特許第6829523号(P6829523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6829523通線工具及び当該通線工具を用いたケーブル布設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829523
(24)【登録日】2021年1月26日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】通線工具及び当該通線工具を用いたケーブル布設方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/54 20060101AFI20210128BHJP
   G02B 6/46 20060101ALI20210128BHJP
   H02G 1/08 20060101ALI20210128BHJP
   G02B 6/50 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   G02B6/54
   G02B6/46 321
   H02G1/08
   G02B6/46 335
   G02B6/50 301
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-70127(P2016-70127)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181840(P2017-181840A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】沼波 秀行
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−125903(JP,A)
【文献】 特開昭62−239109(JP,A)
【文献】 米国特許第05480203(US,A)
【文献】 中国特許第100550548(CN,C)
【文献】 特開昭62−174706(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0007700(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/02
G02B 6/245−6/25
G02B 6/46−6/54
H02G 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタを有する光ケーブルを布設する通線工具であって、
当該通線工具は、コネクタ収容材と線条体とを備え、
前記コネクタ収容材は、前記コネクタを収容する内部空間を有し、
前記線条体は、前記コネクタ収容材の長手方向の略中心を貫通し、
前記線条体の前端部には、前記コネクタ収容材の前端の中心から導出され、前記通信工具を牽引するための牽引手段と接続される第1の接続部を有し、
前記線条体の後端部には、前記コネクタ収容材の後端から導出され、前記光ケーブルのテンションメンバと接続される第2の接続部を有し、
前記コネクタ収容材の内部空間内の線条体の外周に固定したケーブルクリップが、コネクタ収容材の内部空間の前端の内壁に当たり、当該線条体にコネクタ収容材が牽引方向に対して係止する構成となっており、または、前記内部空間内に、貫通する線条体に垂直な、円柱状のワイヤー巻き付け部が設けられ、当該ワイヤー巻き付け部に前記線条体を巻き付け自在となっており、
前記コネクタ収容材は貫通する線条体の方向に二つ割れとなっていることを特徴とする、通線工具。
【請求項2】
コネクタを有する光ケーブルを布設する通線工具であって、
前記コネクタを収納する内部空間を有するコネクタ収容材と、
前記コネクタ収容材の前端の中心から導出され、前記通線工具を牽引するための牽引手段と接続される第1の線条体と、
一端が前記コネクタ収容材の後端箇所の単数箇所、又は複数箇所に固定され、他端が前記コネクタ収容材の後端から導出され、前記光ケーブルのテンションメンバと接続される第2の線条体を備えたことを特徴とする、通線工具。
【請求項3】
前記光ケーブルの前記コネクタを前記コネクタ収容材の前記内部空間に収容する第1工程と、
前記光ケーブルの前記テンションメンバと前記線条体の前記第2接続部とを接続する第2工程と、
前記牽引手段と前記線条体の前記第1接続部とを接続する第3工程とを順不同に完了した状態で、前記牽引手段を用いて前記通線工具を牽引することを特徴とする、前記請求項1に記載の通線工具を用いたケーブル布設方法。
【請求項4】
前記光ケーブルの前記コネクタを前記コネクタ収容材の前記内部空間に収容する第1工程と、
