(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコーンゴムが、パーオキサイド架橋型シリコーンゴム、付加架橋型シリコーンゴム、縮合架橋型シリコーンゴム、電磁波架橋型シリコーンゴム、これらの少なくとも何れかとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンゴム接合体。
前記シリコーンゴム接合基材の接合側表面と、前記非ガラス被接合基材の接合側表面とが、コロナ放電処理表面、プラズマ処理表面、紫外線処理表面、及び/又はエキシマ処理表面であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンゴム接合体。
【背景技術】
【0002】
高分子樹脂で形成された第一基材と、異種の金属、高分子樹脂、架橋ゴム、ガラス又はセラミックスで成形された第二基材とは、物理化学的性質が大きく異なり何れも粘着性や接着性を有しないため、単に接触させただけでは、接着や粘着ができない。流動性の硬化性接着剤を使用して接着した場合でも、その接着力は分子間力によるため非常に弱い。基材の材料が変われば適切な接着剤も変わるため、最適な接着剤の選定は、試行錯誤により行わなければならず、大変な手間がかかっていた。
【0003】
接着剤でこれら両基材を確実に接着するには、接着剤と両基材との濡れ性が最も重要な要因であるので、流動性の硬化性接着剤を介して両基材同士を当接させてから接着剤を硬化させることにより、行われる。
【0004】
分子間力は温度・湿度・光などの環境の影響を強く受けるため、接着剤による接着力は、環境の変化で次第に容易く低下したり消滅したりする。また、接着剤での接着の再現性が無く同一特性の接着体が得られなかったり、接着技術者の経験や能力で接着体の品質がばらついたり、乾燥や硬化の工程などでの様々な因子の制御が困難であって大量生産に向かなかったりして、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
非金属基材と金属基材とを接着剤より遥かに強く確りと接着させた積層体として、特許文献1に、非金属の表面のヒドロキシ基の脱水素残基に活性シリル基をシリルエーテル結合させた接着用非金属基材と、それを被覆する金属の表面のヒドロキシ基の脱水素残基に別な活性シリル基をシリルエーテル結合させた接着用金属基材とが、両基材の夫々の活性シリル基に結合し得る反応性基を露出させたシリコーンゴム接着剤層を挟み込みつつ、その結合によって接着している積層基板が、開示されている。
【0006】
このような積層基板の非金属基材と金属基材とは、両基材に活性シリル基をシリルエーテル結合させつつ、シリコーンゴム接着剤層を介して間接的に接着したものであるため、構成が複雑であり、多数の工程を経なければ製造できず、煩雑であるうえ、シリコーンゴム接着剤の物性による耐熱性や引張強度や剥離強度の向上が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、シリコーンゴム接合基材と被接合基材とを、従来よりも遥かに強く確りと接合させて、熱劣化が小さく耐熱性に優れ、引張られても剥がれたり裂けたりしないシリコーンゴム接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた本発明のシリコーンゴム接合体は、シリコーンゴムを含んで形成されたシリコーンゴム接合基材と
、シリカ膜、アルミナ膜、酸化チタン膜、酸化ジルコニウム膜、及び硫化亜鉛−シリカ膜から選ばれる少なくとも何れかの表面酸化物層、硫化ケイ素膜、硫化アルミニウム膜、硫化チタン膜、硫化ジルコニウム膜、及び硫化亜鉛膜から選ばれる少なくとも何れかの表面硫化物層、及び/又は、窒化ケイ素膜、窒化アルミニウム膜、窒化チタン膜、窒化ジルコニウム膜、及び窒化亜鉛膜から選ばれる少なくとも何れかの表面窒化物層を蒸着膜、スパッター膜、イオンプレティング膜、及び/又は化学気相沈積膜として有し、若しくは基材素材に前記酸化物、前記硫化物及び/又は前記窒化物の粒子を含有することにより接合側表面に酸化物、硫化物及び/又は窒化物を露出させており非ガラス素材で形成された被接合基材とが
、前記シリコーンゴム接合基材の表面の反応性官能基と前記酸化物、前記硫化物及び/又は前記窒化物の表面の反応性官能基との直接的な
共有結合によって、接合されている。
【0010】
このシリコーンゴム接合体は、前記シリコーンゴム接合基材と、前記非ガラス被接合基材とが、共有結合によって、前記結合をしているものであってもよい。
【0011】
このシリコーンゴム接合体は、前記非ガラス被接合基材が、表面酸化物層、表面硫化物層及び/又は表面窒化物層を有し、若しくは基材素材に前記酸化物、前記硫化物及び/又は前記窒化物を含有するものであってもよい。
【0012】
