(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物において、エステル混合物中で結合された異性体ペンチル基の5mol%超が分枝状であり、エステル混合物中で結合された分枝状異性体ペンチル基の少なくとも50mol%が、2−メチルブチル基または3−メチルブチル基であることを特徴とする、前記混合物。
エステル官能基のアルキル基がそれぞれ4個未満の炭素原子を有するトリメリット酸トリアルキルエステルの1種以上を、異性体ペンタノールの混合物によってエステル交換し、異性体ペンタノールの混合物中で結合された異性体ペンチル基の5mol%超が分枝状であり、分枝状異性体ペンチル基の少なくとも50mol%が、2−メチルブチル基または3−メチルブチル基であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
反応に際して、反応混合物を沸騰するまで加熱し、エステル混合物中で結合された全ての異性体ペンチル基を導入するために必要な異性体ペンタノール混合物量に対して少なくとも0.2mol当量を、トリメリット酸及び/又はトリメリット酸誘導体を含有する前記反応混合物に、沸点に達した後に初めて添加することを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による混合物は好ましくは、エステル混合物中で結合された異性体ペンチル基の少なくとも15mol%、好ましくは少なくとも20mol%、好適には少なくとも25mol%、特に好ましくは少なくとも50mol%、さらに好ましくは少なくとも67mol%、極めて特に好ましくは少なくとも75mol%、特に少なくとも80mol%が、分枝状である。それと言うのも、このような混合物は、別のポリマーへのマイグレーション傾向が特に低いことが判明したからである。
【0020】
分枝状ペンチル基は、好適にはメチルブチル基である。これに対応して、少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、さらに好ましくは少なくとも70mol%、より好ましくは少なくとも80mol%、極めて特に好ましくは少なくとも90mol%、特に少なくとも95mol%がメチルブチル基から成る、本発明による混合物が好ましい。
【0021】
同様に、分枝状異性体ペンチル基が、2−メチルブチル基を多い割合で有すると、マイグレーション傾向が特に低いことが判明した。よって好ましい実施形態において、エステル混合物中で結合された分枝状異性体ペンチル基の少なくとも50mol%、好適には少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、さらに好ましくは少なくとも80mol%、特に好ましくは少なくとも90mol%、とりわけ少なくとも95mol%が、2−メチルブチル基である。
【0022】
特に好ましい実施形態において、本発明による混合物は、少なくとも75mol%、特に少なくとも90mol%が、2−メチルブチル基及び/又は直鎖状ペンチル基を含有するエステルから成り、ここでこのエステル内における2−メチルブチル基対直鎖状ペンチル基のモル比は、5:95から80:20の範囲、好ましくは10:90から75:25の範囲、特に20:80又は30:70から70:30の範囲にある。
【0023】
しかしながらまた、特に最大粘度が、本発明による混合物を含有するプラスチゾルのゲル化の間に特に低く保たれる場合、分枝状異性体ペンチル基が大部分、3−メチルブチル基から成る場合、有利であり得る。このような場合には、エステル混合物中で結合された分枝状異性体ペンチル基の少なくとも10mol%、好適には少なくとも20mol%、好ましくは少なくとも30mol%、さらに好ましくは少なくとも40mol%、より好ましくは少なくとも50mol%、好適には少なくとも60mol%、さらに好ましくは少なくとも70mol%、特に好ましくは少なくとも80mol%、とりわけ少なくとも90mol%が、3−メチルブチル基である。さらに、本発明による混合物が少なくとも75mol%、とりわけ少なくとも90mol%、3−メチルブチル基及び/又は直鎖状ペンチル基を含有するエステルから成っていれば、有利なことがあり、ここで3−メチルブチル基対直鎖状ペンチル基のモル比は、5:95から80:20、好ましくは10:90から75:25、とりわけ20:80又は30:70から70:30の範囲にある。
【0024】
さらに、本発明による混合物の加工性、また本発明による混合物の効率は、直鎖状ペンチル基の含分が増加するにつれて上昇することが判明した。この理由から、エステル混合物中で結合された異性体ペンチル基の10mol%超、好適には20mol%超、さらに好適には30mol%超、特に好ましくは40mol%超、極めて特に好ましくは50mol%超、より好ましくは60mol%超、好適には70mol%超、とりわけ80mol%超が直鎖状であれば、有利であり得る。マイグレーション傾向の低下という理由からはまた、エステル混合物中で結合された異性体ペンチル基における直鎖状ペンチル基の割合が、50mol%未満、好ましくは30mol%未満、さらに好ましくは10mol%未満、とりわけ5mol%未満であれば、好ましくあり得る。
【0025】
トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物中で結合された異性体ペンチル基は、第一級ペンタノールの混合物に基づくのが好ましい。それと言うのもこの混合物は、第二級アルコールをベースとする相応するトリイソペンチルエステルよりも、比較的効率が高く、加工性が良好だからである。
【0026】
本発明の好ましい対象は、異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステル混合物であり、ここでエステル混合物中で結合された異性体ペンチル基の5mol%超、好適には少なくとも15mol%、とりわけ少なくとも20mol%が分枝状であり、ここで好適にはエステル混合物中で結合された分枝状異性体ペンチル基の少なくとも50mol%、とりわけ少なくとも90mol%が、2−メチルブチル基である。
【0027】
この混合物は好ましくは、エステル混合物中で結合されたあらゆる異性体ペンチル基に対して少なくとも67mol%、とりわけ少なくとも80mol%、分枝状ペンチル基を含有する。
【0028】
本発明のさらなる好ましい対象は、異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物であり、ここでエステル混合物中で結合された異性体ペンチル基の5mol%超が分枝状であり、エステル混合物中で結合された異性体ペンチル基の20mol%超、好適には50mol%超、とりわけ85mol%が、直鎖状である。
【0029】
ここで好適には、エステル混合物中で結合された分枝状異性体ペンチル基の少なくとも50mol%、好適には少なくとも80mol%、とりわけ少なくとも95mol%が、2−メチルブチル基である。
【0030】
本発明の対象はさらに、本発明による混合物の製造方法であり、ひいては異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物を製造するための方法であって、この方法の特徴は、トリメリット酸及び/又はトリメリット酸誘導体を、異性体ペンタノールの混合物と反応させることであり、ここで異性体ペンタノールの混合物中で結合された異性体ペンチル基の5mol%超が分枝状である。
【0031】
適切なトリメリット酸誘導体は、トリメリット酸無水物、トリメリット酸の酸ハロゲン化物、及びトリメリット酸トリエステルである。
【0032】
この方法において好ましくは、異性体ペンタノールの混合物中で結合された異性体ペンチル基の少なくとも15mol%、少なくとも20mol%、好ましくは少なくとも25mol%、特に好ましくは少なくとも50mol%、さらに好ましくは少なくとも67mol%、極めて特に好ましくは少なくとも75mol%、とりわけ少なくとも80mol%が分枝状であり、ここで分枝状ペンチル基は好適には、少なくとも80mol%が、メチルブチル基から成る。
【0033】
