特許第6828999号(P6828999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828999
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】工事管理システムおよび工事管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20210128BHJP
   G06Q 10/06 20120101ALI20210128BHJP
【FI】
   G06Q50/08
   G06Q10/06 326
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-27215(P2016-27215)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-146735(P2017-146735A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴来
【審査官】 加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−355295(JP,A)
【文献】 特開2015−114706(JP,A)
【文献】 特開2002−366718(JP,A)
【文献】 特開2012−208744(JP,A)
【文献】 特開2001−344249(JP,A)
【文献】 大前,我が国の職業性疾病対策の現状,日本臨床,株式会社日本臨牀社,2014年 2月 1日,Vol.72, No.2,p.204-209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置および演算装置を備え対象工事の工事管理のための管理情報を提供する工事管理システムにおいて、
前記記憶装置は、前記対象工事における複数の作業のそれぞれの内容に関する作業情報を記憶する作業内容情報記憶部、前記対象工事に参加する作業員および指導員の少なくともいずれかの技量に関する技量情報を記憶する作業員技量情報記憶部および指導員技量情報記憶部、前記対象工事における設計した機器の性能を確認する設計者を含む一次立ち入り者である非常駐者の作業に関する作業情報を記憶する非常駐者作業情報記憶部を有し、
前記演算装置は、前記作業内容情報記憶部に記憶された前記作業情報、前記作業員技量情報記憶部および前記指導員技量情報記憶部に記憶された前記作業員および前記指導員の少なくともいずれかの技量に関する技量情報、前記非常駐者作業情報記憶部に記憶された前記非常駐者の作業に関する作業情報に基づき、前記複数の作業のそれぞれについてのリスク度、前記作業員および前記指導員を含む作業関係者に起因するリスク度、および前記非常駐者の現場に立ち入る目的や立ち入り時の現場での行為に起因するリスク度、を評価するリスク評価部を有する、
ことを特徴とする工事管理システム。
【請求項2】
前記作業情報は、前記複数の作業のそれぞれが行なわれる作業エリアを示す作業エリア情報を含み、
前記演算装置は、前記複数の作業のそれぞれの前記リスク度を当該作業の前記作業エリア情報とともに出力する出力表示装置を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の工事管理システム。
【請求項3】
前記記憶装置は、前記対象工事における前記複数の作業のそれぞれの工程に関する工程情報を記憶する工程情報記憶部を有し、
前記記憶装置の前記作業内容情報記憶部に記憶される前記作業情報には、前記複数の作業のそれぞれの作業エリアに関する作業エリア情報を含み、
前記演算装置は、前記工程情報記憶部に記憶された前記工程情報および前記作業内容情報記憶部に記憶された前記作業エリア情報に基づき、予め定めた期間における前記作業エリアでの前記複数の作業の干渉を評価する干渉評価部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の工事管理システム。
【請求項4】
入力部をさらに有し、
前記作業エリア情報は、タッチペンで必要エリアをなぞることにより、前記作業エリアを画面上で指定することにより入力可能である、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の工事管理システム。
【請求項5】
前記記憶装置は、前記作業エリアのエリア放射線のレベルに関する情報を収納するエリア放射線レベル情報記憶部をさらに有し、
前記演算装置は、前記エリア放射線に起因するリスク度をさらに評価する、
ことを特徴とする請求項ないし請求項4のいずれか一項に記載の工事管理システム。
【請求項6】
前記記憶装置は、不適合事例情報を収納する不適合事例情報記憶部をさらに有し、
前記演算装置は、前記不適合事例情報の中から前記対象工事に関連するものを摘出する不適合事例評価部をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の工事管理システム。
【請求項7】
対象工事の管理情報を提供する工事管理方法において、
作業内容情報記憶部が前記対象工事のうちの複数の作業のそれぞれの内容に関する作業情報を記憶する情報収納ステップと、
リスク評価部が、前記作業情報に基づいて、前記複数の作業のそれぞれについてのリスク度を評価するリスク評価ステップと、
を有し、
前記情報収納ステップより前に、作業員技量情報記憶部または指導員技量情報記憶部が前記対象工事に参加する作業員および指導員の少なくともいずれかの技量に関する技量情報を記憶する技量情報記憶ステップおよび非常駐者作業情報記憶部が前記対象工事における設計した機器の性能を確認する設計者を含む一次立ち入り者である非常駐者の作業に関する作業情報を記憶する非常駐者作業情報記憶ステップをさらに有し、
