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特許6828965PoE受電側機器、PoE受電側機器受電モード切替制御方法およびそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828965
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】PoE受電側機器、PoE受電側機器受電モード切替制御方法およびそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/30 20060101AFI20210128BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   G06F1/30 305
   H04L12/28 200M
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-202664(P2018-202664)
(22)【出願日】2018年10月29日
(65)【公開番号】特開2020-71504(P2020-71504A)
(43)【公開日】2020年5月7日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山下 仁志
【審査官】 白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−209722(JP,A)
【文献】 特開2008−294951(JP,A)
【文献】 特開2008−097250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26−1/3296
H04L 12/28;12/44−12/46
H02J 1/00−1/16
H02J 13/00
H03M 3/00;3/16−3/20;3/38−3/58;7/00−7/16;11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LANケーブルを介してPoE(Power over Ethernet)給電側機器から供給されてくる給電電を受電電として受電し、かつ、IEEE802.3af規格準拠のafモードおよびIEEE802.3at規格準拠のatモードのいずれの受電モードでも動作するPoE受電側機器であって
前記PoE給電側機器との間で供給電力に関するネゴシエーションを行った結果に基づいて、自PoE受電側機器において設定すべき前記受電電の受電モードを決定して、決定した該受電モードに設定する受電モード設定手段と、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電の瞬断を検出する検出手段と、
前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開閉する開閉手段と、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電の瞬断を前記検出手段が検出した際に、前記PoE給電側機器側が該受電電の切断を認識することが可能な最少時間以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値に達する時間が経過するまでの間、前記開閉手段を制御して、前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定する開閉設定手段と
前記開閉設定手段が、前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定した後、前記開閉設定手段が、前記時間閾値が経過した時点で前記開閉手段を制御して前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを接続した状態に復旧させた際に、前記PoE給電側機器との間で前記ネゴシエーションを実施するネゴシエーション手段と
を備えるPoE受電側機器。
【請求項2】
前記受電モード設定手段が設定した前記受電モードの電電で賄うことが可能な範囲内に自PoE受電側機器の機能制限したり開放したりする機能設定手段、
をさらに備え、
前記受電モード設定手段が自PoE受電側機器に設定した前記受電電の受電モードがIEEE802.3af規格準拠のafモードであった場合には、前記機能設定手段は、該afモードの前記受電電で賄うことが可能な範囲内に自PoE受電側機器の機能制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載のPoE受電側機器。
【請求項3】
前記PoE給電側機器から前記受電電を受電中の状態にある場合に、該受電電の電圧値が、あらかじめ定めた閾値Aよりも高い場合に該受電電の受電モードを検出する検出動作をオンにし、該閾値Aよりも低い電圧値としてあらかじめ定めた閾値B以下に低下した場合に該受電モードの検出動作をオフにする切り替え手段、
をさらに備え、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電が、前記閾値B以下の電圧値としてあらかじめ任意に定めた電圧閾値以下に低下した際に、前記開閉設定手段が、前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを開放した状態に設定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のPoE受電側機器。
【請求項4】
前記開閉手段は、前記PoE給電側機器とは別個の電源によって給電される、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のPoE受電側機器。
【請求項5】
LANケーブルを介してPoE(Power over Ethernet)給電側機器から供給されてくる給電電を受電電として受電し、かつ、IEEE802.3af規格準拠のafモードおよびIEEE802.3at規格準拠のatモードのいずれの受電モードでも動作することができるPoE受電側機器該受電モードの切替制御を行うPoE受電側機器受電モード切替制御方法であって
前記PoE受電側機器において、
検出手段が、前記PoE給電側機器から受電した前記受電電の瞬断を検出する検出ステップと
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電の瞬断を前記検出手段が前記検出ステップで検出した際に、開閉設定手段が、前記PoE給電側機器側が該受電電の切断を認識することが可能な最少時間以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値に達する時間が経過するまでの間、前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定する開閉設定ステップと
前記開閉設定手段が、前記開閉設定ステップにより前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定した後、前記時間閾値が経過した時点で前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを接続した状態に復旧させた際に、ネゴシエーション手段が、前記PoE給電側機器との間で供給電力に関するネゴシエーションを実施するネゴシエーションステップと
前記ネゴシエーション手段が前記ネゴシエーションステップで行った前記ネゴシエーションの結果に基づいて、受電モード設定手段が、自PoE受電側機器において設定すべき前記受電電力の受電モードを決定して、決定した該受電モードに設定する受電モード設定ステップと、
が実行されるPoE受電側機器受電モード切替制御方法。
【請求項6】