特に有利な混合物は、本方法において、異性体ペンタノールの混合物中で結合された分枝状異性体ペンチル基の少なくとも50mol%、好適には少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、さらに好ましくは少なくとも80mol%、特に好ましくは少なくとも90mol%、とりわけ少なくとも95mol%が、2−メチルブチル基である場合に得られる。
【0034】
幾つかの実施態様では、本方法において、異性体ペンタノールの混合物中で結合された異性体ペンチル基の10mol%超、好適には20mol%超、さらに好適には30mol%超、特に好ましくは40mol%超、極めて特に好ましくは50mol%超、より好ましくは60mol%超、好適には70mol%超、とりわけ80mol%超が直鎖状である異性体ペンタノールの混合物を使用すれば、好ましい。
【0035】
トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物を製造するために、トリメリット酸誘導体であるトリメリット酸無水物を使用するのが好ましい。
【0036】
本発明による混合物をエステル交換により製造する場合、トリメリット酸トリアルキルエステル(エステル官能基のアルキル基が炭素原子をそれぞれ4個未満含有するもの)1種以上を、異性体ペンタノールの混合物でエステル交換するのが好ましく、ここで異性体ペンタノールの混合物中で結合された異性体ペンチル基の5mol%超が、分枝状である。
【0037】
トリメリット酸トリメチルエステル、又はトリメリット酸トリエチルエステル、とりわけトリメリット酸トリメチルエステルをエステル交換して、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物にするのが好ましい。
【0038】
エステル化又はエステル交換は好適には、1種又は複数の触媒の存在下で、例えばブレンステッド酸、又はルイス酸、若しくはルイス塩基を触媒として用いて行う。特に適切な触媒として有利なのは、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、及び金属化合物であることが判明している。特に好ましい触媒の例は、スズ粉末、酸化スズ(II)、シュウ酸スズ(II)、チタン触媒、例えばテトライソプロピルオルトチタネート、テトラブチルオルトチタネート、又はテトラペンチルオルトチタネート、並びにジルコニウムエステル、例えばテトラブチルジルコネート、又はテトラペンチルジルコネートである。特に好ましい塩基性触媒の例は、アルコラート、例えばナトリウムメタノラート、及びカリウムメタノラートである。
【0039】
反応の際に形成される平衡を本発明による混合物に有利なように移動させるため、エステル化の際に生じる水、及び/又はエステル交換の際に生じるアルコールを、反応混合物から留去することが、有利であり得る。好適には、水とアルコールの共沸混合物を留去する。泡の形成があり得るため、ここでは塔を用いて作業できる。
【0040】
加えて、異性体ペンタノールの混合物を全体的に過剰で使用することが、有利であり得る。異性体ペンタノールの混合物を、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物を形成するために必要なモル量に対して、5〜50mol%の過剰、とりわけ9〜30mol%の過剰で使用することが好ましい。反応の終了後に残存する過剰なアルコールを、さらなるエステル化、又はエステル交換のために、又はその他の化学的反応のために、再度使用するのが好ましい。このために過剰なアルコールを、その純度を高めるために後処理することができる。そこで例えば、留去したアルコール/水の共沸混合物を少なくとも部分的に濃縮することができ、この濃縮物を水相と有機相に分離し、有機相からは不所望の副生成物(例えばアルコールから水の脱離によって形成されるオレフィン)を分離し、それから、こうして精製された有機相を再度、反応系に返送するか、又は別の反応に、又は別の目的のために使用する。
【0041】
さらに、エステル化及び/又はエステル交換の反応混合物を、過熱したアルコール蒸気で処理することができる。これによってエネルギー投入の一部を、他の媒体によって節約することができ、また反応媒体の良好な完全混合が達成できる。
【0042】
エネルギー節約のためには他にも、異性体ペンタノールの混合物を、周辺温度を超える温度、例えば40℃又は60℃で、反応系に供給することができる。トリメリット酸無水物はまた、高温により、好適には溶融物として、本発明による方法で使用することができる。エネルギー投入の利点に加え、この方法によってさらに、反応媒体のより良好な完全混合、及び迅速に進む反応が可能になる。
【0043】
トリメリット酸、トリメリット酸無水物、又はトリメリット酸トリアルキルエステルから、とりわけトリメリット酸無水物から、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物を製造する際、好適には反応混合物を沸騰するまで加熱し、エステル混合物中で結合された全ての異性体ペンチル基を導入するために必要な異性体ペンタノール混合物量に対して好ましくは少なくとも0.2mol当量、好適には少なくとも0.25mol当量、とりわけ少なくとも0.3mol当量を、トリメリット酸及び/又はトリメリット酸誘導体を含有する反応混合物に、沸点に達した後に初めて添加する。沸点に達した後に初めて反応混合物に添加される異性体ペンタノール混合物の量を算出する場合には、場合により使用する異性体ペンタノールの過剰量も、沸点に達した後に初めて、反応混合物に添加することを考慮するべきである。このような反応実施によって、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物について、異性体ペンタノールの混合物全体が、沸点到達前に、トリメリット酸及び/又はトリメリット酸及び/又はトリメリット酸誘導体と接触する場合よりも高い収率が、比較的短い反応時間内で可能になる。
【0044】
エステル化又はエステル交換の終了後、それぞれの反応混合物を通常の方法で後処理する。
【0045】
よって例えば、存在する温度における水の蒸気圧と少なくとも同等の高圧下で、粗製エステルを水性塩基により処理することができる。この方法実施によって、良好に濾過可能な反応混合物が得られる。
【0046】
トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物を製造するための方法において、良好な加工性と高い可塑剤効率を有し、また揮発性が低い可塑剤を得るためには、第一級ペンタノールの混合物を使用するのが好ましい。
【0047】
第一級ペンタノールの適切な混合物は、ブテンのヒドロホルミル化、及び引き続いた、又は同時の水素化によって製造できる。異性体ブテンの混合物を、ヒドロホルミル化に供給する前に分画して、こうして特定されたブテン異性体を増加又は低減させ、ヒドロホルミル化及び水素化の後に、このような異性体分布の異性体ペンタノールの混合物を得ることが有利なことがあり、これによって、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物の製造が可能になる。ペンタノールの異性体分布を制御するための詳細な説明については、米国特許出願US 2007/0287781 A1の相応する段落を参照されたい。
【0048】
本発明による混合物についてさらなる代替的な入手法は、例えばヒドロホルミル化によって製造されたアルデヒドを分画して、こうして特定されたアルデヒド異性体を増加又は低減させ、水素化の後、このような異性体分布の異性体ペンタノールの混合物を得ることであり、これによって、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物の製造が可能になる。さらに代替的には、異性体ペンタノールの混合物を分画し、ここでも特定されたペンタノール異性体を増加又は低減させることができる。
【0049】
