特許第6829028号(P6829028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829028
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】転動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20210128BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20210128BHJP
   F16C 19/10 20060101ALI20210128BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20210128BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20210128BHJP
   F16C 29/04 20060101ALI20210128BHJP
   C23C 28/02 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   F16H25/22 Z
   F16H25/24 E
   F16C19/10
   F16C33/64
   F16C33/66 Z
   F16C29/04
   C23C28/02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-167160(P2016-167160)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-35822(P2018-35822A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391028339
【氏名又は名称】日本カニゼン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】永井 豊
(72)【発明者】
【氏名】山本 和史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 努
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 充宏
(72)【発明者】
【氏名】津村 崇
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−301241(JP,A)
【文献】 特開2008−002533(JP,A)
【文献】 特開平09−158946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
C23C 28/02
F16C 19/10
F16C 29/04
F16C 33/64
F16C 33/66
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径面に軌道溝を有する外方部材と、外径面に軌道溝を有する内方部材と、前記外方部材及び前記内方部材の両軌道溝の間に転動自在に配置された複数の転動体とを備える転動装置において、
前記外方部材の前記内径面及び前記内方部材の前記外径面の少なくとも一方が、
無電解ニッケルめっき被膜、または前記外方部材及び前記内方部材を形成する母材よりもイオン化傾向が小さい金属のめっき被膜からなる下地層を介して、多孔質の低温クロムめっき被膜を有することを特徴とする転動装置。
【請求項2】
前記低温クロムめっき被膜の、少なくとも前記軌道溝の表面粗さが1μmRa以下であることを特徴とする請求項1記載の転動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置やリニアガイド装置、転がり軸受等の各種転動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図1及び図2図1のAA断面図)に示すように、ボールねじ装置1は、ねじ溝3aがその外周に螺旋状に形成されたねじ軸3と、ねじ溝3aと対向するねじ溝5がその内周に螺旋状に形成された円筒形状のナット7と、両ねじ溝3a,5により形成される空間に配置される多数のボール9とを主要構成部材としている。ナット7には、一端に図示しないテーブル等に固定するためのフランジ11が形成されるとともに、外周面の一部(図2中の上方)に平面(切欠面)13が切削加工されている。また、ナット7には、ボール9の循環経路として前後一対の鋼管製のチューブ15が固着されており、両ねじ溝3a,5間を所定回数回転したボール9がこれらチューブ15を介して循環する構造となっている。尚、図中、符号17はナット7の平面13上にチューブ15を固定するためのチューブ押えを示し、符号19はナット7の両端に取り付けられた防塵用のプラスチックシールを示している。また、ボール9同士の衝突防止のために、ボール9間にスペーサ21を介在させる場合もある。
【0003】
