特許第6829307号(P6829307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6829307インモールド成形用ラベル及びラベル付き樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829307
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】インモールド成形用ラベル及びラベル付き樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/04 20060101AFI20210128BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20210128BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20210128BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20210128BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210128BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   G09F3/04 Z
   G09F3/02 A
   B29C45/14
   B65D23/00 H
   B32B27/00 E
   B32B27/32 Z
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-509435(P2019-509435)
(86)(22)【出願日】2018年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2018014000
(87)【国際公開番号】WO2018182026
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-72025(P2017-72025)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 綱
【審査官】 堀川 あゆ美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/054725(WO,A1)
【文献】 特開昭62−037189(JP,A)
【文献】 特開平07−144486(JP,A)
【文献】 特開2014−224882(JP,A)
【文献】 特開2004−268571(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0148132(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0134110(US,A1)
【文献】 特開平8−305289(JP,A)
【文献】 特開平8−254956(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/062214(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0203166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/04
B29C 45/14
B32B 27/00
B32B 27/32
B65D 23/00
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含有する基材層(A)と、
ポリエチレンイミン系重合体を含むインク受容層(B)と、
ポリエチレン系樹脂を主成分とする印刷層(C)と
をこの順に有するインモールド成形用ラベルであって、
前記印刷層(C)は、インモールド成形の際に樹脂成形品を構成する溶融樹脂と接触し、溶融することで、樹脂成形品の壁面と前記インモールド成形用ラベルとの貼着に寄与する、
インモールド成形用ラベル。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂がエチレン系共重合体である、請求項1に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項3】
前記エチレン系共重合体が、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、またはエチレン・アルキルテレフタレート共重合体である、請求項2に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項4】
前記エチレン系共重合体が、エチレン・メタクリル酸共重合体である、請求項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項5】
前記エチレン系共重合体中のエチレン単位の含有量が40〜90質量%である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂およびポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項7】
前記基材層(A)のインク受容層(B)が設けられている方とは反対の面に、さらに第2の印刷層(c)、及び第2のインク受容層(b)をこの順に含む請求項1〜のいずれか1項に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のインモールド成形用ラベルをインモールド成形により樹脂成形品に貼着一体化したラベル付き樹脂成形品。
【請求項9】
前記樹脂成形品がポリエチレン系樹脂、ポリスチレン樹脂より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、請求項に記載のラベル付き樹脂成形品。
【請求項10】
熱可塑性樹脂を含有する基材層(A)と、ポリエチレンイミン系重合体を含むインク受容層(B)と、ポリエチレン系樹脂を主成分とする印刷層(C)とをこの順に有するインモールド成形用ラベルを、前記印刷層(C)が樹脂成形品を構成する溶融樹脂と接触し溶融することで、樹脂成形品の壁面に貼着一体化した、ラベル付き樹脂成形品であって、
前記ラベル付き樹脂成形品から前記インモールド成形用ラベルを剥離すると基材層(A)とインク受容層(B)間の界面またはインク受容層(B)と印刷層(C)との界面で剥離し、インモールド成形用ラベルを剥離した後の樹脂成形品表面に少なくとも印刷層(C)を有する、ラベル付き樹脂成形品。
【請求項11】
熱可塑性樹脂を含有する基材層(A)と、ポリエチレンイミン系重合体を含むインク受容層(B)と、ポリエチレン系樹脂を主成分とする印刷層(C)とをこの順に有するインモールド成形用ラベルを、前記印刷層(C)が樹脂成形品を構成する溶融樹脂と接触し溶融することで、樹脂成形品の壁面に貼着一体化した、ラベル付き樹脂成形品であって、
前記ラベル付き樹脂成形品から前記インモールド成形用ラベルを剥離すると基材層(A)とインク受容層(B)間の界面またはインク受容層(B)と印刷層(C)との界面で剥離し、インモールド成形用ラベルを剥離した後の樹脂成形品表面に少なくとも印刷層(C)を有し、
前記樹脂成形品がポリエチレン系樹脂、ポリスチレン樹脂より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、ラベル付き樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成形用ラベル及びそのラベルが貼着したラベル付き樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品へのラベル貼付の手法の一つとして、インモールド成形が用いられている。インモールド成形では、樹脂成形品を金型内で成形する際に、金型の内側にラベルを予め配置して、溶融した樹脂の成形と同時に樹脂成形品へのラベルの貼着を行う。インモールド成形で用いられるラベルは、インモールド成形用ラベルと称されており、装飾性や意匠性の観点から、インモールド成形用ラベルには印刷が施されることで印刷層が形成されている。
【0003】
インモールド成形においては、樹脂成形品を構成する樹脂が溶融した状態で、ラベルを構成する樹脂フィルムに接触する。そして、ラベルと樹脂成形品とが貼着した後、冷却固化されることにより、ラベルと樹脂成形品とが貼着一体化したラベル付き容器を成形する。このため、樹脂成形品に対するラベルの段差が抑えられ、ラベルが確実に貼着した容器を成形することができる。
【0004】
前記インモールド成形用ラベルにおいては、樹脂成形品に貼着した後そのラベルを構成する層の一部を剥離する技術についてもこれまでに種々提案されている。樹脂成形品に貼着したラベルの一部が剥離可能となることによって、もともとラベルの表面に印刷された印刷情報と、ラベルの一部を剥離した後に現れる印刷情報とを、剥離の前後でそれぞれ異なるように表示させることが可能になるなど、意匠性に優れたインモールド成形用ラベルを提供することができる。
【0005】
