【文献】
American Journal of Transplantation (2012) Vol.12, pp.1839-1847
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
動脈ラインに、静脈ラインに、および気管ラインに接続するように構成された器官チャンバを提供するステップであって、前記器官チャンバがチャンバ圧力センサを含む、ステップと、
気道および血管系を含む肺組織マトリックスを提供するステップと、
前記気道を前記気管ラインに接続するステップと、
前記気管ラインを通じて前記気道を媒体リザーバシステムに接続するステップと、
前記肺組織マトリックスを前記動脈ラインに、および前記静脈ラインに接続するステップと、
前記動脈ライン、前記静脈ライン、または前記気管ラインのうちの少なくとも1つの全体にわたって前記肺組織マトリックスに細胞を播種するステップと、
第1の所望の程度の器官成熟を生じさせて湿潤成熟した肺器官を生成するのに十分な時間の間、前記肺組織マトリックスに湿潤換気を提供するステップと、
陰圧湿潤換気の間、前記チャンバ圧力センサを用いて前記器官チャンバ内の圧力を監視し、前記器官チャンバを前記媒体リザーバシステムに接続する放出ライン内に位置する双方向ポンプの方向および持続時間を調節することによって、前記肺組織マトリックスを通って前記器官チャンバに入る流体変位を補正するステップと
を含む、湿潤成熟した肺器官を提供する方法。
前記器官チャンバが、チャンバ圧力センサおよび双方向排液チャンバポンプを含み、前記チャンバ圧力センサおよび双方向排液チャンバポンプが、前記チャンバ圧力センサによって送信されるデータに応答して前記双方向排液ポンプを制御する制御モジュールによってそれぞれ制御される、請求項13に記載の方法。
前記静脈ライン内の圧力レベルと前記媒体リザーバ内の圧力レベルとを平衡化することによって、肺内外圧較差を防止するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本文書は、気道器官の産生および保存に関与する方法および材料に関する。本発明は、少なくとも部分的には、ヒトおよび他の動物に移植できる状態の、機能する気道器官の成長のためのより現実的な環境を提供するのに使用することができる、機能する肺組織を産生するように構成されたバイオリアクタの発見に基づく。肺組織は、所与のマトリックス、例えば人工または脱細胞化肺組織マトリックスの上で産生される。本発明はさらに、より多くの改善され個別化された移植用グラフトを提供するために、長期間にわたって、ドナー器官の保存、修復、および改変のためにこの現実的な環境を使用することに基づく。
【0040】
本明細書で使用するとき、「機能する」肺組織は、正常の健康な肺の機能のほとんどまたはすべてを行い、例えば、酸素を空気中から血流中へと輸送すること、および二酸化炭素を血流から空気中へと放出することを可能にする。それにより、吸入した空気を加湿し、肺胞内の表面張力を減少させる界面活性物質を生成し、かつ/または粘液を生成し輸送して、吸入した粒子状物質を遠位気道から近位気道へと除去することができる。
【0041】
本明細書で使用するとき、「脱細胞化」および「無細胞」という用語は、標準的な組織学的染色手順を使用して、組織学的切片中に検出可能な細胞内物質、内皮細胞、上皮細胞、および核が完全にもしくはほぼ完全に不在であることとして使用または定義される。好ましくは、ただし必須ではないが、残余の細胞残屑も脱細胞化器官または組織から除去されている。
【0042】
脱細胞化組織/器官マトリックス
本発明の方法のいくつかの実施形態では、肺組織は脱細胞化マトリックスの上に産生される。脱細胞化肺組織マトリックスを調製する方法および材料は、以下に考察されるように、当該分野において知られている。任意の適切な材料を使用して、かかるマトリックスを調製することができる。好ましい実施形態では、組織マトリックスは、脱細胞化肺組織から生じた無細胞組織骨格であることができる。例えば、ヒト肺などの組織、例えば1つもしくは一対のヒト肺またはその一部、例えばヒト、ブタ、ウシ、霊長目、またはヒツジの死体肺またはその一部は、形態学的完全性および組織もしくは組織部分の血管系を維持するとともに、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質を保存しながら天然細胞を組織から除去する、適切な方法によって脱細胞化することができる。哺乳類肺組織を脱細胞化する方法は、例えば、O'Neill JD et al., Decellularization of human and porcine lung tissues for pulmonary tissue engineering, Ann Thorac Surg. 2013 Sep;96(3):1046-55; Nichols JE et al., Production and assessment of dcellularized pig and human lung scaffolds, Tissue Eng Part A. 2013 Sep;19 (17-18):2045-62; Gilpin SE et al., Perfusion Decellularizatoin of human and porcine lungs: Bringing the matrix to clinical scale. Journal of Heart and Lung Transplantation. In press; Song JJ et al., Bioartificial lung engineering. Am J Transplant. 2012 Feb;12(2):283-8、ならびにOtt HC et al., Regeneration and orthotopic transplantation of a bioartificial lung, Nat Med. 2010 Aug;16(8):927-33に記載されている。例示の脱細胞化方法は、組織(例えば、肺組織)を、例えば液体窒素を使用して、繰返し凍結融解サイクルに晒すことを含むことができる。他の例では、組織は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはトリトンXなど、アニオン性またはイオン性細胞破壊媒体に晒すことができる。組織はまた、ヌクレアーゼ溶液(例えば、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ)で処理し、滅菌リン酸で緩衝した食塩水中で軽く撹拌して洗うことができる。例示の方法は、当該分野において知られている。例えば、 O'Neill JD et al., Decellularization of human and porcin lung tissues for pulmonary tissue engineering. Ann Thorac Surg. 2013 Sep; 96(3):1046-55を参照のこと。いくつかの例では、脱細胞化は、当該分野で知られている方法および材料を使用して、器官または組織の脈管、管、および/または腔を洗い流すことによって行うことができる。例えば、Maghsoudlou P et al. Preservation of micro-architecture and angiogenic potential in a pulmonary acellular matrix obtained using intermittent intra-tracheal flow of detergent enzymatic treatment. Biomaterials. 2013 Sep; 34(28):6638-48に記載されているようなものである。洗い流すステップに続いて、器官または組織を、上述したような、例えば脱イオン化水中にSDS1%の細胞破壊媒体を用いて、ラインを介して灌流することができる。組織を通る灌流は順行性または逆行性であることができ、灌流効率を改善するために方向を変更することができる。器官または組織のサイズおよび重量、ならびに特定のアニオン性またはイオン性界面活性物質、および細胞破壊媒体中のアニオン性またはイオン性界面活性物質の濃度に応じて、組織は一般に、組織1グラム当たり約2〜約12時間、細胞破壊媒体で灌流される。洗浄を含めて、器官は、組織1グラム当たり最大約12〜約72時間灌流されてもよい。灌流は、一般に、流量および圧力、例えば5〜100mmHgの圧力、および元の生物もしくは個人の生理学的心拍出量の0.1〜10倍の流量を含む、生理学的条件に合わせて調節される。
【0043】
別の例示的方法では、脱細胞化方法は、界面活性物質、例えば(1)SDS0.1%、(2)デオキシコール酸ナトリウム2%、または(3)[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸(CHAPS)(pH12)8mmol/リットルの界面活性物質を、30cmH
2Oの一定圧力で肺動脈を通して灌流することを含む。3つの界面活性物質に対するプロトコルは、次のとおりである。
1.リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10分間の初期順行性洗浄を行う。
2.不透明な半透明マトリックスの可視化(脱細胞化を含む)に要する時間に加えて初期時間に20%を追加した時間(例えば、70分+14分)、界面活性物質の灌流を行う。
3.15分の脱イオン化H
2O洗浄を行う。
4.追加の抗生物質および抗真菌剤を用いて、さらに172時間のPBS洗浄を行う。この脱細胞化方法は、例えば、脱イオン化したH
2Oに続いて、1%のTriton−Xを用いてさらに洗浄することを含むことができる。SDCプロトコルは、SDCの前に0.1%のTriton−Xで灌流すること、またSDCの後に1mol/リットルのNaClで洗浄することを含むことができる。
【0044】
同様に、ブタおよびヒト肺脱細胞化方法は、界面活性物質または他の脱細胞化剤を一定圧力で肺動脈を通して灌流し、それに続いてH
2O、Triton−Xの1%溶液、およびPBSを用いて連続的に洗浄することを含むことができる。ラット肺と同様に、脱細胞化は、視認検査および不透明な半透明マトリックスの出現で完了したと見なすことができる。主に摘出中における広範囲な事前洗浄に起因する開始器官の可変性、結果として生じる血塊が、求められる灌流の長さに寄与する場合がある。一般に、脱細胞化灌流の時間は、例えば4〜7日間で変動し得る。
【0045】
脱細胞化組織は、血管樹のECM成分を含む、組織のすべてまたはほとんどの部分の細胞外マトリックス(ECM)成分から本質的に(例えば、少なくとも85、90、92、95、96、97、98、および99重量%純粋)成ることができる。ECM成分は、基底層などの規定構造として器質化されたままであることができる、フィブロネクチン、フィブリリン、ラミニン、エラスチン、コラーゲン類のメンバー(例えば、コラーゲンI、III、およびIV)、グリコサミノグリカン、基質、細網繊維、ならびにスロンボスポンジンのいずれかまたはすべてを含むことができる。好ましい実施形態では、脱細胞化肺組織マトリックスは無処置の血管系を保持する。実質的に無処置の血管系を保存することによって、移植の際に組織マトリックスを対象の血管系に接続することが可能になる。それに加えて、脱細胞化組織マトリックスは、例えば、脱細胞化組織マトリックスの上もしくは中に残るあらゆるタイプの微生物の存在を低減または排除するため、照射(例えば、UV、ガンマ)によってさらに処理することができる。
【0046】
物理的、化学的、および酵素的手段を使用して脱細胞化組織マトリックスを得る方法は、当該分野において知られている。例えば、Liao et al, Biomaterials 29(8):1065-74(2008); Gilbert et al. Biomaterials 27(9):3675-83(2006); Teebken et al., Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 19381-86(2000)を参照のこと。また、米国特許出願公開第2009/0142836号明細書、第2005/0256588号明細書、第2007/0244568号明細書、および第2003/0087428号明細書も参照のこと。
【0047】
人工器官マトリックス
本発明の方法のいくつかの実施形態では、肺組織は人工器官マトリックスの上に産生される。人工器官マトリックスを調製する方法および材料は、当該分野において知られている。任意の適切な材料を使用して、かかるマトリックスを調製することができる。好ましい実施形態では、人工器官マトリックスは、例えば、ポリグリコール酸、Pluronic F−127(PF−127)、Gelfoamスポンジ、コラーゲン−グリコサミノグリカン(GAG)、フィブリノゲンーフィブロネクチン−ビトロネクチンヒドロゲル(FFVH)、およびエラスチンなどの多孔質材料から生じた骨格であることができる。例えば、Ingenito et al. J Tissue Eng Regen Med. 2009 Dec 17; Hoganson et al., Pediatric Research, May 2008, 63(5):520-526; Chen et al., Tissue Eng. 2005 Sep-Oct;11(9-10):1436-48を参照のこと。いくつかの例では、人工器官マトリックスは、肺胞単位に類似した多孔質構造を有することができる。Andrade et al., Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2007 Feb;292(2):L510-8を参照のこと。いくつかの例では、移植人工器官マトリックスは、器官特異的なマーカー(例えば、クラーラ細胞、肺細胞、および呼吸上皮に対する肺特異的なマーカー)を発現することができる。いくつかの場合では、移植人工器官マトリックスは、特定可能な構造(例えば、人工肺マトリックス内の肺胞および終末細気管支に類似した構造)を組織することができる。例えば、FFVHを使用して作られた移植人工肺マトリックスは、周囲組織に対する栄養作用を示して、細胞付着、伝播、ならびに細胞外マトリックスの生体外での発現および生体内での見かけ上の生着を促進することができる。上述のIngenito et al.を参照のこと。また、米国特許第7,662,409号明細書および第6,087,552号明細書、米国特許出願公開第2010/0034791号明細書、第2009/0075282号明細書、第2009/0035855号明細書、第2008/0292677号明細書、第2008/0131473号明細書、第2007/0059293号明細書、第2005/0196423号明細書、第2003/0166274号明細書、第2003/0129751号明細書、第2002/0182261号明細書、第2002/0182241号明細書、および第2002/0172705号明細書を参照のこと。
【0048】
