特許第6828976号(P6828976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828976活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いた活性エネルギー線硬化性印刷インキ、及び印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828976
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いた活性エネルギー線硬化性印刷インキ、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/48 20060101AFI20210128BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20210128BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20210128BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C08F2/48
   C09D11/101
   C08G18/67 010
   C08F290/06
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-130170(P2016-130170)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-2836(P2018-2836A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】松尾 育男
(72)【発明者】
【氏名】余語 梓
(72)【発明者】
【氏名】山本 誓
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/043431(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0090349(US,A1)
【文献】 特開平08−034945(JP,A)
【文献】 特開2016−104831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2、290、299、C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)のマイケル付加重合体、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と多官能アクリレート化合物(a2)とのマイケル付加反応物を含む(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)、並びにラジカル重合性官能基を有するバインダー樹脂(B)としてジアリルフタレート樹脂、及び重合開始剤(C)を必須成分としており、
かつ、前記重合性希釈剤(A)の配合量が、前記バインダー樹脂(B)の100質量部あたり、50〜1,000質量部となる割合であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性オフセット印刷インキ。
但し、前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)が、25℃における粘度が7,000〜20,000cpsである。
【請求項2】
前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)が、多官能アクリレート化合物(a2)、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と多官能アクリレート化合物(a2)とのマイケル付加反応物との混合物である請求項記載の活性エネルギー線硬化性オフセット印刷インキ
【請求項3】
前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)が、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及び多官能アクリレート化合物(a2)の混合物をマイケル付加反応させたものである請求項記載の活性エネルギー線硬化性オフセット印刷インキ
【請求項4】
前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)が、
ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールジアクリレートの混合物のマイケル付加重合体である請求項1〜3の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化性オフセット印刷インキ。
【請求項5】
前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)が、25℃における粘度が7,000〜8,500cpsである請求項1〜4の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化性オフセット印刷インキ。
【請求項6】
前記重合性希釈剤(A)の配合量が、前記ジアリルフタレート樹脂の100質量部あたり、400〜700質量部となる割合である請求項1〜5の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化性オフセット印刷インキ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化性オフセット印刷インキを印刷してなる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
活性エネルギー線硬化性インキ等の原料として有用な活性エネルギー線硬化性組成物に関する。さらには、該組成物を用いた活性エネルギー線硬化性印刷インキ、及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、塗装基材への熱履歴が少なく、塗膜硬度や擦り傷性に優れるという特長から、家電製品、携帯電話等の各種プラスチック基材用ハードコート剤、紙等のオーバーコート剤、印刷インキ用バインダー、ソルダーレジスト等の様々な分野で使用されている。
【0003】
これらの各種用途のなかで、環境負荷が少なく、かつ、瞬間乾燥が可能であることから、紙容器等のパッケージ印刷を中心に活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキが注目されており、現在、バインダー樹脂としてジアリルフタレート樹脂を用い、重合性希釈剤と組み合わせてインキ用ワニスを調整し実用化されている。
【0004】
ここで、活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキに用いられる重合性希釈剤としては、硬化性に優れる点からジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)が広く使用されている。
【0005】
しかしながら、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートは、それ自体の結晶性が高く、硬化後の塗膜の柔軟性が十分ではなく、これを重合性希釈剤として用いた印刷インキは、印刷後の印刷物を曲げた際にインキ硬化層に割れが生ずる所謂クラック現象が発生しやすいものであった。加えて、硬化反応時に硬化収縮を起こしやすく、乾燥する際、インキ硬化物が原反から剥離しやすいものであった。
