特許第6829311号(P6829311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829311
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】複合乗物ボディ
(51)【国際特許分類】
   B64C 1/00 20060101AFI20210128BHJP
   B64C 1/08 20060101ALI20210128BHJP
   B64C 1/12 20060101ALI20210128BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B64C1/00 B
   B64C1/08
   B64C1/12
   B29C70/06
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-520356(P2019-520356)
(86)(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公表番号】特表2020-501957(P2020-501957A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】US2017059778
(87)【国際公開番号】WO2018085579
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2020年10月23日
(31)【優先権主張番号】62/417,056
(32)【優先日】2016年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/682,818
(32)【優先日】2017年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/682,844
(32)【優先日】2017年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/682,835
(32)【優先日】2017年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/682,826
(32)【優先日】2017年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/697,483
(32)【優先日】2017年9月7日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519444409
【氏名又は名称】コンティニュアス コンポジッツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ストッケット,ライアン シー.
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6655633(US,B1)
【文献】 米国特許第9463864(US,B1)
【文献】 米国特許第5407727(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/00, 3/00
B29C 70/16,70/52
B32B 3/26, 5/12, 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物ボディであって、
内部骨格と、
前記内部骨格に亘って形成された表皮であって、前記表皮は、
マトリックス材料と、
前記マトリックス材料内に包まれた複数の連続繊維であって、前記複数の連続繊維のうちの少なくとも1つは、引っ張られた状態にあり、その長さに沿って異なるレベルの張力を有する、複数の連続繊維と
を含む、表皮と
を含み、
前記内部骨格は、翼形状を形成し、
前記複数の連続繊維は、前記翼形状の前後方向の中央付近の基部端から、前記翼形状の前縁および後縁の翼端に向かって外側に湾曲する、乗物ボディ。
【請求項2】
前記表皮は、前記内部骨格上の異なる位置に位置決めされた複数のマトリックス材料を含み、前記複数のマトリックス材料は、アクリル化エポキシと、可撓性樹脂および熱分解樹脂のうちの少なくとも1つとを含む、請求項1に記載の乗物ボディ。
【請求項3】
乗物ボディであって、
第1の付加製造システムを介して作製された内部骨格と、
前記第1の付加製造システムとは異なる第2の付加製造システムを介して前記内部骨格に亘ってインサイチュで作製された表皮と
を含み、
前記内部骨格は複数の隣接する中空管を含み、
前記内部骨格および前記表皮は、共に翼形状を形成し、
前記複数の隣接する中空管が前記翼形状の長さ方向に延び、
前記複数の隣接する中空管は、マトリックス材料と前記マトリックス材料内に包まれた複数の連続繊維とから作製され、
前記表皮は、マトリックス材料と前記マトリックス材料内に包まれた複数の連続繊維とから作製され、
前記内部骨格の前記複数の連続繊維のうちの少なくともいくつかは、前記表皮に延び、前記表皮の一部を形成する、乗物ボディ。
【請求項4】
翼および胴体を有する乗物ボディであって、
第1の付加製造システムを介して作製され、前記翼の長さ方向に延び、マトリックスでコーティングされた複数の連続繊維から形成された複数の隣接する中空管を有する内部骨格と、
前記第1の付加製造システムとは異なる第2の付加製造システムを介して前記内部骨格に亘ってインサイチュで作製された表皮であって、マトリックスでコーティングされた複数の連続繊維を有し、前記内部骨格に置かれた表皮と
を含み、
前記内部骨格と前記表皮との両方の前記複数の連続繊維は、引っ張られた状態にあり、
前記複数の中空管のうちの少なくとも1つは、燃料タンクおよび燃料通路のうちの少なくとも1つとして機能するためにコーティングされており、
前記内部骨格および前記表皮は、共に翼形状を形成し、
前記内部骨格の前記複数の連続繊維のうちの少なくともいくつかは、前記表皮に延び、前記表皮の一部を形成する、乗物ボディ。
【請求項5】
乗物ボディであって、
内部骨格と、
前記内部骨格に亘ってインサイチュで作製された表皮であって、前記表皮は、
マトリックス材料と、
前記マトリックス材料内に包まれた複数の連続繊維と
を含む、表皮と
を含み、
前記複数の連続繊維は、前記複数の連続繊維のうちの他の連続繊維と織り交ぜられ、ヒーター及びひずみゲージのうちの少なくとも1つとして機能するように構成された少なくとも1つの導電性ワイヤを含み、
前記マトリックス材料は、前記表皮内の複数の連続繊維の長さに沿った戦略的位置に配置された複数の樹脂を含む、乗物ボディ。