機能設定手段が、前記受電モード設定ステップで前記受電モード設定手段が設定した前記受電モードの電電で賄うことが可能な範囲内に自PoE受電側機器の機能制限したり開放したりする機能設定ステップ、
さらに実行され
前記受電モード設定手段が前記受電モード設定ステップで自PoE受電側機器に設定した前記受電電の受電モードがIEEE802.3af規格準拠のafモードであった場合には、前記機能設定手段は、前記機能設定ステップにおいて、該afモードの前記受電電で賄うことが可能な範囲内に自PoE受電側機器の機能制限する、
ことを特徴とする請求項5に記載のPoE受電側機器受電モード切替制御方法。
【請求項7】
前記PoE受電側機器が前記PoE給電側機器から前記受電電を受電中の状態にある場合に、切り替え手段が、該受電電の電圧値が、あらかじめ定めた閾値Aよりも高い場合に該受電電の受電モードを検出する検出動作をオンにし、該閾値Aよりも低い電圧値としてあらかじめ定めた閾値B以下に低下した場合に該受電モードの検出動作をオフにする切り替えステップ、
さらに実行され
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電が、前記閾値B以下の電圧値としてあらかじめ任意に定めた電圧閾値以下に低下した際に、前記開閉設定手段が、前記開閉設定ステップで、前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを開放した状態に設定する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載のPoE受電側機器受電モード切替制御方法。
【請求項8】
LANケーブルを介してPoE(Power over Ethernet)給電側機器から供給されてくる給電電を受電電として受電し、かつ、IEEE802.3af規格準拠のafモードおよびIEEE802.3at規格準拠のatモードのいずれの受電モードでも動作することができるPoE受電側機器において、該受電モードの切替制御を行う処理をコンピュータによって実行させるPoE受電側機器受電モード切替制御プログラムであって
前記PoE受電側機器受電モード切替制御プログラムは、前記コンピュータに対し、
検出手段が、前記PoE給電側機器から受電した前記受電電の瞬断を検出する検出ステップと、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電の瞬断を前記検出手段が前記検出ステップで検出した際に、開閉設定手段が、前記PoE給電側機器側が該受電電の切断を認識することが可能な最少時間以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値に達する時間が経過するまでの間、前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定する開閉設定ステップと
前記開閉設定手段が、前記開閉設定ステップにより前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定した後、前記時間閾値が経過した時点で前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを接続した状態に復旧させた際に、ネゴシエーション手段が、前記PoE給電側機器との間で供給電力に関するネゴシエーションを実施するネゴシエーションステップと
前記ネゴシエーション手段が前記ネゴシエーションステップで行った前記ネゴシエーションの結果に基づいて、受電モード設定手段が、自PoE受電側機器において設定すべき前記受電電力の受電モードを決定して、決定した該受電モードに設定する受電モード設定ステップと、
を実行させるPoE受電側機器受電モード切替制御プログラム。
【請求項9】
前記PoE受電側機器受電モード切替制御プログラムは、前記コンピュータに対し、
機能設定手段が、前記受電モード設定ステップで前記受電モード設定手段が設定した前記受電モードの電電で賄うことが可能な範囲内に自PoE受電側機器の機能制限したり開放したりする機能設定ステップ
をさらに実行させ
前記受電モード設定手段が前記受電モード設定ステップで自PoE受電側機器に設定した前記受電電の受電モードがIEEE802.3af規格準拠のafモードであった場合には、前記機能設定手段は、前記機能設定ステップにおいて、該afモードの前記受電電で賄うことが可能な範囲内に自PoE受電側機器の機能制限させる
ことを特徴とする請求項8に記載のPoE受電側機器受電モード切替制御プログラム。
【請求項10】
前記PoE受電側機器受電モード切替制御プログラムは、前記コンピュータに対し、
前記PoE受電側機器が前記PoE給電側機器から前記受電電を受電中の状態にある場合に、切り替え手段が、該受電電の電圧値が、あらかじめ定めた閾値Aよりも高い場合に該受電電の受電モードを検出する検出動作をオンにし、該閾値Aよりも低い電圧値としてあらかじめ定めた閾値B以下に低下した場合に該受電モードの検出動作をオフにする切り替えステップ
をさらに実行させ
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電が、前記閾値B以下の電圧値としてあらかじめ任意に定めた電圧閾値以下に低下した際に、前記開閉設定手段が、前記開閉設定ステップで、前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを開放した状態に設定させる、
ことを特徴とする請求項8または9に記載のPoE受電側機器受電モード切替制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IEEE802.3規格のPoE(Power over Ethernet)技術に準拠したPoE受電側機器(Powered Device:以降、PDと略記)、PoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法およびPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムに関し、特に、IEEE802.3af規格準拠のafモードとIEEE802.3at規格準拠のatモードとの双方に対応するPoE受電側機器(PD)、PoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法およびPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PoEスイッチなどのLANケーブルを介して電力を給電する給電側の機器をPoE給電側機器(Power Sourcing Equipment:以降、PSEと略記)と称し、一方、オフィス内等に設置されるIP電話機やネットワークカメラ、アクセスポイントなどの電力を受電する受電側の機器をPoE受電側機器(Powered Device:以降、PDと略記)と称している。PoE給電側機器(PSE)とPoE受電側機器(PD)とは、IEEE802.3af規格準拠のafモードやIEEE802.3at規格準拠のatモードにしたがって、LANケーブルを経由して受給電される技術として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
市場には、afモード対応のPoE給電側機器(PSE)とatモード対応のPoE給電側機器(PSE)とが出回っているが、afモードよりもatモードの方がより多くの電力を供給することができる。一方、PoE受電側機器(PD)に関しては、atモードの受電電力で設計されたPoE受電側機器(PD)であっても、afモードの供給電力の場合でも賄えるように、例えば、通信ポート使用数を減らすとか、あるいは、通信速度の上限を下げるなどによって、機能を制限することができるならば、afモードのPoE給電側機器(PSE)にも接続することが可能である。
