特許第6829069号(P6829069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829069
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】鉄道車両用回路システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 50/40 20190101AFI20210128BHJP
   B60L 50/50 20190101ALI20210128BHJP
   B60L 53/00 20190101ALI20210128BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20210128BHJP
   B60L 58/00 20190101ALI20210128BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20210128BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20210128BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210128BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B60L11/18 A
   B60L1/00 G
   B60L3/00 C
   H02J7/00 P
   H01M10/48 P
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-254989(P2016-254989)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-107987(P2018-107987A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】西宮 幸希夫
(72)【発明者】
【氏名】宮後 苑子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】結城 和明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友由
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/103859(WO,A1)
【文献】 特開2014−166104(JP,A)
【文献】 特開2016−136832(JP,A)
【文献】 特開2012−085535(JP,A)
【文献】 特開平05−328611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00
B60L 3/00
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線から供給される電力を鉄道車両に搭載された走行用モータを駆動する電力に変換する電力変換部と、
前記架線から供給される電力を、走行用モータを駆動する電力の電圧よりも低い電圧の直流電力に変換する負荷用コンバータと、
前記負荷用コンバータから出力された電力を鉄道車両に搭載された負荷を駆動する電力に変換する負荷用インバータと、
前記負荷用インバータの入力側に電気的に接続される蓄電部と、
前記架線から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる通常モードの回生時において、前記電力変換部から出力された回生電力を、前記負荷用コンバータに入力させ、前記負荷用コンバータから出力された電力を前記蓄電部に入力させる制御部と、
を備える鉄道車両用回路システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電部から出力される電力を、前記負荷用インバータに入力させ、
前記負荷用インバータは、前記蓄電部から出力される電力を鉄道車両に搭載された負荷を駆動する電力に変換する、
請求項1に記載の鉄道車両用回路システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記蓄電部から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる自力走行モードにおいて、前記蓄電部から出力される電力を、昇圧させることなく前記電力変換部に供給する、
請求項1又は請求項2に記載の鉄道車両用回路システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記蓄電部から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる自力走行モードにおいて、回生時には前記電力変換部から出力された回生電力を、前記負荷用コンバータを介さずに前記蓄電部に入力させる、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鉄道車両用回路システム。