【請求項6】
乗物ボディであって、
内部骨格と、
前記内部骨格に亘って形成された表皮であって、前記表皮は、
マトリックス材料と、
前記マトリックス材料内に包まれた複数の連続構造繊維と、
前記複数の連続構造繊維と織り交ぜられた、導電性ワイヤ、形状記憶繊維、および光ファイバのうちの少なくとも1つと
を含む、表皮と
を含み、
前記表皮の前記複数の連続構造繊維のうちの少なくともいくつかは、前記内部骨格に延在し、前記内部骨格の一部を形成する、乗物ボディ。
【請求項7】
乗物ボディであって、
内部骨格と、
前記内部骨格に化学的に結合した表皮であって、前記表皮は、
マトリックス材料と、
前記マトリックス材料内に包まれた複数の連続繊維と、
を含む、表皮と
を含み、
前記複数の連続繊維は、前記内部骨格に延在し、前記内部骨格の一部を形成する複数の構造繊維、及び前記複数の構造繊維と織り交ぜられた少なくとも1つの機能性繊維を含む、乗物ボディ。
【請求項8】
乗物ボディであって、
翼形状および胴体形状を形成する内部骨格と、
前記内部骨格に亘ってインサイチュで作製された表皮であって、前記表皮は、
マトリックス材料と、
前記マトリックス材料で少なくとも部分的にコーティングされた複数の連続繊維であって、前記翼形状から前記胴体形状に亘って延びる、複数の連続繊維と
を含む表皮と
を含み、
前記複数の連続繊維は、
前記乗物ボディの表面に対して全体的に平行な第1の層に配置された第1の複数の連続繊維と、
前記第1の層と重なる第2の層に配置された第2の複数の連続繊維とを含み、
前記第1の複数の連続繊維は、前記第1の層から前記第2の層へと外面に垂直に延在して、前記第1の層と前記第2の層を連結する、乗物ボディ。
【請求項9】
乗物ボディであって、
マトリックス材料および前記マトリックス材料で少なくとも部分的にコーティングされた複数の連続繊維から胴体形状および翼形状を共に作る、翼小骨、翼桁、トラス、梁受け縦材、縦通材、および隔壁のうちの少なくとも1つを有する内部骨格と、
前記内部骨格に亘ってインサイチュで作製された表皮と
を含み、
前記複数の連続繊維は、前記内部骨格から前記表皮に延びる、乗物ボディ。
【請求項10】
乗物ボディであって、
マトリックス材料および前記マトリックス材料で少なくとも部分的にコーティングされた複数の連続繊維を含む内部骨格と、
前記内部骨格に亘ってインサイチュで作製された表皮と
を含み、
前記複数の連続繊維は、
前記乗物ボディの表面に対して全体的に平行な第1の層に配置された第1の複数の連続繊維と、
前記第1の層と重なる第2の層に配置された第2の複数の連続繊維とを含み、
前記第1の複数の連続繊維は、前記第1の層から前記第2の層へと外面に垂直に延在して、前記第1の層と前記第2の層を連結する、乗物ボディ。
【請求項11】
乗物ボディであって、
互いに接着された複数のオーバーラップ層によって形成された骨格を含み、前記複数のオーバーラップ層のそれぞれは、マトリックス材料でコーティングされた連続繊維から作製され、前記連続繊維の経路は、前記複数のオーバーラップ層の隣接する層の間で異なり、
さらに、マトリックス材料でコーティングされた連続繊維シートから前記骨格に亘って形成された表皮を含み、
前記表皮の前記マトリックス材料は、前記骨格の前記マトリックス材料とは異なる、乗物ボディ。
【請求項12】
乗物ボディであって、
互いに接着された複数のオーバーラップ層によって形成された骨格を含み、前記複数のオーバーラップ層のそれぞれは、マトリックス材料でコーティングされた連続繊維から作製され、前記連続繊維の経路は、前記複数のオーバーラップ層の隣接する層の間で異なり、
前記骨格は、翼形状を有し、
前記複数のオーバーラップ層のそれぞれは、前記翼形状の翼小骨断面を形成する、乗物ボディ。
【請求項13】
乗物ボディであって、
互いに接着された複数のオーバーラップ層によって形成された骨格であって、前記複数のオーバーラップ層のそれぞれは、マトリックス材料でコーティングされた連続繊維から作製される、骨格と、
マトリックス材料でコーティングされた連続繊維シートから前記骨格に亘って形成された表皮と
を含み、
前記複数のオーバーラップ層は、
前記骨格の断面のオープンセンタ周辺部を形成する第1のタイプの層と、
周辺部および前記周辺部内のノードの間の横材を有する前記骨格の断面を形成する第2のタイプの層と
を含み、
前記第1のタイプの層は、前記複数のオーバーラップ層内で前記第2のタイプの層と交替する、乗物ボディ。
【請求項14】
乗物ボディであって、
対向する支持表面、対向するブレース、および前記対向する支持表面と前記対向するブレースとを接続する横材を有する翼小骨を含む内部骨格であって、前記対向する支持表面、対向するブレース、および横材は、ミドルアウト・ツールパスを使用して、少なくとも1つの連続繊維によって形成される、内部骨格と、
前記内部骨格に亘って形成された表皮であって、前記表皮は、
マトリックス材料と、
前記マトリックス材料内に包まれ、前記乗物ボディの表面に対して全体的に平行な層に配置された、複数の連続繊維と
を含む表皮と
を含む、乗物ボディ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001] 本願は、その内容が参照によって特に本明細書に組み込まれている、2016年3月11日に出願した米国仮特許出願第62/417056号に基づき、その優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
[0002] 本開示は、全般的には乗物ボディに関し、より具体的には複合材料から作られた乗物ボディに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 乗物ボディ(たとえば、飛行機の機体、自動車の車体、または船の船体)は、一般に、乗物に形状を与える内部骨格と、骨格(skeleton)に被さり、滑らかな外表面を提供する表皮(skin)とを含む。現代の乗物ボディは、複合材を含む異なる材料の組合せから作製される。たとえば、骨格は、通常は木、アルミニウム、またはステンレス鋼から作られ、表皮は、通常は樹脂マトリックス内に埋め込まれた繊維(たとえば、炭素繊維またはガラス繊維)から作られる。
【0004】
[0004] 引抜成形は、乗物ボディのまっすぐな骨格部品(たとえば、ビーム、縦通材など)を製造するための一般的な方法である。引抜成形製造中に、個々の繊維ストランド、ストランドの編組、および/または織物が、対応するスプールから樹脂浴および静止ダイを介して引っ張られる。その後樹脂は、硬化し、固まることを許される。硬化の前の繊維の引抜きに起因して、繊維の一部は、硬化が完了した後に、あるレベルの引張応力を維持する場合がある。この引張応力は、繊維が引っ張られた方向で骨格部品の強度を高める可能性がある。