死体器官
本明細書に記載する方法およびデバイスはまた、移植に使用するために死体肺を維持し調製するのに有用である。
【0049】
ドナー器官(例えば、肺)をヒトおよび動物のドナーから分離する方法および材料は、当該分野において知られている。例えば、Pasque MK et al. Standardizing thoracic organ procurement for transplantation. J Thorac Cardiovasc Surg. 2010 Jan;139(1):13-7、およびBribriesco AC et al Experimental models of lung transplantation. Front Biosci (Elite Ed). 2013 Jan 1;5:266-72に記載されている。これらを分離する任意の適切な方法を使用することができる。これらのドナー器官は、本明細書に記載するバイオリアクタを使用して、移植のレシピエントを準備するのに十分な時間、器官をレシピエントのところへ輸送するのに十分な時間、または器官全体もしくはその一部を移植に適切なように修復するのを容易にする条件下で器官を維持するのに十分な時間、維持することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、ヒト器官ドナーからのドナー器官は、内皮ライニングを除去するように改変し、それに続いてレシピエント由来の内皮細胞を再播種して、免疫性を最小限に抑えることができる。例えば、これは、脱イオン化水を用いた灌流、ポリドカノール0.05%などの低い界面活性物質濃度での灌流、またはDNアーゼなどの酵素溶液もしくはコラゲナーゼを用いた灌流を介した、浸透圧刺激によって達成することができる。感染、外傷などの物理的損傷、もしくは長期の低灌流による虚血性の損傷が原因で、または脳死などのドナー条件が原因で、即時の移植に適さないことが見出されたドナー器官は、本明細書に記載するデバイスおよび方法(例えば、抗生物質、細胞、成長因子刺激、および抗炎症治療を使用したマウント、灌流、および修復)を使用して修復することができる。動物由来の器官は、遺伝子および細胞の改変によって免疫原性を低くすることができる。
【0051】
いくつかの場合では、ドナー肺は、X線撮影または気管支鏡によって感染のエビデンスを示すことがある。潜在的な感染のバイオバーデンおよび他のソースを制御するために、肺を、例えば本明細書に記載のデバイス上に載置し、血管系および気管の両方を通して抗生物質および防腐剤の溶液で洗浄することができる。溶液は、次に、例えば気管支鏡を使用して、ドナー肺から吸引することができる。この洗浄処置は、培養前および培養中の両方で行うことができる。特定の例では、死亡前の肺塞栓症、または心停止後の血液凝固が起こって、血塊形成のリスクがもたらされることがある。分離されたドナー器官を載置し、肺静脈を介して逆行的に洗浄して、血塊を除去することができ、ならびに/あるいは血栓溶解物質を用いて灌流して、血塊の可能性があればそれを溶解することができる。いくつかの例では、ドナー器官は、ドナーの脳死に多くの場合は関連する、ドナー肺中の肺胞マクロファージにおいて、高レベルの炎症性サイトカインおよび/または炎症状態を含むことがある(Venkateswaran RV et al., The proinflammatory environment in potential heart and lung donors: prevalence and impact of donor management and hormonal therapy. Transplantation. 2009 Aug 27;88(4):582-8)。これらの肺は、器官培養前および/または器官培養中に、抗炎症剤を用いて処理(例えば、灌流)することができる。特定の例では、炎症細胞タイプを特異的に標的にする薬物を灌流させてもよい。この炎症状態はまた、例えば、Venkateswaran RV et al., Measurement of extravascular lung water following human brain death: implications for lung donor assessment and transplantation. Eur J Cardiothorac Surg. 2013 Jun;43(6):1227-32に記載されているような、ドナー器官における毛細管の漏れおよび組織液増加に結び付く場合がある。保存期間の間、器官を高浸透圧溶液で灌流して、組織液を血管空間に引き戻し、それによってより健康な流体均衡と、正常な肺コンプライアンスを回復することができる。
【0052】
いくつかの場合では、保存溶液はまた、グラフト失敗のリスクを低減するため、本明細書に記載のデバイスを介して肺に投与されてもよい。いくつかの例では、保存流体は、Perfadex(登録商標)、または表1に示されるような組成など、低カリウム細胞外タイプの溶液を含んでもよい。アミノ酸、抗生物質、または作用薬(例えば、表2に示されるもの)も、保存溶液に添加されてもよい。
【0055】
いくつかの場合では、ドナー肺は、例えば、ドナー肺の質、保存溶液のタイプ、摘出から培養までの時間長など、様々な因子によってもたらされる損傷のエビデンスを示すことがある。損傷の程度を低減および/または排除するために、ドナー肺および/またはその一部を、例えば本明細書に記載するデバイス上に載置し、液体および/または乾燥換気で換気することができる。一例では、気管ライン全体にわたって空気が灌流され、一方で空洞および/または動脈ラインは、生理学的パラメータを模倣した溶液、例えば生理食塩水、溶液を含有する血液、および/または保存溶液で灌流される。ドナー肺は、ドナー肺が移植に必要となるまで、および/または損傷したドナー肺が上皮再生を示し、内皮バリア機能の改善を示すまで、載置されたままであってもよい。これらの灌流方法は、後述するようは、細胞播種方法と組み合わせることができる。
【0056】
細胞播種
本明細書に記載する方法のいくつかでは、肺組織マトリックス、例えば脱細胞化肺組織マトリックスまたは人工肺マトリックスに、細胞が、例えば分化細胞または再生細胞が播種される。
【0057】
天然または未分化の細胞タイプなど、任意の適切な再生細胞タイプを使用して、肺組織マトリックスに播種することができる。細胞は、幹細胞段階(例えば、誘導後)、始原細胞段階、血管芽細胞段階、または分化段階(例えば、CD 31+、vWF+)を含むがそれらに限定されない、様々な段階で播種されてもよい。本明細書で使用するとき、再生細胞は、非限定的に、始原細胞、前駆細胞、ならびに臍帯細胞(例えば、ヒト臍静脈内皮細胞)および胎児幹細胞を含む「成体」由来の幹細胞を含むことができる。再生細胞はまた、分化または委任細胞タイプを含むことができる。本明細書に提供する方法および材料に適した幹細胞としては、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)(例えば、未分化、分化内胚葉、前方化(anteriorized)内胚葉、TTF−1陽性肺前駆体)、ヒト間葉系幹細胞、ヒト臍静脈内皮細胞、多能性成体始原細胞(MAPC)、iPS由来の間葉細胞、または胚性幹細胞を挙げることができる。いくつかの例では、他の組織由来の再生細胞も使用することができる。例えば、皮膚、骨、筋肉、骨髄、滑膜、または脂肪組織由来の再生細胞を使用して、幹細胞が播種された組織マトリックスを生じさせることができる。
【0058】
いくつかの場合では、本明細書で提供する肺組織マトリックスは、別の方法として、またはさらに、(好ましくはヒトの)上皮細胞および内皮細胞など、分化細胞タイプを播種することができる。例えば、肺マトリックスに、血管系を介して(例えば、動脈ラインまたは静脈ラインを通して)内皮細胞を播種することができ、また、気道を介して(例えば、気管ラインを通して)上皮細胞を播種することができる。また、肺マトリックスに、1つ以上の細胞タイプ(例えば、1つもしくはそれ以上のタイプの上皮および間葉細胞、成体の末梢血液由来の上皮細胞、臍帯血由来の上皮細胞、iPS由来の上皮細胞、始原段階細胞(例えば、平滑筋)、成体肺由来の細胞混合物(例えば、ラット・ヒト)、市販の小気道上皮細胞または肺胞上皮細胞、胚性幹(ES)細胞由来の上皮細胞、ならびに/あるいはヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を播種することができる。
【0059】
任意のタイプの適切な市販の媒体および/または媒体キットを、細胞の播種および培養に使用してもよい。例えば、SAGM媒体が小気道細胞に使用されてもよく(例えば、Lonza製のSAGM BulletKit)、またEGM−2キットが内皮細胞に使用されてもよい(例えば、Lonza製のEGM−2 BulletKit)。例えば、 Brudno Y et al. Enhancing microvascular formation and vessel maturation through temporal control over multiple pro-angiogenic and pro-maturation factors. Biomaterials 34(2013) 9201-9209に記載されているように、播種された内皮細胞タイプに合わせて、(例えば、VEGFなどの成長因子を増加もしくは減少させることによって)カスタマイズした媒体が使用されてもよい。内皮細胞の場合、細胞の播種、増殖、生着、および成熟の様々な段階を誘導するため、一連の異なる媒体組成が使用されてもよい。例えば、第1の段階では、細胞播種構成物は、内皮細胞の増殖、移動、および代謝を増加させるため、「血管形成媒体」で2〜30日間灌流されてもよい。この媒体は、高濃度のサイトカイン、例えば5〜100ng/mlのVEGFおよび5〜100ng/mlのbFGF、およびホルボールミリスタートアセテート(PMA)の存在、例えば5〜100ng/mlのPMAによって特徴付けられ、それにより、タンパク質キナーゼC、および内皮細胞の出芽を刺激するAng−1の活性化を通して、血管形成経路を活性化させる。第2の段階では、細胞播種構成物を、次に、内皮の成熟および密着結合の形成を支援する、「密着媒体(tightening media)」を用いて灌流することができる。密着媒体は、低レベルのサイトカインを有し、基本的組成は血管形成媒体と同じであるが、VEGF、bFGF、およびPMAのレベルが減少している(VEGF、FGF、およびPMAは0.1〜5ng/ml)。密接結合形成を促進し、肺浮腫を低減することが示されているヒドロコルチゾンを、密着媒体にさらに添加して、血管の成熟を促進することができる。脈管形成を向上させるため、PDGFおよびAng−2などのさらなる成熟促進因子が、密着媒体に添加されてもよい。これらの因子の濃度は、異なる脈管サイズに対応するように滴定されてもよい。急激なサイトカインの変化による悪影響を回避するため、媒体の変更は徐々に行うことができる。内皮細胞支持媒体と同様に、連続的な媒体の変化を使用して上皮細胞の運命をガイドすることができる。初期媒体は、例えば、胚体内胚葉を誘導するため、10〜200ng/mlのActivin A、および0.01〜1μMのZSTK 474などのPi3K阻害剤を含有してもよく、それに続いて、前方化内胚葉を誘導するため、0.1〜10μMのA−8301などのTGF−β阻害剤および0.05〜1μMのDMH−1などのBMP4拮抗薬を含有してもよく、最後に、肺始原細胞の生成を誘導するため、1〜100μg/mlのBMP4、10〜500nG/mlのFGF2、10〜500nMのCHIR 99021などのGSK−3β阻害剤、1〜100nMのPIK−75などのPI3K阻害剤、および1〜100nMのメトトレキセートを含有してもよい。
【0060】
播種のために細胞を分離し収集する任意の適切な方法を使用することができる。例えば、人工多能性幹細胞は、一般に、Oct4、Sox2、Klf4、c−MYC、Nanog、およびLin28などの転写因子の異所的発現によって、多能性状態に「再プログラムされた」体細胞から得ることができる。Takahashi et al., Cell 131:861-72(2007); Park et al., Nature 451:141-146(2008); Yu et al., Science 318:1917-20(2007); Zhu et al., Cell Stem Cell. 7:651-5 2010; and Li et al., Cell Res. 21:196-204 (2001); Malik and Rao, Methods Mol Biol. 2013;997:23-33; Okano et al., Circ Res. 2013 Feb 1;112(3):523-33; Lin and Ying, Methods Mol Biol. 2013;936:295-312を参照のこと。末梢血液由来の単核細胞を、患者の血液サンプルから分離し、人工多能性幹細胞の産生に使用することができる。他の例では、人工多能性幹細胞は、変異成長因子β(SB431542)、MEK/ERK(PD0325901)、およびRhoキナーゼ情報伝達(チアゾビビン)などの小分子と併せて、Oct4、Sox2、Klf4、c−MYCの同時発現を高めるために最適化した構成物を用いて再プログラムすることによって得ることができる。Groβ et al., Curr Mol Med. 13:765-76 (2013)およびHou et al., Science 341:651-654(2013)を参照のこと。幹細胞から内皮細胞を産生する方法は、Reed et al., Br J Clin Pharmacol. 2013 Apr;75(4):897-906で検討されている。臍帯血幹細胞は、新鮮なまたは凍結した臍帯血から分離することができる。間葉系幹細胞は、例えば、生の未精製の骨髄またはフィコール精製骨髄から分離することができる。上皮および内皮細胞は、当該分野で知られている方法にしたがって、生体または死体ドナーから、例えば人工肺を受け入れる予定の対象から、分離し収集することができる。例えば、上皮細胞は皮膚組織サンプルから得ることができ(例えば、パンチ生検)、内皮細胞は血管組織サンプルから得ることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質分解酵素は、血管系に入れられたカテーテルを通して、組織サンプル内に灌流される。酵素処理された組織の一部を、さらに酵素的および機械的に破壊することができる。このようにして得られた細胞の混合物を分離して、上皮および内皮細胞を精製することができる。いくつかの例では、フローサイトメトリーに基づく方法(例えば、蛍光励起細胞選別)を使用して、特定の細胞表面マーカーが存在するかしないかに基づいて、細胞を選別することができる。さらに、肺細胞(上皮、間葉系、および内皮)を、経気管支および気管支内生検を介して、または肺組織の外科的生検を介して得ることができる、肺生検から得ることができる。非自家細胞が使用される場合、対象に移植したときに器官または組織が拒絶されないように、免疫型が適合した細胞を選択することを考慮すべきである。
