(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829323
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】排気装置用遮熱カバー
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20210128BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20210128BHJP
【FI】
F01N3/28 301W
F01N3/28 311U
F01N13/14
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-550953(P2019-550953)
(86)(22)【出願日】2018年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2018037588
(87)【国際公開番号】WO2019082639
(87)【国際公開日】20190502
【審査請求日】2020年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-205286(P2017-205286)
(32)【優先日】2017年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】中澤 健自
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−201514(JP,A)
【文献】
特開2002−106336(JP,A)
【文献】
特表平11−76837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯を有する排気用部品の外周に断熱材を介在して取付けられる遮熱カバーにおいて、
1個、又は、複数の外殻部材を周方向に配設し、該外殻部材の周方向の両端部にフランジを形成し、
該フランジには、周方向に隣接するフランジ相互において、面で当接して固定される固定部を、排気用部品の軸方向に少なくとも2つ離間して設け、
この固定部に対して、前記フランジの先端側に向かうほど、隣接する他のフランジ側に位置するように傾斜する傾斜部を、前記軸方向における固定部間のフランジに設けたことを特徴とする排気装置用遮熱カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気装置用遮熱カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関等の排気管や触媒コンバーター等の排気用部品の保温性向上や、排気用部品からの放熱による周囲に配置された周辺部品への熱害を抑制するために、排気用部品の外周にグラスウール等の断熱材を設け、この断熱材の外部に、遮熱カバーを取付けて、排気装置を構成することが行われている。
【0003】
この排気装置として、
図10〜
図12に示すように、半割筒状の一対のシェル101,101で構成された遮熱カバー102を備え、各シェル101の周方向の両端部には、ボルト孔を有するフランジ103が形成され、隣接する両フランジ103,103同士を重ね合わせた後に、ボルト孔にボルト104を挿通して、ナット105と螺合することにより、両シェル101,101相互を連結し、排気用部品である触媒コンバーター107の外周に断熱材108を介在させて遮熱カバー102を取付けた排気装置110が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−197812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の排気装置110では、
図10〜
図12に示すように、フランジ103におけるボルト104による固定部位103aにおいては、ボルト104の締め付けによりフランジ103,103相互が密着するものの、フランジ103におけるボルト104,104間の中央部103bなどは、遮熱カバー102の内側に圧縮して配設された断熱材108の反発力により、
図11,
図12に示すように、フランジ103,103同士が密着せず隙間109が生じる恐れがある。
【0006】
この隙間109が生じると、その隙間109から放熱が生じて、触媒コンバーター107の保温性能の低下や、周辺部品への熱害が惹起されることが懸念される。
【0007】
また、シェル101を、金属で構成するとともに、プレス加工により製作する場合、フランジ103の端にプレス切断により生じるバリが残存することがあり、隙間109からバリが露出して取付作業に支障をきたす恐れもある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決した排気装置用遮熱カバーを提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明は、軸芯を有する排気用部品の外周に断熱材を介在して取付けられる遮熱カバーにおいて、
1個、又は、複数の外殻部材を周方向に配設し、該外殻部材の周方向の両端部にフランジを形成し、
該フランジには、周方向に隣接するフランジ相互において、面で当接して固定される固定部を、排気用部品の軸方向に少なくとも2つ離間して設け、
この固定部に対して、
前記フランジの先端側に向かうほど、隣接する他のフランジ側に位置するように傾斜する傾斜部を、前記軸方向における固定部間
のフランジに設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、面で当接して固定される固定部を、軸方向に少なくとも2つ離間して設け、この固定部に対して、周方向の外側に向かうほど、隣接する他のフランジ側に位置するように傾斜する傾斜部を、固定部間に設けたことにより、遮熱カバーを、断熱材を介して排気用部品に組付けた際に、隣接するフランジ同士の間に隙間が生じることを抑制することができ、排気用部品からの放熱による周辺部品への熱害を抑制することができるとともに、取付作業に支障をきたす虞のあるバリが露出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の実施例1に用いる外殻部材の側面図。
【
図7】本発明の実施例1の他例を示す図で、A−A線断面図に相当する図面。
【
図8】本発明の実施例1の他例を示す図で、B−B線断面図に相当する図面。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0013】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る排気装置1の斜視図を示す。
排気装置1は、
図1,
図5,
