特許第6829250号(P6829250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6829250半導体加工用粘着テープ、及びそれを用いた半導体チップ又は半導体部品の製造方法
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  • 特許6829250-半導体加工用粘着テープ、及びそれを用いた半導体チップ又は半導体部品の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829250
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】半導体加工用粘着テープ、及びそれを用いた半導体チップ又は半導体部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210128BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20210128BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20210128BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210128BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20210128BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J7/24
   C09J133/06
   C09J11/06
   C09J175/14
   H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-511962(P2018-511962)
(86)(22)【出願日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2017013424
(87)【国際公開番号】WO2017179439
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2020年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-81685(P2016-81685)
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柴山 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】田中 智章
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−069185(JP,A)
【文献】 特開2012−039053(JP,A)
【文献】 特開2011−253833(JP,A)
【文献】 特開2012−191098(JP,A)
【文献】 特開2009−164556(JP,A)
【文献】 特開2014−063803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
H01L21/301;21/67−21/683;21/78
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニルフィルム上に粘着剤層を有する半導体加工用粘着テープであって、
前記塩化ビニルフィルムのヤング率が200〜500MPaであり、
前記粘着剤層が、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有し、
該(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、光重合性化合物20質量部〜150質量部、硬化剤0.1質量部〜10質量部、及び光重合開始剤0.1質量部〜10質量部を含有し、
前記光重合性化合物が、イソホロンジイソシアネート骨格又はトリレンジイソシアネート骨格を有し、重量平均分子量が1,000〜10,000であり、炭素−炭素二重結合数が6〜15であるウレタンアクリレートである、半導体加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記硬化剤が、イソシアネート基又はエポキシ基を有する、請求項1に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項3】
半導体ウエハ又は基板とダイシングフレームとに請求項1又は2に記載の半導体加工用粘着テープを貼り付ける貼り付け工程、
前記半導体ウエハ又は前記基板をダイシングして半導体チップ又は半導体部品を得るダイシング工程、
前記半導体加工用粘着テープに紫外線を照射する光照射工程、
前記半導体加工用粘着テープを引き伸ばすエキスパンド工程、及び
前記半導体加工用粘着テープから前記半導体チップ又は前記半導体部品をピックアップするピックアップ工程、を有する、半導体チップ又は半導体部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体加工用粘着テープ、及びそれを用いた半導体チップ又は半導体部品の製造方法に関する。
【0002】