このような技術として、例えば、特許文献1には、印刷された複数枚の樹脂フィルムを剥離可能な紫外線硬化型及び/又は電子線硬化型の擬似接着樹脂層を介して積層したインモールド成形用ラベルが開示されている。また、特許文献2には、熱可塑性樹脂を含む基層(A)と、層間剥離を可能にする層(B)と、ヒートシール層(C)とを、この順に含むインモールド成形用ラベルが提案されている。ここでは層間剥離を可能にする層(B)自体の破壊によりラベルを剥離することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2005−91594号公報
【特許文献2】日本国特開2003−295767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載のインモールド成形用ラベルにおいては、ラベルを構成する層の一部を剥離するために、上述のとおり擬似接着樹脂層や層間剥離を可能にする層といった、ラベルの一部を剥離するための層が別途必要となる。
【0008】
さらに、特許文献2においては、ラベルと樹脂成形品との接着のために、ヒートシール層を必要とする。すなわち、ラベルの一部を剥離したり、ラベルと樹脂成形品とを接着させたりするためには、ラベルの一部を剥離するための層やヒートシール層を製造する工程が発生することになり、その分インモールド成形用ラベルの製造の作業工程が煩雑となり、その分コストもかかっていた。
【0009】
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものである。すなわち、インモールド成形用ラベルにおいて、剥離するための層やヒートシール層を必ずしも設けなくとも、ラベルを構成する層の一部の剥離が可能であり、かつラベルと樹脂成形品との接着性が維持されたインモールド成形用ラベル、及びそのラベルが貼着されたラベル付き樹脂成形品を提供することにある。
【0010】
なお、ここでいう目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも、本発明の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂を含有する基材層(A)と、ポリエチレンイミン系重合体を含むインク受容層(B)と、ポリエチレン系樹脂を主成分とする印刷層(C)とをこの順に有するインモールド成形用ラベルを採用することで、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
[1]熱可塑性樹脂を含有する基材層(A)と、
ポリエチレンイミン系重合体を含むインク受容層(B)と、
ポリエチレン系樹脂を主成分とする印刷層(C)と
をこの順に有するインモールド成形用ラベル。
[2]前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂およびポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂である、[1]に記載のインモールド成形用ラベル。
[3]前記ポリエチレン系樹脂が、エチレン・メタクリル酸共重合体を含む、[1]または[2]に記載のインモールド成形用ラベル。
[4]前記基材層(A)のインク受容層(B)が設けられている方とは反対の面に、さらに第2の印刷層(c)、及び第2のインク受容層(b)をこの順に含む[1]〜[3]のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載のインモールド成形用ラベルをインモールド成形により樹脂成形品に貼着一体化したラベル付き樹脂成形品。
[6]前記樹脂成形品がポリエチレン系樹脂、ポリスチレン樹脂より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、[5]に記載のラベル付き樹脂成形品。
[7]前記ラベル付き樹脂成形品から前記インモールド成形用ラベルを剥離すると基材層(A)とインク受容層(B)間の界面またはインク受容層(B)と印刷層(C)との界面で剥離し、インモールド成形用ラベルを剥離した後の樹脂成形品表面に少なくとも印刷層(C)を有する、[5]または[6]に記載のラベル付き樹脂成形品。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインモールド成形用ラベルは、前記構成を有することにより、インク受容層と印刷層との接着性を維持しつつ、インク受容層と基材層等との適度な接着力を担保する(剥離強度を低くする)ことが可能となる。すなわち、本発明によれば、樹脂成形品にラベルが接着した状態から、ラベルを基材層(A)とインク受容層(B)との界面またはインク受容層(B)と印刷層(C)との界面で剥離することが可能なインモールド成形用ラベルを提供することができる。これにより、ラベルと樹脂成形品との接着力を高く維持したまま、ラベルを樹脂成形品から剥離することが可能であり、それによりあらかじめラベルの樹脂成形品に接する面側に印刷した印刷情報をラベル側から樹脂成形品に転写させることができ、その結果印刷情報を樹脂成形品側に表示することができる。
【0014】
また、本発明のインモールド成形用ラベルは、基材層の剥離が容器成形から廃棄までの任意のタイミングで自由に行うことができ、基材層と印刷層の表面上とに印刷情報をそれぞれ表示することが可能であり、表示面積を増加することができる。ラベル付き樹脂成形品からインモールド成形用ラベルを剥離すると、基材層(A)とインク受容層(B)間の界面またはインク受容層(B)と印刷層(C)との界面で剥離するため、印刷層(C)は容器表面側に残る。そのため、インモールド成形用ラベルを剥離すると、容器表面に印刷情報を視認することが可能となる。このように、本発明のインモールド成形用ラベルは、基材層上に設けた印刷情報のみならず、基材層の剥離後は印刷層に設けた異なる新たな印刷情報も表示させることができる。
【0015】
さらに、本発明のインモールド成形用ラベルは、基材層を剥離した後に、基材層を再びインク受容層上に貼り直すことが困難であるため、ラベル付き樹脂成形品の偽造防止や再利用防止を図ることもできる。また、本発明のインモールド成形用ラベルより剥離した基材層はクーポン券や応募券等へ二次利用することも可能であり、印刷層上の印刷情報は商品購入者だけが利用できる印刷情報(例えば、観賞用のコード番号、バーコード、くじ、占い等)とすることも可能である。また、ラベルの一部にミシン目を設けて切り取ることが出来るような加工を組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のインモールド成形用ラベルの一態様の断面図である。
図2図2は、図1のインモールド成形用ラベルを樹脂成形品に貼着させて得た本発明のラベル付き樹脂成形品の一態様の断面図である。
図3図3は、図2のラベル付き樹脂成形品が界面剥離する状態を示す断面図である。
図4図4は、本発明のラベル付き樹脂成形品を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、本発明のインモールド成形用ラベルの別の態様の断面図である。
図6図6は、図5に示すインモールド成形用ラベルを樹脂成形品に貼着させて得た本発明のラベル付き樹脂成形品の別の態様の断面図である。
図7図7は、本発明のインモールド成形用ラベルの別の態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。また、以降においては特に断らない限り、上下左右等の位置関係は、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0018】
なお、本明細書において、例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
また、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の双方が含まれる。
また、本明細書において、「主成分」と表記するときは、対象とする組成物中に含まれる各成分の中で、質量基準で最も含有量が多い成分を指す。
【0019】
[インモールド成形用ラベルの構成]
本発明のインモールド成形用ラベルは、基材層(A)、インク受容層(B)及び印刷層(C)を含む。図1は本発明のインモールド成形用ラベルの一実施態様を示す図であり、インモールド成形用ラベル1は、基材層(A)11、インク受容層(B)12、印刷層(C)13をこの順に有するように積層したものである。また、図3に示されているように、本発明のインモールド成形用ラベル1においては、基材層(A)11とインク受容層(B)12との間の界面で剥離が可能である。
【0020】
なお、インモールド成形用ラベル1は、基材層(A)11、インク受容層(B)12、印刷層(C)13がこの順に隣接して積層されたものである。他の層を有する具体的な構成の例については、後述する。
【0021】
本発明のインモールド成形用ラベル全体の厚みは、溶融樹脂から受ける熱が金型に逃げないための断熱性の観点から20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。一方、剛度が高すぎると通常の運搬時や使用時に基材層とインク受容層とが剥がれやすくなる傾向があることから160μm以下が好ましく、140μm以下がより好ましい。
