特許第6829635号(P6829635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829635
(24)【登録日】2021年1月26日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】バッテリ取付構造
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20210128BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   E02F9/00 C
   B60R16/04 E
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-60784(P2017-60784)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162610(P2018-162610A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘文
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−159719(JP,A)
【文献】 特開2005−041316(JP,A)
【文献】 実開平01−060957(JP,U)
【文献】 米国特許第04480710(US,A)
【文献】 実開平02−056347(JP,U)
【文献】 実開昭63−167665(JP,U)
【文献】 実開平02−057749(JP,U)
【文献】 特開2004−152524(JP,A)
【文献】 実開昭57−126165(JP,U)
【文献】 特開2008−265360(JP,A)
【文献】 特開2011−089369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの車体フレームへの取り付け構造であって、
前記車体フレームに固定され、前記バッテリを載置支持する載置台、および前記載置台から前記バッテリの上面よりも上方まで延びる壁部を有するブラケット部材と、
前記ブラケット部材に載置支持された前記バッテリにおいて、前記壁部と反対側の前記バッテリの上角部に設置されるクランプ部材と、
前記バッテリの上面側において前記バッテリの上面と略平行に延びる横方向に延びて設けられ、前記壁部と前記クランプ部材を連結する第1フックボルトと、
前記バッテリの側面側において前記バッテリの側面と略平行に延びる上下方向に延びて設けられ、前記載置台と前記クランプ部材を連結する第2フックボルトとを備えて構成され
前記ブラケット部材は、前記壁部の強度を補う補強部材を有し、
前記第1フックボルトは、フック部を前記補強部材に係止させて前記横方向に延びた状態で前記壁部と前記クランプ部材を連結することを特徴とするバッテリ取付構造。
【請求項2】
前記第1フックボルトはフック部を前記補強部材に係止させるとともに前記クランプ部材に第1ナットを用いて結合され、前記第2フックボルトはフック部を前記載置台に係止させるとともに前記クランプ部材に第2ナットを用いて結合されることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ取付構造。
【請求項3】
前記バッテリを覆うバッテリカバーを備え、
前記バッテリカバーは、一端部が前記載置台に形成された係止突起に係止され、前記バッテリの一側面および上面を覆った位置まで前記バッテリカバーの他端部が延び、前記壁部および前記クランプ部材の上端部にそれぞれ形成された係止爪に係止されて取り付けられることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のバッテリ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリの車体フレームへの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両の一例として、左右のクローラ機構を有した走行体と、走行体上に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前部に設けられて掘削作業等を行うショベル装置とを備えて構成されたパワーショベルが知られている。このようなパワーショベルでは、自動車等と同じように、エンジンのスターター装置、オペレータキャビン内の温度を調節するエアコンディショナー(所謂、エアコン装置)等の電装品、および各装置の制御コントローラ等、或いは油圧ポンプを電動モータにより駆動する場合には当該電動モータに、電力を供給するためのバッテリ(蓄電池)を搭載している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011‐89369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーショベル等の作業用車両は、通常の道路よりも凹凸が多い場所において掘削等の作業を行う場合が多いため、車体フレームに生じる振動の頻度が多く、その振動幅も自動車等の振動よりも大きい。