半導体加工用粘着テープは、2本の搬送ロールの回転により搬送されることがあるが、その際、粘着層の粘着力が大き過ぎると、ロールに密着し、ロールに巻きつきが生じることで(以下マウンターという)、スムーズな搬送ができないことがあった。また、搬送された粘着テープは、回路が形成された半導体ウエハ又は基板に貼り合わされ、素子小片に切断(ダイシング)、粘着テープの延伸(エキスパンディング)、粘着テープからの素子小片の剥離(ピックアップ)工程に移行される。これらの工程で使用される粘着テープは、ダイシング時には切断される素子小片(チップ)に対して充分な粘着力を有し、かつピックアップ時には糊残りしない程度に粘着力が減少していることが望まれる。
【0003】
上記目的を達成するために、紫外線と電子線の両方又は紫外線と電子線のいずれか一方の活性光線に対し透過性を有する基材フィルムに、紫外線等により重合硬化反応をする粘着剤層を塗布したものが開示されている(特許文献1、2参照)。この粘着テープは、ダイシング工程後に紫外線等を粘着剤層に照射し、粘着剤層を重合硬化させて粘着力を低下させた後、切断されたチップをピックアップする工程に使用される。
【特許文献1】国際公開第2011/077835号
【特許文献2】特開2006−049509号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明は、複数本の搬送ロールの回転により搬送される場合でも密着による搬送ロールへの過度の巻きつきを抑制し、かつピックアップ工程において容易に剥離できる半導体加工用粘着テープ、及びそれを用いた半導体チップ又は半導体部品の製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)塩化ビニルフィルム上に粘着剤層を有する半導体加工用粘着テープであって、
前記塩化ビニルフィルムのヤング率が200〜500MPaであり、
前記粘着剤層が、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有し、
該(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、光重合性化合物20質量部〜150質量部、硬化剤0.1質量部〜10質量部、及び光重合開始剤0.1質量部〜10質量部を含有し、
前記光重合性化合物が、イソホロンジイソシアネート骨格又はトリレンジイソシアネート骨格を有し、重量平均分子量が1,000〜10,000であり、炭素−炭素二重結合数が6〜15であるウレタンアクリレートである、半導体加工用粘着テープ。
(2)前前記硬化剤が、イソシアネート基又はエポキシ基を有する、(1)に記載の半導体加工用粘着テープ。
(3)半導体ウエハ又は基板とダイシングフレームとに(1)又は(2)に記載の半導体加工用粘着テープを貼り付ける貼り付け工程、
前記半導体ウエハ又は前記基板をダイシングして半導体チップ又は半導体部品を得るダイシング工程、
前記半導体加工用粘着テープに紫外線を照射する光照射工程、
前記半導体加工用粘着テープを引き伸ばすエキスパンド工程、及び前記半導体加工用粘着テープから前記半導体チップ又は前記半導体部品をピックアップするピックアップ工程、を有する、半導体チップ又は半導体部品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
以上のような本発明による半導体加工用粘着テープは、複数本の搬送ロールの回転により搬送される場合でも密着による搬送ロールへの過度な巻きつきを抑制し、かつピックアップ工程において容易に剥離できる。この半導体加工用粘着テープを用いた半導体チップ又は半導体部品の製造方法は、半導体チップ又は半導体部品を容易にピックアップできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】2本の搬送ロールの回転によるテープの搬送についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。また、「半導体チップ」とは、シリコンウエハ等を個片化したチップのことを指し、「半導体部品」とは、チップをパッケージ化したものを個片化したものを指す。
【0009】
以下、本発明の実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
[半導体加工用粘着テープ]
半導体加工用粘着テープは、塩化ビニルフィルム上に粘着剤層を有する。以下、半導体加工用粘着テープの各部材について説明する。
【0010】
<塩化ビニルフィルム>
塩化ビニルフィルムの材料としては、塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)、及び必要に応じて可塑剤及び安定剤等が用いられ、これらを混練した後に製膜したものが使用される。塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルとエチレン、プロピレン、アクリルニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等の単量体との共重合体;ポリ塩化ビニルにMBS、ABS、ニトリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレンビニルアルコール−塩化ビニルグラフト共重合体、各種可塑剤を添加した改質ポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができる。