さらに代替的には、異性体ペンタノールの混合物を、純粋異性体ペンタノールの混合によって製造し、これをエステル化又はエステル交換で使用することができる。場合により本発明の実現に必要な異性体分布を有さない異性体ペンタノール混合物と、他の組成を有する異性体ペンタノール混合物との、及び/又は1種以上の純粋異性体ペンタノールとの混合もまた可能であり、これによってエステル化又はエステル交換後に、必要な特性を有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物が得られる。
【0050】
さらには、エステル化又はエステル交換で使用する異性体ペンタノールの混合物を適切に混合するのではなく、トリメリット酸のトリペンチルエステルの異性体を適切に一緒に混合することによって、本発明による混合物が製造できる。
【0051】
これに相応して本発明の対象は、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物を製造するための方法であって、以下の工程を有するものである:
・エステル中で結合されたペンチル基の異性体において異なる、トリメリット酸の純粋異性体トリペンチルエステルの少なくとも2種、
・エステル混合物中で結合された異性体ペンチル基の異性体分布において異なる、異性体ペンチル基を含有するトリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物の少なくとも2種、又は
・トリメリット酸の純粋異性体トリペンチルエステルの少なくとも1種、及び異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物の少なくとも1種、
を相互に混合し、これによって一緒に混合したエステル混合物中で結合された異性体ペンチル基の5mol%超、好ましくは少なくとも15mol%、好適には少なくとも20mol%、より好ましくは少なくとも25mol%、特に好ましくは少なくとも50mol%、さらに好ましくは少なくとも67mol%、極めて特に好ましくは少なくとも75mol%、とりわけ少なくとも80mol%が、分枝状である。
【0052】
トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物は、単独の可塑剤として、又は複数のポリマー可塑化成分を含有する可塑剤組成物の一部として、プラスチック中で使用することができる。
【0053】
これに応じて本発明のさらなる対象は、異性体ペンチル基を含有するトリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物の使用であって、ポリマー用可塑剤としての、又はトリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物以外に、少なくとも1種のさらなるポリマー可塑化化合物を含有する、ポリマー用可塑剤組成物の一部としての前記使用である。
【0054】
適切なポリマーは好適には、以下のものから形成される群から選択される:ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン、プロピレン、ブタジエン、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、若しくはメタクリレートと、炭素原子数が1〜9である分枝鎖状若しくは非分枝鎖状のアルコールのアルコキシ基とをベースとするホモポリマー又はコポリマー、アクリロニトリル、又は環状オレフィン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニリデンクロリド(PVDC)、ポリアクリレート、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリ尿素、シリル化ポリマー、フルオロポリマー、特にポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチロールポリマー、特にポリスチレン(PS)、発泡可能なポリスチレン(EPS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン−無水マレイン酸コポリマー(SMA)、スチレン−メタクリル酸コポリマー、ポリオレフィン、特にポリエチレン(PE)、又はポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン−ビニルアセテート(EVA)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリスルフィド(PSu)、バイオポリマー、特にポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、ポリヒドロキシバレリアン酸(PHV)、ポリエステル、デンプン、セルロース、及びセルロース誘導体、特にニトロセルロース(NC)、エチルセルロース(EC)、酢酸セルロース(CA)、セルロース−アセテート/ブチレート(CAB)、ゴム、及びシリコーン。
【0055】
好ましいポリマーは、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル若しくはアクリル酸ブチルとのコポリマー、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、及びニトロセルロースである。
【0056】
特に好ましいのは、PVC用、若しくは塩化ビニル含有コポリマー用の可塑剤として、又はPVC用、若しくは塩化ビニル含有コポリマー用の可塑剤組成物の一部としての、本発明によるエステル混合物の使用である。
【0057】
トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物は好適には、接着剤、封止剤、被覆材料、塗料、着色剤、プラスチゾル、発泡体、人工皮革、床面被覆(例えばトップコート)、屋根用の膜構造、基部保護剤、織布被覆、ケーブル、鋼線絶縁、ホース、押出成形品、シート、自動車内部領域、壁紙、インク、玩具、接触シート、食品包装、又は医薬品、例えばチューブ若しくは血液バッグにおける可塑剤又は可塑剤組成物の一部として使用する。
【0058】
さらなる実施態様では、トリイソペンチルエステルの本発明による混合物を、添加剤用の溶剤として、例えば接着促進剤用の溶剤として使用する。
【0059】
先に述べたように、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物は、1種以上のさらなるポリマー可塑化化合物とともに、可塑剤組成物を形成することができる。それぞれの適用目的に応じて、1種以上のポリマー可塑化化合物を、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物と混合し、生成する可塑剤組成物の特性を適切に調整する。本発明による可塑剤組成物の特に好ましい実施形態となるのは、この可塑剤組成物が5質量%未満、特に0.5質量%未満、極めて特に0.1質量%未満、フタレート含有化合物を含有する場合である。さらなるポリマー可塑化化合物は好適には、以下の群から選択される:アジペート、ベンゾエート、例えばモノベンゾエート、若しくはグリコールジベンゾエート、塩素化炭化水素、シトレート、シクロヘキサンジカルボキシレート、エポキシ化された脂肪酸エステル、エポキシ化された植物油、エポキシ化されアシル化されたグリセリド、フランジカルボキシレート、ホスフェート、フタレート(好適にはできるだけ僅かな量で)、スクシネート、スルホンアミド、スルホネート、テレフタレート、トリメリテート、又はアジピン酸、コハク酸、若しくはセバシン酸をベースとする、オリゴマー若しくはポリマーのエステル。
【0060】
本発明の対象はまた、異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物、並びにアルキルベンゾエート、ジアルキルアジペート、グリセリンエステル、クエン酸トリアルキルエステル、アシル化クエン酸トリアルキルエステル、グリコールジベンゾエート、本発明により記載された基とは異なる基を有するトリメリテート、ジアルキルテレフタレート、ジアルキルフタレート、フランジカルボン酸のエステル、ヘキシトール二無水物のジアルカノイルエステル(例えばイソソルビド)、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、ポリマー可塑剤、例えばポリアジペートのポリマー可塑剤、及び1,2−、1,3−、又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のジアルキルエステルの群からのさらなるポリマー可塑化化合物を少なくとも1種含有する可塑剤組成物である。