このシリコーンゴム接合体は、前記表面酸化物層が、シリカ膜、アルミナ膜、酸化チタン膜、酸化ジルコニウム膜、及び硫化亜鉛−シリカ膜から選ばれる少なくとも何れかであり、前記表面硫化物層が硫化ケイ素膜、硫化アルミニウム膜、硫化チタン膜、硫化ジルコニウム膜、及び硫化亜鉛膜から選ばれる少なくとも何れかであり、前記表面窒化物層が、窒化ケイ素膜、窒化アルミニウム膜、窒化チタン膜、窒化ジルコニウム、及び窒化亜鉛から選ばれる少なくとも何れかであることが好ましい。
【0013】
このシリコーンゴム接合体は、前記表面酸化物層、前記表面硫化物層及び/又は前記表面窒化物層が、例えば蒸着膜、スパッター膜、イオンプレティング膜、及び/又は化学気相沈積膜であるというものである。
【0014】
このシリコーンゴム接合体は、前記シリコーンゴムが、例えばパーオキサイド架橋型シリコーンゴム、付加架橋型シリコーンゴム、縮合架橋型シリコーンゴム、電磁波架橋型シリコーンゴム、これらの少なくとも何れかとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物であるというものである。電磁波架橋型シリコーンゴムは、例えば、エキシマ架橋型を包含する紫外線架橋型シリコーンゴム、電子線架橋型やγ線架橋型やX線架橋型を包含する放射線架橋型シリコーンゴムである。
【0015】
このシリコーンゴム接合体は、前記非ガラス素材が、例えば金属、高分子樹脂、架橋ゴム、セラミックスであるというものである。
【0016】
このシリコーンゴム接合体は、前記シリコーンゴム接合基材の接合側表面と、前記非ガラス被接合基材の接合側表面とが、コロナ放電処理表面、プラズマ処理表面、紫外線処理表面、及び/又はエキシマ処理表面であると、好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシリコーンゴム接合体は、シリコーンゴム接合基材と、接合側表面に酸化物層や硫化物層や窒化物層を有したり酸化物や硫化物や窒化物を含有したりしている非ガラス素材製の被接合基材とが、夫々の素材や物性等に依らず、流動性の硬化性接着剤を用いなくとも、直接的な結合によって強固に架橋して接合されたものである。
【0018】
シリコーンゴム接合体は、シリコーンゴム接合基材と、金属、高分子樹脂、架橋ゴム、セラミックス等で成形された被接合基材との夫々の接合側表面上に露出した反応性官能基同士が、直接的な共有結合、例えば反応性官能基がヒドロキシ基の場合にエーテル結合を形成することにより、接合基材と被接合基材とが、接合したものである。
【0019】
シリコーンゴム接合体は、共有結合のような直接的な結合により、シリコーンゴム接合基材と異種の金属、高分子樹脂、架橋ゴム、セラミックス等の被接合基材とを強固に接合しているから、剥離を生じない。また、シリコーンゴム接合体は、流動性の硬化性接着剤に依らずに、接合基材と被接合基材との間で、直接結合を介するだけで接合しているので、その接合面でそれらの混合物がはみ出たりそれの硬化物層で剥離したりする恐れがない。しかも接合基材と被接合基材とが、平面であっても複雑な立体形状であっても、強固に接合されている。
【0020】
このシリコーンゴム接合体は、シリコーンゴム接合基材と被接合基材との直接的な結合により、流動性の硬化性接着剤の分子間力による接着よりも、遥かに強く確りと、両基材を接合しているというものである。
【0021】
そのためシリコーンゴム接合体は、接合界面が直接的な結合だけであるから、接合界面での熱劣化が小さく耐熱性に優れ、引張られても剥がれたり裂けたりしない。
【0022】
このシリコーンゴム接合体は、生産性が高く、簡素な工程でも精密に、大量製造が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の好ましい形態のシリコーンゴム接合体は、シリコーンゴムを含んで形成されたシリコーンゴム接合基材と、接合側表面に酸化物層を有することにより酸化物分子又は粒子を露出させており非ガラス素材例えば高分子樹脂素材で形成された被接合基材とが、シリコーンゴム接合基材上の反応性官能基であるヒドロキシ基と酸化物層の酸化物の露出分子又は粒子上の反応性官能基であるヒドロキシ基との脱水反応による直接的なエーテル結合によって、化学的に接合されているというものである。
【0025】
例えば、シリコーンゴム接合基材の下面が予めコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、又はエキシマ処理のような表面活性化処理が施され、被接合基材の上面が予めコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、又はエキシマ処理のような表面活性化処理が施されることによって、それらの接合側表面にヒドロキシ基が反応性官能基として新たに生成されて増幅されつつ露出している。接合基材の接合側表面と被接合基材の接合側上面とが、両部材の重ね合わせによって接触すると、両基材上の夫々の反応性官能基であるヒドロキシ基同士が脱水により直接的なエーテル結合を形成し、両基材が化学的に結合する。酸化物層に代えて、硫化物層や窒化物層やこれら層の混合層であってもよい。シリコーンゴム接合基材は、平面形状でも複雑な立体形状であってもよく、例えばブロック、板、シート、フィルム、角棒、丸棒、球、半球、繊維、網などの形状が挙げられ、如何なる形状でも被接合基材と強固に接着される。