前記光ケーブルの前記テンションメンバと前記第2の線条体とを接続する第2工程と、
前記牽引手段と前記第1の線条体とを接続する第3工程とを順不同に完了した状態で、前記牽引手段を用いて前記通線工具を牽引することを特徴とする、前記請求項2に記載の通線工具を用いたケーブル布設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ付光ケーブルを布設する際に用いる通線工具及び当該通線工具を用いたケーブル布設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気コードや、光ケーブルなどの種々の線材を布設する作業のために、通線工具である通線器が用いられる。通線作業は、例えば管路やケーブルラックやフリーアクセスフロア(=床の上にネットワークの配線などのための一定の高さの空間をとり、その上の別の床を設け二重化したもの)に線材を通す場合、まず通線すべき空間にピアノ線、比較的硬質のプラスチックを寄り合わせたもの、金属製ワイヤーの表面にビニル被覆を行ったもの等の通線器を挿通させ、その通線器の一端部に通線すべき線材を係着する。その後、通線器を他端側に引き抜くことにより、その空間に線材を通すのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1では、樹脂材料にて所定幅、所定長に形成された所定の剛性を有するテープ状部材を用いて、既設の電線が存在する狭い空間であってもその隙間にスムーズにかつ既設の線材を傷付けることなく通線することのできる通線器の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−274334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光ケーブルの各光コードの先端には、機器の接続ポート等と接続するために、通常はコネクタが設けられている。そして、光コードの各コネクタをまとめたものの外周は、光ケーブルの外周に比べて著しく大きいため、通線器を使って布設すると、既設のケーブルや突起箇所にコネクタが引っ掛かり、コネクタが付いた光コードを折損してしまう危険性が高かった。この危険性は、一度に多数の光ケーブルを布設する際に、特に高かった。そのため、光ケーブルを布設する際には、フリーアクセスフロアであれば、全パネルを開口して布設する必要があり、またケーブルラックであれば、作業員が手で直接布設する必要があり、作業効率が悪かった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に対処するため、光ケーブルを布設する際に、コネクタが付いた光コードを折損する危険性もなく、布設作業の効率も良い、通線工具及び当該通線工具を用いたケーブル布設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
コネクタを有する光ケーブルを布設する通線工具であって、
当該通線工具は、コネクタ収容材と線条体とを備え、
前記コネクタ収容材は、前記コネクタを収容する内部空間を有し、
前記線条体は、前記コネクタ収容材の長手方向の略中心を貫通し、
前記線条体の前端部には、前記コネクタ収容材の前端の中心から導出され、前記通信工具を牽引するための牽引手段と接続される第1の接続部を有し、
前記線条体の後端部には、前記コネクタ収容材の後端から導出され、前記光ケーブルのテンションメンバと接続される第2の接続部を有し、
前記コネクタ収容材の内部空間内の線条体の外周に固定したケーブルクリップが、コネクタ収容材の内部空間の前端の内壁に当たり、当該線条体にコネクタ収容材が牽引方向に対して係止する構成となっており、または、前記内部空間内に、貫通する線条体に垂直な、円柱状のワイヤー巻き付け部が設けられ、当該ワイヤー巻き付け部に前記線条体を巻き付け自在となっており、
前記コネクタ収容材は貫通する線条体の方向に二つ割れとなっている、通線工具とした。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、
コネクタを有する光ケーブルを布設する通線工具であって、
前記コネクタを収納する内部空間を有するコネクタ収容材と、
前記コネクタ収容材の前端の中心から導出され、前記通線工具を牽引するための牽引手段と接続される第1の線条体と、
一端が前記コネクタ収容材の後端箇所の単数箇所、又は複数箇所に固定され、他端が前記コネクタ収容材の後端から導出され、前記光ケーブルのテンションメンバと接続される第2の線条体を備えた、通線工具とした。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、