そのため、車両に搭載されるバッテリ等の装備品は、振動等によってがたつかないように車体フレームに強固に固定される必要がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、車両に搭載されるバッテリを、振動等によってがたつかないように車体フレームに強固に固定することができるバッテリ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るバッテリ取付構造は、車体フレーム(例えば、実施形態における旋回体フレーム22)に固定され、バッテリを載置支持する載置台、および前記載置台から前記バッテリの上面よりも上方まで延びる壁部(例えば、実施形態におけるバッテリブラケット101の後壁部102c)を有するブラケット部材(例えば、実施形態におけるバッテリブラケット101)と、前記ブラケット部材に載置支持された前記バッテリにおいて、前記壁部と反対側の前記バッテリの上角部に設置されるクランプ部材(例えば、実施形態におけるバッテリクランプ110)と、前記バッテリの上面側において前記バッテリの上面と略平行に延びる横方向に延びて設けられ、前記壁部と前記クランプ部材を連結する第1フックボルトと、前記バッテリの側面側において前記バッテリの側面と略平行に延びる上下方向に延びて設けられ、前記載置台と前記クランプ部材を連結する第2フックボルトとを備えて構成される。
【0007】
上記構成のバッテリ取付構造において、前記ブラケット部材は、前記壁部の強度を補う補強部材(例えば、実施形態における第1補強部材108)を有し、前記第1フックボルトは、フック部を前記補強部材に係止させて前記横方向に延びた状態で前記壁部と前記クランプ部材を連結するように構成される
【0008】
上記構成のバッテリ取付構造において、前記第1フックボルトはフック部を前記補強部材に係止させるとともに前記クランプ部材に第1ナットを用いて結合され、前記第2フックボルトはフック部を前記載置台に係止させるとともに前記クランプ部材に第2ナットを用いて結合されることが好ましい。
【0009】
上記構成のバッテリ取付構造において、前記バッテリを覆うバッテリカバーを備え、前記バッテリカバーは、一端部が前記載置台に形成された係止突起(例えば、実施形態におけるカバー係止突起107)に係止され、前記バッテリの一側面および上面を覆った位置まで前記バッテリカバーの他端部が延び、前記壁部および前記クランプ部材の上端部にそれぞれ形成された係止爪(例えば、実施形態における第1カバー係止爪102f、第2カバー係止爪111f)に係止されて取り付けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るバッテリ取付構造によれば、バッテリの上角部にクランプ部材を設置し、第1フックボルトによりバッテリの上面側において横方向に延びた状態でブラケット部材の壁部と前記クランプ部材を連結し、第2フックボルトによりバッテリの側面側において上下方向に延びた状態でブラケット部材の載置台と前記クランプ部材を連結するように構成される。そのため、バッテリを横方向および上下方向の2方向に締め付けることができる。従って、バッテリを2方向からしっかりと締め付けることができるため、車体フレームに頻繁に振動が生じる環境であっても、車体フレームに対してバッテリががたつくようなことを防ぐことができ、バッテリを車体フレームに強固に固定することができる。
【0011】
本発明に係るバッテリ取付構造において、ブラケット部材は、前記壁部の強度を補う補強部材を有し、第1フックボルトは、フック部を前記補強部材に係止させて前記横方向に延びた状態で前記壁部およびクランプ部材を連結するように構成される。このような構成によれば、第1フックボルトにナットを螺合させて強く締め付けたときにブラケット部材の壁部が変形することを補強部材により防ぐことができ、補強部材によって前記壁部の強度を向上させることができる。従って、第1フックボルトおよびナットによってバッテリを前記横方向に一層強く締め付けて固定することが可能となる。
【0012】
本発明に係るバッテリ取付構造において、第1フックボルトはフック部を補強部材に係止させるとともにクランプ部材に第1ナットを用いて結合され、第2フックボルトはフック部を載置台に係止させるとともにクランプ部材に第2ナットを用いて結合されることが好ましい。このような構成とすれば、第1ナットおよび第2ナットが近くに配置されるため、バッテリを固定する作業動線を短くすることができ、バッテリの着脱作業が容易となる。
【0013】
本発明に係るバッテリ取付構造において、バッテリを覆うバッテリカバーを備え、そのバッテリカバーは、一端部がブラケット部材の載置台に形成された係止突起に係止され、バッテリの一側面および上面を覆った位置までバッテリカバーの他端部が延び、ブラケット部材の壁部およびクランプ部材の上端部にそれぞれ形成された係止爪に係止されて取り付けられることが好ましい。このような構成とすれば、バッテリカバーによってバッテリに雨水やゴミ等が付着することを防ぐことができる。また、バッテリカバーを固定する固定部材を別途必要としないため、バッテリの点検や交換作業時等にバッテリカバーの着脱を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るバッテリ取付構造を適用した車両の一例であるパワーショベルの左側面図である。
