特許第6828907号(P6828907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828907有機基材の透過率向上方法および透過率向上被覆膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828907
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】有機基材の透過率向上方法および透過率向上被覆膜
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20210128BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20210128BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   G02B1/111
   B05D5/06 F
   B05D7/24 302B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-542978(P2018-542978)
(86)(22)【出願日】2017年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2017035743
(87)【国際公開番号】WO2018062556
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-192343(P2016-192343)
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315018565
【氏名又は名称】株式会社グローバルアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】岩田 修司
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−539550(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/095123(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/111
B05D 7/24
C09D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明乃至半透明の有機基材の透過率を向上する方法であって、
前記有機基材に被覆液を塗布し乾燥させるステップと、
前記被覆液の塗布膜を所定の乾燥膜厚に形成させるステップ、
を備え、
前記被覆液は
その主成分が、a)1−メトキシ−2−プロパノール及び環状エーテルの少なくとも一種の有機化合物、b)非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物、c)メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール及びn−プロピルアルコールの群から選択される少なくとも一種のアルコール、であり、
組成比で5〜25%の水を含有し、
硼酸塩と硝酸塩の少なくとも一種の無機化合物、或は、アルカリ土類金属塩を有し、
上記a)の1−メトキシ−2−プロパノールまたは環状エーテルの有機化合物において、1−メトキシ−2−プロパノールの組成比は30%以下で、環状エーテルの組成比は3%以下であり、
上記b)の非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物において、1種または2種合算の組成比は1〜6%であり、
上記c)のメタノール,エタノール,イソプロピルアルコール及びn−プロピルアルコールの群から選択される少なくとも一種のアルコールにおいて、メタノールの組成比は5〜45%であり、エタノールの組成比は35%以下であり、イソプロピルアルコールの組成比は40%以下であり、n−プロピルアルコールの組成比は30%以下であり、
前記有機基材の少なくとも片面に塗布して形成される乾燥膜は二酸化ケイ素微粒子の集合体により構成された膜であり、空気の微小な空間が存在し、乾燥膜厚が45〜200nmの範囲であり、前記被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて1.5%以上高いことを特徴とする有機基材の透過率向上方法。
【請求項2】
透明乃至半透明の有機基材の透過率を向上する方法であって、
前記有機基材に被覆液を塗布し乾燥させるステップと、
前記被覆液の塗布膜を所定の乾燥膜厚に形成させるステップ、
を備え、
前記被覆液は、
その主成分が、a)1−メトキシ−2−プロパノール及び環状エーテルの少なくとも一種の有機化合物、b)非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物、c)メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール及びn−プロピルアルコールの群から選択される少なくとも一種のアルコール、であり、
組成比で5〜25%の水を含有し、
硼酸塩と硝酸塩の少なくとも一種の無機化合物、或は、アルカリ土類金属塩を有し、