【0004】
しかし、そのためには、PoE受電側機器(PD)に対して給電するPoE給電側機器(PSE)の給電モードがafモードとatモードとのいずれのモードで動作しているかということをPoE受電側機器(PD)側で把握することが必要である。そして、afモードで給電されていた場合には、afモードの電力で賄えるように、PoE受電側機器(PD)側の受電モードをafモードに切り替えて、機能を制限する制御を行うことが必要である。
【0005】
図5は、現状の技術におけるPoE受電側機器(PD)の内部構成の一例を示すブロック構成図であり、PoE給電側機器(PSE)から供給される電力を受電する際の受電モード切替制御手段に着目してその一例を示している。図5に示すように、現状の技術におけるPoE受電側機器(PD)2Aの受電モード切替制御手段は、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3と受電モード検出回路4とCPU5とから構成されている。なお、PoE受電側機器(PD)2Aは、afモード、atモードのいずれの給電モードのPoE給電側機器(PSE)1からでも、LANケーブルを経由して給電電力を受電して、給電モードに該当する受電モードに切り替えて動作することが可能である。
【0006】
図5において、PoE給電側機器(PSE)1は、LANケーブルを介して接続されたPoE受電側機器(PD)2A側の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3との間で、供給電力(給電の有無、給電電圧レベルおよび給電モード)に関するIEEE802.3規格に準拠したやり取り(以降、ネゴシエーションと称する)を行うことにより、PoE受電側機器(PD)2Aが、電力供給を要求している機器であるか否かを識別する。そして、PoE受電側機器(PD)2Aが電力供給を要求している機器であった場合には、PoE給電側機器(PSE)1は、供給すべき電力を検出して、適切な電力をPoE受電側機器(PD)2Aに対して給電する。
【0007】
ここで、PoE給電側機器(PSE)1がafモードの給電モードで動作している場合には、PoE給電側機器(PSE)1は、1ポート当たり最大15.4Wの電力をPoE受電側機器(PD)2Aに対して給電することができる。また、PoE給電側機器(PSE)1がatモードの給電モードで動作している場合、1ポート当たり最大57V/30Wの電力をPoE受電側機器(PD)2Aに対して給電することができる。
【0008】
なお、PoE受電側機器(PD)2Aは、前述したように、afモードとatモードとのいずれの給電モードのPoE給電側機器(PSE)1に対しても接続することが可能である。そして、PoE給電側機器(PSE)1がafモードの給電モードで動作している場合には、前述したように、afモードの電力で賄うことが可能な範囲内で動作するように、自PoE受電側機器(PD)2Aの受電モードをafモードに切り替えて、自PoE受電側機器(PD)2Aの機能を制限することが必要になる。
【0009】
このため、PoE受電側機器(PD)2Aは、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3においてPoE給電側機器(PSE)1から受電した電力がafモードとatモードとのいずれの受電モードで電力を受電しているかということを検出する機能を有している。そして、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3が検出した受電モードの信号形式を受電モード検出回路4によりCPU5への入力が可能な形式に変換してCPU5に通知する。CPU5は、受電モード検出回路4を経由して、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3が検出した受電モードを受け取る。CPU5は、その受電モードがatモードであった場合には、自PoE受電側機器(PD)2Aの受電モードをatモードに設定して、自PoE受電側機器(PD)2Aのすべての機能をフルに使用することが可能な状態に設定する。
【0010】
これに対して、検出した受電モードがafモードであった場合には、CPU5は、自PoE受電側機器(PD)2Aの受電モードをatモードからafモードに切り替えて、afモードの電力で賄うことができる状態に設定するために、自PoE受電側機器(PD)2Aの機能を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−11093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、本発明に関連する現状の技術におけるPoE受電側機器(PD)においては、以下のような解決するべき課題がある。
【0013】
第1の課題は、atモードで動作するPoE給電側機器(PSE)に接続したPoE受電側機器(PD)がatモードの受電モードで動作中にあった場合である。この場合、LANケーブルの抜き差し等が実施されて、IEEE802.3規格には定義されていない瞬断がPoE受電側機器(PD)に対する給電電力に発生すると、瞬断後に元の給電状態に復帰しても、PoE給電側機器(PSE)からの給電モードがafモードであると誤認識して、PoE受電側機器(PD)は受電モードをafモードに切り替えてしまう場合が生じることである。
【0014】
その理由は、IEEE規格においては、PoE給電側機器(PSE)側は、PoE受電側機器(PD)との接続が切断されたことを300〜400msの間継続して検出した場合には、PoE受電側機器(PD)に対する給電動作を直ちに停止して、ネゴシエーションをし直すという仕様である。しかし、300〜400msよりも短い短時間の間に回復するような瞬断があった場合には、PoE給電側機器(PSE)は、PoE受電側機器(PD)との接続が切断されたことを認識することがなく、PoE受電側機器(PD)側の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3との間のネゴシエーションが実施されないためである。
【0015】
第2の課題は、PoE受電側機器(PD)が、PoE給電側機器(PSE)がafモードの給電モードであると誤認識して機能を制限してしまうと、PoE受電側機器(PD)本来の機能仕様をフルに生かした動作ができなくなることである。例えば、PoE受電側機器(PD)の仕様を給電モードがafモードの場合には自PoE受電側機器(PD)の全ての機能を停止するという仕様に設定していた場合には、PoE受電側機器(PD)を再起動させることが必要になり、システム運用上の解決するべき課題となる。
【0016】
その理由は、システム運用上の問題が発生するか否かによらず、PoE給電側機器(PSE)がafモードで動作している場合のPoE受電側機器(PD)の機能制限仕様を自PoE受電側機器(PD)側で独自に決定して、PoE受電側機器(PD)の機能を制限する制御を行っているためである。
【0017】
(本開示の目的)
本開示の目的は、afモード、atモードのいずれの給電モードのPoE給電側機器(PSE)からでも、LANケーブルを経由して給電電力を受電して、給電モードに該当する受電モードに切り替えて動作することが可能なPoE受電側機器(PD)において、給電中の給電電力に短時間の瞬断が発生した場合であっても、給電モードの誤認識を確実に防止することが可能なPoE受電側機器(PD)、PoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法およびPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の課題を解決するため、本発明によるPoE受電側機器(PD)、PoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法およびPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0019】