前記光ケーブルの前記コネクタを前記コネクタ収容材の前記内部空間に収容する第1工程と、
前記光ケーブルの前記テンションメンバと前記線条体の前記第2の接続部とを接続する第2工程と、
前記牽引手段と前記線条体の前記第1の接続部とを接続する第3工程とを順不同に完了した状態で、前記牽引手段を用いて前記通線工具を牽引する、前記請求項1に記載の通線工具を用いたケーブル布設方法とした。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、
前記光ケーブルの前記コネクタを前記コネクタ収容材の前記内部空間に収容する第1工程と、
前記光ケーブルの前記テンションメンバと前記第2の線条体とを接続する第2工程と、
前記牽引手段と前記第1の線条体とを接続する第3工程とを順不同に完了した状態で、前記牽引手段を用いて前記通線工具を牽引する、前記請求項2に記載の通線工具を用いたケーブル布設方法とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、光ケーブルの各光コードに設けられたコネクタを収容するコネクタ収容材が設けられているため、光ケーブルを布設する際に、コネクタが既設ケーブルや突起箇所に引っ掛かって、コネクタが付いた光コードを折損する危険性を防止することができる。また、線条体と光ケーブルのテンションメンバとを接続して、通線工具を牽引する構成であるため、コネクタ等に引張応力をかけることなく、安全に早く光ケーブルを布設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1の通線工具の全体的な構成を例示的に示す図である。
図2】本発明の実施例1の通線工具のワイヤーの構成を例示的に示す図である。
図3】(a)は、本発明の実施例1の通線工具のシャトルに係る第1のカバーの全体的な構成を例示的に示す図であって、(b)は、本発明の実施例1の通線工具のシャトルに係る第2のカバーの全体的な構成を例示的に示す図である。
図4】本発明の実施例2の通線工具の全体的な構成を例示的に示す図である。
図5】(a)は、本発明の実施例2の通線工具のシャトルに係る第1のカバーの全体的な構成を例示的に示す図であって、(b)は、本発明の実施例2の通線工具のシャトルに係る第2のカバーの全体的な構成を例示的に示す図である。
図6】本発明の実施例3の通線工具の全体的な構成を例示的に示す図である。
図7】本発明の実施例3の通線工具のカバーの全体的な構成を例示的に示す図である。
図8】本発明の実施例4の通線工具の全体的な構成を例示的に示す図である。
図9】本発明の他の実施例の通線工具の全体的な構成を例示的に示す図である。
図10】本発明の実施例5の通線工具の全体的な構成を例示的に示す図である。
図11】本発明の他の実施例の通線工具の全体的な構成を例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、コネクタを有する光ケーブルを布設する通線工具であって、当該通線工具は、コネクタ収容材と線条体とを備え、前記コネクタ収容材は、前記コネクタを収容する内部空間を有し、前記線条体は、前記コネクタ収容材の長手方向の略中心を貫通し、前記線条体の前端部には、前記コネクタ収容材の前端の中心から導出され、前記通線工具を牽引するための牽引手段と接続される第1の接続部を有し、前記線条体の後端部には、前記コネクタ収容材の後端から導出され、前記光ケーブルのテンションメンバと接続される第2の接続部を有する構成とすることによって、光ケーブルを布設する際に、コネクタが既設ケーブルや突起箇所に引っ掛かって、コネクタが付いた光コードを折損する危険性を防止することができる。
【実施例1】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施例を詳細に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
<通線工具Aの構成>
図1は、本実施例に係る通線工具Aの全体的な構成を示した図である。
【0016】
図1に示すように、本実施例の通線工具Aは、主としてワイヤー1(線条体の一例)とシャトル2(コネクタ収容材の一例)とから構成されている。一方、布設する光ケーブル5は、複数の光コード53を束ねたものであり、各光コード53の先端にコネクタ51が設けられている。そして、通常光ケーブル5の中心には、テンションメンバ52が設けられている。テンションメンバ52は、鋼線製あるいはFRP(繊維強化プラスチック)製の線条体であって、光ケーブル5の布設時に光ケーブル5内の光ファイバ(図示省略)に掛かる張力を緩和する働きをするものである。なお、図1では、複数の光コード53と、テンションメンバ52が光ケーブル5から露出した状態を示している。本実施例に係る通線工具Aの各部については以下に詳述する。