【0006】
このようなジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに代わる重合性希釈剤分を用いた印刷インキ用ワニスとしては、例えば、下記特許文献1には、ペンタエリスリトール・トリアクリレートの自己重合体をバインダー成分として用いた印刷インキを製造する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたペンタエリスリトール・トリアクリレートの自己重合体をバインダー樹脂として使用した場合、該重合体自体の粘度が低くそもそも印刷インキの調整自体が困難である他、印刷インキを製造できたとしても粘度不足から印刷時のミスチングが生じるなど印刷適性に劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−34945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、印刷インキに用いた場合に、インキ硬化物の柔軟性に優れクラック現象やインキ硬化物の剥離を効果的に防止できると共に、かつ、印刷適性に優れる活性エネルギー線硬化性組成物、これを用いた活性エネルギー線硬化性印刷インキ、印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)のマイケル付加重合体、又は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と多官能アクリレート化合物(a2)を重合性希釈剤として用い、かつ、その使用量をバインダー樹脂100質量部あたり、50〜1,000質量部となる割合とすることにより、良好な印刷適性を保ちつつ、かつ、インキ硬化物に適度な柔軟性を付与することができるこを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物のマイケル付加重合体(b1)及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と多官能アクリレートとのマイケル付加反応物(b2)から選択される(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)、並びにラジカル重合性官能基を有するバインダー樹脂(B)を必須成分としており、かつ、前記重合性希釈剤(A)の配合量が、前記バインダー樹脂(B)の100質量部あたり、50〜1,000質量部となる割合であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0012】
本発明は、更に、前記活性エネルギー線硬化性組成物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性印刷インキに関する。
【0013】
本発明は、更に、前記活性エネルギー線硬化性印刷インキを用い印刷してなる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、印刷インキに用いた場合に、インキ硬化物の柔軟性に優れクラック現象やインキ硬化物の剥離を効果的に防止できると共に、かつ、印刷適性に優れる活性エネルギー線硬化性組成物、これを用いた活性エネルギー線硬化性印刷インキ、印刷物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、乳化適性評価試験に使用したダクテット試験機(川村理研製)の断面図である。
図2図2は、実施例1及び2にて使用したPETA重合体(7600cps)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、前記した通り、(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)、並びにラジカル重合性官能基を有するバインダー樹脂(B)を必須成分とし、かつ、前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)の配合量が、前記バインダー樹脂(B)の100質量部あたり、50〜1,000質量部となる割合で用いることにより、ミスチング等の印刷適性が飛躍的に改善され、かつ、インキ硬化物の柔軟性を高めることができる。ここで前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)の配合量は、なかでも印刷適性と印刷物物性とのバランスの点から、バインダー樹脂(B)100質量部に対して80〜700質量部となる割合であることが好ましい。特にバインダー樹脂(B)として、後述するジアリルフタレート樹脂(b1)を用いる場合には、該樹脂が高粘度であるために前記割合は、バインダー樹脂(B)100質量部に対して400〜700質量部となる範囲であることが好ましく、また、ウレタン(メタ)アクリレートを用いる場合には、該樹脂自体の粘度が低いことからバインダー樹脂(B)100質量部に対して80〜300質量部となる範囲であることが好ましい。
【0017】
ここで、本発明で用いる(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)は、前記した通り、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)のマイケル付加重合体、又は、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と多官能アクリレート化合物(a2)とのマイケル付加反応物を必須の成分として含むものである。
【0018】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ又はジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート:ビスフェノールAのモノ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのモノ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールFのモノ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
これらのなかでも硬化性とインキ硬化物の柔軟性が良好なものとなる点から脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレートが好ましく、特にペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートがこれらの性能が顕著なものとなる点から好ましく、特にペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
本発明において水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)のマイケル付加重合体とは、上記各化合物における水酸基がマイケル付加反応における求核部位として作用し、他分子における(メタ)アクリロイル基がマイケル受容体として作用するものである。
【0021】