【0026】
一方、被接合基材は、非ガラス素材製であれば特に限定されず、高分子樹脂素材の他、金属、高分子樹脂、架橋ゴム、セラミックスが挙げられる。
【0027】
この被接合基材の素材の金属として、金属分類上は通常の金属、機能性金属、アモロファス金属、繊維強化金属ブロック、形状記憶合金、超弾性合金などからなり、金属形状分類上は板、シート、フィルム、角棒、丸棒、球、半球、繊維、網、網線布、フィルム、シート及びこれらの複雑回路形状、打抜き及び切削加工成形品を含み、周期律表上はベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、ネオジムの何れかであり、合金組成上は鉄合金(鋼(スチール)、炭素鋼、鋳鉄)、銅合金(りん青銅、黄銅、キュプロニッケル、ベリリウム銅、チタン銅)、アルミニウム合金(銅、マンガン、珪素、マグネシウム、亜鉛、ニッケル合金など)、マグネシウム合金(Mg/Zn合金、Mg/Ca合金など)、亜鉛合金、錫及び錫合金、ニッケル合金、金合金、銀合金、白金合金、パラジウム合金、鉛合金、チタン合金(α型、β型及びα+β型合金)、カドミウム、ジルコニウム合金、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金、マンガン合金、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、オースチナイト系ステンレス、析出強化型ステンレス、ニッケル−チタン合金、鉄−マンガン−チタン合金、超弾性合金(ニッケル−チタン合金)などの材料が、挙げられる。被接合基材は、平面形状でも複雑な立体形状であってもよく、如何なる形状でもシリコーンゴム接合基材と強固に接着される。
【0028】
この被接合基材の素材の高分子樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート;ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、およびシリコーン(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル樹脂;前記と同様な付加架橋型シリコーン;ビニルメチルシリコーン(VMQ)、メチルフェニルシリコーン(PVMQ)、フルオロメチルシリコーン(FVMQ)、及びジメチルシリコーン(MQ)のようなシリコーン、パーオキサイド架橋型シリコーン、縮合架橋型シリコーン、紫外線架橋型シリコーン、電子線架橋型シリコーンゴムで例示されるシリコーン、これらのシリコーンとオレフィンとの共ブレンド物が挙げられる。
【0029】
この被接合基材の素材の架橋ゴムとして、天然ゴム、1,4−シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレンオキサイド−エピクロロヒドリン共重合体ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンなどの単独重合体ゴム及びこれらの二元及び三元共重合体ゴム、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、エチレンアクリルゴム、エポキシゴム、ウレタンゴムが挙げられる。
【0030】
この被接合基材の素材のセラミックスとして、陶磁器、ガラス、セメント、石膏及びほうろうなど高温で固めたものであり、組成上は元素系(ダイヤモンド、C)、酸化物系(アルミナ、Al
2O
3)、ジルコニア系、水酸化物系(ハイドロキシアパタイト)、炭化物系(炭化ケイ素、SiC)、炭酸塩系、窒化物系(窒化ケイ素)(7ハロゲン化物系(蛍石)、リン酸塩系(アパタイト)も含み、具体的にはチタン酸バリウム、Bi
2Sr
2Ca
2Cu
3O
10、高温超伝導セラミックス、窒化ホウ素、フェライト、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ステアタイト(MgOSiO
2)、YBa
2Cu
3O
7−δ、高温超伝導セラミックス、酸化亜鉛、チッ化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、チッ化ケイ素(Si
3N
4)、フォルステライト(2MgO・SiO
2)、ステアタイト(MgO・SiO
2)、コーディエライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)、サイアロン(Si
3N
4・Al
2O
3)、マシナブルセラミックス、ジルコン(ZrO
2・SiO
2)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3)、フェライト(M
2O・Fe
2O