上記a)の1−メトキシ−2−プロパノールまたは環状エーテルの有機化合物において、1−メトキシ−2−プロパノールの組成比は30%以下で、環状エーテルの組成比は3%以下であり、
上記b)の非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物において、1種または2種合算の組成比は1〜6%であり、
上記c)のメタノール,エタノール,イソプロピルアルコール及びn−プロピルアルコールの群から選択される少なくとも一種のアルコールにおいて、メタノールの組成比は5〜45%であり、エタノールの組成比は35%以下であり、イソプロピルアルコールの組成比は40%以下であり、n−プロピルアルコールの組成比は30%以下であり、
前記有機基材の両面に塗布して形成される2つの乾燥膜は、共に二酸化ケイ素微粒子の集合体により構成された膜であり、空気の微小な空間が存在し、各面の乾燥膜厚の平均値は50〜200nmの範囲であり、前記被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて3%以上高いことを特徴とする有機基材の透過率向上方法。
【請求項3】
透明乃至半透明の有機基材に被覆された被覆膜であって、
前記被覆膜の主成分は、
A)1−メトキシ−2−プロパノール及び環状エーテルの少なくとも一種の有機化合物、
B)非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物、
であり、
前記被覆膜は、硼酸塩と硝酸塩の少なくとも一種の無機化合物、或は、アルカリ土類金属塩を有し、
上記A)の1−メトキシ−2−プロパノールまたは環状エーテルの有機化合物において、1−メトキシ−2−プロパノールの組成比は80%以下であり、環状エーテルの組成比は8%以下であり、
上記B)の非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物において、1種または2種合算の組成比は3〜20%であり、
前記有機基材の片面に塗布して形成される乾燥膜は、二酸化ケイ素微粒子の集合体により構成された膜であり、空気の微小な空間が存在し、乾燥膜厚は45〜200nmの範囲であり、
前記被覆膜が被覆された前記有機基材の透過率は、前記被覆膜が無い場合の透過率と比べて1.5%以上高いことを特徴とする有機基材の透過率向上被覆膜。
【請求項4】
透明乃至半透明の有機基材に被覆された被覆膜であって、
前記被覆膜の主成分は、
A)1−メトキシ−2−プロパノール及び環状エーテルの少なくとも一種の有機化合物、
B)非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物、
であり、
前記被覆膜は、硼酸塩と硝酸塩の少なくとも一種の無機化合物、或は、アルカリ土類金属塩を有し、
上記A)の1−メトキシ−2−プロパノールまたは環状エーテルの有機化合物において、1−メトキシ−2−プロパノールの組成比は80%以下であり、環状エーテルの組成比は8%以下であり、
上記B)の非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物において、1種または2種合算の組成比は3〜20%であり、
前記有機基材の両面に塗布して形成される乾燥膜は、二酸化ケイ素微粒子の集合体により構成された膜であり、空気の微小な空間が存在し、それぞれの乾燥膜厚の平均値が50〜200nmであり、
前記被覆膜が被覆された前記有機基材の透過率は、前記被覆膜が無い場合の透過率と比べて3以上高いことを特徴とする有機基材の透過率向上被覆膜。

【請求項5】
請求項1又は2の透過率向上方法に用いる上記の被覆液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明デバイスやディスプレイデバイスにおいて光利用効率を向上させるために、有機化合物と無機化合物をベースにした液剤を有機基材に塗布して透過率を向上させる方法と、有機基材の透過率を向上させる被覆膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、照明デバイスやディスプレイデバイスにおいては、消費電力を削減することが大きな課題である。低消費電力化の有効な手段として、照明デバイスやディスプレイデバイスを構成する透明部材や半透明部材の防汚性と透過率を高めることが有効である。
特に、照明デバイスでは、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエステル樹脂など耐有機溶媒性が低い有機基材が、透明部材や半透明部材に用いられる。
【0003】
従来は、有機基材に被覆液を塗布する前にプライマーを塗布してプライマー層を形成させた後、プライマー層の上に被覆液を塗布するやり方が一般的であるが、被覆液が有機基材を直接的に被覆しておらず、有機基材と被覆液の密着強度が低いといった問題がある。
プライマー層の形成を必要とすることなく、有機基材に対する密着性を高め、防汚性を高める有機基材用防汚剤として、メタノール又はエタノールと、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール又はグリコールエーテルと、テトラヒドロフランと、ホウ酸を含有する防汚剤が知られている(特許文献1を参照)。