【0011】
可塑剤としては、例えばフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤、フタル酸ポリエチレングリコールジエステル等のポリエステル系可塑剤を用いることができる。可塑剤の添加量によって、塩化ビニルフィルムのヤング率を調整することができる。塩化ビニルフィルムのヤング率は、200MPa〜500MPaであり、250MPa〜400MPaであることが好ましい。この範囲のヤング率を満たすための可塑剤の添加量としては、例えば、塩化ビニル樹脂100質量部に対して23質量部〜30質量部とすることができる。ヤング率が200MPaより小さいとテープ貼りあわせ時にロールへ密着しやすくなり、ヤング率が500MPaより大きいと、ピックアップ時にピックアップしようとした半導体チップの隣接する半導体チップがピン突き上げの衝撃でばらけてしまう、いわゆるチップばらけが発生する。なお、ヤング率は、JIS K 7113(プラスチックフィルム及びシートの引張試験方法)の引張試験方法に準拠して測定した値である。
【0012】
安定剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ系安定剤、バリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、亜鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系(Ca−Zn系)やバリウム−亜鉛系(Ba−Zn系)等の複合安定剤、脂肪酸カルシウム、脂肪酸亜鉛、脂肪酸バリウム等の金属石ケン、ハイドロタルサイト、β−ジケトン化合物及びグリシジルメタクリレートとメタクリル酸メチルとの共重合体等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。安定剤の含有量は、特に限定されず、塩化ビニル樹脂100質量部に対して1質量部〜15質量部とすることができる。
【0013】
塩化ビニル樹脂を製膜する工法としては、特に限定されず、カレンダー製膜法、Tダイ加工法を用いることができる。
【0014】
塩化ビニルフィルムの厚さは、30μm〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0015】
塩化ビニルフィルムには、帯電防止処理を施してもよい。帯電防止処理としては、塩化ビニルフィルムに帯電防止剤を配合する処理、塩化ビニルフィルム表面に帯電防止剤を塗布する処理やコロナ放電による処理がある。
【0016】
帯電防止剤としては、例えば四級アミン塩単量体等を用いることができる。四級アミン塩単量体としては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、p−ジメチルアミノスチレン四級塩化物、及びp−ジエチルアミノスチレン四級塩化物が挙げられる。このうち、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩化物が好ましい。
【0017】
ダイシング後のエキスパンド性を向上させるために、塩化ビニルフィルムの粘着剤非接触面に滑り剤を塗付することや、塩化ビニルフィルムに滑り剤を練り込むことができる。
【0018】
滑り剤は、粘着テープとエキスパンド装置の摩擦係数を低下させる物質であれば特に限定されず、例えばシリコーン樹脂や(変性)シリコーン油等のシリコーン化合物、フッ素樹脂、六方晶ボロンナイトライド、カーボンブラック及び二硫化モリブデン等が挙げられる。これらの摩擦低減剤は複数の成分を混合してもよい。電子部品の製造はクリーンルームで行われるため、シリコーン化合物又はフッ素樹脂を用いることが好ましい。シリコーン化合物の中でも特にシリコーンマクロモノマー単位を有する共重合体は帯電防止剤との相溶性が良く、帯電防止性とエキスパンド性のバランスが図れるため、好適に用いられる。
【0019】
滑り剤及び帯電防止剤の使用方法は特に限定されないが、例えば塩化ビニルフィルムの片面に粘着剤を塗布し、その裏面に滑り剤と帯電防止剤の両方もしくは一方を塗布してもよく、滑り剤と帯電防止剤の両方もしくはいずれか一方を塩化ビニルフィルムの樹脂に練り込んでシート化してもよい。
【0020】
塩化ビニルフィルムは、片面に粘着剤を積層し、他方の面は平均表面粗さ(Ra)が0.3μm〜1.5μmのエンボス面とすることが可能である。エキスパンド装置の機械テーブル側にエンボス面を設置することにより、ダイシング後のエキスパンド工程で塩化ビニルフィルムを容易に拡張する(引き伸ばす)ことができる。
【0021】
<粘着剤層>
粘着剤層は、粘着剤を用いて形成された層であり、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体、光重合性化合物、硬化剤及び光重合開始剤を含有する。すなわち、粘着剤層は、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体、光重合性化合物、硬化剤及び光重合開始剤を含有する接着剤を用いて形成することができる。以下、粘着剤層の各部材について説明する。
【0022】