【0061】
本発明の好ましい対象は、異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物、及びジイソノニルテレフタレート(DINT)を含有する、可塑剤組成物である。相応する可塑剤組成物の特徴は、揮発性が低いことである。この可塑剤組成物は特に、高温適用、例えばケーブルのために有利に使用できる。それと言うのも、相応する可塑剤組成物を含有する生成物は、耐熱性が良好だからである。
【0062】
本発明のさらなる好ましい対象は、異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物、及び1,2−、若しくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル、特にジイソノニルエステルを含有する、可塑剤組成物である。この可塑剤を含有する生成物の特徴は特に、低温可撓性が改善されていることである。加えて、相応する可塑剤組成物を含有するプラスチゾルは、粘度が低下しているため、より良好に加工できる。
【0063】
本発明のさらなる好ましい対象は、異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物、及びアルキル基の鎖長が4〜6個の炭素原子であるエポキシ化脂肪酸アルキルエステルを含有する、可塑剤組成物である。相応する可塑剤組成物を含有するプラスチゾルは、粘度が低下しており、またゲル化が良好なため、良好に加工できる。
【0064】
同様に好ましいのは、異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物、及びアルキル基が6個超、好適には7、8、9、10、又は11個の炭素原子を有する、トリメリット酸のトリアルキルエステルを含有する可塑剤組成物である。また、異性体ペンチル基を含有する、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物と、ポリマー可塑剤とを含有する可塑剤組成物も好ましい。本発明による可塑剤組成物、又はこれから製造される生成物のこの段落で挙げた実施態様は、揮発性が特に低い。
【0065】
本発明のさらなる対象は、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物、又は本発明による可塑剤混合物、並びにポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル若しくはアクリル酸ブチルとのコポリマー、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、及びニトロセルロースから形成される群から選択されるポリマー1種以上を含有する、プラスチック組成物である。
【0066】
このプラスチック組成物は好ましくは、ポリマー100質量部に対して、可塑剤を5〜200質量部、好ましくは10〜150質量部、含有する。
【0067】
ポリ塩化ビニル用の可塑剤としての、又はポリ塩化ビニル用の可塑剤組成物の一部としての、本発明による混合物の使用が好ましく、これに相応して、本発明によるエステル混合物、及びPVC、及び/又は塩化ビニル含有コポリマーを含有するプラスチック組成物が、特に好ましい。
【0068】
ポリマーは好ましくは、懸濁法、バルク法、マイクロ懸濁法、又はエマルジョン法によるPVCである。
【0069】
1つの実施態様において、本発明によるプラスチック組成物は、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物に加えて、さらなるポリマー可塑化化合物を50質量%未満、20質量%未満、10質量%未満、含有するか、又はさらなるポリマー可塑化化合物を含有せず、ここで質量%は、プラスチック組成物の全質量に対するものである。
【0070】
本発明によるプラスチック組成物は好適には、ポリマー、又は数種のポリマーの混合物、及びトリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物、並びにさらなる任意のポリマー可塑化化合物の1種以上に加えて、以下の群からの添加剤の1種以上を含有する:熱安定剤、充填剤、顔料、発泡剤、殺生剤、紫外線及び光安定剤、補助安定剤、抗酸化剤、粘度調整剤、脱気剤、接着プライマー、潤滑剤、及び着色剤。
【0071】
本発明によるプラスチック組成物は好適には、本発明による混合物を含有するプラスチゾルの粘度を低下させるために有利に使用可能な粘度調整剤を含有する。
【0072】
本発明によるプラスチック組成物は、接着剤、封止剤、被覆材料、塗料、着色剤、プラスチゾル、発泡体、人工皮革、床面被覆(例えばトップコート)、屋根用の膜構造、基部保護剤、織布被覆、ケーブル、鋼線絶縁、ホース、押出成形品、シート、自動車内部領域、壁紙、インク、玩具、接触シート、食品包装、又は医薬品、例えばチューブ若しくは血液バッグにおいて使用できる。
【0073】
この文書で単純に本発明による混合物と呼ぶ、所定の異性体分布を有するトリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物、及びその製造、及び使用に加えて、本発明はさらに、可塑剤としてのトリメリット酸のトリペンチルエステルの使用、これから生じる適用、並びにこのエステルのための改善された製造方法に及ぶ。
【0074】
これに相応して本発明の対象は、トリメリット酸のトリペンチルエステルを製造するための方法であり、ここではトリメリット酸及び/又はトリメリット酸誘導体をペンタノールと反応させ、その際に反応混合物を沸騰するまで加熱し、エステル混合物中で結合された全てのペンチル基を導入するために必要なペンタノールの量に対して少なくとも0.2mol当量、好適には少なくとも0.25mol当量、とりわけ少なくとも0.3mol当量を、トリメリット酸、及び/又はトリメリット酸誘導体を含有する反応混合物に、沸点に達した後に初めて添加する。沸点に達した後に初めて反応混合物に添加されるペンタノールの量を算出する場合には、場合により使用するペンタノールの過剰量も、沸点に達した後に初めて、反応混合物に添加することを考慮するべきである。このような反応実施によって、トリメリット酸のトリペンチルエステルについて、ペンタノール全体が、沸点到達前にトリメリット酸及び/又はトリメリット酸及び/又はトリメリット酸誘導体と接触する場合よりも高い収率で得ることが、比較的短い反応時間内で可能になる。
【0075】
適切なトリメリット酸誘導体は、トリメリット酸無水物、トリメリット酸の酸ハロゲン化物、及びトリメリット酸トリエステルである。
【0076】
この方法においてトリメリット酸誘導体であるトリメリット酸無水物を使用するのが好ましく、これをペンタノールでエステル化する。
【0077】
代替的な実施態様において、トリメリット酸のトリペンチルエステルは、エステル交換により、トリメリット酸トリアルキルエステルから製造する。ここで、エステル官能基のアルキル基はそれぞれ、好適には4個未満の炭素原子を有する。
【0078】
エステル化又はエステル交換は好適には、1種又は複数の触媒の存在下で、例えばブレンステッド酸、又はルイス酸、若しくはルイス塩基を触媒として用いて行う。特に適切な触媒として有利なのは、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、及び金属化合物であることが判明している。特に好ましい触媒の例は、スズ粉末、酸化スズ(II)、シュウ酸スズ(II)、チタン触媒、例えばテトライソプロピルオルトチタネート、テトラブチルオルトチタネート、又はテトラペンチルオルトチタネート、並びにジルコニウムエステル、例えばテトラブチルジルコネート、又はテトラペンチルジルコネートである。特に好ましい塩基性触媒の例は、アルコラート、例えばナトリウムメタノラート、及びカリウムメタノラートである。