【請求項5】
前記蓄電部と前記電力変換部との間に電気的に接続される第1の充電回路と、
前記電力変換部の電力供給側に設けられた第1のフィルタコンデンサと、をさらに備え、
前記制御部は、前記架線から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる通常モードから前記蓄電部から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる自力走行モードに切り替える場合、前記第1の充電回路を制御し、前記蓄電部から出力された電力により前記第1のフィルタコンデンサを充電させる、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鉄道車両用回路システム。
【請求項6】
前記負荷用コンバータは、絶縁型のコンバータである、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鉄道車両用回路システム。
【請求項7】
前記電力変換部と前記蓄電部との間に電気的に接続され、前記蓄電部に入力される電力又は前記蓄電部から出力される電力の電圧を調整するチョッパ回路をさらに備え、
前記制御部は、前記架線から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる通常モードの回生時において、前記電力変換部から出力された電力をチョッパ回路に降圧させて前記蓄電部に入力させる、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鉄道車両用回路システム。
【請求項8】
前記制御部は、力行時において、前記蓄電部から出力される電力をチョッパ回路に昇圧させて前記電力変換部に入力させる、
請求項7に記載の鉄道車両用回路システム。
【請求項9】
前記架線と前記電力変換部との間に電気的に接続される第2の充電回路と、
前記電力変換部の電力供給側に設けられた第1のフィルタコンデンサと、をさらに備え、
前記制御部は、前記架線から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる通常モードから、前記蓄電部から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる自力走行モードに切り替える場合、前記第2の充電回路を制御し、前記第1のフィルタコンデンサを充電させる、
請求項7又は請求項8に記載の鉄道車両用回路システム。
【請求項10】
前記チョッパ回路に電気的に並列に接続される第2のフィルタコンデンサに電気的に直列に接続された開放器と、をさらに備え、
前記制御部は、前記架線から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる通常モードから、前記蓄電部から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる自力走行モードに切り替える場合、前記開放器を開放する、
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の鉄道車両用回路システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道車両用回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の減速時に発生する回生エネルギーを蓄電装置に蓄積させ、蓄電装置から供給される電力を用いて走行用モータを駆動させ、走行用モータの駆動力により車輪を回転させて走行を行う鉄道車両が知られている。また、このような鉄道車両は架線から供給される電力を用いて走行用モータを駆動させて走行することもできる。ここで、鉄道車両に用いられるエネルギーは有限であることから、鉄道車両において用いられるエネルギーの利用効率を改善し、有効に活用されることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−125128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる鉄道車両用回路システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の鉄道車両用回路システムは、電力変換部と、負荷用コンバータと、負荷用インバータと、蓄電部と、制御部と、を持つ。前記電力変換部は、架線から供給される電力を鉄道車両に搭載された走行用モータを駆動する電力に変換する。前記負荷用コンバータは、前記架線から供給される電力を直流電力に変換する。前記負荷用インバータは、前記負荷用コンバータから出力された電力を鉄道車両に搭載された負荷を駆動する電力に変換する。前記蓄電部は、前記負荷用インバータの入力側に接続される。前記制御部は、回生時において、前記電力変換部から出力された回生電力を、前記負荷用コンバータに入力させ、前記負荷用コンバータから出力された電力を前記蓄電部に入力させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の鉄道車両用回路システムを用いた鉄道車両が架線に接触した状態を示す構成図。