((メタ)アクリル酸エステル共重合体)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有しない。なお、以下「ヒドロキシル基とカルボキシル基を有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体」を、単に「(メタ)アクリル酸エステル共重合体」ともいう。ヒドロキシル基とカルボキシル基を有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、メチル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を含有しないアクリル酸エステルの共重合体、もしくはこれらモノマーと共重合可能な不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル)を共重合させたコポリマである。カルボキシル基及びヒドロキシル基を含有しないので、従来の粘着テープではピックアップ工程において容易に剥離できない場合があった、自動化された加工装置を用いた場合でも、ピックアップをする際に容易に剥離できる。
【0023】
ヒドロキシル基及びカルボキシル基を含有しない(メタ)アクリル重合体のエステルモノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
(光重合性化合物)
光重合性化合物は、イソホロンジイソシアネート骨格又はトリレンジイソシアネート骨格を有するウレタンアクリレートである。ウレタンアクリレートとしては、ウレタンアクリレートオリゴマが用いられる。ウレタンアクリレートオリゴマは、ポリエステル型又はポリエーテル型等のポリオール化合物と多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる。
【0025】
末端イソシアネートウレタンプレポリマを合成する際のポリオール化合物には、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。多価イソシアネート化合物には、イソホロンジイソシアネート骨格又はトリレンジイソシアネート骨格を有するウレタンアクリレートを得るために、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらの三量体、及びトリメチロールプロパンとのアダクト体を用いることができる。
【0026】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートには、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を用いることができる。
【0027】
光重合性化合物の配合量は、上記した(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して20質量部〜150質量部であり、60質量部〜110質量部がより好ましい。光重合性化合物の配合量が20質量部より少ないと、光照射後の粘着テープの剥離性が低下し、半導体チップのピックアップ不良を生じやすくなる。一方、光重合性化合物の配合量が150質量部より多いと、光照射工程により粘着剤の弾性率が過剰に高くなり、ピックアップ工程において、チップばらけが生じてしまい、生産性低下の要因となる。
【0028】
光重合性化合物は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜10,000であり、3,000〜8,000がより好ましい。重量平均分子量が1,000より小さいとロールへの密着性が高くなり、また重量平均分子量が10,000より大きいとダイシング時にチップが剥がれてしまう、いわゆるチップ飛びが発生する。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により求めることができる。
【0029】
光重合性化合物の炭素−炭素二重結合数は6〜15であり、9〜15がより好ましい。炭素−炭素二重結合数が6より少ないと十分に粘着力が低下せずピックアップ不良が発生する。炭素−炭素二重結合数が6〜15である構造にするためには、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの多価イソシアネート化合物とヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの組み合わせにより調整できる。多価イソシアネート化合物が、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のイソシアネート基を2つ有する場合には、ヒドロキシル基を3つ以上有する(メタ)アクリレートであるペンタエリスリトールトリアクリレートやジペンタエリスリトールペンタアクリレートが用いられる。また、上記イソシアネートの三量体もしくはアダクト体等のイソシアネート基を3つ有する場合には、ヒドロキシル基を2つ有する(メタ)アクリレートであるグリシドールジ(メタ)アクリレートも用いることができる。炭素−炭素二重結合数が15より多いものは入手しにくく高価である。なお、炭素−炭素二重結合数は、滴定法により測定することができる。
【0030】
(硬化剤)
硬化剤としては、イソシアネート基又はエポキシ基を有することが好ましく、多官能イソシアネート硬化剤、多官能エポキシ硬化剤が挙げられる。多官能イソシアネート硬化剤としては、例えば芳香族ポリイソシアネート硬化剤、脂肪族ポリイソシアネート硬化剤、脂環族ポリイソシアネート硬化剤があり、それらの三量体又はトリメチロールプロパンとのアダクト体を用いることができる。
【0031】
