特許第6829504号(P6829504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 吉原鉄道工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6829504-密着度調整器及び密着度調整器ホルダー 図000002
  • 特許6829504-密着度調整器及び密着度調整器ホルダー 図000003
  • 特許6829504-密着度調整器及び密着度調整器ホルダー 図000004
  • 特許6829504-密着度調整器及び密着度調整器ホルダー 図000005
  • 特許6829504-密着度調整器及び密着度調整器ホルダー 図000006
  • 特許6829504-密着度調整器及び密着度調整器ホルダー 図000007
  • 特許6829504-密着度調整器及び密着度調整器ホルダー 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6829504
(24)【登録日】2021年1月26日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】密着度調整器及び密着度調整器ホルダー
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/10 20060101AFI20210128BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20210128BHJP
   E01B 7/20 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B61L5/10 A
   G01L5/00 Z
   B61L5/10 B
   E01B7/20
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-55429(P2020-55429)
(22)【出願日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000159423
【氏名又は名称】吉原鉄道工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】榊原 克典
(72)【発明者】
【氏名】谷畑 晃司
(72)【発明者】
【氏名】永井 登望
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5343294(JP,B2)
【文献】 特許第6159280(JP,B2)
【文献】 特許第6686096(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/
B61L 5/10
E01B 7/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部に取り付けられる本体部と、
前記ロッド部に取り付けられた荷重検知部と、
前記荷重検知部と接続された測定表示機と、
前記本体部において、前記測定表示機を、前記スイッチアジャスタと前記トングレールとの接続部に向けた状態で支持する支持部と、を有する、
ことを特徴とする密着度調整器。
【請求項2】
前記本体部が、
前記荷重検知部と前記測定表示機とを接続する第一コネクタ部を有し、
前記測定表示機が着脱自在である、
ことを特徴とする請求項1に記載された密着度調整器。
【請求項3】
前記測定表示機が斜め上方に向けられた、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された密着度調整器。
【請求項4】
前記本体部が、
前記ロッド部を挟む第一本体部及び第二本体部と、
前記第一本体部の上面に形成された隆起部と、を有し、
前記隆起部に、前記支持部が形成されると共に前記第一コネクタ部が備えられた、
ことを特徴とする請求項2、又は、請求項2を引用する請求項3に記載された密着度調整器。
【請求項5】
前記本体部を介して、前記荷重検知部と常時監視装置とが接続された、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された密着度調整器。
【請求項6】
前記荷重検知部と前記常時監視装置とを接続する第二コネクタ部が、前記第二本体部に備えられた、
ことを特徴とする請求項4を引用する請求項5に記載された密着度調整器。
【請求項7】
車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部に取り付けられる本体部と、
前記本体部に備えられ、前記ロッド部に取り付けられた荷重検知部が接続される第一コネクタ部と、
前記第一コネクタ部を介して前記荷重検知部と接続される測定表示機を、前記本体部において、前記スイッチアジャスタと前記トングレールとの接続部に向けた状態で支持する支持部と、を有する、