【0005】
[0005] 真空補助樹脂注入成形(vacuum-assisted resin transfer molding;VARTM)プロセスは、内部骨格が既に形成された後に、乗物ボディの表皮を作製するのに一般的に使用されている。VARTMプロセスでは、繊維材料のシートが、内部骨格の上に手作業で引っ張られ、定位置に鋲で留められる。鋲で留められた材料はその後、液体マトリックス(たとえば、熱硬化樹脂または加熱された熱可塑性物質)で、手作業でコーティングされ、液体マトリックスの含浸を容易にするために真空バッグでカバーされ、硬化し、固まることを許される。
【0006】
[0006] 引抜成形製造およびVARTMは、いくつかの状況で乗物ボディ部品を作るための許容できる方法である可能性があるが、問題を含む可能性もある。具体的には、VARTMによって作られた表皮は、しばしば、金属ファスナ(たとえば、ねじ、リベット、およびクリップ)を介して、引抜成形された骨格部品に取り付けられ、かつ/または強化される。金属ファスナの使用は、骨格設計を駆り立て、乗物ボディの重量およびコストを増加させる可能性がある。さらに、様々な乗物ボディ部品は、特別に設計されたハードウェアを介して互いに接合される必要がある場合があり、このハードウェアも、重く高コストになる可能性がある。さらに、エレクトロニクス(たとえば、センサ、ヒーター、電気リードなど)が、製造後に乗物ボディに追加される必要がある場合があり、このエレクトロニクスが、重量、コスト、および信頼性の欠如をさらに増加させる可能性がある。最後に、従来の引抜成形プロセスおよびVARTM製造プロセスは、乗物ボディの設計および/または使用における可撓性をほとんど提供しない場合がある。
【0007】
[0007] 開示される複合乗物ボディは、従来技術の上で示された問題および/または他の問題のうちの1つまたは複数を克服することを対象とする。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 一態様では、本開示は、乗物ボディを対象とする。乗物ボディは、互いに接着された複数のオーバーラップ層によって形成された骨格を含むことができる。複数のオーバーラップ層のそれぞれは、マトリックス材料でコーティングされた連続繊維から作製され得る。連続繊維の経路は、複数のオーバーラップ層の隣接する層の間で異なり得る。
【0009】
[0009] もう1つの態様では、本開示は、もう1つの乗物ボディを対象とする。この乗物ボディは、互いに接着された複数のオーバーラップ層によって形成された骨格を含むことができる。複数のオーバーラップ層のそれぞれは、マトリックス材料でコーティングされた連続繊維から作製され得る。この乗物ボディは、マトリックス材料でコーティングされた連続繊維シートから内部骨格上に形成された表皮をも含むことができる。複数のオーバーラップ層は、骨格の断面のオープンセンタ周辺部を形成する第1のタイプの層と、周辺部および周辺部内のノードの間の横材を有する骨格の断面を形成する第2のタイプの層とを含むことができる。第1のタイプの層は、複数のオーバーラップ層内で第2のタイプの層と交替することができる。
【0010】
[0010] もう1つの態様では、本開示は、もう1つの乗物ボディを対象とする。この乗物ボディは、対向する支持表面、対向するブレース、および支持表面とブレースとを接続する横材を有する翼小骨を有する内部骨格を含むことができる。対向する支持表面、対向するブレース、および横材は、ミドルアウト・ツールパスを使用して、少なくとも1つの連続繊維によって形成され得る。この乗物ボディは、内部骨格の上に形成される表皮をも含むことができる。表皮は、マトリックス材料と、マトリックス材料内に包まれ、乗物ボディの表面に対して全体的に平行な層に配置された、複数の連続繊維と含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[0011]例示的な乗物ボディを示す概略図である。
図2】[0012]製造中の図1の乗物ボディの例示的な部分を示す概略図である。
図3】[0012]製造中の図1の乗物ボディの例示的な部分を示す概略図である。
図4】[0012]製造中の図1の乗物ボディの例示的な部分を示す概略図である。
図5】[0012]製造中の図1の乗物ボディの例示的な部分を示す概略図である。
図6】[0013]図1の乗物ボディを作製するのに使用され得る例示的な繊維を示す断面図である。
図7】[0014]図1の乗物ボディの追加の例示的な部分を示す概略図である。
図8】[0014]図1の乗物ボディの追加の例示的な部分を示す概略図である。
図9】[0014]図1の乗物ボディの追加の例示的な部分を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0015] 図1は、例示的な乗物ボディ(「ボディ」)10を示す。開示される実施形態では、ボディ10は、航空機機体(たとえば、飛行機の機体またはドローンの機体)である。しかし、望まれる場合に、ボディ10を別のタイプのボディ(たとえば、自動車の車体、船の船体など)とすることができることが企図されている。ボディ10は、その構成および所期の用途に関わりなく、外表皮18によってカバーされた内部骨格(たとえば、翼桁、翼小骨、梁受け縦材、隔壁、トラス、縦通材など)16から作られた1つまたは複数の構成要素(たとえば、胴体12、1つまたは複数の翼14など)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ボディ10の構成要素は、別々に作製され、その後に一緒に接合され得る(たとえば、ねじ締結、リベット締めなどを介して)。他の実施形態では、ボディ構成要素は、一体のモノリシック構造(たとえば、少なくとも多少の破壊なしには分解できない構造)として一緒に作製され得る。
【0013】
[0016] 図2に示されているように、ボディ10の構成要素のうちの1つまたは複数は、付加製造プロセスを介して作製され得る。たとえば、骨格16は、第1の付加製造プロセスから作製され得、表皮18は、第2の異なる付加製造プロセスから製造され得る。望まれる場合に、骨格16と表皮18との両方が、同一の付加製造プロセスから製造され得ることが企図されている。
【0014】