芳香族ポリイソシアネート硬化剤は、特に限定されず、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4’−トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネート硬化剤は、特に限定されず、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
脂環族ポリイソシアネート硬化剤は、特に限定されず、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、及び1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0034】
三量体又はトリメチロールプロパンとのアダクト体は、特に限定されず、2,4−トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体が好適に用いられる。
【0035】
多官能エポキシ硬化剤は、主にエポキシ基を2以上、第3級窒素原子を1以上有する化合物をいい、N,N−グリシジルアニリン、N,N−グリシジルトルイジン、m−N,N−グリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、p−N,N−グリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’−ペンタグリシジルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0036】
硬化剤の配合量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部であり、好ましくは1質量部〜9質量部である。硬化剤の配合量が0.1質量部より少ないと、チッピング(チップの欠け)及びマウンター適性(搬送ロールへの巻きつきの程度)に課題が生じやすくなる。一方、硬化剤の配合量を10質量部より多いと粘着力の不足でチップばらけを生じてしまい、生産性低下の要因となる。
【0037】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、特に限定されないが、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類又はキサントン類等が用いられる。
【0038】
ベンゾインとしては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等がある。
アセトフェノン類としては、例えばベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−アセトフェノン、2,2―ジエトキシ−2−アセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等がある。
アントラキノン類としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等がある。
チオキサントン類としては、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等がある。
ケタール類としては、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルメタール、ベンジルジフエニルサルフアイド、テトラメチルチウラムモノサルフアイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン等がある。
【0039】
光重合開始剤の配合量は、上記した(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して0.1質量部〜10質量部であり、好ましくは、1質量部〜9質量部である。光重合開始剤の配合量が0.1質量部より少ないと、光照射後の粘着テープからの剥離性が低下し、半導体チップのピックアップ不良を生じやすくなる。一方、光重合開始剤の配合量が10量部より多いと、UV照射後の粘着力が過剰に低下し、チップばらけが発生する。
【0040】
光重合開始剤には、必要に応じて従来公知の光重合促進剤1種又は2種以上を組合せて併用してもよい。光重合促進剤には、安息香酸系や第三級アミン等を用いることができる。第三級アミンとしては、トリエチルアミン、テトラエチルペンタアミン、ジメチルアミノエーテル等が挙げられる。
【0041】
(粘着付与樹脂)
粘着剤層を構成する粘着剤には、粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂を完全又は部分水添されたテルペンフェノール樹脂を添加してもよい。
【0042】
(添加剤等)
粘着剤には、例えば、軟化剤、老化防止剤、充填剤、導電剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤等の各種添加剤を添加してもよい。添加剤の含有量は、特に限定されず、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0質量部〜5質量部とすることができる。
【0043】
粘着剤層の厚みは、5μm〜15μmが好ましい。粘着剤層が15μmより厚いとチッピングが発生しやすくなる。また、粘着剤層が5μmより薄いと粘着力が低くなり過ぎ、ダイシング時のチップ保持性が低下しチップ飛びが発生する場合や、リングフレームとシートとの間で剥離が生じる場合がある。
