(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開弁減速機構は、前記圧力調整弁の開弁設定圧に基づき、前記気体発生源から気体が供給された際に前記シリンダ内が過剰圧になることを防止し、かつ前記シリンダ内の前記ピストンの変位速度を減少させることを特徴とする請求項1に記載の緊急遮断弁装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による緊急遮断弁装置を、添付図面の
図1ないし
図8に従って詳細に説明する。
【0012】
ここで、
図1ないし
図4は第1の実施の形態を示している。本実施の形態に係る緊急遮断弁装置1は、例えば都市ガスに代表される可燃性流体を給送する管路100の途中に設けられ、例えば地震発生時または火災発生時に管路100を緊急遮断する弁装置である。この緊急遮断弁装置1は、都市ガスライン等の管路100の途中に設けられ流路の開,閉を行う遮断弁2と、該遮断弁2を開,閉弁するアクチュエータ7とより構成されている。
【0013】
管路100として都市ガスラインを例に挙げると、緊急遮断弁装置1は、各種産業設備、またはマンション等の建築物の敷地内(具体的には入口近傍等)に設置される。例えば、地震が発生した緊急時には、ガス配管の破損によるガス漏れを防止するため、アクチュエータ7により遮断弁2が緊急遮断(閉弁)され、ガスの供給を緊急停止することができる。
【0014】
図1に示すように、遮断弁2は、管路100の途中に接続して設けられる筒状の弁ケーシング3と、該弁ケーシング3内に回動可能に設けられ該弁ケーシング3内の流路を開,閉弁するボール弁体4と、弁ケーシング3の上流側と下流側とに離間して配設され、該ボール弁体4の外周面と弁ケーシング3の内周との間をシールするシール部材5,5と、ボール弁体4を回動する軸(以下、回動軸6という)とを含んで構成されている。ボール弁体4には、その径方向(回動軸6の軸線に対して垂直な方向)に貫通して延びる円形穴4Aが設けられている。
【0015】
遮断弁2の開弁時には、ボール弁体4の円形穴4Aが弁ケーシング3内の流路を介して管路100を連通状態とする。一方、回動軸6によりボール弁体4が約90度回動されると、ボール弁体4の円形穴4Aは弁ケーシング3内の流路に対する連通が断たれ、管路100は遮断弁2により遮断された状態となる。なお、遮断弁2は、ボール弁体4以外の弁体(例えば、蝶形弁体)を回動することにより開弁または閉弁する型式の弁構造であってもよい。
【0016】
遮断弁2を開,閉弁方向に駆動するアクチュエータ7は、遮断弁2(弁ケーシング3)の上部に固定して設けられたアクチュエータケース7Aと、該アクチュエータケース7Aに一体化して設けられたシリンダ装置7Bと、後述の回動レバー8とを含んで構成されている。アクチュエータケース7Aの内部には、遮断弁2の回動軸6に連結された出力軸6Aが軸受(図示せず)等を介して回動可能に設けられている。該出力軸6Aは、回動軸6と一体に形成してもよく、別体に形成してもよい。即ち、出力軸6Aは回動軸6と一体的に回動操作される軸であればよく、回動軸6と出力軸6Aとを一体物として形成する必要はない。
【0017】
出力軸6Aは、アクチュエータケース7A内を上,下方向に延びて配設され、該出力軸6Aには、例えば水平方向に延在する回動レバー8が嵌合して設けられている。これにより、回動レバー8は、出力軸6A(即ち、回動軸6)と一体的に回動される。回動レバー8は、
図2〜
図4に示すように、2つのレバー部8A,8B(以下、第1レバー部8A,第2レバー部8Bという)を有している。
【0018】
回動レバー8の第1レバー部8Aは、その先端側が後述のピストンロッド11に連結具14を介して回動可能に連結され、ピストンロッド11の動きに追従して出力軸6A(遮断弁2の回動軸6)を回動レバー8と一緒に回動させる。第2レバー部8Bは、出力軸6Aを挟んで第1レバー部8Aとは略反対側に向けて延び、その先端側が後述のリリーフ弁21A,21Bを切換え操作できるように配置されている。
【0019】
即ち、回動レバー8の第2レバー部8Bは、遮断弁2の全開位置へとピストン10が矢示A方向に変位するときに、
図2に示す如く出力軸6Aの周囲で反時計方向に回動される。これにより、第2レバー部8Bは、その先端側で第2のリリーフ弁21Bを閉弁位置(d)から開弁位置(e)に切換えるように押動する。一方、遮断弁2の全閉位置へとピストン10が矢示B方向に変位するときには、回動レバー8の第2レバー部8Bが
