(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液によってカルシウムが、前記豆乳中の大豆タンパク質の0.2〜1.6質量%の量で添加される請求項2に記載の乳酸発酵豆乳の製造方法。
【背景技術】
【0002】
豆乳は良質の植物性タンパク質と、必須脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸を含有する優れた食品であり、豆乳を原料とした多くの商品が市場に溢れている。そして、豆乳を乳酸発酵させて得られるヨーグルト様の食品である乳酸発酵豆乳を製造しようとする多くの試みが成されてきた。
しかしながら、牛乳を原料とする乳酸発酵乳と比較すると風味と食感の点において、乳酸発酵豆乳には未だ多くの課題が残されている。乳酸発酵豆乳はザラッぽさを有し、喉越しが悪いという第一の課題がある。更に、乳酸発酵豆乳が独特の不快臭(脂質の酸化臭)を有し、更には、渋み、えぐ味といった不快味を有する場合があるという第二の課題がある。
例えば、一般に流通している、牛乳を原料とする固形タイプのヨーグルトは、非常に緩やかな結合の凝集体を形成しており、口に入れた瞬間に崩れ、非常に滑らかな食感を呈する。一方、乳酸発酵豆乳の場合は、牛乳の発酵物に比べて高粘度の凝集物を生成し易く、ザラッぽく、喉越しの悪い食感が形成される。特に、牛乳を原料とする乳酸発酵乳と、豆乳を原料とする乳酸発酵豆乳との食感の違いは、牛乳中タンパク質と豆乳中のタンパク質の性質の違いによるものと考えられる。
近年の健康志向の高まりから、乳製品市場では乳酸発酵を利用した飲食品の開発が盛んに行われてきているが、乳酸発酵豆乳は上記した二つの理由により、消費者の嗜好に馴染まない場合があった。
【0003】
現在の市場では低粘度で食感、喉越しの良いドリンクタイプのヨーグルト製品、いわゆる「飲むヨーグルト」が市場を席巻している。この液体ヨーグルトの様な緩やかな結合の流動性の凝集体の場合には、流動性の凝集物が口中に万遍なく広がるため、ザラっぽさや喉越しの悪さがあると、これらを感じ易くなる。乳酸発酵豆乳を低粘度タイプとする場合は、特にこの食感と喉越しの改善が重要課題となる。
また、牛乳の乳酸発酵では、アルデヒド類、ケトン類、ラクトン類等の成分に起因する動物性の乳臭さ(脂肪分解臭、酸化臭等)が、原乳以上に強くなると言われている。一方、豆乳の乳酸発酵においても、含有するリノール酸、リノレン酸(不飽和脂肪酸)が発酵中に酸化され、所謂大豆臭さや青臭みといった不快な臭いが原料豆乳以上に強くなる場合が多い。
【0004】
特許文献1には、豆乳にニガリ又はアルカリ土類金属の塩若しくは水酸化物を添加した後、加熱処理及び均質化処理した後に乳酸発酵することにより、滑らかな乳酸発酵豆乳を得る方法が提案されている。
特許文献2には、豆乳を含む大豆製品をストレプトコッカス・サーモフィラスの特定菌株であるStreptococcus thermophilus 3261株の単独培養物と接触させることを特徴とする、大豆製品の風味及び色調を改善する方法が提案されている。
特許文献3には、乳酸発酵豆乳を製造する方法において、豆乳を発酵する段階の前又は発酵中にパラチノースを豆乳に添加することで、乳酸発酵豆乳の風味をパラチノースのマスキング効果により改善する方法が提案されている。
特許文献4には、豆乳の乳酸発酵時に、無酸素雰囲気になるよう密封容器中に豆乳を満たすか、ヘッドスペース等の雰囲気の気体部分の酸素濃度を低くすることによって、良好な発酵豆乳を得る方法が提案されている。
【0005】
一方、γ−アミノ酪酸(GABA、γ−amino butyric acid;IUPAC名:4-aminobutanoic acid)は、抑制性の神経伝達物質で血圧上昇抑制作用や抗ストレス作用が確認されており、これらの効果を有する機能性表示食品が各種登録されている。また、γ−アミノ酪酸による腎機能向上や、精神安定等の生理学的効果が期待されている。豆乳の乳酸発酵において、γ−アミノ酪酸の生産を安定して行うことができれば、乳酸発酵豆乳に含まれる豆乳成分から生産される種々の生産物に期待される栄養学的及び生理学的効果に加えて、種々の生理的効果が期待されるγ−アミノ酪酸を含む乳酸発酵豆乳の安定供給が可能となる。
特許文献5には、豆乳に、グルタミン酸又はグルタミン酸含有物と、γ−アミノ酪酸生産能を有する乳酸菌株とを添加して乳酸発酵を行うことにより、γ−アミノ酪酸を高含有させ、かつ、風味の良い飲食品又は調味食品を製造する方法が提案されている。なお、特許文献4では、乳酸菌の具体例として、ラクトバチルス・ブレビスの特定菌株が単独使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、豆乳の乳酸発酵を効率良くかつ安定して進行させ、更に乳酸発酵豆乳の栄養価を高め、その食感や風味、呈味を改善できる乳酸発酵豆乳の製造方法を提供するという技術課題について鋭意検討した。その結果、共生関係にあり、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus、以下S. thermophilusと表記する)とラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、以下 L. delbrueckii subsp. bulgaricusと表記する)とのGABAを生産する組合せを乳酸発酵用として用いることにより、上記技術課題を達成し得ることを新たに見出した。