【0044】
<半導体加工用粘着テープ>
本実施形態に係る半導体加工用粘着テープは、2本の搬送ロールの回転により搬送する際、密着によるロールへの過度の巻きつきが生ぜず、且つ自動化された加工装置を用いても、ピックアップ工程において容易に剥離可能である。
【0045】
<半導体加工用粘着テープの製造>
塩化ビニルフィルム上に粘着剤層を塗布して半導体加工用粘着テープとする。その方法としては、例えばグラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター又はロールコーターといったコーターで塩化ビニルフィルム上に粘着剤を直接塗布する方法や、剥離フィルムに粘着剤を塗布/乾燥後に塩化ビニルフィルムに貼り合わせる方法がある。凸板印刷、凹板印刷、平板印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等で塩化ビニルフィルム上に粘着剤を印刷してよい。
【0046】
[半導体チップ又は半導体部品の製造方法]
半導体チップ又は半導体部品の製造方法は、半導体加工用粘着テープの貼り付け工程、ダイシング工程、光照射工程、エキスパンド工程、及びピックアップ工程、をこの順で有する。
【0047】
(1)貼り付け工程
貼り付け工程では、半導体加工用粘着テープを、半導体ウエハ又は基板と、ダイシングフレーム(リングフレーム)とに貼り付ける。貼り付け工程は、例えば、半導体ウエハ又は基板を半導体加工用粘着テープに貼り付けた後、その半導体加工用粘着テープをリングフレームに貼り付けて固定する工程とすることができる。ウエハは、シリコンウエハ、ガリウムナイトライドウエハ、炭化ケイ素ウエハあるいはサファイアウエハ等の従来汎用のウエハであってよい。基板は樹脂でチップを封止したパッケージ基板、LEDパッケージ基板、セラミック基板等の汎用の基板であってよい。
【0048】
(2)ダイシング工程
ダイシング工程では、シリコンウエハ等をダイシングして半導体チップ又は半導体部品を得る。例えば、ダイシングブレード(ダイヤモンド製の円形回転刃等)を高速回転させ、必要に応じて純水等で冷却及び切削屑の洗い流しを行いながら、半導体ウエハ又は基板を切断して半導体チップ又は半導体部品を得る。
【0049】
(3)光照射工程
光照射工程では、塩化ビニルフィルム側から光硬化型粘着剤層に紫外線等の活性光線を照射する。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ブラックライトを用いることができる。また、紫外線に代えて電子線を用いてもよく、電子線の光源としてはα線、β線、γ線を用いることができる。
【0050】
光照射により粘着剤層は三次元網状化して硬化し、粘着剤層の粘着力が低下する。本実施形態に係る半導体加工用粘着テープは、加温してもウエハ等に過度に密着することがないため、紫外線等の照射により十分な接着力の低下が得られる。
【0051】
(4)エキスパンド工程、(5)ピックアップ工程
エキスパンド工程では、半導体チップ同士又は半導体部品同士の間隔を広げるため粘着テープを引き伸ばし、チップ又は部品をニードルピン等で突き上げる。その後、チップ又は部品を真空コレット又はエアピンセット等で吸着し、半導体加工用粘着テープの粘着剤層から剥離してピックアップする(ピックアップ工程)。本実施形態に係る粘着テープでは、紫外線等の照射により粘着剤の弾性率を維持しつつ十分な接着力の低下が得られているため、チップ又は部品と粘着剤層との間の剥離が容易となり、ピックアップが良好であり、糊残り等の不良が生じることもない。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1に係る粘着テープは、次の処方で作製した。粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体a(AR−72L、日本ゼオン社製)100質量部に光重合性化合物a(UN‐3320HS、根上工業社製)85質量部、多官能イソシアネート硬化剤a(コロネートL−45E、東ソー社製)5質量部、光重合開始剤a(Irgacure651、BASF社製)5質量部を含有した粘着剤溶液を、剥離フィルム上にコンマコーターにて乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布して粘着剤層を形成し、該粘着剤層を塩化ビニルフィルムb(FUZB−2950、アキレス社製、厚さ80μm)上に積層することで、粘着テープを得た。
【0053】
(実施例2〜16、比較例1〜12)
表1及び2の処方とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜16、比較例1〜12の粘着テープを得た。
【0054】
表1及び2中の(メタ)アクリル酸エステル重合体、光重合性化合物、硬化剤及び光重合開始剤についての数値は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を100質量部としたときの質量部等を示す。また、塩化ビニルフィルム、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、光重合性化合物、硬化剤及び光重合開始剤の詳細は、以下の通りである。
【0055】
<塩化ビニルフィルム>