【0079】
反応の際に形成される平衡をトリペンチルエステルに有利なように移動させるため、エステル化の際に生じる水、及び/又はエステル交換の際に生じるアルコールを、反応混合物から留去することが、有利であり得る。泡の形成があり得るため、ここでは塔を用いて作業できる。加えて、ペンタノールを全体的に過剰で使用することが、有利であり得る。ペンタノールを、トリメリット酸のトリペンチルエステルを形成するために必要なモル量に対して、5〜50mol%の過剰、とりわけ9〜30mol%の過剰で使用することが好ましい。エステル化又はエステル交換の終了後、それぞれの反応混合物を通常の方法で後処理する。
【0080】
ここに記載した、トリメリット酸のトリペンチルエステルを製造するための方法においても、良好な加工性と高い可塑剤効率を有し、また揮発性が低い可塑剤を得るためには、第一級ペンタノールの混合物を使用するのが好ましい。
【0081】
好適には、製造されたトリペンチルトリメリテート混合物、又は使用したペンタノール中に含有されるペンチル基の10mol%超、好適には20mol%超、さらに好適には30mol%超、特に好ましくは40mol%超、極めて特に好ましくは50mol%超、より好ましくは60mol%超、好適には70mol%超、より好ましくは80mol%超、とりわけ90mol%超が、直鎖状である。特に好ましくは、n−ペンタノールを使用し、トリ−n−ペンチルトリメリテートを製造する。
【0082】
トリメリット酸のトリペンチルエステルは、単独の可塑剤として、又は複数のポリマー可塑化成分を含有する可塑剤組成物の一部として、プラスチック中で使用することができる。
【0083】
これに応じて本発明のさらなる対象は、トリメリット酸のトリペンチルエステルの使用であって、ポリマー用、とりわけPVC、又は塩化ビニル含有コポリマー用の可塑剤としての、又はトリメリット酸のトリペンチルエステルの混合物の1種以上以外に、少なくとも1種のさらなるポリマー可塑化化合物を含有する、ポリマー用、とりわけPVC、又は塩化ビニル含有コポリマー用の可塑剤組成物の一部としての前記使用である。ここでとりわけ、トリメリット酸のトリ−n−ペンチルエステルを含有する試験体の非常に良好な加工性、また非常に良好なショアA硬度により、ひいてはその効率が非常に良好であるため、トリメリット酸のトリ−n−ペンチルエステルが好ましい。
【0084】
好ましいポリマーは、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル若しくはアクリル酸ブチルとのコポリマー、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、及びニトロセルロースである。
【0085】
トリメリット酸のトリペンチルエステルは好適には、接着剤、封止剤、被覆材料、塗料、着色剤、プラスチゾル、発泡体、人工皮革、床面被覆(例えばトップコート)、屋根用の膜構造、基部保護剤、織布被覆、ケーブル、鋼線絶縁、ホース、押出成形品、シート、自動車内部領域、壁紙、インク、玩具、接触シート、食品包装、又は医薬品、例えばチューブ若しくは血液バッグにおいて、可塑剤として、又は可塑剤組成物の一部として使用する。さらなる実施態様では、トリメリット酸のトリペンチルエステルを、添加剤用の溶剤として、例えば接着促進剤用の溶剤として使用する。
【0086】
トリメリット酸のトリペンチルエステルは、1種以上のさらなるポリマー可塑化化合物とともに、可塑剤組成物を形成することができる。それぞれの適用目的に応じて、1種以上のポリマー可塑化化合物を、トリメリット酸のトリペンチルエステルと混合し、生成する可塑剤組成物の特性を適切に調整する。本発明による可塑剤組成物の特に好ましい実施態様においてこの可塑剤組成物は、5質量%未満、特に0.5質量%未満、フタレート含有化合物を含有する。さらなるポリマー可塑化化合物は好適には、以下の群から選択される:アジペート、ベンゾエート、例えばモノベンゾエート、若しくはグリコールジベンゾエート、塩素化炭化水素、シトレート、シクロヘキサンジカルボキシレート、エポキシ化された脂肪酸エステル、エポキシ化された植物油、エポキシ化されアシル化されたグリセリド、フランジカルボキシレート、ホスフェート、フタレート(好適にはできるだけ僅かな量で)、スクシネート、スルホンアミド、スルホネート、テレフタレート、トリメリテート、又はアジピン酸、コハク酸、若しくはセバシン酸をベースとする、オリゴマー若しくはポリマーのエステル。
【0087】
本発明の対象はまた、トリメリット酸のトリペンチルエステルの1種以上、並びにアルキルベンゾエート、ジアルキルアジペート、グリセリンエステル、クエン酸トリアルキルエステル、アシル化クエン酸トリアルキルエステル、グリコールジベンゾエート、本発明により記載された基とは異なる基を有するトリメリテート、ジアルキルテレフタレート、ジアルキルフタレート、フランジカルボン酸のエステル、ヘキシトール二無水物のジアルカノイルエステル(例えばイソソルビド)、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、ポリマー可塑剤、例えばポリアジペートのポリマー可塑剤、及び1,2−、1,3−、又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のジアルキルエステルの群からのさらなるポリマー可塑化化合物を少なくとも1種含有する可塑剤組成物である。
【0088】
本発明のさらなる対象は、トリメリット酸のトリペンチルエステル、又はトリメリット酸のトリペンチルエステルを含有する可塑剤組成物、並びにポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル若しくはアクリル酸ブチルとのコポリマー、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、及びニトロセルロースから形成される群からなる1種以上のポリマーを含有する、プラスチック組成物である。
【0089】
このプラスチック組成物は好ましくは、ポリマー100質量部に対して、可塑剤を5〜200質量部、好ましくは10〜150質量部、含有する。
【0090】
ポリ塩化ビニル用の可塑剤としての、又はポリ塩化ビニル用の可塑剤組成物の一部としての、トリメリット酸のトリペンチルエステルの使用が好ましく、これに相応して、トリメリット酸のトリペンチルエステル、及びPVC、及び/又は塩化ビニル含有コポリマーを含有するプラスチック組成物が、特に好ましい。ポリマーは好ましくは、懸濁法、バルク法、マイクロ懸濁法、又はエマルジョン法によるPVCである。
【0091】
好ましいプラスチック組成物は好適には、ポリマー、又は数種のポリマーの混合物、及びトリメリット酸のトリペンチルエステル、並びにさらなる任意のポリマー可塑化化合物1種以上に加えて、以下の群から選択される添加剤の1種以上を含有する:熱安定剤、充填剤、顔料、発泡剤、殺生剤、紫外線及び光安定剤、補助安定剤、抗酸化剤、粘度調整剤、脱気剤、接着プライマー、潤滑剤、及び着色剤。
【0092】
本発明によるプラスチック組成物は好適には、本発明による混合物を含有するプラスチゾルの粘度を低下させるために有利に使用可能な粘度調整剤を含有する。
【0093】
本発明によるプラスチック組成物は、接着剤、封止剤、被覆材料、塗料、着色剤、プラスチゾル、発泡体、人工皮革、床面被覆(例えばトップコート)、屋根用の膜構造、基部保護剤、織布被覆、ケーブル、鋼線絶縁、ホース、押出成形品、シート、自動車内部領域、壁紙、インク、玩具、接触シート、食品包装、又は医薬品、例えばチューブ若しくは血液バッグにおいて使用できる。
【0094】