しかし、ボールねじ装置1では、振動等によりボール9とねじ溝3a,5とが接触してねじ溝3a,5の表面が損傷し、寿命が低下する大きな原因になっている。そこで、ねじ軸3の外径面やナット7の内径面に各種被膜を形成して耐摩耗性等を改善して耐久性を向上することも行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、摺動部分をカニゼン処理して無電解ニッケルめっき被膜で被覆した機械部品が記載されている。このカニゼン処理による無電解ニッケルめっき被膜は、衝撃強度が高く(高靱性である)、高い硬度を有し、摺動特性のような潤滑性に優れ、しかも高速で形成できるという利点を有するものの、耐摩耗性については十分とは言えない。
【0005】
また、特許文献2では、電動アクチュエータのフレームの表面にレイデント処理やクロムめっき、カニゼンめっき等を施し、更にフレームの内壁面の転動溝やガイドブロックの転動溝にカニゼンめっきによる表面処理を施している。しかし、転動溝の表面はカニゼン処理による無電解ニッケルめっき被膜が形成されており、特許文献1と同様、耐摩耗性が十分とは言えない。
【0006】
また、ボールねじ装置1は、各種薬品と接触する用途に使用され、耐食性が要求されることもあるが、ねじ軸3やナット7は一般的には鋼材製であり、腐食性が十分とは言えない。
【0007】
尚、上記はボールねじ装置1に限ったことではなく、リニアガイド装置や転がり軸受等の各種転動装置にも同様のことがいえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3027515号公報
【特許文献2】特開2000−88071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ナット7のねじ溝5のような外方部材の軌道溝や、ねじ軸3のねじ溝3aのような内方部材の軌道溝の耐摩耗性、耐衝撃性及び耐食性を更に向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、下記の転動装置を提供する。
(1)内径面に軌道溝を有する外方部材と、外径面に軌道溝を有する内方部材と、前記外方部材及び前記内方部材の両軌道溝の間に転動自在に配置された複数の転動体とを備える転動装置において、
前記外方部材の前記内径面及び前記内方部材の前記外径面の少なくとも一方が、
無電解ニッケルめっき被膜、または前記外方部材及び前記内方部材を形成する母材よりもイオン化傾向が小さい金属のめっき被膜からなる下地層を介して、多孔質の低温クロムめっき被膜を有することを特徴とする転動装置。
(2)前記低温クロムめっき被膜の、少なくとも前記軌道溝の表面粗さが1μmRa以下であることを特徴とする上記(1)記載の転動装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軌道溝の耐摩耗性及び耐衝撃性、耐食性が向上し、転動装置の耐久性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ボールねじ装置の一例を示す上面図である。
図2図1のAA断面図である。
図3図2の部分Xの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。尚、本実施形態では、ボールねじ装置を例にして説明するが、リニアガイド装置や転がり軸受等の転動装置一般に応用することができる。
【0014】
本発明において、ボールねじ装置の種類には制限はなく、図1、2に示したボールねじ装置1を始めとして、種々のボールねじ装置が対象になる。図3図2の部分Xの拡大図であるが、本発明ではねじ軸3の外径面及びナット7の内径面の少なくとも一方、好ましくは両方に、無電解ニッケルめっき被膜、またはねじ軸3及びナット7を形成する母材よりもイオン化傾向が小さい金属のめっき被膜からなる下地層20を介して、低温クロムめっき被膜30を形成している。
【0015】
下地層20となるニッケルめっき被膜は耐衝撃性に優れており、ボールねじ装置においては、振動によるボール9との衝突に対する耐久性が高まる。また、ねじ軸3やナット7は一般にSCM材やSAE材等の鋼材製であり、鉄よりもニッケルはイオン化傾向が小さい金属であるため、無電解ニッケル被膜を形成しない場合よりも耐食性に優れるようになる。
【0016】
また、下地層20として、ねじ軸3やナット7を形成する母材よりもイオン化傾向が小さい金属のめっき被膜にしても、同様に耐食性の向上を図ることができる。中でも、比較的軟質であり、耐衝撃性も兼備することから、金属種としてスズや銅、銀、金等が好ましい。
【0017】
一方、低温クロムめっき被膜30は、耐摩耗性に優れるため、ボール9との接触による摩耗を抑制する。また、低温クロムめっき被膜30は多孔質であり、変形しやすい性質がある。これに対し下地層20である無電解ニッケルめっき被膜やイオン化傾向が小さい金属は変形しにくく、ボール9を介して荷重が負荷されるとクラックを発生しやすい。しかし、下地層20の上に低温クロムめっき被膜30があると、変形しやすい低温クロムめっき被膜30が荷重を緩和して下地層20のクラック発生を抑制する。このように、下地層20と低温クロムめっき被膜30とを積層することにより、膜全体としての耐久性が向上する。
【0018】
これらの効果を十分に発現するために、下地層20の膜厚を3〜100μmにすることが好ましい。下地層20が3μmよりも薄くなると耐食性及び耐摩耗性の向上効果が十分に得られない。
【0019】