【0022】
[基材層(A)]
基材層(A)は熱可塑性樹脂を含む。図1に示すように、インモールド成形用ラベル1において、基材層(A)11上に、インク受容層(B)12を挟んで印刷層(C)13が設けられている。基材層(A)11は、少なくとも印刷層(C)13及びインク受容層(B)12を支持して、印刷又は加工の際にハンドリングができる程度の剛性(コシ)をインモールド成形用ラベル1に与える層である。また、図3図4に示すように、印刷層(C)13が樹脂成形品21に熱融着した状態で、基材層(A)11はラベル付き樹脂成形品2の外表面に存在し、印刷層(C)13及びインク受容層(B)12の保護層としても機能する。なお、上述したように、基材層(A)11は、インク受容層(B)12との間の界面で剥離が可能であるため、剥離後は前記保護層としての機能は失われることになる。
【0023】
基材層(A)11自体は、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。また、2層以上の多層構造である場合、層同士は同じ成分で構成されていてもよいし、それぞれ異なる成分で構成されていてもよい。
【0024】
基材層(A)11は、熱可塑性樹脂を含有し、通常、熱可塑性樹脂のフィルムシートからなり、このフィルムは、無延伸または延伸したものでもよく、また単層でも多層でもよい。
【0025】
(熱可塑性樹脂)
基材層(A)11に用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。例えば、フィルム成形が可能な高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系共重合樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン・環状オレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、スチレン−マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリ乳酸等のエステル系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6等のアミド系樹脂;およびポリカーボネートが挙げられる。これらの樹脂の中から、1種類もしくは2種類以上を混合して使用することができる。
【0026】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、フィルムの加工性に優れる観点から、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂およびポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂が好ましく、オレフィン系樹脂または官能基含有オレフィン系樹脂がより好ましく、オレフィン系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0027】
オレフィン系樹脂としては、より具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチル−1−ペンテン、環状オレフィン等のオレフィンモノマーの1種で構成される単独重合体および前記オレフィンモノマーの2種類以上で構成される共重合体が挙げられる。中でも好ましくは、ポリエチレン系樹脂である。
【0028】
官能基含有オレフィン系樹脂としては、より具体的には、前記オレフィンモノマーの1種以上と、前記オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーの1種以上との共重合体が挙げられる。
【0029】
前記オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸およびその酸無水物類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル等の不飽和カルボン酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N’−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N’−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノエチルアミド、フマル酸−N,N’−ジエチルアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N’−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等の不飽和カルボン酸アミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類が挙げられる。
【0030】
前記官能基含有オレフィン系樹脂を酸または塩基で加水分解して、カルボン酸ビニルエステル類、不飽和カルボン酸類、不飽和カルボン酸エステル類、不飽和カルボン酸アミド類に由来する官能基を水酸基、カルボン酸またはカルボン酸金属塩に変換してもよい。
【0031】
また、前記オレフィン系樹脂または官能基含有オレフィン系樹脂をグラフト変性することもできる。グラフト変性は、例えば、過酢酸、過硫酸、過硫酸カリウム等の過酸およびその金属塩;オゾン等の酸化剤の存在下で不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させる方法が挙げられる。
【0032】
グラフト変性率は、オレフィン系樹脂または官能基含有オレフィン系樹脂に対して、通常0.005〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0033】
基材層(A)11を構成するフィルムは、無機粉末、有機粉末等のフィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、及びアルミナ等の無機粉末や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6、環状オレフィン、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の有機粉末等が挙げられる。
【0034】
これらフィラーの含有量によって基材層(A)11の透明度は変化し、実質的に含有しない場合は透明であるか、その含有量が増大するほど透明度は低下する。これを利用して印刷層(C)13の印刷情報を隠したり、半透視又は透視の状態に調整したりできる。
【0035】
フィラーの含有量は通常5〜60質量%、好ましくは20〜50質量%である。
【0036】
また、無機粉末、有機粉末等のフィラーを実質的に含有しない、フィラーレスであることができる。ここで、「実質的に含有しない」とは、フィラーの含有量が、基材層(A)11の総量に対する固形分換算で、3.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%である。基材層(A)11のフィラー含有量が前記範囲であることで、基材層(A)11が透明性に優れたものとなり、例えば、基材層(A)11を剥離せずとも印刷層(C)13の印刷内容を明瞭に視認することが可能となる。
【0037】
一方、本発明では、印刷層(C)13を樹脂成形品に貼着させたまま基材層(A)11をインク受容層(B)12との間で剥離することが可能であるため、基材層(A)11がフィラーを含有する場合であって、基材層(A)11の透明性に欠ける場合であっても、基材層(A)11をインク受容層(B)12との間で剥離することによって、印刷層(C)13の印刷内容を視認することが可能である。
【0038】
(添加剤)
基材層(A)11は、前記の熱可塑性樹脂に加え、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、熱安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、分散剤及び潤滑剤等が挙げられる。基材層(A)11における添加剤の含有量は、特に限定されないが、基材層(A)11の質量を100質量部として、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0039】
(基材層(A)の厚み)
基材層(A)11の厚みは、特に制限されないが、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜150μm、さらに好ましくは40〜100μmである。基材層(A)11の厚みが前記範囲の下限値以上であることにより、インモールド成形用ラベル1に適度な剛性を付与して、印刷層(C)13を形成する際にシワの発生を防止できるとともに、金型内への挿入時に所望の位置にラベルを固定しやすくなる。また、基材層(A)11の厚みが前記範囲の上限値以下であることにより、得られる樹脂成形品におけるインモールド成形用ラベル1の境界部分の強度低下を防止でき、インモールド成形用ラベル1のラベル端部からの破損を防ぐことができるとともに、インモールド成形用ラベル1の透明性の低下を防ぐことができる。