まず、上記2つの異なる乳酸菌種の組合せは、乳酸発酵乳製品であるヨーグルトの安定生産を可能とするスターターとして伝統的に利用されてきており、これらの菌種の共生による乳酸発酵のメカニズムについても多くの知見が開示されている。そこで、これらの2種の菌種によって豆乳の汎用品を用いた場合においても、効率良く、かつ安定して乳酸発酵を進行させることができれば、単独菌種を用いる場合におけるような豆乳に含まれる成分に対する制限をなくして、豆乳の汎用品を用いた場合においても豆乳乳酸発酵を効率良く、かつ安定して進行させることができる。
更に、これらの2種の菌種の共生による乳酸発酵においてGABAを生産させることによって、豆乳由来の独特な不快臭や不快味の発生を抑制し、風味、呈味の良好な乳酸発酵豆乳を得ることができる。共生によりGABA生産能を有するこれらの2種の菌種の組合せにおいて、かかる効果が得られる理由については、本発明者らは以下のように推定している。
GABAは、グルタミン酸デカルボキシラーゼの作用によりグルタミン酸が脱炭酸されて生成し、その際、炭酸ガスが発生する。GABA生産量の増加に伴って炭酸ガスの発生量も増加し、乳酸発酵培養系内における酸素ガスに対する炭酸ガスの濃度を相対的に高くして乳酸発酵培養液中に含まれる成分の酸化を抑制する。その結果、豆乳由来の成分の酸化による不快臭や不快味の原因となる成分の生成が効率良く抑制される。なお、上記2種の菌種は、エネルギー代謝産物として乳酸を生成し、炭酸ガスまでの酸化を行わないホモ型発酵乳酸菌であるため、豆乳由来の成分の酸化を抑えることによる上述の効果を得るためには、GABAの生産による炭酸ガスの乳酸発酵液中での発生が必須の要件となる。このように、乳酸発酵液中にGABAを生産させることによって、乳酸発酵豆乳の栄養価や機能性食品としての価値を高めることもできる。
本発明者らは、以上のGABA生産による豆乳の乳酸発酵に対する効果に関する新たな知見に加えて、乳酸発酵豆乳に水酸化カルシウムを含有するショ糖水溶液を添加混合することによって、食感としての滑らかさと喉越しを調整し、目的とする良好な滑らかさと喉越しの両方を乳酸発酵豆乳に付与できるとの新たな知見を得た。本発明はこれらの本発明者らによる新たな知見に基づいて成されたものである。
【0012】
本発明の乳酸発酵豆乳の生産に用いるS. thermophilus及びL. delbrueckii subsp. bulgaricusとしては、共生により乳酸発酵を進行させることができるものであれば特に限定されない。公知の菌株、あるいは公知文献に記載の方法によって単離できる菌株から、本発明において目的とする豆乳の乳酸発酵能を有する上記2種の菌種に属する菌株をそれぞれ選択して用いることができる。
選択された菌株が本発明の目的に適合しているかどうかについては、豆乳を用いてGABAを含み、目的とする食感や呈味を有する乳酸発酵豆乳を得ることができるかどうかについて予備試験をすることによって確認することができる。
この予備試験には、上記2種の菌種にそれぞれ属する菌株の組合せにおけるGABA生産性を検証できる方法であれば特に制限なく利用できる。このような予備試験方法には、後述する実験例1でも利用されている、以下の予備試験用培養液及び培養条件を好ましく利用することができる。
(a)予備試験用培養液の組成
・豆乳原液(固形分濃度12.8質量%、タンパク質濃度7.0質量%):195質量部
・33質量%グルコース水溶液:9質量部
・水:90質量部
(b)培養条件
・37℃、3日間
上記の2種の菌種のそれぞれに属する菌株の組合せとしては、後述する実験例1において豆乳の乳酸発酵においてGABA生産が認められた混合菌に含まれる菌株の組合せを挙げることができる。
【0013】
上記の2種の菌種のそれぞれに属する菌株の組合せのGABA生産能としては、上述した予備試験用培養液における培養において、少なくとも0.04g/LのGABAを生産する能力を有する菌株の組合せを選択することが好ましい。
上記の2種の菌種のそれぞれに属する菌株の組合せとして特に好ましい組合せとしては、本発明者らにより豆乳を原料とするGABAの優良生産菌株の組合せとして選抜された以下の2種の菌株の組合せを挙げることができる。
・Streptococcus thermophilus T-1株
・Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus T-2