図3に示す如く、出力軸6Aの周囲で時計方向に回動される。これにより、第2レバー部8Bは、その先端側で第1のリリーフ弁21Aを閉弁位置(d)から開弁位置(e)に切換えるように押動する。このように、回動レバー8の第2レバー部8Bは、ピストンロッド11の動きに追従して第1,第2のリリーフ弁21A,21Bを切換え操作する構成となっている。
【0020】
アクチュエータ7のシリンダ装置7Bは、アクチュエータケース7Aの左側端面に固定して設けられたシリンダ9と、該シリンダ9内に摺動可能に挿嵌して設けられシリンダ9内を2つの室9A,9Bに画成したピストン10と、一端(左端)側が該ピストン10に一体的に固着され他端側がシリンダ9外に突出したピストンロッド11と、アクチュエータケース7Aとシリンダ9との間に配設され、シリンダ9内からアクチュエータケース7A内へと軸方向に伸長して延びるピストンロッド11を摺動変位可能に支持するロッドガイド12とを含んで構成されている。
【0021】
ピストンロッド11の突出端(右端)側は、アクチュエータケース7Aを貫通してアクチュエータケース7Aの右側端面から外側に突出し、その外周面は筒状のカバー13により保護されている。また、ピストンロッド11は、アクチュエータケース7A内を出力軸6A(即ち、遮断弁2の回動軸6)と直交するように
図1、
図2中の左,右方向(矢示A,B方向)に延在している。ピストンロッド11の途中部位には、回動レバー8(第1レバー部8A)の先端側が連結具14を介して回動可能で、かつ長さ方向にスライド可能に連結されている。
【0022】
このため、ピストン10とピストンロッド11とが矢示A方向(または矢示B方向)に変位すると、回動レバー8は連結具14に押圧されて反時計方向(または時計方向)に回動され、出力軸6A(即ち、遮断弁2の回動軸6)を同方向に回動する。従って、ピストンロッド11が矢示A方向に変位されるときには、この直線方向変位が回動レバー8により出力軸6Aの回動(回転変位)に変換され、遮断弁2のボール弁体4は、回動軸6により開弁方向に駆動される。一方、ピストンロッド11が矢示B方向に変位されるときには、遮断弁2のボール弁体4が回動軸6により閉弁方向に駆動される。
【0023】
換言すると、遮断弁2は、ピストンロッド11と交差する方向に延在する軸(回動軸6と出力軸6A)を有し、この軸がピストン10の一方向(矢示B方向)への変位により閉弁方向に駆動され、ピストン10の他方向(矢示A方向)への変位により開弁方向に駆動される。ここで、遮断弁2は、回動軸6が約90度回動すると、全開から全閉に切換わる。
【0024】
図2〜
図4に示す如く、シリンダ9の内部は、ピストン10により第1の室9Aと第2の室9Bとに画成されている。このうち第1の室9Aには、気体発生源である第1の高圧気体供給ユニット15Aが気体給排用の第1の流通路16Aを介して接続され、第1の流通路16Aは閉弁用流通路を構成している。また、第2の室9Bには、他の気体発生源である第2の高圧気体供給ユニット15Bが気体給排用の第2の流通路16Bを介して接続され、第2の流通路16Bは開弁用流通路を構成する。
【0025】
第1,第2の高圧気体供給ユニット15A,15Bは、内部に高圧気体(例えば窒素ガス,炭素ガス等)が封入された容器(気体発生源)と、この容器を緊急時に開封する開封機構(図示せず)とを含んで構成されている。第1,第2の高圧気体供給ユニット15A,15Bは、緊急遮断弁装置1の駆動源となり、前記容器としては、大きなイニシャルトルクを発生できる炭酸ガスカートリッジが用いられる。例えば、第1の高圧気体供給ユニット15Aからの気体(高圧な炭酸ガス)がアクチュエータ7のシリンダ9内に供給されると、その圧力によりピストン10が作動し、ピストンロッド11と連動した遮断弁2の回動軸6(出力軸6A)が閉弁方向に回転し、遮断弁2を瞬時に閉止させる。
【0026】
前記炭酸ガスカートリッジから炭酸ガスを噴出させる機器(即ち、前記開封機構)としては、例えばパワーユニットと呼ばれる機器が用いられる。このパワーユニットに炭酸ガスカートリッジを装着した状態で電源が供給されると、内蔵されたカッターが炭酸ガスカートリッジの封止板(いずれも図示せず)を破り、炭酸ガスを噴出する。即ち、第1,第2の高圧気体供給ユニット15A,15Bの容器内から第1,第2の流通路16A,16B内に気体(高圧な炭酸ガス)が噴出するように供給される。