図2】上記パワーショベルの右側面図である。
図3】上記パワーショベルの旋回体フレームを右斜め前方から見た斜視図である
図4】上記旋回体フレームを略正面から見た斜視図である。
図5】本発明に係るバッテリ取付構造を右斜め前方から見た斜視図である。
図6】本発明に係るバッテリ取付構造を左斜め前方から見た斜視図である。
図7】本発明に係るバッテリ取付構造を左斜め後方から見た斜視図である。
図8】本発明に係るバッテリ取付構造を右斜め後方から見た斜視図である。
図9】本発明に係るバッテリ取付構造においてバッテリカバーを取り付けた状態を右斜め前方から見た斜視図である。
図10】本発明に係るバッテリ取付構造においてバッテリカバーを取り付けた状態を左斜め前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係るバッテリ取付構造をパワーショベルに適用した例について説明する。パワーショベル1は、図1および図2に示すように、走行可能に構成された走行体10と、走行体10の上部に水平旋回可能に設けられた旋回体20と、旋回体20の前部に設けられたショベル装置30とを有して構成される。
【0016】
走行体10は、駆動輪11、複数の従動輪12およびこれらの車輪に掛け回された履帯13を有するクローラ機構15を、走行体フレーム14の左右両側にそれぞれ備えて構成されている。左右のクローラ機構15はそれぞれ、駆動輪11を回転駆動する走行モータ16を有して構成される。走行体10は、左右の走行モータ16の回転方向および回転速度を制御することにより任意の方向および速度で走行可能に構成されている。走行体フレーム14の前部には、上下方向に揺動自在にブレード18が設けられている。ブレード18は、走行体フレーム14との間に跨設されたブレードシリンダ19を伸縮作動させることにより上下揺動可能に構成されている。
【0017】
走行体フレーム14の上部中央には、走行体フレーム14に固定される内輪と、旋回体20に固定される外輪と、旋回体20に設けられる旋回モータと、前記内輪の内側に設けられ、旋回体20に設けられた油圧ポンプから走行体10に設けられた左右の走行モータ16およびブレードシリンダ19に作動油を供給するためのロータリーセンタージョイントとを有する旋回機構40が設けられている。旋回体20は、この旋回機構40を介して走行体フレーム14に水平旋回自在に取り付けられ、旋回機構40の旋回モータを正転または逆転作動させることにより、走行体10に対して左右方向に旋回可能に構成されている。旋回体20の前部には、前方に突出する本体側ブラケット21が設けられている。
【0018】
ショベル装置30は、本体側ブラケット21に上下軸を中心に回動自在に取り付けられたブームブラケット39と、ブームブラケット39に第1揺動ピン35aを中心に上下揺動自在に取り付けられたブーム31と、ブーム31の先端部に第2揺動ピン35bを中心に上下揺動自在に取り付けられたアーム32と、アーム32の先端部に第3揺動ピン35cを中心に上下揺動自在に取り付けられたバケット33と、アーム32およびバケット33に跨って設けられたリンク機構34とを有して構成される。さらに、ショベル装置30は、旋回体20とブームブラケット39の間に跨設されたスイングシリンダ(図示せず)と、ブームブラケット39とブーム31の間に跨設されたブームシリンダ36と、ブーム31とアーム32の間に跨設されたアームシリンダ37と、アーム32とリンク機構34の間に跨設されたバケットシリンダ38とを有して構成される。
【0019】
ブームブラケット39は、上記スイングシリンダを伸縮作動させることにより旋回体20(本体側ブラケット21)に対して水平面内において回動可能に構成されている。ブーム31は、ブームシリンダ36を伸縮作動させることにより旋回体20に対して上下面内において揺動可能に構成されている。アーム32は、アームシリンダ37を伸縮作動させることによりブーム31に対して上下面内において揺動可能に構成されている。バケット33は、バケットシリンダ38を伸縮作動させることによりリンク機構34を介してアー
ム32に対して上下揺動可能に構成されている。アーム32およびリンク機構34の先端部には、バケット33に換えて、ブレーカー等の種々のアタッチメントを取り付けることができるようになっている。
【0020】