ことを特徴とする密着度調整器ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の進路を選択する分岐器のトングレールと基本レールとの密着の度合いを測定するために用いられる密着度測定器及び密着度調整器ホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
はじめに、鉄道車両の進路を選択する分岐器構造の一般的な構成を図1に基づいて説明する。分岐器のポイント部を担う転てつ器として、例えば下記非特許文献1に記載された転てつ装置がある(図1参照。)。この転てつ装置は転換装置と鎖錠装置とから構成され、電気転てつ機101によって稼働する。ここで転換装置は、固定された基本レール109に対してトングレール110を密着させ、または離反させるものであり、一方、鎖錠装置はトングレール110と基本レール109との密着状態を保持するものである。
【0003】
電気転てつ機101は、軌間外側(一対の基本レール109間の外側)に延びた枕木100上に設置されている。この電気転てつ機101は、駆動源である交流モータ108からの駆動力を、クラッチ、減速歯車および転換ローラ付転換歯車(それぞれ図示省略。)の順に伝導し、転換ローラにより動作かん102を移動させる。
【0004】
動作かん102は、この動作かん102に接続されたカム(図示省略)が転換ローラによって移動することで、基本レール109と直交する方向に直線運動する。電気転てつ機101は、動作かん102に接続されたスイッチアジャスタ103、このスイッチアジャスタ103の腕金具111、この腕金具111に接続された転てつ棒104、および、トングレール110に固定された連結金具112によって、トングレール110を転換し、その転換されたトングレール110の先端が正常な位置にあるか否かを、フロントロッド105、接続かん106および鎖錠かん107によって照査する。トングレール110の先端が正常な位置にあれば、動作かん102および鎖錠かん107がカムバー(ロックピース)(図示省略。)で鎖錠される。
【0005】
上記したような分岐器構造では、様々な点検や測定が行われている。例えば、下記特許文献1に記載された従来型密着度測定器(以下、「特許文献1発明」と記す。)では、トングレールが、スイッチアジャスタによって押されて適切な度合いで基本レールに密着しているか否かが測定される。具体的には、トングレールの先端側から、トングレールと基本レールとの隙間にプッシャーが設置される。この状態で、油圧ポンプによってプッシャーが稼働すると、トングレールが基本レールから強制的に引き離されるため、そのときにプッシャーがトングレールを開こうとする力が、トングレールと基本レールとの密着度(スイッチアジャスタがトングレールを押す強さ)として、圧力計で測定される。トングレールと基本レールとの間隔が、どの程度開いたかは、すきまゲージなどで測定される。密着度を測定する際のトングレールと基本レールとの適切な開き度合いは、分岐器の種類に応じて異なるが、例えば、開き度合いが0.5から1.0ミリメートル程度のときの密着度が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3027250号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】平成17年6月28日、社団法人日本鉄道電気技術協会発行、「鉄道技術者のための電気概論 信号シリーズ4 転てつ装置」、第7刷、第1、38〜47頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
密着度の点検は、スイッチアジャスタの調整と、トングレールと基本レールとの間における測定との繰り返しであり、特に、スイッチアジャスタの調整は、調整ナットによって行われる。調整の結果、密着度が適切であるか否かは、トングレールと基本レールとの間において、特許文献1発明等を用いて測定するまで明らかではない。したがって、作業者は、密着度が適切となるまで、調整と測定とを繰り返す必要がある。しかし、この作業は煩雑であるし、仮に、調整の加減を習得できたとしても熟練を要するため、時間が掛るうえ、客観的に他の作業者に伝承することは、非常に困難である。