【0061】
分離された細胞は、緩衝溶液(例えば、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水)中ですすぎ、細胞培養媒体に再懸濁することができる。標準的な細胞培養方法を使用して、細胞を培養し、その個体数を増殖させることができる。一旦得られると、細胞を使用して組織マトリックスに播種することができ、例えば、動脈もしくは静脈ラインを介して(内皮細胞)、または気道(気管)ラインを通して(上皮細胞)、マトリックスに導入することができる。例えば、組織マトリックスに、任意の適切な細胞密度で、生体外で少なくとも1つの細胞タイプを播種することができる。例えば、マトリックスに播種される細胞密度は、マトリックス1グラム当たり少なくとも1×10
3個であることができる。細胞密度は、マトリックス1グラム当たり約1×10
5〜約1×10
10個(例えば、マトリックス1グラム当たり、少なくとも100,000個、1、000,000個、10,00,000個、100,000,000個、1,000,000,000個、または10,000,000,000個であることができる。
【0062】
いくつかの場合では、脱細胞化または人工肺組織マトリックスは、本明細書に提供するように、灌流播種によって、上述した細胞タイプおよび細胞密度で播種することができる。例えば、フロー灌流システムを使用して、(例えば、動脈ラインを通して)組織マトリックス中に保存された血管系を介して、脱細胞化肺組織マトリックスを播種することができる。いくつかの場合では、適切な条件下で、自動フロー灌流システムを使用することができる。かかる灌流播種方法は、播種効率を改善し、組成物全体に細胞のより均一な分布を提供することができる。定量的な生化学的および画像分析技術を使用して、静的または灌流どちらかの播種方法後における、播種された細胞の分布を評価することができる。
【0063】
いくつかの場合では、組織マトリックスに1つまたはそれ以上の成長因子を含浸させて、播種された再生細胞の分化を刺激することができる。例えば、組織マトリックスには、本明細書に提供する方法および材料に適した成長因子を、例えば、血管内皮成長因子(VEGF)、TFG−β成長因子、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−4)、血小板由来成長因子(PDGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(b−FGF)、例えばFGF−10、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、または成長分化因子−5(GDF−5)を含浸させることができる。例えば、Desai and Cardoso, Respire. Res. 3-2(2002)を参照のこと。これらの成長因子は、時間的放出を制御するように封入することができる。骨格の異なる部分を、異なる成長因子で増進して、正著因子刺激の空間的制御を追加することができる。
【0064】
播種された組織マトリックスを、播種後にある期間(例えば、数時間〜約14日以上)にわたってインキュベートして、組織マトリクス内における細胞の固着および浸透を改善することができる。播種された組織マトリックスは、再生細胞の少なくとも一部が無細胞組織マトリックスの中および上で増加および/または分化することができる条件下で、維持することができる。かかる条件としては、非限定的に、適切な温度(35〜38℃)および/または圧力(例えば、大気圧)、電気的および/または機械的活性(例えば、呼気終端陽圧1〜20cmH2O、平均気道圧5〜50cmH2O、最高吸気圧5〜65cmH2Oで、陽圧もしくは陰圧を介した換気)、適切な量の流体、例えばO
2(1〜100%FiO2)および/またはCO
2(0〜10%FiCO2)、適切な量の湿度(10〜100%)、ならびに滅菌もしくは近滅菌条件を挙げることができる。かかる条件としては、湿潤換気、湿潤・乾燥換気、および乾燥換気も挙げることができる。いくつかの例では、栄養補助剤(例えば、栄養素、および/またはグルコースなどの炭素源)、外生ホルモン、または成長因子を、播種された組織マトリックスに添加することができる。組織学および細胞染色を行って、播種された細胞の伝播に関するアッセイを実施することができる。任意の適切な方法は、播種された細胞の分化に関するアッセイを行うことができる。一般に、本明細書に記載する方法は、例えば本明細書に記載するような、気道器官バイオリアクタ装置内で行われる。
【0065】
したがって、本明細書に記載する方法を使用して、例えばヒト対象への移植のため、移植可能なバイオ人工肺組織を産生することができる。本明細書に記載するように、移植可能組織は、好ましくは、患者の血管系に接続することができる、十分に無傷の血管系を保持する。
【0066】
本明細書に記載のバイオ人工肺組織は、製品またはキットを生成するため、パッケージ化材料と組み合わせることができる。製品を作成するための構成要素および方法は周知である。バイオ人工組織に加えて、製品またはキットは、例えば、1つもしくはそれ以上の癒着防止剤、滅菌水、製薬担体、緩衝剤、ならびに/あるいは生体外での機能する肺組織の産生および/またはその後の移植を促進する、他の試薬をさらに含むことができる。それに加えて、中に収容された組成物をどのように使用できるかを説明した印刷説明書をかかる製品に含めることができる。製品またはキットの構成要素は、様々な好適な容器にパッケージ化することができる。
【0067】
バイオ人工肺を使用する方法
本書はまた、バイオ人工肺組織を使用する、またいくつかの場合では肺機能を促進する、方法および材料を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供する方法を使用して、肺容量の障害または低下を伴う疾患を有する患者において一部の肺機能を回復することができる(例えば、嚢胞性線維症、COPD、気腫、肺がん、浮腫、肺高血圧症、肺外傷、または他の遺伝性もしくは先天性の肺異常、例えば、気管支嚢胞、肺の発育不全および形成不全、多肺胞葉、肺胞毛細血管異形成、動静脈奇形(AVM)およびシミター症候群を含む隔離、肺リンパ管拡張症、先天性大葉性肺気腫(CLE)、ならびに先天性腺種様奇形(CAM)、および他の肺嚢胞)。本明細書に提供する方法は、また、例えば、肺機能の向上、または肺容量の増加もしくは改善など、特定の規定された治療が必要な場合などに対象が特定されるものを含む。
【0068】
バイオ人工肺組織(例えば、器官全体またはその一部)は、本明細書に提供する方法にしたがって産生することができる。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に提供するようなバイオ人工肺組織を、それを必要としている対象(例えば、ヒト患者)に移植することを含む。いくつかの実施形態では、バイオ人工肺組織は病変または損傷した組織の部位に移植される。例えば、バイオ人工肺組織は、機能していないかもしくは十分に機能していない肺の代わりに(またはそれとともに)、対象の胸腔に移植することができ、肺移植を行う方法は当該分野で知られている。例えば、Boasquevisque et al., Surgical Techniques: Lung Transplant and Lung Volume Reduction, Proceedings of the American Thoracic Society 6:66-78 (2009); Camargo et al., Surgical maneuvers for the management of bronchial complications in lung transplantation, Eur J Cardiothorac Surg 2008;34:1206-1209 (2008); Yoshida et al., “Surgical Technique of Experimental Lung Transplantation in Rabbits,” Ann Thorac Cardiovasc Surg. 11(1):7-11 (2005); Venuta et al., Evolving Techniques and Perspectives in Lung Transplantation, Transplantation Proceedings 37(6):2682-2683 (2005); Yang and Conte, Transplantation Proceedings 32(7):1521-1522 (2000) Gaissert and Patterson, Surgical Techniques of Single and Bilateral Lung Transplantation in The Transplantation and Replacement of Thoracic Organs, 2d ed. Springer Netherlands (1996)を参照のこと。
【0069】
方法は、対象の肺を部分的もしくは完全に除去する外科的処置の間、および/または肺切除の間に、本明細書に提供されるようなバイオ人工肺またはその一部を移植することを含むことができる。方法はまた、肺またはその一部を、生体ドナーまたは死体から摘出することと、肺を本明細書に記載するバイオリアクタ内で保存または再生することとを含むことができる。いくつかの場合では、本明細書に提供する方法を使用して、対象、例えばヒトまたは動物対象において、肺組織および機能を交換または補足することができる。
【0070】
任意の適切な方法を行って、移植前または移植後の肺機能のアッセイを実施することができる。例えば、方法を行って、組織治癒の評価、機能性の評価、および細胞内成長の評価を行うことができる。いくつかの例では、組織部分を収集し、例えば中性緩衝ホルマリンなどの固定剤で処理することができる。かかる組織部分は、組織学的分析のため、脱水し、パラフィンに埋め込み、ミクロトームを用いて薄片にすることができる。薄片は、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いて染色し、次に、形態学および細胞性の顕微鏡的評価のため、ガラススライド上に載置することができる。例えば、組織学および細胞染色は、播種された細胞の伝播を検出するために行うことができる。アッセイは、移植された組織マトリックスの機能的評価、または撮像技術(例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波、もしくは磁気共鳴画像診断(例えば、コントラスト強調MRI))を含むことができる。アッセイはさらに、安息時および生理学的ストレス下での機能性試験(例えば、体幹プレチスモグラフィ、肺機能試験)を含むことができる。細胞を播種したマトリックスの機能性は、当該分野で知られている方法、例えば、組織学、電子顕微鏡法、および機械的試験(例えば、容積およびコンプライアンスの)を使用してアッセイを行うことができる。ガス交換は、別の機能性アッセイとして測定することができる。細胞増殖のアッセイを行うため、例えばチミジン組込みを検出することによって、チミジンキナーゼ活性を測定することができる。いくつかの場合では、血液検査を行って、血中酸素のレベルに基づいて肺の機能を評定することができる。
【0071】
培養中の機能性アッセイを容易にするため、本明細書に記載するバイオリアクタ装置の任意のラインは、機能性パラメータ(例えば、pH、グルコース、乳酸、Na、K、Ca、Cl、重炭酸、O
2、CO
2、血中酸素飽和度)の単一またはリアルタイムの測定を可能にする、サンプリングポートを含んでもよい。代謝物もまた、比色アッセイを使用して細胞の数および生存度を監視するのに使用されてもよく、生化学アッセイは、細胞成熟度を監視する(例えば、界面活性タンパク質などを測定する)のに使用されてもよい。例えば、界面活性物質の濃度増加は、培養肺が乾燥換気に耐えるのに十分な上皮細胞を有していることを示すことができる。いくつかの場合では、内皮バリア機能を、血管成熟度のマーカーとして使用することができる。肺は、異なるサイズの分子(規定のサイズのデキストラン、およびアルブミンなど)、およびマイクロビーズ(径は0.2から5μmに増加)、ならびに分離された赤血球で灌流することができる。次に、気管支肺胞洗浄流体をサンプリングして、肺胞空間内へのこれらのマーカーの漏れを評価することができる。例えば、500kDaのデキストランを、気管支肺胞洗浄アッセイと組み合わせて使用して、血管区画内に保持されたデキストランの割合を判断することができる。保持されたデキストランの割合の増加は、バリア機能の改善を示すが、これは、デキストランに対するバリア機能が、生存可能かつ機能的な内皮に依存する一方で、デキストランが、一定の灌流中に時間に伴って、(例えば、無細胞肺内の)裸出した血管基底膜全体に拡散することに依存する。例えば、死体肺は、血管区画内の実質的にすべてのデキストランを保持することがあり、無細胞肺は、少ない割合のデキストラン(例えば、10.0%±8.0%)を保持することがある。許容最小限よりも多い(例えば、4μmのマイクロビーズで>10%、または0.2μmのマイクロビーズで20%超過)、肺胞空間内へのこれらのマーカーの漏れを使用して、肺が乾燥換気に耐えるのに十分に成熟していないことを示すことができる。
【0072】
いくつかの場合では、RT−PCRなどの分子生物学技術を使用して、代謝マーカー(例えば、界面活性タンパク質、ムチン−1)および分化マーカー(例えば、TTF−1、p63、界面活性タンパク質C)の発現を定量化することができる。任意の適切なRT−PCRプロトコルを使用することができる。簡潔には、生物学的サンプル(例えば、腱サンプル)を均質化し、クロロホルム抽出を行い、スピンカラム(例えば、RNeasy(登録商標)Miniスピンカラム(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア))または他の核酸結合物質を使用して全RNAを抽出することによって、全RNAを収集することができる。他の例では、肺細胞タイプ、およびかかる細胞タイプの分化の異なる段階と関連付けられたマーカーは、抗体および標準的な免疫アッセイを使用して検出することができる。
【0073】
気道器官バイオリアクタ装置
例示の気道器官バイオリアクタが
図1に示される。本明細書全体を通して、肺は気道器官の一例として提示される。他の例は、階層的な血管系構造、例えば葉または節を含む、肺の一部分を含むことができる。生体ドナーまたは死体からの摘出肺に対応する例示のバイオリアクタが、
図8および9に示される。本明細書に記載するバイオリアクタのいずれも、仰臥位の肺の培養を可能にするように構成することができる。
【0074】