前記リスク評価ステップは、前記作業情報および、前記作業員および前記指導員の少なくともいずれかの技量に関する技量情報、前記非常駐者の作業に関する作業情報に基づいて、前記作業員および前記指導員を含む作業関係者および前記非常駐者に係るリスク度を評価するステップをさらに有する、
ことを特徴とする工事管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラント設備内などの工事の工程管理およびエリア管理のための工事管理システムおよび工事管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの建設における各機器・装置の搬入・据付工事、あるいは、プラント設備の一部の機器・装置等の更新工事や点検工事などは、全体工程の中の限られた工期内で行われる。プラント内の機器・装置の供給会社、あるいはメンテナンス会社は複数に亘るため、工事担当会社は、複数社に亘る。また、それぞれの工事は、複数の作業項目に細分化されるが、工事担当会社内の工事体制に基づいて、それぞれの作業項目を担う作業主体も複数に亘る。
【0003】
また、プラントの建設の場合においても、定期点検においても、複数の工事が並行して行われる。あるいは、1つの工事のみを行う場合であっても、複数の作業が並行して実施されることもある。したがって、同一エリア、同一時期に複数の作業が行われることも多い。
【0004】
狭隘な場所で複数の作業が並行して行われているような状況において、安全および品質を維持しつつ、工事をスケジュール通り進めていくには、工事の進捗遅れ、災害、品質不適合リスクの高い工事内容およびエリアを把握し、それらを重点的に管理していく必要がある。
【0005】
プラント設備内などの工事の作業工程とその作業区画を、工程管理システムを用いて管理する手法が、従来も提案されている。各グループや各施工会社の担当者が作業に必要なエリアを図示して提示し合い、干渉があれば、日時の調整、作業エリアの縮小などにより、作業遅延のみならず労働災害の発生の防止を図っている。また、作業における災害リスクの低減対策がなされていることを、その作業開始前までに十分に確認することもなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4896832号公報
【特許文献2】特許第5751477号公報
【特許文献3】特開2014−81862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
作業に伴うエリアを管理する工程管理システムおよび工程管理方法としては、例えば、工程情報の属性として占有度と危険度を登録することにより、作業エリアの干渉状況や災害リスクの高いエリアを可視化する技術が知られている。
【0008】
ただし、前述の通り、作業エリアの干渉をチェックするにあたっては、作業者の安全が担保できているかについて、十分に確認がなされる必要がある。本来、リスクは、複合的な要因で変動するものであり、ユーザが任意に登録した占有度と危険度だけでは、必ずしも、正しい評価のためには十分とは言えないという問題があった。
【0009】
本発明の実施形態は、上記課題に鑑みてなされたものであり、工事管理において、災害、品質不適合を未然に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本実施形態は、記憶装置および演算装置を備え対象工事の工事管理のための管理情報を提供する工事管理システムにおいて、前記記憶装置は、前記対象工事における複数の作業のそれぞれの内容に関する作業情報を記憶する作業内容情報記憶部、前記対象工事に参加する作業員および指導員の少なくともいずれかの技量に関する技量情報を記憶する作業員技量情報記憶部および指導員技量情報記憶部、前記対象工事における設計した機器の性能を確認する設計者を含む一次立ち入り者である非常駐者の作業に関する作業情報を記憶する非常駐者作業情報記憶部を有し、前記演算装置は、前記作業内容情報記憶部に記憶された前記作業情報、前記作業員技量情報記憶部および前記指導員技量情報記憶部に記憶された前記作業員および前記指導員の少なくともいずれかの技量に関する技量情報、前記非常駐者作業情報記憶部に記憶された前記非常駐者の作業に関する作業情報に基づき、前記複数の作業のそれぞれについてのリスク度、前記作業員および前記指導員を含む作業関係者に起因するリスク度、および前記非常駐者の現場に立ち入る目的や立ち入り時の現場での行為に起因するリスク度、を評価するリスク評価部を有する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本実施形態は、対象工事の管理情報を提供する工事管理方法において、作業内容情報記憶部が前記対象工事のうちの複数の作業のそれぞれの内容に関する作業情報を記憶する情報収納ステップと、リスク評価部が、前記作業情報に基づいて、前記複数の作業のそれぞれについてのリスク度を評価するリスク評価ステップと、を有し、前記情報収納ステップより前に、作業員技量情報記憶部または指導員技量情報記憶部が前記対象工事に参加する作業員および指導員の少なくともいずれかの技量に関する技量情報を記憶する技量情報記憶ステップおよび非常駐者作業情報記憶部が前記対象工事における設計した機器の性能を確認する設計者を含む一次立ち入り者である非常駐者の作業に関する作業情報を記憶する非常駐者作業情報記憶ステップをさらに有し、前記リスク評価ステップは、前記作業情報および、前記作業員および前記指導員の少なくともいずれかの技量に関する技量情報、前記非常駐者の作業に関する作業情報に基づいて、前記作業員および前記指導員を含む作業関係者および前記非常駐者に係るリスク度を評価するステップをさらに有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、工事管理において、災害、品質不適合を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る工事管理システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る工事管理方法の手順を示すフロー図である。