【0027】
ここで、第1の流通路16Aは、第1の高圧気体供給ユニット15Aからの気体が流通すると、この気体をシリンダ9の第1の室9A内に供給し、その圧力によりピストン10を矢示B方向に押動する。一方、第2の流通路16Bは、第2の高圧気体供給ユニット15Bからの気体が流通すると、これをシリンダ9の第2の室9B内に供給し、気体の圧力によってピストン10を矢示A方向に押動する。
【0028】
第1,第2の流通路16A,16B間には、内部の気体を大気中に排気(開放)するための排気用弁としてのブリードバルブ17が配設されている。このブリードバルブ17は、例えば3ポート3位置の方向制御弁により構成され、その左,右両側にはブリードバルブ17を中立位置(a)に向けて常時付勢するばね18A,18Bと、第1,第2の流通路16A,16B内の気体圧力がパイロット圧として供給されるパイロット部19A,19Bとが設けられている。
【0029】
ブリードバルブ17は、中立位置(a)にある通常時に第1,第2の流通路16A,16Bを排気部20に対して遮断し、第1,第2の流通路16A,16B内の気体がブリードバルブ17を通じて大気に開放されるのを阻止する。ブリードバルブ17は、第1の流通路16A内の気体圧力がパイロット部19Aに供給されると、ばね18Bに抗して中立位置(a)から切換位置(b)に切換えられ、このときに、第2の流通路16B内は排気部20を介して大気に開放される。一方、第2の流通路16B内の気体圧力がパイロット部19Bに供給されるときには(
図4参照)、ブリードバルブ17がばね18Aに抗して中立位置(a)から切換位置(c)に切換えられ、このときには、第1の流通路16A内が排気部20を介して大気に開放される。
【0030】
第1,第2のリリーフ弁21A,21Bは、第1,第2の流通路16A,16Bの途中部位から分岐した分岐管路22A,22Bに設けられている。第1,第2のリリーフ弁21A,21Bは、通常時に閉弁位置(d)にあって、分岐管路22A,22Bを大気に対して遮断している。しかし、第1,第2のリリーフ弁21A,21Bは、閉弁位置(d)から開弁位置(e)に切換えられたときに、分岐管路22A,22Bを大気に対して連通させ、シリンダ9の室9A,9B内に供給された余剰な気体を大気へ開放させる。
【0031】
即ち、第2の高圧気体供給ユニット15Bからの気体が第2の流通路16Bを介してシリンダ9の第2の室9B内に供給されると、気体の圧力によってピストン10が矢示A方向に押動される。そして、遮断弁2が全開する位置までピストン10が矢示A方向に変位するときには、
図2に示す如く回動レバー8が反時計方向に大きく回動され、第2レバー部8Bにより第2のリリーフ弁21Bが閉弁位置(d)から開弁位置(e)に切換えられる。このように、第2のリリーフ弁21Bが開弁位置(e)に切換えられた状態では、シリンダ9の室9B内に供給(充満)された余剰な気体が、第2の流通路16B、分岐管路22Bおよび第2のリリーフ弁21Bを介して大気へと排出(開放)される。
【0032】
一方、第1の高圧気体供給ユニット15Aからの気体が第1の流通路16Aを介してシリンダ9の室9A内に供給されるときには、気体の圧力によってピストン10が矢示B方向に押動される。そして、遮断弁2が全閉する位置までピストン10が矢示B方向に変位するときには、
図3に示す如く回動レバー8が時計方向に大きく回動され、第2レバー部8Bにより第1のリリーフ弁21Aが閉弁位置(d)から開弁位置(e)に切換えられる。このように、第1のリリーフ弁21Aが開弁位置(e)に切換えられた状態では、シリンダ9の室9A内に供給(充満)された余剰な気体が、第1の流通路16A、分岐管路22Aおよび第1のリリーフ弁21Aを介して大気へと排出(開放)される。
【0033】
換言すると、遮断弁2が全開または全閉する位置までピストン10が矢示A,B方向に変位した後に、シリンダ9の室9A,9B内に供給(充満)された気体を大気へと開放するために、第1,第2のリリーフ弁21A,21Bは、回動レバー8の第2レバー部8Bにより閉弁位置(d)から開弁位置(e)に切換えられる。これにより、遮断弁2が全開または全閉した後に、シリンダ9の室9A,9B内が高圧状態に保たれるのを第1,第2のリリーフ弁21A,21Bは防止することができ、次なる遮断弁2の開,閉弁動作を円滑化することができる。