本文書で単純に本発明による混合物と呼ぶ、トリメリット酸のトリペンチルエステルの混合物、その製造、及びポリマー用可塑剤としての、若しくはポリマー用可塑剤組成物の一部としての使用、トリメリット酸のトリペンチルエステルを含有する可塑剤組成物、並びにトリメリット酸のトリペンチルエステルを含有するプラスチック組成物に加えて、本発明はさらに、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリペンチルエステル、及びその異性体混合物を対象とし、これは先に導入した命名法に従うとシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリイソペンチルエステルとなる。このエステル、又はエステル混合物は、例えば相応するトリペンチルエステル(混合物)の核水素化によって製造できる。水素化のための適切な方法は例えば、US 2015/0246867 A1、US 6,284,917 B1、又はUS 7,361,714 B2に記載されている。代替的に、このエステル(混合物)はまた、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、又は適切な誘導体(例えば無水物、酸無水物)のエステル化によって、又は類似エステルのエステル交換によって(例えば1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリメチルエステルのエステル交換によって)、得ることができる。
【0095】
これに相応して本発明の対象はまた、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリペンチルエステルであり、これは好ましくはトリメリット酸のトリペンチルエステルの核水素化によって、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸若しくは1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸誘導体のエステル化によって、又は分子量が比較的小さいシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリエステルのエステル交換によって、それぞれペンタノールを用いて製造されたものである。本発明の対象はまた、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリイソペンチルエステルであり、これは好ましくはトリメリット酸のトリイソペンチルエステルの核水素化によって、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸若しくは1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸誘導体のエステル化によって、又は分子量が比較的小さいシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリエステルのエステル交換によって、それぞれイソペンタノールを用いて製造されたものである。
【0096】
同様のペンチル基の異性体分布を有するトリメリット酸の類似のトリペンチルエステルと比較して、この1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸エステルの特徴は、明らかに粘度が低いこと(純粋な生成物として、またPVCプラスチゾル調製物において)、可塑剤効率が高まっていること、及びPVCシートにおける紫外線安定性が高まっていることである。より鎖が長い1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸エステル(例えば1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリ−2−エチルヘキシルエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリイソノニルエステル)とは異なり、トリペンチルエステル、及びトリイソペンチルエステルは例えば、ゲル化、及び効率において、優れていることが判明している。
【0097】
これに応じて、ポリマー用、とりわけPVC、又は塩化ビニル含有コポリマー用の、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリペンチルエステルの使用、並びに異性体混合物のシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリイソペンチルエステルの可塑剤としての、若しくはシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリ(イソ)ペンチルエステルの1種以上に加えて、さらなるポリマー可塑化化合物を少なくとも1種含有する可塑剤組成物の一部としての使用も、同様に本発明の対象である。
【0098】
さらなる対象は、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸トリ(イソ)ペンチルエステルを含有する、可塑剤組成物及びプラスチック組成物である。
【実施例】
【0099】
例1〜7:トリメリット酸無水物のエステル化による、トリメリテートの製造
撹拌機付撹拌フラスコ、試料採取支持部、滴下漏斗、浸漬管、温度計、及び強力冷却機が取り付けられた水分離器を有する装置(この際、水分離器にはC
4トリメリテート製造の場合、20cmのラシヒリング塔が前接続されていた)に、トリメリット酸無水物(Sigma Aldrich、純度97%)576.0g(3mol)、及び量m
1のアルコールAを充填した。この装置に1時間、窒素(6l/h)を浸漬管によりパージし、それからテトラ−n−ブチルチタネート(Sigma Aldrich、純度97%超)を0.8g(0.75mmol)添加した。反応終了まで持続的に窒素(6l/h)を吹き込む一方、混合物を撹拌しながら、沸騰するまで加熱した。反応により生じる水を、水分離器によって連続的に除去した。240℃の反応温度から、アルコールAの量m
2、及びテトラ−n−ブチルチタネート0.8g(0.75mmol)を、反応温度が240℃未満に低下しない速度で計量供給した。水分離器によって108ml(6mol)の水が分離されたら直ちに、反応溶液の試料によって、DIN EN ISO 2114により酸価を測定した。測定した各酸価に応じて、反応混合物の酸価が試料1gあたり0.1mgKOH未満になるまで、反応混合物をさらに加熱した(合計反応時間t)。
【0100】
エステル化からの冷却反応混合物を、撹拌機、温度計、浸漬管、クライゼンブリッジ(Claisen-Bruecke)、及び受け器フラスコを備える撹拌フラスコ中で少なくとも1時間、窒素により浸漬管をパージし、続いて約1mbarの圧力に低下させた。温度をゆっくりと160℃に上げ、過剰なアルコールを留去した。これを真空下、及び窒素(20mbar)の導入下で冷却した。80℃の温度に達したら、圧力を窒素により平衡させ、この粗製生成物に、脱塩水15mmol、及び0.5質量%の活性炭(Cabot Norit Nederland B.V., CAP Super、量は、収率を100%と仮定した場合の反応生成物に対するもの)を加え、80℃で15分、窒素導入下(6l/h)で撹拌した。続いて、反応混合物を2時間、真空下で窒素(20mbar)を導入しながら160℃に加熱し、最後の揮発性成分を分離した。再度80℃に冷却した後、窒素を吹き込みながら(6l/h)、反応混合物を2質量%の塩基性酸化アルミニウム(Sigma Aldrich社製、Brockmann 1型、量は、収率を100%と仮定した場合の反応生成物に対するもの)と混合し、80℃で1時間撹拌した。
【0101】
この反応混合物を引き続き80℃で、濾紙と、濾過助剤(Perlite Typ D14、Knauf社製)から事前にプレス成形したフィルターケークとを有するブフナー漏斗を介して、真空により吸引ビンへと濾過した。濾液をGC分析によって、純度についてはGC分析により、組成についてはNMRにより、調査した。
【0102】
GC分析:
GC分析は、以下のパラメータを用いて行った:
・キャピラリーカラム30m DB5;0.25mm ID;0.25μmの膜
・キャリアガス:ヘリウム
・カラム予圧:150kPa
・カラム注入部で冷却
・炉温プログラム(所要時間51分):50℃(1分)、15℃/分で350℃に加熱(14分間温度を維持)
・インジェクタ:50℃
・検知器(FID):425℃
・注入体積:0.3μl。
【0103】