【0040】
なお、本明細書において、インモールド成形用ラベル1を構成する各層の厚みは、顕微鏡で断面観察して、インモールド成形用ラベル1の全体の厚み及び観察される層の厚みの比率を乗算することで求めた値とする。
【0041】
[インク受容層(B)]
図1に示すように、インク受容層(B)12は、インモールド成形用ラベル1において、印刷層(C)13と基材層(A)11との間に介在して、印刷層(C)13の印刷を受容する層である。印刷層(C)13が溶融することで、印刷層(C)13とインク受容層(B)12の親和性が向上し、互いの層の密着が強くなる。
【0042】
また、例えば図5に示すように、印刷層(C)13がインク受容層(B)12の全面に設けられていない場合、すなわちインク受容層(B)12の一部のみに設けられている場合には、インモールド成形の際に、金型内で樹脂成形品21を構成する溶融樹脂と、印刷層(C)13に覆われていない部分のインク受容層(B)12とが接触する。このとき、図6に示すように、溶融樹脂の熱により溶融したインク受容層(B)は、インモール成形時の圧力により、部分的又は断続的に設けられた印刷層(C)13の間の間隙を埋めるようにして溶融樹脂と擬似接着した様態となり冷却後に硬化して、樹脂成形品21とインモールド成形用ラベル1との疑似接着に寄与する。すなわち、インク受容層(B)12と印刷層(C)13とは直接的に接触していることが好ましい。
【0043】
インク受容層(B)12自体は、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。また、2層以上の多層構造である場合、層同士は同じ成分で構成されていてもよいし、それぞれ異なる成分で構成されていてもよい。
【0044】
インク受容層(B)12がポリエチレンイミン系重合体を含むことにより、基材層(A)11とインク受容層(B)12との剥離強度を印刷層(C)13と樹脂成形品21との剥離強度より低く設定できる。また、インク受容層(B)12と印刷層(C)13との剥離強度を印刷層(C)13と樹脂成形品21との剥離強度より低く設定できる。このどちらか一方の機構によって、ラベルを剥離した際に印刷層(C)13がラベル1側から樹脂成形品21側に転写することが達成される。
【0045】
ポリエチレンイミン系重合体は、エチレンイミンを重合した水溶性ポリマーであり、完全な線状高分子ではなく、分子骨格中に、1級、2級、3級アミンを含む分岐構造を有するポリマーである。ポリエチレンイミンの場合、分子鎖の両末端は1級アミンであり、それ以外の窒素原子は2級アミンを構成する。また、ポリエチレンイミンに変性剤または架橋剤を作用させると、主に2級アミンが反応し、3級アミンを生成する。このようにポリエチレンイミン系樹脂は反応性に富む。
【0046】
ポリエチレンイミンの1〜3級アミンと反応する官能基としてはアルデヒド化合物、アルキルハライド化合物、イソシアネート化合物、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物、シアナマイド化合物、グアニジン化合物、尿素、カルボン酸化合物、環状酸無水化合物、アシルハライド化合物等が挙げられる。これらの官能基を分子内に1つ有する化合物を変性剤として、分子内に複数有する化合物を架橋剤としてそれぞれ用いることができ、ポリエチレンイミン系樹脂に耐水性および耐溶剤性の付与、基材層(A)又は印刷層(C)との剥離強度の調整等が可能になる。
【0047】
ポリエチレンイミン系重合体としては、ポリエチレンイミンの他に、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)、ポリ(エチレンイミン−尿素)のエチレンイミン付加物、ポリアミンポリアミド、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体等が挙げられる。
【0048】
ポリエチレンイミン系重合体は、作成された塗工液の使用期限、反応性、基材層(A)又は印刷層(C)との剥離強度を調整する観点から、アミノ基の総量に対する1級アミノ基のモル比率は0.01〜0.1%、2級アミノ基のモル比率は1〜99.5%、3級アミノ基のモル比率は0.1〜10%が好ましい。ここで、モル比率とは、ポリエチレンイミンの1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基のアミノ基の総モル数に対する、各アミノ基のモル数の比率である。
【0049】
また、ポリエチレンイミン系重合体の数平均分子量は、通常200〜100,000であり、好ましくは300〜70,000である。粘度は(mPa・s−25℃)は、通常200〜150,000であり、好ましくは、10,000〜100,000であり、水で希釈し、ハンドリングしやすい粘度に適宜調整する。ポリエチレンイミン系重合体は水溶性、有機溶剤可用性および水分散性等の性質を有するものが使用できる。
【0050】
ポリエチレンイミン系重合体としては、市販品を使用することができ、例えば、エポミン(登録商標、株式会社日本触媒製、品番SP−003、SP−006、SP−012、SP−018、SP−200、HM−2000、P−1000)等を使用できる。
【0051】
また、従来公知の方法により、エチレンイミンを原料にして開環重合したものを使用することもできる。このとき、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、モノエタノールアミンなどのベースアミンに、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸などの酸触媒下にエチレンイミンを反応させる。得られた生成物は、一般的にはポリエチレンイミンと称されるが、ベースアミン由来のエチレンジアミン、DETA、またはモノエタノールアミンとエチレンイミンとのコポリマーを生成することができる。
【0052】
インク受容層(B)12は、また、当業界で公知の添加剤を含んでもよい。インク受容層(B)12に含まれる添加剤としては、例えば、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤等を挙げることができる。インク受容層(B)12における添加剤の含有量は、特に限定されないが、インク受容層(B)の総量に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0053】
(インク受容層の厚み)
インク受容層(B)12の厚みは、特に制限されないが、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.03〜5μm、さらに好ましくは0.05〜3μm、特に好ましくは0.1〜1μmである。インク受容層(B)12の厚みが前記範囲の下限値以上であることにより、インモールド成形時にインク受容層(B)12が樹脂成形品21の溶融樹脂の熱により印刷層(C)13とともに融解して、樹脂成形品21とインモールド成形用ラベル1が融着しやすく、十分な接着性が得られる傾向にある。また、インク受容層(B)の厚みが前記範囲の上限値以下であることにより、インモールド成形用ラベル1のカールの発生を防ぎ、インク受容層(B)12への印刷層(C)13の形成や、金型への固定が容易となる。
【0054】
[基材層とインク受容層との剥離強度]
前記のように、インク受容層(B)12がポリエチレンイミン系重合体を含むことにより、基材層(A)11等とインク受容層(B)12との剥離強度を適度に低くすることができる。
【0055】
剥離強度は、実施例に後述するように、例えば、JIS K6854−3:1999に準拠して、ラベル付き樹脂成形品2を幅(MD方向)15mm、長さ(TD方向)110mmに切り取り、引張試験機((株)島津製作所製、機器名:オートグラフ AGS−D形)を用いて、300mm/minの引張速度でT形剥離することにより求めることができる。
【0056】
基材層(A)11等とインク受容層(B)12との剥離強度は、インモールド成型用ラベルと樹脂成形品との剥離強度以上であり、通常0.5〜10N/15mmであり、好ましくは1〜5N/15mmである。
【0057】
[基材層及びインク受容層の成形方法]
基材層(A)11を成形する方法は特に限定されず、公知の種々の方法が使用できる。具体例としては、スクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、円形ダイを使用し溶融樹脂をチューブ状に押し出し内部の空気圧力で膨張させるインフレーション成形、混練された材料を複数の熱ロールで圧延しシート状に加工するカレンダー成形、圧延成形等が挙げられる。基材層(A)11自体は、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。
インク受容層(B)12も前記の基材層(A)11の成形方法と同様の方法で成形することができる。
【0058】
基材層(A)11及びインク受容層(B)12を積層する方法としては、例えば、両者の溶融樹脂をダイ内で積層する共押出成形、基材層(A)11及びインク受容層(B)12のうち少なくとも一方をあらかじめフィルム成形し、これに他方の層を構成する加熱溶融させた樹脂を押し出して積層する押出ラミネート成形、あらかじめフィルム成形して得た基材層(A)11とインク受容層(B)12とを接着剤層を介して積層するドライラミネート成形又はウェットラミネート成形等が挙げられる。この場合、得られるインク受容層(B)12の厚みは、3〜30μmが好ましい。