図3】第1の実施形態に係る工事管理システムの工程情報記憶部に記憶される基本工程データの例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る工事管理システムの工程情報記憶部に記憶される詳細工程データの例を示す表である。
図5】第1の実施形態に係る工事管理システムの工程情報記憶部に記憶された工程データに基づく表示例を示す画面である。
図6】第1の実施形態に係る工事管理システムの作業内容情報記憶部に記憶される作業内容情報データの例を示す表である。
図7】第1の実施形態に係る工事管理システムにおいての関係者間の関係を示す表である。
図8】第1の実施形態に係る工事管理システムの作業内容情報記憶部に記憶される作業情報からエリア区画に関するエリア区画データに特に着目して作成した例を示す表である。
図9】第1の実施形態に係る工事管理システムの作業内容情報記憶部に記憶させるためのエリア区画の具体的な範囲を入力するための入力画面の例である。
図10】第1の実施形態に係る工事管理システムの干渉評価部での演算結果による干渉画面を表示する出力画面の例である。
図11】第1の実施形態に係る工事管理システムに用いられる翌日作業予定データの例を示す表である。
図12】第1の実施形態に係る工事管理システムのリスク評価部による作業内容および作業環境に係るリスク度算出の詳細な手順を示すフロー図である。
図13】第1の実施形態に係る工事管理システムのリスク評価部によるリスク算出の結果を示すテーブルである。
図14】第1の実施形態に係る工事管理システムの出力表示方法およびこれに係る構成を説明するブロック図である。
図15】第2の実施形態に係る工事管理システムの構成を示すブロック図である。
図16】第2の実施形態に係る工事管理システムの作業員技量情報記憶部に記憶される作業メンバーデータの例を示す表である。
図17】第2の実施形態に係る工事管理システムの作業員技量情報記憶部に記憶される作業員技量情報である作業員技量データの例を示す表である。
図18】第2の実施形態に係る工事管理システムの非常駐者作業情報記憶部に記憶される非常駐者作業データの例を示す表である。
図19】第2の実施形態に係る工事管理方法の手順を示すフロー図である。
図20】第2の実施形態に係る工事管理システムのリスク評価部による作業関係者に係るリスク度算出の詳細な手順を示すフロー図である。
図21】第3の実施形態に係る工事管理システムの構成を示すブロック図である。
図22】第3の実施形態に係る工事管理システムの不適合事例情報記憶部に記憶される不適合事例データの例を示す表である。
図23】第3の実施形態に係る工事管理方法の手順を示すフロー図である。
図24】第3の実施形態に係る工事管理システムの不適合事例の確認の結果、摘出された不適合事例の例を示す表である。
図25】第4の実施形態に係る工事管理システムの構成を示すブロック図である。
図26】第4の実施形態に係る工事管理システムに用いられる放射線量マップの例である。
図27】第4の実施形態に係る工事管理システムに用いられる翌日作業予定データの例を示す表である。
図28】第4の実施形態に係る工事管理方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る工事管理システムについて説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る工事管理システムの構成を示すブロック図である。工事管理システム100は、記憶装置10、演算装置20、入力部30および出力表示装置40を有する。工事管理システム100は、具体的には、計算機システムである。
【0016】
工事管理システム100は、プラント内で行われる全ての工事を管理するシステムであり、かつ、プラント内で行われる全ての工事にかかわるメンバーの共有のシステムであるとする。
【0017】
記憶装置10は、工程情報記憶部11、作業内容情報記憶部12、リスク度記憶部17を有する。演算装置20は、干渉評価部21およびリスク評価部22を有する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係る工事管理方法の手順を示すフロー図である。まず、データベース、すなわち、工程情報記憶部11、および作業内容情報記憶部12を整備する(ステップS10)。
【0019】
図3は、工程情報記憶部に記憶される基本工程データの例を示す図である。図3は簡単な例として、A工事、B工事、およびC工事が並行して行われる工程を示している。また、それぞれの工事において、複数の作業がなされる。
【0020】
たとえば、A工事が、制御システムの更新工事であるとすれば、この工事のために複数の作業が行われる。すなわち、現制御盤まわりの解線作業(作業A1)、現制御盤の撤去・搬出作業(作業A2)、新制御盤まわりのケーブル敷設(作業A3)、新制御盤の搬入・据付(作業A4)、および新制御盤へのケーブル接続(作業A5)、および試験(作業A6)といった作業が行われる。たとえば、作業A2および作業A4では、制御盤設置場所以外のエリアも作業場所となっている。
【0021】
また、工事同士が並行に行われているのみでなく、A工事の中では、作業A2および作業A4と、作業A3とが並行に行われる期間が存在している。
【0022】
図4は、工程情報記憶部に記憶される詳細工程データの例を示す表である。工程データとしての情報は、入力部30から入力される情報であり、作業名称(作業項目)と、作業名称ごとの開始日時と終了日時とからなっている。なお、作業名称欄に記載された作業は、たとえば、同じ工事内の作業の場合でもよいし、それぞれが異なった工事に属する作業の場合でもよい。
【0023】