【0009】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、トングレールと基本レールとの密着度を客観的に判断することができ、作業の効率を良くすることができる密着度調整器及び密着度調整器ホルダーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る密着度調整器は、車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部に取り付けられる本体部と、前記ロッド部に取り付けられた荷重検知部と、前記荷重検知部と接続された測定表示機と、前記本体部において、前記測定表示機を、前記スイッチアジャスタと前記トングレールとの接続部に向けた状態で支持する支持部と、を有する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る密着度調整器は、前記本体部が、前記荷重検知部と前記測定表示機とを接続する第一コネクタ部を有し、前記測定表示機が着脱自在である、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る密着度調整器は、前記測定表示機が斜め上方に向けられた、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る密着度調整器は、前記本体部が、前記ロッド部を挟む第一本体部及び第二本体部と、前記第一本体部の上面に形成された隆起部とを有し、前記隆起部に、前記支持部が形成されると共に前記第一コネクタ部が備えられた、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る密着度調整器は、前記本体部を介して、前記荷重検知部と常時監視装置とが接続された、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る密着度調整器は、前記荷重検知部と前記常時監視装置とを接続する第二コネクタ部が、前記第二本体部に備えられた、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る密着度調整器ホルダーは、車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部に取り付けられる本体部と、前記本体部に備えられ、前記ロッド部に取り付けられた荷重検知部が接続される第一コネクタ部と、前記第一コネクタ部を介して前記荷重検知部と接続される測定表示機を、前記本体部において、前記スイッチアジャスタと前記トングレールとの接続部に向けた状態で支持する支持部と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る密着度調整器は、スイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部に取り付けられる本体部と、ロッド部に取り付けられた荷重検知部と、荷重検知部と接続された測定表示機と、本体部において、測定表示機を、スイッチアジャスタとトングレールとの接続部に向けた状態で支持する支持部とを有している。点検の際、作業者は、軌間内側のスイッチアジャスタとトングレールとの接続部において、調整ナットを回転させるところ、密着度調整器によれば、測定表示機が、軌間内側に向けられているため、作業者は、測定表示機を見ながら作業をすることができる。測定表示機は、荷重検知部によって検知されたロッド部への荷重の値が表示されるため、作業者は、その値を確認しながら調整ナットを回転させる。密着度が適切である状態のロッド部への荷重が、予めわかっていれば、その荷重が作用する程度に調整ナットを調整することで、所望の密着度が実現したといえる。したがって、トングレールと基本レールとの密着度を客観的に判断することができる。また、測定表示機に表示された値から、密着度が適切であると想定できるため、理論上は、実際にトングレールを基本レールから引き離して圧力を測定するような試験は不要となる。したがって、作業の効率を良くすることができる。
【0018】
本発明に係る密着度調整器は、本体部が、荷重検知部と測定表示機とを接続する第一コネクタ部を有し、測定表示機が着脱自在である。この構成により、鉄道車両が運行している時間帯では、測定表示機を外すことができ、点検時にのみ測定表示機を用いることができる。したがって、測定表示機が、車両の通行時に振動や衝撃で破壊されること等を防ぐことができる。
【0019】
本発明に係る密着度調整器は、測定表示機が斜め上方に向けられている。この構成により、作業者にとって見やすい方向に測定表示機が向けられる。したがって、作業の効率を良くすることができる。
【0020】
本発明に係る密着度調整器は、本体部が、ロッド部を挟む第一本体部及び第二本体部と、第一本体部の上面に形成された隆起部とを有し、この隆起部に、支持部が形成されると共に第一コネクタ部が備えられている。この構成により、本体部が、ロッド部に取り付けられ、このロッド部において、隆起部によって測定表示機が軌間内側に向けられる。測定表示機は、第一コネクタ部を介して接続される。したがって、簡便な構成で、自在に着脱することができる。
【0021】
本発明に係る密着度調整器は、本体部を介して、荷重検知部と常時監視装置とが接続されている。この構成により、点検時に荷重を測定して値を表示する他、常時荷重を測定しておくことができる。したがって、スイッチアジャスタや分岐器の状態を遠隔で監視することもできる。
【0022】