特許文献1に開示された防汚剤は、アルコールベースの透明液体であり、常温乾燥後、無色透明な無機硬化塗膜を形成する。そして、アルコールが有機基材の表面に接触することにより、基材の最表面で膨潤、一部溶解が生じて、基材にシリカが潜り込み、基材表面に密着性のよい親水性被膜を形成する(特許文献1の図1を参照)。しかし特許文献1には、防汚性と密着性について開示があるものの、透過率については言及されていない。
【0004】
また、水を含むアルカリ性コロイダルシリカと、リン酸ナトリウム化合物或いはリン酸カリウム化合物の単体又は混合物と、ホウ酸を含む水性無機コート剤が知られている(特許文献2を参照)。
かかる水性無機コート剤をガラスに塗布すれば、透明度が2〜3%に向上するとされている。しかしながら、特許文献2では、ガラスのような無機基材への適用についてのみ開示されており、有機基材については開示されていない。
【0005】
また、水に四塩化チタンを混合すると共に、この混合溶液にリン酸と水酸化マグネシウムを混合して得られる混合液の沈殿物を沈殿させた上澄み液を、リン酸と、チタン酸と、マグネシウムの陽イオンとを含む被膜形成液とし、この被膜形成液を成膜して得られた防曇性アモルファス被膜が知られている(特許文献3を参照)。かかる防曇性アモルファス被膜には、低反射効果がある(反射率が向上する)とされているが、透過率はガラスと比較して1%以下とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5804996号公報
【特許文献2】特許第4658093号公報
【特許文献3】特許第4542322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、上記特許文献1では乾燥後に形成した微細な表面構造により防汚性の向上が期待できると記載されているが、有機基材に対して透過率が向上するか不明である。
上記特許文献2では、ガラスのような無機基材への適用についてのみ記載されており、有機基材については開示されておらず、有機基材に対して透過率が向上するか不明である。
上記特許文献3では、アモルファス被膜が形成されることにより低反射効果があると記載されているが、透過率がガラスと比較して1%以下であるので、その効果は小さい。
【0008】
かかる状況に鑑みて、本発明は、有機基材表面にプライマー層を形成することなく、直接に被覆膜を形成させて、有機基材の透過率を向上させる方法と、透過率を向上させる被覆膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明の有機基材の透過率向上方法は、透明乃至半透明の有機基材の透過率を向上する方法であって、有機基材に被覆液を塗布し乾燥させるステップと、被覆液の塗布膜を所定の乾燥膜厚に形成させるステップを備える。被覆液は二酸化ケイ素を含む無機化合物と有機化合物とアルコールおよび水より構成されたものである。有機基材の少なくとも片面に塗布して形成された乾燥膜は、二酸化ケイ素微粒子の集合体により構成された膜であり、空気の微小な空間が存在し、乾燥膜厚が45〜200nmの範囲である。被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて1.5%以上高くすることができる。乾燥膜厚は70〜180nmの範囲であることがより好ましく、被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて2.5%以上高くすることができる。乾燥膜厚は85〜165nmの範囲であることが更に好ましく、被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて3%以上高くすることができる。乾燥膜厚は110〜150nmの範囲であることが更に好ましく、被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて3.5%以上高くすることができる。乾燥膜厚は120〜140nmで透過率向上率がピークとなる。
【0010】
本発明の透過率向上方法を用いることにより、照明デバイス等の光利用効率を向上させ、それらのデバイスの低消費電力化が図ることが可能になる。
被覆液には二酸化ケイ素微粒子が混合、分散されているので、アルコールなどの溶剤が蒸発することにより、有機基材の表面には二酸化ケイ素微粒子が固化した薄膜層が形成される。薄膜層は二酸化ケイ素微粒子の微小な塊が有機基材の表面に薄く形成されたものであり、二酸化ケイ素微粒子間には微小な空間が生じる。この微小な空間は、屈折率が1.0の空気の空間である。二酸化ケイ素の屈折率は波長550nmのところでは、1.45〜1.55であるので、二酸化ケイ素微粒子の中に空気の空間がどれだけ存在するかで薄膜層の屈折率が決まる。このように二酸化ケイ素微粒子間に空気の微小な空間が存在することにより、薄膜層の屈折率を下げることができる。
【0011】
通常、二酸化ケイ素微粒子が固化して薄膜を形成する場合の屈折率は1.30〜1.33ぐらいである。しかし薄膜層の屈折率を低くしても、薄膜層の膜厚を可視光の波長に対してうまく設定しないと可視光の光干渉効果による透過率を向上させることができない。