塩化ビニルフィルムa:GM−311(ダイヤプラスフィルム社製)、ヤング率:110MPa
塩化ビニルフィルムb:FUZB−2950(アキレス社製)、ヤング率:200MPa
塩化ビニルフィルムc:FUZB−2850(アキレス社製)、ヤング率:260MPa
塩化ビニルフィルムd:FUZB−2650(アキレス社製)、ヤング率:350MPa
塩化ビニルフィルムe:FUZB−2550(アキレス社製)、ヤング率:450MPa
【0056】
<粘着剤層>
((メタ)アクリル酸エステル共重合体)
a:AR−72L(日本ゼオン社製)、n−ブチルアクリレート15質量%、エチルアクリレート70質量%、2−メトキシエチルアクリレート15質量%の共重合体、Tg:−32.0℃、重量平均分子量150万、ヒドロキシル基、カルボキシル基なし)
b:n−ブチルアクリレート14質量%、エチルアクリレート70質量%、2−メトキシエチルアクリレート15質量%、アクリル酸1質量%の共重合体、Tg:−30.9℃、重量平均分子量150万、アクリル酸由来のカルボキシル基あり
c:n−ブチルアクリレート14質量%、エチルアクリレート70質量%、2−メトキシエチルアクリレート15質量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート1質量%の共重合体、Tg:−31.6℃、重量平均分子量150万、2−ヒドロキシエチルアクリレート由来のヒドロキシル基あり
【0057】
(光重合性化合物)
a:UN−3320HS(根上工業社製)、イソシアネート骨格:イソホロンジイソシアネート三量体、炭素−炭素二重結合数:15、重量平均分子量5,000、イソホロンジイソシアネート骨格あり
b: 2,4−トリエンジイソシアネートにジペンタエリスリトールペンタアクリレートを1:2のモル比で反応させたウレタンアクリレートオリゴマ、イソシアネート骨格:2,4−トリレンジイソシアネート、炭素―炭素二重結合数:10、重量平均分子量5,000、トリエンジイソシアネート骨格あり
c:UN−904(根上工業社製)、イソシアネート骨格:ヘキサメチレンジイソシアネート、炭素−炭素二重結合数:10、重量平均分子量5,000、イソホロンジイソシアネート及びトリエンジイソシアネート骨格なし
d:UF−8001G(共栄社化学社製)、イソシアネート骨格:イソホロンジイソシアネート単量体、炭素−炭素二重結合数:2、重量平均分子量4,500、イソホロンジイソシアネート骨格あり
e:2,4−トリエンジイソシアネートにペンタエリスリトールトリアクリレートを1:2のモル比で反応させたウレタンアクリレートオリゴマ
イソシアネート骨格:2,4−トリレンジイソシアネート、炭素−炭素二重結合数:6、重量平均分子量:1,000、トリエンジイソシアネート骨格あり
f:UN−905(根上工業社製)、イソシアネート骨格:イソホロンジイソシアネート三量体、炭素−炭素二重結合数:15、重量平均分子量:40,000〜200,000、イソホロンジイソシアネート骨格あり
【0058】
(硬化剤)
a:コロネートL−45E(東ソー社製)、2,4−トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体
b:E−5XM(綜研化学社製)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)
(光重合開始剤)
a:IRGACURE651(BASF社製)、ベンジルジメチルケタール
b:IRGACURE127(BASF社製)、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン
【0059】

【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
<評価>
評価は、次のとおり実施した。
(1)ヤング率測定方法
本発明において、ヤング率は、JIS K 7113(プラスチックフィルム及びシートの引張試験方法)の引張試験方法に準拠した下記条件で測定した。なお、ヤング率は、引張応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて式Em=Δσ/Δεで規定されるものであって、機械加工方向(MD)における測定値と、該機械加工方向に直交する横断方向(TD)における測定値との平均値である。ここで、Em:ヤング率(引張弾性率,Pa)、Δσ:直線状の2点間の元の平均断面積による応力の差(Pa)、Δε:同じ2点間のひずみの差である。
装置:RTG1210(オリエンテック社製)
幅:20mm
チャック間距離:50mm
引張速度:5mm/min
【0062】
(2)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、測定した。
装置:GPC−8020 SEC システム(東ソー社製)
カラム:TSK Guard HZ−L + HZM−N 6.0×150mm×3
流量:0.5ml/min
検出器:RI−8020
濃度:0.2wt/Vol%
注入量:20μL
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
溶媒:THF
検量線:標準ポリスチレン(PL社製)を用いて作成
重量平均分子量(Mw):ポリスチレン換算値
【0063】
(3)チッピング、チップ保持性、ピックアップ性及びマウンター適性の評価