[0017] 第1の付加製造プロセスは、複合材料(たとえば、マトリックスMと少なくとも1つの連続繊維Fとを有する材料)から中空管構造物20を作成する引抜成形プロセスおよび/または押出成形プロセスとすることができる。具体的には、1つまたは複数のヘッド22が、構造物20の結果の縦軸26が3次元になるように、構造物20の放出中にヘッド(1つまたは複数)22を複数の方向に移動することができる支柱24(たとえば、ロボット・アーム)に結合され得る。そのようなヘッドは、たとえば、米国特許出願第13/975300号、米国特許出願第15/130207号、およびPCT出願第2016042909号で開示されており、これらの特許出願のすべてが、参照によってその全体を本明細書に組み込まれている。
【0015】
[0018] ヘッド(1つまたは複数)22は、マトリックス材料Mを受け、または他の形でこれを含むように構成され得る。マトリックス材料Mは、硬化可能である任意のタイプの液体樹脂(たとえば、揮発性有機化合物を含まない樹脂)を含むことができる。例示的な樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、陽イオン性エポキシ、アクリル化エポキシ、ウレタン、エステル、熱可塑性物質、感光性樹脂、ポリエポキシド、熱硬化アクリル酸塩、熱硬化樹脂、ビスマレイミド、シリコンなどを含む。一実施形態では、ヘッド(1つまたは複数)22の内部のマトリックス材料Mの圧力は、対応する導管(図示せず)を介してヘッド(1つまたは複数)22に流体接続された外部デバイス(たとえば、押出機または別のタイプのポンプ)によって生成され得る。しかし、別の実施形態では、圧力は、同様のタイプのデバイスによって完全にヘッド(1つまたは複数)22の内部で生成され得、かつ/または単純に重力がマトリックス材料Mに作用した結果とすることができる。いくつかの例では、ヘッド(1つまたは複数)22の内部のマトリックス材料Mは、早すぎる硬化を抑制するために、冷たく、かつ/または暗く保たれる必要がある場合があり、他の場合には、マトリックス材料Mは、同一の理由から暖かく保たれる必要がある場合がある。どちらの状況でも、ヘッド(1つまたは複数)22は、これらの必要に備えるために特別に構成され(たとえば、断熱され、冷やされ、かつ/または暖められ)得る。
【0016】
[0019] ヘッド(1つまたは複数)22の内部に貯えられたマトリックス材料Mは、任意の個数の連続繊維Fをコーティングし、繊維Fと一緒に複合材構造物20の壁を作り上げるのに使用され得る。繊維Fは、単一のストランド、複数のストランドのトウもしくは粗紡、または多数のストランドの織物を含むことができる。ストランドは、たとえば、炭素繊維、植物繊維、木質繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、金属ワイヤ、SiCセラミック繊維、玄武岩繊維などを含むことができる。繊維Fは、望みに応じて、繊維Fがヘッド(1つまたは複数)22の内部にある間、繊維Fがヘッド(1つまたは複数)22に渡されている間、および/または繊維Fがヘッド(1つまたは複数)22から放出されている間に、マトリックス材料Mでコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、マトリックス材料Mが繊維Fをコーティングする前および/またはその後に、充填材材料(たとえば、短繊維)が、マトリックス材料Mと混合され得る。マトリックス材料、乾燥した繊維、マトリックス材料Mで既にコーティングされている繊維、および/または充填材は、当業者に明白な任意の形でヘッド(1つまたは複数)22内に輸送され得る。その後、マトリックスをコーティングされた繊維Fは、ヘッド(1つまたは複数)22の口に配置された集中化されたダイバータ(図示せず)を通過することができ、ここで、樹脂は、1つまたは複数の硬化エンハンサ(cure enhancer)(たとえば、UV光および/または超音波エミッタ)27によって硬化させられる(たとえば、内側から外側へ、外側から内側へ、またはその両方)。
【0017】
[0020] 図2の例では、構造物20は、翼14の長さ方向に延び、骨格16の少なくとも一部を作り上げる。各構造物20は、別の構造物20に隣接して放出され、かつ/または以前に放出された構造物20にオーバーラップし、その後に、隣接する構造物20内の液体樹脂が一緒に接着する(bond)ように硬化され得る。任意の個数の構造物20が、一緒にグループ化され、翼14の所望の骨格形状を生成するのに必要な任意の経路(trajectory)を有することができる。
【0018】
[0021] いくつかの実施形態では、充填材料(たとえば、絶縁体、導体、光学器械のレンズ、表面仕上げなど)が、構造物20が形成されている間に構造物20の内部および/または外部に堆積され得る。たとえば、中空シャフト(図示せず)が、関連するヘッド(1つまたは複数)22の中央を通って、および/または関連するヘッド(1つまたは複数)22のいずれかの上を延びることができる。その後、材料の供給(たとえば、液体供給、泡供給、固体供給、気体供給など)が、中空シャフトの端に接続され得、材料が、中空シャフトを介して、構造物20の特定の表面(たとえば、内面および/または外面)に押しやられ得る。望まれる場合に、構造物20の硬化に使用されるものと同一の硬化エンハンサ(1つまたは複数)27が、充填材料を硬化するのにも使用され得ること、または、追加の専用の硬化エンハンサ(1つまたは複数)(図示せず)が、この目的に使用され得ることが、企図されている。充填材料は、構造物20のうちの1つまたは複数が、燃料タンク、燃料通路、電気導管、換気ダクトなどとして機能することを可能にすることができる。
【0019】
[0022] 図2の例示的な翼14を作製するのに使用される第2の付加製造プロセスも、引抜成形プロセスおよび/または押出成形プロセスとすることができる。しかし、中空管構造物20を作成するのではなく、第2の付加製造プロセスは、管構造物20の上(および/または骨格16の他の特徴の上)に複合材料のトラック、リボン、および/またはシートを放出して、これによって表皮18を作製するのに使用され得る。具体的には、1つまたは複数のヘッド28が、表皮18の結果の輪郭が3次元になるように、表皮18の作製中にヘッド(1つまたは複数)28を複数の方向に移動することのできる支柱30(たとえば、オーバーヘッド・ガントリ)に結合され得る。
【0020】