次に、多官能アクリレート化合物(a2)としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレート;ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでも硬化性とインキ硬化物の柔軟性が良好なものとなる点から脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレートが好ましく、特にペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがこれらの性能が顕著なものとなる点から好ましく、特にペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
ここで、前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と前記多官能アクリレート化合物(a2)とのマイケル付加反応物とは、前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)中の水酸基がマイケル付加反応における求核部位として作用し、多官能アクリレート化合物(a2)における(メタ)アクリロイル基がマイケル受容体として作用するものである。
【0023】
本発明では、このようなマイケル付加反応させて得られる(メタ)アクリロイル基を有する化合物を重合性希釈剤(A)として含むものであるが、該重合性希釈剤(A)は、25℃における粘度が7,000〜20,000cpsのものであることが、印刷適性とインキ硬化物の柔軟性とのバランスに優れたものとなる点から好ましい。本発明ではこれらのバランスの点から、25℃における粘度が7,000〜10,000cps、特に25℃における粘度が7,000〜8,500cpsの範囲であることが特に好ましい。
【0024】
上記した(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)のなかでも、特に、多官能アクリレート化合物(a2)、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と多官能アクリレート化合物(a2)とのマイケル付加反応物との混合物であることが、印刷インキ粘度の調整が容易であり、優れた印刷適性が発現される点から好ましい。
【0025】
斯かる混合物は、具体的には、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及び多官能アクリレート化合物(a2)の混合物をマイケル付加反応させることによって得ることができる。斯かるマイケル付加反応は常温(25℃)乃至150℃の温度条件下で塩基性触媒の存在下に行うことができる。また、この反応時間の長さによって生成する(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)の粘度を調整することが可能であり、前記した通り、7,000〜20,000cpsの範囲となる様に、反応時間を適宜調整することが好ましい。
【0026】
前記した水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及び多官能アクリレート化合物(a2)の混合物をマイケル付加反応させて、粘度が7,000〜20,000cpsの反応生成物を得る場合、該反応生成物は、多官能アクリレート化合物(a2)の未反応成分と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)の一分子と多官能アクリレート化合物(a2)の一分子の付加反応物である2量体成分、3量体以上に重合した高分子量重合体成分を含むものとなる。本発明では、多官能アクリレート化合物(a2)の未反応成分と、前記2量体成分との比率が、GPCチャートにおけるピーク面積比で[多官能アクリレート化合物(a2)未反応成分]/[2量体]が100/4〜100/60の範囲であることが流動性及び硬化性の点から好ましい。なお、ここでGPCチャートにおけるピーク面積比とは、GPCチャートの印刷物から各ピークを切り抜きし、そのピーク毎の切断片の重量を比較する方法が挙げられる。
【0027】
例えば、前記した水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)及び多官能アクリレート化合物(a2)の混合物として、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレートを主たる成分とする(メタ)アクリレート混合物を用いる場合、多官能アクリレート化合物(a2)は、下記一般式1
【0028】
【化1】

(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表す。)
で表され、かつ、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)の一分子と多官能アクリレート化合物(a2)の一分子の付加反応物である2量体成分は、下記一般式2
【0029】
【化2】

(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表す。)
で表されることとなる。
【0030】
また、該反応生成物中に含まれる3量体以上の高分子量重合体の含有率は、GPCチャートにおけるピーク面積基準で該反応生成物中30〜60質量%の範囲であることが硬化収縮を効果的に抑制でき印刷物におけるインキ硬化物の剥離防止、柔軟性が良好なものとなる点から好ましい。
【0031】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物で用いるラジカル重合性官能基を有するバインダー樹脂(B)は、具体的には、ジアリルフタレート樹脂(b1)、エポキシ(メタ)アクリレート(b2)、及びウレタン(メタ)アクリレート(b3)が挙げられる。
【0032】
ここで用いるジアリルフタレート樹脂(b1)は、ジアリルフタレートの重合体であるジアリルフタレート樹脂、ジアリルイソフタレートの重合体が挙げられる。
【0033】
エポキシ(メタ)アクリレート(b2)としては、エポキシ樹脂と重合性不飽和基を有するモノカルボン酸とを反応させて得られる化合物が挙げられる。ここで前記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールSノボラック型エポキシ樹脂、メトキシ基含有ノボラック型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも特にエポキシ当量170〜500g/eqの範囲にあるビスフェノール型エポキシ樹脂、とりわけビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが乳化特性に優れ、印刷インキとして用いた場合に優れた印刷適性が得られる点から好ましい。
【0034】
一方、上記エポキシ樹脂と反応させる、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が挙げられるが、特に印刷適性の点からアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、とりわけアクリル酸が好ましい。