これらの2種の株は、国内の発酵乳から京都府中小企業技術センター(住所、〒600-8813、京都市下京区中堂寺南町134)により単離された株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託されている。これらの受託日及び受託番号等は以下の通りである。
・受託日:2016年9月28日
識別の表示及び受託番号
・Streptococcus thermophilus T-1株
・・識別の表示:ST T-1
・・受託番号:NITE P-02365
・Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株
・・識別の表示:LB T-2
・・受託番号:NITE P-02366
上記2種の生化学的性質は以下の通りである。
・Streptococcus thermophilus T-1株
・・細胞形態:球菌
・・コロニー:クリーム色
・・グラム染色:陽性
・・カタラーゼ試験:陰性
・・糖資化性(ブドウ糖(+)、果糖(+)、乳糖(+)、ショ糖(+))
・Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株
・・細胞形態:桿菌
・・コロニー:クリーム色
・・グラム染色:陽性
・・カタラーゼ試験:陰性
・・糖資化性(ブドウ糖(+)、果糖(+)、マンノース(+)、乳糖(+))
上記の2種の株の同定は以下の方法により簡易的に行うことができる。
・使用キット
API同定kit
・API 50CH (bioMerieux)
・API 50CHL
・培養温度及び培養時間
37℃、48時間
・同定判定
アピウエブ(40011、シスメックス・ビオメリュー株式会社)
・判定結果
菌株AはStreptococcus salivarius ssp. thermophilusであり、菌株BはLactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricusであると同定された。
上記の2種の株の菌種の同定に利用された培養試験における試験項目の結果を以下の表1−1及び表1−2に示す。
【0016】
一方、本発明者らの検討によれば、上記のS. thermophilus T-1株とL. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株の組合せでの豆乳を原料とする乳酸発酵へのショ糖の添加は、GABAの生産性には全く寄与していないことが明らかとなった。また、本菌株の組み合わせでは、35℃〜43℃でGABA生産がよく行われ、特に41〜43℃が最も効率の良いことが確認された。さらには、乳酸発酵時間が20時間を超えると発酵豆乳の呈味に変化を与える場合があり、20時間以内での発酵がより好ましいことが判明した。
更に、乳酸発酵後の乳酸発酵豆乳に水酸化カルシウムを含有するショ糖水溶液を添加混合することによって、豆乳に由来する独特の不快臭や不快味が極めて少なく、かつ滑らかな食感を有し、かつ喉越しの良い乳酸発酵豆乳を提供することが可能となる。
なお、本発明にかかる乳酸発酵豆乳の製造方法は、ソフトタイプまたはドリンクタイプに分類される乳酸発酵豆乳の製造に特に好適に利用できる。例えば、乳酸発酵終了後にハンドミキサー(パナソニック(株)製、MK−H4)で30秒間撹拌のような均質化処理によって、均一化した状態で2500mPa・s(20℃測定)以下の粘度のソフトタイプまたはドリンクタイプの乳酸発酵豆乳を得ることができる。
【0017】
以下に各工程について詳しく説明する。
[原料豆乳調製工程]
原料としての豆乳は、目的とする乳酸発酵豆乳の生産に利用できるものであれば特に限定されない。豆乳とは、大豆を原料として得られる水可溶性区分を加熱処理したタンパク質、脂質等を含有する溶液を言う。原料豆乳としては、例えば以下の各豆乳を利用することができる。
(I)水に浸漬した大豆を水または熱水で磨砕し、加熱処理後に固液分離して得られる豆乳。
(II)浸漬大豆を水で磨砕、固液分離した後に加熱処理をして得られる豆乳。
(III)大豆を脱皮し、そのまま、または短時間水に浸漬し、水または熱水と共に磨砕し、加熱処理後に固液分離して得られる豆乳。
必要に応じて、これらの豆乳の2種以上を混合して用いることができる。
豆乳のタンパク質濃度は、ケルダール分析法でのトータル窒素量(全窒素量:TN)を指標として定量することができる。原料として利用する豆乳のトータル窒素量は、0.3〜1.2質量%であることが好ましく、0.5〜1.0質量%であることがより好ましく、0.6〜0.9質量%であることが更に好ましい。豆乳のタンパク質濃度は、TN×6.25の値により概算できる。
豆乳のpHは、目的とする乳酸発酵を行うことができる値であれば特に制限されない。豆乳のpHは、例えば、6.0〜7.5の範囲から選択することができ、必要に応じて、豆乳のpHをこの範囲内で調整してもよい。
【0018】
[発酵工程]
発酵工程は、原料豆乳に乳酸菌を添加混合し発酵させて、発酵豆乳を得る工程である。
通常、原料豆乳を120〜150℃で1秒〜数分間の加熱殺菌処理を行った後に、加熱処理された原料豆乳に乳酸菌スターターを接種して乳酸発酵を開始する。