[0023] ヘッド28は、ヘッド22に類似し、マトリックス材料M(たとえば、ヘッド22内に含まれるものと同一のマトリックス材料M)を受け、または他の形で含むように構成され得る。ヘッド(1つまたは複数)28の内部に貯えられたマトリックス材料Mは、任意の個数の別々の繊維Fをコーティングし、繊維Fが、放出するトラック、リボン、および/またはシートの集中化された強化を作り上げることを可能にするのに使用され得る。繊維Fは、単一のストランド、複数のストランドのトウもしくは粗紡、または多数のストランドの織物を含むことができる。ストランドは、たとえば、炭素繊維、植物繊維、木質繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、金属ワイヤ、などを含むことができる。繊維Fは、望みに応じて、繊維Fがヘッド(1つまたは複数)28の内部にある間、繊維Fがヘッド(1つまたは複数)28に渡されている間、および/または繊維Fがヘッド(1つまたは複数)28から放出されている間に、マトリックス材料Mでコーティングされ得る。マトリックス材料、乾燥した繊維、および/またはマトリックス材料で既にコーティングされている繊維は、当業者に明白な任意の形でヘッド(1つまたは複数)28内に輸送され得る。その後、マトリックスをコーティングされた繊維Fは、円形オリフィス、長方形オリフィス、三角形オリフィス、または別の曲がった形状もしくは多角形形状のオリフィスを通過することができ、ここで、繊維Fは、一緒にプレスされ、樹脂が、1つまたは複数の硬化エンハンサ27によって硬化させられる。
【0021】
[0024] 図3に示された別の例示的な実施形態では、単一の付加製造プロセスだけが、翼14を作製するのに使用されている。具体的には、上で説明した第2の製造プロセスが、連続繊維Fおよびマトリックス材料Mを用いて骨格16(たとえば、翼桁および/または梁受け縦材の)の層を付加的に作り上げ、同一のまたは異なる連続繊維Fおよびマトリックス材料Mの表皮18の付加的に作り上げられた層によって骨格16をカバーするのに使用されている。骨格16を作り上げる繊維Fは、連続した機械的接続が連続繊維Fによって骨格16と表皮18との間に形成されるように、表皮18の一部になるために骨格16の外側表面の上で連続することができる。このようにして、表皮18を骨格16に接続するのに必要なファスナの個数が、減らされ得る(除去されないとしても)。支柱24および/または支柱30が、翼14の作製中(または、ボディ10の任意の他の構成要素の作製中)に任意の個数のヘッド28を移動するのに使用され得ることが企図されている。
【0022】
[0025] 上で説明したように、第1および第2の付加製造プロセスは、押出成形プロセスまたは引抜成形プロセスとすることができる。たとえば、押出成形は、液体の樹脂マトリックスMおよび関連する連続繊維Fが、支柱24および/または30の移動中にヘッド(1つまたは複数)22および/またはヘッド(1つまたは複数)28から押し出される時に発生することができる。引抜成形は、ある長さの樹脂コーティングされた繊維がアンカ(図示せず)に接続され、硬化された後、ヘッド(1つまたは複数)22および/またはヘッド(1つまたは複数)28のアンカから離れる移動の後に発生することができる。ヘッド(1つまたは複数)22および/またはヘッド(1つまたは複数)28のアンカから離れる移動は、繊維Fが、マトリックス材料Mのコーティングと一緒にそれぞれのヘッド(1つまたは複数)から引っ張られるようにする。
【0023】
[0026] いくつかの実施形態では、引抜成形は、骨格16および/または表皮18を作り上げる繊維F内の、硬化の後に残る張力を生成するために選択的に実施され得る。具体的には、繊維Fが、それぞれのヘッド(1つまたは複数)から引っ張られる時に、繊維Fは、引っ張られ得る。この引張りが、繊維F内の張力を作成することができる。繊維Fを囲むマトリックスMが、繊維Fが引っ張られている間に硬化し、固まる限り、この張力の少なくとも一部が、繊維F内に残り、結果の複合材構造の強度を高めるように機能する。
【0024】
[0027] 従来の引抜成形法を介して作製された構造は、単一の方向(たとえば、手作業の樹脂含浸および硬化の前に繊維が対応するダイを介して引っ張られる1つの方向)でのみ高められた強度を有する可能性がある。しかし、開示される実施形態では、対応する繊維F内の残留張力によって引き起こされるボディ10の骨格16および/または表皮18(たとえば、翼14内)の高められた強度は、各繊維Fの軸方向で実現され得る。また、各繊維Fが、ヘッド(1つまたは複数)22および/または28によって放出される時に異なる方向で引っ張られ得るので、張力関連の強度増加は、複数(たとえば、無数)の異なる方向で実現され得る。
【0025】
[0028] 従来の引抜成形法を介して作製された構造は、単一のレベルだけ(たとえば、手作業の樹脂含浸および硬化の前の、繊維性の布が引っ張り機(pulling machine)によって引っ張られた量に比例するレベル)まで高められた強度を有する可能性がある。しかし、開示される実施形態では、各繊維Fを囲むマトリックスMが、放出の直後に硬化され、固められ得るので、繊維Fに対する引っ張る力は、同一の繊維Fの異なるセグメント(segment)が異なる量だけ引っ張られるように、繊維Fの長さに沿って連続的に変更され得る。したがって、各繊維Fの異なるセグメントのそれぞれの中で誘導される引張り応力も、異なるものとすることができ、ボディ10の骨格16および/または表皮18の異なるセグメント内の可変強度をもたらす。これは、ボディ10の変化する負荷を受ける区域(たとえば、翼14と胴体12との交差部分、翼14の中央内、翼14の前端など)において有益である可能性がある。
【0026】
[0029] 図4は、表皮18の繊維Fが、翼14の所望の特性を提供するように配置され得る例示的な形を示す。この例では、繊維Fは、有機的(organically)に(たとえば、木が成長するように、または血管が体内で位置を定められるように)配置される。具体的には、翼14の構造16上に配置される繊維Fは、胴体12との交差部分でおよび全般的な縦方向の中央(fore/aft center)でアンカリングされ得る。その後、繊維Fは、翼14の遠位翼端に向かって、縦方向の中央から離れて(たとえば、翼14の前縁または後縁に向かって)引っ張られ得、異なる繊維Fは、遠位翼端に向かって異なる距離だけ延びる。さらに、放出するマトリックス材料Mが、ヘッド28からの放出の直後に硬化し、構造16または表皮18の以前に放出された層のいずれかに接着することができるので、放出中のヘッド28の移動は、繊維Fの、曲がる経路(trajectory)を作成するように制御され得る。繊維Fが、その遠位終端点で完全に翼14の回りを通り、その後、その最初の経路の鏡像に従って胴体12に向かって戻って引っ張られ得ることが企図されている。有機的に配置された繊維のこの配置は、翼14の上側に、翼14の下側に、および/または複数の位置で翼14の断面周辺部(cross-sectional perimeter)の周囲に、配置され得る。この配置を用いると、翼14の遠位翼端付近より高密度の繊維Fが、胴体12の付近に存在することができる。したがって、翼14は、胴体12の付近および全般的な縦方向の中央付近でより厚くなり、遠位翼端、前縁、および後縁に向かって先細りになることができる。望みに応じて、他の配置および/または繊維分布方式が使用され得る。