【0035】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレート(b3)は、多官能型芳香族イソシアネート(b3−a)と水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)とを反応させて得られるものが挙げられるが、本発明では、特に、多官能型芳香族イソシアネート(b3−a)と水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)とを、前者(b3−a)のイソシアネート基(b3−a’)に対する後者の水酸基(b3−b’)の割合[(b3−b’)/(b3−a’)]が、0.99〜0.40となる割合で反応させ、次いで、得られた反応生成物にポリオール(b3−c)を反応させることにより得られる、(メタ)アクリロイル基濃度1.5〜4.0mmol/gのウレタン(メタ)アクリレート樹脂が印刷適性に優れ、かつ、硬化性に優れる点から好ましい。
【0036】
ここで、前記(メタ)アクリロイル基濃度1.5〜4.0mmol/gのウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、原料ポリイソシアネートとして芳香族ポリイソシアネート(a)を用いることから印刷適性が良好な印刷インキとなる。また、芳香族ポリイソシアネート(b3−a)と水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)とを、後者が比較的多くなる割合で反応させ、ついで、ポリオール(b3−c)で架橋させることにより、(メタ)アクリロイル基濃度が高く、かつ、分子量を比較的小さくでき、印刷インキとして優れた硬化性と印刷適性とを兼備させることができる。ここで、前記割合[(b3−b’)/(b3−a’)]が0.99を上回る場合には、印刷インキ中に皮膚刺激性の高い水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)が残存し易くなり、印刷インキを取り扱う上での安全性や衛生面での問題が生じる他、最終的に得られる樹脂の分子量が上がらず硬化性やミスチング性の低下を招くこととなる。一方、前記割合[(b3−b’)/(b3−a’)]が0.40を下回る場合には、次工程であるポリオール(b3−c)による架橋反応に寄与するイソシアネート基が多く残存することから、合成途中にてゲル化を生じやすくなる他、仮に樹脂を合成できたとしても、最終的に得られるウレタン(メタ)アクリレート樹脂中の芳香族性が低下し、オフセット印刷適性が低下する。
【0037】
ここで用いる多官能型芳香族イソシアネート(b3−a)は、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及びこれらのイソシアネート化合物と多官能アルコールとのアダクト物などのイソシアネート基を1分子あたり3つ以上有する成分を含む多官能型ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらの多官能型芳香族イソシアネートは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。本発明では原料多官能イソシアネート化合物の化学構造中に芳香族構造を持たせることにより、最終的に得られるウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いた印刷インキにした際、優れた硬化性を発現させることができる。
【0038】
これらのなかでも、特に、イソシアネート基を1分子あたり3つ以上有する成分(3官能以上の成分)を含む多官能型ポリイソシアネート化合物が、硬化性により優れたUV硬化型インキが設計できることから好ましく、具体的には、3官能以上の成分を30質量%以上の割合で含有するものが好ましい。このような3官能以上の成分を含む芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられ、特に粘度100〜700mPa・sのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートがより好ましい。ここで、粘度はE型粘度計(25℃)にて測定した値である。
【0039】
次に、前記多官能型芳香族イソシアネート(b3−a)と反応させる水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル等の水酸基含有(メタ)アクリレート;前記水酸基含有(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド付加物、前記水酸基含有(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド付加物、テトラメチレングリコール付加物、ラクトン付加物等が挙げられる。これらの水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)はそれぞれ単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、特にヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートが、組成物の硬化性に優れたものとなる点から好ましい。
【0040】
前記多官能型芳香族イソシアネート(b3−a)と、前記水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)とを反応させる方法としては、多官能型芳香族イソシアネート(a)及び、必要に応じて公知慣用のウレタン化触媒を加え20〜120℃に加熱し、前記水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)の所定量を連続的乃至断続的に反応系内に加え反応させる方法が挙げられる。
【0041】
また、この際、前記多官能型芳香族イソシアネート(b3−a)と、前記水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)と共に、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールに代表される高級アルコール、及び、ひまし油等の水酸基含有油脂を反応原料の合計100質量部中、0.1〜30質量部となる割合で用い反応させることにより、最終的に得られる印刷インキの流動性と耐ミスチング性を飛躍的に向上させることができる。
【0042】
次に、このようにして得られた反応生成物を、ポリオール(b3−c)と反応させることにより目的とするウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得ることができる。ここで、前記ポリオール(b3−c)は、その分子量が90〜400の範囲にある脂肪族多価アルコールであることが硬化性や印刷適性の点から好ましい。即ち、分子量が90を下回る場合には、適度なオフセット印刷適性の改善効果が小さくなり、一方、該分子量が400を上回る場合には、最終的に得られる、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の官能基濃度が低くなり、硬化性の改善効果が小さくなる。
【0043】