試料のクロマトグラムにおける成分の同定は、関連するエステルの比較溶液を用いて行った。引き続き、試料のクロマトグラムにおけるシグナルを、100面積%に対して標準化した。物質量比は、各シグナルの面積比から充分な近似で測定した。純度は、クロマトグラムにおける総面積に対する生成物シグナルの割合によって、特定した。
【0104】
トリイソペンチルエステル中に含有される異性体ペンチル基の種類と数は、以下に記すNMR法に代えて、塩基性溶液におけるエステル混合物の鹸化、及びこれに続いて、生成するアルコール混合物のGC分析によって特定することができる。ここでGC条件(特にカラム材料、及びカラム寸法、並びに温度プログラム)によって、各異性体へのアルコールの分別が許容されることに注意するべきである。試料のクロマトグラムにおける成分の同定はその後、関連するエステルの比較溶液を用いて行う。続いて、試料のクロマトグラムにおけるシグナルを100面積%に標準化し、これによって物質量比が各シグナルの面積比から、充分な近似値で特定可能になる。
【0105】
NMR分析:
トリイソペンチルエステル混合物の組成(すなわち全ペンチル基の合計に対する様々な異性体ペンチル基の各割合)の特定は、例えば
1H−NMR、及び
13C−NMR分光分析によって行うことができる。ここで組成の測定は、
1H−NMR分光分析によって、重クロロホルム(CDCl
3)中のトリイソペンチルエステル混合物の溶液を用いて行った。スペクトル吸収のために、物質20mgを0.6mlのCDCl
3中に(TMSを1質量%含有)溶解させ、直径5mmのNMR管に充填した。試験すべき物質も、使用するCDCl
3も、まず分子ふるいによって乾燥させ、場合によって存在する水による測定値の変動を排除する。NMR分光分析試験は原則的に、あらゆる市販のNMR装置によって行うことができる。本願におけるNMR分光分析試験のためには、Bruker社のAvance 500 型装置を使用した。スペクトルは、303Kの温度で、遅延(遅れ)d1=5秒、32スキャン(往復)、パルス長さ約9.5μs(90°励起パルス)、及び5mmのBBO試料体(Broad Band Observer、広帯域観察)による掃射幅(スペクトル幅)10000Hzで記録した。共鳴シグナルは、テトラメチルシランの化学シフト(TMS=0ppm)を、内部標準として記録した。他の市販のNMR装置により、同じ稼働パラメータでは同等の結果が得られる。
【0106】
以下の化学式1は、説明した測定法の確認のためにのみ用いられるべきである。ここで重要なのは、n−ペンチル基(C
14H
3、及びC
10H
2)、2−メチルブチル基(C
22H
3、C
23H
3、及びC
19H
2)、及び3−メチルブチル基(C
18H
3、C
18'H
3、及びC
15H
2)においてそれぞれ割り当てられたメチル基の炭素原子の番号付け、また酸素原子に隣接するメチレン基の炭素原子の番号付けである。
【0107】
化学式1:様々なペンチル基における炭素原子の番号付け
【化1】
【0108】
トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの混合物から得られた
1H−NMRスペクトルは、0.5ppmの範囲から最も低い谷の最小値まで、0.7〜1.2pmの範囲で共鳴シグナルを有し、これは異性体ペンチル置換基のメチル基の炭素原子のシグナルによって形成されたものである(C
14H
3、C
18H
3、C
18'H
3、C
22H
3、及びC
23H
3)。3.60〜4.55ppmという化学シフト範囲におけるシグナルは実質的に、アルコール基の酸素に隣接するメチレン基の水素原子に割り当てることができる(C
10H
2、C
15H
2、C
19H
2)。ここでC19のプロトンは、隣接する第三級炭素原子に基づき、高いフィールドシフトを示し、3.95〜4.29ppmにありそうな一方、C10及びC15のプロトンは、4.29〜4.55ppmというより深いシフトでシグナルをもたらす。
【0109】
定量化は、各共鳴シグナルのもとにある面積を比較測定することにより、すなわちシグナルによりベースラインから囲まれた面積を測定することにより行った。市販のNMRソフトウェアは、シグナル面積を積分するためにプログラム関数を利用する。本願におけるNMR分光分析試験では、TopSpin(登録商標)Version 3.1というソフトウェアを用いて積分した。
【0110】
本発明による混合物において異性体ペンチル基の平均分岐度を測定するため、まず0.68〜1.18ppmの範囲におけるシグナルの積分値(I(CH
3))を、3.95〜4.55ppmの範囲におけるシグナルの積分値(I(OCH
2))で割る。こうして強度比が得られ、これにより、メチル基中に存在する水素原子の数対、酸素に隣接するメチレン基に存在する水素原子の数の比率が示される。メチル基1個あたり3個の水素原子、及び各酸素に隣接するメチレン基には2個の水素原子が存在しているので、この強度はそれぞれ3つ又は2つに分ける必要があり、これによってメチル基の数対、ペンチル基中で酸素に隣接するメチレン基の数の比が得られる。メチル基と、酸素に隣接するメチレン基のみを有する直鎖状n−ペンチル基は分岐を有さないので、これによれば分岐度が0でなければならず、先の比からさらに1を引かなければならない。
【0111】
つまり平均分岐度Vは、以下の式に従って
【数1】
測定した強度比から算出することができる。ここでVは平均分岐度、I(CH
3)は、メチル水素原子に割り当てられている面積積分、及びI(OCH
2)は、酸素に隣接するメチレン水素原子の面積積分である。
【0112】
生成物中には、2−メチルブチル基及び3−メチルブチル基(それぞれ分岐度は1)、並びにn−ペンチル基(分岐度は0)が含まれていてよいため、トリイソペンチルエステルの平均分岐度は常に、最大1である。よって、1という値からの平均分岐度の逸脱から、分子内におけるn−ペンチル基(x
pentyl)の物質割合を特定することができる。
【数2】
【0113】
2−メチルブチル基の割合は、3.95〜4.55ppmの範囲においてベースラインで分離されたシグナルを積分することにより、算出できる。C10及びC15プロトンシグナル(C
10H
2、及びC
15H
2、4.29〜4.55ppmの間で多重項)からのC19のプロトンシグナル(C
19H
2;3.95〜4.28ppmの間で多重項)の分離についてはここでも、シグナル群の間の谷を区分けした最小値で行う。
【0114】
2−メチルブチル基(x
2-Methylbutyl)の物質量割合は、下記式に従い
【数3】
OC
19H
2プロトンについてのシグナル積分(I(OC
19H
2))の、全てのOCH
2プロトンの強度(I(OCH
2))に対する強度比特定により、算出することができる。
【0115】
よって3−メチルブチル基(x
3-Methylbutyl)の物質割合は、1に対する事前の2つの物質量割合の差から得られる。
【数4】
【0116】
【表1】
【0117】
例8:ドライブレンド、巻取りシート、及びプレス成形プレートの製造
以下の例に必要な試験体は、以下の処方を乾燥混合(ドライブレンド製造)、カレンダー成形(ローラ加工)、及びプレス成形することにより製造する:
【表2】
【0118】
乾燥混合物(ドライブレンドとも呼ばれる)によって、例えば熱可塑性加工(例えばカレンダー成形、又は押出成形)の後、ケーブル絶縁、及び鋼線絶縁、チューブ、又は床面、及び屋根用の膜構造を製造することができる。
【0119】
ドライブレンドの製造は、Brabender社製の遊星式混合機で行った。サーモスタット(Lauda社のRC6型)を、遊星式混合機における混合容器の温度調整のために用いた。PCが、混合機に送られたデータを記録した。
【0120】
「Winmix」というソフトウェアにより、Brabender社製の遊星式混合機で以下のパラメータを調整した。
・回転数プログラム:アクティブ
・特性:回転数50回転/分、維持時間9分
(回転数)増加時間:1分
回転数100回転/分、維持時間20分
・温度:88℃
・測定範囲:2Nm
・減衰:3。
【0121】