(1)本発明によるPoE受電側機器(PD)は、
LANケーブルを介してPoE(Power over Ethernet)給電側機器から供給されてくる給電電圧を受電電圧として受電し、かつ、IEEE802.3af規格準拠のafモードおよびIEEE802.3at規格準拠のatモードのいずれの受電モードでも動作し、
前記PoE給電側機器との間で供給電力に関するネゴシエーションを行った結果に基づいて、自PoE受電側機器において設定すべき前記受電電圧の受電モードを決定して、決定した該受電モードに設定する手段と、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電圧の瞬断を検出する手段と、
前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開閉する手段と、
を有し、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電圧の瞬断を検出した際に、前記PoE給電側機器側が該受電電圧の切断を認識することが可能な最少時間以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値に達する時間が経過するまでの間、前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定し、
しかる後、前記時間閾値が経過した時点で前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを接続した状態に復旧させた際に、前記PoE給電側機器との間で前記ネゴシエーションを実施する、
ことを特徴とする。
【0020】
(2)本発明によるPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法は、
LANケーブルを介してPoE(Power over Ethernet)給電側機器から供給されてくる給電電圧を受電電圧として受電し、かつ、IEEE802.3af規格準拠のafモードおよびIEEE802.3at規格準拠のatモードのいずれの受電モードでも動作することができるPoE受電側機器において該受電モードの切替制御を行い、
前記PoE給電側機器との間で供給電力に関するネゴシエーションを行った結果に基づいて、自PoE受電側機器において設定すべき前記受電電圧の受電モードを決定して、決定した該受電モードに設定するステップと、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電圧の瞬断を検出するステップと、
前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開閉するステップと、
を有し、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電圧の瞬断を検出した際に、前記PoE給電側機器側が該受電電圧の切断を認識することが可能な最少時間以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値に達する時間が経過するまでの間、前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定し、
しかる後、前記時間閾値が経過した時点で前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを接続した状態に復旧させた際に、前記PoE給電側機器との間で前記ネゴシエーションを実施する、
ことを特徴とする。
【0021】
(3)本発明によるPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムは、
LANケーブルを介してPoE(Power over Ethernet)給電側機器から供給されてくる給電電圧を受電電圧として受電し、かつ、IEEE802.3af規格準拠のafモードおよびIEEE802.3at規格準拠のatモードのいずれの受電モードでも動作することができるPoE受電側機器において、該受電モードの切替制御を行う処理をコンピュータによって実行し、
前記PoE給電側機器との間で供給電力に関するネゴシエーションを行った結果に基づいて、自PoE受電側機器において設定すべき前記受電電圧の受電モードを決定して、決定した該受電モードに設定する機能と、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電圧の瞬断を検出する機能と、
前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開閉する機能と、
を有し、
前記PoE給電側機器から受電した前記受電電圧の瞬断を検出した際に、前記PoE給電側機器側が該受電電圧の切断を認識することが可能な最少時間以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値に達する時間が経過するまでの間、前記PoE給電側機器との間の接続ラインを一時的に開放した状態に設定し、
しかる後、前記時間閾値が経過した時点で前記PoE給電側機器との間の前記接続ラインを接続した状態に復旧させた際に、前記PoE給電側機器との間で前記ネゴシエーションを実施する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のPoE受電側機器(PD)、PoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法およびPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムによれば、主に、以下のような効果を奏することができる。
【0023】
第1の効果は、PoE給電側機器(PSE)からの供給電力に瞬断が発生しても、PoE受電側機器(PD)は、PoE給電側機器(PSE)がafモードとatモードとのいずれの給電モードで動作しているかということを正確に認識することができることである。
【0024】
その理由は、PoE給電側機器(PSE)からの供給電力に瞬断が発生した場合であっても、PoE給電側機器(PSE)からの供給電力が切断されたことをPoE受電側機器(PD)のみならずPoE給電側機器(PSE)側においても確実に認識して、PoE給電側機器(PSE)とPoE受電側機器(PD)との間で供給電力に関するネゴシエーション動作を実施することができるからである。
【0025】
第2の効果は、atモードの受電モードで動作中のPoE受電側機器(PD)は、PoE給電側機器(PSE)からの供給電力に瞬断が発生しても、機能を制限されることなく、本来の機能仕様で動作することができることである。
【0026】
その理由は、PoE給電側機器(PSE)からの供給電圧に瞬断が発生しても、前述した第1の効果により、PoE給電側機器(PSE)がPoE給電側機器(PSE)から受電する受電モードを正確に把握して、PoE給電側機器(PSE)から受電される電力で賄うことが可能な範囲内の機能をフルに活用できる状態に設定するからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るPoE受電側機器(PD)の内部構成の一例を示すブロック構成図である。
図2図1に示したPoE受電側機器(PD)の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラにおける受電モード検出に関わる閾値の設定例を示す模式図である。