この様な観点から、具体的には、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、トリプロピレングリコール等の2官能型ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能型ポリオール;ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等の4官能型ポリオール;ジペンタエリスリトール等の6官能型ポリオール;及び前記3官能型ポリオールのエチレンオキサイド付加物(一分子あたり平均1〜4モル付加)、前記3官能型ポリオールのプロピレンオキサイド付加物(一分子あたり平均1〜4モル付加)、前記3官能型ポリオールの1,3−ブタンジオール付加物(一分子あたり平均1〜2モル付加)、前記4官能型ポリオールのエチレンオキサイド付加物(一分子あたり平均1〜3モル付加)、前記6官能型ポリオールのエチレンオキサイド付加物(一分子あたり平均1〜3モル付加)等が挙げられる。これらのポリオール(c)は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。これらのなかでも、適度な分岐構造を持つウレタン(メタ)アクリレート樹脂が得られ、優れたオフセット印刷適性と硬化性とを発現できる点からグリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能型ポリオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリプロピレングリコールが好ましく、とりわけグリセリン、及びトリメチロールプロパン等の3官能型ポリオールがミスチング性、硬化性に優れる点から特に好ましい。
【0044】
ここで、ポリオール(b3−c)を(b3−a)成分〜(b3−c)成分の合計質量に対して1〜15質量%となる割合で加えることが、最終的に得られる前記バインダー樹脂(B)中の(メタ)アクリロイル基濃度が高まり、硬化性や印刷適性が飛躍的に向上する点から好ましい。
【0045】
芳香族ポリイソシアネート(b3−a)及び水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)の反応生成物と、前記ポリオール(b3−c)との反応は、該反応生成物に対して、ポリオール(c)を加え、20〜120℃に加熱し、イソシアネート基を示す2250cm−1の赤外吸収スペクトルが消失するまで反応を行う方法が挙げられる。
【0046】
この様にして得られるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、芳香族ポリイソシアネート(b3−a)と水酸基含有モノ(メタ)アクリレート(b3−b)との反応生成物が、前記ポリオール(b3−c)を介して結節された構造を持つ(メタ)アクリロイル基濃度の高いウレタン(メタ)アクリレート樹脂となる。具体的には、前記前記バインダー樹脂(B)の(メタ)アクリロイル基濃度が1.5〜4.0mmol/gの範囲となるものであり、これにより優れた硬化性を発現させることができる。
【0047】
この様にして得られるウレタン(メタ)アクリレート樹脂(b3)は、その重量平均分子量(Mw)が3000〜40000の範囲にあるものであることが流動性とミスチング性、及び印刷適性に優れた印刷インキとなる点から好ましい。
【0048】
上記したバインダー樹脂(B)の中でも、ジアリルフタレート樹脂(b1)が、印刷適性が優れることに加え、樹脂に起因する低分子量成分の溶出が少なく、かつ、光硬化性化合物への溶解性に優れる点から好ましいが、該ジアリルフタレート樹脂中には生殖毒性の懸念のあるジアリルフタレートモノマーが残存することが懸念されており、安全性や衛生面の観点からウレタン(メタ)アクリレート(b3)が好ましい。
【0049】
尚、本願発明において、前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)の未反応成分、2量体、3量体以上の成分の各組成比率を測定する際のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)測定条件、及び前記バインダー樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)を測定する際のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)測定条件は以下の通りである。
【0050】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0051】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において用いる重合開始剤(C)は、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシム系化合物、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;
【0052】
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ((4−メチルチオ)フェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアミノアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0053】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、
ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、
アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;その他10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらのなかでも特に硬化性に優れる点からアミノアルキルフェノン系化合物が好ましく、また、特に発光ピーク波長が350〜420nmの範囲の紫外線を発生するUV−LED光源を活性エネルギー線源として用いた場合には、アミノアルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、及びアミノベンゾフェノン系化合物を併用することが硬化性に優れる点から好ましい。
【0054】
これらの重合開始剤(C)の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、その合計使用量として1〜20質量部となる範囲であることが好ましい。即ち、重合開始剤(C)の合計使用量が1質量部以上の場合は良好な硬化性を得ることができ、また20質量部以下の場合は、未反応の重合開始剤(C)が硬化物中に残存することによるマイグレーションや、硬化物硬度等の物性低下といった問題を回避できる。これらの性能バランスがより良好なものとなる点から、特に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、その合計使用量が3〜15質量部となる範囲であることがより好ましい。
【0055】