3)、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2)などが挙げられ、ブロック、板、シート、フィルム、角棒、丸棒、球、半球、繊維、網などの形状や、繊維強化セラミックス及び炭素繊維強化炭素などの複合材料も含む。
【0031】
被接合基材は、素材中に、金属酸化物又は半金属酸化物である酸化物や硫化物や窒化物を含有することにより、これら酸化物や硫化物や窒化物の分子又は粒子が接合側表面に露出したものであってもよい。また、被接合基材は、被接合体基材中の基板表面上に、金属酸化物層、半金属酸化物層、及び金属酸化物・半金属酸化物混合物層のような酸化物層;金属硫化物層、半金属硫化物層、及び金属硫化物・半金属硫化物混合物層のような硫化物層;金属窒化物層、半金属窒化物層、及び金属窒化物・半金属窒化物混合物層のような窒化物層;これら金属酸化物、半金属酸化物、金属硫化物、半金属硫化物、金属窒化物、半金属窒化物の少なくとも2種の混合物のような混合物含有層を有するものであってもよい。このような酸化物層として、金属酸化物アルミナ、チタニア、ジルコニアが挙げられ、半金属酸化物として、シリカが挙げられる。Al
2O
3とSiO
2及びZnSとSiO
2との混合物からなる酸化物層であってもよい。それらの金属及び/又は半金属は、同種単一であってもよく複数種であってもよい。
【0032】
シリコーンゴム接合体は、被接合基材自体に酸化物や硫化物や窒化物が含有され、又は被接合体基材中の基板上に表面酸化物層や表面硫化物層や表面窒化物層が付されていることによって酸化物や硫化物や窒化物が露出されていると、酸化物や硫化物や窒化物が無い場合よりも、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、又はエキシマ処理のような表面活性化処理が施されることによって、それらの接合側表面にヒドロキシ基が反応性官能基として新たに生成及び増幅することが容易に可能であるから生産性が高く、簡素な工程でも精密に大量製造が可能である。
【0033】
被接合基材自体に酸化物や硫化物や窒化物が含有されている場合、酸化物や硫化物や窒化物として、銀、銅、鉄、コバルト、シリコーン、鉛、マンガン、タングステン、タンタル、白金、カドミウム、スズ、パラジウム、ニッケル、クロム、インジウム、チタン、亜鉛、カルシウム、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの金属の酸化物や硫化物や窒化物;ケイ素のような半金属の酸化物や硫化物や窒化物;それら金属の窒化物又は半金属の窒化物と同一又は異なる金属の酸化物又は半金属の酸化物との混合物;それら金属の硫化物又は半金属の硫化物と同一又は異なる金属の酸化物又は半金属との混合物が挙げられる。より好ましい具体例として、シリカ膜としてSiO
2膜、アルミナ膜としてAl
2O
3膜、酸化チタン膜としてTiO
2膜、酸化ジルコニウム膜としてZrO
2膜、硫化亜鉛−シリカ膜としてZnS−SiO
2膜、硫化ケイ素膜としてSiS膜やSiS
2膜、硫化アルミニウム膜としてAl
2S
3膜、硫化チタン膜としてTi
2S膜やTiS膜やTi
2S
3膜やTiS
2膜やTiS
3膜、硫化ジルコニウム膜としてZrS
2膜、硫化亜鉛膜としてZnS膜、窒化ケイ素膜としてSi
2N
3膜やSiN膜やSi
3N
4膜、窒化アルミニウム膜としてAlN膜、窒化チタン膜としてTiN膜やTi
3N
4膜、窒化ジルコニウムとしてZrN膜やZr
3N
2膜、及び窒化亜鉛としてZn
3N
2膜で表わされるものが挙げられる。
【0034】
被接合基材は、表面酸化物層を有するものとして、ガス透過性を低減するためにSiO
2(シリカ)蒸着、Al
2O
3(アルミナ)蒸着、ZrO
2蒸着、又はZnS−SiO
2蒸着した市販の非ガラス素材が挙げられる。より具体的には、金属、高分子樹脂、架橋ゴム、セラミックスの基板上に、これらシリカ蒸着又はアルミナ蒸着等をしたものが挙げられる。より具体的には、ベースフィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリアミドフィルムにシリカ蒸着膜を形成したテックバリア(三菱樹脂株式会社製、商品名)例えばテックバリアVX(ベースフィルムがPETフィルム)やテックバリアAX(ベースフィルムがPETフィルム)、PETフィルムやポリアミドフィルムにシリカ蒸着膜(CVD)を形成したIBフィルム(大日本印刷株式会社製、商品名)、ポリエステルフィルムにセラミック(シリカ/アルミナ)蒸着膜を形成したエコシアール(東洋紡株式会社製、商品名)、ポリエステルにシリカ/アルミナ蒸着膜を形成したエコシアールVE706(東洋紡株式会社製、商品名)、ベースフィルムがPET,ONYであるGLフィルム(凸版印刷株式会社、商品名)、シリカ/アルミナ蒸着膜を形成した透明蒸着バリアフィルムMOS(尾池工業株式会社製、商品名)、透明蒸着フィルムファインバリヤー(株式会社麗光社製、商品名)などが挙げられる。
【0035】