図3図1に示したPoE受電側機器(PD)において本発明に特有の受電電圧開閉部および開閉制御部を備えていない場合における受電側インタフェース(PD I/F)コントローラの入力端に設置した観測点aの受電電圧波形と受電モード検出回路のCPUへの出力電圧波形との一例を示す電圧波形図である。
図4図1に示したPoE受電側機器(PD)において本発明に特有の受電電圧開閉部および開閉制御部を備えている場合における受電側インタフェース(PD I/F)コントローラの入力端に設置した観測点bの受電電圧波形と受電モード検出回路のCPUへの出力電圧波形との一例を示す電圧波形図である。
図5】現状の技術におけるPoE受電側機器(PD)の内部構成の一例を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明によるPoE受電側機器(PD)、PoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法およびPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるPoE受電側機器(PD)およびPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法について説明するが、かかるPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御方法をコンピュータにより実行可能なPoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、PoE受電側機器(PD)受電モード切替制御プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
【0029】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、IEEE802.3規格のPoE(Power over Ethernet)技術に準拠した動作を行うPoE受電側機器(PD)が、PoE給電側機器(PSE)からの供給電圧の瞬断すなわち自PoE受電側機器(PD)において受電される受電電圧の瞬断を検知する手段と該供給電圧を受電する接続ラインを一時的に開閉する手段とを備え、該供給電圧の瞬断を検知した際に、PoE給電側機器(PSE)側において該供給電圧の供給停止が発生していることを認識することが可能な最少時間以上の時間が経過するまで、該供給電圧を受電する接続ラインを一時的に開放することを主要な特徴としている。
【0030】
而して、PoE給電側機器(PSE)からの供給電圧に瞬断が発生しても、PoE受電側機器(PD)は、PoE給電側機器(PSE)との間で供給電力に関するネゴシエーションを実施することが可能になるので、PoE受電側機器(PD)は、PoE給電側機器(PSE)の給電モードを誤認識することを確実に防止することができる。したがって、PoE給電側機器(PSE)の給電モードがatモードであった場合には、PoE受電側機器(PD)における受電モードも該給電モードに該当するatモードに正確に設定することができ、機能を制限することなく、PoE受電側機器(PD)本来の機能仕様で動作することができる。
【0031】
(本発明の実施形態の構成例)
次に、本発明に係るPoE受電側機器(PD)の内部構成の一例について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るPoE受電側機器(PD)の内部構成の一例示すブロック構成図であり、PoE給電側機器(PSE)から供給される電力を受電する際の受電モード切替制御手段に着目してその一例を示している。
【0032】
図1に示すPoE受電側機器(PD)2は、受電モード切替制御手段として、現状の技術として図5に示したPoE受電側機器(PD)2Aと同様の機能ブロックである受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3と受電モード検出回路4とCPU5とを備えるとともに、その他に、さらに、受電電圧開閉部6と開閉制御部7とを追加して備えている。なお、PoE受電側機器(PD)2は、afモード、atモードのいずれの給電モードのPoE給電側機器(PSE)1からでも、LANケーブルを経由して給電電力を受電して、給電モードに該当する受電モードに切り替えて動作することが可能である。
【0033】
受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3は、IEEE802.3規格に準拠し、LANケーブルを介して接続されたPoE給電側機器(PSE)1との間で、供給電力(給電の有無、給電電圧レベルおよび給電モード)に関するネゴシエーションを行うことにより、PoE給電側機器(PSE)1から自PoE受電側機器(PD)2において受電すべき電力を供給させる機能を有する。また、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3は、PoE給電側機器(PSE)1の給電モードすなわちPoE給電側機器(PSE)1から受電した受電電圧の受電モードがatモード、afモードのいずれかであるかを検出する機能、該受電電圧の瞬断を含め該受電電圧の受電不能状態を検出する機能も有している。
【0034】
また、受電モード検出回路4は、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3が検出したPoE給電側機器(PSE)1の給電モードすなわちPoE給電側機器(PSE)1から受電した受電電圧の受電モードに関する信号形式をCPU5に入力することが可能な信号形式に変換して出力する機能を有する。
【0035】
また、CPU5は、自PoE受電側機器(PD)の受電モードの切り替えを制御する機能を有し、受電モード検出回路4を介して、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3が検出したPoE給電側機器(PSE)1の給電モードすなわちPoE給電側機器(PSE)1から受電した受電電圧の受電モードを受け取った結果に応じて、自PoE受電側機器(PD)の受電モードをatモード、afモードのいずれかに設定する。
【0036】
そして、CPU5は、PoE給電側機器(PSE)1から受電される電力で賄うことが可能な範囲内の機能に自PoE受電側機器(PD)2の機能を制限/開放する機能も有している。例えば、PoE給電側機器(PSE)1の給電モードがafモードであった場合には、自PoE受電側機器(PD)2の受電モードをafモードに切り替えて設定して、afモードのPoE給電側機器(PSE)1から受電される電力で賄うことが可能な範囲内の機能に自PoE受電側機器(PD)2の機能を制限する。また、PoE給電側機器(PSE)1の給電モードがatモードであった場合には、自PoE受電側機器(PD)2の受電モードをatモードに切り替えて設定して、atモードのPoE給電側機器(PSE)1から受電される電力で賄うことが可能な範囲内の機能として自PoE受電側機器(PD)2の全機能をフルに活用することができる状態に設定する。
【0037】
また、受電電圧開閉部6は、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を受電する受電端の位置に設置した観測点aと受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の入力端に設置した観測点bとの間を接続する接続ライン上に配置され、PoE給電側機器(PSE)1と受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3との間の接続ラインの接続を開閉するスイッチの機能を有している。
【0038】