図2】第1の実施形態の鉄道車両用回路システムの動作を示すフローチャート。
図3】第2の実施形態の鉄道車両用回路システムを示す構成図。
図4】第3の実施形態の鉄道車両用回路システムを示す構成図。
図5】実施形態の変形例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の鉄道車両用回路システムを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態の鉄道車両用回路システム1を用いた鉄道車両が架線Pに接触した状態を示す構成図である。鉄道車両用回路システム1(以下、単に回路システム1と称する)は、遮断器12、充電回路13、フィルタリアクトル14、放電回路16、フィルタコンデンサ17、電力変換部20、充電回路30、蓄電部40、負荷用コンバータ50、負荷用インバータ51、および制御部60を有する。
回路システム1を搭載した鉄道車両は、架線Pに集電器2が接触することにより、架線Pから電力の供給を受けて走行用モータMを駆動させ、図示しない線路上を走行する。また、架線Pから電力の供給を受けられない場合には、回路システム1の蓄電部40から電力の供給を受けて走行用モータMを駆動させる。このように、架線Pから供給される電力と蓄電部40から供給される電力との少なくともいずれか一方の電力を用いるように、状況に応じて切替えて走行する鉄道車両をハイブリッド鉄道車両と称する場合もある。
また、回路システム1を搭載した鉄道車両は、架線Pまたは蓄電部40から電力の供給を受けて、負荷3を駆動させる。負荷3は、車両に搭載される補機(例えば照明設備や冷暖房設備)である。負荷3を駆動する負荷用インバータ51に供給される電力は、走行用モータMを駆動する電力変換部20に供給される電力の電圧よりも低い電圧である。
【0009】
本願の回路システム1においては、架線Pから供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる「通常モード」と、蓄電部40から供給される電力を用いて鉄道車両を走行させる「自力走行モード」とがある。
通常モードで鉄道車両を走行させる場合、走行用モータMを駆動する電力として架線Pから供給される電力が用いられ、負荷3を駆動する負荷用インバータ51に供給される電力の電圧値よりも高い電圧値(例えば1500[V]程度、以下「高電圧」という)の電力が走行用モータMを駆動する電力変換部20に供給される。
自力走行モードで鉄道車両を走行させる場合、走行用モータMを駆動する電力として蓄電部40から供給される電力が用いられ、通常モード時よりも低い電圧値(例えば750[V]程度、以下「低電圧」という)の電力が電力変換部20に供給される。
また、回路システム1は、走行用モータMによって発生する電力を回生する回生モードも有しており、通常モードにおける回生時には、高電圧の電力を用いて走行用モータMが駆動され、高電圧の回生電力が生成される。
自力走行モードにおける回生時には、低電圧の電力を用いて走行用モータMが駆動され、低電圧の回生電力が生成される。以下、自力走行モードのことを「自走モード」として説明する。
【0010】
ヒューズHは、架線Pと回路システム1との間に直列に接続される。ヒューズHは、回路システム1を保護する保護回路である。例えば架線Pから供給される電力の電流が大電流であった場合、ヒューズHは、ヒューズHの内部が溶断されるなどして、架線Pと回路システム1との電気的な接続が遮断された遮断状態とする。
【0011】
遮断器12は、ヒューズHと充電回路13との間に電気的に直列に接続される。遮断器12は、ヒューズHと充電回路13との間を導通状態または遮断状態とする。遮断器12は、例えば高速度遮断器(High-Speed Breaker、HB)である。
【0012】
充電回路13は、遮断器12とフィルタリアクトル14との間に接続され、後述するフィルタコンデンサ17を高電圧または低電圧の電力により充電する回路である。充電回路13は、例えば、正極線LPに電気的に接続された接触器LB、接触器LBに対して電気的に並列に接続された接触器CHBおよび抵抗体CHReを有する。