図5は、第1の実施形態に係る工事管理システムの工程情報記憶部に記憶された工程データに基づく表示例を示す画面である。最上部の行は年月を示し、第2の行以下は、各列が日を示している。このカレンダーの上に、作業項目が、横方向に延びる棒グラフ状に表示される。画面上の上から下に、開始日の早い順に棒状の表示が配されている。
【0024】
図6は、作業内容情報記憶部に記憶される作業情報である作業内容情報データの例を示す表である。各行は、作業項目ごとの情報である。各列の情報の項目は、工事名称、作業項目、作業要領・手順、作業エリア(エリア区画)、および作業期間が含まれている。
【0025】
たとえば、A工事については、作業項目A1ないし作業項目A6について、それぞれ各行に展開されている。作業要領・手順は、それぞれの作業の内容に関する情報であるが、予めデータ化しておく際には、図6のように、その作業に係る作業要領書あるいは作業手順書の図書番号として、図書データとシステム上関連付けている。
【0026】
作業エリアは、各作業が行なわれる対象工事の工事領域(現場)内の場所の情報を示すものであり、作業要領・手順で規定されるが、本実施形態にかかる作業内容情報データ内では、特に「エリア区画」として作業エリアに関する作業エリア情報の項目を設けている。期間の欄の情報は、工程情報記憶部11と連動して、工程情報記憶部11に記憶された工程情報データから抽出される。
【0027】
図7は、工事管理システムにおいての作業関係者の関係を示す表である。図7は、1つの作業項目について示している。作業管理者(Supervisor)は、当該作業を管理する。1つの工事が、たとえば、機械関係、電気関係、および計装関係と複数の区分の作業を含む場合は、これらの複数の区分のそれぞれについて作業管理者が存在する場合が多い。また、これらの区分のうち、同じ区分たとえば計装関係に属する作業については、計装関係の作業管理者が管理する場合が多い。
【0028】
作業グループは、たとえば作業を請け負う請負会社のメンバーで、複数の作業員(Work Member)から構成される。作業員の中には、指揮者(Leader)がおり、他の作業員は指揮者の指揮・指示のもとに作業を行う。指導員(Technical Engineer)は、たとえば、工場から派遣される技術者であり、機械関係の場合、自ら作業を実施する場合もあるが、作業グループに据付指導を行う場合もある。また、計装関係あるいは電気関係の場合、作業指示を受けることなく自ら試験、調整等を行う場合が多い。作業グループおよび指導員が、実際の作業を行うので、これらを総称して作業者(Worker)と呼ぶこととする。
【0029】
これ以外に、実際の作業者ではないが、たとえば、現地調査等のために一次立ち入り者としてプラント内に立ち入る者がいる。この一次立ち入り者を非常駐者と呼ぶこととする。
【0030】
図8は、作業内容情報記憶部に記憶される作業情報からエリア区画に関するエリア区画データに特に着目して作成した例を示す表である。入力部30から入力する情報としての区画データは、作業名称、その作業において使用するエリア区画記号、開始日時および終了日時である。
【0031】
また、図9は、エリア区画の具体的な範囲を入力するための入力画面の入力例である。すなわち、入力画面で、対象とする室の図が表示される。この画面に、たとえばタッチペンで必要エリアをなぞることにより、エリア区画が入力される。なお、建屋座標を定義し、各隅の座標を入力することでもよい。図9は、図8で示した5種類のエリア区画の入力例を示している。
【0032】
ステップS10の次に、図2に示すように、演算装置20の干渉評価部21により、エリア干渉チェックが行われる(ステップS20)。干渉評価部21におけるエリア干渉チェックは例えば次のように行なわれる。
【0033】
すなわち、予め定めた期間を指定することにより、干渉評価部21は、工程情報記憶部11に記憶された当該期間の工程情報データから同時に行なわれる作業の工事名称、作業項目および作業期間を抽出するとともに、これらの作業項目に関してそれぞれ作業内容情報記憶部12に記憶された作業エリア情報を抽出する。そして、抽出した作業エリアの時系列での重複の有無を判定することにより、作業エリア内での複数の作業の干渉を評価する。
【0034】
なお、上述の通り、本実施形態においては作業内容情報記憶部12には工程情報記憶部11に記憶された工程情報データが自動的に抽出されているため、干渉評価部21は、実質的には作業内容情報記憶部12に記憶された作業情報を参照するだけで、工程情報記憶部11に記憶された工程情報および作業内容情報記憶部12に記憶された作業エリア情報に基づくエリア干渉チェックを行なうことができる。
【0035】
図10は、干渉評価部での演算結果による干渉画面を表示する出力表示画面の例である。干渉評価部21は、作業内容情報記憶部12に記憶されたエリア区画データに基づいて、使用される作業エリアの状態ごとに、その状態の区間を明示する。
【0036】
図8および図9に示す入力情報であるエリア区画データの場合は、6種類の状態で変化することになる。また、図10の4番目に示す干渉画面で、干渉箇所が表示されている。
【0037】
すなわち、2015/04/09 00:00から2015/04/12 23:59までの期間は、図8に示す作業名称B3の作業の際に使用するエリア区画Q002と、作業名称C2の作業の際に使用するエリア区画R001とが、干渉するという結果が導出されている。この結果に基づいて、たとえば、作業名称B3に関して管理責任を有する者(作業責任者)と作業名称C2の作業責任者との間で調整される。ここで、作業責任者は、現地の所長のもとの、工事関係のラインを構成するたとえば、建設工事であれば、建設担当副所長のもとにラインを構成する建設主任、あるいはそれを分掌する者、たとえば作業管理者等である。調整は、工程の見直し、あるいは、作業の際に使用するエリア区画の見直し等が含まれる。あるいは、他の干渉時の調整ルールに基づくことでもよい。
【0038】