また、開閉制御部7は、受電電圧開閉部6のスイッチを一時的に開閉させ、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を受電する接続ラインを一時的に開閉させる制御を行う機能を有している。そして、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の入力端に設置した観測点bの電圧を常時監視し、PoE給電側機器(PSE)1から受電した受電電圧が、あらかじめ定めた或る電圧閾値Vth以下に低下すると、以降、PoE給電側機器(PSE)1側がPoE受電側機器(PD)2における受電電圧が切断されたことを認識することが可能な最少時間Tmin以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値Tthに達する時間が経過するまでの間、受電電圧開閉部6のスイッチをオフにするように制御する。そして、開閉制御部7は、該時間閾値tthの時間が経過した後は、受電電圧開閉部6のスイッチをオンに復旧させるように制御する。
【0039】
つまり、一旦、受電電圧開閉部6のスイッチをオフに設定した後、PoE給電側機器(PSE)1から受電した受電電圧が前記電圧閾値Vthを上回る元の状態に復帰したとしても、前記時間閾値Tthの時間が経過するまでの間は、受電電圧開閉部6のスイッチはオフの状態を継続させる。その結果、PoE給電側機器(PSE)1側は、PoE受電側機器(PD)2との接続が切断されたことを検知することができる。しかる後、前記時間閾値Tthの時間が経過して、受電電圧開閉部6のスイッチをオンに復旧させると、PoE給電側機器(PSE)1とPoE受電側機器(PD)2の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3との間で、供給電力(給電の有無、給電電圧レベルおよび給電モード)に関するネゴシエーションを実施することになる。
【0040】
(本発明の実施形態の動作の説明)
次に、本発明の一実施形態として図1に示したPoE受電側機器(PD)2の動作の一例を、図2図4の図面を参照しながら詳細に説明する。まず、図2の模式図について説明する。図2は、図1に示したPoE受電側機器(PD)2の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3における受電モード検出に関わる閾値の設定例を示す模式図である。
【0041】
図2の模式図において、PoE給電側機器(PSE)1から供給される供給電力すなわちPoE受電側機器(PD)2の受電電圧は、IEEE802.3規格に定められた0V〜57Vの範囲内であるが、PoE受電側機器(PD)2には、該受電電圧の範囲内において、電圧が高い順に閾値A、閾値B、閾値Cの3個の閾値があらかじめ設定されている。
【0042】
そして、PoE受電側機器(PD)2における受電電圧が、閾値Aを超えて大きい電圧値であることを検出すると、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3における受電モードの検出動作がオンとなる。そして、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3において検出した受電モードの検出結果が、受電電圧が閾値B以下に低下するまで、受電モード検出回路4を介してCPU5に対して出力されるという動作を継続する。
【0043】
また、受電電圧が閾値B以下に低下した場合には、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の受電モードの検出動作はオンからオフに切り替わり、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3は受電モード検出回路4を介して受電モードをCPU5に対して出力する動作を停止する。以降、受電電圧がさらに低下して閾値C以下に達して初期状態にリセットしない限り、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3における受電モードの検出動作はオフのままになる。
【0044】
なお、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の受電モードの検出動作がオンになると、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3において検出された受電モード(すなわちPoE給電側機器(PSE)1の給電モード)の検出結果は、受電モード検出回路4に対して出力される。受電モード検出回路4は、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3が検出した受電モードに関する信号形式をCPU5に入力するための信号形式に変換する動作を行う。つまり、受電モード検出回路4は、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3が検出したPoE受電側機器(PD)2における受電モードがafモードであった場合には、Highレベルの検出信号をCPU5に対して出力し、一方、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3が検出したPoE受電側機器(PD)2における受電モードがatモードであった場合には、Lowレベルの検出信号をCPU5に対して出力する。
【0045】
CPU5は、受電モード検出回路4が出力する検出信号のHighレベル/Lowレベルに基づいて、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3が検出した受電モード(すなわちPoE給電側機器(PSE)1の給電モード)を認識し、認識した受電モードの受電電において賄うことができる最大限の消費電力状態に設定するために、PoE受電側機器(PD)2の各種機能を制限したり開放したりすることにより、最大消費電力を制御する。
【0046】
次に、図3に示す電圧波形図について説明する。図3は、本発明の一実施形態として図1に示したPoE受電側機器(PD)2において本発明に特有の受電電圧開閉部6および開閉制御部7を備えていない場合における受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の入力端に設置した観測点aの受電電圧波形と受電モード検出回路4のCPU5への出力電圧波形との一例を示す電圧波形図である。そして、図3には、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を受電するPoE受電側機器(PD)2の受電電圧に瞬断が発生した場合の観測点aにおける受電電圧波形を、図3(A)に示し、受電モード検出回路4のCPU5への出力電圧波形を、図3(B)に示している。なお、本実施形態においては、PoE給電側機器(PSE)1の給電モードはatモードであるものとする。
【0047】
ここで、図3に示す電圧波形図においては、PoE受電側機器(PD)2に本発明に特有の機能として追加した受電電圧開閉部6および開閉制御部7を備えていない場合であるので、現状の技術として図5に示したPoE受電側機器(PD)2Aと同じ回路構成である。
【0048】
したがって、図3に示す電圧波形図は、図5に示したPoE受電側機器(PD)2Aの受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の入力端に設置した観測点aにおける受電電圧波形と受電モード検出回路4のCPU5への出力電圧波形の一例を示しているものと見做すこともできる。つまり、図3は、PoE受電側機器(PD)2が本発明に特有の受電電圧開閉部6および開閉制御部7を備えていない場合には、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧に瞬断が発生した場合、誤動作が発生してしまうことを説明するための電圧波形図である。