【0017】
<ワイヤー1の構成>
図2は、ワイヤー1の全体的な構成を示した図である。図2に示すようにワイヤー1は、例えば、径が1(mm)で、全長が3530(mm)の金属製や樹脂製の線条体である。なお、ワイヤー1の径や全長は一例であって、本実施例で示す構成に限定されない。
【0018】
ワイヤー1の前端部には、輪状の第1のフック部11a(第1の接続部の一例)が設けられ、ワイヤー1の後端部には、輪状の第2のフック部11b(第2の接続部の一例)が設けられている。第1のフック部11a及び第2のフック部11bは夫々、ワイヤー1の端部を巻き返して輪状にし、その状態で端部の先端をワイヤー1の適宜の箇所に留め具12で固定することによって、形成されている。第1のフック部11aは、作業員等のユーザが、通線工具Aを牽引する際に、ウインチのロープやワイヤー(図示省略)等の通線工具Aを牽引するための牽引手段と接続するためのものである。つまり、作業員等のユーザは、この第1のフック部11aにウインチのロープやワイヤー等の牽引手段を接続し、牽引手段を用いて、通線工具Aを牽引する。また、第2のフック部11bは、光ケーブル5のテンションメンバ52と接続するためのものである。なお、本実施例に係る通線工具Aでは、牽引手段と接続する第1の接続部として、輪状の第1のフック部11aを用い、光ケーブル5のテンションメンバ52と接続する第2の接続部として、輪状の第2のフック部11bを用いる構成を示したが、第1の接続部は牽引手段と接続できる構成であれば良く、第2の接続部は光ケーブル5のテンションメンバ52と接続できる構成であれば良い。従って例えば、第1の接続部及び第2の接続部として鉤状のフック部を用いる構成としても良い。
【0019】
また、本実施例の通線工具Aでは、いわゆる1本もののワイヤー1を用いる構成を示したが、この構成に限定されるものではなく、複数の部材を接続して1本もののワイヤー1として用いる構成としても良い。例えば、ワイヤー1が、前部のワイヤーと後部のワイヤーからなる場合(図示省略)、前部のワイヤーの第1の接続部に牽引手段を接続し、後部のワイヤーの第2の接続部に光ケーブル5のテンションメンバ52を接続した後に、ワイヤー同士を接続する工程も可能となるため、場合によっては作業しやすくなる。
【0020】
ワイヤー1の略中央部には、板状体13がワイヤー1上を移動自在に設けられている。板状体13は、中心にワイヤー1を貫通させるための貫通孔(図示省略)を有し、例えば金属製の円板形状である。板状体13の後ろのワイヤー1上には、ケーブルクリップ14が固定されている。このケーブルクリップ14は、ワイヤー1上の任意の位置で締め付けて固定可能である。
【0021】
作業員等のユーザが、通線工具Aのワイヤー1の第1のフック部11aに牽引手段を接続して牽引すると、板状体13を介してケーブルクリップ14が、後述するシャトル2の内側である内壁22に引っ掛かり、シャトル2も一緒に牽引される。即ち、板状体13及びケーブルクリップ14は、通線工具Aを作業員等のユーザが牽引手段を用いて牽引する際に、シャトル2の内壁22に引っ掛かるストッパーとしての役割を果たし、ワイヤー1とシャトル2を一体化させる。また、金属製の円板形状の板状体13を、内壁22とケーブルクリップ14との間に介在させることにより、通線工具Aを作業員等のユーザが牽引手段を用いて牽引した際に、ケーブルクリップ14が、ナイロン製で柔らかい上記内壁22に食い込んでしまうのを防ぐ役割を果たすものである。
【0022】
なお、本実施例では、ケーブルクリップ14がシャトル2の上記内壁22に食い込んでしまうのを防ぐため、円板形状の板状体13を用いる構成を示したが、ケーブルクリップ14がシャトル2の上記内壁22に引っ掛かれば、板状体13を用いずに、ケーブルクリップ14のみをストッパーとして用いる構成としても良い。
【0023】
<シャトル2の構成>
図1に示すようにシャトル2は、円錐状に突出した先端部23と、円筒状の腹部24とが組み合わさった形状である。先端部23は例えばナイロン製であり、腹部24は例えばアルミ製であって、後端に例えばナイロン製の底板31が設けられている(図3参照)。このシャトル2は、図3に示すように、長手方向に沿って2分割された、第1のカバー21aと第2のカバー21bとから主として構成されている。そして、先端部23及び腹部24を含むシャトル2の内部には、内部空間25が設けられており、光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51、板状体13、ケーブルクリップ14を収容可能である。