次に、図2に示すように、翌日作業の入力が行われる(ステップS30)。翌日作業の入力は、原則、作業管理に責任を有する作業管理者が行う。ただし、作業管理者が内容を決定し、物理的な入力作業を指示してもよいが、入力された内容については、作業管理者が責任を有する。入力された翌日作業の内容である翌日作業予定データは、作業内容情報記憶部12に記憶される。なお、作業内容が全く同じ日が複数日継続し、この期間をまとめて入力することがルールとして許容されている場合は、今回作業として、複数日分を入力する。
【0039】
図11は、工事管理システムに用いられる翌日作業予定データの例を示す表である。翌日作業予定データは、翌日の作業名称と、各作業名称についての、作業エリア、作業内容、重点管理作業フラグ、および作業班名である。重点管理作業フラグとしては、危険物、火気、重量物、および高所・開口部である。危険物は危険物取扱作業、火気は、溶接などの火気取扱作業、重量物は重量物の取扱作業、高所・開口部は、高所作業あるいは開口部周りで行う作業である。重点管理作業フラグの欄において、「0」は該当作業がないこと、「1」は該当作業が有ることを示す。
【0040】
作業エリアは、例えば、入力は図9で示した例のように、たとえばタッチペンで必要エリアをなぞることにより、エリア区画を画面上で指定することでもよい。指定したエリアの番号を、図11の作業エリアの部分の入力とすることでよい。
【0041】
たとえば、翌日である20XX年4月8日に予定されている作業項目の作業名称はA2、B2およびC2である。たとえば、作業名称A2の場合、作業内容は、XXX01であり、重点管理作業フラグの項目としては、重量物の取扱作業に該当し、作業班名はX1とされている。
【0042】
次に、図2に示すように、リスク評価部22による作業内容および作業環境に係るリスク度算出が行われる(ステップS40)。図12は、第1の実施形態に係る工事管理システムのリスク評価部による作業内容および作業環境に係るリスク算出の詳細な手順を示すフロー図である。
【0043】
ステップS30での翌日作業の入力の後に実施される、ステップS40の作業内容および作業環境に係るリスク度算出の詳細の手順は以下の通りである。
【0044】
まず、リスク評価部22は、作業内容および作業環境に係るリスク度RF1を0とする(ステップS41)。次に、リスク評価部22は、危険物取扱作業が有るか判定する(ステップS42)。危険物取扱作業があると判定された場合(ステップS42 YES)は、第1のリスク度RF11=C11とする(ステップS43)。また、危険物取扱作業がないと判定された場合(ステップS42 NO)は、第1のリスク度RF11=0とする(ステップS44)。
【0045】
次に、リスク評価部22は、火気作業が有るか判定する(ステップS45)。火気作業があると判定された場合(ステップS45 YES)は、第2のリスク度RF12=C12とする(ステップS46)。また、火気作業がないと判定された場合(ステップS45 NO)は、第2のリスク度RF12=0とする(ステップS47)。
【0046】
次に、リスク評価部22は、重量物取扱作業が有るか判定する(ステップS48)。重量物取扱作業があると判定された場合(ステップS48 YES)は、第3のリスク度RF13=C13とする(ステップS49)。また、重量物取扱作業がないと判定された場合(ステップS48 NO)は、第3のリスク度RF13=0とする(ステップS50)。
【0047】
次に、リスク評価部22は、高所・開口部周り作業が有るか判定する(ステップS51)。高所・開口部周り作業があると判定された場合(ステップS51 YES)は、第4のリスク度RF14=C14とする(ステップS52)。また、高所・開口部周り作業がないと判定された場合(ステップS51 NO)は、第4のリスク度RF14=0とする(ステップS53)。
【0048】
なお、リスク評価部22が第1のリスク度RF11〜第4のリスク度RF14などとして設定するリスク値C11〜C14の具体的な値は、危険物取扱作業、火気取扱作業、重量物の取扱作業、および高所作業あるいは開口部周りで行う作業などのそれぞれの重点管理作業の内容に応じて予め定めてリスク評価部22内に記憶させておくことができるほか、これらのリスク値C11〜C14などを設定するリスク値設定データベースを設け、リスク評価部22がこのリスク値設定データベースを参照しながら評価を行なうような構成としてもよい。
【0049】
次に、リスク評価部22は、作業内容および作業環境に係るリスク度RF1を、RF11、RF12、RF13、およびRF14の和として算出する(ステップS54)。
【0050】
図13は、リスク評価部によるリスク算出の結果を示すテーブルである。図11の翌日作業に関する情報に、リスク度Rの情報が加えられている。ここで、リスク度Rは、それぞれの作業についてリスク評価部22が算出した作業内容および作業環境に係るリスク度RF1の値である。この結果、どの作業で、どのような作業が行われ、それぞれのリスク度Rがどの程度かを把握することができる。
【0051】
リスク評価部22が算出したリスク度Rは、作業エリア(エリア区画)、作業内容や重点管理作業に関するフラグなどの情報とともに演算装置20の図示しない出力部から出力されてリスク度記憶部17に記憶される。このとき、演算装置20は演算結果をリスクマップとして出力することもでき、この場合リスク度記憶部17は、出力されたリスクマップを記憶するように構成すればよい。
【0052】
次に、図2に示すように、演算装置20が出力した以上の演算等の結果に基づいて、出力表示装置40による表示が行われる(ステップS80)。出力表示装置40による表示は、図10に示した干渉画面と同様な形式で表示することができる。
【0053】
すなわち、対象工事の工事領域(現場)の地図上に、設定した期間においてそれぞれ実施される作業のエリア区画が表示され、表示されたエリア区画内に工事名称、作業項目などの必要な作業情報とともにリスク評価部22が算出したリスク度Rが表示される。このとき、リスク度Rについては具体的な数値や高中低など指標を文字として表示するもののほか、各作業のエリア区画の表示色をリスク度Rに応じて変えることで表現してもよい。