本発明に係る密着度調整器は、荷重検知部と常時監視装置とを接続する第二コネクタ部が、第二本体部に備えられている。すなわち、本体部は、点検時にのみ接続される第一コネクタ部と、常時接続された第二コネクタ部とを有しているため、密着度の常時監視と、客観的で効率的な点検が実現する。
【0023】
本発明に係る密着度調整器ホルダーは、スイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部に取り付けられる本体部と、本体部に備えられ、ロッド部に取り付けられた荷重検知部が接続される第一コネクタ部と、第一コネクタ部を介して荷重検知部と接続される測定表示機を、本体部において、スイッチアジャスタとトングレールとの接続部に向けた状態で支持する支持部とを有している。したがって、密着度調整器と同様の効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、従来の転てつ装置の施設状態の概略が示された概略平面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る密着度調整器ホルダーがスイッチアジャスタに取り付けられた状態が示され、(a)は斜視図、(b)はトングレールの先端側である前方から視した前方図、(c)はスイッチアジャスタを長手方向から視した側方図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る密着度調整器がスイッチアジャスタに取り付けられた状態が示され、(a)は斜視図、(b)は前方図、(c)は側方図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係る密着度調整器が取り付けられたスイッチアジャスタの動作の過程が示され、(a)はトングレールの転換前の状態が示された転換前説明図、(b)はトングレールの転換開始時の状態が示された転換開始時説明図、(c)はトングレールの転換後の状態が示された転換後説明図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る密着度調整器が示され、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は前方図、(d)は側方図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態に係る密着度調整器の使用方法が示された使用方法説明図である。
図7図7は、本発明の第二実施形態に係る密着度調整器が示され、(a)は密着度調整器ホルダーがスイッチアジャスタに取り付けられた状態の前方図、(b)は密着度調整器がスイッチアジャスタに取り付けられた状態の前方図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の第一実施形態に係る密着度調整器及び密着度調整器ホルダーを図面に基づいて説明する。密着度調整器及び密着度調整器ホルダーは、スイッチアジャスタに取り付けられるものであるため、はじめに、スイッチアジャスタの構成及び動作を図面に基づいて説明する。図2は、密着度調整器ホルダー21がスイッチアジャスタ1に取り付けられた状態が示され、図3は、密着度調整器20がスイッチアジャスタ1に取り付けられた状態が示されている。図4は、トングレール110が転換する過程におけるスイッチアジャスタ1の動作が示されている。なお、以下の説明では、スイッチアジャスタ1が分岐器に取り付けられた状態において、トングレール110の先端側を前方(Front)とし、反対側を後方(Back)とし、基本レール109の幅のうち軌間内側を内方側(InSide)、軌間外側を外方側(OutSide)とし、基本レール109の高さ方向を上方(Up)又は下方(Down)とする(図2(a)参照。)。
【0026】
図2及び3に示されているとおり、スイッチアジャスタ1は、動作かん102に接続されて基本レール109(図1参照。)の外側から内側に渡るロッド部2と、このロッド部2の先端側に取り付けられた腕金具10とを有している。腕金具10は、転てつ棒104(図1参照。)に接続され、この転てつ棒104を介して、スイッチアジャスタ1をトングレール110に接続している(図1参照。)。ロッド部2は、棒状であり、このロッド部2の途中に形成された傾斜部3と、この傾斜部3よりもトングレール110側である直線部4とを有している。傾斜部3は、軌間外側における電気転てつ機101側から視して、軸方向に対して下向きに傾斜している。傾斜部3によって、ロッド部2は、高い側と低い側とがあり、低い側に直線部4が連接されている。ロッド部2のうち、傾斜部3における高い側であって動作かん102に接続される後端側は、ジョーピンが通された二股のジョー部5が形成されている。また、傾斜部3における低い側であって転てつ棒104が接続される先端側は、ネジ溝が形成され、先端に向けて、筒ナット6、腕金具10、調整ナット9の順にネジ溝に螺合されている。なお、筒ナット6及び調整ナット9は、緩み止めナット(図示省略。)によって留められていてもよい。