また、下地層20や低温クロムめっき被膜30が形成されたねじ軸3のねじ溝3aやナット7のねじ溝5と、ボール9との間には隙間が形成され、荷重が加わるほど隙間が狭くなる。その際、荷重に抗して適切な隙間を形成するためには、下地層20をある膜厚以上にすることが必要であり、上記のように3μm以上にする。但し、下地層20が厚くなると膜厚の管理が難しくなるため、上記したように100μm以下にすることが好ましい。
【0020】
また、低温クロムめっき被膜30の膜厚は0.1〜3μmにすることが好ましく、0.5〜2μmにすることがより好ましい。低温クロムめっき被膜30が0.1μmよりも薄いと耐摩耗性の向上効果が十分に得られず、3μmより厚いと圧縮応力が低くなり、下地層20への密着性が低くなる。
【0021】
下地層20となる無電解ニッケルめっき被膜は、Ni−Pの他、Ni−B、Ni−P−B等のように、他の元素を含んでいてもよい。また、無電解ニッケルめっき被膜は、一般的な無電解めっき法により形成することができるが、カニゼン処理により形成することが好ましい。
【0022】
カニゼン処理の一例として、ニッケル塩に、還元剤としてリン化合物及びホウ素化合物を含むめっき浴を用いてNi−P−B被膜を形成することができる。ニッケル塩としては、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル等を用いることができる。リン化合物としては次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ニッケル等を用いることができ、ホウ素化合物としてはジメチルアミノホウ素、ジエチルアミノホウ素、水素化ホウ素ナトリウム等を用いることができる。めっき浴におけるニッケル塩、リン化合物及びホウ素化合物の比率は、得られる被膜の組成に応じて適宜調整することができる。また、各成分の濃度は、めっき浴の安定性や析出速度等を考慮して決めることができ、例えばニッケル塩濃度が15〜30g/Lの範囲にすることが適当である。
【0023】
また、めっき浴には、安定性やpH緩衝作用を考慮して、酢酸やリンゴ酸、クエン酸等の有機酸やエチレンジアミン四酢酸等のキレート剤を添加することもできる。また、安定化剤として、微量の硝酸鉛や硝酸ビスマス、アンチモン塩、イオウ化合物等を添加することができる。更に、めっき浴は、安定性や析出速度等を考慮して、pHを6〜7の範囲に調整することが好ましい。
【0024】
そして、上記のめっき浴に、ねじ軸3やナット7を一定時間浸漬することで、ねじ軸3の外径面やナット7の内径面にめっき被膜を形成する。めっき浴の温度は、浴の安定性や析出速度等を考慮して決められるが、例えば60〜95℃、好ましくは70〜90℃にする。また、めっき浴への浸漬時間を調整することで、めっき被膜の膜厚を調整することができる。
【0025】
尚、ねじ軸3の外径面やナット7の内径面に、めっき被膜との付着性を良好にするために、通常のめっき工程で行われる前処理を施すことが好ましい。前処理としては、例えば、溶剤又はアルカリ溶液を用いた脱脂、亜鉛置換処理、酸浸漬処理等を挙げることができる。
【0026】
更に、めっき被膜を熱処理することにより膜硬度を高めることができる。熱処理条件は、めっき被膜に要求される硬度等に応じて決めることができるが、熱処理温度は150〜400℃にすることができ、200〜350℃の範囲がより好ましい。また、熱処理時間は、30〜120分間が適当である。尚、熱処理の雰囲気は、空気、不活性ガス、還元性のガス等を用いることができ、作業性やコスト等を考慮して適宜選択することができる。
【0027】
一方、低温クロムめっき被膜30は、レイデント処理とも呼ばれる低温でのめっき処理により形成することができる。この低温クロムめっき処理では、クロム酸水溶液に適宜触媒成分を添加し、−5〜−10℃の低温下において直流電解を行い、クロム微粒子群の多孔質黒色被膜を形成する方法である。電圧や処理時間は、膜厚等に応じて適宜調製することができ、例えば6V〜12Vで、5分〜60分行なうことが適当である。低温クロムめっき処理では、多孔質の被膜の一部が下地層20の内部に拡散して拡散層(合金層)を形成し、優れた密着力を発揮して長期間に亘って耐摩耗性を維持できる。
【0028】
このように、本発明によれば、下地層20及び低温クロムめっき被膜30により耐衝撃性、耐摩耗性及び耐食性に優れるようになり、ボールねじ装置1の耐久性を向上させることができる。
【0029】
また、ボール9の転動性を考慮すると、低温クロムめっき被膜30の表面粗さは小さいほど好ましく、少なくとも両ねじ溝3a、5の低温クロムめっき被膜30の表面粗さを1μmRa以下にすることが好ましく、0.8μmRa以下にすることがより好ましい。このような表面粗さは、低温クロムめっき被膜30を形成した後、機械的に研磨加工すればよい。尚、両ねじ溝3a、5を含めてねじ軸3の外径面の全面及びナット7の内径面の全面をこのような表面粗さにしてもよい。
【0030】