充電回路13は、制御部60からの制御に基づき、接触器LB、CHBを導通状態又は遮断状態とする。充電回路13は、フィルタコンデンサ17の充電を開始する場合、まず接触器CHBを導通状態に切り替える。その後、充電回路13は、接触器LBを導通状態に切り替えると共に、接触器CHBを導通状態から遮断状態に切り替える。
接触器CHBが導通状態に切り替えられることにより、フィルタコンデンサ17が充電される。そして、充電回路13は、フィルタコンデンサ17が充電された後に、接触器LBを導通状態に切り替える。
【0013】
フィルタリアクトル14は、充電回路13と放電回路16との間に接続され、フィルタリアクトル14に入力される電力に含まれる高周波成分を除去する。フィルタリアクトル14は、例えば、架線Pから供給される電力に含まれる高周波成分や架線Pに戻す電力に含まれる制御信号等に起因する高周波成分を除去する。
放電回路16は、フィルタリアクトル14とフィルタコンデンサ17との間において、正極線LPと負極線LNとの間に接続されるフィルタコンデンサ17を放電する回路である。
放電回路16は、フィルタコンデンサ17と電気的に並列に接続された放電用スイッチ、および放電用スイッチと直列接続された抵抗体を含む。放電回路16は、制御部60からの制御に基づき、放電用スイッチを導通状態または遮断状態とする。放電回路16は、フィルタコンデンサ17の放電を開始する場合、放電用スイッチを導通状態とする。その後、フィルタコンデンサ17の放電が終了したら、放電回路16は、放電用スイッチを遮断状態とする。
フィルタコンデンサ17は、電力変換部20に供給する電力を平滑化する。
【0014】
電力変換部20は、架線Pから供給される直流電力を鉄道車両に搭載された走行用モータMを駆動する交流電力に変換する。電力変換部20は、例えばスイッチング素子を含み、制御部60からの制御信号に基づき、スイッチング素子を導通状態または遮断状態に切り替えることにより、直流電力を交流電力に変換する。
【0015】
充電回路30は、充電回路13と同等の構成であるため、説明を省略する。ただし、充電回路13が架線Pから供給される高電圧の電力を用いてフィルタコンデンサ17を充電させるのに対し、充電回路30は、蓄電部40から供給される低電圧の電力を用いてフィルタコンデンサ17に充電させる点において異なる。
【0016】
蓄電部40は、第1の端子が負荷用インバータ51の入力側と接続される。蓄電部40は、制御部60からの制御信号に基づき、負荷用インバータ51に蓄電部40が蓄電した電力を供給する。
また、蓄電部40は、第2の端子が放電回路16の入力側と接続される。蓄電部40は、制御部60からの制御信号に基づき、電力変換部20に蓄電部40が蓄電した電力を供給する。
蓄電部40は、制御部60からの制御信号に基づき、回生時において電力変換部20から供給される回生電力を蓄電する。
ここで、蓄電部40に蓄電する電力の電圧範囲は低電圧である。このため、電力変換部20から供給される回生電力が高電圧である場合、高電圧の回生電力の電力を低電圧の回生電力に変換した後に、蓄電部40に蓄電される必要がある。
本実施形態の回路システム1においては、後述する負荷用コンバータ50を用いて高電圧の回生電力を低電圧の回生電力に変換する。
【0017】
負荷用コンバータ50は、入力された直流電力を、所望の電流および電圧を有する直流電力に変換して出力する。負荷用コンバータ50は、例えばスイッチング素子を含む。負荷用コンバータ50は、制御部60からの制御信号に基づき、スイッチング素子を導通状態または遮断状態に切り替えることにより、架線Pから供給される直流電力を所望の電流および電圧を有する直流電力に変換する。
負荷用インバータ51は、負荷用コンバータ50からの出力された電力を負荷3を駆動する交流電力に変換する。
【0018】
制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現されるソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよい。
【0019】
制御部60は、充電回路13、放電回路16、電力変換部20、充電回路30、蓄電部40、負荷用コンバータ50、および負荷用インバータ51を制御する。
また、制御部60は、図示しない鉄道車両の運転台等に設けられたコントローラから送信される制御信号を受信する。コントローラから送信される制御信号には、通常モードか否かを示す情報が含まれる。また、コントローラから送信される制御信号には、力行か否かを示す情報が含まれる。制御部60は、コントローラから受信した制御信号に基づき、通常モードか否かを判定する。また、制御部60は、コントローラから受信した制御信号に基づき、力行か否かを判定する。
【0020】