【0024】
また、図3に示すように、シャトル2の先端部23の前端には、先端部23の長手方向の中心を貫通する第1の貫通孔26が設けられており、第1の貫通孔26は内部空間25につながっている。この第1の貫通孔26は、ワイヤー1を通して、シャトル2の前端の中心から前方方向に導出させるためのものである。
【0025】
また、シャトル2の腹部24の後端の底板31には、腹部24の長手方向の中心を貫通する第2の貫通孔27が設けられており、第2の貫通孔27は内部空間25からつながっている。この第2の貫通孔27は、ワイヤー1及び光ケーブル5の複数の光コード53を通して、シャトル2の後端から後方方向に導出させるためのものである。そのため、シャトル2の第1の貫通孔26、内部空間25及び第2の貫通孔27にワイヤー1を通すと、ワイヤー1はシャトル2の長手方向の略中心を貫通することとなる。
【0026】
<通線工具Aを用いたケーブル布設方法>
まず、作業員等のユーザが、図2に示すワイヤー1をシャトル2の第1のカバー21a(あるいは、第2のカバー21b)内に、配置する。この場合、第1のフック部11aを含むワイヤー1が第1の貫通孔26からシャトル2の前方方向に導出し、第2のフック部11bを含むワイヤー1が第2の貫通孔27からシャトル2の後方方向に導出し、板状体13の前面が内壁22に接するように配置する。そして、ケーブルクリップ14を、板状体13の後面に接するように、ワイヤー1上に締め付けて固定する。
【0027】
次に、布設する光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を内部空間25に収容すると共に、光ケーブル5のテンションメンバ52の端部を、ワイヤー1の後端部の輪状の第2のフック部11bに通して、巻き返して輪状にし、その状態でテンションメンバ52の端部を光ケーブル5の適宜の箇所に粘着テープ等で固定し、光ケーブル5のテンションメンバ52と第2のフック部11bとを接続する。なお、テンションメンバ52が短い場合には、光ケーブル5の被覆を剥いて、巻き返して輪状にできる分のテンションメンバ52を露出させる。
【0028】
そして、シャトル2の第1のカバー21a(あるいは、第2のカバー21b)に、第2のカバー21b(あるいは、第1のカバー21a)を合わせて、粘着テープ等を用いて固定する。作業員等のユーザは、通線工具Aのワイヤー1の第1のフック部11aにウインチのワイヤーやロープ等の牽引手段を接続する。
【0029】
以上の状態で、作業員等のユーザは、牽引手段を用いて通線工具Aを牽引する。すると、板状体13を介してケーブルクリップ14が、シャトル2の内壁22に引っ掛かり、シャトル2も一緒に牽引される。また、光ケーブル5のテンションメンバ52がワイヤー1の第2のフック部11bに接続されているため、通線工具Aのワイヤー1の第1のフック部11aが牽引されると、光ケーブル5も一緒に牽引される。
【0030】
なお、本実施例で示した通線工具Aを用いたケーブル布設方法を行う各工程の順序は、説明の便宜上のものであって、上記の順序に限定されるものではない。そのため例えば、布設する光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51をシャトル2の内部空間25に収容した後に、ワイヤー1をシャトル2の第1のカバー21a(あるいは、第2のカバー21b)内に、配置する順序でも良い。また、ワイヤー1をシャトル2の第1のカバー21a(あるいは、第2のカバー21b)内に、配置する等の一部の手順は、例えば、通線工具Aを用いたケーブル布設方法を行う前から既に、ワイヤー1がシャトル2の第1のカバー21a(あるいは、第2のカバー21b)内に、配置されている等、状況によって省略されることは言うまでもない。
【0031】
通線工具Aでは、光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を収容するシャトル2が設けられているため、光ケーブル5を布設する際に、コネクタ51が既設ケーブルや突起箇所に引っ掛かって、コネクタ51が付いた光コード53を折損する危険性を防止することができる。また、ワイヤー1と光ケーブル5のテンションメンバ52とを接続して、通線工具Aを牽引する構成であるため、光ケーブル5のコネクタ51等に引張応力をかけることなく、安全に早く光ケーブル5を布設することが可能となる。
【実施例2】
【0032】
布設する光ケーブル5によって、コネクタ51とテンションメンバ52との距離が変わり、所定長のワイヤー1では、テンションメンバ52と適切に接続できない場合もある。