本発明では、被膜液を塗布して形成した薄膜層の膜厚と透過率向上率の関係を明らかにして、最適な膜厚を見出すことにより大きな透過率向上率が実現できる有機基材への透過率向上方法を提供している。この有機基材の透過率向上方法を用いることにより、照明デバイス等の光利用効率を向上させ、それらのデバイスの低消費電力化が図ることができる。
【0012】
また、本発明の有機基材の透過率向上方法において、有機基材の両面に塗布して形成される2つの乾燥膜は、共に二酸化ケイ素微粒子の集合体により構成された膜であり、それぞれの面の乾燥膜厚を加算して平均化した膜厚が50〜200nmの範囲であれば、被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて3%以上高くすることができる。乾燥膜厚は75〜185nmの範囲であることがより好ましく、被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて5%以上高くすることができる。乾燥膜厚は90〜170nmの範囲であることが更に好ましく、被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて6%以上高くすることができる。乾燥膜厚は110〜150nmの範囲であることが更に好ましく、被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて7%以上高くすることができる。乾燥膜厚は120〜140nmで透過率向上率がピークとなる。
透過率の向上メカニズムは有機基材の片面のものと同様であり、有機基材の両面に被膜液を塗布して得られる二酸化ケイ素微粒子の集合体により構成される膜の効果は、片面に塗布したものより概ね2倍の透過率向上率が得られる。
【0013】
ここで使用する有機基材は、好適には、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂である。また、本発明における被覆液は、基材表面に塗布するために予めプライマーを設けることが必要であった有機基材に直接適用することができるが、従来の如く、プライマー層を形成させた後に、塗布しても構わない。また結晶性フィルムあるいは非晶性フィルムに関わらずCOP(シクロオレフィンポリマー)シート、PP(ポリプロピレン)シートなどの有機基材は密着性に欠けるので、これらの有機基材を使用する場合は、プラズマ処理、UV処理、コロナ処理、イトロ処理等の表面活性処理をおこなっても構わない。
被覆液の乾燥は、常温で行ってもよく、アルコールを除去し乾燥させて、有機基材の表面に被覆膜を形成させる。また、半透明とは、完全な透明ではないが、下にある物を完全に隠蔽しない程度の透過性を有する状態をいう。
【0014】
有機基材の片面に塗布して得られる乾燥膜厚が45nm〜200nmの範囲であることが好ましい理由は、乾燥膜厚が45nmより薄い場合には、有機基材の表面で反射した反射光の位相と、乾燥薄膜の表面で反射する反射光の位相があわず、反射光を打ち消す効果が薄くなり、その結果、透過率の向上が低下するからである。また、乾燥膜厚が200nm以上になると、同様に有機基材の表面で反射した反射光の位相と、乾燥薄膜の表面で反射する反射光の位相が合わなくなって、その結果、透過率の向上が低下するからである。
有機基材の両面に塗布して得られる乾燥膜厚が50nm〜200nmの範囲であることが好ましい理由も片面の場合と同じである。
【0015】
本発明の透過率向上方法における被覆液は、主成分として、下記a)〜c)を有する。
a)1−メトキシ−2−プロパノール及び環状エーテルの少なくとも一種の有機化合物、
b)非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物、
c)メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール及びn−プロピルアルコールの群から選択される少なくとも一種のアルコール。
【0016】
上記a)〜c)を主成分として有する被覆液を、透明乃至半透明の有機基材の片面に直接塗布し、乾燥膜厚を45〜200nmの範囲にすることにより、被覆液の塗布後の透過率は塗布前の透過率と比べて1.5%以上高くできる。また有機基材への両面に直接塗布して、乾燥膜厚の平均膜厚が50〜200nmの範囲にすることにより、被覆液の塗布後の透過率は塗布前の透過率と比べて3%以上高くできる。これにより、照明デバイス等の光利用効率を向上させ、それらのデバイスの低消費電力化を図る。
【0017】
被覆液は、組成比で5〜25%の水を含有し、また、硼酸塩,硝酸塩及び珪酸塩の群から選択される少なくとも一種の無機化合物を更に有することが好ましい。また、被覆液は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を更に有することが好ましい。好適には、アルカリ土類金属塩として、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウムなどの無機酸塩を用いることができる。
【0018】