図1を参照すると、バイオリアクタ100の構成要素は、肺チャンバ101と、インキュベータチャンバ102と、動脈灌流ポンプ103と、動脈圧104と、動脈ライン105と、静脈ライン106と、気管ライン107と、フィルタ108と、酸素付加器109と、放出ライン112と、制御モジュール110と、静脈弁111と、動脈流量センサ114と、静脈灌流ポンプ116と、静脈圧力センサ118と、静脈流量センサ120と、気管弁122とを含む。少なくとも肺チャンバ101は、適切な温度および湿度を維持するため、インキュベータチャンバ102内に密封される。
【0075】
バイオリアクタ100により、肺動脈、肺静脈、または酸素化媒体の別の適切な通過を通して、一定圧力での灌流(酸素化媒体を用いる)が可能になる。肺チャンバ101は肺(図示なし)を保持する。肺の肺動脈は肺動脈ライン105に接続され、肺の肺静脈は静脈ライン106に接続され、肺の気管は気管ライン107に接続される。滅菌フィルタ108が肺チャンバ101内の圧力をインキュベータチャンバ102の圧力と平衡化するので、バイオリアクタ100は中立圧力換気システムであり、一方で、気管弁122は通常開いているので、気管ライン107もインキュベータの圧力と平衡化される。
【0076】
肺チャンバ101内で、細胞を肺マトリックス内で成長させるのに播種を可能にするために、細胞マトリックスは、細胞および媒体を用いて順行方向で灌流される。灌流は、気管弁122が開いたままの状態で、肺動脈までの動脈ライン105を通して、また肺静脈までの静脈ラインを通して行われる。この構成により、細胞および媒体が、動脈側および静脈側の両方から毛細管床に達することができ、媒体が無細胞基底膜を通して拡散し、気管を介して、または胸膜を横切ってマトリックスを出ることができる。
【0077】
動脈流量センサ114および静脈流量センサ120は、これらのラインの流量を測定することができるセンサ(例えば、遷音速流量プローブ)である。流量センサは、本明細書に記載するバイオリアクタのいずれかの中の任意の流体ライン(例えば、任意の進入もしくは放出ライン、動脈ライン、静脈ライン、気管ライン、または酸素交換ライン)に組み込まれてもよい。特定の実施形態では、流量はまた、管材の直径および関連するポンプの速度に基づいて計算されてもよい。
【0078】
細胞および/または媒体は、肺血管系を通る動脈ライン104および静脈ライン107を通って流れる。再循環させるため、媒体は酸素付加器109を通過する。酸素化媒体は、次に、バイオリアクタ100を通して媒体を循環させる、動脈灌流ポンプ103または静脈灌流ポンプ116を流れる。このポンプは、動脈圧力センサ104および静脈圧力センサ118それぞれの圧力読取り値に基づいて、灌流ポンプ104および静脈ポンプ116の速度を制御する、制御モジュール110によって制御される。動脈および静脈灌流圧力は、細胞送達を最適化するために、細胞のサイズおよび数に基づいて改変することができる。制御モジュール110はまた、データ(例えば、動脈圧力センサ104および静脈圧力センサ118からの抵抗読取り値)を記録することができる。媒体は、回路を完成して、動脈ライン104および/または静脈ライン106に戻る。最初の順行性播種の間、媒体は、毛細管床に達する前に、または達すると、肺マトリックスを通って拡散する。骨格を通して媒体を案内するため、気管弁122を開放または閉止して肺の中の圧力を改変し、それによって骨格を通して媒体を案内することができる。いくつかの場合では、逆行性の播種を使用することができる。これらの場合では、細胞および/または媒体は静脈ライン107を通って流れ、酸素化媒体は静脈灌流ポンプ116へと流れ、それによって媒体がバイオリアクタ100を通って循環する。順行性の播種と同様に、骨格を通して媒体を案内するため、気管弁122を開放または閉止して、肺の中の圧力を改変し、それによって骨格を通して媒体を案内することができる。
【0079】
肺マトリックスの血管系抵抗が生理学的条件(例えば、肺マトリックスの再内皮化による血管抵抗の増加)に十分に耐えた後、バイオリアクタ100は順行性灌流に切り替わる。血管系抵抗は、時間に伴って動脈圧力センサ104によって測定される。血管系が生成されるにつれて、血管膜を横切る拡散が減少して、動脈センサ104によって測定される圧力が増加する(即ち、血管抵抗が増加する)。いくつかの実施例では、粒子は、バイオリアクタ100を通して灌流され、それらの進行は、血管膜を横切る拡散速度を判断するために監視される。
【0080】
図2を参照すると、バイオリアクタ200の構成要素は、肺チャンバ201と、インキュベータチャンバ202と、媒体リザーバ203と、動脈灌流ポンプ204と、排液ポンプ205と、動脈圧力センサ206と、チャンバ圧力センサ207と、気管圧センサ208と、静脈圧力センサ209と、動脈ライン210と、静脈ライン211と、気管ライン212と、フィルタ213と、酸素付加器214と、制御モジュール215と、静脈弁216と、気管弁221と、放出ライン217とを含む。肺チャンバ201は、適切な温度および湿度を維持するため、インキュベータチャンバ202内に密封される。
【0081】
やはり
図2を参照すると、バイオリアクタ200は、フロー灌流システムと陰圧換気を組み合わせている。肺マトリックスは肺チャンバ202に入れられる。フロー灌流システムは、肺の肺動脈に接続された動脈ライン210を使用する。媒体は、媒体リザーバ203から吸引され、酸素付加器214を通過する。酸素付加器214は、例えば、入口地点218および出口地点219からの空気を、インキュベータチャンバ202を取り囲む環境と交換する。酸素付加器214を通過した後、動脈圧力センサ206は動脈圧を記録し、このデータを制御モジュール215に送信する。動脈圧読取り値は、次に、媒体をリザーバから肺動脈に給送するローラポンプを調整する。媒体は、次に、循環して放出ライン217を通って肺チャンバ201jから出て、排液ポンプ205を使用して媒体リザーバ203内へと給送される。排液ポンプ205は双方向性であり、媒体リザーバ203と肺チャンバ201との間で媒体を循環させるのに使用することができる。この再循環は、肺チャンバ201内の適正pHを維持する助けにもなる。制御モジュール215は、チャンバ圧力センサ207によって記録された圧力読取り値に基づいて、排液ポンプ205を、例えば速度および/または方向を制御する。肺チャンバ201内のチャンバ圧力が変動するにつれて、液体は気管ライン212に流入し、またそこから流出する。静脈ライン211は媒体リザーバ203に対して開いているので、静脈圧力はチャンバ圧力に対して平衡化し、それによって、動脈から組織内への流体の流入を引き起こし得る肺内外圧較差を防ぐ。チャンバ圧力および給送を適宜監視することによって、肺チャンバ201の媒体レベルを維持することができる。
【0082】
陰圧湿潤換気の間、流体が肺マトリックスを出入りして、肺チャンバ201内の圧力の変動が引き起こされる。この変動により、肺マトリックスの拡張および収縮ももたらされる。この拡張によって、液体が気管を繰り返し出入りし、流体が肺マトリックスを通って(例えば、肺静脈およびリンパ管を通って)変位して、肺チャンバ201に入る。これらの流体変位は、培養期間全体を通して変動する可能性があり、不安定な培養条件、チャンバ圧力の望ましくない増加、媒体のオーバーフロー、陰圧換気の失敗、および肺もしくは肺グラフトの損傷をもたらす可能性がある。チャンバ圧力センサ207を使用して肺チャンバ201の圧力を監視することによって、制御モジュール215が、排液ポンプ205の方向および持続時間を適切に調節することによって、これらの流体変位を補正することができる。例えば、肺チャンバ201内の媒体体積が増加するにつれて、圧力の増加がチャンバ圧力センサ207によって感知される。このデータは制御モジュール215に送信され、そこで灌流ポンプ205が十分な持続時間の間活性化されて、望ましい圧力が回復されるまで、余分な媒体が肺チャンバ201から媒体リザーバ203に戻される。
【0083】
図2に示されるように、バイオリアクタ200はまた、気管圧センサ208と静脈圧力センサ209とを含む。気管圧センサ208気道(例えば、気管)内の圧力を測定する。気管ライン212は、気管弁221によって媒体リザーバ203に接続され、気管ライン212内の圧力は、媒体リザーバ203内の圧力と平衡化する。気道圧を生理学的範囲に制限するため、媒体リザーバ203の高さを上昇させて、生成された気道陽圧を改変してもよい。チャンバ圧力が減少するにつれて、割合は少ないが気管圧も減少する。
【0084】
バイオリアクタ200はまた、静脈圧力センサ209を使用して、静脈ライン212と媒体リザーバ203との間の媒体交換速度を動的に監視することができる。システムに装填した後の静脈は、弁216が閉じているときはリザーバのレベルによって、または静脈弁216が開位置の場合はそれに取り付けることができる抵抗弁によって制御される。例えば、静脈弁216は通常は開位置にある。低圧の読取り値(例えば、<−5mmHg)によって、静脈弁216がトリガされて閉じ(例えば、自動的にもしくはオペレータによって)、その結果、より高い静脈背圧がもたらされて後毛細血管が虚脱するのを防ぐ。圧力読取り値が高い(例えば、>20mmHg)場合、静脈弁216が開いて、静脈の後負荷を低減し、間質空間および気道内への流体変位を最小限に抑えることができる。
【0085】
引き続き
図2を参照すると、媒体チャンバ203内の圧力は、滅菌フィルタ213を通して周囲環境(例えば、インキュベータチャンバ)と平衡化される。この交換により、インキュベータチャンバ202と媒体リザーバ203との間でガス(例えば、二酸化炭素)を交換することも可能になり、このことは、システム内の媒体の適切なpH値を維持する助けとなる。媒体リザーバ203の高さは、肺チャンバ201の高さに対して調節されてもよい。これにより、湿潤呼吸陽圧(positive wet respiratory pressure)がもたらされ、肺に関連する気管気道圧に影響が及ぼされる。例えば、媒体リザーバ203は、媒体に沈められた肺の上方4cmに設定される。これによって、気道陽圧がもたらされる。
【0086】
一般に、本明細書に記載するセンサのいずれかによって記録される圧力は、培養される器官に応じて、生理学的範囲内にある。例えば、動脈の範囲は平均10〜35mmHgであってもよく、肺チャンバ201は平均−40〜40mmHgであってもよい。
【0087】
図3を参照すると、陽圧マニホルド300は、気管ライン304と、圧力リザーバ302と、圧力解放弁301と、圧縮機303(例えば、加圧ガス源)、膨張式通気バッグ306と、マニホルド圧力センサ308とを含む。気管ライン304は、肺(図示なし)の気道に接続される。圧縮機303は圧力リザーバ303に陽圧を提供し、圧力リザーバ302内の圧力レベルは、圧力解放弁301によって改変することができる(例えば、圧力を低減することができる)。特定の実施形態では、陽圧マニホルド300は、(例えば、気管圧センサ408によってもしくはマニホルド圧力308によって記録されるような)吸気および呼気に関連する気道内の圧力変動に応答して、圧力リザーバ302内の圧力を動的に調整するコンピュータ化システムである。膨張式通気バッグ306は、チャンバ、気道、および肺の中の圧力を一定に保ちながら、吸気および呼気の間の急激な容積変化に適応するように、圧力リザーバ302に取り付けられる。膨張式通気バッグ306の容積は、培養されている肺のサイズに応じて変動してもよい。例えば、膨張式バッグ306の容積は、250cc〜4000cc、少なくとも250cc、4000cc未満、300cc〜3500cc、400cc〜3000cc、500cc〜2500cc、600cc〜2000cc、700cc〜1500cc、800cc〜1000ccであってもよい。膨張式通気バッグ306の材料は、可撓性、空気不透過性、および滅菌適性の材料(例えば、ラテックスまたはゴム)であってもよい。マニホルド圧力センサ308によって、終末呼気圧力の監視が容易になるとともに、換気ラインにおけるフローの計算が可能になる。
【0088】
図3Aを参照すると、陽圧マニホルド320は、上述したように、気管ライン304と、圧力リザーバ302と、圧力解放弁301と、圧縮機303(例えば、加圧ガス源)と、膨張式通気バッグ306と、マニホルド圧力センサ308とを含む。陽圧マニホルド320はまた、吸気弁330と、呼気弁332と、呼気圧力解放弁334とを含む。気管ライン304は、肺(図示なし)の気道に接続される。
図3を参照して記載したように、圧縮機326は圧力リザーバ302に陽圧を提供し、圧力リザーバ302内の圧力レベルは、圧力解放弁324によって改変することができる(例えば、圧力を低減することができる)。気管ライン328はまた、吸気弁330および呼気弁332に接続される。吸気弁330および呼気弁は、流体、例えば空気が一方向で流れることを可能にし、逆流を防ぐ、一方向弁である。呼気相の間、空気は、気管ラインから、呼気弁332および呼気圧力弁334を通って呼気ライン(図示なし)に流れる。呼気流体は、吸気弁330により、圧力リザーバ302には入らない。吸気相の間、空気は、圧力リザーバから吸気弁330を通って、気管ライン304を介して肺の気道に流れる。呼気圧力解放弁334によって、呼気ラインが吸入相の間は陽圧を保持し、それによって吸入相の間、空気が呼気ラインを通って流れるのを防ぐことが担保される。
【0089】
図4を参照すると、バイオリアクタ400の構成要素は、肺チャンバ401と、インキュベータチャンバ402と、媒体リザーバ403と、動脈灌流ポンプ404と、排液ポンプ405と、動脈圧力センサ406と、チャンバ圧力センサ407と、気管圧センサ408と、静脈圧力センサ409と、動脈ライン410と、静脈ライン411と、気管ライン412と、滅菌フィルタ413と、酸素付加器414と、制御モジュール415と、静脈弁416と、陽圧マニホルド300とを含む。バイオリアクタ400は、灌流システムに加えて、例えば空気を使用した陰圧乾燥換気を含み、一般に、陽圧モジュールを除いてバイオリアクタ200を参照して上述したように配置される。肺チャンバ401内の圧力は変動可能であって、肺マトリックスを膨張または収縮させる。
【0090】
吸気相の間、肺チャンバ401内の圧力は気道圧力未満に低下し、それによって気道陰圧が作られる。この陰圧により、血管系から組織内へと流体が変位して、間質浮腫に結び付き、気道内の分泌物が増加する。これらの流体変位は、気管ライン412および取り付けられた管材の抵抗によって悪化する。呼気相の間、肺チャンバ401内の圧力は増加し、それによって気道陽圧が作られる。気管が大気圧に対して開いている場合、または中立圧力に接続されている場合、近位気道はチャンバ圧力によって圧縮されて虚脱し、それによって遠位気道および肺胞に空気が捕えられ、肺マトリックスが損傷する。陽圧マニホルド300は、上述したように、適切なサイズ、例えば肺の1回呼吸量の約10倍のサイズを有することによって、吸気および呼気の間の圧力変動を最小限に抑える。制御モジュール415は、上述したように、圧縮機303または圧力解放弁301を活性化させて、圧力リザーバ203内の一定圧力を維持し、それが吸気相および呼気相の間に、気管ライン412を通して気管に伝達される。バイオリアクタ200と同様に、媒体は、肺チャンバ401と媒体リザーバ403との間で灌流ポンプ405によって入れ替えられる。動脈圧力センサ406と双方向動脈灌流ポンプ405との組み合わせは、(上述したような)肺チャンバ401内の適切な圧力および/または媒体流体レベルを維持するのに役立つ。