【0033】
<通線工具Bの構成>
そこで、本実施例では、ワイヤー1の長さを調整可能な通線工具Bを提供する。なお、上記実施例1と同様の構成要素については同符号を用い、説明を省略する。また、変形例についても同様であるため、説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、通線工具Bのシャトル2の先端部23の内部空間25の中心には、シャトル2の長手方向と垂直に、略円柱状のワイヤー巻き付け部28が設けられている。なお、図4では、ワイヤー1がワイヤー巻き付け部28の外周に巻き付けられた状態を示している。そして、図5に示すように、ワイヤー巻き付け部28は、一端面から一定長の切り欠き29を有している。また、ワイヤー巻き付け部28の一端は、シャトル2の第1のカバー21aに固定されており、シャトル2の第1のカバー21aに第2のカバー21bを合わせると、ワイヤー巻き付け部28の他端は、シャトル2の第2のカバー21bの内壁に穿たれた受け孔30に挿入される。
【0035】
作業員等のユーザは、ワイヤー巻き付け部28の切り欠き29に、第2のフック部11bを含むワイヤー1の後端側を通し、ワイヤー巻き付け部28の外周に巻き付けて、ワイヤー1の長さを調整し、ワイヤー1とテンションメンバ52とが適切に接続できるようにする。
【0036】
通線工具Bでは、シャトル2の先端部23の内部空間25に、切り欠き29を有するワイヤー巻き付け部28が設けられているため、光ケーブル5のコネクタ51とテンションメンバ52との距離に合わせて、ワイヤー1の長さを調整することができ、ワイヤー1とテンションメンバ52とを適切に接続することが可能となる。また、ワイヤー巻き付け部28には、切り欠き29が設けられているため、第1の貫通孔26から内部空間25に伸びたワイヤー1が、ワイヤー巻き付け部28を避ける必要がなく便宜である。
【0037】
なお、本実施例では、ワイヤー巻き付け部28に切り欠き29を設ける構成を示したが、この構成に限定されるわけではなく、ワイヤー巻き付け部28に切り欠き29を設けない構成としても良い。
【実施例3】
【0038】
<通線工具Cの構成>
上記実施例1及び2では、光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を収容するために、シャトル2を設ける構成を示したが、本実施例では、もっと簡易な構成で光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を収容する構成を用いた通線工具Cを提供する。なお、上記実施例1及び2と同様の構成要素については同符号を用い、説明を省略する。また、変形例についても同様であるため、説明を省略する。
【0039】
図6に示すように、略円錐形状に形成されたカバー40(コネクタ収容材の一例)の内部空間43に光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を収容する。また、略円錐形状に形成されたカバー40の先端部の内側に配置されるように、略円錐形状のストッパー41がワイヤー1上に固定されている。
【0040】
図7に示すように、カバー40は、略扇形のシートであって、例えばナイロン製である。カバー40の片面の各端に夫々貼着された面ファスナー42で、カバー40の両端を接続すると、略円錐形状に形成され、内側に光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を収容することが可能となる。また、前端に第1の貫通孔26と後端に第2の貫通孔27が設けられる(図6参照)。なお、本実施例では、面ファスナー42で、カバー40の両端を接続する構成を示したが、カバー40の両端を接続可能な構成あれば良く、例えば、面ファスナー42の代わりに通常のファスナーを用いる構成でも良い。
【0041】
また、ストッパー41は、例えばプラスチック製である。そして、略円錐形状のストッパー41は、カバー40によって形成された略円錐形状と相似形であることが望ましい。作業員等のユーザが、通線工具Cのワイヤー1の第1のフック部11aに牽引手段を接続して通線工具Cを牽引すると、ストッパー41は、略円錐形状に形成されたカバー40の先端部の内側に配置されるように、ワイヤー1上に固定されているため、略円錐形状に形成されたカバー40の先端部の内側に引っ掛かり、カバー40も一緒に牽引される。即ち、ストッパー41は、通線工具Cを作業員等のユーザが牽引する際に、ワイヤー1とカバー40を一体化させる役割を果たすものである。従って、ストッパー41は、略円錐形状に限定されるものではなく、略円錐形状に形成されたカバー40の先端部の内側に引っ掛かれば、例えば、球体状であっても良い。