また、活性エネルギー線として紫外線を照射して、印刷物や塗膜などの硬化物膜とする場合には、前記した重合開始剤(C)の他に、光増感剤を利用することで硬化性を一層向上させることが可能である。斯かる光増感剤は、例えば、脂肪族アミン等のアミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。これら光増感剤の使用量は、硬化性向上の効果が良好なものとなる点から本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、その合計使用量として1〜20質量部となる範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、以上詳述した(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)、ラジカル重合性官能基を有するバインダー樹脂(B)、及び重合開始剤(C)に加え、本発明の効果を損なわない範囲で(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)の他の重合性希釈剤を配合することができる。
【0057】
ここで用いる他の重合性希釈剤は、例えば、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのモノ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのモノ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールFのモノ(メタ)アクリレート、モノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の一官能性重合性単量体;CH=CHCOO(CH[Si(CHO]nSi(CH、CH=C(CH)COOC〔Si(CHO)nSi(CH、CH=C(CH)COO(CH3[Si(CHO]nSi(CH、CH=C(CH)COO(CH2)3[Si(CH)(C)○]nSi(CH、あるいはCH=C(CH)COO(CH[Si(CO]nSi(CH(ただし、各式中のnは0または1〜130なる整数であるものとする。)等のポリシロキサン結合含有単量体;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(トリス−β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランまたはN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびその塩酸塩;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、4−ジメチルアミノブチルビニルエーテル、4−ジエチルアミノブチルビニルエーテル、6−ジメチルアミノヘキシルビニルエーテル等の3級アミンを有する各種ビニルエーテル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、iso−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA及びビスフェノールF等のビスフェノールにアルキレンオキサイドを付加させた化合物と(メタ)アクリル酸との反応物である、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールのポリ(メタ)アクリレート;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の各種不飽和二塩基酸類等の各種2価カルボン酸のジビニルエステル類等の2官能単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド付加脂肪族多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート等のε−カプロラクトン付加脂肪族多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート挙げられる。
【0058】
上記した他の重合性希釈剤は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における重合性希釈剤成分中50質量%以下の範囲で使用することが好ましい。なお、上記他の重合性希釈剤が、前記(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)中に含まれる未反応成分と同一物質である場合には、該物質は当該「他の重合性希釈剤」には含まれないものとする。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を活性エネルギー線硬化性印刷インキとして用いる場合、上記した(A)〜(C)の各成分をその他の配合成分と共に一度に混合してもよいし、或いは、前記前記バインダー樹脂(B)に、(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)を必須とする重合性希釈剤成分を予め加えて樹脂溶液状の組成物として、印刷インキの調整に供してもよい。この場合、該樹脂溶液状の組成物は、前記バインダー樹脂(B)及び(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)を含む組成物に、更に酢酸ブチルを加え不揮発分80質量%にした状態で、E型粘度計(25℃)にて測定した粘度が0.5〜10.0Pa・sの範囲とすることが、その後の印刷インキの調整のし易さ、及び、オフセット印刷適性の点から好ましい。
【0060】
また、活性エネルギー線硬化性印刷インキを調整する際の各成分の配合割合は、例えば、印刷インキ中、前記前記バインダー樹脂(B)が15〜40質量%、重合開始剤(C)が2〜10質量%、(メタ)アクリロイル基含有重合性希釈剤(A)を含む重合性希釈剤成分が30〜65質量%、顔料が10〜30質量%、その他の成分は総量で0.5〜10質量%となる割合で配合することができる。
【0061】
また、活性エネルギー線硬化性印刷インキとして用いる場合、上記(A)〜(C)の各成分の他、顔料、染料、体質顔料、有機又は無機フィラー、有機溶剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料分散剤、ワックス等の添加剤を使用することができる。
【0062】
本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキを製造する方法は、上記した各成分を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉する方法が挙げられる。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物、更に活性エネルギー線硬化性印刷インキは、基材に印刷後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。これらのなかでも特に、硬化性の点から紫外線が好ましい。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化性塗料を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、UV−LED、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0065】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキに用いる顔料としては、公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0066】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキには、体質顔料として無機微粒子を用いてもよい。無機微粒子としては、酸化チタン、クラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料; 等の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら無機微粒子は、インキ中に0.1〜20質量部の範囲で使用することにより、インキの流動性調整、ミスチング防止、紙等の印刷基材への浸透防止といった効果を得ることが可能である。