具体的に、被覆液は、上記a)の1−メトキシ−2−プロパノールまたは環状エーテルの有機化合物において、1−メトキシ−2−プロパノールの組成比は30%以下であり、環状エーテルの組成比は3%以下である。また、上記b)の非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物において、1種または2種合算の組成比は1〜6%である。また、上記c)のメタノール,エタノール,イソプロピルアルコール及びn−プロピルアルコールの群から選択される少なくとも一種のアルコールにおいて、メタノールの組成比は5〜45%であり、エタノールの組成比は35%以下であり、イソプロピルアルコールの組成比は40%以下であり、n−プロピルアルコールの組成比は30%以下である。
【0019】
次に、本発明の有機基材の透過率向上被覆膜について説明する。
本発明の有機基材の透過率向上被覆膜は、透明乃至半透明の有機基材に被覆された被覆膜であって、被覆膜の主成分は、A)1−メトキシ−2−プロパノール及び環状エーテルの少なくとも一種の有機化合物、B)非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物であり、有機基材の片面に塗布して形成される乾燥膜は、二酸化ケイ素微粒子の集合体により構成された膜であり、空気の微小な空間が存在し、乾燥膜厚は45〜200nmの範囲である。
被覆液を、透明乃至半透明の有機基材の片面に塗布し、乾燥膜厚を45〜200nmの範囲にすることにより、被覆液の塗布後の透過率は塗布前の透過率と比べて1.5%以上高くすることができる。また本発明の有機基材の透過率向上被覆膜は、上記と同様に、有機基材への両面に塗布して、それぞれの乾燥膜厚の平均膜厚が50〜200nmの範囲にすることにより、被覆液の塗布後の透過率は塗布前の透過率と比べて3%以上高くすることができる。
【0020】
被覆膜は、硼酸塩,硝酸塩及び珪酸塩の群から選択される少なくとも一種の無機化合物を更に有することが好ましい。また、被覆膜は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を更に有することが好ましい。
【0021】
具体的に、被覆膜は、上記A)の1−メトキシ−2−プロパノールまたは環状エーテルの有機化合物において、1−メトキシ−2−プロパノールの組成比は80%以下であり、環状エーテルの組成比は8%以下である。また、上記B)の非晶質二酸化珪素及び水素化珪素の少なくとも一種の無機化合物において、1種または2種合算の組成比は3〜20%である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の有機基材の透過率向上方法及び透過率向上被覆膜によれば、有機基材表面にプライマー層を形成することなく、直接に被覆膜を形成させて、有機基材の透過率を向上させることができ、照明デバイスなどの光利用効率を向上させ低消費電力化を図ることができるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1のスピンコーターの回転数と、乾燥膜厚の関係を示したグラフ
図2】実施例1の乾燥膜厚と、透過率向上率(片面)の関係を示したグラフ
図3】実施例2の乾燥膜厚と、透過率向上率(両面)の関係を示したグラフ
図4】実施例3の分光透過率特性(片面/両面)の関係を示したグラフ
図5】有機基材への被覆処理フロー図
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【0025】
有機基材への被覆液の塗布は、図5に示す有機基材への被覆処理フローのように、先ず、有機基材の表面を工業用アルコールで脱脂洗浄し十分乾燥させた後(ステップS01)、スピンコーターを用いて被覆液を塗布する(ステップS02)。次に、被覆液を塗布した有機基材を恒温槽で乾燥させる(ステップS03)。
以下の実施例では、透明の有機基材として、透明ポリカーボネイトシート(出光興産製、品名:LC1500)を用いた。スピンコーターは、ミカサ株式会社製(品名:Opticoat MS−A150)を用い、所定の回転数で一定時間保持するやり方で塗布を行った。
なお、スピンコーターを用いて有機基材に被覆液を塗布する他に、膜厚が均一に塗布できれば、ディップコート、バーコート、フローコート、スプレーコート、インクジェット、パッド印刷、刷毛塗りなどの塗布方法を用いてもよい。
【実施例1】
【0026】
実施例1では、有機基材として、厚さ5mmの透明ポリカーボネイトシートを用い、下記表1の被覆液をシート片面に塗布した。
【0027】
【表1】
【0028】
スピンコーターの回転数と乾燥膜厚の関係をみるために、スピンコーターの回転数を1000rpm、1500rpm、2000rpm、3000rpm、4000rpmの5種類を選定した。回転数はそれぞれ7秒かけて所定の回転数にして、所定の回転数で25秒間保持し、4秒かけて停止させて有機基材表面に被覆液を塗布した。
被覆液を塗布した有機基材は、恒温槽に入れて、60℃、1分間の環境で乾燥させた。
図1は、スピンコーターの回転数と乾燥膜厚の関係を示したグラフである。図1に示すように、乾燥膜厚は、回転数1000〜4000rpmに対応しており、50〜200nmのものが得られた。
【0029】