被接合基材は、表面酸化物層や表面硫化物層や表面窒化物層を蒸着する場合、CVD法(Chemical Vapor Deposition、化学蒸着法)、PE−CVD法(Plasma enhanced CVD)が用いられる。例えば、石英などで出来た反応管内で加熱した基板物質上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。熱CVD−熱による分解反応や化学反応を利用する方式や、プラズマCVD−プラズマを用いて原料ガスの原子や分子を励起・反応させる方式であってもよい。このような蒸着法は、高真空を必要としないため、製膜速度や処理面積に比して装置規模を小さくでき経済的であるというメリットがある。しかも、製膜速度が速く、処理面積も大きくできる。このため大量生産に向いており、凹凸のある表面でも満遍なく製膜できるばかりか、基板表面と供給する気相の化学種を選ぶことで、基板表面の特定の部位にだけ選択的に成長することが可能であるという特長を有している。
【0036】
被接合基材は、表面酸化物層や表面硫化物層や表面窒化物層を別な方法で蒸着する場合、PVD法(Physical Vapor Deposition、物理蒸着法)であってもよい。気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する方法である。具体的には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法が挙げられる。
【0037】
表面酸化物層や表面硫化物層や表面窒化物層は、蒸着膜の他、前記の金属の酸化物層や硫化物層や窒化物層又は半金属の酸化物層や硫化物層や窒化物層として、スパッター膜、イオンプレティング膜、化学気相沈積膜であってもよい。
【0038】
一方、シリコーンゴム接合基材は、シリコーンゴムを含む素材で予め形成されている。シリコーンゴム接合基材は、例えば三次元化シリコーンゴム弾性基材であり、具体的には、主としてパーオキサイド架橋型シリコーンゴム、付加架橋型シリコーンゴム、縮合架橋型シリコーンゴム、紫外線架橋型シリコーンゴム、電子線架橋型シリコーンゴムで例示されるシリコーンゴム、これらのシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物を、成形金型等に入れて、架橋させることにより、製造された立体的なシリコーンゴム弾性体である。
【0039】
シリコーンゴム接合基材の素材のパーオキサイド架橋型シリコーンゴムは、パーオキサイド系架橋剤で架橋できるシリコーン原料化合物を用いて合成されたものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリジメチルシロキサン(分子量:50万〜90万)、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万〜90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万〜20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜5万)、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万〜1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサン、メタアクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、(メタアクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0040】
パーオキサイド系架橋剤として、例えばケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類が挙げられ、より具体的には、ケトンパーオキサイド、ペルオキシケタール、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシエステル、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(ジシクロベンゾイル)パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン、ベンゾフェノン、ミヒラアーケトン、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンゾインエチルエーテルが挙げられる。
【0041】
パーオキサイド系架橋剤の使用量は、得られるシリコーンゴムの種類や、そのシリコーンゴムで成形されたシリコーンゴム接合基材に接着する被接合基材の素材の性質や性能に応じて適宜選択されるが、シリコーンゴム100部に対し、0.01〜10部、好ましくは0.1〜2部用いられることが好ましい。この範囲よりも少ないと、架橋度が低すぎてシリコーンゴムとして使用できない。一方、この範囲よりも多いと、架橋度が高すぎてシリコーンゴムの弾性が低減してしまう。