制御部60は、通常モードにおける力行時には、架線Pから供給される電力を、符号TRMに示すように、架線P、ヒューズH、遮断器12、充電回路13、フィルタリアクトル14、および放電回路16を経由して、電力変換部20に入力させる。架線Pから供給される電力は高電圧であるため、通常モードにおける力行時には、走行用モータMは、高電圧により駆動される。
また、制御部60は、通常モードにおける力行時には、蓄電部40から供給される電力を、符号TRHに示すように蓄電部40から負荷用インバータ51に入力する。
【0021】
制御部60は、通常モードの回生時には、走行用モータMによって発電され、電力変換部20から出力された回生電力を、符号TKに示すように、放電回路16、充電回路13、遮断器12、および負荷用コンバータ50を経由して蓄電部40に入力させる。電力変換部20から出力された高電圧の回生電力は、負荷用コンバータ50に入力されることにより低電圧の回生電力に変換されて出力される。つまり、高電圧の回生電力は、負荷用コンバータ50を用いて降圧される。これにより、蓄電部40には、高電圧の電力を活用して低電圧の回生電力が蓄電される。
【0022】
制御部60は、自走モードにおける力行時には、蓄電部40から供給される電力を、符号GRに示すように、充電回路30、および放電回路16を経由して、電力変換部20に入力させる。蓄電部40から供給される電力は低電圧であるため、自走モードにおける力行時には、走行用モータMは、低電圧により駆動される。
また、制御部60は、自走モードにおいては、蓄電部40から供給される電力を、符号TRHに示すように蓄電部40から負荷用インバータ51に入力する。
【0023】
制御部60は、自走モードにおける回生時には、走行用モータMによって発電され、電力変換部20から出力された低電圧の回生電力を、符号GKに示すように、放電回路16、および充電回路30を経由して、蓄電部40に入力させる。電力変換部20から出力された低電圧の回生電力は、低電圧の電力により走行用モータMを駆動しているため回生電力も低電圧であることから、蓄電するために低電圧の回生電力に変換する必要がなく、このまま蓄電部40に蓄電することが可能である。
【0024】
制御部60は、架線Pから電力の供給を開始する場合、架線Pから供給される電力により、フィルタコンデンサ17を充電させる。この場合、制御部60は、充電回路13を用いてフィルタコンデンサ17を充電させる。
また、制御部60は、蓄電部40から電力の供給を開始する場合、架線Pから供給される電力により充電されていたフィルタコンデンサ17を放電する。そして、制御部60は、蓄電部40から供給される電力により、フィルタコンデンサ17を充電させる。この場合、制御部60は、放電回路16を用いてフィルタコンデンサ17を放電させる。また、制御部60は、充電回路30を用いてフィルタコンデンサ17を充電させる。
【0025】
ここで、回路システム1の動作について図2を用いて説明する。図2は、回路システム1の動作を示すフローチャートである。
【0026】
制御部60は、コントローラから送信される制御信号に基づき、通常モードであるか否かを判定する(ステップS11)。次いで、制御部60は、コントローラから送信される制御信号に基づき、力行時か否かを判定する(ステップS12)。
制御部60は、通常モードにおける力行時には、架線Pから供給される直流電力を電力変換部20に出力する。電力変換部20は、架線Pから供給される直流電力を交流電力に変換して走行用モータMに供給する(ステップS13)。この場合、走行用モータMに供給される電力は、高電圧の電力である。
また、制御部60は、蓄電部40に蓄電されている蓄電電力量等の情報に基づき、蓄電部40から供給される電力を負荷3に出力するか否かを判定する(ステップS14)。例えば、制御部60は、蓄電電力量が予め決められた基準値以上である場合に負荷3へ出力すると判定し、予め決められた基準値未満である場合に負荷3へ出力しないと判定する。制御部60は、蓄電部40から供給される電力を負荷3へ出力すると判定する場合、蓄電部40から供給される電力を負荷3へ出力する(ステップS15)。
【0027】
制御部60は、通常モードにおける力行時でない場合であって、回生可能な電力が得られる場合(例えば、回生ブレーキが動作中である場合)には、電力変換部20に回生電力を生成させる。この場合に電力変換部20に生成させた回生電力は、高電圧の電力である。制御部60は、電力変換部20によって生成された高電圧の回生電力を、負荷用コンバータ50に入力させる。負荷用コンバータ50は、高電圧の回生電力を低電圧の回生電力に変換することで降圧して出力する。これにより、蓄電部40には、低電圧の回生電力が蓄電される(ステップS16)。
【0028】
制御部60は、通常モードでない場合(すなわち自走モードである場合)、蓄電部40から供給される電力を負荷3に出力する(ステップS17)。また、制御部60は、自走モードである場合において力行時には(ステップS18)、電力変換部20は、蓄電部40から供給される電力を交流電力に変換して走行用モータMに供給する(ステップS19)。この場合、走行用モータMに供給される電力は、低電圧の電力である。