【0034】
第1,第2の安全弁23A,23Bは、シリンダ9の室9A,9B内の圧力を調整する圧力調整弁である。第1,第2の安全弁23A,23Bは、第1,第2の高圧気体供給ユニット15A,15Bから第1,第2の流通路16A,16B内に高圧の気体を供給したときに、第1,第2の流通路16A,16Bおよびシリンダ9の室9A,9B内の圧力が予め決められた設定圧以上に上昇するのを抑え、過剰圧を外部(大気)にリリーフするものである。第1,第2の安全弁23A,23Bは、シリンダ9の第1,第2の室9A,9Bおよび第1,第2の流通路16A,16B内の圧力が上昇し過ぎないように設けられている。
【0035】
ここで、第1の安全弁23Aは、例えば0.99MPa程度の開弁圧に設定され、第1の流通路16Aおよび第1の室9A内の圧力がこの開弁圧(設定圧)以上に上昇するのを抑え、過剰圧を外部(大気)にリリーフする。第2の安全弁23Bは、例えば0.6MPa程度の開弁圧に設定され、第2の流通路16Bおよび第2の室9B内の圧力がこの開弁圧(設定圧)以上に上昇するのを抑え、過剰圧を外部(大気)にリリーフする。
【0036】
第1の実施の形態において、第2の安全弁23Bは、シリンダ9内でのピストン10の矢示A方向への変位により遮断弁2が開弁方向に駆動されるときに、ピストン10の変位速度を減少させる開弁減速機構を構成している。このため、第2の安全弁23Bは、第1の安全弁23Aの開弁圧よりも、例えば0.39MPa(0.99MPa−0.6MPa)だけ低い開弁圧に設定されている。これによって、遮断弁2の開弁動作時には、シリンダ9の室9B内の圧力を閉弁時(即ち、閉弁時に第1の室9A内に供給される圧力)よりも低くしてピストン10の開弁方向の推進力を抑えることができ、遮断弁2のボール弁体4(
図1参照)をゆっくりと開弁させることができる。
【0037】
第1の実施の形態による緊急遮断弁装置1は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0038】
通常、遮断弁2は開弁状態に保持されている。遮断弁2のボール弁体4は、
図1に示すように管路100の流路と連通した状態となり、アクチュエータ7のシリンダ装置7Bは、ピストン10およびピストンロッド11が
図2に示す如く矢示A方向に変位され、回動レバー8は出力軸6A(即ち、遮断弁2の回動軸6)と一緒に反時計方向に回動されている。
【0039】
ここで、例えば所定震度を越える地震が発生したものとする。地震発生は感震器(図示せず)により即座に検知され、感震器は緊急信号を出力する。第1の高圧気体供給ユニット15Aは、感震器からの信号が供給されることにより、前記容器内から第1の流通路16A内に気体(高圧な炭酸ガス)を噴出させるように供給する。第1の流通路16A内を流通する高圧気体は、シリンダ9の室9A内へと供給される。
【0040】
また、ブリードバルブ17は、第1の流通路16Aからの気体圧力がパイロット部19Aに供給され、中立位置(a)から切換位置(b)に切換わる。これによって、第2の流通路16Bは、ブリードバルブ17により排気部20に接続され、シリンダ9内の室9Bは、第2の流通路16Bを介して大気に開放されると共に、大気圧と同等な低圧状態に保たれる。
【0041】
このため、シリンダ9内のピストン10は、第1の高圧気体供給ユニット15Aで発生した高圧気体の圧力を駆動力として矢示B方向に急速に変位する。そして、ピストン10と共にピストンロッド11も同方向に変位することになり、ピストンロッド11は、連結具14を介して回動レバー8を出力軸6Aと一緒に時計方向に回動させる。この結果、出力軸6Aに結合された回動軸6が同方向に約90°回動され、遮断弁2は、ボール弁体4が閉弁位置に回動されて管路100を緊急遮断する。
【0042】
図3に示すように、遮断弁2が全閉する位置までピストン10が矢示B方向に大きく変位するときには、回動レバー8が時計方向に回動されることにより、第2レバー部8Bの先端側で第1のリリーフ弁21Aが閉弁位置(d)から開弁位置(e)に切換えられるように操作される。このため、開弁位置(e)に切換えられた第1のリリーフ弁21Aは、シリンダ9の室9B内に供給(充満)された余剰な気体を外部に排出させるように、第2の流通路16Bおよび分岐管路22Bを介して大気へと排出(開放)させる。
【0043】