【0067】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキに適する印刷基材としては、カタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いる紙基材;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の各種食品包装用資材に用いられるフィルム、アルミニウムフォイル、合成紙、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0068】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキの印刷方法としては、例えば、平版オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。
【0069】
本発明は、インキの乳化特性が向上する点において、特に版面に水を連続的に供給する平版オフセット印刷において好適に利用することができる。水を連続供給するオフセット印刷機は多数の印刷機メーカーによって製造販売されており、一例としてハイデルベルグ社、小森コーポレーション社、リョービMHIグラフィックテクノロジー社、マンローランド社、KBA社等を挙げることができ、またシート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても本発明を好適に利用することが可能である。更に具体的には、ハイデルベルグ社製スピードマスターシリーズ、小森コーポレーション社製リスロンシリーズ、リョービMHIグラフィックテクノロジー社製ダイヤモンドシリーズ等のオフセット印刷機を挙げることができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(赤外吸収スペクトルの測定条件)
[機種] 日本分光株式会社製 FT/IR−4100
[測定条件]イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルを確認することで反応完結を確認した。
【0071】
(GPC測定条件)
PETA重合体[ペンタエリスリトールテトラアクリレート+ペンタエリスリトールトリアクリレート+ペンタエリスリトールジアクリレートの混合物のマイケル付加重合体]のGPC測定、及びウレタンアクリレート樹脂のGPC測定は、下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0072】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0073】
製造例1 (ウレタンアクリレート樹脂の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた四つ口フラスコに、第一工程として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製「ミリオネートMR−400」2核体成分29質量%、3核体以上の成分71質量%)59.4質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン0.1質量部、メトキシハイドロキノン0.02質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を加え、75℃に昇温し、2−ヒドロキシエチルアクリレート37.3質量部を1時間にわたって攪拌下で滴下した。滴下後、75℃で3時間反応させた後、第二工程として、グリセリン3.3質量部を添加し、さらに75℃で反応させ、イソシアネート基を示す2250cm−1の赤外吸収スペクトルが消失するまで反応を行い、アクリロイル基濃度3.22mmol/g、重量平均分子量(Mw)5438のウレタンアクリレート樹脂を得た。
【0074】
実施例16〜30、及び比較例1、2
〔光硬化性印刷インキの製造方法〕
表1及び表2に示す組成に従って原料を配合し、ミキサーで均一に撹拌した後に三本ロールミルにて練肉製造することで、実施例及び比較例の刷インキを製造した。
【0075】
〔乳化特性の評価(ダクテット試験)〕
各実施例及び比較例で調整した印刷インキの乳化特性をダクテット試験機(川村理研製)を用いて実施した。
ダクテット試験機の断面図を図1に示す。外筒3は内部がくりぬかれた、底面を有する円筒状の金属であり、内部に評価インキ7を投入できる構造となっている。インキ7(5グラム)投入後に円柱棒状の金属である内筒2を図1に示す通り、外筒3の底面から1ミリメートルの距離に近接するまで差し込む。その後内筒を2000rpmで時計回りに、外筒も60rpmで時計回りに回転させ、速度差をつけることでインキ7にシェアーがかかり撹拌される。撹拌後3分間が経過した時点で、撹拌を継続しながら蒸留水を0.5(グラム/分)の速度でインキ7の直上に滴下することで、インキ7と滴下された蒸留水は即時に撹拌混合される(乳化)。蒸留水の滴下は10分間継続され、蒸留水の滴下量が合計5グラムに達した時点で終了される。
ダクテット試験機は、外筒3は外筒用駆動モーター5によって回転し、内筒2は内筒用駆動モーター1によって回転する構造を有し、また外筒3内部のインキ7の温度が一定となるよう、恒温水槽4を備え水道水6の温度は常に30℃に保たれている。
インキ7(5グラム)と蒸留水(5グラム)の撹拌混合が終了した後、内筒2内部にある余剰蒸留水(インキ中に取り込まれずに余った水)の重量(グラム)を秤量する。これにより、インキ7中に取り込まれた蒸留水の総重量Yは
【0076】
Y(グラム)=全投入蒸留水(5グラム)−余剰蒸留水の重量
【0077】
で示され、インキ7の乳化率Zは、
Z(%)=Y÷(インキ7(5グラム)+Y)×100
で示される。
(ここで、例えば、投入した蒸留水5グラム全てがインキ中に取り込まれ、余剰蒸留水が0グラムであった場合には、Y=5(グラム)、Z=50(%)と計算される。)
【0078】
インキ乳化率Z(%)の数値が低いほど、乳化水分を適切に排除する特性に優れており、下記に述べるインキのオフセット印刷適性にも優れ、過乳化やこれに起因する濃度低下等の印刷トラブルが発生しにくい。下記の基準に従って乳化適性を評価した。
3:乳化率Z(%)が25%未満であり、乳化適性は良好である。
2:乳化率Z(%)が25%以上〜35%未満であり、乳化適性は中位である。
1:乳化率Z(%)が35%以上であり、乳化適性が劣っている。
【0079】
〔印刷適性:ミスチング性〕
ミスチングの評価方法としては、インコメーター式ミスチング試験機にインキ1.5mlを載せて、機械温度32℃、1200rpmで三分間回転させた。回転に伴いインキが飛び回転体に沿って並べた紙の重量増加変化でミスチングの優劣を比較した。ミスチングが悪い場合はインキの飛ぶ量が増加し紙の重量が増える。
(評価基準)
○:試験片の重量増加が0.050g未満であり、ミスチング適性は良好である。
△:試験片の重量増加が0.050g〜0.150g未満であり、ミスチング適性は中位である。