乳酸菌スターターとして、S. thermophilusに属する菌株とL. delbrueckii subsp. bulgaricusに属する菌株とのGABA生産性を有する組合せを用いる。
乳酸発酵促進のために、グルコース、乳糖、果糖、各種オリゴ糖、各種液糖の何れか1種、或いは、2種以上の糖質を原料豆乳に予め添加してもよい。オリゴ糖や液糖としては、市販のあるいは当業者に知られているものから目的とする乳酸発酵促進効果が得られるものを選択して用いることができる。
糖質の豆乳への添加量は、豆乳に対して0.1〜10質量%の範囲から選択することができ、好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは1〜2質量%の範囲から選択することができる。
糖質の豆乳への添加は、原料豆乳及び乳酸発酵液の少なくとも1つに対して行うことができ、複数回に分けて糖質を添加する場合には、その総量が上述した割合となるように設定することが好ましい。原料豆乳に対して糖質を添加する場合には、豆乳の加熱殺菌処理前及び/または加熱殺菌処理後に行うことができる。加熱殺菌後に糖質を加える場合には、糖質を含む水溶液を予め無菌フィルターにより無菌ろ過してから加熱殺菌された豆乳に無菌的に添加することが好ましい。
発酵温度は、30〜48℃、好ましくは35〜45℃、より好ましくは37〜43℃の範囲から、スターターとして利用する乳酸菌株に応じて選択することができる。S. thermophilus T-1株と、L. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株との組合せにおいては、好ましくは35℃〜43℃、より好ましくは41〜43℃の範囲から発酵温度を選択することができる。
発酵時間は、4〜24時間、好ましくは8〜20時間、より好ましくは10〜18時間である。
本発明においては、GABA生産量の増加に伴って炭酸ガスの発生量も増加し、乳酸発酵培養系内における酸素ガスに対する炭酸ガスの濃度を相対的に高くして乳酸発酵培養液中に含まれる成分の酸化を抑制していると推定される。従って、本発明においては、特許文献4に記載されるように、雰囲気中の酸素濃度(V/V)が5.0%以下又は実質的無酸素雰囲気の状態で豆乳原料の乳酸発酵を行う必要はなく、空気雰囲気に豆乳原料が接触した状態または豆乳原料の溶存酸素濃度が高い状態でも、豆乳由来の成分の酸化による不快臭や不快味の原因となる成分の生成を効率良く抑制することができる。
【0019】
[カルシウム添加工程]
乳酸発酵豆乳の食感や呈味を含む品質を調整して更に向上させ、かつ、カルシウム成分の補強を図るために、水酸化カルシウムを乳酸発酵豆乳に添加することができる。水酸化カルシウムは、ショ糖水溶液に溶解した形態で用いる。以下、この水酸化カルシウムを含有するショ糖水溶液を「ショ糖・水酸化カルシウム水溶液」という。
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液は、ショ糖とともに水酸化カルシウムが水に溶解していることによって、高濃度のカルシウムを溶解状態で含むことができる。その結果、水酸化カルシウム濃度を目的に応じて調整したショ糖・水酸化カルシウム水溶液として、乳酸発酵豆乳中に目的とする濃度のカルシウムを効率良く添加することができる。
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液は、発酵終了後に得られる乳酸発酵豆乳に添加することができる。その後の乳酸発酵豆乳の商品形態により、無菌ろ過が必要かどうかを判断して、必要であればショ糖・水酸化カルシウム水溶液を無菌ろ過して用いればよい。
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液として乳酸発酵豆乳に添加されるカルシウムの割合は、豆乳中のタンパク質濃度(TN×6.25)から算出される豆乳に含まれるタンパク質量当たり0.2〜1.6質量%とすることが好ましい。
【0020】
[ショ糖・水酸化カルシウム水溶液]
カルシウム添加用として用いるショ糖・水酸化カルシウム水溶液は、水酸化カルシウムを糖とともに水に添加して撹拌混合するか、あるいは、糖を溶解した糖水溶液に水酸化カルシウムの過剰量を加え撹拌混合し、その後不溶性の画分を除く方法等によって調製することができる。水酸化カルシウムとしては、食品用途して利用し得るものであれば特に限定されない。工業的な大量生産における製造コストの低減という観点からは、石灰岩から得られる食添用消石灰が有用である。
水酸化カルシウムの糖の共存下における溶解度は水溶液の調製温度によって変化する。通常は、同一糖濃度の水溶液中への水酸化カルシウムの溶解濃度は温度と反比例する。すなわち、より低い温度の方がより高い濃度で水酸化カルシウムを溶解させることができる。また、糖濃度や温度等の条件によっては水酸化カルシウムの溶解濃度を正確に予測できない場合があり、そのような場合は、過剰量の水酸化カルシウムを添加して、調製された水溶液中に残存する固形分を分離した後のアルカリ水溶液を利用することができる。この固形分の分離は、静置後の上清取得によって行えば良いが、さらに、遠心分離、膜ろ過、或いは、ろ過助剤の使用による清澄処理等の公知の分離方法で、浮遊している微細な粒子を取り除き、所謂透明な溶液として使用することがより好ましい。