【0054】
このように工事対象領域のエリア区画ごとのリスク度Rを地図上に表示することで、設定された期間においてどのエリア区画において行なわれるリスクの高い作業の情報を関係者が容易に把握・共有することが可能となる。この結果、工事管理において、災害、品質不適合などの発生を抑制することができる。
【0055】
なお、出力表示装置40により表示される情報は、予め演算装置20の出力部が出力してリスク度記憶部17に記憶された情報を用いるほか、リスク度記憶部17に記憶されたリスクマップをそのまま用いてもよい。あるいは、リスク度記憶部17に記憶されたリスク度Rや作業内容情報記憶部12に記憶された作業情報などに基づいて演算装置20の出力部が改めて演算したものを用いてもよい。
【0056】
図14は、工事管理システムの出力表示方法およびこれに係る構成を説明するブロック図である。出力表示装置40は、作業者位置受発信機41、42、判定部45、および表示部46を有する。
【0057】
作業者位置受発信機41は、複数あってそれぞれを各作業者が携帯する。また、作業者位置受発信機42は、現場の作業責任者あるいは作業管理者が携帯する。作業者位置受発信機41は、作業者位置受発信機42に作業者の位置情報を出力するとともに、通常の双方向通話が可能である。また、作業者位置受発信機42は、各作業者位置受発信機41からの作業者の位置情報を受信するとともに、双方向通話が可能である。
【0058】
判定部45は、リスク度記憶部17に記憶されているリスクマップなどの作業エリアとリスク度に関する情報、および重点管理作業に関するフラグの種別等の情報を参照して、作業者の現在位置が、リスク度が高い作業に関するエリアにあり、重点管理作業に該当する作業を行っているか否かを判定する。
【0059】
表示部46は、判定部45が、ある作業者がリスクの高いエリアで、重点管理作業に該当する作業を行っていると判定した場合に、その旨を表示する。
【0060】
表示部46も、現場の作業責任者あるいは作業管理者が、たとえばウェアラブル端末として携帯することにより、タイムリーに危険防止の活動を行うことができる。
【0061】
以上のように、本第1の実施形態では、事前の段階において、干渉評価部21によって、作業エリアの干渉の有無がチェックされ、干渉箇所と期間が表示されるため、事前に調整が可能である。
【0062】
また、翌日作業予定データを入力すると、リスク評価部22によって、各作業についての、作業内容および作業環境に係るリスク度RF1が算出され、リスクの程度およびリスク原因を把握することができ、事前の注意の徹底を図るとともに、出力表示装置40により、現場においても注意を喚起することができる。
【0063】
[第2の実施形態]
図15は、第2の実施形態に係る工事管理システムの構成を示すブロック図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態においては、記憶装置10は、作業員技量情報記憶部13および指導員技量情報記憶部14をさらに有する。
【0064】
本実施形態においては、記憶装置10が、作業員技量情報記憶部13および指導員技量情報記憶部14の両者を有する形態を例に説明するが、作業員技量情報記憶部13および指導員技量情報記憶部14のうちのいずれかのみを有する構成や、これら両者を1つにまとめた構成としても構わない。
【0065】
ここで、作業員とは、当該プラントに関する現地の建設所あるいは作業所に、現地の常駐メンバーとして登録され、管理されているメンバーである。また、指導員とは、常駐メンバーではなく、工場から派遣されるメンバーであって、特定の機器の調整・試験、あるいは据え付け受け等の指導を専門的に行うメンバーである。
【0066】
図16は、第2の実施形態に係る工事管理システムの作業員技量情報記憶部に記憶される作業メンバーデータの例を示す表である。対象とする作業は、ステップS30で入力された翌日作業である。3つの列は、作業班、構成員、および指揮者に該当有無となっている。たとえば、データの第1行から第2行までは、作業班GA1に関して、メンバーが、それぞれWA、WCであり、WAが指揮者であることを示している。同様に、データの第3行と第4行は、作業班GB1に関して、メンバーが、それぞれWBおよびWFであり、WBが指揮者であることを示し、データの第5行と第6行は、作業班GC1に関して、メンバーが、それぞれWD、IBであり、WDが指揮者であることを示している。
【0067】
図17は、第2の実施形態に係る工事管理システムの作業員技量情報記憶部に記憶される作業員技量情報である作業員技量データの例を示す表である。
【0068】
図17の表の各行は、図16に示した作業員技量データのそれぞれのメンバーに関する経験年数データである。本データは、当該プラントの作業に係る全作業員を対象としている。したがって、たとえば、作業班GA1の場合、図16で示す翌日作業に関しては、メンバーはWA、WCであるが、図17で示される登録メンバーには、たとえばWEなどが含まれている。
【0069】
図17に示す経験年数データは、対象物別の経験年数である。対象物は、具体的には、ポンプ、弁、電動機、プロセス計装、およびその他である。それぞれについての経験年数がデータとして収納されており、最終列は、これらの経験年数の合計である。
【0070】
たとえば、メンバーWAは、ポンプについて2年、弁について1年、合計3年の経験を有する。また、たとえば、メンバーWCは、ポンプについて2年、弁について3年、その他について5年、合計10年の経験を有するという内容である。
【0071】
なお、指導員技量情報記憶部14には、図示していないが、指導員についての同様なデータ、すなわち指導員技量情報が収納されている。
【0072】