【実施例4】
【0042】
<通線工具Dの構成>
上記実施例1〜3では、作業員等のユーザが、通線工具を牽引する際に牽引手段と接続する、及び光ケーブル5のテンションメンバ52と接続するといった2つの役割を果たすワイヤー1を用いる構成を示した。しかし、本実施例では、作業員等のユーザが、通線工具を牽引する際に牽引手段と接続する役割と、光ケーブル5のテンションメンバ52と接続する役割とを、夫々別のワイヤーを用いた通線工具Dを提供する。なお、上記実施例1〜3と同様の構成要素については同符号を用い、説明を省略する。また、変形例についても同様であるため、説明を省略する。
【0043】
図8に示すように、シャトル6(コネクタ収容材の一例)は、円錐状に突出した先端部63と、円筒状の腹部64とが組み合わさった形状である。先端部63及び腹部64は例えばナイロン製である。先端部63及び腹部64を含むシャトル6の内部には、内部空間69が設けられている。また、シャトル6の後端には、全面が開放された開放部65が設けられている。そのため、作業員等のユーザは、この開放部65からシャトル6の内部空間69内に光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を収容可能である。
【0044】
シャトル6の先端部63の前端の略中心には、シャトル6の前方から長手方向に穿たれた溝66が設けられている。この溝66に後述するワイヤー7(第1の線条体の一例)の後端部を挿入し、ピン67で留めることにより、ワイヤー7をシャトル6の先端部63の前端の中心からシャトル6の前方方向に導出させて設ける。
【0045】
ワイヤー7の前端部には、輪状の第1のフック部71aが設けられている。第1のフック部71aは夫々、ワイヤー7の端部を巻き返して輪状にし、その状態で端部の先端をワイヤー7の適宜の箇所に留め具12で固定することによって、形成されている。第1のフック部71aは、作業員等のユーザが、通線工具Dを牽引する際に牽引手段に接続するためのものである。
【0046】
シャトル6の後端の開放部65の、ほぼ相対向する2箇所には夫々、クリップ68で、ワイヤー8(第2の線条体の一例)の一端が挟み込まれて、シャトル6の複数箇所にワイヤー8の一端が固定され、ワイヤー8の他端がシャトル6の後端からシャトル6の後方方向に導出している。また、ワイヤー8の他端は、光ケーブル5のテンションメンバ52と接続されている。なお、本実施例では、クリップ68を用いて、シャトル6とワイヤー8の一端とを接続する構成を示したが、シャトル6とワイヤー8の一端とを接続する構成は、この構成に限定されるものではなく、シャトル6の後端の開放部65の、ほぼ相対向する2箇所に夫々貫通孔を設け(図示省略)、それらの貫通孔にワイヤー8の一端を夫々通して、シャトル6とワイヤー8の一端を接続する構成としても良い。また、本実施例では、シャトル6の複数箇所にワイヤー8の一端を固定する構成を示したが、この構成に限定されるものではなく、シャトル6の単数箇所にワイヤー8の一端を固定する構成としても良い。
【0047】
また、実施例1〜4では、円錐状に突出した先端部と、円筒状の腹部とが組み合わさった形状のシャトルが示されているが、シャトルの形状は、これらの形状に限定されるわけではなく、多角錐状に突出した先端部と角筒状の腹部が組み合わさった形状でも良い。
【0048】
また、本実施例では、シャトル6の先端部63の前端の溝66に、ワイヤー7の後端部を挿入し、ピン67で留める構成を示したが、シャトル6の先端部63の前端にワイヤー7を設ける構成は、この構成に限定されるものではなく、例えば図9に示すように、シャトル6の先端部63の前端にアイボルト9を螺着して、このアイボルト9にワイヤー7の後端部を接続して、ワイヤー7をシャトル6の先端部63の前端の中心からシャトル6の前方方向に導出させて設ける構成としても良い。なお、アイボルトは、頭部にリング(=輪)が設けられたボルト(=螺子)である。また、このようにアイボルト9を用いる構成の場合、アイボルト9にワイヤー7を接続せずに、アイボルト9に直接ウインチのロープやワイヤー等の牽引手段を接続する構成としても良い。
【実施例5】
【0049】
<通線工具Eの構成>