更に、ねじ軸3やナット7(以下「母材」ともいう)はステンレス等の鉄基合金製であり、その上の下地層20の形成材料であるニッケル合金や、母材よりもイオン化傾向の小さい金属との間の電位差が大きいため、母材と下地層20との密着性が低くなるおそれがある。また、母材の表面状態によっては、あるいは下地層20が薄い場合には、下地層20が形成されずに母材の一部が露出することがあり、同様に母材と下地層20との密着性が低下するおそれもある。そこで、ねじ軸3やナット7と下地層20との間に、電気ニッケルめっき被膜(ストライクニッケルめっき)を介在させることが好ましい。
【0031】
また、低温クロムめっき被膜30の表面をフッ素樹脂でコーティングすることが好ましい。フッ素コーティング被膜が低温クロムめっき被膜30の保護膜となり、またフッ素樹脂は潤滑性も備えることから、耐久性が向上する。更に、無電解ニッケルめっき被膜は母材の凹部を埋めることができない。低温クロムめっき被膜30にはこの凹部を埋める効果や、これにより無電解ニッケルめっき被膜と低温クロムめっき被膜30との密着性を高める効果が考えられる。そして、低温クロムめっき被膜30の上にフッ素コーティング被膜が形成されると、フッ素コーティング被膜が重石として作用して無電解ニッケルめっき被膜と低温クロムめっき被膜30とが密着するため、耐久性が更に高まる。尚、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が好適である。
【実施例】
【0032】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0033】
(実施例1)
SCM材製の上レース及び下レースと、SUJ材製のボールとを備えるスラスト玉軸受(呼び番号「51305」)を用意した。そして、日本カニゼン(株)製S−780またはSK−100等を5倍に純水で希釈し、安定剤を微量添加し、次にジメチルアミノホウ素を適量加え、苛性ソーダでpH6.2に調整し、液温を80〜82℃に加温しためっき浴を準備し、そこへ上レース及び下レースの各軌道面を浸漬した、このカニゼン処理により、上レース及び下レースの各軌道面に無電解Ni−Pめっき被膜を形成した。次いで、低温クロムめっき処理により、無電解Ni−Pめっき被膜の上に低温クロムめっき被膜を形成して試験体とした。尚、無電解Ni−Pめっき被膜の膜厚は10μmであり、低温クロムめっき被膜の膜厚は1μmである。
【0034】
(比較例1)
実施例1と同一の上レース及び下レースの各軌道面に、実施例1と同様の低温クロムめっき被膜のみ形成して試験体とした。尚、低温クロムめっき被膜の膜厚は、実施例1のクロムめっき被膜と同じにした。
【0035】
(比較例2)
実施例1と同一の上レース及び下レースの各軌道面に、実施例1と同様の低温クロムめっき被膜を形成し、その上にフッ素コーティング被膜を形成して試験体とした。尚、低温クロムめっき被膜の膜厚は、実施例1のクロムめっき被膜と同じにした。
【0036】
(比較例3)
実施例1と同一の上レース及び下レースの各軌道面に、実施例1と同様のカニゼン処理により無電解Ni−Pめっき被膜のみ形成して試験体とした。
【0037】
(比較例4)
実施例1と同一の上レース及び下レースの各軌道面に、実施例1と同様のカニゼン処理により無電解Ni−Pめっき被膜を形成し、その上にカニボロンめっき処理によりホウ素被膜を形成して試験体とした。尚、無電解Ni−Pめっき膜厚は、実施例1の無電解Ni−Pめっき被膜と同じにした。
【0038】
そして、各試験体ついて、下記に示す(1)耐食性試験、(2)高面圧試験を行った。結果を表1に示す。
【0039】
(1)耐食性試験
JIS Z 2371に基づき、塩化ナトリウム水溶液(濃度5±0.5%)に、試験体の上レースまたは下レースをそれぞれ120時間浸漬し、浸漬後、軌道面について目視により腐食の程度を確認した。評価は、腐食が見られないものを「○」、腐食がやや見られるものを「△」、腐食が見られるものを「×」と判断した。
【0040】
(2)高面圧試験
試験体を用い、下記条件にて、軌道面に形成した各被膜のはく離状況を確認した。また、高面圧をかけているため、耐衝撃性も同時に評価することができる。評価は、はく離が切られないものを「○」、はく離がやや見られるものを「△」、はく離が見られるものを「×」とした。
<試験条件>
・試験体:スラスト玉軸受(呼び番号「51305」)
・球数:3球
・回転数:1000min−1
・荷重:620kg(純アキシアル荷重)
・面圧:3.0GPa
・サイクル数(回転量×玉数):120000rev.
・潤滑油:油(FBK R068)
・潤滑方式:油浴
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、無電解ニッケルめっき被膜を下地層とし、その上に低温クロムめっき被膜を形成することにより、それぞれの単独被膜に比べて、耐食性、耐摩耗性及び耐衝撃性の全てにおいて優れることがわかる。
【0043】
以上、本発明に関してボールねじ装置やスラスト玉軸受を例示して説明したが、例えばリニアガイド装置の案内軸(内方部材)の外径面やスライダ(外方部材)の内径面、転がり軸受の内輪(内方部材)の内輪軌道面や外輪(外方部材)の外輪軌道面に、上記したように、下地層20を介してクロムめっき被膜30を形成しても、同様の耐食性、耐摩耗性及び耐衝撃性が得られる。
【符号の説明】
【0044】
1 ボールねじ装置
3 ねじ軸
3a、5 ねじ溝
7 ナット
9 ボール
20 下地層
30 クロムめっき被膜
図1
図2
図3