旋回体20は、旋回機構40を介して走行体フレーム14に水平旋回自在に取り付けられ、前部に本体側ブラケット21を有する旋回体フレーム22と、旋回体フレーム22上に設けられ、操作室を形成する略矩形箱状のオペレータキャビン25とを有して構成される。オペレータキャビン25の左側部には、横開き開閉可能な開閉扉26が設けられ、この開閉扉26からオペレータ(作業者)がオペレータキャビン25内の操作室に搭乗可能になっている。オペレータキャビン25の右側部には、左右方向にスライド開閉可能なスライド窓27が設けられている。オペレータキャビン25内には、オペレータが着座するオペレータシート、走行体10の走行操作を行う左右一対の走行操作レバー、旋回体20およびショベル装置30の作動操作を行う左右の作業操作レバー、各種の操作スイッチ、および種々の車両情報を表示するディスプレイ装置等が設けられている。
【0021】
旋回体フレーム22には、オペレータキャビン25の後方位置に、走行体10における左右の走行モータ16およびブレードシリンダ19、旋回体20における前記旋回モータ、並びに、ショベル装置30における前記スイングシリンダ、ブームシリンダ36、アームシリンダ37およびバケットシリンダ38(以下、これらを纏めて「油圧アクチュエータ」とも称する)に作動油を供給して駆動させる油圧駆動装置が設けられている。この油圧駆動装置は、ディーゼルエンジンと、このディーゼルエンジンにより駆動される油圧ポンプと、作動油を貯留する作動油タンク51(図3を参照)と、油圧アクチュエータに供給する作動油の方向および流量を制御する制御バルブとを有して構成される。
【0022】
オペレータキャビン25内の走行操作レバーおよび作業操作レバーがそれぞれ操作されると、各操作レバーの基準位置からの操作方向および操作量(これらを纏めて「操作状態」と称する)に対応したパイロット油圧がリモコンバルブから制御バルブに供給されて制御バルブが作動される。そして、作動油タンク51から吸い上げられて油圧ポンプから吐出された作動油が、当該制御バルブによって各操作レバーの操作状態に応じた方向および流量に制御されて油圧アクチュエータに供給され、油圧アクチュエータが作動されて走行体10の走行、並びに、旋回体20およびショベル装置30の作動が行われるように構成されている。
【0023】
上記油圧駆動装置は、旋回体フレーム22の後部に設けられたリアカバー23と、旋回体フレーム22の右部に設けられたサイドカバー24とによって覆われた状態で旋回フレーム22に設けられている。リアカバー23は、旋回体フレーム22に対して上下方向に縦開き開閉可能に構成され、リアカバー23を上方に開放させた状態で油圧駆動装置の保守、点検作業(メンテナンス)等を行うことができるようになっている。サイドカバー24には、旋回体フレーム22に対して横開き開閉可能なメンテナンス用扉24aを有して構成され、このメンテナンス用扉24aを開放させた状態で油圧駆動装置の保守、点検作業等を行うこともできるようになっている。
【0024】
図3および図4に示すように、旋回体フレーム22には、サイドカバー24のメンテナンス用扉24aを開放した位置に、上記油圧駆動装置の作業油タンク51と、バッテリ60とが設けられている。バッテリ60は、上記ディーゼルエンジンのスターター装置、オペレータキャビン25内の温度を調節するエアコンディショナー(所謂、エアコン装置)等の電装品、および各装置の制御コントローラ等に電力を供給するための蓄電池である。
【0025】
バッテリ60の旋回体フレーム22への取り付け構造について、以下に説明する。このバッテリ取付構造100は、図5図8に示すように、旋回体フレーム22に固定される
バッテリブラケット101と、バッテリクランプ110と、第1フックボルト121と、第2フックボルト122と、第1および第2フックボルト121,122にそれぞれ螺合可能な第1ナット131および第2ナット132とを有して構成される。なお、以下では、図5に示す上下、左右および前後の矢印の方向をそれぞれ、上下方向、左右方向および前後方向として説明する。これらの方向はそれぞれ、パワーショベル1の前後、左右および上下方向と一致した方向になっている。
【0026】
バッテリブラケット101は、バッテリ60を載置支持する載置台102と、載置台102の下面に設けられて下方に延びる2本の脚部103,104とを有して構成される。載置台102は、バッテリ60の下面よりも若干大きな面積の平板状に形成され、載置台102の前端部、左端部および後端部にそれぞれ前壁部102a、左壁部102bおよび後壁部102cが立設されている。後壁部102cは、載置台102上に載置されたバッテリ60の上面よりも上方に延びる平板状に形成されている(後壁部102cの高さがバッテリ60の高さよりも高くなっている)。前壁部102aおよび左壁部102bも平板状に形成されているが、これら壁部102a,102bの高さは20〜30mm程度でバッテリ60の高さよりも低くなっている。
【0027】
後壁部102cの右端下部には、前方に延びる棒状のストッパー部材105が後壁部102cに溶接されて設けられている。載置台102上に載置されたバッテリ60は、前壁部102a、左壁部102b、後壁部102cおよびストッパー部材105のそれぞれの内面に近接した状態となり、これによりバッテリ60の位置決めと、バッテリ60が載置台102上の載置基準位置から前後左右方向にずれることを防止するようになっている。
【0028】