図18は、第2の実施形態に係る工事管理システムの非常駐者作業情報記憶部に記憶される非常駐者作業データの例を示す表である。各行は、非常駐者ごとのデータである。各列は、非常駐者、作業、開始日および終了日である。ここで、非常駐者とは、前記のように一次立ち入り者である。たとえば、非常駐者は、設計者などであり、たとえば、設計した機器の性能を確認すること、あるいは不調の原因を調査することを目的として、現場に入る者である。


【0073】
たとえば、非常駐者DAは、作業B2に関して、20XX年4月5日から20XX年4月10日までの期間、プラント内の現場に入り目的の行為を行うことを示している。
【0074】
図19は、第2の実施形態に係る工事管理方法の手順を示すフロー図である。本実施形態では、第1の実施形態における手順にさらに、ステップS50が追加されている。
【0075】
すなわち、ステップS40では、作業内容および作業環境に係るリスク度を算出したが、さらに、ステップS50として、作業関係者に係るリスク度を算出する。具体的には、作業員、指導員および非常駐者に起因するリスク度を算出する。
【0076】
図20は、リスク評価部による作業関係者に係るリスク度算出の詳細な手順を示すフロー図である。以下、リスク評価部による作業関係者に係るリスク度算出のステップS50の詳細手順を説明する。
【0077】
まず、リスク評価部22は、作業員に係るリスク度RF21、指導員に係るリスク度RF22、および非常駐者に係るリスク度RF23を、それぞれゼロとする(ステップS51)。
【0078】
次に、リスク評価部22は、作業員技量情報記憶部13に記憶されている翌日作業に係る作業メンバーデータおよび作業メンバー技量データから、翌日作業に従事する作業員の技量データを順次読み込む(ステップS52)。
【0079】
リスク評価部22は、読み込んだ作業員の技量データから、対象とする作業についてその作業員の経験年数Xが、閾値C21未満か否かを判定する(ステップS53)。ここで、閾値C21は、経験不足によるリスクがほとんどなくなると考えられる年数に基づいて設定する。
【0080】
経験年数Xが閾値C21未満と判定した場合(ステップS53 YES)は、リスク評価部22は、次の式(1)により作業員に係るリスク度RF21を算出する(ステップS54)。
RF21=RF21+K21*(C21−X) …(1)
【0081】
ここで、K21は重み係数であり、作業内容および作業環境に係るリスク度における重みC11、C12、C13およびC14、指導員に係るリスク度RF22および非常駐者に係るリスク度RF23との関係を考慮して設定する。
【0082】
また、閾値C21以上と判定した場合(ステップS53 NO)は、リスク評価部22は、作業メンバーに係るリスク度RF21を前回値のままとする(ステップS55)。
【0083】
次に、リスク評価部22は、翌日作業に係る作業メンバーの全員についての評価を終了したかを判定する(ステップS56)。リスク評価部22が全員についての評価を終了したと判定しなかった場合(ステップS56 NO)は、リスク評価部22は、ステップS52以降を繰り返す。
【0084】
リスク評価部22が全員についての評価を終了したと判定した場合(ステップS56 YES)は、作業員に係るリスク度評価を終了し、指導員に係るリスク度評価を行う。
【0085】
リスク評価部22は、指導員技量情報記憶部14に記憶されている翌日作業に係る指導員技量データから、翌日作業に従事する指導員の技量データを順次読み込む(ステップS57)。
【0086】
リスク評価部22は、読み込んだ指導員の技量データから、対象とする作業についてその指導員の経験年数Yが、閾値C22未満か否かを判定する(ステップS58)。ここで、閾値C22は、経験不足によるリスクがほとんどなくなると考えられる年数に基づいて設定する。
【0087】
経験年数Yが閾値C22未満と判定した場合(ステップS58 YES)は、リスク評価部22は、次の式(2)により指導員に係るリスク度RF22を算出する(ステップS59)。
RF22=RF22+K22*(C22−Y) …(2)
【0088】
ここで、K22は重み係数であり、K21と同様に、他のリスク度との関係を考慮して設定する。
【0089】
また、閾値C22以上と判定した場合(ステップS58 NO)は、リスク評価部22は、作業メンバーに係るリスク度RF22を前回値のままとする(ステップS60)。
【0090】
次に、リスク評価部22は、翌日作業に係る指導員の全員についての評価を終了したかを判定する(ステップS61)。リスク評価部22が全員についての評価を終了したと判定しなかった場合(ステップS61 NO)は、リスク評価部22は、ステップS57以降を繰り返す。
【0091】
リスク評価部22が翌日作業に係る指導員の全員についての評価を終了したと判定した場合(ステップS61 YES)は、指導員に係るリスク度評価を終了し、リスク評価部22は、次に、非常駐者に関するリスク度評価を行う(ステップS62)。
【0092】
非常駐者については、現場に立ち入る目的や、立ち入り時の現場での行為には、多様な状況が考えられる。このため、非常駐者に係るリスク度は、作業内容および作業環境に係るリスク度R1、並びに、作業員に係るリスク度R21および指導員に係るリスク度R22を考慮して、その都度、リスク度R23を設定する。この値は、ステップS30の翌日作業データ入力の際に入力される。
【0093】
次に、リスク評価部22は、作業関係者に係るリスク度R2を、R2=R21+R22+R23、により算出する。また、リスク度Rを、R=R1+R2により算出する(ステップS63)。
【0094】
以上のように、本実施形態においては、翌日作業にかかわる作業内容および作業環境
に起因するリスク度に加えて、さらに、作業員、指導員および非常駐者に起因するリスク度を含めて評価することができる。
【0095】
[第3の実施形態]
図21は、第3の実施形態に係る工事管理システムの構成を示すブロック図である。本実施形態は、第2の実施形態の変形である。本第3の実施形態においては、記憶装置10は、不適合事例情報記憶部15をさらに有する。また、演算装置20は、不適合事例評価部23をさらに有する。