次に、地震がおさまって、安全が確認された後には、例えば都市ガスの供給を再開できるようにするため、全閉状態にある遮断弁2を開弁させる必要がある。遮断弁2を開弁する場合は、操作盤(図示せず)等の操作により第2の高圧気体供給ユニット15Bに開弁信号を入力すれば良い。即ち、第2の高圧気体供給ユニット15Bは、ソレノイド(図示せず)が開弁信号の供給により励磁されると、前述した第1の高圧気体供給ユニット15Aと同様な開封動作を行う。
【0044】
これにより、第2の高圧気体供給ユニット15Bから第2の流通路16B内へと
図4中の矢示F方向に高圧気体が供給され、第2の流通路16B内を流通する高圧気体は、シリンダ9の室9B内へと供給される。また、このときの高圧気体は第2の流通路16Bを介してブリードバルブ17のパイロット部19Bに供給され、ブリードバルブ17は
図4に示す如く、ばね18Aに抗して中立位置(a)から切換位置(c)に切換わる。これによって、第1の流通路16Aは、ブリードバルブ17により排気部20に接続され、シリンダ9内の室9Aは、第1の流通路16Aを介して大気に開放されると共に、大気圧と同等な低圧状態に保たれる。
【0045】
このため、シリンダ9内のピストン10は、第2の高圧気体供給ユニット15Bで発生した高圧気体の圧力を駆動力として矢示A方向に変位する。そして、ピストン10と共にピストンロッド11も同方向に変位することになり、ピストンロッド11は、連結具14を介して回動レバー8を出力軸6Aと一緒に反時計方向に回動させる。この結果、出力軸6Aに結合された回動軸6が同方向に回動され、遮断弁2は、ボール弁体4が開弁方向に回動されて管路100を連通状態とする。
【0046】
ところで、遮断弁2の開弁速度が速すぎると、下記のような問題が生じる。即ち、遮断弁2の閉弁時にシリンダ9の室9A内に供給されていた気体は、
図3に示す如くリリーフ弁21Aにより大気へと開放されているため、この状態で閉弁時とは逆向きに気体をシリンダ9の室9B内に供給すると、ピストン10が開弁方向に速い速度で駆動される。また、
図4に示す如く、ピストン10が開弁方向(矢示A方向)に移動し始めた状態では、ブリードバルブ17が中立位置(a)から切換位置(c)に切換わって、シリンダ9内の室9Aは、第1の流通路16Aを介して大気に開放されるため、ピストン10は開弁方向(矢示A方向)に速い速度で駆動される。
【0047】
このように、遮断弁2が急速に開弁されるようになると、都市ガス等の可燃性流体を給送する管路100のうち、遮断弁2よりも下流側に位置する二次側配管の圧力が抜けている場合は、二次側の配管内が遮断弁2の開弁により急に加圧されることになり、配管または配管機器を損傷させてしまう虞れがある。万が一配管に損傷があった場合、ガス漏れの発生原因になることが懸念される。
【0048】
一般的に、大気圧状態(0MPa)の二次側の配管内に都市ガスを導入する場合、安全性を確保できるように遮断弁2をゆっくり開けて徐々にガスを導入することが基本である。しかし、炭酸ガスカートリッジ等の高圧気体供給ユニット15Bを駆動源に使用する場合、高圧気体供給ユニット15Bから炭酸ガスが一気に噴出して遮断弁2を閉弁(作動)させるため、徐々に導入することは難しい。また、炭酸ガスカートリッジ(高圧気体供給ユニット15A,15B)の種類も限られているため、自由なサイズ・圧力の炭酸ガスカートリッジを選定することも難しい。
【0049】
そこで、第1の実施の形態は、シリンダ9内でのピストン10の矢示A方向への変位により遮断弁2が開弁方向に駆動されるときに、ピストン10の変位速度を減少させるため、第2の安全弁23Bからなる開弁減速機構を備え、シリンダ9の室9B内の圧力を相対的に低い圧力に調整する構成している。即ち、第2の安全弁23Bは、第1の安全弁23Aよりも、例えば0.39MPaだけ低い圧力(例えば、0.6MPa程度の設定圧)に設定されている。
【0050】
このため、遮断弁2の開弁動作時には、シリンダ9の室9B内の圧力を第2の安全弁23Bにより低い圧力に設定して、ピストン10の開弁方向(
図4中の矢示A方向)の推進力を抑えることができ、これにより、遮断弁2のボール弁体4を閉弁時に比較してゆっくりと開弁させることができる。
【0051】