【0042】
シリコーンゴム接合基材の素材の付加型シリコーンゴムは、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:50万〜90万)、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1万〜20万)、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜5万)、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー(分子量:1万〜10万)、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン(分子量:0.1万〜1万)、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン(分子量:0.05万〜10万)、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーのようなH基含有ポリシロキサンの組成物、 アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサンのようなアミノ基含有ポリシロキサンと、エポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなエポキシ基含有ポリシロキサン、琥珀酸無水物末端ポリジメチルシロキサンのような酸無水物基含有ポリシロキサン及びトルイルジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート基含有化合物との組成物から得られるものである。
【0043】
これらの組成物から付加型シリコーンゴムを調製する加工条件は、付加反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜200℃で、1分〜24時間加熱するというものである。これによりシリコーンゴム接合基材として付加型シリコーンゴムが得られる。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0044】
シリコーンゴム接合基材の素材の縮合型シリコーンゴムは、スズ系触媒又は亜鉛系触媒の存在下で合成されたシラノール末端ポリジメチルシロキサン(分子量:0.05万〜20万)、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフロロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーのようなシラノール基末端ポリシロキサンからなる単独縮合成分の組成物;これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、テトラアセトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、ジt−ブトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエノキシメチルシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ‐n−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、ビニルトリイソプロペノイキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリ(エチルメチル)オキシムメチルシラン、ビス(N−メチルベンゾアミド)エトキシメチルシラン、トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、トリアセトアミドメチルシラン、トリジメチルアミノメチルシランのような架橋剤との組成物;これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、クロル末端ポリジメチルシロキサン、ジアセトキシメチル末端ポリジメチルシロキサン、末端ポリシロキサンのような末端ブロックポリシロキサンの組成物から得られるものである。
【0045】
これらの組成物からシリコーンゴム接合基材を調製する加工条件は、縮合反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜200℃で、10分〜24時間加熱するというものである。これによりシリコーンゴム接合基材として縮合型シリコーンゴムが得られる。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0046】
シリコーンゴム接合基材の素材のシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物に用いられるオレフィン系ゴムは、1,4−シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴムが挙げられる。