【0091】
図5を参照すると、バイオリアクタ500の構成要素は、肺チャンバ501と、インキュベータチャンバ502と、媒体リザーバ503と、動脈灌流ポンプ504と、排液ポンプ505と、湿潤換気ポンプ506と、動脈圧力センサ507と、チャンバ圧力センサ508と、気管圧センサ509と、静脈圧力センサ510と、動脈ライン511と、静脈ライン512と、気管ライン513と、滅菌フィルタ514と、酸素付加器515と、制御モジュール516と、静脈弁517とを含む。肺チャンバ501は肺マトリックス(図示なし)を保持する。バイオリアクタ100、200、および400と同様に、肺の肺動脈は動脈ライン511に接続され、肺の肺静脈は静脈ライン512に接続され、肺の気管は気管ライン513に接続される。バイオリアクタ200の特徴に加えて、バイオリアクタ500は、気管ライン513に接続された湿潤換気ポンプ506をすでに含む。湿潤換気ポンプ506により、陽圧液体換気が可能になる。湿潤換気ポンプ506は、新鮮な媒体を媒体リザーバ503から引き出し、気管ライン513を通して媒体を給送し、それによって肺を液体(例えば、媒体)で膨張させる。湿潤換気ポンプ506は双方向性であり、液体を気管ラインから吸引し、それによって肺を収縮させる。湿潤換気ポンプは媒体リザーバ503から直接引き出すので、肺マトリックスは新鮮な媒体で継続的に膨張させられる。制御モジュール516は、気管圧センサ509によって送信された圧力読取り値に基づいて、湿潤換気ポンプ506の動作(例えば、持続時間、方向、および速度)を制御する。例えば、吸気中は5〜45cmH
2Oの吸気陽圧が印加され、呼気中は5〜−15cmH
2Oの呼気圧力が印加される。
【0092】
湿潤換気および乾燥換気モードの間、換気は圧力制御(PC)または容量制御(VC)することができる。圧力制御モードでは、ポンプは、規定の期間(吸気時間、呼気時間)、陽圧、中立圧力、および陰圧の安定を想定して、規定の速度で、規定の吸気圧力および規定の呼気圧力を提供する。容量制御換気モードでは、ポンプは、特定の容積が吸気されるまで規定の吸気圧力を生成し、次に規定の安定を保持し、次に特定の規定の容量が呼出されるまで、または特定の規定の標的圧力に達するまで呼気圧力を生成し、次にポンプは、中立圧力または規定の呼出プラトー圧力で保持してもよい。容積の移動は、様々な流量計(例えば、熱ベース、差圧ベース、または超音波)によって測定されてもよい。これらの流量計は、最も正確なフロー測定を提供するため、肺チャンバの付近で気管ラインに取り付けなければならない。
【0093】
バイオリアクタ200に関して記載したように、肺組織からグラフチャンバ501へと変位した任意の流体は、双方向排液ポンプ505を使用して排液されて、媒体リザーバ503に自動的に戻される。制御モジュール516は、チャンバ圧力センサ508から収集されたデータに基づいて、排液ポンプ505を活性化する。
図6を参照すると、バイオリアクタ600の構成要素は、肺チャンバ601と、インキュベータチャンバ602と、媒体リザーバ603と、動脈灌流ポンプ604と、排液ポンプ605と、動脈圧力センサ606と、チャンバ圧力センサ607と、気管圧センサ608と、静脈圧力センサ609と、動脈ライン610と、静脈ライン611と、気管ライン612と、滅菌フィルタ613と、酸素付加器614と、制御モジュール615と、弁制御静脈ドレナージ616と、換気装置617とを含む。バイオリアクタでは、肺マトリックスは、バイオリアクタ100、200、400、および500に関して上述したように、動脈ラインを通して媒体で灌流される。
【0094】
引き続き
図6を参照すると、バイオリアクタ600は、陽圧乾燥換気を可能にする換気装置617を含む。換気装置617は双方向性であり、気管ライン612を通して肺マトリックスとの間でガス(例えば、空気)を給送する。このガス移動によって、一般的な肺機能に類似した形で、肺マトリックスが膨張および収縮する。バイオリアクタ600は、器官培養の後段の間、再生肺グラフトおよび肺の機能性試験のために使用されてもよい。例えば、気管ラインは、気管圧センサ608と換気装置617との間の換気動力を試験する、少なくとも1つのポートを含むことができる。気管ラインはまた、システムの汚染を伴わずに肺グラフトの気管支鏡的評価のため、ユーザがシステムにアクセスするのを可能にする、1つまたはそれ以上のポートを含んでもよい。各進入または放出ラインはまた、血液ガス分析を容易にしてリアルタイムの酸素測定を容易にする、少なくとも1つのポートを含有してもよい。
【0095】
図7を参照すると、空気圧制御モジュール700は、入口圧力弁703と、入口圧力リザーバ705と、入口圧縮機701と、入口ライン707と、出口圧力弁704と、出口圧力リザーバ706と、出口圧縮機702と、出口ラインと、PPCコントローラ709とを含む。入口ライン707および出口ライン708は、チャンバ圧力センサ710を含む肺チャンバ712(上述したような)に接続される。入口および出口圧縮機701、702は、入口および出口圧力リザーバ705、706にガス(例えば、空気)を充填する。入口および出口圧力弁703、704(例えば、ソレノイド弁)ならびに入口および出口圧縮機701、702は、PPCコントローラ709によって制御される。吸気相の間、出口弁704が開き、グラフトチャンバ712内への陰圧を生成する。標的陰圧がチャンバ圧力センサ710によって記録されると(例えば、−20cmH
2O)、出口弁704が閉じる。チャンバ圧力は、呼気および吸気の間、−50〜+100cmH
2Oの範囲であってもよい。肺コンプライアンスが正常な肺のコンプライアンスに近付くと、チャンバ圧力は胸膜内圧力の生理学的範囲(例えば、−10〜+25cmH
2O)をより緊密に模倣する。適切な安定相の後、呼気相が始まり、入口圧力弁703が開き、肺チャンバ712内における陽圧の生成が可能になる。標的陽圧がチャンバ圧力センサ710によって記録されると(例えば、25cmH
2O)、入口弁703が閉じる。入口および出口圧力リザーバ705、706は、肺チャンバ712内の圧力の迅速な調節が可能になるように、適切にサイズ決めされる。入口および出口圧力リザーバは、入口または出口圧縮機701、702によって生成される、振動アーチファクトを防止および/または低減する。いくつかの実施形態では、圧力平衡化の傾きは、入口ライン707および/または出口ライン708内に位置する追加の抵抗弁(図示なし)によって調節することができる。上述したように、換気は圧力制御(PC)または容量制御(VC)であることができる。
【0096】
図8を参照すると、バイオリアクタ800の構成要素は、肺チャンバ801と、インキュベータチャンバ802と、媒体リザーバ803と、動脈灌流ポンプ804と、排液ポンプ805と、動脈圧力センサ806と、チャンバ圧力センサ807と、気管圧センサ808と、静脈圧力センサ809と、動脈ライン810と、静脈ライン811と、気管ライン812と、フィルタ813と、酸素付加器814と、制御モジュール815と、静脈弁816と、PPCモジュール700とを含む。
【0097】
バイオリアクタ800は、一般に、PPCモジュール700を追加したバイオリアクタ200に関して記載したように配置される。肺チャンバ801内の圧力は、PPCモジュール700(上述したような)によって調整される。この配置により、肺チャンバ801内外への大きな流体変位を伴わずに、陰圧換気が可能になる。排液ポンプはチャンバ801内の一定の流体レベルを維持し、吸気中の陰圧および呼気中の陽圧はPPCモジュール700によって達成される。PPCモジュール700を用いた陰圧および陽圧換気源を交換し、媒体を発泡させることによって、培養全体を通した乱流および機器の故障によるグラフの損傷が防止および/または低減される。さらに、PPCモジュール700は様々な生理学的呼吸速度を達成することができるので、バイオリアクタ800は、様々な肺マトリックスサイズ(例えば、ヒト成人の肺、ヒト小児の肺、または任意の動物(例えば、哺乳類の肺)に容易に適合可能である。上述したように、湿潤換気の間、媒体リザーバ803の高さを肺チャンバ801の高さよりも高くし、それによって、気管ラインを通して静水圧を生じさせることによって、気道陽圧が維持される。
【0098】
図9を参照すると、バイオリアクタ900の構成要素は、肺チャンバ901と、インキュベータチャンバ902と、媒体リザーバ903と、動脈灌流ポンプ904と、排液ポンプ905と、動脈圧力センサ906と、チャンバ圧力センサ907と、気管圧センサ908と、静脈圧力センサ909と、動脈ライン910と、静脈ライン911と、気管ライン912と、フィルタ913と、酸素付加器914と、制御モジュール915と、静脈弁916と、平衡化ライン918と、フィルタオクルダ917と、PPCモジュール700と、陽圧マニホルド300とを含む。バイオリアクタ900の構成要素は、一般に、気管ライン911に接続された陽圧マニホルド300を追加することを除いて、バイオリアクタ800に関して記載したように配置される。この配置により、バイオリアクタ900が、バイオリアクタ800に関して上述したように、吸気、呼気の全体を通じて陰圧換気を生成し、(気管ライン911を通して)気道陽圧を生成し維持することができる。バイオリアクタ900はさらに、大きいマトリックスサイズ(例えば、ヒト成人の肺およびヒト小児の肺)に、また平衡化ライン918およびオクルダ917の追加による、長期培養に適合するように構成される。
【0099】
通常の条件下(例えば、室内空気、自発的な換気)におけるヒトの身体では、通常の測定値は、気管/気道からの正味圧力「p
t」≒0cmH
2O、胸膜間空間圧力「p
p」≒−5〜8cmH
2O、動脈圧「p
a」≒13mmHg、静脈圧「p
v」≒6mmHg(平均p
v9.5mmHg)、および間質圧力p
i≒5mmHgである。スターリングの方程式(Granger HJ, Laine GA et al. Dynamics and control of transmicrovascular fluid exchange. In: Staub NC, Taylor AE, editors. Edema. New York: Raven Press; 1984. p. 189-228を参照)を使用すると、計算は、肺が間質およびリンパの陰圧を経験し、それによってリンパドレナージが容易になることを実証することができる。例えば、次式を使用する。
Jv=LS[Ρmv−Ρpmv)−σ(Πmv−Πis)]
式中、LS≒0.2mL/分/100g/mmHg(Κfまたは流体濾過係数、流体に対する透過率の測定値、および血管表面積)、Ρmv≒5〜10mmHg(微小血管(≒毛細管)静水圧)、Ρpmv≒−5〜−7mmHg(微小血管周囲または間質静水圧)、σ≒0.5〜0.8(浸透反射係数、正味駆動圧に対する血管系全体の膨張圧較差の相対的寄与を決定、特定の溶質(例えば、アルブミン)に対する特定の膜(例えば、内皮)の透過率の測定値は、膜が全体的に透過性である場合の0から完全に不透過性である場合の1まで変動)、Πmv≒24mmHg(肺の微小血管系内における血液の膨張圧)、およびΠpmv≒14mmHg(微小血管周囲間質における膨張圧)、結果として得られる外向きの圧力≒1.5〜2mmHg、間質空間内への正味の流体フロー約10〜20cc/分である。気管/気道(p
t)および胸膜間空間(p
p)からの正味圧力は−5mmHgであり、リンパドレナージを容易にする間質およびリンパの陰圧がもたらされる。
【0100】
肺実質組織全体の正味陰圧および呼吸中のその変動、ならびに肺組織の伸展を組み合わせて、例えば、Bhattacharya J et al. Lung expansion and the perialveolar interstitial pressure gradient. J Appl Physiol 1989;66:2600-5において考察されているように、間質液を排液するポンプとして機能する。それに対応して、自発的換気の増加は、例えば、Albelda SM et al., Effects of increased ventilation on lung lymph flow in unanesthetized sheep. J Appl Physiol (1985). 1986 Jun;60(6):2063-70において考察されているように、リンパ流の増加に結び付く。
【0101】
肺の評価に使用される標準的な体外肺灌流(EVLP)設定では、値は、p
t≒7.5cmH2O、p
p=0mmHg、p
a≒13mmHg、p
v≒6mmHg(平均p
v0.5mmHg)に設定される。上述したように、方程式を適用して、理想的な状況(灌流液の生理学的膨張圧および浸透反射係数を仮定する)下では、間質空間内への正味流体フローは1分当たり約10〜20ccである。この設定では、肺は隔離され、したがって通常は、胸壁、胸膜間圧力および間質圧力の変動、ならびに結果として生じる双方向の肺内外圧較差によって加えられる生理学的な逆圧がない。時間に伴い、これは、静水圧間質性肺浮腫、および最終的には臓器不全を伴う肺胞浮腫に結び付く。このことは、例えば、Erasmus ME et al., Normothermic ex vivo lung perfusion of non-heart-beating donor lungs in pigs: from pretransplant function analysis towards a 6-h machine preservation. Transpl Int 2006; 19: 589-593において、回路によって誘起される(circuit induced)肺損傷として説明されてきた。
【0102】
図9を参照すると、肺チャンバ901と媒体リザーバ903との間の圧力平衡化ライン918、およびフィルタ913上のオクルダ917は、肺チャンバ901と媒体リザーバ903との間の圧力を平衡化する。これにより、呼吸サイクルのすべての相において、両方のチャンバ全体の等圧が担保される。この改変は、本明細書で考察するすべてのバイオリアクタ、小型動物および大型動物/ヒトの両方に適用することができ、陽圧および陰圧換気モード、ならびに湿潤および乾燥換気モードの両方で使用することができる。この圧力平衡化ライン918を導入することにより、双方向の肺内外圧較差を作り出すことができる。換言すれば、肺を、Ppm300を介して内部から圧縮することができ(それによって気道陽圧が作られる)、またPPCモジュール700を介して外部から圧縮することができる(それによってチャンバ陽圧が作られる)。
【0103】