【0027】
[0030] 図5に示された1つの例示的な実施形態では、ボディ10の1つまたは複数の部分を作り上げる複合材料内の繊維Fの一部が、独自の特性を有する。たとえば、翼14の大部分は、構造タイプの繊維F(たとえば、炭素繊維、ガラス繊維、またはKevlar繊維)を含むことができるが、翼14のいくつかの部分は、別のタイプの繊維F(たとえば、導電性繊維Fec、光ファイバF、形状記憶繊維Fsmなど)を含むことができる。他のタイプの繊維Fが、戦略的位置(strategic location)で構造タイプの繊維Fと選択的に織り混ぜられ得る。たとえば、導電性繊維Fecが、翼14の前縁および/または翼14のより薄い部分に配置され、電源に接続され、翼14から氷を除去するのに使用され得る加熱電極として使用され得る。代わりの、導電性繊維Fecが、高応力領域(たとえば、翼14と胴体12との交差部分)に配置され、ボディ10の荷重を検出するひずみゲージとして使用され得る。同様の方法で、光ファイバFが、高応力領域に配置され得、エネルギ・ビームが、これを介して渡され得る。ボディ10が曲がる時に、光ファイバFは、押し潰され、かつ/または閉ざされ、これによって、屈曲を示す光フィードバック信号を生成することができる。さらに別の実施形態では、形状記憶合金(たとえば、Nitonol)から作製された繊維Fsmが、構造タイプの繊維Fと織り混ぜられ、選択的にエネルギを与えられ(たとえば、電気または熱を介して)、所望の空気力学性能(たとえば、ステアリング、方位、昇降制御、安定性、抗力など)をもたらすボディ10の屈曲(たとえば、制御された押しおよび/または引き)を引き起こすことができる。図6に示されているように、導電性繊維Fec、光ファイバF、および/または形状記憶繊維Fsmは、望まれる場合に、別の材料(たとえば、絶縁、強度強化層など)でコーティングされ得ることが企図されている。他の電気構成要素(たとえば、抵抗、キャパシタなど)が、繊維Fec、繊維F、および/または繊維Fsmの放出中に、ヘッド22、28を介して押し出され、かつ/または自動的にピックアンドプレースされ得る(たとえば、ヘッド22および/または28に関連するアタッチメントを介して)ことも企図されている。これらの構成要素の動作ならびに/または繊維Fec、繊維F、および/もしくは繊維Fsmの動作は、たとえば繊維の形状、張力、および/またはサイズを調整することによって、これらの状況で選択的に調整され得る。
【0028】
[0031] 従来の引抜成形法および/または押出成形法を介して作製された構造は、関連する繊維の方位において制限される場合がある。すなわち、繊維が、全体的にオーバーラップし、平行の層内にある場合がある。しかし、図5に示された実施形態では、各繊維Fを囲むマトリックスMが、放出の直後に硬化され、固められ得るので、繊維Fは、追加の支持なしに自由空間内に延びさせられ得る。すなわち、繊維Fは、互いの上の平らな層内にあることを要求されないものとすることができる。したがって、骨格16および/または表皮18を作り上げる繊維Fは、3次元で互いに垂直な方向に方位を定められ得る。たとえば、図5は、翼14の表面に垂直な方向に延びる繊維Fを示す。これは、繊維層の連結および/または独自の(たとえば、乱流を強化する)表面テクスチャの作成を可能にすることができる。
【0029】
[0032] 上で説明され、図5に示されているように、ボディ10は、いくつかの実施形態で、一体のモノリシック構造として作製され得る。たとえば、翼14は、胴体12と一緒に(たとえば、同時に、胴体12からの分離なしで)作製され得る。具体的には、支柱(1つまたは複数)24および/または30が、表皮18を作成するために骨格16上で任意の個数のヘッド28を移動する(図2参照)時に、ヘッド(1つまたは複数)28は、胴体12の上または下で1つの翼14から進み、対向する翼14にまたがって継続することができる。この場合に、ヘッド(1つまたは複数)28から放出する繊維Fは、翼14および胴体12にわたって連続とされ得る。このプロセスは、数百万(数億ではないとしても)の繊維Fが翼14と胴体12との交差部分を通って延びるように、任意の回数だけ繰り返され得、これによって、特殊化されたハードウェアおよび/または重いファスナの使用を要求せずに、強い機械的接続を作成することができる。
【0030】
[0033] 図5に示された例示的な実施形態では、ボディ10の1つまたは複数の部分を作り上げる複合材料内のマトリックスMは、独自の特性を有する。たとえば、翼14の大部分は、構造タイプのマトリックスM(たとえば、アクリル化エポキシなどの従来のUV硬化可能液体樹脂)を含むことができるが、翼14のいくつかの部分は、別のタイプのマトリックスM(たとえば、熱分解マトリックスM、多少柔軟なままになるマトリックスMなど)を含むことができる。他のタイプのマトリックスMが、戦略的位置で繊維Fをコーティングするのに選択的に使用され得る。たとえば、結果の複合材料が翼14の前縁および/または胴体12の機首で熱シールドとして機能できるように、ヘッド28がこれらの領域に近づく時に、熱分解されたマトリックスMがヘッド28に供給され得る。別の例では、上で説明した所望の空気力学プロパティを提供するために、結果の複合材料がより柔軟になり、選択的にたわませられ、またはねじられることを可能にするように、ヘッド28が翼14の後縁(たとえば、形状記憶繊維Fsmが配置されるところに近づく時に、可撓性マトリックスMがヘッド28に供給され得る。
【0031】