後壁部102cの上部略中央には、載置台102上に載置されたバッテリ60よりも高い位置に、前後方向に貫通した第1フック係止孔102hが形成されている。第1フック係止孔102hは、左右方向に延びた長穴形状になっている。後壁部102cの上端部中央には、第1フック係止孔102hの上方位置に、上方に延びてその上端部から右方に延びる略L字状の第1カバー係止爪102fが形成されている。前壁部102aの前面略中央には、前方に延びる平板状のフック係止部106が前壁部102aに溶接されて設けられている。フック係止部106には、左右方向に貫通した第2フック係止孔106hが形成されている。第2フック係止孔106hは、上下方向に延びた長穴形状になっている。
【0029】
載置台102の右端側下面には、2本の棒状のカバー係止突起107が前後方向に所定の間隔を置いて形成されている。図7および図8に示すように、後壁部102cの後面には、棒状の第1補強部材108が第1フック係止孔102hの一部を上下方向に横切る(架け渡す)ように後壁部102cの後面に溶接されて設けられている。また、後壁部102cの後面には、棒状の第2補強部材109が後壁部102cの後面の右端上部から左端下部まで延びるように後壁部102cに溶接されて設けられている。薄い平板状に形成された後壁部102cは、第1補強部材108および第2補強部材109により曲げ剛性等の強度を補って強くするようになっている。
【0030】
バッテリブラケット101は、後壁部102cを作動油タンク51の前面に当接させた状態で載置台102が作動油タンク51の前面に取付ボルト141を用いて固定され、脚部103,104の下端部がそれぞれ旋回体フレーム22の内側底面に取付ボルト142,143を用いて固定されるようになっている(図3および図4も参照)。そのため、載置台102上に載置されたバッテリ60は、旋回体フレーム22の内側底面よりも高い位置において支持され、載置台102の下面と旋回体フレーム22の内側底面との間に所定高さの空間を形成するようになっている。この空間を利用して作動油タンク51に繋がる油圧ホース等を通して配設したり、油圧ソレノイドバルブや電装部品等を設置したりすることが可能になっている。また、バッテリ60が旋回体フレーム22の内側底面よりも高
い位置において支持されているため、サイドカバー24のメンテナンス用扉24aを開放してバッテリ60にアクセスすることが容易であり、バッテリ60の点検、交換作業等を行い易くなっている。
【0031】
バッテリクランプ110は、図5および図6に示すように、平板部材を略90度に折り曲げて形成され、バッテリ60の前方上角部に設置可能に構成されている。バッテリクランプ110の後端側はさらに上方に略90度折り曲げて第1フックボルト係合部111が形成されている。第1フックボルト係合部111には、前後方向に貫通した第1ボルト挿通孔111hが形成されている。第1フックボルト係合部111の左側上端部には、上方に延びてその上端部から左方に延びる略L字状の第2カバー係止爪111fが形成されている。バッテリクランプ110の下端側は前方に略90度折り曲げて第2フックボルト係合部112が形成されている。第2フックボルト係合部112には、上下方向に貫通した第2ボルト挿通孔112hが形成されている。
【0032】
第1および第2フックボルト121,122はそれぞれ、一端側に第1および第2ナット131,132にそれぞれ螺合可能な雄ねじ部が形成された棒状の部材であり、他端側を90度以上折り曲げて形成されたフック部121f,フック部122fを有して構成される。
【0033】
このようなバッテリ取付構造100において、バッテリ60を取り付けるには、まずバッテリ60をバッテリブラケット101の載置台102上に載置する。このとき、バッテリ60は、前壁部102a、左壁部102b、後壁部102cおよびストッパー部材105によりバッテリ60の位置決めと、バッテリ60が載置台102上の載置基準位置から前後左右方向にずれることが防止される。次に、バッテリクランプ110をバッテリ60の前方上角部に設置する。そして、バッテリクランプ110の第1ボルト挿通孔111hに、第1フックボルト121の雄ねじ部を後方から挿通させるとともに、第1フックボルト121のフック部121fを、後壁部102cの第1フック係止孔102hに前方から通して第1補強部材108に係止させ、第1フックボルト121の雄ねじ部に前方から第1ナット131を螺合させる。このとき、第1フックボルト121は、バッテリ60の上面と略平行な前後方向に延びた状態で後壁部102cとバッテリクランプ110を連結するようになっている。また、第1フックボルト121の雄ねじ部に2個の第1ナット131を螺合させてダブルナット構成としており、バッテリクランプ110の第1フックボルト係合部111と第1ナット131の間にはワッシャー部材を介在させている。
【0034】