【0029】
制御部60は、自走モードにおける力行時でない場合であって、回生可能な電力が得られる場合(例えば、回生ブレーキが動作中である場合)には、電力変換部20に回生電力を生成させる。この場合、電力変換部20に生成させた回生電力は、低電圧の電力である。制御部60は、電力変換部20が生成した低電圧の回生電力を蓄電部40に入力させる。これにより、蓄電部40には、電力変換部20から出力された低電圧の回生電力が蓄電される(ステップS20)。
【0030】
以上説明した第1の実施形態によれば、回路システム1は、電力変換部20から出力された高電圧の回生電力を、負荷用コンバータ50に入力させ、負荷用コンバータ50から出力された電力を蓄電部40に入力させる。これにより、回路システム1によれば、負荷用コンバータ50を用いて高電圧の回生電力を降圧し、低電圧の回生電力を蓄電部40に蓄電することができ、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。また、負荷用コンバータ50を用いて蓄電部40に蓄電させる電力の電圧を降圧するようにしたので、蓄電部40に蓄電する電力を調整する専用の調整回路(例えば、チョッパ回路)を用いる必要がなく、省スペース化を実現することができる。
【0031】
また、制御部60は、蓄電部40から出力する電力を、負荷用インバータ51に入力させ、負荷3を駆動する交流電力に変換する。これにより、回路システム1によれば、通常モードの力行時においても蓄電部40から出力する電力により負荷3を駆動することができ、架線Pから供給される電力の使用を減少させ、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。
【0032】
また、制御部60は、自走モードにおいて、蓄電部40から出力される電力を電力変換部20に供給する。これにより、回路システム1によれば、負荷用コンバータ50を用いて高電圧の電力を降圧して蓄電部40に蓄電させるシステムにおいても、蓄電部40から出力される電力を用いて走行用モータMを駆動することができ、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。
【0033】
また、制御部60は、自走モードにける回生時には、電力変換部20から出力された回生電力を蓄電部40に入力させる。これにより、回路システム1によれば、負荷用コンバータ50を用いて高電圧の電力を降圧して蓄電部40に蓄電させるシステムにおいても、自走モードにおける回生時の回生電力を蓄電部40に蓄電することができ、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。
【0034】
また、制御部60は、通常モードから自走モードに切り替える場合、充電回路30を制御し、蓄電部40から出力される電力によりフィルタコンデンサ17を充電させる。これにより、回路システム1によれば、負荷用コンバータ50を用いて高電圧の電力を降圧して蓄電部40に蓄電させるシステムにおいても、自走モードにおいてフィルタコンデンサ17により平滑化した電力を電力変換部20に供給することができ、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態について説明する。図3は、第2の実施形態について説明するための図である。前述の構成と同じ構成には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
図3に示すように、第2の実施形態の回路システム1は、第1の実施形態の回路システム1に、さらに、チョッパ回路32、接触器36およびフィルタコンデンサ33が追加される。
【0037】
チョッパ回路32は、電力変換部20と蓄電部40との間に接続される。チョッパ回路32は、蓄電部40から出力される電力の電圧を調整する。チョッパ回路32は、回生時において、電力変換部20から出力される回生電力を高電圧から低電圧に降圧して蓄電部40へ出力する。また、チョッパ回路32は、力行時において、蓄電部40から出力される電力を低電圧から高電圧に昇圧して電力変換部20へ供給する。
【0038】
チョッパ回路32は、例えばスイッチング素子、リアクトル、整流器、およびコンデンサ等を含む。チョッパ回路32は、例えば制御部60から出力される制御信号(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号)に基づき、チョッパ回路32のスイッチング素子のオンオフ制御を行う。これにより、チョッパ回路32は、電力変換部20から出力される回生電力を降圧したり、蓄電部40から出力される電力を昇圧したりする。
【0039】