この双方向の肺内外圧較差の目的は、長期間の隔離された肺培養の間に間質浮腫が形成されるのを防ぐこと、また、間質液を血管系に流し込み、それによって肺機能(例えば、コンプライアンス、拡散、重量、およびサイズ)を改善することによって、(例えば、すでに損傷した肺に)すでに形成されている浮腫を治療することである。この較差は、静脈圧をチャンバ圧力に対して調節できる場合に達成することができる。媒体リザーバ903の高さを調節し、またそれによって静脈カニューレ内の水カラムの高さを調節し、肺静脈を排液して媒体チャンバ903に戻すことによって、静脈圧904をチャンバ圧力よりも高い、またはそれよりも低い一定のレベルで保つことができる。本質的に、2つのチャンバ間の平衡化によって、陰圧換気中の一定の肺静脈ドレナージが可能になる。対照的に、平衡化が維持されず、P
vが一定に保たれた場合、肺チャンバ901内の陰圧によって静脈ドレナージが減少するか、または静脈フローが(例えば、部分的もしくは完全に)反転し、肺チャンバ901内の陽圧によって肺静脈が虚脱して、流出障害に結び付く。
【実施例】
【0104】
以下の実施例で本発明についてさらに記載するが、それらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0105】
無細胞肺骨格およびヒト由来の肺始原細胞に基づく肺再生
背景
肺グラフトは、例えば、Ott HC et al., Regeneration and orthotopic transplantation of a bioartificial lung. Nat Med. 2010 Aug;16(8):927-33、およびSong JJ et al., Enhanced in vivo function of bioartificial lungs in rats. Ann Thorac Surg. 2011 Sep;92(3):998-1005で考察されているように、胎児上皮細胞を使用して産生されてきた。この技術を臨床用途に転用するためには、患者由来の細胞を使用するべきである。これらの細胞は、表現型によってそのように前分化されたIPS細胞由来であることができる。
【0106】
方法
ラット肺を、成体ルイスラットから心臓および気管と一括して摘出した。ドナー器官を、肺動脈を介した0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)灌流およびそれに続く生理食塩水洗浄によって、脱細胞化した。結果として得られた肺骨格を、
図2の上述したようなバイオリアクタに入れて、陰圧湿潤換気を可能にした。3000万個のヒト臍帯内皮細胞と、1億個の前分化ヒトiPS細胞(皮膚繊維芽細胞の再プログラムによって派生したBJRiPS細胞)とを、胚体内胚葉段階において、肺動脈および気管それぞれを介して同時に送達した。次に、肺グラフトをバイオリアクタに入れ、静的器官培養下で2時間維持して、細胞生着を可能にした。次に、毎分3mLの速度で媒体灌流を開始した。湿潤換気を、グラフトチャンバ内における−20〜+10cmH
2Oの圧力範囲、および8cmH
2Oの持続湿潤気道陽圧で開始した。これらの条件下での培養を合計10日間維持した。実験を終了する前に、最高吸気圧35cmH
2O、吸気陽圧5cmH
2O、ならびに100%および21%のFiO
2で、陽圧換気を使用して肺を換気した。血液ガスサンプルは静脈ラインから抜き出した。次に、肺グラフトをバイオリアクタから摘出した。右肺は、組織学的な生化学および遺伝的組織分析に使用した。左肺は、肺グラフトとして使用し、ラットモデルに同所移植した。
【0107】
結果
内皮および前分化IPS細胞の細胞生着を観察した。細胞生存度を、TUNEL染色によって確認し、培養の終了時で75%超過であることが見出された。ガス交換を、血液ガス分析による実験の終了時に確認した。左肺の成功した外科的移植は、すべての再生グラフトにおいて達成された。
【実施例2】
【0108】
灌流および陰圧換気による肺保存:ラット肺モデル
背景
ドナー肺は、現在、低温虚血状態で輸送されている。通常の温熱灌流および換気の間、体外で肺を保存するための努力がなされてきた。現在最新の機器では、6〜48時間を超えて良好な生存度でドナー器官を維持することができない。組織浮腫および機械的損傷が、この期間の間の組織の損傷およびグラフトの故障に結び付く。すべての現在利用可能なシステムは、陽圧乾燥換気を使用しており、これは保護胸壁がない場合に肺グラフトの機械的損傷に結び付く。陰圧湿潤および乾燥換気バイオリアクタを設計し、長期(>7日間)にわたって肺組織を生存可能に維持する能力を調査した。
【0109】
方法
肺を、イソフルランを用いて麻酔し、3000単位のヘパリンを全身注射し、その後に、4℃まで冷却した10mlのPBSを用いて肺動脈を洗浄した後に、月齢3か月のSD400ラットから心臓および気管と一括して摘出した。気道、肺動脈(PA)および左房(LA)を滅菌方式で洗浄した。肺を、500mlの器官チャンバ(主要チャンバ)に入れ、37℃のインキュベータ内で培養した。この実験には、
図4に示されるようなバイオリアクタを使用した。
【0110】
気管ラインは陽圧マニホルドシステムに接続し、それによって、酸素または周囲空気と均衡させた5%CO
2を用いて持続気道陽圧(CPAP)を提供した。PAラインは灌流ラインに接続し、灌流ラインは灌流液を充填したリザーバにも接続した。灌流液は、RPMI 500ml、1640グルタマックス、アルブミン 500mg、ウシ胎児血清50ml、抗生物質/抗真菌剤溶液5ml(1mL当たりペニシリン10,000単位、ストレプトマイシン10mg、アンフォテリシンB 25μg)で構成した。主要チャンバおよびリザーバは戻りチューブで接続し、またそれによって灌流液を2つのチャンバ間で循環させることができた。灌流液は少なくとも1日おきに交換した。灌流フローおよび戻りフローは両方とも、蠕動ポンプ(Ismatec, Cole-Parmer)によって調整した。灌流ライン圧力をPAラインの付近で監視した。主要チャンバおよびリザーバは、換気チューブによって、蠕動ポンプ(P230、Harverd Apparatus)と接続し、それにより、陰圧肺換気のために空気および流体を出し入れすることによって、主要チャンバ内に陽圧および陰圧を作り出すことができた。
【0111】
PEEP/CPAPによる6または7日間の肺培養、および陰圧肺換気を用いたもしくは用いない灌流の後、肺を固着し、パラフィンに埋め込み、薄片にした。H&E染色およびTUNEL染色を行った。
【0112】
結果
安定分離肺培養は、次のような設定で維持された。5%CO
2および平衡化空気を用いた15cmH
2O PEEP、灌流速度1〜3ml/分、+10mmHg〜−20mmHgの主要チャンバ圧力での陰圧換気、標的陰圧がどの程度早く達成されるかに応じて、呼吸数2〜4。測定された灌流ライン圧力は、8.4〜30mmHgであった。
【0113】
組織学に関して、正常に見える肺組織のいくつかの範囲を、7日間の培養後に見た。TUNEL染色によって細胞生存度の保存を確認した。
【実施例3】
【0114】
ヒト肺骨格の再細胞化および培養
4歳の小児ドナーからの左肺を除去し、右肺を成功裏にカニューレ挿入し、完全に脱細胞化した。脱細胞化に続いて、上下の右葉を分離し、再細胞化および培養に利用した。
【0115】
細胞の播種および培養に関して、葉の主要動脈および静脈の両方を分離し、灌流液の受動ドレナージを可能にするように設計された血管カニューレを用いてカニューレ挿入した。主要気道をインキュベートし、バイオリアクタチャンバの蓋を通して接続した。これによってまた、システムが媒体の一定フローまたは圧力制御された灌流が可能になる。
【0116】
方法
合計500×106個の肺胞上皮細胞(PAEpiC、ScienCell)を、低速シリンジによって気道に送達し、次いで、37度で2時間の静的培養を行った。容量1.5Lの肺胞細胞成長媒体を用いた灌流を、60ml/分の速度で開始して、8〜10mmHg以内の圧力を生成した。灌流および培養は4日間維持し、その後に組織を分析用に摘出した。培養中の汚染は観察されなかった。
【0117】
結果
肺組織全体にわたるいくつかの範囲の組織学的分析により、異質的な細胞保持が実証されたが、ロバストな再細胞化のいくつかの範囲を含んでいた。細胞分布のまだらな性質は、細胞送達におけるばらつきによる可能性が高い。肺の再細胞化範囲によって、高レベルの細胞付着、および肺骨格の天然構造に沿った伸展が示された。TUNELアッセイによって細胞生存度をさらに分析して、4日間の培養にわたって生じるアポトーシスは非常に低レベルであることが示された。
【実施例4】
【0118】
死体ブタ肺
この実施例は、一組のブタ死体をバイオリアクタに接続し、バイオリアクタの機能を試験した、実証実験について記載する。
【0119】
方法
一組の死体ブタ肺を試験のために得た。肺動脈および気道にカニューレを挿入し、器官を器官チャンバの内部に置き、カニューレをそれらに対応する入力(それぞれ、灌流ラインおよび換気ライン)に接続した。器官の換気を試みる前に、ヘパリンを含むリン酸緩衝生理食塩水を用いた灌流を開始した。灌流の一定フローおよび一定圧力両方のモードを実現した。
【0120】
結果
灌流が成功すると、器官チャンバの加圧モードを試験した。両方の加圧モードが器官の換気に成功した。しかしながら、圧力目標による加圧(+20mmHg〜−150mmHg)により、器官容積の目に見える変化がより大きくなった。換気を18時間の期間(終夜)にわたって実施して、バイオリアクタ機能の一貫性を確認した。死体肺に対する第1の試験に使用したバイオリアクタパラメータを、表3に概説する。
【0121】
この実験は、PPMマニホルドに接続した換気バッグを含まなかった。このことにより、換気ラインおよび器官内の限定されたガス体積が膨張するので、器官を換気するのに器官チャンバ内で必要とされるゲージ陰圧が大きくなった。十分な大きさの換気バッグを追加することでこの膨張は緩和されるはずであり、膨張および収縮ではなく器官チャンバ圧力の変化に応答して、ガスが自由に肺に流入し、またそこから流出することができる。
【0122】
【表3】
【実施例5】
【0123】
ブタ肺の保存(短期24時間)
この実施例は、隔離されたブタ肺をバイオリアクタに接続して、短期間分離肺培養を介してバイオリアクタの機能を実証した、実証実験について記載する。器官チャンバ圧力(
図10A、P
OC)、PA圧力(P
PA)、PV圧力(P
PV)、PEEPチャンバ圧力(P
PEEP)、および気管圧(P
T)を、培養全体を通して監視する。灌流パラメータ、換気パラメータ、およびバイオリアクタイベントのログ収集の制御は、National Instrumentsの小型データ収集(cDAQ)システムを、専用に開発したLabVIEWプログラム(National Instruments、マサチューセッツ州ウーバン)と組み合わせることによって達成される。
【0124】
システム内の陰圧換気は、圧力制御され、呼吸数(RR)、吸気呼気(I:E)比、下限器官チャンバ圧力目標(P
OC−Lower)、および上限器官チャンバ圧力目標(P
OC−Upper)という4つのパラメータによって管理される。RRは、各呼吸の長さを決定し、I:E比は、吸気または呼気状態に入る各呼吸の時分割を定義する。P
OC−LowerおよびP
OC−Upperは、吸気および呼気それぞれの間において器官チャンバが維持される空気圧を表す。P
OC−LowerとP
OC−Upperとの差によって、呼吸の大きさ、または肺の外側が晒される圧力範囲が決定する。したがって、PEEPチャンバ圧力に対するこれら目標の位置は、換気中のP
Transmuralに影響する。これらの実験に対して、漸増させた気道が虚脱しないように適切な呼気に対する肺の弾性反跳に依存して、P
OC−UpperはPEEPチャンバ圧力付近に設定し、P
OC−Lowerはそれよりも10〜15mmHg低く設定した。これらのパラメータを、表4にしたがって、膨張を維持し、あらゆる目に見える浮腫の蓄積を低減するように、培養中に調節した。調節は、24時間の期間に3〜7回、媒体サンプリングとほぼ同頻度で行った。
【0125】
【表4】
【0126】
方法
ドナー肺を、滅菌技術を使用して取り出し、層流フードに入れた。専用のコネクタ(例えば、様々なホース返し取付け具、Cole−Parmer、イリノイ州ヴァーノンヒルズ)を使用して、気管(T)、肺動脈(PA)、および左房カフ(PV)にカニューレを挿入した。次に、肺を、培養のために器官チャンバ(Instron TERM、マサチューセッツ州ノーウッド)に入れ、PA、PV、および気管カニューレをそれらそれぞれの接続部に取り付けた。臨床スケールのバイオリアクタ(
図10A)は、肺グラフトを収容し、流体リザーバとして作用し、生理学的灌流および換気に対する接続を提供する、気密器官チャンバを含む。器官チャンバおよび付属チャンバは、37℃のインキュベータ内に置かれて、分離肺培養の持続時間の間温度を維持する。この設定の重要な特徴は、長時間(場合によっては数週間)にわたって、完全に密封されたシステム内で無菌器官培養を維持することができ、媒体交換、サンプリング、および器官の介入が可能になることである。
【0127】
バイオリアクタ機能の最初の実証を、温虚血時間>1時間、冷虚血時間>24時間で、屠殺場のブタ肺(n=8)を使用して実施した。試験した肺の各組に対して、PA、PV、および気管にカニューレを挿入し、組織生検を対照として行い、器官チャンバ内で接続する前に器官を秤量した。次に、培養媒体の灌流を開始し(灌流ラインを、PAに接続する前に2Lの媒体でプライミングした)、肺を漸増させ、PEEPを確立し、インキュベータ空気(O2 21%、CO2 5%)を用いて陰圧換気を開始した。培養媒体はDMEMを含有し、1倍のGluta MAX、1倍のMEMアミノ酸(カタログ番号12800−017、35050−061、および11130−051、Life Technologies、カリフォルニア州カールスバッド)、1容量/容量%の抗生物質/抗真菌剤、ならびに110nMのヒドロコルチゾン(カタログ番号A5955およびH6909、Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)、コロイドとしてもしくはコロイドを含まない10質量/容量%のBSA(カタログ番号A2153、Sigma)を追加した。培養は24時間維持し、その間、灌流液をPAおよびPVで周期的にサンプリングした。培地は、PVから1〜2LのPV排液を除去し、器官チャンバに対する新しい媒体の量に等しいまたはそれよりも多量の新しい媒体を排液チャンバに補給することによって、24時間の期間毎に2回交換した。灌流および換気圧力は、培養全体を通して継続的に監視した。分離肺培養後、肺をチャンバから除去し、秤量し、組織学のために組織サンプルを取った。
【0128】
灌流液分析
灌流液(培地)サンプルを、PAの上流およびPVの下流から抜き取った。灌流液組成を、CG8+カートリッジ(Abbott)とともに、i−STAT 1 Analyzer(Abbott Point of Care Inc.、ニュージャージー州プリンストン)を使用して、培養期間の間に分析して、pH、PO
2、PCO