【0059】
または、インク受容層(B)12を構成する樹脂を塗料として、後述の方法で基材層(A)11に塗工し、必要に応じて乾燥することもできる。この塗料は、インク受容層(B)12を構成する樹脂を、溶剤に溶解するか又は溶剤に分散して作成することができる。溶剤としては、特に限定されないが、例えば、水、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール等が好適に使用できる。塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、リップコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアナイフコーター等の公知の塗工方法を使用することができる。この場合、得られるインク受容層(B)12の厚みは0.1〜10μmが好ましい。
【0060】
これらの中でも、スクリュー型押出機に接続された多層Tダイを使用して、基材層(A)11及びインク受容層(B)12の溶融樹脂を同ダイ内で積層し、シート状に押し出す共押出キャスト成形により、両層の積層と成形とを同時に行う手法が好ましい。この手法は、工程上簡便であり、且つ基材層(A)11とインク受容層(B)12とが、印刷層(C)13の形成や裁断等の後加工工程では容易に剥離しない程度の接着力を有する共押出フィルムとして得られることから好ましい。
【0061】
基材層(A)11、及びインク受容層(B)12は、延伸を施さない無延伸(未延伸)のフィルムとしてもよく、少なくとも一軸方向に延伸を施すことで延伸フィルムとしてもよい。無延伸フィルムは、透明性及び成形品への形状追随性が一層優れたものとなる。一方、延伸フィルムは、薄膜化による透明性、軽量性、及び厚みの均一性が一層優れたものとなる。また基材層(A)11、及びインク受容層(B)12が2層以上の多層構造の場合は、例えば二軸延伸を一軸延伸で重ね合わせたものであってよい。
【0062】
本実施形態のインモールド成形用ラベル1は、必要に応じて、インク受容層(B)12に表面酸化処理を施してもよい。成形後のフィルムの表面は、表面自由エネルギーが比較的低く、フィルムの表面に表面酸化処理を施すことにより、フィルムの表面の表面自由エネルギーを向上させることができる。その結果、トナー組成物の転移性が改善されることで、印刷層(C)13とインク受容層(B)12との接着性が向上する。トナー組成物の転移性の改善は、インク受容層(B)12表面の水接触角を制御することによって行ってもよい。表面酸化処理としては、例えば、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等を挙げることができる。これらの中でも、表面酸化処理として、コロナ放電処理、プラズマ処理を用いることが好ましい。又は、インク受容層(B)にフレーム処理を施してもよい。また、インモールド成形用ラベル1は、上述した表面酸化処理と同様の趣旨から、インク受容層(B)12に表面塗工層を形成してもよい。
【0063】
[印刷層(C)]
印刷層(C)13は、インモールド成形の際に、成形機(例えば金型)内において樹脂成形品21を構成する溶融樹脂と接触する。印刷層(C)13は、溶融樹脂の熱により溶融することで、この溶融樹脂と融着し、さらに冷却後に硬化して、樹脂成形品21の壁面とインモールド成形用ラベル1との貼着に寄与する。
【0064】
印刷層(C)13は、ポリエチレン系樹脂を主成分とする樹脂フィルム層である。
【0065】
インモールド成形用ラベル1において、印刷層(C)13は、図1に示すようにインク受容層(B)12の一面の全体にわたって設けられていてもよく、図5に示すようにインク受容層(B)12に部分的又は断続的に設けられていてもよい。印刷層(C)13がインク受容層(B)に部分的又は断続的に設けられる態様としては、印刷層(C)13が、文字又は図柄等を構成するように設けられている場合が挙げられる。または、印刷層(C)13が、ドット状、ストライプ状、チェック状等のパターンで設けられている場合が挙げられる。または、印刷層(C)13が、隣接する印刷層(C)13同士の間で間隙を挟んで、位置、形状、及び大きさがランダムに配置されるように設けられていてもよい。
【0066】
印刷層(C)13自体は、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。また、2層以上の多層構造である場合、層同士は同じ成分で構成されていてもよいし、それぞれ異なる成分で構成されていてもよい。
【0067】
印刷層(C)13を形成するための印刷方式の例としては、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷等が挙げられる。また、印刷層(C)13に付着されるインクの種類は、印刷方式に応じて適宜選定すればよく、特に限定されない。インク受容層(B)12へのインクの転移性及び接着性の観点から、トナー組成物として、液体静電インキ(代表的には、Hewlett−Packard社のエレクトロインキ)が好適に用いられる。
【0068】
本実施形態の印刷層(C)13は、好ましくはエチレン系共重合体を含む熱可塑性樹脂のバインダー中に色材が配合された熱可塑性トナー粒子を含有する液体インキにより形成されたトナー印刷層である。より好ましくは、この熱可塑性トナー粒子が帯電性を有するものである。さらに好ましくは、電子写真方式によって熱可塑性トナー粒子を印刷層(C)13に転写して印刷を行うものである。特に好ましくは、この熱可塑性トナー粒子を含有する液体エレクトロインキを用いて形成されたものである。この種のエレクトロインキを用いて印刷層(C)13を形成する場合、小ロット対応、生産性等の観点から、印刷方式はオフセット印刷が好ましく、デジタルオフセット印刷がより好ましい。
【0069】
以下、オフセット印刷によって印刷層(C)13を形成する場合について説明する。ここでは、トナー組成物として液体エレクトロインキを用いる場合の例について説明するが、これに限定されるものではなく、印刷層(C)13は、ポリエチレン系樹脂を主成分とする層であれば、他の印刷方式又はトナー組成物を用いて形成したものであってもよい。
【0070】
(トナー組成物)
トナー組成物は、ポリエチレン系樹脂を含有する。さらに、通常色材を含有する。また、トナー組成物は、液体担体と、電荷制御化合物とをさらに含有することが好ましい。トナー組成物は、帯電性を有することがより好ましい。トナー組成物は、電荷制御化合物の電気的性質を安定させる分散安定剤をさらに含有してもよい。このようなポリエチレン系樹脂及び色材を分散したトナー組成物を、インク受容層(B)12上に付着(或いは、転移、転写等)させることによって、印刷情報を有する印刷層(C)13を形成することができる。すなわち、印刷層(C)13は、ポリエチレン系樹脂を主成分として含有するポリマーフィルムであって、このポリマーフィルムに通常色材が含まれている。なお、印刷層(C)13は、ポリエチレン系樹脂を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することが更に好ましい。一方、99.9質量%以下含有することが好ましく、99.5質量%以下含有することがより好ましく、99.0質量%以下含有することが更に好ましい。
【0071】
(液体担体)
液体担体は、トナー組成物において、ポリエチレン系樹脂及び色材を溶解、分散、又は乳化させるものである。液体担体としては、特に限定されないが、低誘電率の無極性液体が好ましく用いられる。無極性液体は、少なくとも10Ω・cm以上の電気抵抗率と、3.0未満の誘電定数を持つことが好ましい。無極性液体としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及び軽質鉱油等が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂肪族炭化水素の中でも、分枝鎖脂肪族炭化水素が好ましく、例えばIsopar(登録商標)系列のイソパラフィン炭化水素(エクソンモービル社製)が好適に用いられる。液体担体の含有量は、特に限定されないが、トナー組成物の総量に対して、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは30〜90質量%、さらに好ましくは50〜80質量%である。
【0072】
(ポリエチレン系樹脂)
印刷層(C)13が主成分として含有するポリエチレン系樹脂としては、例えば、密度が0.900〜0.935g/cmの低密度ないし中密度の高圧法ポリエチレン、密度が0.880〜0.940g/cmの直鎖線状ポリエチレン、およびエチレン系共重合体等が挙げられる。なかでも、直鎖線状ポリエチレンまたはエチレン系共重合体が好ましい。
【0073】
(エチレン系共重合体)