[0034] 図7は、ヘッド28および支柱30の使用を介して作製され得る骨格16の例示的な部分32を示す。翼14の翼小骨として図示され、説明されるが、部分32は、翼14および/または胴体12の別の骨格構成要素とすることができる。この例では、部分32は、対向する外側支持表面34、対向する内部ブレース36、および支持表面34および/またはブレース36を相互接続する複数の横材38を含む。外側支持表面34および/または内部ブレース36が、任意の所望の形状、たとえば、曲がった形状、平らな形状、段付きの形状などを有することができることに留意されたい。望まれる場合に、外側の支持表面34および内側の支持表面34が、1つまたは複数の連続する表面を形成できることも、企図されている。たとえば、支持表面34のうちの1つまたは複数は、曲げられ、全体的にブレース36のうちの1つまたは複数(たとえば、翼小骨の前縁および/または後縁にある)の接線方向にされ得る。また、横材38は、全体的にまっすぐで、支持表面34およびブレース36に対して相対的に約45°の方位にされて図示されているが、横材38も、曲げられ、かつ/または別の角度で方位を定められ得ることが企図されている。7つの隣接するほぼ同一の部分32が、開示される翼小骨を作り上げて図示されているが、任意の個数の同一のまたは異なる部分32(たとえば、1つのみの部分32)が、この目的で使用され得ることに留意されたい。
【0032】
[0035] 部分32は、連続繊維の使用を可能にし、軽量構成で高強度をもたらす独自のツールパスに従って作成され得る。具体的には、部分32は、ミドルアウト法を使用して作製され得る。図8は、複数の異なるオーバーラップ層を使用する作製中のこの戦略の使用を示す。
【0033】
[0036] たとえば、第1の層内で、ヘッド28は、左下角(たとえば、下支持表面34と左ブレース36との内部交差部分に隣接する)での1つまたは複数の連続する樹脂コーティングされた繊維の放出および硬化を開始し、隣接する左上角への上向きの進行中に同一の樹脂コーティングされた繊維(1つまたは複数)の放出および硬化を継続するように制御され得る。その後、ヘッド28は、部分32の全体的な中央に向かって対角線方向に内向きに移動し、その後、全体的に平行な経路に従って左上角に向かって移動するために、中央に達する前に逆戻りすることができる。この逆戻り操作中に、ヘッド28は、空の空間が部分32の対角線に沿って存在し、箱形状が対角線平行トラックの内部の端に形成されるように、その元の経路からある距離だけ離隔され(たとえば、部分32の右に向かってより多くの間隔をとられ)得る。その後、ヘッド28は、部分32の右上角に右向きに移動することができ、これに、部分32の内部の縁に達する時の下向きの約90°の旋回が続く。仮想対角分割線にまたがる鏡像が作成されるように、左上角で行われたものと同一の全般的なパターンが、部分32の右下角で繰り返され得る。その後、ヘッド28は、左向きに移動し、その開始点の手前で停止し、その後、ヘッド28は、時計回りに約45°旋回し、右上角へ部分32を完全に横切って対角線方向に進行することができる。その後、ヘッド28は、ヘッド28がその開始点の付近(たとえば、開始点より半径方向に外でわずかに下)になるように、離隔された平行トラックに沿って左下角に向かって逆戻りすることができる。この逆戻り操作中に、ヘッド28は、空の空間が部分32の対角線に沿って存在するように、その元の経路からある距離だけ離隔され(たとえば、部分32の左に向かってより多くの間隔をとられ)得る。ヘッド28は、右上角に向かって移動する時に、矢じり形状が平行トラックの内部の端に形成されるように、旋回点でその経路から逸脱し、角に向かうことができる。矢じり形状は、この角位置に以前に置かれた固まった繊維に接着することができる。対角線に置かれた繊維(1つまたは複数)は、部分32の中央に以前に置かれた箱形状に接着することができる。このプロセス全体が、対応する個数の材料トラックを第1の層に追加し、これによって第1の層の断面積を増やすために、任意の回数だけ繰り返され得る。繰返し中に、部分32は、外向きに成長することができ、平行トラックの間に配置されるものとして上で説明された空の空間が、充填され得る。任意の1つの層の形成中に、すべての繊維が同一平面内に置かれるように、ヘッド28から放出する繊維が、他の繊維とオーバーラップしないものとすることができることに留意されたい。ヘッド28が、特定の層の終点に達する時に、ヘッド28が新しい層の開始のために再位置決めされ得るように、繊維(1つまたは複数)は、ヘッド28から切られ得る。
【0034】
[0037] 第2の層は、たとえば第1の層のパターンを所望の角度だけ(たとえば約90°だけ)回転することによって、直接に第1の層の上に形成され得る。パターンを約90°だけ回転することによって、第2の層内で部分32を完全に横切って対角線方向に延びる繊維は、第1の層内の部分32の中央で逆戻りした繊維にオーバーラップことができる。繰り返すパターンの異なる部分のこのオーバーラップは、部分32の強度を高めるのを助けることができる。望まれる場合に、任意の個数の繊維が、任意の位置に配置され、層を連結するためにオーバーラップ層に全体的に垂直に方位を定められ得る(たとえば、図5に示されたものに似た繊維F)ことが企図されている。それに加えてまたはその代わりに、以前の層の、放出されたものの硬化されていない部分が、その後に形成された層の上にラップされ、その後、連結強度を改善するために硬化され得る。
【0035】
[0038] 任意の個数の複数の追加層が、交替する方位でおよび/または増分的に回転する角度の方位で(たとえば、角度が90°の倍数ではない時)最初の2つの層の上に形成され得る。これは、部分32の所望の厚さが達成されるまで継続することができる。一例では、胴体12全体および/または翼14全体が、このように作製され得る。たとえば、表皮18は、ミドルアウト手法を使用する時に、部分32の上で同時に作製され得る。具体的には、空の空間が、胴体12および/または翼14の内部で隣接する部分32の間に、支持体34および/またはブレース36の外側部分のみを作成することによって作成され得る。
【0036】
[0039] 図9は、翼14の骨格16および/または表皮18を作成する代替の方法を示す。この実施形態では、図8のミドルアウト法を使用するのではなく、異なる蛇行パターンを有する層が、交番しオーバーラップ形で使用され得る。たとえば、翼14の骨格16を作製する時に、ヘッド28(図7参照)は、翼小骨断面の右端または後端での1つまたは複数の連続する樹脂コーティングされた繊維の放出および硬化を開始し、上向きおよび左への弓形進行中に同一の樹脂コーティングされた繊維(1つまたは複数)の放出および硬化を継続するように制御され得る。ヘッド28は、翼小骨断面の上支持表面34および前端の周囲を完全に移動し、その後、翼小骨断面の下支持表面34を横切る全体的にまっすぐな経路内で開始点に戻って移動することができる。翼小骨断面の完全な周囲を作る時に、ヘッド28は、逆戻りし、翼小骨の周辺部を回る第2ラップ中に逆の経路をたどることができる。両方のラップが、同一の全体的な平面内で互いに直接に隣接した(たとえば、接着される)ままになる限り、望みに応じて、第2ラップが、半径方向に第1ラップの内側または外側で完了され得ることに留意されたい。図9に示された層1は、材料の2つの完全なラップを含むが、単一のラップのみまたは2つ超のラップが使用され得ることが企図されている。層1の第1および/または第2のラップの作製中に、ヘッド28は、中央が横材およびブレーシングのないままになるように、翼小骨断面の中央を通過しないものとすることができる。すなわち、翼小骨断面の周辺部だけが、層1によって形成され得る。