また、バッテリクランプ110の第2ボルト挿通孔112hに、第2フックボルト122の雄ねじ部を下方から挿通させるとともに、第2フックボルト122のフック部122fを、前壁部102aに設けられたフック係止部106の第2フック係止孔106hに左方から通して係止させ、第2フックボルト121の雄ねじ部に上方から第2ナット132を螺合させる。このとき、第2フックボルト122は、バッテリ60の前面と略平行な上下方向に延びた状態でフック係止部106(載置台102)とバッテリクランプ110を連結するようになっている。また、第2フックボルト122の雄ねじ部に2個の第2ナット132を螺合させてダブルナット構成としており、バッテリクランプ110の第2フックボルト係合部112と第2ナット132の間にはワッシャー部材を介在させている。
【0035】
このように配設した第1フックボルト121および第1ナット131、並びに第2フックボルト122および第2ナット132をそれぞれ締め付けていくことにより、バッテリクランプ110を介してバッテリ60に前後方向および上下方向の2方向の力(締め付け力)を作用させ、これら2方向の力によってバッテリ60をバッテリブラケット101に固定するようになっている。このようにバッテリ取付構造100では、バッテリ60を前後方向および上下方向の2方向に締め付けて、しっかりとバッテリブラケット101に固
定することができる。そのため、頻繁に振動が生じる環境であっても、バッテリブラケット101に対してバッテリ60ががたつくようなことがなく、バッテリ60の強固な取り付け状態を維持することができる。また、バッテリ取付構造100では、第1ナット131および第2ナット132が近くに配置されるため、バッテリ60を固定する作業動線を短くすることができ、バッテリ60の着脱作業が容易となる。
【0036】
バッテリ取付構造100は、図9および図10に示すように、バッテリブラケット101に載置支持されたバッテリ60を覆うバッテリカバー150を有して構成される。バッテリカバー150は、塩化ビニル製のシート部材であり、バッテリ60の右側面および上面を覆うことが可能な長さ寸法に形成されている。バッテリカバー150の一端部側には、前後方向に所定の間隔を置いて貫通形成された2個の第1係止孔が形成されている。これらの第1係止孔にバッテリブラケット101(載置台102)に設けられた2個のカバー係止突起107を挿入させることにより、バッテリカバー150の一端部がバッテリブラケット101に係止されて取り付けられるようになっている。バッテリカバー150の中間部には、前後方向に所定の間隔を置いて貫通形成された2個の第2係止孔が形成されている。これらの第2係止孔は左右方向に延びた長穴形状に形成されている。これらの第2係止孔に、バッテリブラケット101の後壁部102cに設けられた第1カバー係止爪102f、およびバッテリクランプ110に設けられた第2カバー係止爪111fをそれぞれ挿入させて係止させることにより、バッテリカバー150がバッテリ60の右側面および上面を覆った状態で取り付けられるようになっている。
【0037】
このようにバッテリ取付構造100では、バッテリカバー150によってバッテリ60を覆うことにより、バッテリ60に雨水やゴミ等が付着することを防ぐことができる。また、バッテリカバー150を固定する固定部材を別途必要としないため、バッテリ60の点検や交換作業時等にバッテリカバー150の着脱を容易に行うことができる。
【0038】
これまで、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、第1フックボルト121のフック部121fをバッテリブラケット101の後壁部102c(第1補強部材108)に係止させ、第2フックボルト122のフック部122fをバッテリブラケット101の前壁部102aに設けられたフック係止部106に係止させる構成になっている。しかしながら、第1および第2フックボルト121,122の向きを逆にして、フック部121f,122fをそれぞれバッテリクランプ110に係止させる構成に設計変更してもよい。
【0039】
また、上述の実施形態では、バッテリブラケット101が作動油タンク51の前面に固定されているが、この取り付け構成は一例であって、バッテリブラケット101の取り付け位置や取り付け方向は適宜変更可能である。また、上述の実施形態では、本発明に係るバッテリ取付構造を、クローラ走行式のパワーショベルに適用した場合について説明したが、本発明は、ホイール走行式のパワーショベル、パワーショベル以外の作業機械、種々の車両において適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 パワーショベル(車両)
22 旋回体フレーム(車体フレーム)
60 バッテリ
100 バッテリ取付構造
101 バッテリブラケット(ブラケット部材)
102 載置台
102c 後壁部(壁部)
102f 第1カバー係止爪(係止爪部)
107 カバー係止突起(係止突起)
108 第1補強部材(補強部材)
110 バッテリクランプ(クランプ部材)
111f 第2カバー係止爪(係止爪)
121 第1フックボルト
122 第2フックボルト
131 第1ナット
132 第2ナット
150 バッテリカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10