印刷層(C)13に含有されるエチレン系共重合体としては、エチレンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数3〜10のα−オレフィン;テレフタル酸;ブチルテレフタレート等のアルキルテレフタレートから選ばれる1種又は2種以上のコモノマーとの共重合体が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0074】
これらの中でも、インク受容層(B)12や樹脂成形品21との接着性の観点から、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体が好ましく、エチレン・メタクリル酸共重合体がより好ましい。エチレン系共重合体中のエチレン単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは40〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは60〜85質量%である。エチレン系共重合体の含有量は、特に限定されないが、トナー組成物の総量に対して、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜40質量%である。
【0075】
印刷層(C)13は、融点135℃以下のエチレン系共重合体を含有することが好ましい。この場合、トナー組成物を用いてポリマーフィルム画像を転写等する際に、インク受容層(B)12上に印刷層(C)13を形成することが容易となる。また、印刷層(C)13と樹脂成形品21との接着性を向上させることもできる。前記観点から、印刷層(C)13に含有されるエチレン系共重合体の融点は、好ましくは65℃〜135℃、より好ましくは75℃〜130℃、さらに好ましくは85℃〜125℃以下、特に好ましくは90℃〜120℃である。印刷層(C)13を構成するエチレン系共重合体の融点が、前記範囲の下限を上回ることにより、常温でべた付きを抑えて、ブロッキングを防ぐことができる。また、印刷層(C)13を構成するエチレン系共重合体の融点が、前記範囲の上限を下回ることにより、印刷層(C)13とインク受容層(B)12との接着性、及び印刷層(C)13と樹脂成形品21との接着性が向上する傾向にある。
【0076】
また、インク受容層(B)12上の全面に印刷層(C)13を設けることで、印刷層(C)13と樹脂成形品21との接着性を高めることができる。一方、インク受容層(B)12上の面に印刷層(C)13を部分的に設けることで、印刷層(C)13と樹脂成形品21との接着性を低く調整することもできる。
【0077】
インク受容層(B)12上の面に印刷層(C)13を部分的に設けた際の印刷層(C)13の様態としては、網点状、メッシュ状、等間隔のライン状などが挙げられ、印刷層(C)13が均一且つ細かなサイズの規則的なパターンで構成されることが好ましい。
【0078】
上記の様なパターンで印刷層(C)13を構成することで、印刷層(C)13と樹脂成形品21との間に生じる接着性の強弱のムラを少なくすることができ、樹脂成形品21からラベルを剥離する際の感触もスムーズなものとなる。
【0079】
なお、本明細書において、樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により得られる吸熱ピークの温度から求められる値を意味する。また、印刷層(C)13を構成するエチレン系共重合体の融点は、樹脂成形品21を構成する熱可塑性樹脂の融点より5℃以上低いことが好ましく、10℃以上低いことがより好ましい。これにより、印刷層(C)13と樹脂成形品21との接着性が向上する傾向にある。
【0080】
(色材)
色材としては、印刷用のインクに使用される公知の染料又は顔料を用いることができる。また、顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、シアニン染料、キノリン染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料等が挙げられるが、これらに特に限定されない。有機顔料としては、クインドマゼンタ等のキナクリドン系顔料、トルイジンレッド等のアゾ系顔料、モナストラールブルー、モナストラールグリーン等のフタロシアニン系顔料等が挙げられるが、これらに特に限定されない。無機顔料としては、カーボンブラック、Fe、Co、Ni、Ti等の金属の酸化物、Zn、Cd、Ba、Mg等の金属のフェライト、合金等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、顔料が好ましく、有機顔料、無機顔料がより好ましい。色材の含有量は、特に限定されないが、トナー組成物の総量に対して、染料及び有機顔料では、好ましくは0.1〜35質量%、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは5〜25質量%である。無機顔料では、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。
【0081】
(電荷制御化合物)
電荷制御化合物は、熱可塑性トナー粒子の帯電極性や帯電量を制御するために用いられる。電荷制御化合物としては、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性の界面活性化合物が用いられる。これらの電荷制御化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。電荷制御化合物として、より具体的には、石油酸バリウム等の金属石鹸、レシチン等のリン脂質、有機酸の金属塩化合物、有機リン酸化合物、有機スルホン酸化合物、第四級アンモニウム塩化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。帯電制御化合物の含有量は、特に限定されないが、トナー組成物の総量に対して、好ましくは0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.5質量%〜4質量%、さらに好ましくは1質量%〜3質量%である。
【0082】
(分散安定剤)
分散安定剤は、電荷制御化合物の安定化を助長するために用いられる。分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0083】
(トナー組成物の調製)
トナー組成物は、ポリエチレン系樹脂及び色材を加熱しながら混合して熱可塑性トナー粒子を液体担体中で形成し、さらに必要に応じて電荷制御化合物を添加することにより調製することができる。なお、トナー組成物の調製の際に色材とともにワックスを混合してもよい。トナー組成物がワックスを含有することにより、印刷層(C)13と樹脂成形品21との接着性が向上する。
【0084】
(印刷層の形成)
印刷層(C)の形成は、例えば、液体エレクトロインキを用いたオフセット印刷を行うことにより行うことができる。まず、シリンダー状の画像形成プレートをコロナ放電により帯電させて、続いてこの画像形成プレートを露光することで静電画像を形成する。次に、静電画像が形成された画像プレートにトナー組成物を供給することで、静電画像を現像する。さらに、トナー組成物によって形成された静電トナー像を、画像形成プレートからシリンダー状のブランケットに転写する。ブランケットに転写されたトナー組成物を、ブランケットにより加熱して、トナー組成物に含まれる熱可塑性トナー粒子を融合又は凝集させる。融合又は凝集が進むにつれて、熱可塑性トナー粒子がポリマーフィルムを形成し、このポリマーフィルムに色材が含まれたポリマーフィルム画像がブランケット上に生じる。このようにして形成されたポリマーフィルム画像を、ブランケットからインク受容層(B)12に転写して、さらに冷却して硬化することで、印刷層(C)13が形成される。
【0085】
(インク濃度)
インク濃度は、インク受容層(B)12の面積に対する印刷層(C)13の面積の割合を示すものである。インク受容層(B)12上に上述した手法により印刷層(C)13を形成する場合、印刷層(C)13は、インク受容層(B)12上に形成された点状のインクの集合(網点)として構成される。このため、インク濃度は、インク受容層(B)12上の網点部分が占める面積の割合を示す、網点面積率によって表すことができる。
【0086】
インモールド成形用ラベル1において、印刷層(C)13の占める網点面積率は、好ましくは5〜100%、より好ましくは10〜90%、さらに好ましくは15〜80%、特に好ましくは20〜70%である。インモールド成形用ラベル1のインク濃度が前記範囲内であることにより、印刷層(C)13を形成したインモールド成形用ラベル1と樹脂成形品21との十分な接着性が発揮され易くなる傾向にある。
【0087】
なお、本明細書において、網点面積率は、例えばCCDカメラを使用してインモールド成形用ラベル1の印刷層(C)13側の画像を撮影し、印刷された網点部分の面積の割合を画像処理によって求めることで算出される値を意味する。
【0088】
(印刷層の厚み)
印刷層(C)13の厚みは、印刷方式及びトナー組成物に応じて適宜変更され、特に制限されないが、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは0.8〜10μm、さらに好ましくは1.0〜5μmである。印刷層(C)13が前記範囲内であることにより、インク濃度が十分に保たれて視認性を高めることができ、また十分な接着性を維持できる傾向にある。