フィルタコンデンサ33は、チョッパ回路32と放電回路16との間において、チョッパ回路32と電気的に並列に接続される。フィルタコンデンサ33は、チョッパ回路32に入出力される電力を平滑化する。
接触器36は、制御部60の制御に基づき、チョッパ回路32と電力変換部20とを遮断状態または接続状態にする。
【0040】
制御部60は、チョッパ回路32と、接触器36とを制御する。制御部60は、通常モードの回生時には、電力変換部20から出力された回生電力を、符号TKaに示すように、放電回路16、チョッパ回路32、および充電回路30を経由して蓄電部40に入力させる。電力変換部20から出力された高電圧の回生電力は、チョッパ回路32に入力されることにより降圧され、低電圧の回生電力として出力される。これにより、蓄電部40には、低電圧の回生電力が蓄電される。
【0041】
また、制御部60は、力行時には、蓄電部40から出力された電力を、チョッパ回路32に入力させる。蓄電部40から出力された低電圧の電力は、チョッパ回路32に入力されることにより昇圧されて、高電圧の電力として出力される。電力変換部20には、チョッパ回路32から出力された高電圧の電力が供給される。
制御部60は、チョッパ回路32と電力変換部20との間において、例えば異常な電流が流れた場合等に、回路システム1を保護するために接触器36を遮断状態とする。これにより、制御部60は、回路システム1において異常な電流が流れたことに起因する回路システム1の不具合が発生することを抑制する。また、制御部60は、後述する第3の実施形態の回路システム1において、通常モードから自走モードに切り替える場合に接触器36を遮断状態とする。第2の実施形態の回路システム1においては、上述した異常な電流が流れた場合等の異常時を除き、通常時には、接触器36を接続状態とする。
【0042】
以上説明した第2の実施形態によれば、回路システム1は、通常モードにおける回生時において、電力変換部20から出力される回生電力を、チョッパ回路32により降圧して蓄電部40へ出力する。これにより、回路システム1によれば、負荷用コンバータ50を用いて高電圧の電力を降圧して蓄電部40に蓄電させるシステムにおいても、チョッパ回路32を用いて回生電力を降圧し、降圧した電力を蓄電部40に蓄電することができ、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。
また、回路システム1は、チョッパ回路32により、力行時において、蓄電部40から出力される回生電力を昇圧して電力変換部20へ出力する。これにより、回路システム1によれば、負荷用コンバータ50を用いて高電圧の電力を降圧して蓄電部40に蓄電させるシステムにおいても、チョッパ回路32を用いて蓄電部40から出力される電力を昇圧し、昇圧した電力を電力変換部20に供給することができ、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態について説明する。図4は、第3の実施形態について説明するための図である。前述の構成と同じ構成には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、第3の実施形態の回路システム1には、第1の実施形態における回路システム1の充電回路30が含まれない。また、第3の実施形態の回路システム1には、第1の実施形態における回路システム1に、第2の実施形態におけるチョッパ回路32と、フィルタコンデンサ33と、接触器36とが追加される。さらに、第3の実施形態の回路システム1においては、チョッパ回路32と充電回路13の入力側とを電気的に接続する接続線LH、および接触器34、35が追加される。
【0045】
すでに説明したように、通常モードから自走モードに切り替える場合、制御部60は、架線Pから供給される電力により充電されていたフィルタコンデンサ17を放電し、蓄電部40からの電力によりフィルタコンデンサ17を充電し直す。そして、第1の実施形態および第2の実施形態においては、架線Pから供給される電力によりフィルタコンデンサ17を充電する場合は充電回路13を用い、蓄電部40からの電力によりフィルタコンデンサ17を充電する場合には充電回路30を用いている。
第3の実施形態においては、架線Pから供給される電力によりフィルタコンデンサ17を充電する場合にも、蓄電部40からの電力によりフィルタコンデンサ17を充電する場合にも、充電回路13を用いる。
【0046】
チョッパ回路32、フィルタコンデンサ33、および接触器36については、第2の実施形態で説明したものと同様については説明を省略する。
【0047】
接触器34は、フィルタコンデンサ33に電気的に直列に接続され、制御部60からの制御信号に基づき、チョッパ回路32の正極側端子とフィルタコンデンサ33の正極側端子とを遮断状態としたり接続状態としたりする。接触器34が遮断状態である場合、フィルタコンデンサ33には電力が充電されない。接触器34が通電状態である場合、フィルタコンデンサ33に電力を充電することができる。