半導体加工用粘着テープを直径8インチ×厚み0.15mmのシリコンウエハ及びリングフレームに貼り合わせ、ダイシング、ピックアップを行った。
【0064】
ダイシング工程の条件は以下のとおりとした。
ダイシング装置:DISCO社製DAD341
ダイシングブレード:DISCO社製NBC−ZH205O−27HEEE
ダイシングブレード形状:外径55.56mm、刃幅35μm、内径19.05mm
ダイシングブレード回転数:40、000rpm
ダイシングブレード送り速度:100mm/秒
ダイシングサイズ:1.0mm角
粘着テープへの切り込み量:30μm
切削水温度:25℃
切削水量:1.0リットル/分
【0065】
光照射工程は、ウシオ電機社製UVC−4800−4を用いて、波長365nmの照度が280mW/cm、積算照射量150mJ/cmで照射した。
【0066】
ピックアップ工程の条件は以下の通りとした。
ピックアップ装置:キヤノンマシナリー社製CAP−300II
エキスパンド量:8mm
ニードルピン形状:70μmR
ニードルピン数:1本
ニードルピン突き上げ高さ:0.5mm
【0067】
チッピング等の評価は以下のとおり行った。
(3−1)チッピング
チッピングは、ピックアップしたチップを無作為に50個選択し、チップの裏面の4辺を500倍の顕微鏡にて観察し、最大の欠けの大きさについて以下の基準により評価した。
◎(優):最大の欠けの大きさが25μm未満
○(良):最大の欠けの大きさが25μm以上50μm未満
×(不可):最大の欠けの大きさが50μm以上
【0068】
(3−2)チップ保持性
チップ保持性は、ダイシング工程後において、半導体チップが粘着シートに保持されている半導体チップの残存率(個数)に基づき、以下の基準により評価した。
◎(優):チップ飛びが5%未満
○(良):チップ飛びが5%以上10%未満
×(不可):チップ飛びが10%以上
【0069】
(3−3)ピックアップ性
ピックアップ性は、ピックアップ工程において、半導体チップがピックアップできた率(個数)に基づき、以下の基準により評価した。
◎(優):チップのピックアップ成功率が95%以上
○(良):チップのピックアップ成功率が80%以上95%未満
×(不可):チップのピックアップ成功率が80%未満
【0070】
(3−4)マウンター適性
マウンター適性は、1kPaで密着させた直径5cmのフッ素樹脂系ロール1とゴムロール2の間に、粘着層をフッ素樹脂系ロール側に配置した粘着テープ3を1m/秒で搬送させた際の巻きつきで評価した(図1参照)。なお、本評価は、室温23±2℃湿度50±2%の室内で実施した。
◎(優):テープの巻きつきがフッ素樹脂系ロールの円周の1/4未満
○(良):テープの巻きつきがフッ素樹脂系ロールの円周の1/4以上1/3未満
×(不可):テーの巻きつきがフッ素樹脂系ロールの円周の1/3以上
【0071】
(3−5)総合判定
上記のチッピングからマウンター適性までの評価において、最も悪い評価結果を総合判定とした。
【0072】
表1及び2の結果から、実施例1〜12の半導体加工用粘着テープは、テープマウント時のマウンター適性が良好であり、ダイシング工程でのチップ飛び及びチッピングを抑制でき、且つピックアップ工程においても容易に剥離できることが分かった。なお、比較例は、下記のとおり、不良であった。
比較例1は、塩化ビニルフィルムのヤング率が低いため、チッピング、ピックアップ性、マウンター適性に不良が生じたと考えられる。
比較例2、3は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体にカルボキシル基又は、ヒドロキシル基を含有するため、ピックアップ性に不良が生じたと考えられる。
比較例4は、光重合性化合物の質量部数が少なすぎたため、ピックアップ性、チップ保持性に不良が生じたと考えられる。
比較例5は、光重合性化合物の質量部数が過剰すぎたため、チッピング、ピックアップ性、マウンター適性に不良が生じたと考えられる。
比較例6は、光重合性化合物が有するイソシアネート骨格がヘキサメチレンジイソシアネートであるため、マウンター適性に不良が生じたと考えられる。
比較例7は、光重合性化合物の炭素−炭素二重結合数が少ないためピックアップ性に不良が生じたと考えられる。
比較例8は、光重合性化合物の重量平均分子量が適正でなかったため、チップとの密着性が悪く、チップ保持性に不良が生じたと考えられる。
比較例9は、硬化剤の質量部数が少なすぎたため、チッピング、マウンター適性に不良が生じたと考えられる。
比較例10は、硬化剤の質量部数が過剰すぎたため、チップ保持性に不良が生じたと考えられる。
比較例11は、光重合開始剤の質量部数が少なすぎたため、ピックアップ性に不良が生じたと考えられる。
比較例12は、光重合開始剤の質量部数が過剰すぎたため、ピックアップ性に不良が生じたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る粘着テープによれば、粘着剤面とロールが接触する加工装置においても、ロールへ密着し難く、且つ自動化された加工装置を用いても、ピックアップ工程において容易に剥離できる。したがって、本発明に係る粘着テープは、ダイシング、ピックアップ等を行って製造される半導体チップ又は半導体部品の製造に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
1 フッ素樹脂系ロール
2 ゴムロール
3 半導体加工用粘着テープ
4 巻きつきにより生ずるマウンター
図1