【0089】
また、前記インク受容層(B)12の厚みと印刷層(C)13の厚みとの比率は、通常1:20〜2:1であり、好ましくは1:15〜1:1、より好ましくは1:12〜1:5である。インク受容層(B)12の厚みと印刷層(C)13の厚みとの比率が前記範囲であることにより、インモールド成形において溶融樹脂の熱により印刷層(C)13が溶融する際に、インク受容層(B)12にも溶融樹脂の熱が伝わり、インク受容層(B)12も部分的に溶融することで、インク受容層(B)12は樹脂成形品21との接着に寄与することとなる。
【0090】
また、基材層(A)11、インク受容層(B)12、及び印刷層(C)13の厚みは、好ましくは、基材層(A)11が最も厚く、インク受容層(B)12が最も薄く、印刷層(C)が基材層(A)11とインク受容層(B)12の中間の厚みである。
【0091】
[その他の層]
(第2のインク受容層、及び第2の印刷層)
本発明のインモールド成形用ラベル1は、前記インク受容層(B)12、印刷層(C)13とは別に、図7に示すように、基材層(A)のインク受容層(B)が設けられている方とは反対の面に、さらに第2の印刷層(c)、及び第2のインク受容層(b)をこの順に有してもよい。すなわち、本発明のインモールド成形用ラベル1は、第2の印刷層(c)41、第2のインク受容層(b)31、基材層(A)11、インク受容層(B)12、印刷層(C)13をこの順に含むように積層したものとすることができる。前記ラベル1を樹脂成形品21に貼着した場合、最外層は第2の印刷層(c)41となり、印刷層(C)13が樹脂成形品21と接着することになる。
【0092】
第2のインク受容層(b)31、及び第2の印刷層(c)41に関しては、それぞれインク受容層(B)12、及び印刷層(C)13と同様である。また、任意の層としては、基材層(A)11とインク受容層(B)12またはインク受容層(B)12と印刷層(C)13との間の剥離強度を調整する層、基材層(A)11を介してインク受容層(B)12や印刷層(C)13が設けられている方とは反対の面には、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の層を設けてもよい。
【0093】
本発明のインモールド成形用ラベル1が前記第2のインク受容層(b)31及び第2の印刷層(c)41を有する態様の場合、すなわち、基材層(A)11を介して基材層(A)11の両側にそれぞれ印刷層を有する場合、当該ラベルを貼着したラベル付き樹脂成形品2には、下記のような種々の意匠性をもたせることができる。
【0094】
例えば、基材層(A)11が不透明である場合、基材層(A)11を剥離する前は第2の印刷層(c)41の印刷情報が視認されるが、基材層(A)11を剥離することによって、今度は印刷層(C)13の印刷情報が視認されるようになる。また、例えば印刷層(C)13の印刷情報が蛍光色等である場合は、基材層(A)11を剥離する前であっても、ブルーライト等を照射する等によって、第2の印刷層(c)41の印刷情報及び印刷層(C)13の印刷情報を同時に視認することも可能である。さらに、基材層(A)11が透明である場合は、基材層(A)11を剥離する前は、印刷層(C)13と第2の印刷層(c)41の両方の印刷情報が同時に視認され、基材層(A)11を剥離すると印刷層(C)13の印刷情報のみが視認されるようになる。
【0095】
このように、例えば基材層(A)11が透明であるか不透明であるかによって、かつ、印刷層(C)13及び第2の印刷層(c)41の種類を適宜設計することによって、意匠性に優れたラベル付き樹脂成形品2を提供することができる。
【0096】
(ヒートシール層)
本発明のインモールド成形用ラベル1は、任意の箇所にヒートシール層を設けてもよい。ヒートシール層は樹脂成形品の成形時の熱により活性化して接着剤の働きを有するものである。ヒートシール層は例えば、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物をフィルム状に成形したものとすることができる。
【0097】
ヒートシール層に用いる熱可塑性樹脂としては、従来公知のものを適宜用いることができる。
【0098】
なお、本発明においては、インク受容層(B)12及び印刷層(C)13と、樹脂成形品21との接着性が高いため、ヒートシール層を設けなくてもラベルと樹脂成形品との接着を十分に行うことが可能である。
【0099】
(保護層)
本発明のインモールド成形用ラベル1には、耐光性、耐水性、耐ガス性、耐摩擦性等の堅牢性を向上させるために、基材層(A)11側の面に樹脂フィルムからなる保護層を設けてもよい。保護層を構成する樹脂は特に限定されないが、上述した基材層(A)11で用いられる熱可塑性樹脂と同様のものを使用することができる。保護層の厚みも特に限定されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。保護層を設ける手段としては種々の方法を採用することができ、特に限定されない。基材層(A)11側の面にドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段や、基材層(A)11及びインク受容層(B)12とともに押出ラミネートする方法、熱可塑性樹脂をコーティングする方法等の公知の手段から適宜選択して用いればよい。
【0100】
[ラベル付き樹脂成形品]
本発明はまた、上述のインモールド成形用ラベル1をインモールド成形により樹脂成形品に貼着一体化したラベル付き樹脂成形品2に関するものでもある。そして、本発明のラベル付き樹脂成形品2は、基材層(A)11とインク受容層(B)12との界面で剥離が進行し、インモールド成形用ラベル1を剥離した後の樹脂成形品表面にインク受容層(B)12と印刷層(C)13とを有するか、またはインク受容層(B)12と印刷層(C)13との界面で剥離が進行し、インモールド成形用ラベル1を剥離した後の樹脂成形品表面に印刷層(C)13を有するものである。
【0101】
本発明のインモールド成形用ラベル1は、ブロー成形用のインモールド成形用ラベルとして特に好適に使用できる。このようにして製造されたラベル付き樹脂成形品2は、ラベルが金型内で固定された後に、ラベルと樹脂成形品が一体に成形されるので、ラベルの変形もなく、成形品本体とラベルの接着強度が強固であり、ブリスターもなく、ラベルにより加飾された外観が良好な成形品となる。
【0102】
また本発明のインモールド成形用ラベル1は、差圧成形用のインモールド成形用ラベルとしても使用できる。この際、前記ラベルは差圧成形金型の下雌金型の内面にラベルの印刷面が接するように設置した後、前記ラベルは吸引により金型内壁に固定され、次いで容器成形材料樹脂シートの溶融物が下雌金型の上方に導かれ、常法により差圧成形され、ラベルが成形品外壁に貼着一体化したラベル付き樹脂成形品が成形される。差圧成形は、真空成形、圧空成形のいずれの手法も採用できるが、両者を併用し、かつプラグアシストを利用した手法が好ましい。
【0103】
なお、ここで、インモールド成形用ラベルと樹脂成形品が「貼着一体化」するとは、樹脂成形品を構成する樹脂成分の一部と、インモールド成形用ラベルのインク受容層(B)12または印刷層(C)13を構成する樹脂成分の一部がこれらの界面で混ざり合った状態で接着されている状態を意味する。このような貼着一体化は、インモールド成形によりラベル付き樹脂成形品2を形成することにより実現できる。
【0104】
本発明のインモールド成形用ラベル付き樹脂成形品2において、樹脂成形材料は熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、インク受容層(B)12や印刷層(C)13との接着性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、複数種用いてもよい。なかでもポリエチレン系樹脂、ポリスチレン樹脂を用いることが好ましく、ポリエチレン系樹脂を用いることがより好ましい。
【0105】
本発明のラベル付き樹脂成形品2は、例えば、家庭用洗剤、浴槽用洗剤、便器用洗剤、洗車用洗剤、洗顔剤、液体石鹸、シャンプー、リンス、消臭剤、液体入浴剤、アイロン用糊剤、殺菌用アルコール、艶出し用ワックス、殺虫剤等に用いる薬品用容器(ボトル);清涼飲料、酒、醤油、油、たれ、ソース、ドレッシング等に用いる食品用容器(ボトル);ジャム、マーガリン、ピーナツバター、ケチャップ、マヨネーズ等のスプレッドに用いるスクイーズ容器;アイスクリーム、ヨーグルト等の容器;洗濯洗剤、食器洗い用洗剤、ウェットティッシュ等の容器として利用可能である。
【0106】
用途としては、クーポンラベル、当たりくじの表示、偽造防止やセキュリティ等として利用が可能である。更に、インモールド成形用ラベル1の基材層(A)11を透明、または半透明のものに変更した場合、基材層(A)がバリア層として機能することによって、ラベル付き樹脂成形品の印刷情報の耐久性を向上させることができる。
【0107】
また、意匠付与の観点から、印刷層(C)13と第2のインク受容層(b)31の印刷情報を重ね合わせた意匠を持つラベル付き樹脂成形品2としてもよい。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0109】