混合容器における温度は、一時間の温度調整時間後に、88℃であった。遊星式混合機が自身の較正を行った後、固体成分(PVC:安定剤、事前に秤量して(Mettler社のXS6002S型)、四倍量(表2にphrで記載した量に対して四倍)でPE容器に秤取ったもの)を、固体漏斗、及びBrabender混合容器に存在する充填支持部を介して、混合容器に供給した。プログラムを開始し、粉末混合物を10分間、混合容器で撹拌、及び温度調整し、液状構成成分(同様にPE容器における秤量に対して四倍量を量り取ったもの)を、液体漏斗、及びBrabender混合容器に存在する充填支持部を介して供給した。混合物をさらに20分、遊星式混合機で撹拌した。プログラム終了後、完成した乾燥混合物(ドライブレンド)を取り出した。
【0122】
このドライブレンドから、巻取りシートを製造した。巻取りシートの製造は、Collin社のカレンダー成形機W150 APで行った。Collin社のカレンダー成形機は、自動試料回転部を有し、さらにオイルサーモスタット(Single社、STO 1-6-12-DM型)によって温度調節をする。その制御は、Collin社のソフトウェアによって行った。
【0123】
巻取りシートを製造するために、五段階のプログラムを使用した:
段階 呼称 温度 時間 スリット幅 回転数
(℃) (秒) (mm) (rpm)
1 ドライブレンドの可塑化 165 60 0.2 5
2 スリットの増大 165 30 0.5 20
3 試料回転部の作動 165 170 0.5 20
4 巻取りシート最適化 165 30 0.5 25
5 巻取りシートの取り外し 165 60 0.5 7
【0124】
ローラ温度に達した後、ローラスリットを較正した。測定を開始するため、ローラスリットを0.2mmに調整した。ドライブレンド160gをそれぞれ秤量し、静置型ローラでローラスリットに入れた。プログラムを開始した。ローラは、回転数5回転/分、20%の摩擦で開始した。約1分後、可塑化は大部分が終了し、ローラスリットを0.5mmに拡大させた。カレンダー成形機における自動回転要素によって、6回の均質化を行った。約6分後に、ローラから巻取りシートを取り外し、冷却した。
【0125】
プレス成形プレートは、Collin社の実験室用プレス成形機により製造した。事前に作成した巻取りシート(上記参照)は、プレス成形プレートを製造するために使用した。巻取りシートの側端部は、切断機によって除去し、巻取りシートは引き続き、大きさが約14.5×14.5cmの断片に切断した。厚さ1mmのプレス成形プレートについては、それぞれ2つの巻取りシート片を重ねて、大きさ15×15cmの鋼製プレス成形フレームに置いた。
【0126】
プレス成形プレートを製造するため、3段階のプログラムを使用した:
段階 呼称 温度(℃) 圧力(bar) 時間(秒)
1 事前プレス 175 5 60
2 プレス成形 175 200 120
3 冷却 40 200 270
【0127】
余剰なプレス成型端部(Presslippe)は、プレス成形プレートの製造後に除去した。
【0128】
例9:ドライブレンドにおける可塑剤吸収
各ドライブレンドを製造する間、加工性の基準として用いられる可塑剤吸収速度を測定した。短い可塑剤吸収時間により、実際には低い加工温度、又は高い生成物バッチが、存在する設備で生じる。
【0129】
可塑剤吸収の程度は、混合機の時間依存性回転モーメントによって、ドライブレンド製造において測定した。
【0130】
このために、例8でドライブレンド製造のために記載したハードウェアとソフトウェアを用いて、混合機の回転モーメントを、時間軸に対してグラフ化した。回転モーメントは低下し、可塑剤若しくは可塑剤組成物の添加は、最大値に増加し、ここから再度低下し、最後に、いわゆる乾燥点で一定の値に達するか、又はさらになお最小値に低下する。
【0131】
可塑剤若しくは可塑剤組成物の添加と、乾燥点との時間的な間隔を、可塑剤吸収のための時間tと呼ぶ。
【0132】
【表3】
【0133】
例4
*、5
*、6
*、及び7
*からのトリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物の場合、ジイソノニルフタレート、トリメリット酸のトリ−n−ヘキシルエステル(例3からのもの)、及びトリメリット酸のトリ−2−エチルヘキシルエステルの場合よりも短い時間のうちに、均質なドライブレンドが形成された。これにより、本発明による混合物は、DINPよりも、トリメリット酸のトリ−n−ヘキシルエステルよりも、またトリメリット酸のトリ−2−エチルヘキシルエステルよりも、PVCとの良好な加工性を有すると、直接結論付けることができる。加えて、表3における値から読み取れるように、本発明による混合物では、エステル混合物中で結合されたペンチル基における直鎖状ペンチル基の割合により、PVCとの加工性が上昇している。
【0134】
トリメリット酸のトリ−2−エチルヘキシルエステルは、特に高い可塑剤吸収時間を有するため、多くのPVC適用のための可塑剤としては適していない。よってそのマイグレーション特性は、以下では測定しなかった。
【0135】
例10:マイグレーション特性の測定
可塑剤又は可塑剤組成物を含有する試験体のマイグレーション特性を測定するための試験により、可塑剤含有調製物がその適用において、別の材料と直接接触する際、例えば可塑化したPVC層を硬質PVC層と接触させる際に(いわゆる「多層系」)、どのような挙動を示すのかについて、帰納的な推論ができる。例えばある物品の内部で、可塑化したポリマー含有部材から、可塑化されていないポリマー含有部材に移行する場合、これは、可塑化された部材の不所望の脆性化、及び可塑化されていない部材の軟化につながり、このことが非緻密性、安定性の低下、及び物品の使用時間の短縮につながり得る。これに応じて、僅かなマイグレーション傾向は、多くの適用で使用可能な可塑剤又は可塑剤組成物のこれに相当する成分にとって重要な特性である。
【0136】
トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物のマイグレーション傾向、及び比較物質のDINP、トリ−n−ブチルトリメリテート、トリ−n−ペンチルトリメリテート、及びトリ−n−ヘキシルトリメリテートのマイグレーション傾向は、以下のように測定した:
例8で製造された、厚さ1mmのプレス成形プレートを、100mm×100mmの試験体に切断し、24時間、23℃で貯蔵してから、その質量を測定した。
【0137】
DIN EN ISO 177(1999年公開)の手順に基づき、2つの接触層の間の試験体(例10.1:高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)(製造元:VINK Kunststoffe;100×100×2mmのプレート状);例10.2:可塑化されていないPVC(rPVC)(製造元VINK Kunststoffe;100×100×2mmのプレート状)(これらは2mmという厚さを除いて試験体と同じ寸法)を可塑化し、このようにして生成した2つの層構造をそれぞれ相互に重ねた。同じ可塑剤の試験体をそれぞれ有するこの積層物を2kgの重量で重しをかけ、28日間、炉内(70(+/−1)℃)で貯蔵した。
【0138】
14日後、及び28日後に、各試料体について質量損失を測定した(元々の質量に対する質量損失%)。最初の測定後、積層物を再度、当初のように組み立てた。
【0139】
表4は、試験体の質量損失の平均値を示す。
【0140】
【表4】
【0141】
【表5】
【0142】
表4及び5からは、トリメリット酸のトリイソペンチルエステルの本発明による混合物が例外なく、DINP、並びにトリメリット酸のn−ブチルエステル、n−ペンチルエステル、及びn−ヘキシルトリエステルよりも低いマイグレーション傾向を有することが明らかである。加えて、例5、6、及び8からの本発明によるエステル混合物を含有する試料体についての測定値の比較から読み取れるように、本発明による混合物のマイグレーション傾向は、エステル混合物中で結合されたペンチル基における分枝状ペンチル基の含分が増えるにつれて低下する。例5〜7からの本発明によるエステル混合物を含有する試験体の測定値の比較が示すように、エステル混合物中で結合された分枝状異性体ペンチル基における2−メチルブチル基の割合が高いと、低いマイグレーション傾向に対して、肯定的な作用がもたらされる。