【0021】
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液を調製する際のショ糖の投入量としては、目的とする水酸化カルシウムの溶解濃度を達成できる量であればよく、例えば、水に対して2〜30質量%、好ましくは4〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%の範囲から選択するとよい。
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液に含まれる溶解状態にある水酸化カルシウムの濃度は、0.25質量%〜6.5質量%の範囲から選択することができる。
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液の調製温度は、特に制限はないが、5℃〜70℃、例えば9〜11℃の冷却温度や21〜25℃の通常の室温から選択することができる。
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液のpHは、例えば12.0〜13.0、好ましくは12.0〜12.8、より好ましくは12.3〜12.8の範囲から選択したpHのアルカリ性とすることができる。
【0022】
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液は、50℃以下の水溶液の状態を保持する温度条件下において極めて安定であり、大量に調製して密封貯蔵し、必要に応じて希釈して使用することができる。すなわち、ショ糖・水酸化カルシウム水溶液は、水酸化カルシウムに非還元糖を共存させたことにより、水酸化カルシウムの固形分を含まず、水酸化カルシウムを高濃度で含む状態においても、保存安定性に優れる。従って、大量製造したショ糖・水酸化カルシウム水溶液をストックして必要に応じて使用することができ、更に、乳酸発酵豆乳の製造時における効率的な水酸化カルシウムの利用を達成することができる。
更に、ショ糖・水酸化カルシウム水溶液は固形分を含まないため、無菌濾過による簡便な処理によって無菌化を行うことができる。
[発酵終了工程]
乳酸発酵の終了は、目的とする品質の乳酸発酵豆乳が得られた時点に設定する。例えば、乳酸発酵豆乳の食感及び風味、呈味、並びにpH、GABA生産量及び粘度等の少なくとも1つを指標として乳酸発酵の終了時点を設定することができる。
乳酸発酵豆乳のpHを基準として乳酸発酵の終了時点を設定する場合は、乳酸発酵豆乳のpHを3.8〜4.5の範囲とすることが好ましく、pH3.9〜4.4の範囲とすることがより好ましく、pH4.0〜4.3の範囲とすることが更に好ましい。
乳酸発酵豆乳中のGABA生産量を基準とする場合は、例えば、乳酸発酵豆乳中のGABAの含有量が0.04g/L以上の目的とする量に達成した段階で、乳酸発酵を終了することが好ましい。
ショ糖・水酸化カルシウム水溶液を添加する場合には、乳酸発酵豆乳のpHが上述した範囲内となるようにその添加量を調節することが好ましい。
乳酸発酵終了後の発酵豆乳には、砂糖などの糖類、酸味料、塩化マグネシウム、乳化安定剤、果汁、香料、甘味料等を必要に応じて加え、その風味を調えてもよい。
乳酸発酵終了後の乳酸発酵豆乳は、そのまま、或いは、ショ糖・水酸化カルシウム水溶液、糖類等により風味を調え、均質化工程を経た後に包装し、乳酸菌の生菌を含んだ状態で低温流通してもよい。
【0023】
[殺菌工程]
乳酸発酵豆乳は、85℃以上の加熱を行って流通させても良いが、85℃〜150℃、好ましくは120〜150℃で、1秒〜30分、例えば1秒〜5分程度の加熱処理を行い、冷却後に無菌的に包装し、流通させてもよい。高温瞬間加熱滅菌処理後に無菌包装を行えば常温流通が可能である。
【実施例】
【0024】
以下、実験例及び実施例により本発明について更に詳細に説明する。
各実験例及び実施例における各種成分の濃度または含有量、物性は以下の方法により求めた。
(1)豆乳に含まれるタンパク質の濃度
豆乳に含まれるタンパク質の濃度(質量%)は、ケルダール分析法での試料に含まれるトータル窒素量(全窒素量:TN)を用い、TN×6.25として算出された値をタンパク質量として用いて豆乳中のタンパク質濃度を算出した。
(2)GABAの含有量の測定
発酵前豆乳または乳酸発酵豆乳を沸騰浴中で10分間加熱後、この加熱処理により生じた離水液中のGABAの含有量を以下の条件での高速液体クロマトグラフィー((株)島津製作所製、型式LC−10A)を用いて測定し、得られた測定値から発酵前豆乳または乳酸発酵豆乳のGABA含有量(濃度)を求めた。
I.分離条件
カラム:Shim-pack Amino-Li(100mmL.×6.0mmI.D.)