【0027】
腕金具10は、平板状の腕連結部11と、内側にネジ溝を有しない筒状の腕筒部12とが一体の構成である。詳説すれば、腕筒部12の外周面に腕連結部11が連接されている。腕金具10は、回り止め部材13が着脱され、この回り止め部材13は、ワッシャー14及び割ピン15を介して留められる。回り止め部材13は、筒ナット6及び調整ナット9が不本意に回転することを防ぐものであり、腕筒部12、筒ナット6及び調整ナット9に渡って各部6,9,12を覆って取り付けられている。
【0028】
筒ナット6は、内側にネジ溝が形成されたナット部7と、内側にネジ溝を有しない筒状の筒部8(図4参照。)とが一体の構成である。詳説すれば、ナット部7と筒部8とは、同軸上に揃った状態で連接されている。筒部8は、腕金具10の腕筒部12に挿入されている。ナット部7と、調整ナット9との間は、腕筒部12の全長よりも広いため、ナット部7と調整ナット9との間において、腕金具10はスライドする。すなわち、スライドによるロッド部2と腕金具10との相対的な変位量が、遊び量Xとなる。
【0029】
ここで、遊び量Xとトングレール110の行程量S2との関係を図面に基づいて説明する。
【0030】
図4(a)に示されているとおり、調整ナット9が、腕金具10の腕筒部12に寄せられ、筒ナット6のナット部7と腕筒部12との間に遊び量Xの間隔が開いている。この状態で、動作かん102が作動してロッド部2が矢印の方向に押されると、図4(b)に示されているとおり、ナット部7が腕筒部12に寄せられ、腕筒部12と調整ナット9との間に遊び量Xの間隔が開く。すなわち、ロッド部2は、遊び量Xの分だけ腕金具10に対してスライドするが、その間、腕金具10は動かない。この状態で、さらにロッド部2が矢印の方向に押されると、図4(c)に示されているとおり、ナット部7が腕筒部12を押すことで、腕金具10が押され、このことにより転てつ棒104が押されると共にトングレール110が転換する。すなわち、トングレール110の行程量S2は、動作かん102(ロッド部2)のストロークS1と遊び量Xとの差に相当する。なお、逆向きへの転換の場合も、動作は上記と同じである。
【0031】
次に、密着度調整器20及び密着度調整器ホルダー21を図面に基づいて説明する。図5は、密着度調整器20の外観が示されている。
【0032】
密着度調整器20は、スイッチアジャスタ1に取り付けられるものであり、一部が密着度調整器ホルダー21によって構成されている。図2及び図3に示されているとおり、密着度調整器20は、ロッド部2に取り付けられた荷重検知部22a,bと、この荷重検知部22a,bに接続された測定表示機23と、この測定表示機23をロッド部2に取り付けると共に荷重検知部22a,bによる検知情報を外部に出力するための密着度調整器ホルダー21とを有している。
【0033】
荷重検知部22a,bは、ロッド部2に作用する荷重を検知するものであり、例えば歪センサー等である。荷重検知部22a,bは、ロッド部2の傾斜部3と直線部4との境界部に上下一対で二組取り付けられている。すなわち、一方の組の荷重検知部22aは、上下一対で構成され、境界部の上面及び下面に取り付けられ、他方の組の荷重検知部22bも同様に、上下一対で構成され、境界部の上面及び下面に取り付けられている。荷重検知部22a,bは、傾斜部3に沿って整線され、配線が密着度調整器ホルダー21に伸びている。測定表示機23は、モニター24、操作スイッチ26及び外部出力ケーブル27を有し、着脱ホルダー(図示省略。)に収容される。測定表示機23は、荷重検知部22a,bによって検知された情報を表示し、又、記録することができる。
【0034】
図2、3及び5に示されているとおり、密着度調整器ホルダー21は、ロッド部2に取り付けられる本体部28を有している。本体部28は、ロッド部2を挟むために内側が中空であり、第一本体部29及び第二本体部30から構成されている。第一本体部29は、下面に半円柱状の空間を有し、上面に第一隆起部31を有している。第一隆起部31は、前後方向から視して、ほぼ三角形であり、内側に面して傾斜した第一内側傾斜面33と、外側に面して傾斜した第一外側傾斜面34とを有している。第一内側傾斜面33は、着脱ホルダーを介して測定表示機23を支持する支持部35が形成されている。支持部35は、腕金具10のある軌間内側に向けて斜め上方に向けられているため、この支持部35に支持された測定表示機23は、腕金具10の近傍に向けて、かつ、斜め上方に向けた状態で支持されている。支持部35と反対側にある第一外側傾斜面34は、荷重検知部22aと測定表示機23の外部出力ケーブル27とを接続するための第一コネクタ部36を有している。測定表示機23は、支持部35に対する着脱が自在であり、外部出力ケーブル27は、第一コネクタ部36に対して着脱自在である(図2及び3参照。)。
【0035】