従って、第1の実施の形態によれば、遮断弁2の閉弁後に、開弁動作を自動的に行うようにした緊急遮断弁装置1を提供することができ、遮断弁2の閉弁動作は緊急に素早く行い、開弁動作はゆっくりと減速して行うことができる。即ち、遮断弁2の閉弁動作を瞬時に行い、開弁動作は、シリンダ9の室9B内に供給される気体(高圧な炭酸ガス)の圧力を下げることにより、ピストン10の推進力を低下させ、遮断弁2をゆっくりと開弁させることができる。この結果、二次側の配管内が遮断弁2の開弁時に急に加圧されることはなくなり、配管または配管機器等の耐久性、寿命を向上することができる。
【0052】
なお、前記第1の実施の形態では、第1,第2の安全弁23A,23Bを、シリンダ9の室9A,9Bに接続して設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1,第2の流通路16A,16Bの途中等に第1,第2の安全弁23A,23Bを接続して設ける構成としてもよい。この場合でも、シリンダ9の室9A,9B内の圧力を第1,第2の安全弁23A,23Bにより個別に調整することができる。
【0053】
次に、
図5は第2の実施の形態を示している。本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第2の実施の形態の特徴は、シリンダ9内のピストン10に逆止弁31と絞り32を設ける構成としたことにある。
【0054】
ここで、シリンダ9内のピストン10には、逆止弁31と絞り32とが直列に配設されている。逆止弁31は、シリンダ9内の第2の室9Bから第1の室9Aに向けて気体が流通するのを許し、逆に第1の室9Aから第2の室9Bに向けて気体が流通するのを阻止する構成である。また、絞り32は、シリンダ9内の第2の室9Bから第1の室9Aに向け逆止弁31を介して流通する気体に絞り作用を与え、第2の室9Bから第1の室9Aへと排出される気体の流量を抑える構成としている。
【0055】
この場合、ピストン10に設けた逆止弁31と絞り32とは、遮断弁2の開弁方向(矢示A方向)にピストン10が変位する速度を減少させる開弁減速機構を構成している。第2の安全弁23Bは、第1の実施の形態と同様に第1の安全弁23Aよりも低い圧力(例えば、0.6MPa程度の設定圧)に設定し、開弁減速機構の一部を構成してもよい。しかし、第2の実施の形態では、第2の安全弁23Bを第1の安全弁23Aと同じ設定圧(例えば、0.99MPa程度)に設定する構成としてもよい。
【0056】
かくして、このように構成される第2の実施の形態では、遮断弁2の閉弁後に第2の高圧気体供給ユニット15Bからの高圧気体を第2の流通路16Bを介してシリンダ9の室9B内に供給し、シリンダ9内でのピストン10の矢示A方向への変位により遮断弁2を開弁方向に駆動できる。このときに、シリンダ9内のピストン10に設けた逆止弁31は、シリンダ9内の第2の室9Bから第1の室9Aに向けて気体が流通するのを許し、逆止弁31と直列に設けた絞り32は、逆止弁31を介して流通する気体に絞り作用を与え、第2の室9Bから第1の室9Aへと排出される気体の流量を抑えることができる。
【0057】
このため、シリンダ9の室9B内は、第2の高圧気体供給ユニット15Bからの高圧気体により急に圧力上昇するのを逆止弁31により抑えられ、絞り32は室9B内の気体を室9Aに向けて徐々に排出することができる。これにより、逆止弁31と絞り32とは、ピストン10の開弁方向(
図4中の矢示A方向)の変位速度を減少させることができる。
【0058】
従って、第2の実施の形態によれば、遮断弁2の閉弁動作を瞬時に行い、開弁動作は、第2の室9B内の圧力を下げてピストン10の推進力を低下させ、遮断弁2をゆっくりと開弁させることができる。この結果、二次側の配管内が遮断弁2の開弁時に急に加圧されることはなくなり、配管または配管機器等の耐久性、寿命を向上することができる。
【0059】
次に、
図6は第3の実施の形態を示している。本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第3の実施の形態の特徴は、開弁用流通路(第2の流通路16B)の途中に当該流通路内を流れる気体の圧力または流量を可変に調整する調整弁41を設ける構成としたことにある。
【0060】
この調整弁41は、開弁方向(矢示A方向)へのピストン10の変位速度を減少させる開弁減速機構を構成している。第2の安全弁23Bは、第1の実施の形態と同様に第1の安全弁23Aよりも低い圧力(例えば、0.6MPa程度の設定圧)に設定し、開弁減速機構の一部を構成してもよい。しかし、第3の実施の形態では、第2の安全弁23Bを第1の安全弁23Aと同じ設定圧(例えば、0.99MPa程度)に設定する構成としてもよい。