移動相:島津アミノ酸移動相キットLi型
A:0.15Nクエン酸(リチウム)緩衝液(pH2.68)、7質量%メチルセロソルブ含む
B:0.30Nクエン酸(リチウム)緩衝液(pH10.0)
C:0.2M水酸化リチウム
グラジエント溶出:
流量: 0.6mL/min
温度: 39℃
II.検出条件
反応試薬:島津アミノ酸分析キットOPA試薬
A:0.002質量%次亜塩素酸ナトリウム溶液
B:0.08質量% o-フタルアルデヒド溶液
流量 :各0.3mL/min(PRR-2A 目盛り30)
反応温度:39℃
検出器 :蛍光検出器RF-10AxL
Ex; 350nm
Em; 450nm
Sensitivity; 3
Response; 3
Gain; 1
注入量 :10μL
(3)二酸化炭素(CO
2)副生値(理論値)
CO
2副生理論値(g/L)の算出は以下の式で求めた。
(A−B)÷103.12×44.01
A:乳酸発酵豆乳のGABA含量(g/L)
B:発酵前豆乳のGABA含量(g/L)
C:GABAの分子量103.12
D:二酸化炭素(CO
2)の分子量44.01
(4)酸度
乳酸発酵豆乳の酸度測定は、フェノールフタレイン指示薬を用いて以下の方法で行った。
(1)フェノールフタレイン試薬を1〜2滴加える。
(2)0.1mol水酸化ナトリウム水溶液で滴定(薄赤色を呈するまで)し、乳酸発酵豆乳1g当たりの滴下量を酸度とした。
(5)pH
乳酸発酵豆乳のpH測定は、ガラス電極式水素イオン濃度指示計((株)堀場製作所製、型式SS056)を使用して実施した。
【0025】
[実験例1]
国産全粒大豆を一晩水に浸漬し、水を切った膨潤大豆に新しい水を加えながら磨砕した生呉を加熱後、固液分離して豆乳を得た。得られた豆乳に対して、130℃、68秒の加熱処理を行い、アセプティック充填包装機(オリヒロ(株)製、型式ONPACK−AF2000)で1kgの無菌包装を行い、豆乳原液(固形分濃度12.8質量%、タンパク質濃度7.0質量%)として使用した。この豆乳中の溶存酸素濃度をマルチ水質チェッカー((株)佐藤商事製、型式WA−2017SDJ+OXPB−11)で測定したところ12mg/Lであった。
豆乳原液195gに、無菌ろ過処理を行った33質量%グルコース溶液9g、殺菌水90gを加えた294gの調整溶液を発酵前豆乳(タンパク質濃度4.6質量%)とした。
こうして得られた発酵前豆乳に、スターター9gを添加して37℃で3日間培養した。
スターターとして、S. thermophilusとL. delbrueckii subsp. bulgaricusの組合せからなる以下の混合菌(A)〜(E)をそれぞれ個々に用いた。
(A)S. thermophilus T-1株4.5gと、L. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株4.5gの混合菌、
(B)YO−MIX300LYO50DCU(ダニスコ社製)、
(C)YC−350(クリスチャンハンセン社製)、
(D)CH−1(クリスチャンハンセン社製)、
(E)YF−3331(クリスチャンハンセン社製)
なお、混合菌(B)〜(E)は市販の乳酸発酵用のスターターである。
発酵終了後、夫々の乳酸発酵豆乳各50gについて、GABAの含有量を算出した。発酵前豆乳並びに発酵後の乳酸発酵豆乳中のGABA生産の推移を表2及び
図1に示した。
【0026】
【表2】
【0027】
GABA生産能力が最も高かったのは混合菌(A)(S. thermophilus T-1株とL. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2の組合せ)であり、次いで高かったのは混合菌(E)(YF−3331;クリスチャンハンセン社製)であり、他の3種の混合菌は全くGABA生産を行わなかった。
以上の結果から、S. thermophilusとL. delbrueckii subsp. bulgaricusとの混合菌でのGABAの生産については、これまで豆乳を基質としては全く報告されていなかったが、本発明者らによって一部の菌株によるGABA生産の可能性を見出し、特に、上記の2種の菌株の組合せからなる混合菌(A)の優良性が認められた。
【0028】
[実験例2]
実験例1で使用した豆乳原液195gに、無菌ろ過処理を行った33質量%グルコース溶液9g、殺菌水90gを加えた294gの調整溶液を発酵前豆乳(タンパク質濃度4.6質量%)とした。こうして得られた発酵前豆乳に、スターターとして、実験例1においてGABA生産混合菌として確認した混合菌(A)における2種の菌株としての、S. thermophilus T-1株4.5gと、L. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2 株4.5gを加え、43℃で15時間静置発酵させ、得られた乳酸発酵豆乳をAタイプとした。