【0049】
図3の電圧波形図に示すように、時刻t0において、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧をPoE受電側機器(PD)2に給電するためのLANケーブルの抜き差し等によって該供給電圧の瞬断が発生して、時刻t0から時刻t1に至るまでの約300〜400msよりも短い短時間の間、PoE給電側機器(PSE)1から供給される給電電圧をPoE受電側機器(PD)2において受電することができない状況が発生したものとする。
【0050】
かかる瞬断が発生した場合、図3(A)に示すように、時刻t0において、PoE給電側機器(PSE)1から受電したPoE受電側機器(PD)2側の観測点aにおける受電電圧は急速に低下する。そして、観測点aにおける受電電圧が図2に示した閾値B以下にまで低下すると、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の受電モードの検出動作はオフになり、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3は、PoE給電側機器(PSE)1から受電する受電モードを検出する動作を停止する。したがって、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3は、受電モードの検出動作がオフに切り替わる直前の受電モードを保持していることになる。
【0051】
受電モードの検出動作がオフになると、PoE受電側機器(PD)2の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3から受電モード検出回路4への受電モードの検出結果は出力されなくなる。したがって、受電モード検出回路4のCPU5への出力電圧は、図3(B)に示すように、受電モードがatモードであることを示すLowレベルの状態から、時刻t0において、受電モード検出回路4のプルアップ抵抗により一旦Highレベルに変化するものの、その後、電圧レベルは徐々に低下していく。
【0052】
一方、図3(A)に示すように、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧のPoE受電側機器(PD)2における瞬断状態は、時刻t0から300〜400msよりも短い短時間が経過した時刻t1の時点で解消されて、PoE受電側機器(PD)2の観測点aにおける受電電圧は、時刻t1から元の電圧レベルに復旧する。したがって、電源断の時間が時刻t0から時刻t1に至るまでと短過ぎるため、PoE給電側機器(PSE)1側は、PoE受電側機器(PD)2側において受電電圧の切断が発生していることを認識することができない。その結果、PoE受電側機器(PD)2側において受電電圧の瞬断が発生しているにも関わらず、PoE給電側機器(PSE)1は、PoE受電側機器(PD)2A側に対してネゴシエーション波形を出力しないままになる。
【0053】
時刻t1に達して、PoE給電側機器(PSE)1から受電した受電電圧の瞬断が解消し、観測点aにおける受電電圧が、元の電圧レベルに復旧して、閾値Aを上回ると、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の受電モードの検出動作はオフからオンに切り替わる。しかし、オンに切り替わっても、PoE給電側機器(PSE)1がPoE受電側機器(PD)2側の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3との間で供給電力(給電の有無、給電電圧レベルおよび給電モード)に関するネゴシエーションを実施していないため、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を受電している受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3は、瞬断直前の受電モードのままであり、現時点の受電モードを、atモードではなく、afモードと誤認識してしまう。
【0054】
その結果、図3(B)に示すように、PoE受電側機器(PD)2の受電モード検出回路4のCPU5への出力電圧は、時刻t1の時点において、誤って、PoE給電側機器(PSE)1から受電する受電モード(すなわち供給電圧の給電モード)がafモードであることを示すHighレベルに変化する。つまり、PoE給電側機器(PSE)1の給電モードが、瞬断が発生する前のatモードのままであるにも関わらず、誤って、受電モードがafモードであることを示す出力電圧をCPU5に対して出力してしまう。したがって、CPU5は、afモードの受電電において賄うことができる状態に設定するために、PoE受電側機器(PD)2の各種機能を制限する制御を行ってしまう。
【0055】
次に、図4に示す電圧波形図について説明する。図4は、本発明の一実施形態として図1に示したPoE受電側機器(PD)2において本発明に特有の受電電圧開閉部6および開閉制御部7を備えている場合における受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の入力端に設置した観測点bの受電電圧波形と受電モード検出回路4のCPU5への出力電圧波形との一例を示す電圧波形図である。そして、図4には、図3の場合と同様、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を受電するPoE受電側機器(PD)2の受電電圧に瞬断が発生した場合の観測点bにおける受電電圧波形を、図4(A)に示し、受電モード検出回路4のCPU5への出力電圧波形を、図4(B)に示している。なお、PoE給電側機器(PSE)1の給電モードは、図3の場合と同様、atモードであるものとする。
【0056】
図4の場合は、PoE受電側機器(PD)2が本発明に特有の受電電圧開閉部6および開閉制御部7を備えていることによる作用効果として、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧に瞬断が発生した場合であっても、PoE受電側機器(PD)2が、PoE給電側機器(PSE)1から受電する受電電圧の受電モードを誤認識することなく、自PoE受電側機器(PD)2における誤動作を完全に防止している状況を説明するための電圧波形図である。
【0057】
なお、受電電圧開閉部6は、前述したように、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を受電する受電端の位置に設置した観測点aと受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の入力端の位置に設置した観測点bとの間の接続ラインを開閉するスイッチの機能を有している。
【0058】
また、開閉制御部7は、前述したように、受電電圧開閉部6のスイッチを一時的に開閉させる制御を行う機能を有している。そして、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を自PoE受電側機器(PD)2おける受電電圧として受電する受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の入力端の位置に設置した観測点bの電圧を常時監視している。ここで、観測点bにおける受電電圧とは、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3への入力電圧のことである。
【0059】
