【実施例】
【0023】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0024】
<in vitro試験>
[被験物質1(1.0体積%のベルゲニアリグラタ抽出物を含む培地)の調製]
15μLのパシャンベエキスSK(0.5質量%のベルゲニアリグラタ根エキスを含むベルゲニアリグラタ抽出物;香栄興業株式会社製)を1485μLのMedium254(HMGSを1.0体積%含む表皮メラニン細胞用増殖培地;以下、「Medium254(HMGS含)」と称する)に添加し、混和後にフィルター濾過処理を行うことにより1.0体積%のベルゲニアリグラタ抽出物を含む培地を調製した。
【0025】
[被験物質2(1.0体積%のサンショウ果皮抽出物を含む培地)の調製]
パシャンベエキスSKの代わりにサンショウ抽出液−J(0.18質量%のサンショウ果皮エキスを含むサンショウ果皮抽出物;丸善製薬株式会社製)を用い、終濃度が1.0体積%となるように使用したこと以外は被験物質1の調製と同様の操作を行うことにより1.0体積%のサンショウ果皮抽出物を含む培地を調製した。
【0026】
[被験物質3(1.0体積%のホップ花抽出物を含む培地)の調製]
パシャンベエキスSKの代わりにホップ抽出液BG−JN(1.8質量%のホップ花エキスを含むホップ花抽出物;丸善製薬株式会社製)を用い、ホップ花抽出物の終濃度が1.0体積%となるように使用したこと以外は被験物質1の調製と同様の操作を行うことにより1.0体積%のホップ花抽出物を含む培地を調製した。
【0027】
[陰性対照1の調製]
ブタンジオールを終濃度が1.0体積%となるようにMedium254(HMGS含)に添加し、陰性対照1を調製した。
【0028】
[メラノサイトの調製]
ヒトメラノサイトはMedium254(HMGS含)を培養液とし、T75フラスコを用いてCO
2インキュベーター(5体積%CO
2、37℃)内で必要細胞数に達するまで培養した。その後、T75フラスコから培地を除き、10mLのHEPESを添加、細胞を洗浄後に3mLのトリプシン/EDTA溶液を加え、すぐに2mLの添加したトリプシン/EDTA溶液を除去、室温にて1〜2分静置し、細胞を剥離した。その後、10mLのHEPESを加え細胞を回収し、さらに10mLのトリプシン中和液を添加・混合し、その細胞溶液を170×g、5分間遠心した。沈殿(細胞)にMedium254(HMGS含)を添加、懸濁後に細胞数を血球計算板にて測定することによりヒトメラノサイトを調製した。
【0029】
[被験物質等の活性試験]
培養して得られたヒトメラノサイトを1.5×10
5cells/0.5mL/ウェルの24ウェルプレートに播種し、CO
2インキュベーター内(5体積%CO
2、37℃)で、24時間培養後、ウェルに被験物質1〜3、陰性対照1をそれぞれ0.5mLずつ添加した。その後、24時間培養し、細胞を回収した。
【0030】
上記試験から得られた各細胞からトータルRNAを回収した。RNA抽出はISOGEN(ニッポンジーン株式会社製)を用いて行った。具体的には、ISOGEN溶液によりサンプルの細胞を溶解した後、クロロホルムを加えて遠心分離し、水相に溶解しているRNAを得た。その後、水相にイソプロパノールを加えてRNAを沈殿させRNAを単離した。
【0031】
cDNA合成は、SuperScript III First−Strand Synthesis System(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて行った。具体的には、RNAが入ったチューブにcDNA合成に必要な試薬(random hexamers、dNTP mix、MgCl
2、DTT、RNaseOUT、SuperScript III RT)を加えた後、25℃にて10分間、50℃にて50分間、85℃にて5分間の条件で順次反応させてcDNAを合成した。Real−time PCRチューブにサンプル(合成させたcDNA)を調製し、Applied Biosystems リアルタイムPCRシステムを用いて、TGFBR2、EDNRB、SCFR、MITF−Mの遺伝子の発現量を定量した。PCR反応終了後にPCR産物の解離曲線を求めた。各遺伝子の発現量はΔΔCt値として算出した。
【0032】
増幅曲線と閾値線との交点より、Ct値(PCRサイクル数)を算出した。目的遺伝子のCt値より内部標準GAPDH2遺伝子のCt値を引いたCt(目的遺伝子)−Ct(GAPDH2)=ΔCt値である。さらにΔCt値より溶媒対照区の平均ΔCt値を引いたΔCt(サンプル処理区)−ΔCt(ブランク区)=ΔΔCt値とする。ΔΔCt値を乗数項に代入した2−ΔΔCt値が相対発現量となる。