これに対し、上記同様に調整した発酵前豆乳に、スターターとして、実験例1においてGABA非生産混合菌として確認した混合菌(B)(YO−MIX300LYO50DCU 株;ダニスコ社製)9gを加え、43℃で15時間静置発酵させ、得られた乳酸発酵豆乳をBタイプとした。
発酵終了後、Aタイプ及びBタイプの夫々の乳酸発酵豆乳各50gについてGABAの含有量を算出し、それに伴うCO
2副生値を求めた。各タイプの乳酸発酵豆乳における、発酵前豆乳並びに発酵後の乳酸発酵豆乳中のGABAの含有量、GABA生産に伴うCO
2副生値、並びに、専門パネルによる乳酸発酵豆乳の官能評価の結果を
図2及び表3に示した。
乳酸発酵豆乳の官能評価は、7名のパネラーのそれぞれによる
図2に示すチェック項目についての1(弱い)〜5(強い)の5段階評価の平均値により行った。
【0029】
【表3】
【0030】
図2に示されている様に、GABA非生産混合菌によるBタイプ乳酸発酵豆乳が渋み、嫌な味、嫌な臭いが強いのに比べ、GABA生産混合菌によるAタイプ乳酸発酵豆乳では渋み、嫌な味、嫌な臭いが明らかに抑えられていた。このことは、表3で示されている様にGABA生産混合菌によるAタイプ乳酸発酵豆乳では、二酸化炭素の副生値がGABA非生産混合菌による場合の10倍程度となっており、発酵中の豆乳品質の酸化劣化を防いだものと考えられる。
【0031】
[実験例3]
実験例1で使用した豆乳原液195gに、無菌ろ過処理を行った33質量%グルコース溶液9g、殺菌水90gを加えた発酵前豆乳(タンパク質濃度4.6質量%)294gに、以下の各スターターをそれぞれ個々に添加した。
(I)S. thermophilus T-1株4.5g及びL. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株4.5gの組合せ。
(II)L. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株9g単独。
(III)S. thermophilus T-1株9g単独。
これらスターター(I)〜(III)をそれぞれ個々に豆乳原液に添加して43℃で15時間発酵させた。
これらの操作は無菌的に行い、静置発酵を行った。こうして得られたそれぞれの乳酸発酵豆乳中のGABA含有量、それに伴うCO
2副生値を求めた。更に、実験例2と同様にして専門パネルによる乳酸発酵豆乳の官能評価を行った。その結果を
図3及び表4に示した。
【0032】
【表4】
【0033】
図3に示されている様に、上記2種の菌株のそれぞれの単独発酵では、共にえぐ味と嫌な味が強く感じられた。特に、スターター(III)としてのS. thermophilus T-1株単独発酵では、渋み、嫌な臭いが強く感じられ、GABA生産を伴わない単独発酵では風味や後味の悪さが強調されることが明らかとなった。上記2種の菌株の混合発酵ではGABAの生産に伴う二酸化炭素の副生によって発酵豆乳の風味の劣化の抑止が成されているものと考えられる。
なお、S. thermophilus T-1株を単独で用いたスターター(III)により得られた発酵豆乳について、果糖の含有量を測定((株)J.K.インターナショナル製、F−キット ショ糖/グルコース/果糖)したところ、果糖の含有量の測定値は発酵前豆乳で0.26g/L、43℃、15時間発酵後で0.30g/Lであった(試みに、25時間まで発酵させた場合では、0.43g/Lであった)。
【0034】
[実験例4]
実験例1と同様の殺菌済み豆乳原液390gに無菌ろ過処理を行った33質量%グルコース溶液18gと、殺菌水180gを添加して発酵前豆乳(タンパク質濃度4.6質量%)とした。なお、これらの操作は無菌的に行った。発酵前豆乳にスターターとしてS. thermophilus T-1株9g、及びL. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株9gを加え、43℃で15時間発酵させた(発酵終了時pH3.95)。
こうして得られた乳酸発酵豆乳から一部(50g)を測定用試料として採取し、乳酸発酵豆乳のGABA含有量を求めた。乳酸発酵豆乳を各250gの2組に分け、一方には殺菌水8.9gを加え、ヒスコトロン((株)マイクロテックニチオン、型式NS−50)を用いて乳化した。もう一方には、6.0質量%ショ糖水溶液に水酸化カルシウムを溶解して調製したショ糖・水酸化カルシウム水溶液(1.56質量%水酸化カルシウム水溶液)8.9g(カルシウムとして75mg)を、ヒスコトロンでの乳化工程で添加し、pH調整を行った(調整後pH4.11)。