上記実施例4では、作業員等のユーザが、通線工具を牽引する際に牽引手段と接続する役割と、光ケーブル5のテンションメンバ52と接続する役割とを、夫々別のワイヤーを用いた通線工具のうち、コネクタ収容材であるシャトルの後端部の全面が開放されている通線工具Dの構成を示したが、本実施例では、シャトルの後端部の略中心に貫通孔が設けられた通線工具Eを提供する。なお、上記実施例1〜4と同様の構成要素については同符号を用い、説明を省略する。また、変形例についても同様であるため、説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、シャトル80(コネクタ収容材の一例)は、円錐状に突出した先端部83と、円筒状の腹部84と、円錐状に突出した尾部85が組み合わさった形状である。先端部83及び尾部85は例えばナイロン製であり、腹部84は例えばアルミ製である。そして、先端部83、腹部84及び尾部85を含むシャトル80の内部には、内部空間86が設けられており、光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を収容可能である。
【0051】
シャトル80の尾部85の後端には、尾部85の長手方向の中心を貫通する貫通孔87が設けられており、貫通孔87は内部空間86からつながっている。この貫通孔87は、光ケーブル5の複数の光コード53を通すためのものである。
【0052】
また、本実施例では、円錐状に突出した先端部83と、円筒状の腹部84と、円錐状に突出した尾部85が組み合わさった形状のシャトル80の構成を示したが、シャトルの形状は、この形状に限定されるわけではなく、多角錐状に突出した先端部と、角筒状の腹部と、多角錐状に突出した尾部が組み合わさった形状でも良い。
【0053】
また、図11に示すように、ラグビーボールのような楕円球形状でも良い。通線工具Fに係る楕円球形状のシャトル90は、例えばナイロン製であり、シャトル90の内部には、内部空間96が設けられており、光ケーブル5の各光コード53に設けられたコネクタ51を収容可能である。
【0054】
シャトル90の後端には、シャトル90の長手方向の中心を貫通する貫通孔97が設けられており、貫通孔97は内部空間96からつながっている。この貫通孔97は、光ケーブル5の複数の光コード53を通すためのものである。
【0055】
また、シャトル80及びシャトル90を用いる構成の場合、シャトル80では円錐状に突出した尾部85が設けられており、シャトル90では全体が楕円球状になっている。そのため例えば、通線工具Eあるいは通線工具Fが牽引の途中で詰まってしまった場合等、一旦引き戻す際にも、既設のケーブルや突起箇所等に引っ掛かることなく、スムーズに引き戻すことができ、便宜である。
【0056】
また、シャトル80及びシャトル90を用いる構成の場合、クリップ68を用いて、シャトル80あるいはシャトル90と、ワイヤー8の一端とを接続する構成を示したが、シャトル80あるいはシャトル90とワイヤー8の一端とを接続する構成は、この構成に限定されるものではない。例えば、シャトル80の貫通孔87の外周、あるいは、シャトル90の貫通孔97の外周に抱き合わせクランプを設け、この抱き合わせクランプを締め付けるボルト等に、ワイヤー8の一端を接続する構成としても良い。なお通常、抱き合わせクランプとは、半円形の部材の両端を突き合わせて略環状とした台座、あるいは、略環状の台座をボルト等で締め付けてパイプ等に設けるものである。
【0057】
本発明に係る通線工具及び当該通線工具を用いたケーブル布設方法は、光ケーブルのみならず、一端に本体よりも径の大きいコネクタ等の突起物を有するケーブル等の線条体を複数束ねて通線する場合も適用できる。また、本明細書では、ワイヤー1、ワイヤー7、ワイヤー8を用いる構成を示したが、本発明に係る通線工具及び当該通線工具を用いたケーブル布設方法は、ワイヤー1、ワイヤー7、ワイヤー8を用いる構成に限定されるものではなく、ロープ等を含む線条体を用いる構成であれば良い。
【符号の説明】
【0058】
A〜F:通線工具、
1:ワイヤー、2:シャトル、5:光ケーブル、6:シャトル、7:ワイヤー、8:ワイヤー、9:アイボルト、11a:第1のフック部、11b:第2のフック部、12:留め具、13:板状体、14:ケーブルクリップ、21a:第1のカバー、21b:第2のカバー、22:内壁、23:先端部、24:腹部、25:内部空間、26:第1の貫通孔、27:第2の貫通孔、28:ワイヤー巻き付け部、29:切り欠き、30:受け孔、31:底板、40:カバー、41:ストッパー、42:面ファスナー、43:内部空間、51:コネクタ、52:テンションメンバ、53:光コード、63:先端部、64:腹部、65:開放部、66:溝、67:ピン、68:クリップ、69:内部空間、71a:第1のフック部、80:シャトル、83:先端部、84:腹部、85:尾部、86:内部空間、87:貫通孔、90:シャトル、96:内部空間、97:貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11