図6に示すように、内燃機関等の排気管、触媒コンバーター、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)、GPF(ガソリンパティキュレートフィルタ)等の排気用部品の外周部に、断熱材11を介在させて、排気装置用遮熱カバー(以下、単に遮熱カバーという)12を取付けて構成したものである。本実施例1においては、排気用部品として、触媒コンバータ10を用いた。触媒コンバータ10は、中心部に設けられた円柱状の触媒担体10aと、触媒担体10aの外周部に設けられた緩衝材10bと、緩衝材10bの外周部に設けられたケース10cで構成されている。
【0014】
遮熱カバー12は、
図1に示すように、一対の外殻部材2,2を接合して筒状に形成される。両外殻部材2,2は、金属製の板を、縦断面形状が遮熱カバー12の軸芯X−Xを中心とする半円状となるように湾曲して形成された半割筒状の本体部2aを有し、本体部2aにおける遮熱カバー12の軸芯X−Xを中心とする周方向の両端部を、外側方向に折り曲げて、本体部2aと一体にフランジ3,3が形成されている。また、本体部2aの軸芯X−X方向の両端部には、外側に向かうほど縮径する縮径部2b,2bが形成されている。
【0015】
フランジ3には、
図1〜
図4に示すように、軸芯X−Xを中心とする径方向の外側に延出する固定部3a,3aが、その軸芯X−X方向の両端部に離間して2個形成されている。周方向において隣接するフランジ3,3における固定部3a,3a同士は、ボルトとナット、スポット溶接等の締結手段により締結される。本実施例においては、固定部3aにボルト挿通穴3bを形成し、隣接するフランジ3,3における挿通穴3b,3bにボルト5を挿通した後に、ナット6に螺合することにより固定部3a,3a同士を締結するようにし、挿通穴3bとボルト5とナット6により締結手段7を構成した。
【0016】
このように、締結手段により固定部3a,3a同士を締結することにより、本体部2aと触媒コンバータ10との間に介在された断熱材11の反発力により反発されても、固定部3a,3a同士は、
図6に示すように、強制的に略面全体で当接するとともに、面で固定される。
【0017】
各フランジ3における固定部3a,3a間には、
図5に示すように、1個の傾斜部3cが形成され、固定部3aと傾斜部3cは、プレス加工により、連続的に一体形成されている。傾斜部3cは、
図2,
図4に示すように、固定部3aに対して、周方向の外側(先端側)に向かうほど隣接するフランジ3側に位置するように傾斜している。また、フランジ3,3同士が締結されていない状態においては、
図2に示すように、フランジ3における傾斜部3cの先端3eは、固定部3aの当接面3dよりも、隣接する他方のフランジ3側に位置するように形成され、本実施例では、傾斜部3cの先端3eは、固定部3aの当接面3dよりも0.1mm〜3mm程度、隣接するフランジ3側に位置するようにした。
なお、
図2においては、傾斜部3cの突出量Dを誇張して作図している。
【0018】
外殻部材2,2同士が非締結状態において、フランジ3における傾斜部3cの先端3eを、固定部3aの当接面3dよりも、隣接するフランジ3側に位置するように形成したことにより、遮熱カバー12を、断熱材11を介して触媒コンバータ10に組付けて排気装置1を構成した状態においても、隣接するフランジ3,3における傾斜部3cの先端3e,3e同士は、
図4,
図5に示すように当接し、従来技術で生じた隙間が、フランジ3の軸X−X方向全体において生じることがない。また、傾斜部3cの先端同士の位置がずれた状態で、外殻部材2、2同士が組み合わされた場合においても、隙間が生じることを抑制できる。
【0019】
本発明は、上記のように、外殻部材2,2同士の非締結状態において、フランジ3に、2つの固定部3a,3aを軸芯X−X方向に離間して設け、この固定部3a,3a間に傾斜部3cを設け、この傾斜部3cが、固定部3aに対して、先端に向かう程、隣接する他方のフランジ3側に位置するように傾斜するようにして外殻部材2を構成したことにより、この外殻部材2,2を、
図5,
図6に示すように、断熱材11を介して触媒コンバータ10に組付けて排気装置1とした際に、外殻部材2,2を、隣接するフランジ3,3同士が、その軸芯X−X方向全体に亘って隙間が生じることなく、挟持固定することができる。
【0020】
このように、隙間が生じることを抑制することで、触媒コンバータ10からの放熱による周辺部品への熱害を抑制することができるとともに、遮熱カバー12の取付作業において、支障をきたすおそれのあるバリの露出を抑制することができる。
【0021】
なお、上記実施例1においては、遮熱カバー12を、触媒コンバータ10の外周部に断熱材11を介して取付けたが、
図7,
図8に示すように、排気用部品である触媒担体10aの外周部に断熱材11を介して遮熱カバー12を取付けるようにしてもよい。
【0022】
[実施例2]
上記実施例1においては、遮熱カバー12を、一対の外殻部材2,2で構成したが、構成する外殻部材の数は、1個でも複数でも任意に設定することができる。また、遮熱カバーにおける外殻部材の分割位置も任意に設定することができ、上記実施例1では、同じ形状の外殻部材2,2を用いて遮熱カバー12を構成したが、触媒コンバータ10の外周形状や、断熱材11の形状や位置に応じて、異なる形状の外殻部材を組み合わせて構成してもよい。
【0023】
例えば、
図9に示すように、排気装置21を、1個の外殻部材22aからなる遮熱カバー22を用いて構成してもよい。この外殻部材22aは、1個の環状の本体部23を有し、この本体部23の周方向の両端部にフランジ24,24が形成されている。この両フランジ24,24は、上記実施例1のフランジ3と同様に形成する。
【0024】
それ以外の構造は、前記実施例1と同様であるので、上記と同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0025】
本実施例2においても前記実施例1と同様の効果を奏する。
【0026】
本実施例2においては、更に、排気装置21を、1個の外殻部材22aからなる遮熱カバー22で構成した場合において、上記実施例1に比べて、部品点数を削減できるとともに、締結手段の数も削減でき、製造コストを削減できる。
【0027】
[実施例3]
上記実施例1,2においては、フランジ3,24に、固定部3a,3aを、軸芯方向X−Xに離間して2個形成したが、1つのフランジ3,24に設ける固定部3aの数は、2つ以上であれば任意に設定することができ、軸芯X−X方向に隣接する固定部3a間には、上記実施例1,2と同様の傾斜部3cを設ける。なお、固定部3aは、少なくとも、フランジ3,24の軸芯X−X方向の両端部に設けることが好ましい。
【0028】
それ以外の構造は、前記実施例1,2と同様であるのでその説明を省略する。
【0029】
本実施例3においても前記実施例1,2と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0030】
1,21 排気装置
2,22 外殻部材
3,24フランジ
3a 固定部
3c 傾斜部
10,10a 排気用部品
11 断熱材
12,22 遮熱カバー