【0061】
ここで、調整弁41は、シリンダ9の第2の室9Bと第2の高圧気体供給ユニット15Bとの間に位置して第2の流通路16Bの途中に設けられ、当該流通路16B内を流れる気体を外部に放出する放出弁を構成している。この調整弁41は、手動または自動制御により微操作され、高圧気体供給ユニット15Bが作動して気体(高圧な炭酸ガス)が第2の流通路16Bに噴出されるときに、この気体の一部を調整弁41から外部の大気中に小さな流量で放出させる。
【0062】
かくして、全閉状態にある遮断弁2を開弁させるために、高圧気体供給ユニット15Bから第2の流通路16Bを介してシリンダ9の第2の室9Bに供給される気体は、シリンダ9内での圧力上昇が調整弁41によって抑えられる。これにより、シリンダ9内でのピストン10の矢示A方向の推進力を低下させることができ、遮断弁2を閉弁時に比較してゆっくりと開弁させることができる。
【0063】
従って、このように構成される第3の実施の形態でも、前記第2の実施の形態とほぼ同様に遮断弁2の開弁動作をゆっくりとさせて、二次側の配管内が遮断弁2の開弁時に急に加圧されることはなくなり、配管または配管機器の耐久性、寿命を向上することができる。特に、第3の実施の形態では、調整弁41の開度調整により気体の放出量が調整できるため、緊急遮断弁装置1が設置される現場において、遮断弁2の開弁速度(作動速度)を調整することができる。
【0064】
次に、
図7は第4の実施の形態を示している。本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第4の実施の形態の特徴は、開弁用流通路(第2の流通路16B)の途中に当該流通路内を流れる気体の圧力または流量を調整する予備タンク51を設ける構成としたことにある。
【0065】
この予備タンク51は、開弁方向(矢示A方向)へのピストン10の変位速度を減少させる開弁減速機構を構成している。第2の安全弁23Bは、第1の実施の形態と同様に第1の安全弁23Aよりも低い圧力(例えば、0.6MPa程度の設定圧)に設定し、開弁減速機構の一部を構成してもよい。しかし、第4の実施の形態では、第2の安全弁23Bを第1の安全弁23Aと同じ設定圧(例えば、0.99MPa程度)に設定する構成としてもよい。
【0066】
ここで、予備タンク51は、全閉状態にある遮断弁2を開弁させるために、高圧気体供給ユニット15Bが作動して気体(高圧な炭酸ガス)が第2の流通路16Bに噴出されるときに、この気体の一部をバッファタンクとして予備タンク51内に貯留させる。このため、高圧気体供給ユニット15Bから第2の流通路16Bを介してシリンダ9の第2の室9Bに供給される気体の圧力を、予備タンク51の容量に応じて下げることができる。これにより、予備タンク51は、シリンダ9内でのピストン10の矢示A方向の推進力を低下させ、遮断弁2をゆっくりと開弁させることができる。
【0067】
かくして、このように構成される第4の実施の形態でも、前記第2の実施の形態とほぼ同様に遮断弁2の開弁動作をゆっくりとさせ、二次側の配管内が遮断弁2の開弁時に急に加圧されることはなくなり、配管または配管機器の耐久性、寿命を向上することができる。特に、第4の実施の形態では、予備タンク51の容量に応じてピストン10の変位速度を調整できるため、緊急遮断弁装置1が設置される現場においても、遮断弁2の開弁速度(作動速度)を調整することが可能となる。
【0068】
次に、
図8は第5の実施の形態を示している。本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第5の実施の形態の特徴は、開弁方向(矢示A方向)へのピストン10の変位速度を減少させる開弁減速機構をブリードバルブ17に設ける構成としたことにある。
【0069】
ここで、第5の実施の形態による開弁減速機構は、ブリードバルブ17の切換位置(c)に設けられた絞り61により構成されている。この場合、第2の安全弁23Bは、第1の実施の形態と同様に第1の安全弁23Aよりも低い圧力(例えば、0.6MPa程度の設定圧)に設定し、開弁減速機構の一部を構成してもよい。しかし、第5の実施の形態では、第2の安全弁23Bを第1の安全弁23Aと同じ設定圧(例えば、0.99MPa程度)に設定する構成としてもよい。