[評価方法]
各実施例、比較例で得られたインモールド成形用のラベル及びラベル付き樹脂成形品の評価は、以下の方法で行った。
【0110】
(ラベルにおけるインク転移性の評価)
○:良 (ラベルへのインク転移性が良好である)
△:可 (ラベルへのインク転移に一部欠けが見られる)
×:不可(ラベルへのインク転移性が悪い)
【0111】
(剥離強度の評価)
基材層(A)とインク受容層(B)との間の剥離強度は、JIS K6854−3:1999に準拠して、ラベル付き樹脂成形品を幅(MD方向)15mm、長さ(TD方向)110mmに切り取り、引張試験機((株)島津製作所製、機器名:オートグラフ AGS−D形)を用いて、300mm/minの引張速度でT形剥離することにより求めた。
【0112】
(樹脂成形品へのインク転写性の評価)
樹脂成形品からラベルを剥離した際のインクの転写性について、以下の基準で判定した。
◎:優 (インクが樹脂成形品に完全に転写されている)
○:良 (インクの一部が欠けた状態で樹脂成形品に転写されている)
△:可 (印刷情報が樹脂成型品にほぼ転写されるが、ラベル側にも薄く残る)
×:不可(インクが樹脂成形品に全く転写されない)
【0113】
表1に、実施例、比較例において使用した材料の詳細を示す。
【0114】
【表1】
【0115】
<実施例1>
(基材層の製造)
基材層材料A1を230℃に設定した押出機にて混練した。その後、250℃に設定したダイに供給し、シート状に押出した。押し出されたシートを冷却ロールにて約40℃まで冷却して、無延伸シートを得た。次に、無延伸シートを、150℃の温度に再加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD方向)に5倍延伸し、引き続きテンターオーブンを用いて155℃の温度まで再加熱して、テンターを用いて横方向(TD方向)に7.5倍延伸した。その後、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却した後、耳部をスリットすることで、2軸延伸フィルムの基材層を得た。このとき、基材層の厚みは80μmであった。
【0116】
(インク受容層の形成)
前工程で作製した基材層の片面に、コロナ放電処理装置(春日電機社(株)製、機器名:HF400F)を用いてコロナ放電処理を実施した。コロナ放電処理は、長さ0.8mのアルミニウム製放電電極と、トリーターロールにシリコーン被膜ロールとを用いた。また、放電電極とトリーターロールとのギャップを5mmとし、ライン処理速度を15m/分とし、印加エネルギー密度を4,200J/mとした。
次にコロナ放電処理を実施した側の面に、インク受容層材料B1を乾燥後固形分として0.2g/mとなるように塗工した。塗工にはバーコーターを用いた。続いて、オーブンで乾燥させてインク受容層を形成し、巻き取った。インク受容層の厚みは約0.2μmであった。
【0117】
(インモールド成形ラベルの製造)
前記工程で作製したインク受容層上に印刷することにより印刷層を形成した。印刷層材料として、表1に記載の印刷層材料C1を用い、湿式電子写真印刷機(Hewlett−Packard Inc.製、機器名:HP Indigo WS6800)を用いた。印刷の条件は、温度23℃、相対湿度50%の室内環境下、ブランケット温度105℃、転写圧200kgで実施した。また、網点面積率を100%とした。
次に打ち抜き機((株)ダンベル製、機器名:SD型レバー式試料裁断器SDL−100)で、基材層のMD方向に70mm、TD方向に90mmのサイズに打ち抜き、インモールド成形用ラベルを得た。
【0118】
(ラベル付き樹脂成形品の製造)
長さ130mm、幅150mm、厚み2mmのキャビティを有する試験片成形用金型にインモールド成形用ラベルの印刷していない面がキャビティに接する様に、金型内にラベルを配置し、吸引固定した。次いで、金型を閉じ、射出成型機((株)新潟鐵工所製、機器名:NV50ST)を用いて、表1に記載の樹脂成形品材料D1を樹脂温度230℃、射出圧力74N/mの条件で射出成型した。続いて射出成型後、金型を20秒間十分に冷却し、金型を開放してラベル付き樹脂成形品を得た。
【0119】
<実施例2、3、実施例6>
実施例1において、樹脂成形品材料D1をそれぞれ表1に記載の樹脂成形品材料に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2、3および6のラベル及びラベル付き樹脂成形品を得た。
【0120】
<実施例4>
実施例3において、基材層材料A1を表1に記載の基材層材料A2に変更したこと以外は実施例3と同様にして実施例4のラベル及びラベル付き樹脂成形品を得た。
【0121】
<実施例5>
実施例1において、印刷条件としての網点面積率100%を50%のドット状印刷に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例5のラベル及びラベル付き樹脂成形品を得た。
【0122】
<比較例1、2>
実施例1において、インク受容層材料B1を表1に記載のインク受容層材料に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例1および2のラベル及びラベル付き樹脂成形品を得た。
【0123】
<比較例3>
実施例1において、インク受容層材料B1を表1に記載のインク受容層材料B4に変更したところ、インク受容層にインクが定着せず、印刷できなかった。
【0124】
<比較例4>
実施例1において、インク受容層(B)を設けなかったところ、基材層(A)にインクが定着せず、印刷できなかった。
【0125】
<比較例5、6>
実施例1において、印刷層材料C1を表1に記載の印刷層材料に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例5および6のラベル及びラベル付き樹脂成形品を得た。
【0126】
[評価]
表2に、インモールド成形用ラベル付き樹脂成形品の構成、及び評価結果を示す。
【0127】
【表2】
【0128】
表2から明らかなように、実施例1〜6において、基材層(A)上にインク受容層(B)を介して印刷によって印刷層(C)を設けたところ、インク転移性は良であった。さらに、インモールド成形によって溶融した樹脂成形品材料の熱により、印刷層(C)と樹脂成形品とを貼着させることができた。
【0129】
ラベル付き樹脂成形品からラベル(基材層)を剥離すると、印刷層(C)はラベル(基材層)側から樹脂成形品側に転写し、印刷情報を有する絵柄付き樹脂成形品が得られた。ラベルを剥離した際、実施例1〜6において、剥離強度が1〜10N/15mmを示し、易剥離性ラベルとして実用的な値を示した。ラベルを剥離した時に印刷層(C)がラベル側から樹脂成形品側に転写することは、印刷層(C)と樹脂成形品との剥離強度が印刷層(C)とインク受容層(B)との剥離強度より高いか、印刷層(C)と樹脂成形品との剥離強度がインク受容層(B)と基材層(A)との剥離強度より高い関係によって達成される。
【0130】
加えて、実施例1と実施例5を比較すると、網点面積率を変化させることによって、剥離強度を制御できることが示された。
【0131】
一方、インク受容層(B)が実施例と異なる比較例1、2のラベル付き樹脂成形品では、ラベル剥離時に、印刷層(C)が樹脂成形品に転写せず、印刷層(C)の一部がラベル側に残った。また剥離強度も強く、易剥離性ラベルとしては実用の範囲を超える。比較例3のラベルのインク受容層(B)は、インク受容性が悪く、印刷層(C)を設けることができなかった。比較例4のラベル付き樹脂成形品は、インク受容層(B)がないため、ラベルにインクを転移させることができず、印刷層(C)を設けることができなかった。
【0132】
オフセット印刷用として一般的な油性インク、または紫外線硬化型インクを用いた比較例5、6のラベル付き樹脂成形品は、実用上好ましい剥離強度が得られなかった。
【0133】
実施例1〜6と比較例1〜4との対比から、インク受容層(B)の材料として、ポリエチレンイミン系樹脂を使用することが好適であることを示している。但し、インク受容層(B)の材料が前記剥離強度の関係を満たすならば、ポリエチレンイミン(B1)に限定されないことは言うまでもない。
【0134】
また、実施例および比較例では射出成型用金型を使用したが、これに限定されず、ダイレクトブロー、ストレッチブロー、インジェクションブロー等の中空成形、圧空成形、真空成型にも使用できる。
【0135】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2017年3月31日付で出願された日本特許出願(特願2017−072025)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0136】
1 インモールド成形用ラベル
2 ラベル付き樹脂成形品
11 基材層(A)
12 インク受容層(B)
13 印刷層(C)
21 樹脂成形品
31 第2のインク受容層(b)
41 第2の印刷層(c)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7