×:試験片の重量増加が0.150g以上であり、ミスチング適性は不良である。
【0080】
〔印刷適性:濃度安定性〕
各実施例及び比較例で得た印刷インキについて、オフセット印刷適性を評価した。紫外線照射装置としてアイグラフィックス社製水冷メタルハライドランプ(出力160W/cm、3灯使用)を搭載したマンローランド社製オフセット印刷機(ローランドR700印刷機、幅40インチ機)を用いて、毎時9000枚の印刷速度にてオフセット印刷を実施した。印刷用紙には王子製紙社製OKトップコートプラス(57.5kg、A判)を使用した。版面に供給される湿し水は、水道水98重量%とエッチ液(FST−700、DIC社製)2重量%を混合した水溶液を用いた。
この際、まず印刷機の水供給ダイヤルを40(標準水量)にセットし、印刷物濃度が標準プロセス墨濃度1.8(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)となるようインキ供給キーを操作し、濃度が安定した時点でインキ供給キーを固定した。その後インキ供給キーを固定したままの条件で、水供給ダイヤルを40から55に変更し水供給量を増やした条件で300枚印刷し、300枚後の印刷物の墨濃度を測定した。
水供給量を増やした状態においても印刷物の濃度低下が少ないほど、乳化適性に優れ、印刷適性に優れたインキと評価できる。下記の基準に従って活性エネルギー線硬化型インキの印刷適性を評価した。
○:印刷物の墨濃度が1.7以上であり、オフセット印刷適性は良好である。
△:印刷物の墨濃度が1.6以上〜1.7未満であり、オフセット印刷適性は中位であ
る。
×:印刷物の墨濃度が1.6未満であり、オフセット印刷適性は不良である。
【0081】
〔展色物の製造方法及び柔軟性評価〕
簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、コートボール紙(王子マテリア社製UFコート、米坪350g/m2)の表面に、200cm2の面積にわたって墨濃度1.8(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)で均一に塗布されるように展色し、展色物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
インキ塗布後の展色物に活性エネルギー線である紫外線(UV)照射を行い、インキ皮膜を硬化させた。水冷メタルハライドランプ(出力100W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し、展色物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を分速100メートルの速度で通過させることにより、インキ皮膜を硬化させた。
【0082】
(曲げ試験)
机の角(角度90°)に展色物の裏面を押し当てた状態で、印刷物の両端を手で掴んで10往復強くしごいた。本評価方法により、印刷物表面のインキ組成物の硬化塗膜に物理的な負荷が生じることから、評価後の硬化塗膜表面の割れを観察することにより、柔軟性を次の3段階で評価した。
○:硬化塗膜に割れは発生せず、柔軟性は良好である。
△:硬化塗膜に微小な割れが発生しており、柔軟性は中位である。
×:硬化塗膜に明確な割れが発生しており、柔軟性は不良である。
【0083】
(密着試験)
紫外線照射後における硬化塗膜の密着性の評価方法としては、テープ剥離テストにより確認した。展色物は、上記〔展色物の製造方法〕におけるコートボール紙をPPフィルム(ハイピークリスタルST−200)に代えて用意した。セロハンテープを紫外線照射後のインキ皮膜に強く押し付け、素早く垂直方向に引き上げて剥がすことにより、インキ皮膜の基材上への密着状態を、次の3段階で評価した。
○:ほぼ密着しており、インキ塗膜とPPフィルムが剥離していない面積が80%以上残っている
△:中位に接着しており、インキ塗膜とPPフィルムが剥離していない面積が40〜80%未満残っている
×:僅かに接着しており、インキ塗膜とPPフィルムが剥離していない面積が40%未満である
【0084】
〔流動性〕
JIS K5101,5701に準拠し、スプレッドメーター法(平行板粘度計)によって流動性を評価した。各実施例及び比較例で得られた印刷インキが、水平に置いた2枚の平行板の間に挟まれている状態から、荷重板の自重(115グラム)によって、同心円状に広がる特性を経時的に観察し、60秒後のインキの広がり直径をダイアメーター値(DM[mm])とし、インキ印刷適性が良好となる次の3段階で評価した。
本評価項目においてDMが30mm未満となる組成では、印刷機上で壺切れ、インキローラ間の転移不良といった印刷適性面での不良が発現し易くなる。
○:35mm以上〜
△:30〜35mm未満
×:30mm未満
【0085】
【表1】


【0086】
【表2】

表1〜表2で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
カーボンブラック:コロンビアンケミカル社製カーボンブラック「ラーベン 1060P」
炭酸マグネシウム:ナイカイ塩業社製塩基性炭酸マグネシウム「炭酸マグネシウムTT」
S−381−N1:ポリオレフィンワックス(シャムロック社製ワックス「S−381−N1」)
ジアリルフタレート樹脂:ダイソー社製ジアリルフタレート樹脂「ダイソーダップA」
PETA重合体(7600cps):ペンタエリスリトールテトラアクリレート+ペンタエリスリトールトリアクリレート+ペンタエリスリトールジアクリレートの混合物のマイケル付加重合体[GPCピーク比(質量比)が3量体以上の高分子量体/2量体/未反応の4官能アクリレート/未反応の3官能以下のアクリレート=140/53/100/16]
PETA重合体(6500cps):ペンタエリスリトールテトラアクリレート+ペンタエリスリトールトリアクリレート+ペンタエリスリトールジアクリレートの混合物のマイケル付加重合体[GPCピーク比(質量比)が3量体以上の高分子量体/2量体/未反応の4官能アクリレート/未反応の3官能以下のアクリレート=130/49/107/23]
PETA重合体(4500cps):ペンタエリスリトールテトラアクリレート+ペンタエリスリトールトリアクリレート+ペンタエリスリトールジアクリレートの混合物のマイケル付加重合体[GPCピーク比(質量比)が3量体以上の高分子量体/2量体/未反応の4官能アクリレート/未反応の3官能以下のアクリレート=120/43/115/31]
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(MIWON社製「MIRAMER M600」、4000−7000mPa・s(25℃))
IRGACURE 907:α-アミノアルキルフェノン(BASF社製「Irgacure907」)
EAB−SS:4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(大同化成社製「EAB−SS」)
ステアラーTBH:精工化学社製重合禁止剤(2−tert−ブチルハイドロキノン)「ステアラーTBH」
【符号の説明】
【0087】
a:3量体以上の高分子量体のピーク
b:2量体のピーク
c:未反応単量体(4官能アクリレート)のピーク
d:未反応単量体(3官能以下のアクリレート)のピーク
1 内筒用駆動モーター
2 内筒
3 外筒
4 恒温水槽
5 外筒用駆動モーター
6 水道水
7 評価インキ
図1
図2