【0047】
シリコーンゴム接合基材は、弾性体としての補強性、導電性、熱伝導性、耐摩耗性、耐紫外線、耐放射線、耐熱性、耐候性、柔軟性、抗菌性などの機能を高めるために機能性添加剤を添加したり、増量させたりするために機能性充填剤が添加されていてもよい。
【0048】
シリコーンゴム接合体は、シリコーンゴム接合基材の接合側表面と非ガラス被接合基材の接合側表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理又はエキシマ処理のような表面活性処理が施されることによって、それらの接合側表面にヒドロキシ基が反応性官能基として新たに生成されて増幅されつつ露出している。接合基材の接合側表面と被接合基材の接合側表面とが、両部材の重ね合わせによって接触し、プレスで温度、圧力を掛け圧着すると、両基材上の夫々の反応性官能基であるヒドロキシ基同士が脱水により直接的なエーテル結合を形成し、両基材が化学的に結合することによって製造される。
【0049】
シリコーンゴム接合体は、スイッチキー形状のシリコーンゴム接合基材と非ガラス被接合基材をベースシートとし接合したコンタクトスイッチやシリコーンゴム接合基材と非ガラス被接合基材をシート状に接合したプレス加工時のクッションのようにして使用される。
【0050】
シリコーンゴム接合体は、シリコーンゴム接合基材と被接合基材とを強固に接合するため、両基材の接合側表面上に十分な濃度の反応性官能基であるヒドロキシ基を生成させたり、僅かに生成したヒドロキシ基を利用して他方のヒドロキシ基との反応性基濃度を増幅させたりする必要がある。特に、両方の有機基結合性ヒドロキシ基と反応する官能基を導入したりしてもよい。
【0051】
シリコーンゴム接合基材や被接合基材の接合側表面上に十分な濃度の反応性官能基を生成させるために、例えば、接合し合うそれらのシリコーン接合基材や被接合基材の少なくとも一方に、コロナ放電処理やプラズマ処理や紫外線照射処理やエキシマ処理のような表面活性化処理を施すと、その接合側表面で、有機又は無機材料上に、高反応性の反応性基、例えばヒドロキシ基を生成して、元来のヒドロキシ基と新たに形成されたヒドロキシ基とが露出して点在する点在ヒドロキシ基を、接合面に有することとなる。必要に応じシリコーンゴム接合基材や被接合基材の両方に表面活性化処理を施すと、その接合側表面で、有機基又は無機分子が高反応性の反応性基、例えばヒドロキシ基を生成する結果、元来のヒドロキシ基と新たに形成されたヒドロキシ基とが点在して露出したヒドロキシ基を、接合側表面に有することになる。それら基材を当接させると、それらシロキサン化合物が共有結合によってシリコーンゴム接合基材と被接合基材とを直接、エーテル結合によって接合され、シリコーンゴム接合体が得られる。
【0052】
シリコーンゴム接合基材と被接合基材とを接合する際、それらの接合面がコロナ放電処理やプラズマ処理や紫外線照射処理やエキシマ処理のような表面活性化処理されて、常圧で重ねられた後、常圧下のまま共有結合させてもよいが、減圧下又は加圧下で共有結合させてもよい。両基材同士のヒドロキシ基のような反応活性基の接近は、減圧乃至真空条件下、例えば50torr以下、より具体的には50〜10torrの減圧条件、又は10torr未満、より具体的には、10torr未満〜1×10
−3torr、好ましくは10torr未満〜1×10
−2torrの真空条件下で、その接触界面の気体媒体を除去することによって、又はその接触界面に応力(荷重)、例えば10〜200kgfを加えることによって、さらに接触界面を加熱することによって、促進される。
【0053】
シリコーンゴム接合基材と被接合基材との接合側表面に施す処理は、例えばコロナ放電処理が挙げられる。コロナ放電処理としては、例えば大気圧コロナ表面改質装置(信光電気計測株式会社製、製品名:コロナマスター)を用いて、例えば、電源:AC100V、出力電圧:0〜20kV、発振周波数:0〜40kHzで0.1〜60秒、温度0〜60℃の条件で行われる。このようなコロナ放電処理は、水、アルコール類、アセトン類、エステル類等で濡れている状態で、行われてもよい。
【0054】
シリコーンゴム接合基材と被接合基材との接合側表面を活性化させるのに施す処理は、大気圧プラズマ処理及び/又は紫外線照射処理(UV照射によりオゾンを生成させるような一般的なUV処理やエキシマUV処理)であってもよい。
【0055】
大気圧プラズマ処理としては、例えば、大気圧プラズマ発生装置(パナソニック株式会社製、製品名:Aiplasma)を用いて、例えば、プラズマ処理速度10〜100mm/s,電源:200又は220V AC(30A)、圧縮エア:0.5MPa(1NL/min)、10kHz/300W〜5GHz、電力:100W〜400W、照射時間:0.1〜60秒の条件で行われる。
【0056】
紫外線照射処理としては、エキシマランプ光源(浜松ホトニクス株式会社製、製品名:L11751−01)を用いて、例えば、積算光量:50〜1500mJ/cm