【0037】
[0040] 層1の完了後に、ヘッド28から引きずる繊維は、切断され得、ヘッド28は、層2の作製のために翼小骨断面の前端に向かって移動することができる。ヘッド28は、前端の上表面34での1つまたは複数の連続する樹脂コーティングされた繊維の放出および硬化を開始し、上向きおよび右への(たとえば、後端に向かう)弓形進行中に同一の樹脂コーティングされた繊維(1つまたは複数)の放出および硬化を継続するように制御され得る。上支持表面34を形成し、翼小骨断面の後端に達した後に、ヘッド28は、下支持表面34に沿った全体的にまっすぐな経路内で前端に向かって戻って移動し、前端を回って層2の第1ラップの開始点へ曲がることができる。この、翼小骨断面の周辺部の回りのヘッド28の層2の第1ラップ中に、ヘッド28は、中央がまだ横材およびブレーシングのないままになるように、翼小骨の中央を通過しないものとすることができる。
【0038】
[0041] ヘッド28は、横材38が自由空間内で上および下の支持表面34内の対向するノードの間に作成されるように、層2の第2ラップ中に翼小骨断面の中央を通過することができる。具体的には、第1ラップの開始点に戻った後に、ヘッド28は、逆戻りし、第1ラップの内側の半径位置の曲がった前端の回りの同一の全体的な経路をたどることができる。曲がった前端の回りを移動した後に、ヘッド28は、第1ラップから離れて移動し、上向きおよび右へ(すなわち、後端に向かって)角度を変え、翼小骨断面の中央を通って開始点に向かって通過することができる。開示される実施形態では、上および/または下の支持表面34に対する相対的な横材38の角度は、約25°〜約65°とされ得る。ヘッド28からの材料放出が、第1ラップの内側側面に係合した後に、ヘッド28は、材料のセグメントが翼小骨断面の上支持表面34で第1ラップに隣接して(たとえば、その内側に)置かれるように、短い距離だけ第1ラップの経路を全体的にたどることができる。一実施形態では、セグメントは、翼小骨断面の長さの約1/3〜約1/6である。その後、ヘッド28は、第1ラップから離れて移動し、下向きおよび右へ角度を変え、やはり翼小骨断面の中央を通過することができる。ヘッド28からの材料放出が、もう一度第1ラップの内側側面に係合した後に、ヘッド28は、材料の別のセグメントが翼小骨断面の下支持表面34で第1ラップに隣接して(たとえば、その内側に)置かれるように、短い距離だけ第1ラップの経路を全体的にたどることができる。翼小骨中央の通過およびセグメント作成のこの蛇行パターンは、ヘッド28が翼小骨断面の後端に達するまで継続することができる。図9の実施形態では、任意の1つの翼小骨断面の層内の横材38は、片側のみであることに留意されたい。すなわち、翼小骨断面の中央を通る完全な「X」が、2つの異なる層だけによって作成され得る。
【0039】
[0042] 翼小骨断面の奇数層は、すべてが互いに実質的に同一とされ得、偶数層は、互いに同一または互いの反復とされ得る。たとえば、層1、層3、層5、層7などは、すべてが同一とされ得る。同様に、層2および層8、層4および層10、ならびに層6および層12は、同一の対とされ得る。しかし、層2、層4、および層6は、互いの異なる反復とされ得る。具体的には、横材38の位置および上下の支持セグメントの位置は、偶数層の間で交替することができ、横材38が、互いにオーバーラップし、これによって完全な「X」を形成し、上下の支持セグメントが、順次並んで、翼小骨断面の周囲の完全な周辺部を形成するようになっている。層1〜層6が、図9では翼14の形成中に任意の回数だけ繰り返され得る完全なセットを形成するものとして示されているが、任意の個数の層が、翼14を形成するために繰り返され得るセットを形成することができることに留意されたい。
【0040】
[0043] いくつかの実施形態では、層1〜層6の形成の後(および/またはこれらの層のうちの複数の後)に、翼14を完成することができる。すなわち、各層の内側ラップは、骨格16を形成することができ、外側層は、表皮18を形成することができる。しかし、他の実施形態では、望まれる場合に、別々の表皮18が、層1〜層6の形成の後に骨格16に置かれ得る。この実施形態では、表皮18は、手によってまたは開示されるシステム(1つまたは複数)によって置かれ得る。開示されるシステム(1つまたは複数)によって置かれる場合に、上で説明された第2の付加プロセス(であるが、個々の繊維またはトウではなく事前に作製された材料のシートを使用する)が、実施され得る。
【0041】
産業上の利用可能性
[0044] 骨格16および表皮18の開示される配置および設計は、任意のタイプの乗物ボディ10に関連して使用され得る。たとえば、骨格16および表皮18は、飛行機の機体、ドローンの機体、自動車の車体、船の船体、または軽量低コスト高性能が重要である任意の他のタイプの乗物ボディに関連して使用され得る。乗物ボディ10は、表皮18を骨格16に固定し、かつ/または乗物ボディ10の構成要素を互いに固定するのに必要なファスナの個数の減少に起因して、軽量かつ低コストになる可能性がある。さらに、乗物ボディ10は、骨格16と表皮18との両方を作るのに使用される複合材料の使用により軽量で行うことができる。高性能は、特定の繊維および樹脂が骨格16内および表皮18内で使用され、配置される独自の方法で実現され得る。
【0042】
[0045] 様々な変更および変化を、開示された乗物ボディに対して行うことができることは、当業者に明白になる。他の実施形態は、本明細書の考慮および開示された乗物ボディの実践から当業者に明白になる。本明細書および例が例示的であるにすぎないと考えられ、真の範囲が以下の特許請求の範囲およびその同等物によって示されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9