋構造材12や天井鉄筋構造材12から取り外す(
図8参照)。なお、外断熱材50の室外側に露出する外面には、モルタル(図示せず)が吹き付けられる。
【0086】
脚後部27がつながる脚前部28の略下半分と鉄板ベース13とを鉄筋構造材12や天井鉄筋構造材12から取り外すと、硬化したコンクリート41のコンクリート面が内壁面や外壁面に露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48bが完成するとともに、硬化したコンクリート41のコンクリート面が天井面に露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリートスラブ49が完成する。打設スペース42や天井鉄筋構造材12において硬化したコンクリート41は、鉄筋ブリッジ14および主鉄筋15(上端筋32、下端筋33、第1および第2ラチス筋34)と一体化している。
【0087】
外壁用鉄筋構造物10Aは、それが複数の鉄筋構造材12とそれら鉄筋構造材12の外側に配置された外断熱材50とから形成され、外断熱材50と鉄筋構造材12の板状ベース13との間の打設スペース42にコンクリート41が打設されるから、コンクリート41に曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力が作用したとしても、鉄筋構造材12によってそれらの外力に十分に抵抗することが可能な強度を有する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48bを作ることができ、高い強度を有する頑丈な鉄筋コンクリート外壁48bを施工することができる。なお、天井鉄筋構造材12を利用することで、打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリートスラブ49を施工することができる。
【0088】
外壁用鉄筋構造物10Aは、それから作られた鉄筋コンクリート外壁48bが高い強度を有するから、地震による激しい揺れや津波の水圧に十分に耐えることができ、地震による建造物の倒壊を防ぐことが可能であって津波による建造物の流失を防ぐことが可能な打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48bを施工することができる。また、外断熱材50と板状ベース13との間の打設スペース42に打設されたコンクリート41が優れた遮音性と優れた耐火性とを有するから、建造物の周囲の騒音を遮断することが可能であって火災に強い打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48bを施工することができる。
【0089】
外壁用鉄筋構造物10Aは、脚ロッド26の脚後部27にナット31を螺着することで鉄筋ブリッジ14が鉄板ベース13に取り付けられ、脚前部28を折曲するように脚後部27に力を加え、狭窄部分30において脚前部28を二分することで、鉄筋構造材12のうちの脚後部27がつながる脚前部28の略下半分と鉄板ベース13とを取り外すことができるから、打設スペース42に打設されたコンクリート41のコンクリート面が露出する打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48bを容易に施工することができる。
【0090】
外壁用鉄筋構造物10Aは、主鉄筋15や鉄筋ブリッジ14が鉄筋となり、鉄板ベース13や外断熱材50が型枠になるから、鉄筋の配筋作業や型枠の組立作業、型枠の取り外し作業をする必要はなく、短い工期で打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48bを構築することができるとともに、鉄筋の配筋技術や型枠の組立技術を必要とせず、鉄筋の配筋技術を備えた鉄筋工や型枠の組立技術を備えた型枠工以外の作業者でも打ち放しコンクリート素地仕上げの鉄筋コンクリート外壁48bを施工することができる。