図2は、乾燥膜厚と透過率向上率の関係を示したグラフである。図2に示すようにブランクの有機基材(塗布液を塗布していない素板)の透過率が90%であるのに対し、本実施例の被覆液の乾燥膜厚が45〜200nmにおいて透過率が91.5%以上でとなっている。このように乾燥膜厚が45〜200nmの範囲では、本実施例の被覆液を塗布することによって透過率が1.5%以上増加することが判り、乾燥膜厚が120〜140nmで透過率向上率がピークを持つ特性を有している。この図より乾燥膜厚が110〜150nmの範囲では、透過率向上率が3.5%以上、乾燥膜厚が85〜165nmの範囲では、透過率向上率が3.0%以上、乾燥膜厚が70〜180nmの範囲では、透過率向上率が2.5%以上増加することが判る。
【実施例2】
【0030】
実施例2では、有機基材として、厚さ5mmの透明ポリカーボネイトシートを用い、表1の被覆液を透明ポリカーボネイトシートの両面に塗布した。図3は、乾燥膜厚と透過率向上率の関係を示したグラフである。膜厚はそれぞれの面の膜厚を加算して平均化した値である。図3に示すようにブランクの有機基材の透過率が90%であるのに対し、本実施例の被覆液の乾燥膜厚が50〜200nmにおいて透過率が93%以上となっている。このように乾燥膜厚が50〜200nmの範囲では、本実施例の被覆液を塗布することによって透過率が3%以上増加することが判り、乾燥膜厚が120〜140nmで透過率向上率がピークを持つ特性を有している。この図より乾燥膜厚が110〜150nmの範囲では、透過率向上率が7.0%以上、乾燥膜厚が90〜170nmの範囲では、透過率向上率が6.0%以上、乾燥膜厚が75〜185nmの範囲では、透過率向上率が5.0%以上、乾燥膜厚が65〜200nmの範囲では、透過率向上率が4.0%以上増加することが判る。
【実施例3】
【0031】
実施例3では、有機基材として厚さ5mmの透明ポリカーボネイトシートを用い、表1の被覆液を透明ポリカーボネイトシートの片面と両面に塗布したものと、被膜液を塗布していない透明ポリカーボネイトシート(ブランク)の分光透過率特性を測定した。
スピンコーターの回転数は1500rpmに設定し、被覆液の乾燥条件は、実施例1と同じである。使用した被覆液は、表1と同じである。
【0032】
図4は、その分光透過率特性を示したグラフである。図4に示すように、全可視光線における被覆液を片面に塗布した透明ポリカーボネイトシートではブランクの透明ポリカーボネイトシートに対して透過率向上率が3.5%向上する。また、被覆液を両面に塗布した透明ポリカーボネイトシートでは、ブランクの透明ポリカーボネイトシートに対して、7.4%の透過率向上率が得られた。このように被膜液を透明ポリカーボネイトシートの片面あるいは両面に塗布して乾燥させた薄膜膜は、二酸化ケイ素微粒子と空気の微小空間が混在した膜であることから屈折率を低下させることができる。またそれと共に、薄膜層の膜厚を有機基材の片面に塗布する場合、45〜200nmの範囲で被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて1.5%以上高く、また有機基材の両面に50nm〜200nmの範囲で被覆液の塗布後の透過率が塗布前の透過率と比べて3%以上高くすることができる。
【実施例4】
【0033】
実施例4では、有機基材として、実施例1と同様に、厚さ5mmの透明ポリカーボネイトシートを用い、下記表2の被覆液をシート片面に塗布した。実施例1と同様に、スピンコーターの回転数は、1000rpm、1500rpm、2000rpm、3000rpm、4000rpmの5種類とし、5種類の乾燥膜厚を得た。被覆液を塗布した有機基材は、実施例1と同様に、恒温槽に入れて、60℃、1分間の環境で乾燥させた。
【0034】
【表2】
【0035】
乾燥膜厚と透過率の相関を確認したところ、実施例1と同様に、乾燥膜厚を45〜200nmの範囲になるような塗布膜厚にすれば、透過率が1.5%以上増加することが確認できた。
【実施例5】
【0036】
実施例5では、有機基材として、実施例1と同様に、厚さ5mmの透明ポリカーボネイトシートを用い、下記表3の被覆液をシート片面に塗布した。実施例1と同様に、スピンコーターの回転数は、1000rpm、1500rpm、2000rpm、3000rpm、4000rpmの5種類とし、5種類の乾燥膜厚を得た。被覆液を塗布した有機基材は、実施例1と同様に、恒温槽に入れて、60℃、1分間の環境で乾燥させた。
【0037】
【表3】
【0038】
乾燥膜厚と透過率の相関を確認したところ、実施例1と同様に、乾燥膜厚を45〜200nmの範囲になるような塗布膜厚にすれば、透過率が1.5%以上増加することが確認できた。
【実施例6】
【0039】
実施例1,実施例4及び実施例5で用いた被覆液を透明ポリカーボネイトシートの片面塗布に対して、硼酸塩又は珪酸塩を、組成比で0.1%未満添加したものも、同様に、乾燥膜厚を45〜200nmの範囲になるような塗布膜厚にすれば、透過率が1.5%増加することが確認できた。
【0040】
また、実施例1,実施例4及び実施例5で用いた被覆液を透明ポリカーボネイトシートの片面塗布に対して、アルカリ金属塩としてカリウム化合物、又は、アルカリ土類金属塩としてマグネシウム化合物を、組成比で0.1%未満添加したものも、同様に、乾燥膜厚を45〜200nmの範囲になるような塗布膜厚にすれば、透過率が1.5%増加することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、照明デバイス等の透過率向上に有用である。

図1
図2
図3
図4
図5