乳酸発酵豆乳中のGABA含有量、それに伴うCO
2副生値、並びに、実験例2と同様にして行った専門パネルによる乳酸発酵豆乳の官能評価の結果を
図4及び表5に示した。
【0035】
【表5】
【0036】
表5に示されている様に、ショ糖・水酸化カルシウム水溶液を添加することにより酸度が低減するので、
図4に示すように酸味が和らぐのは当然であるが、さらに、渋み、嫌な味、嫌な臭い、ザラつきが低減するという効果をもたらした。
[実験例5]
実験例1で使用した豆乳原液200gに、無菌ろ過処理を行った33質量%グルコース溶液を0g、1.6g、3.2g、6.4g、8.0g、16gを加えた後、それぞれに殺菌水を57g、55.4g、53.8g、50.6g、49g、41gを加えて、トータル重量を257g(タンパク質濃度5.4質量%)に揃えた。
上記の様にグルコース無添加豆乳に対して、グルコースを0、0.2、0.4、0.8、1.0、2.0質量%まで6段階に調整した発酵前豆乳それぞれに、スターターとしてS. thermophilus T-1株4g及びL. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株4gを加え、37℃で24時間発酵させた。
それぞれの乳酸発酵豆乳中のGABA含有量と共に、CO
2副生値を求め、その結果を表6に示した。
【0037】
【表6】
【0038】
表6に示されている様に、グルコース無添加豆乳であってもGABA生産は成されているが、グルコース1.0質量%までの添加では添加量に比例してGABA生産量は向上した。
【0039】
[実施例1]
固形分濃度11質量%、タンパク質濃度5.6質量%の豆乳(pH6.6)に対して、130℃、68秒の加熱処理を行い、20℃迄冷却した殺菌豆乳400kgを、殺菌済みの発酵タンク(空気濾過フィルター付き)に入れ、無菌ろ過処理を行った33質量%グルコース溶液10kgを加え、発酵前豆乳とした。なお、これらの操作は無菌的に行った。発酵前豆乳にスターターとしてS. thermophilus T-1株5kg、及びL. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株5kgを加え、43℃で15時間静置発酵させた。(発酵豆乳のタンパク質:5.3質量%、グルコース:0.8質量%、スターター:2.4質量%)
乳酸発酵終了後、撹拌機で均一にし、発酵豆乳をサンプリングしてpHを測定(pH3.97)、粘度は20℃測定で2,180mPa・s(東機産業(株)製、B型粘度計使用)であった。さらにこうして得られた乳酸発酵豆乳のGABA含有量及びそれに伴うCO
2副生値を求めた。GABA含有量は0.194g/L、CO
2副生値(理論値)は0.070g/Lであった。
【0040】
[実施例2]
固形分濃度10.1質量%、タンパク質濃度5.1質量%の豆乳(pH6.5)に対して、130℃、68秒の加熱処理を行い、20℃迄冷却した豆乳400kgを、殺菌済み発酵タンク(空気濾過フィルター付き)に入れ、滅菌水30kg、無菌ろ過処理を行った33%グルコース溶液11kgを加え、発酵前豆乳とした。なお、これらの操作は無菌的に行った。発酵前豆乳にスターターとして、S. thermophilus T-1株6kg、及びL. delbrueckii subsp. bulgaricus T-2株6kgを加え、41℃で16時間発酵させた。(発酵豆乳のタンパク質:4.5質量%、グルコース:0.8質量%、スターター:2.6質量%)
乳酸発酵豆乳をサンプリングし、pHを測定(pH3.97)し、GABA含有量及びそれに伴うCO
2副生量を求めたところ、GABA含有量は0.106g/L、CO
2副生値(理論値)は0.037g/L.であった。
この乳酸発酵豆乳の粘度(東機産業(株)製、B型粘度計使用)は、20℃測定で1,300mPa・sであった。
発酵終了後の発酵豆乳400kgに対して、ショ糖・水酸化カルシウム水溶液(6%ショ糖溶液に溶解した1.46質量%水酸化カルシウム水溶液)15.3kg(カルシウムとして120mg)を添加、pHは4.13、粘度は20℃測定で1,270mPa・sであった。さらに、果糖ブドウ糖液糖、砂糖、結晶セルロースを加えて乳化、均質化処理を行った後に、130℃、94秒の加熱理、乳化処理を行ってスタンディングパウチ無菌製袋充填包装機(オリヒロ(株)製、ONPACK−AF−3030)で、130g充填を行った。
なお、各実験例及び各実施例の一連の操作では混合に殺菌済み容器を使用し、無菌豆乳への殺菌水や無菌ろ過したグルコース溶液の添加混合、さらには、無菌雰囲気下で調整されたスターターを清浄な実験室内で開封して添加混合し、全体を清浄なポリフイルムで包装して乳酸発酵を行った。