2、およびグルコースを測定した。灌流液の乳酸含量は、短期間ILC実験では測定しなかった。媒体成分の変化は、PAおよびPVの測定値間の差として表現される。したがって、負の値は減少を指し、正の値は増加を指す。
【0129】
組織学および免疫蛍光法
組織サンプルを、真空下で10%ホルマリン中で一晩固定し、その後、70%エタノールへと移し、パラフィンに埋め込み、染色のために5μmの薄片にした。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を使用して、全体的な形態学を評価した。末端デオキシヌクレオチジル転移酵素dUTPのニック末端標識アッセイ(Promega DeadEnd Cluorometric TUNEL System、Promega Corporation、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、アポトーシスを評価した。組織サンプル1つ当たり6つの無作為範囲について、20倍範囲(約0.3419mm
2)当たりのTUNEL陽性細胞の割合を計算することによって、アポトーシスの定量化を実施した。試験した各肺に対して2つ以上の組織サンプルを定量化に使用した。CellProfiler[19,20]を使用して、画像毎のTUNEL陽性細胞の数を決定した。
【0130】
組織切片の一次標識付けは、最初に組織切片の脱パラフィン化および再水和を行い、次に圧力鍋の中でクエン酸溶液中において抗原賦活化を行い(抗原アンマスク溶液、クエン酸系、カタログ番号H−3300、Vector Laboratories Inc.、カリフォルニア州バーリンゲーム)、切片をPBS中で洗い、PBS中で30分間、5%のロバ血清を用いて阻害し(カタログ番号S−30−100ML、EMD Millipore、ドイツ国ダルムシュタット)、一次抗体を用いてスライドを終夜(18時間)インキュベートすることによって行った。一次抗体は、VE−カドヘリン(カタログ番号sc−9989、Santa Cruz Biotechnology、テキサス州ダラス)、E−カドヘリン(カタログ番号610181、BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)、ZO−1(カタログ番号61−7300、Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド)、およびプロSPB(カタログ番号AB3430、EMD Millipore)用のものを使用した。一次抗体の二次標識付けは、最初に組織切片をPBSの0.1% Tween中で洗い、次に対応する二次抗体を用いて30分間インキュベートし、PBSの0.1% Tweenを用いて再び洗い、DAPI含有封入剤でスライドを封入(DAPI Fluoromount−G、カタログ番号0100−20、SouthernBiotech、アラバマ州バーミングハム)することによって行った。
【0131】
物理的パラメータの計算
経壁圧力(P
TM)を、P
TM=P
T−P
OCとして計算し、機械的応力を示す測定値として肺に適用して換気を容易にした。正のP
TMは吸気に対応し、負のP
TMは呼気に対応する。器官重量の百分率変化を、ΔW
Organ=(W
Final−W
Initial)/W
Initial×100として計算した。グルコースおよび乳酸の質量消費率(ΔグルコースおよびΔ乳酸)を、PAからPVへの濃度変化に灌流流量を掛けたものとして計算した。肺血管抵抗(PVR)を、PVR=(P
PA−P
PV)/Qとして計算した(式中、Qは灌流流量)。すべてのデータは、平均±標準偏差として、または特段の指示がない限り、ボックスプロットとして提示する。
【0132】
結果
短期間(24時間)ILC条件を、DMEM中の10% BSA(BSA、n=5)およびDMEMのみ(DMEM、n=3)の灌流液群について、表5に概説している。両方の群の肺は、培養に先立って>24時間の冷虚血時間を有していた。両方の群のPA圧力は、灌流および換気の間、器官チャンバ圧力に対して20〜40mmHgで維持した。PEEP、呼吸数、経壁圧力、およびI:E比を培養の間に調節して、膨張を維持し、目に見える浮腫の蓄積を低減させたが、群同士では類似していた。
【0133】
10%BSA中で24時間培養した肺は、DMEMのみで培養した肺よりも器官重量の変化割合が大きかった(
図11A)。BSA群の場合、PAおよびPVにおける平均pO
2値はそれぞれ、131.7±6.5mmHgおよび79.2±8.1mmHgであった。DMEM群の場合、PAおよびPVにおける平均pO
2値はそれぞれ、156.1±6.8mmHgおよび101.5±2.5mmHgであった。培養期間にわたってPAおよびPVで同時に灌流液をサンプリングすることによって、媒体が灌流される際の溶解ガスおよびグルコース含量の変化を実現することができた。両方の群からの媒体によって、溶解O
2およびグルコースの消費が、それに対応する溶解CO
2の生成に匹敵することが明らかになった(
図11B)。これらの観察は、24時間の培養期間全体にわたって一定である。
【0134】
短期間ILC後に行った組織サンプルの組織学的分析(
図11C〜D)によって、天然肺構造が維持されることが明らかになった(
図11C)。TUNELアッセイ(
図11D〜E)により、統計的に有意でなかった、アポトーシス細胞の割合のわずかな増加が示された(ANOVA、p=0.6851)。
【0135】
【表5】
【実施例6】
【0136】
ブタ肺の保存(長期72時間)
この実施例は、隔離されたブタ肺をバイオリアクタに接続して、長期間分離肺培養を介してバイオリアクタの機能を実証した、実証実験について記載する。器官チャンバ圧力(
図10A、P
OC)、PA圧力(P
PA)、PV圧力(P
PV)、PEEPチャンバ圧力(P
PEEP)、および気管圧(P
T)を、培養全体を通して監視する。灌流パラメータ、換気パラメータ、およびバイオリアクタイベントのログ収集の制御は、National Instrumentsの小型データ収集(cDAQ)システムを、専用に開発したLabVIEWプログラム(National Instruments、マサチューセッツ州ウーバン)と組み合わせることによって達成される。
【0137】
バイオリアクタ内の陰圧換気は、圧力制御され、呼吸数(RR)、吸気呼気(I:E)比、下限器官チャンバ圧力目標(P
OC−Lower)、および上限器官チャンバ圧力目標(P
OC−Upper)という4つのパラメータによって管理される。RRは、各呼吸の長さを決定し、I:E比は、吸気または呼気状態に入る各呼吸の時分割を定義する。P
OC−LowerおよびP
OC−Upperは、吸気および呼気それぞれの間において器官チャンバが維持される空気圧を表す。P
OC−LowerとP
OC−Upperとの差によって、呼吸の大きさ、または肺の外側が晒される圧力範囲が決定する。したがって、PEEPチャンバ圧力に対するこれら目標の位置は、換気中のP
Transmuralに影響する。これらの実験に対して、漸増させた気道が虚脱しないように適切な呼気に対する肺の弾性反跳に依存して、P
OC−UpperはPEEPチャンバ圧力付近に設定し、P
OC−Lowerはそれよりも10〜15mmHg低く設定した。これらのパラメータを、表6にしたがって、膨張を維持し、あらゆる目に見える浮腫の蓄積を低減するように、培養中に調節した。調節は、24時間の期間に3〜7回、媒体サンプリングとほぼ同頻度で行った。
【0138】
【表6】
【0139】
方法
長期間ILCを確立するため、冷虚血時間<1時間で、ブタ肺(n=4)を使用した。非コロイド培養媒体を使用したこと以外は上述した手順を使用して、器官を培養用に調製し、器官チャンバに入れた。培養は少なくとも72時間維持し、その間、灌流液をPAおよびPVで周期的にサンプリングした。培地も、短期間ILCに関して記載したのと同じ間隔で変更し、器官チャンバリザーバが低量(<1L)に見えた場合に追加の媒体を添加した。灌流および換気圧力は、培養全体を通して継続的に監視した。酸素交換の機能性試験を、100%O
2(FiO
2=1.0)を用いて10分間換気し、PV出口で測定されるような、灌流液中におけるO
2の分圧の変化を観察することによって実施した。この場合、ΔPV pO
2=PV pO
2試験後−PV pO
2試験前であった。システムは閉ループで媒体を灌流し、PAの上流では灌流液を脱酸素化しないので、機能性試験のこの方法を、PA対PVでのpO
2の比較に対して選択した。FiO
2=0.21および1.0におけるPV pO
2の比較によって、バイオリアクタシステムに関して、換気肺が灌流液を酸素化する能力が分かる。機能性試験の間、灌流で残ったインキュベータ空気を中空繊維のガス交換体に供給した。ILC後、肺をチャンバから除去し、秤量し、組織学のために組織サンプルを取った。
【0140】
灌流液分析
灌流液(培地)サンプルを、PAの上流およびPVの下流から抜き取った。灌流液組成を、CG8+カートリッジ(Abbott)とともに、i−STAT 1 Analyzer(Abbott Point of Care Inc.、ニュージャージー州プリンストン)を使用して、培養期間の間に分析して、pH、PO
2、PCO
2、およびグルコースを測定した。CG4+カートリッジを使用して、長期間ILC実験における乳酸含量を測定した。媒体成分の変化は、PAおよびPVの測定値間の差として表現され、したがって、負の値は減少を指し、正の値は増加を指す。
【0141】
組織学および免疫蛍光法
組織サンプルを、真空下で10%ホルマリン中で一晩固定し、その後、70%エタノールへと移し、パラフィンに埋め込み、染色のために5μmの薄片にした。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を使用して、全体的な形態学を評価した。末端デオキシヌクレオチジル転移酵素dUTPのニック末端標識アッセイ(Promega DeadEnd Fluorometric TUNEL System、Promega Corporation、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、アポトーシスを評価した。組織サンプル1つ当たり6つの無作為範囲について、20倍範囲(約0.3419mm
2)当たりのTUNEL陽性細胞の割合を計算することによって、アポトーシスの定量化を実施した。試験した各肺に対して2つ以上の組織サンプルを定量化に使用した。CellProfiler[19,20]を使用して、画像毎のTUNEL陽性細胞の数を決定した。
【0142】
組織切片の一次標識付けは、最初に組織切片の脱パラフィン化および再水和を行い、次に圧力鍋の中でクエン酸溶液中において抗原賦活化を行い(抗原アンマスク溶液、クエン酸系、カタログ番号H−3300、Vector Laboratories Inc.、カリフォルニア州バーリンゲーム)、切片をPBS中で洗い、PBS中で30分間、5%のロバ血清を用いて阻害し(カタログ番号S−30−100ML、EMD Millipore、ドイツ国ダルムシュタット)、一次抗体を用いてスライドを終夜(18時間)インキュベートすることによって行った。一次抗体は、VE−カドヘリン(カタログ番号sc−9989、Santa Cruz Biotechnology、テキサス州ダラス)、E−カドヘリン(カタログ番号610181、BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)、ZO−1(カタログ番号61−7300、Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド)、およびプロSPB(カタログ番号AB3430、EMD Millipore)用のものを使用した。一次抗体の二次標識付けは、最初に組織切片をPBSの0.1% Tween中で洗い、次に対応する二次抗体を用いて30分間インキュベートし、PBSの0.1% Tweenを用いて再び洗い、DAPI含有封入剤でスライドを封入(DAPI Fluoromount−G、カタログ番号0100−20、SouthernBiotech、アラバマ州バーミングハム)することによって行った。
【0143】
物理的パラメータの計算
経壁圧力(PTM)を、P
TM=P
T−P
OCとして計算し、機械的応力を示す測定値として肺に適用して換気を容易にした。正のP
TMは吸気に対応し、負のP
TMは呼気に対応する。器官重量の百分率変化を、ΔW
Organ=(W
Final−W
Initial)/W
Initial×100として計算した。グルコースおよび乳酸の質量消費率(ΔグルコースおよびΔ乳酸)を、PAからPVへの濃度変化に灌流流量を掛けたものとして計算した。肺血管抵抗(PVR)を、PVR=(P
PA−P
PV)/Qとして計算した(式中、Qは灌流流量)。すべてのデータは、平均±標準偏差として、または特段の指示がない限り、ボックスプロットとして提示する。
【0144】
結果
長期間(72時間)ILC条件および結果を、表7に概説している。肺は、培養に先立って約1時間の冷虚血時間を有していた。長時間ILCの間のPA圧力は、灌流および換気の間、器官チャンバ圧力に対して20mmHg以下で維持した。PEEP、呼吸数、経壁圧力、およびI:E比を培養の間に調節して、膨張を維持し、目に見える浮腫の蓄積を低減させた。
【0145】
長期間ILC下の肺は、短期間ILC下で試験した肺(
図11B、y軸スケールを参照)よりも程度は低いものの、O
2およびグルコースの消費と、それに対応するCO
2の生成を示した(
図12A)。それに対応する乳酸の生成も、長期間ILC下の肺において観察された(
図12A)。長期間ILC下の肺の機能性試験によって、72時間(3日間)の培養の持続時間全体で、酸素交換能力が維持されることが明らかになった(
図12B、左側)。機能性試験後のPAおよびPV pO
2値(
図12B、右側)は、PAよりもPVでpO
2が多いこと、また、FiO
2=0.21で平衡化したときと比較して、灌流液のpO
2が全体的に増加することを明らかにしている(0.21のFiO
2に対する平均PA pO
2=144.0±9.78mmHg)。培養時間とともに増加した合計媒体量を新鮮な媒体として、器官チャンバリザーバが低量(<1L)に見えた場合に添加した。一貫した平均PA流量(Q
PA)によって、培養期間の持続時間の間、長期間ILC下で肺の安定したP
PAおよびPVRが生成された(
図12B)。
【0146】
TUNELアッセイにより、統計的に有意でなかった、合計72時間の培養期間後に取った組織サンプルのアポトーシスにおける、対象組織と比較したときのわずかな増加が明らかになった(
図12D、p=0.0692)。H&E染色(
図12E)によって、長期間ILC後の肺構造が維持されることが明らかになった。長期間ILC(
図12E、72時間)後に収集した肺組織はまた、培養前に生検した組織(
図12E、0時間)と比較して、VE−カドヘリン、E−カドヘリン、ZO−1、およびプロSPBの発現および出現を保持した。
【0147】
【表7】
【実施例7】
【0148】
単一のヒト肺の保存(長期72時間)