【0033】
以上の結果を
図1〜4に纏めた。得られた結果から、1.0体積%のベルゲニアリグラタ抽出物を含む培地は、メラノサイトの細胞膜受容体であるTGFBR2、EDNRB、及びSCFRの全てに対する活性を有し、その相乗効果により強力なMITF−M活性促進作用を発揮することが明らかとなった。その一方で、サンショウ果皮抽出物、及びホップ花抽出物のMITF−M活性促進作用は低いことが明らかとなった。
【0034】
<in vivo試験>
[被験物質4(2.0質量%のベルゲニアリグラタ抽出物を含むサンプル)の調製]
エタノールを50.00質量%、l−メントールを0.40質量%、リン酸二水素ナトリウムを0.04質量%、リン酸一水素ナトリウムを0.03質量%、パシャンベエキスSKを2.0質量%、及び精製水を47.53質量%となる様に配合し、被験物質4を調製した。
【0035】
[陰性対照2の調製]
パシャンベエキスSKを用いず、精製水を49.53質量%使用したこと以外は被験物質4と同様にして、陰性対照2を調製した。
【0036】
[被験物質等の活性試験]
2名の被験者(被験者1及び2)から頭皮に被験物質4を塗布した後、それぞれ5本の毛髪をピンセットで抜去し、チューブに入れた。得られた毛根部の細胞からトータルRNAを回収した。また、陰性対照2についても同様の操作を行った。
【0037】
検体からのRNA抽出はPower SYBRGreen Cell−to−Ct Kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて行った。具体的には、Lysis solutionとDNaseIを99:1で混合した溶液を50uL/tubeずつ検体に加え、ピペッティングで混和した。その後5分間室温で反応させた後、Xeno RNA controlとStop Solutionとを1:5で混合した溶液を5uL/tubeずつ検体に加え、ピペッティングで混合し、2分間室温で反応させた。
【0038】
cDNA合成は、SuperScript III First−Strand Synthesis System(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて行った。具体的には、RNAが入ったチューブにcDNA合成に必要な試薬(random hexamers、dNTP mix、MgCl
2、DTT、RNaseOUT、SuperScript III RT)を加えた後、25℃にて10分間、50℃にて50分間、85℃にて5分間の条件で順次反応させてcDNAを合成した。Real−time PCRチューブにサンプル(合成させたcDNA)を調製し、Applied BiosystemsリアルタイムPCRシステムを用いて、MITF−Mの遺伝子の発現量を定量した。PCR反応終了後にPCR産物の解離曲線を求めた。各遺伝子の発現量はΔΔCt値として算出した。
【0039】
増幅曲線と閾値線との交点より、Ct値(PCRサイクル数)を算出した。目的遺伝子のCt値より内部標準GAPDH2遺伝子のCt値を引いたCt(目的遺伝子)−Ct(GAPDH2)=ΔCt値である。さらにΔCt値より溶媒対照区の平均ΔCt値を引いたΔCt(サンプル処理区)−ΔCt(ブランク区)=ΔΔCt値とする。ΔΔCt値を乗数項に代入した2−ΔΔCt値が相対発現量となる。
【0040】
以上の結果を
図5(被験者1)及び
図6(被験者2)に纏めた。なお、
図5及び6におけるMITF−Mの相対発現量は、5つの検体の平均値を示す。また、図中の「なし」とは頭皮に陰性対照2を塗布した場合、「あり」とは頭皮に被験物質4を塗布した場合を意味している。得られた結果から、2.0質量%のベルゲニアリグラタ抽出物を含むサンプルは、顕著なMITF−M活性促進作用を発揮することが明らかとなった。
【0041】
以上の結果から、in vivo試験においてもベルゲニアリグラタ抽出物がMITF−Mの活性を強力に促進することが明らかとなった。つまり、ベルゲニアリグラタ抽出物がMITF−M活性促進剤として有効な効果を発揮する成分であることが示された。そして、ベルゲニアリグラタ抽出物によってMITF−Mが活性化されることにより、メラノサイトにおけるメラニン合成が促進され、その結果、高い抗白髪作用(白髪化の予防やその改善)が発揮されることとなる。つまり、ベルゲニアリグラタ抽出物が抗白髪剤として有効な効果を発揮する成分であることが示された。