【0048】
接続線LHは、チョッパ回路32と充電回路13の入力側とを電気的に接続する。
接触器35は、接続線LHに設けられ、制御部60からの制御信号に基づき、チョッパ回路32と充電回路13の入力側とを遮断状態としたり接続状態としたりする。
制御部60は、接触器34、35、および36を制御する。制御部60は、通常モードから自走モードに切り替える場合、接触器35を通電状態とし、接触器36を遮断状態とする。これにより、符号GJに示すように、チョッパ回路32、接触器35、充電回路13、フィルタリアクトル14、放電回路16を経由して、蓄電部40から出力された電圧がフィルタコンデンサ17に入力される。このようにして、蓄電部40から出力された電圧がフィルタコンデンサ17に入力されることにより、蓄電部40からの電力によりフィルタコンデンサ17を充電することができる。
また、制御部60は、通常モードから自走モードに切り替える場合、接触器34を遮断状態とする。これにより、フィルタコンデンサ33に余分な電力が充電されないようにする。
【0049】
以上説明した第3の実施形態によれば、制御部60は、充電回路13を制御し、フィルタコンデンサ17を充電させる。これにより、回路システム1は、負荷用コンバータ50を用いて高電圧の電力を降圧して蓄電部40に蓄電させるシステムにおいても、充電回路13を有効に用いることができ、また、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。また、充電回路30を用いる必要がなくなり、省スペース化を実現することができる。
【0050】
また、制御部60は、通常モードから自走モードに切り替える場合、接触器34を開放する。これにより、回路システム1は、負荷用コンバータ50を用いて高電圧の電力を降圧して蓄電部40に蓄電させるシステムにおいても、フィルタコンデンサ33に余分な電力が充電されないようにすることができ、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。
【0051】
(実施形態の変形例)
実施形態の変形例について図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態の変形例について説明するための図である。図5は、図1の回路システムにおける負荷用コンバータ50として用いられる絶縁型コンバータ50aの構成を示す構成図である。
図5に示すように、絶縁型コンバータ50aは、インバータ500と、巻線501、二巻線502と、整流器503と、を有する。
【0052】
インバータ500は、架線Pから供給される直流電力を、交流電力に変換する。インバータ500は、例えばスイッチング素子を含み、スイッチング素子を導通状態と遮断状態とに切り替えることで、直流電力を交流電力に変換する。
巻線501は、インバータ500と接続される。
巻線502は整流器503と接続される。巻線501と巻線502とは電気的に絶縁される。巻線501を一次側巻線とし、巻線502二次側巻線として、絶縁トランス504が形成される。
整流器503は、二次側の変圧器502より入力される変圧された交流電力を整流し、直流電力に変換する。これにより、整流器503から出力される電力は、変圧された直流電力となる。
【0053】
以上説明した変形例によれば、負荷用コンバータ50として絶縁型コンバータ50aを用いるようにした。これにより、回路システム1によれば、絶縁型コンバータ50aにより、架線Pと負荷用インバータ51とを電気的に絶縁することができ、架線Pから供給される高電圧の電力が誤って高圧のまま負荷用インバータに出力されてしまうことを抑制することができる。
【0054】
なお、以上説明した少なくともひとつの実施形態においては、架線Pから直流電力が供給される場合について説明したが、これに限定されない。架線Pから供給される電力は交流電力であってもよい。この場合、負荷用コンバータ50は、例えばAC/DCコンバータが用いられる。
【0055】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、鉄道車両用回路システム1は、電力変換部20と、負荷用コンバータ50と、負荷用インバータ51と、蓄電部40と、制御部60と、を持つ。これにより、鉄道車両用回路システム1によれば、鉄道車両において用いられる電力の有効活用を図ることができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1…鉄道車両用回路システム、12…遮断器、13、30…充電回路、20…電力変換部、40…蓄電部、50…負荷用コンバータ、51…負荷用インバータ、60制御部、P…架線。
図1
図2
図3
図4
図5