【0096】
図22は、不適合事例情報記憶部に記憶される不適合事例データの例を示す表である。一件一行形式である。各行は、不適合番号順に並んでいる。発生の都度、新たなデータを付加していくので、不適合番号順は、入力し不適合事例情報記憶部15に登録された順となる。
【0097】
各列は、不適合番号、系統番号、発生年月日、発生場所、不適合内容、原因、作業キーワードである。
【0098】
なお、不適合事例に関する情報は、本工事管理システム固有のものではなくともよい。すなわち、品質保証体系の一環として整備される不適合情報に関するデータベースを用いてもよい。
【0099】
図23は、第3の実施形態に係る工事管理方法の手順を示すフロー図である。本実施形態においては、ステップS50で作業関係者に係るリスク度の算出を行った後に、翌日作業、あるいは今回作業に関連する不適合事例の確認を行う(ステップS70)。
【0100】
不適合事例の確認は2つのステップで行われる。
【0101】
まず、不適合事例評価部23が、作業管理者によって入力され記憶装置10に記憶されている翌日作業内容に基づいて、不適合事例情報記憶部15に収納された不適合事例情報から、関連する不適合を摘出する。摘出は、重点管理作業項目の作業キーワードの有無の組合せの合致の有無により行われる。なお、たとえば、発生場所、系統などをキーワードとして追加してもよい。
【0102】
図24は、不適合事例の確認の結果、摘出された不適合事例の例を示す表である。各行は、翌日作業である。各列は、作業名、重点管理作業項目、および不適合事例である。重点管理作業項目は、さらに危険物、火気、重量物、高所・開口部、その他というキーワードに区分される。また、不適合事例は、不適合番号、不適合内容、および原因である。
【0103】
次に、作業管理者は、摘出された不適合事例に目を通し、翌日作業の内容からみて、作業員に伝達することが有益であると考えられる不適合事例をさらに摘出する。この最終的に摘出した不適合事例を、事務所内の朝のミーティング、現場でのツールボックスミーティングでの危険予知確認等で紹介して、不適合の発生の予防を徹底する。
【0104】
以上のようにして、不適合事例に関する情報を有効に活用することができる。
【0105】
[第4の実施形態]
図25は、第4の実施形態に係る工事管理システムの構成を示すブロック図である。本実施形態は、第3の実施形態の変形である。本実施形態における記憶装置は、エリア放射線レベル情報記憶部16をさらに有する。
【0106】
エリア放射線レベル情報記憶部16は、プラント内の各場所での放射線の測定結果に基づいて、各場所の放射線レベルに関する情報を収納する。プラント内の各場所の放射線レベルは、放射線管理者により定期的あるいは半定期的に行われる放射線サーベイにより測定される。エリア放射線レベル情報記憶部16には、この結果が随時反映される。
【0107】
図26は、放射線量マップの例である。作業室内で、最も濃い色で表紙されているのが高レベルエリア、次に濃いのが中レベルエリア、薄く表示されているのが低レベルエリアと、3種類に区分されている場合を示している。エリア放射線レベル情報記憶部16としては、このような画像データとともに、作業室内の各座標点に対して、該当する放射線レベルが与えられるデータとなっている。そのためには、テーブル形式で記憶したデータに基づいて、内挿により境界を決定するなどの方法で与えることができる。放射線マップは、さらに細かいレベルで与えることでもよい。そのレベルに応じて、リスク度を決定する。
【0108】
リスク評価部22は、放射線環境下での作業についてのリスク評価をさらに行う。図27は、翌日作業予定データの例を示す表である。重点管理作業フラグとして、放射線環境下であるか否かの情報欄が追加されている。
【0109】
図28は、第4の実施形態に係る工事管理方法の手順を示すフロー図である。リスク評価部22が作業内容および作業環境に係るリスク度を算出するステップS40aにおいては、危険物の取扱、火気作業、重量物取扱、高所・開口部まわり作業に加えて、放射線環境下での作業に関するリスク評価を行う。
【0110】
図12に示す第1の実施形態におけるステップS52、ステップS53に続いて、リスク評価部22は、放射線環境下での作業が有るか否かを判定する。有ると判定した場合には、放射線環境下作業に係るリスク度RF15の値を、所定の値C15とする。ここで、値C15は、C11ないしC14とのバランスを考慮して、かつ、放射線レベルに応じて決定する。リスク評価部22が、放射線環境下での作業が無いと判定した場合は、放射線環境下作業に係るリスク度RF15の値を0とする。
【0111】
次に、第1の実施形態におけるステップS54に代えて、次の式(3)により、作業内容および作業環境に係るリスク度RF1を算出する。
RF1=RF11+RF12+RF13+RF14+RF15 …(3)
【0112】
以上のように、本実施形態においては、放射線環境下にある場合のリスク度も含めて評価することができる。
【0113】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0114】
10…記憶装置、11…工程情報記憶部、12…作業内容情報記憶部、13…作業員技量情報記憶部、14…指導員技量情報記憶部、15…不適合事例情報記憶部、16…エリア放射線レベル情報記憶部、17…リスク度記憶部、20…演算装置、21…干渉評価部、22…リスク評価部、23…不適合事例評価部、30…入力部、40…出力表示装置、41、42…作業者位置受発信機、45…判定部、46…表示部、100…工事管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
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