開閉制御部7は、観測点bにおける受電電圧が、図2に示した閾値Bと閾値Cとの間の電圧値としてあらかじめ任意に定めた電圧閾値Vth以下に低下したことを検出した場合には、PoE給電側機器(PSE)1側がPoE受電側機器(PD)2との接続が切断されたことを認識することが可能な最少時間Tmin以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値Tthに達する時間が経過するまでの間、受電電圧開閉部6のスイッチをオフにするように制御する。しかる後、該時間閾値Tthを超える時間に達すると、受電電圧開閉部6のスイッチをオンにするように制御する。
【0060】
つまり、開閉制御部7は、PoE受電側機器(PD)2がPoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を正常に受電している状態にある場合には、受電電圧開閉部6をスイッチオンの状態に設定して、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3に受電させるとともに、受電した受電電圧の受電モードを検出させる。
【0061】
一方、瞬断等により、PoE受電側機器(PD)2がPoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を正常に受電することができない状態が発生して、観測点bにおける受電電圧が前記電圧閾値Vth以下に低下した場合には、開閉制御部7は、受電電圧開閉部6をスイッチオフの状態に設定して、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧を受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3に受電させない状態にする。
【0062】
さらに、開閉制御部7は、一旦、受電電圧開閉部6をスイッチオフの状態に設定すると、しかる後、観測点bにおける受電電圧が前記電圧閾値Vthを超える電圧値まで回復して正常に受電することができる状態に復帰したとしても、PoE給電側機器(PSE)1側が瞬断等によりPoE受電側機器(PD)2に正常に供給電圧を給電していないことを認識することが可能な前記最少時間Tmin以上の前記時間閾値Tthの時間に達するまでは、受電電圧開閉部6をスイッチオフの状態を継続する。
【0063】
なお、受電電圧開閉部6および開閉制御部7は、PoE給電側機器(PSE)1とは別個のバッテリ等の電源により常時動作可能な状態になっており、PoE給電側機器(PSE)1からの受電電圧の電圧値の如何に関わらず、独立に動作することが可能である。
【0064】
次に、図4の電圧波形図の説明に戻る。時刻t0において、LANケーブルの抜き差し等により、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3の入力端に設置した観測点bにおける受電電圧に瞬断が発生した場合、図3の場合と同様、図4(A)に示すように、観測点bにおける受電電圧は、急速に低下する。そして、閾値B以下にまで低下すると、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3における受電モードの検出動作はオフになり、受電モード検出回路4はPoE給電側機器(PSE)1から受電する受電電圧の受電モードを検出する動作を停止する。
【0065】
さらに、観測点bにおける受電電圧が閾値Bと閾値Cとの間の電圧値としてあらかじめ定めた前記電圧閾値Vth以下にまで低下すると、開閉制御部7は、受電電圧開閉部6のスイッチをオフの状態に設定して、PoE給電側機器(PSE)1と受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3との間の接続ラインを切断し、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3への受電電圧の入力を停止する。
【0066】
その結果、PoE受電側機器(PD)2における受電モード検出回路4のCPU5への出力電圧は、図4(B)に示すように、時刻t0において、受電モードがatモードであることを示すLowレベルの状態から、受電モード検出回路4のプルアップ抵抗により一旦Highレベルに変化するものの、その後、電圧レベルは徐々に低下していく。
【0067】
しかる後、図4においては、時刻t0から300〜400msよりも短い短時間を経過した時刻t1において、PoE給電側機器(PSE)1から受電した受電電圧の瞬断が解消したとしても、開閉制御部7の制御により、PoE給電側機器(PSE)1側がPoE受電側機器(PD)2の受電電圧の切断を認識することができる最少時間Tmin以上の時間閾値Tthの時間が経過するまでの間、受電電圧開閉部6のスイッチオフの状態を継続する。
【0068】
その結果、図3の場合とは異なり、図4(A)に示すように、観測点bにおける受電電圧は、時刻t0から時刻t2に達するまでの最少時間Tmin時間以上の時間を開放状態継続時間としてあらかじめ定めた時間閾値Tthに達するまで時間が経過する時刻t3になるまで、0V近辺の電圧状態が継続する。
【0069】
時刻t0から該最少時間Tmin以上の時間閾値Tthの時間が経過した時刻t3に達すると、開閉制御部7の制御により、受電電圧開閉部6のスイッチはオンの状態に復帰する。その結果、PoE給電側機器(PSE)1からの供給電圧により、図4(A)に示すように、観測点bにおける受電電圧が急速に上昇して、図2に示した閾値Aを上回ると、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3における受電モードの検出動作もオフからオンに切り替わる。
【0070】
一方、PoE給電側機器(PSE)1においても、時刻t0から最少時間Tmin以上の時間閾値Tthの時間が経過した時刻t3まで経過すると、PoE受電側機器(PD)2における受電電圧の切断が発生していることを認識する。したがって、PoE給電側機器(PSE)1は、図4には図示していないが、時刻t3における受電電圧の立ち上がり時点において、ネゴシエーション波形を出力して、PoE受電側機器(PD)2側の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3との間で供給電力(給電の有無、給電電圧レベルおよび給電モード)に関するネゴシエーションを実施する。
【0071】
その結果、PoE受電側機器(PD)2側の受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3は、受電電圧が復旧した後においても、PoE給電側機器(PSE)1から受電している受電電圧の受電モードが瞬断発生前と同じatモードであることを正しく認識することができる。したがって、図4(B)に示すように、受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ3から出力される受電モードの信号形式を変換する受電モード検出回路4がCPU5へ出力する出力電圧も、時刻t3の時点においては、正しく、PoE給電側機器(PSE)1の給電モードと同じatモードの受電モードであることを示すLowレベルの状態に設定される。
【0072】
つまり、図4においては、PoE給電側機器(PSE)1の給電モードが、瞬断が発生する前と同じatモードの電圧範囲の出力電圧をPoE受電側機器(PD)2に対して出力してくるので、PoE受電側機器(PD)2においても、瞬断発生前の受電モードであるatモードの受電電において賄うことができる電力消費状態をそのまま継続して、PoE受電側機器(PD)2の各種機能の開放状態をそのまま継続させることができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0074】
1 PoE給電側機器(PSE)
2 PoE受電側機器(PD)
2A PoE受電側機器(PD)
3 受電側インタフェース(PD I/F)コントローラ
4 受電モード検出回路
5 CPU
6 受電電圧開閉部
7 開閉制御部
図1
図2
図3
図4
図5