第二本体部30は、上面に、第一本体部29と同形の半円柱状の空間を有し、下面に第二隆起部32を有している。第二隆起部32は、前後方向から視して、ほぼ三角形であり、外側の面に、荷重検知部22bと常時監視装置(図示省略。)とを接続する第二コネクタ部37を有している。常時監視装置は、例えば、電気転てつ機101の近傍に設置され、荷重検知部22bによって検知された情報を記録し、通信回線を通じて情報を適宜送信することができる。
【0036】
第一本体部29と第二本体部30とは、内側にロッド部2を挟んだ状態で、ボルト25によって留められる。荷重検知部22a,bの配線は、第二本体部30に通され、一方の組の荷重検知部22aの配線が、第一本体部29に渡されて第一コネクタ部36に接続されている。また、他方の組の荷重検知部22bの配線は、第二コネクタ部37に接続されている。
【0037】
上記のとおり、密着度調整器20及び密着度調整器ホルダー21が構成されている。
【0038】
次に、密着度調整器20及び密着度調整器ホルダー21の使用方法を図面に基づいて説明する。図6は、密着度調整器20の使用方法が示されている
【0039】
図6に示されているとおり、密着度調整器ホルダー21が、スイッチアジャスタ1のロッド部2に取り付けられ、荷重検知部22a,bが、傾斜部3と直線部4との境界部に取り付けられている。第二コネクタ部37は、常時監視装置に接続されている。密着度調整器ホルダー21及び荷重検知部22a,bは、点検時にかかわらず、常設されている。したがって、荷重検知部22bが検知した情報が、常時監視装置に入力されることで、トングレール110と基本レール109との密着度は、常時記録されている。
【0040】
点検時には、測定表示機23が密着度調整器ホルダー21に取り付けられる。詳説すれば、測定表示機23が着脱ホルダーに取り付けられた状態で、着脱ホルダーが、本体部28における支持部35に取り付けられる。支持部35に支持された測定表示機23は、腕金具10の近傍に向けて、かつ、斜め上方に向けられている。測定表示機23の外部出力ケーブル27は、本体部28における第一コネクタ部36に接続される。測定表示機23には、荷重検知部22aが検知した情報が入力され、モニター24に荷重の値が表示される。
【0041】
作業者Hが、軌間内側において、工具を用いて調整ナット9を調整すると、スライドするロッド部2と腕金具10との間の遊び量Xと共に、トングレール110と基本レール109との密着度も変化する。これに伴って、荷重検知部22aが検知する情報及びモニター24に表示される荷重の値も変化する。密着度は、荷重の値から把握できる。すなわち、作業者Hは、測定表示機23において密着度を確認しながら、調整ナット9を調整して密着度を調整することができる。例えば、ある分岐器における密着度が、測定表示機23に記録されていれば、点検の都度、記録された値と同じになるように調整ナット9を調整することで、毎回概ね同じ密着度が再現されるといえる。
【0042】
以上のとおり、第一実施形態が構成されている。次に、第一実施形態の効果を説明する。
【0043】
上記したとおり、第一実施形態では、密着度調整器20は、ロッド部2に取り付けられた荷重検知部22a,bと、この荷重検知部22a,bに接続された測定表示機23と、この測定表示機23をロッド部2に取り付けると共に荷重検知部22a,bによる検知情報を出力するための密着度調整器ホルダー21とを有し、この密着度調整器ホルダー21において、軌間内側に向けて斜め上方に向けられた第一内側傾斜面33に、支持部35を介して測定表示機23が取り付けられている(図2参照。)。すなわち、点検の際、作業者Hは、軌間内側において、調整ナット9を調整して密着度を調整するところ、測定表示機23が、軌間内側に向けられているため、作業者Hは、測定表示機23のモニター24を見ながら作業をすることができる。モニター24は、荷重検知部22aによって検知されたロッド部2への荷重の値が表示されるため、作業者Hは、その値を確認しながら調整ナット9を調整して密着度を調整することができる。密着度が適切である状態のロッド部2への荷重が、予めわかっていれば、その荷重が作用する程度に調整ナット9を調整することで、所望の密着度が実現したといえる。したがって、密着度を客観的に判断することができる。また、モニター24に表示された荷重の値から、密着度が適切であると想定できるため、理論上は、実際にトングレール110を基本レール109から引き離して圧力を測定するような試験は不要となる。したがって、作業の効率を良くすることができる。なお、万全を期す上で、このような試験を合わせて実施してもよい。
【0044】
また、測定表示機23は、斜め上方に向けられているため、作業者Hにとって見やすい方向に測定表示機23が向けられる。したがって、作業の効率を良くすることができる。
【0045】