【0070】
全閉状態にある遮断弁2を開弁させるため、第2の高圧気体供給ユニット15Bが作動されて気体(高圧な炭酸ガス)が第2の流通路16Bに噴出されるときに、ブリードバルブ17は、第2の流通路16Bからの気体圧力がパイロット部19Bに供給され、
図4に例示したように中立位置(a)から切換位置(c)に切換わる。これによって、第1の流通路16Aは、ブリードバルブ17により排気部20に接続され、シリンダ9内の第2の室9Aは、第1の流通路16Aを介して大気に開放される。
【0071】
然るに、第5の実施の形態では、ブリードバルブ17の切換位置(c)に絞り61を設けているので、シリンダ9内の室9Aから第1の流通路16Aを介して大気に放出される気体の流量を絞り61により制限することができ、シリンダ9から流通路16Aに排出される気体の流量を、絞るように減少させることができる。これにより、シリンダ9内の室9Aは、絞り61によって圧力が大気圧よりも高くなるように昇圧され、第1,第2の室9A,9B間の圧力差は小さく減じられる。この結果、ピストン10は、シリンダ9内で開弁方向(矢示A方向)の変位する速度が遅くなるように減速され、遮断弁2をゆっくり開弁させることができる。
【0072】
かくして、このように構成される第5の実施の形態でも、遮断弁2を閉弁した後に再び開弁させる場合に、ブリードバルブ17の切換位置(c)に設けた絞り61がピストン10の変位速度を遅くするように減少させ、前記第2の実施の形態とほぼ同様に遮断弁2をゆっくり開弁させることができ、二次側配管内が急に加圧されてしまうのを防止することができる。
【0073】
なお、前記第1の実施の形態では、例えば0.99MPa程度の開弁圧に第1の安全弁23Aを設定し、第2の安全弁23Bは、例えば0.6MPa程度の開弁圧に設定する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば遮断弁2の回動軸6を回動操作するトルク等に従って安全弁23A,23Bの設定値を変更するができる。また、第2の実施の形態における絞り32の流路径、第4の実施の形態における予備タンク51の容積、第5の実施の形態における絞り61の流路径についても、回動軸6を回動操作するトルク等に従って変更することが可能である。
【0074】
また、前記各実施の形態では、例えば都市ガスライン等の配管途中に設けられる緊急遮断弁装置1を例に挙げて説明した。しかし、本発明による緊急遮断弁装置はこれに限るものではなく、例えば水素等の気体、液化ガスまたは液体を含んだ種々の流体が流通する配管等の途中に設ける構成としてもよい。
【0075】
次に、上記の各実施形態に含まれる発明について記載する。即ち、前記開弁減速機構は、前記気体発生源から前記シリンダに供給される前記気体の圧力を抑える構成としている。この場合、前記開弁減速機構は、気体発生源からシリンダに供給される気体の圧力を低く抑えるように減少させることができる。これにより、ピストンの変位速度を遅くして遮断弁をゆっくり開弁させることができる。
【0076】
また、前記開弁減速機構は、前記シリンダから排出される前記気体の流量を抑える構成としている。この場合、開弁減速機構は、シリンダから排出される気体の流量を絞るように減少させることができる。これにより、ピストンの変位速度を遅くして遮断弁をゆっくり開弁させることができる。
【0077】
一方、前記流通路は、前記ピストンを開弁方向へ変位させるための気体が供給される開弁用流通路を含み、前記開弁減速機構は、該開弁用流通路内を流れる前記気体の圧力を調整する調整弁により構成している。これにより、前記調整弁は、開弁用流通路内を流れる気体の圧力を調整することができるので、シリンダ内に供給される気体の圧力を低く抑えることができ、ピストンが遮断弁の開弁方向に変位する速度を遅くすることができる。
【0078】
また、前記流通路は、前記ピストンを開弁方向へ変位させるための気体が供給される開弁用流通路を含み、前記開弁減速機構は、該開弁用流通路内を流れる前記気体の圧力を調整する予備タンクにより構成している。これにより、前記予備タンクは、開弁用流通路内を流れる気体の圧力を調整することができるので、シリンダ内に供給される気体の圧力を低く抑えることができ、ピストンが遮断弁の開弁方向に変位する速度を遅くすることができる。