2で行われる。
【実施例】
【0057】
本発明を適用する実施例のシリコーンゴム接合体の接合サンプルと、本発明を適用外の比較例のシリコーンゴム接合体の接着サンプルとを、以下のようにして作製し、その物性について評価した。
【0058】
(実施例1)
ベースポリマーとしてKE961U(信越化学工業株式会社製;商品名)の100質量部と、加硫剤としてC−8A(信越化学工業株式会社製;商品名)0.5質量部とを、二本ロールで混練し、170℃で10分間プレス加硫した後、200℃で4時間二次加硫し、シリコーンゴムを含んで形成されたシリコーンゴム接合基材として、厚さ2mmのゴムシートを作製した。それを60mm×15mmにカットした。
【0059】
接合側表面に酸化物を露出させており非ガラス素材で形成された被接合基材として、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製テックバリアVX、t=12μm)/2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)/絶縁PETフィルム(三菱樹脂株式会社製ダイアホイル、t=85μm)であるシリカ蒸着PETフィルムを用いた。それを60mm×20mmにカットした。
【0060】
得られたゴムシートの接合面側に、コロナ放電処理装置であるコロナマスター(信光電気計測株式会社製;商品名)を用い、電圧設定15kV,コロナ処理ギャップ長0.5mm、コロナスピード100mm/秒、処理回数3回の条件でコロナ放電処理し、その接合面側の表面を改質した。一方、シリカ蒸着PETフィルムの接合面側であるシリカ蒸着面に、コロナマスターを用い、電圧設定15kV,コロナ処理ギャップ長0.5mm、コロナスピード30mm/秒、処理回数5回の条件でコロナ放電処理し、その接合面側の表面を改質した。ゴムシートの接合面側とシリカ蒸着PETフィルムの接合面側(シリカ蒸着面側)との表面改質面同士を貼り合わせ、80℃で120秒間、エアー設定圧力0.1MPaで圧着し、1ショット当たり4枚の実施例1の試験サンプルを作製した。
【0061】
(比較例1)
実施例1のシリカ蒸着PETフィルムに代えて、シリカ蒸着していないPETフィルムであるルミラーS10(t=100μm)(東レ株式会社製;商品名)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、1ショット当たり4枚の比較例1の試験サンプルを作製した。
【0062】
(比較例2)
実施例1のシリカ蒸着PETフィルムに代えて、ルミラーS10(t=100μm)(東レ株式会社製;商品名)を用いたことと、圧着に際し表面改質したPETフィルムにシリコーン系接着剤SE9186L RTV(東レダウコーニング株式会社製;商品名)を塗布し、両シートを貼り合わせて圧着したこと以外は、実施例1と同様にして、1ショット当たり4枚の比較例2の試験サンプルを作製した。
【0063】
(接着評価試験:初期での接着強度)
実施例1及び比較例1〜2で得られた試験サンプルに対し、接着評価測定器としてデジタルフォースゲージZP−200N(IMADA社製;商品名)を用い、引張速度100mm/分、剥離角度180°で、接着評価試験を行った。その試験の結果、ゴム破断で100%ゴム被覆率のものを○、部分剥離で20〜50%ゴム被覆率のものを△、完全剥離のものを×とする3段階で評価した。その結果を、表1に示す。
【0064】
(接着評価試験:煮沸処理後の接着強度)
実施例1及び比較例1〜2で得られた試験サンプルに対し、水道水を用いて、98℃で15時間、煮沸処理した後、前記と同様に、接着強度を測定した。その結果を、表1に示す。
【0065】
(接着評価試験:耐湿度試験後の接着強度)
実施例1及び比較例1〜2で得られた試験サンプルに対し、85℃、85%RHで192時間、静置した後、前記と同様に、接着強度を測定した。その結果を、表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から明らかな通り、実施例1のようにシリコーンゴム接合基材であるシリコーンゴムシートと、接合側表面にシリカ蒸着したPETフィルムである被接合基材とが、貼り合わされていると、シリコーンゴムシートの表面の反応性官能基と、PETフィルムの表面のシリカの反応性官能基との直接的な結合によって、強固に化学的に接合されるので、初期、煮沸処理後、耐湿度試験後の何れの接着強度も、非常に強かった。それに対し、比較例1のようにシリコーンゴムシートと、シリカ非蒸着のPETフィルムとが、直に貼り合わされても、化学的に接合し難いので、初期、煮沸処理後、耐湿度試験後の何れの接着強度も、極めて弱かった。一方、比較例2のようにシリコーンゴムシートと、シリカ非蒸着のPETフィルムとが、シリコーン系接着剤で貼り合わされると、初期での接着強度が強いが、短期の煮沸処理後、接着強度が低下し、長期の耐湿度試験後、接着強度が極めて悪化した。