第一実施形態では、密着度調整器ホルダー21における第一外側傾斜面34に、荷重検知部22aの配線が接続された第一コネクタ部36を有し、この第一コネクタ部36は、測定表示機23の外部出力ケーブル27と着脱自在である(図2参照。)。この構成により、鉄道車両が運行している時間帯では、測定表示機23を外すことができ、点検時にのみ測定表示機23を用いることができる。したがって、測定表示機23が、車両の通行時に振動や衝撃で破壊されること等を防ぐことができる。
【0046】
一方で、第一実施形態では、密着度調整器ホルダー21の第二隆起部32に、荷重検知部22bの配線が接続された第二コネクタ部37を有し、この第二コネクタ部37は、常時監視装置に接続されている。この構成により、点検時の他、常時荷重を測定しておくことができる。したがって、スイッチアジャスタ1や分岐器の状態を、通信回線を通じて遠隔で監視することができ、分岐器の異変をリアルタイムで知ることができるし、点検の時期を予測することもできる。
【0047】
次に、第二実施形態に係る密着度調整器を図面に基づいて説明する。図7は、密着度調整器220が示されている。なお、以下では、主に、第一実施形態に係る密着度調整器20と異なる構成が説明され、密着度調整器20と同様の構成は、適宜説明が省略されている。
【0048】
図7に示されているとおり、密着度調整器220は、密着度調整器20と比較して、測定表示機223の構成、及び、密着度調整器ホルダー221における本体部228の第一本体部229の構成が、それぞれ異なる。詳説すれば、測定表示機223は、外部出力プラグ238が背面に備えられている。外部出力プラグは238の先端は、下方に向けられている。一方で、第一本体部229の第一隆起部231は、外部出力プラグ238と直接接続される第一コネクタ部236が内蔵されている。したがって、外部出力プラグ238が、第一コネクタ部236に接続されることで、測定表示機223は、密着度調整器ホルダー221に取り付けられる。
【0049】
上記したとおり、第二実施形態によれば、測定表示機223を密着度調整器ホルダー221に取り付ける動作と、外部出力プラグ238を第一コネクタ部236に接続する動作とが、同時に行われるため、着脱の作業が簡便である。
【0050】
なお、本発明の他の実施形態として、密着度調整器20及び密着度調整器ホルダー21は、クランク装置に取り付けられていてもよい(図示省略。)。ここで、クランク装置を有する分岐器構造は、複数のスイッチアジャスタ1がトングレール110に接続され、スイッチアジャスタ1は、クランク装置に接続されている。クランク装置は、ストレートリンクやアジャストリンクが接続され、各リンクが、リンクキャリア装置に支持されて電気転てつ機101に接続されている。
【0051】
本発明の他の実施形態は、第一コネクタ部を有しておらず、測定表示機と荷重検知部とが直接接続されている。本発明の他の実施形態は、第二コネクタ部を有しておらず、常時監視装置と荷重検知部とが直接接続されている。本発明の他の実施形態は、常時監視装置と接続されていない。
【0052】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 スイッチアジャスタ
2 ロッド部
3 傾斜部
4 直線部
5 ジョー部
6 筒ナット
7 ナット部
8 筒部
9 調整ナット
10 腕金具
11 腕連結部
12 腕筒部
13 回り止め部材
14 ワッシャー
15 割ピン
20,220 密着度調整器
21,221 密着度調整器ホルダー
22a,b 荷重検知部
23,223 測定表示機
24 モニター
25 ボルト
26 操作スイッチ
27 外部出力ケーブル
28,228 本体部
29,229 第一本体部
30,230 第二本体部
31,231 第一隆起部(隆起部)
32,232 第二隆起部
33,233 第一内側傾斜面
34 第一外側傾斜面
35 支持部
36,236 第一コネクタ部
37,237 第二コネクタ部
238 外部出力プラグ
100 枕木
101 電気転てつ機
102 動作かん
103 スイッチアジャスタ
104 転てつ棒
105 フロントロッド
106 接続かん
107 鎖錠かん
108 モータ
109 基本レール
110 トングレール
111 腕金具
112 連結金具
H 作業者
1 ストローク
2 行程量
X 遊び量
【要約】
【課題】トングレールと基本レールとの密着度を客観的に判断することができ、作業の効率を良くすることができる密着度調整器を提供する。
【解決手段】密着度調整器20は、スイッチアジャスタ1のロッド部2に取り付けられた荷重検知部22a,bと、この荷重検知部22a,bに接続された測定表示機23と、この測定表示機23をロッド部2に取り付けると共に荷重検知部22a,bによる検知情報を出力するための密着度調整器ホルダー21とを有し、この密着度調整器ホルダー21において、軌間内側に向けて斜め上方に向けられた状態で測定表示機23が取り付けられている。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7