この実施例は、隔離されたヒト肺をバイオリアクタに接続して、長期間分離肺培養を介してバイオリアクタの機能を実証した、実証実験について記載する。器官チャンバ圧力(
図10A、P
OC)、PA圧力(P
PA)、PV圧力(P
PV)、PEEPチャンバ圧力(P
PEEP)、および気管圧(P
T)を、培養全体を通して監視する。灌流パラメータ、換気パラメータ、およびバイオリアクタイベントのログ収集の制御は、National Instrumentsの小型データ収集(cDAQ)システムを、専用に開発したLabVIEWプログラム(National Instruments、マサチューセッツ州ウーバン)と組み合わせることによって達成される。
【0149】
本発明のシステム内の陰圧換気は、圧力制御され、呼吸数(RR)、吸気呼気(I:E)比、下限器官チャンバ圧力目標(P
OC−Lower)、および上限器官チャンバ圧力目標(P
OC−Upper)という4つのパラメータによって管理される。RRは、各呼吸の長さを決定し、I:E比は、吸気または呼気状態に入る各呼吸の時分割を定義する。P
OC−LowerおよびP
OC−Upperは、吸気および呼気それぞれの間において器官チャンバが維持される空気圧を表す。P
OC−LowerとP
OC−Upperとの差によって、呼吸の大きさ、または肺の外側が晒される圧力範囲が決定する。したがって、PEEPチャンバ圧力に対するこれら目標の位置は、換気中のP
Transmuralに影響する。これらの実験に対して、漸増させた気道が虚脱しないように適切な呼気に対する肺の弾性反跳に依存して、P
OC−UppervはPEEPチャンバ圧力付近に設定し、P
OC−Lowerはそれよりも10〜15mmHg低く設定した。これらのパラメータを、表8にしたがって、膨張を維持し、あらゆる目に見える浮腫の蓄積を低減するように、培養中に調節した。調節は、24時間の期間に3〜7回、媒体サンプリングとほぼ同頻度で行った。
【0150】
【表8】
【0151】
方法
ニューイングランド臓器バンク(NEOB)と連携して、移植に適さないことが分かっている提供ヒト肺を、標準的な手術方式で、心臓が拍動しているドナーから調達した。提供前の胸部X線により、少量の肺底部拡張不全(basilar atelectasis)が示され、動脈酸素張力は100%FiO2で116mmHgであり、ガス交換の損失が示された。肺は、氷に載せて滅菌容器に入れて送達し、到着後すぐにバイオリアクタに載せた。右肺を分離し、PA、PV、および気管にカニューレを挿入し、その後、上述したように72時間の長期間ILC向けに設定した。摘出から再灌流までの冷虚血時間は5.5時間であった。
【0152】
灌流液分析
灌流液(培地)サンプルを、PAの上流およびPVの顆粒から抜き取った。灌流液組成を、CG8+カートリッジ(Abbott)とともに、i−STAT 1 Analyzer(Abbott Point of Care Inc.、ニュージャージー州プリンストン)を使用して、培養期間の間に分析して、pH、PO
2、PCO
2、およびグルコースを測定した。CG4+カートリッジを使用して、長期間ILC実験における乳酸含量を測定した。媒体成分の変化は、PAおよびPVの測定値間の差として表現される。したがって、負の値は減少を指し、正の値は増加を指す。
【0153】
組織学および免疫蛍光法
組織サンプルを、真空下で10%ホルマリン中で一晩固定し、その後、70%エタノールへと移し、パラフィンに埋め込み、染色のために5μmの薄片にした。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を使用して、全体的な形態学を評価した。末端デオキシヌクレオチジル転移酵素dUTPのニック末端標識アッセイ(Promega DeadEnd Fluorometric TUNEL System、Promega Corporation、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、アポトーシスを評価した。組織サンプル1つ当たり6つの無作為範囲について、20倍範囲(約0.3419mm
2)当たりのTUNEL陽性細胞の割合を計算することによって、アポトーシスの定量化を実施した。試験した各肺に対して2つ以上の組織サンプルを定量化に使用した。CellProfilerを使用して、画像毎のTUNEL陽性細胞の数を決定した。
【0154】
組織切片の一次標識付けは、最初に組織切片の脱パラフィン化および再水和を行い、次に圧力鍋の中でクエン酸溶液中において抗原賦活化を行い(抗原アンマスク溶液、クエン酸系、カタログ番号H−3300、Vector Laboratories Inc.、カリフォルニア州バーリンゲーム)、切片をPBS中で洗い、PBS中で30分間、5%のロバ血清を用いて阻害し(カタログ番号S−30−100ML、EMD Millipore、ドイツ国ダルムシュタット)、一次抗体を用いてスライドを終夜(18時間)インキュベートすることによって行った。一次抗体は、VE−カドヘリン(カタログ番号sc−9989、Santa Cruz Biotechnology、テキサス州ダラス)、E−カドヘリン(カタログ番号610181、BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)、ZO−1(カタログ番号61−7300、Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド)、およびプロSPB(カタログ番号AB3430、EMD Millipore)用のものを使用した。一次抗体の二次標識付けは、最初に組織切片をPBSの0.1% Tween中で洗い、次に対応する二次抗体を用いて30分間インキュベートし、PBSの0.1% Tweenを用いて再び洗い、DAPI含有封入剤でスライドを封入(DAPI Fluoromount−G、カタログ番号0100−20、SouthernBiotech、アラバマ州バーミングハム)することによって行った。
【0155】
物理的パラメータの計算
経壁圧力(P
TM)を、P
TM=P
T−P
OCとして計算し、機械的応力を示す測定値として肺に適用して換気を容易にした。正のP
TMは吸気に対応し、負のP
TMは呼気に対応する。器官重量の百分率変化を、ΔW
Organ=(W
Final−W
Initial)/W
Initial×100として計算した。グルコースおよび乳酸の質量消費率(ΔグルコースおよびΔ乳酸)を、PAからPVへの濃度変化に灌流流量を掛けたものとして計算した。肺血管抵抗(PVR)を、PVR=(P
PA−P
PV)/Qとして計算した(式中、Qは灌流流量)。すべてのデータは、平均±標準偏差として、または特段の指示がない限り、ボックスプロットとして提示する。
【0156】
結果
第1の培養ヒト肺は、以前に試験したブタ肺の組と同様に挙動した。培養の間、平均PA圧力は12.10mmHgであり、PEEPは8.38mmHgに設定した。呼吸数は毎分5回に保ち、I:E=1.2、P
TMは12.91〜−4.47mmHg(ΔP
TM=17.38mmHg)であった。酸素およびグルコースの消費を、比較のスケール上で乳酸の産生と並べて提示した(
図13A)。ブタ肺とは異なり、媒体からCO
2が除去される傾向が観察された(
図13A)。酸素交換機能も培養の持続時間を通して維持された(
図13B、左側)。機能静試験後のPAおよびPV pO
2値(
図13B、右側)は、試験したブタ肺と比較して、PAよりもPVでpO
2が大幅に高いこと、また、FiO
2=0.21で平衡化したときと比較して、灌流液のpO
2が全体的に増加することを明らかにしている(0.21のFiO
2に対する平均PA pO
2=145.1mmHg)。リザーバが低量(<1L)に見えた場合に新鮮な媒体をバイオリアクタシステムに添加し、その結果、合計媒体量が培養時間とともに増加した(
図13C、上)。やはり、一貫したQ
PAによって、培養期間の持続時間の間、長期間ILC下で肺の安定したP
PAおよびPVRが生成された(
図13C)。
【0157】
小さく統計的に有意でないアポトーシスの増加も観察された(
図13D、p=0.1352)。組織学的分析によって、天然肺構造が維持されることが明らかになった(
図13E、H&E)。長時間ILC下のヒト肺はまた、VE−カドヘリン、E−カドヘリン、ZO−1、およびプロSPBの発現および出現を保持した(
図13E)。
【実施例8】
【0158】
ラット肺の保存
この実施例は、新しく隔離されたラット肺をバイオリアクタに接続して、バイオリアクタの機能を試験した、実証実験について記載する。
【0159】
方法
ラット肺を、陰圧換気を使用して熱生理学的条件下で保存した。
図14Aに示されるように、主要チャンバ圧力は0〜−8cmH
2Oに調節し、呼吸数は20回/分であった。
【0160】
結果
第1の実験では、5%デキストランを含むKBH(0.6ml/分)を灌流液に添加し(
図14B〜Cに示されるように)、その結果、灌流圧力および動的コンプライアンス(Cdyn)が4時間以内で減少し、肺は完全に浮腫状になった。Cdynは、肺の質の機能的パラメータである。それに加えて、灌流圧力および動的コンプライアンス(Cdyn)は、デキストランを含まないKHBを使用した場合(0.6ml/分)も、6時間以内に減少した。
【0161】
5%デキストランに加えて0.6ml/分のKHBで灌流した、分離肺に関連する生理学的データ(
図15A〜Cに示されるような)を収集した。
図15Aに示されるように、主要チャンバ圧力は0〜−8cmH
2Oに調節し、呼吸数は20回/分であった。
図15Bを参照すると、PA灌流圧力の時間経過が示される。圧力は徐々に減少し、
図15Bに示されるように、動的コンプライアンス(Cdyn)も減少した。この実験では、4時間の灌流後、分離肺は完全に浮腫状であった。Cdynは、1回呼吸量(ml)を最高主要チャンバ陰圧値(CmH2O)で割ったものとして定義した。
図15Cを参照すると、隔離された肺が保存によって破壊または傷害を受けたというエビデンスはない。
図15Cは、灌流後の肺試料をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した結果を示す画像である。左側のパネルは、倍率100倍の対照である。右側のパネルは、倍率100倍の、6時間の灌流後のサンプルである。この画像は、6時間の灌流後の正常な肺構造および細胞の完全性の維持、ならびにバイオリアクタ内の死体肺の換気を示している。
【実施例9】
【0162】
ヒトドナーからの一次肺上皮の分離
この実施例は、一次ヒト肺上皮を分離し増殖させるプロトコルについて記載する。第1の新生仔ラット組織消化プロトコルの適応(プロトコルA)、および第2の、文献から適応したプロトコル(Karp, P.H. et al.,、プロトコルB)。
【0163】
方法
プロトコルA−ラット新生仔の肺/腎臓消化に基づく。タイミング=〜3時間
1.消化媒体を調製する。ディスパーゼ1mg/ml(幹細胞技術)にコラゲナーゼ1mg/ml。
2.(a)周囲肺組織、約1.5インチ(3.84cm)の立方体、または(b)主気道(気管支枝)を50mlファルコンチューブに分布させる。
3.20mlの消化媒体を各チューブに添加する。
4.小型の鋭いはさみを使用して、肺を迅速に切断して小さい細片にする。
5.細片にした肺を消化緩衝液中で37℃で90分間インキュベートする。
6.サンプルを37℃から除去し、組織を一時的に沈殿させる。
7.サンプルから流体を分取し、100μmのフィルタに通す。
8.濾過液を遠心沈殿させる−300xg、5分間。
9.赤血球溶解緩衝液中に再懸濁し、RTで5〜10分間インキュベートする。
10.等量のαMEMを添加して洗浄する。
11.遠心沈殿させる−300xg、5分間。
12.細胞を計数し、培養フラスコに直接培養する。
【0164】
プロトコルB−Mol. Biol. 2002;188:115-37の方法に基づく。タイミング=〜24時間
1.解離溶液を調製する。プロナーゼ(Roche/Boehringer Mannheim、カタログ番号165921)およびデオキシリボヌクレアーゼ1(Sigma、カタログ番号DN−25)。100mLに対して、αMEM 100mL中にプロナーゼ140mgおよびDNアーゼ10mgを溶解する。
2.(a)周囲肺組織、約1.5インチ(3.84cm)の立方体、または(b)主気道(気管支枝)を50mlファルコンチューブに分布させる。
3.20mlの消化媒体を各チューブに添加する。
4.小型の鋭いはさみを使用して、肺を迅速に切断して小さい細片にする。
5.細片にした肺を消化緩衝液中で4℃で24時間インキュベートする。解離の間チューブを時々反転させて、細胞凝集塊を撹拌しばらばらにする。気管および気管支組織は、最短で40時間から最長で96時間を要する。
6.解離を終了するため、10%FBEを含むαMEMを解離溶液に添加する。チューブを数回反転させて、細胞懸濁液を撹拌する。細胞ペレットを特定の気道内で再懸濁させ、未コーティングの組織培養皿上に培養する。懸濁液を最短で1時間またはそれ以上インキュベートして、繊維芽細胞を付着させる。気道上皮細胞は、コラーゲンの前処理をしなければプラスチック面に付着しない。
7.付着しなかった細胞懸濁液をインキュベーション皿から回収し、コーティング済みの皿に移す。
【0165】
プロトコルAおよびプロトコルBによるヒトドナー肺の消化に続いて、細胞を、(1)0.1%ゼラチンまたは(2)0.1mg/mlのコラーゲンIVのどちらかで事前コーティングした培養フラスコ上に培養した。次に、細胞を、(1)DMEM、(2)SAGM、(3)AEpiCM、または(4)BEGM中で成長させた。
【0166】
結果
24時間の培養における細胞の付着および形態学を評価することによって、プレートのコラーゲンIVコーティングと併せたプロトコルBにより、より上皮様のコロニーがもたらされることが示された。これらの培養を7日間継続することにより、これらそれぞれの培養物の拡張能力が実証された。DMEMで培養した細胞を、繊維芽細胞様の個体群によって迅速に過成長させ、これらの培養物を廃棄した。
【0167】
この時点で、細胞を継代し再培養して、拡張能力をさらに評価した。各条件から少量の細胞を、ヒト肺マトリックス切片にも播種して、生体適合性を評価した。4日後の細胞マトリックス培養物にカルセインAM染料を添加することにより、培養物中における高レベルの生存度および細胞生存率が示され、細胞とマトリックスとの間で相互作用が観察された。
【0168】
培養細胞の表現型も、1回の継代の後、11日目の培養物を免疫蛍光染色することによって調査した。異質表現型は、I型肺胞(T1α)、クラーラ細胞(CCSP)、気道上皮(CK5)、基底細胞(p63)、II型肺胞(E−Cad)、および間充織細胞(ビメンチン)の部分集合を表す。
【0169】
他の実施形態
本発明の多数の実施形態について記載してきた。それにもかかわらず、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、様々な改変がなされてもよいことが理解されるであろう。