特許第6829636号(P6829636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829636
(24)【登録日】2021年1月26日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】抗白髪剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20210128BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61Q5/00
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-61437(P2017-61437)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162235(P2018-162235A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 顕策
(72)【発明者】
【氏名】倉田 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】原 真也
(72)【発明者】
【氏名】石塚 周太
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−195730(JP,A)
【文献】 特開2016−196425(JP,A)
【文献】 特開2016−172723(JP,A)
【文献】 特開2007−320950(JP,A)
【文献】 特開2006−306737(JP,A)
【文献】 特開2006−257060(JP,A)
【文献】 特開2004−315492(JP,A)
【文献】 特開平11−228339(JP,A)
【文献】 特開平07−069850(JP,A)
【文献】 特開2006−241102(JP,A)
【文献】 特開2004−315491(JP,A)
【文献】 特開2004−196669(JP,A)
【文献】 特開平10−046142(JP,A)
【文献】 特開平05−139951(JP,A)
【文献】 特開平05−058870(JP,A)
【文献】 特開2005−206474(JP,A)
【文献】 特開2012−051916(JP,A)
【文献】 特開平05−043424(JP,A)
【文献】 特開2006−028143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00− 8/99
A61Q1/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルゲニアリグラタ抽出物を有効成分とするMITF−M活性促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗白髪剤に関する。また、メラノサイトにおけるMITF−M(Microphthalmia−Associated Transcription Factor type M)の活性促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪の発生は代表的な老徴であり、外見の印象に与える影響が大きい。若々しくいたいと願う生活者の多くは、染毛剤や染毛料を用いて染色することにより白髪化に対応している。しかし、これらの染毛方法は手間がかかること、髪や頭皮に悪影響を及ぼす可能性があること、さらに自然な色に染まり難いこと等の様々な問題があった。このため、染毛剤や染毛料に頼らない抗白髪方法(例えば、白髪化の予防方法やその改善方法)の開発が求められている。
【0003】
毛髪の色を決定するメラニン色素はメラノサイトで産生される色素成分である。メラノサイトは毛母細胞と隣り合う形で毛球部に存在しており、毛母細胞が細胞分裂して髪が作り出される際に、メラノサイトからメラニン色素が受け渡され、髪の内部に取りこまれる。したがって、メラノサイトにおけるメラニン合成が正常に行われない場合は、髪がメラニンを取り込むことができず、白髪が発生することとなる。
【0004】
メラノサイトにおけるメラニン合成は、MITF−Mが重要な役割を果たしている(非特許文献1)。MITF−Mは、メラノサイト合成に関わる酵素であるチロシナーゼや、その関連タンパク質であるTRP−1(Tyrosinase related protein−1)、TRP−2(Tyrosinase related protein−2)の転写制御を行うことが知られている。また、MITF−Mは前記のタンパク質の転写制御以外にも、メラノサイトの分化誘導、遊走、抗アポトーシスに関連することが知られている。
【0005】
上述の通り、白髪化のメカニズムをターゲットとした研究は盛んに行われている。しかしながら、これらの知見は抗白髪の抜本的解決方法の発見には繋がっていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Emi K. Nishimura et al、Science、Vol.307、Issue5710、2005年2月4日、p.720−724
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、白髪化のメカニズムをターゲットとした抗白髪剤を提供することである。また、メラニン合成に重要な役割を果たすことが知られているMITF−Mを活性化する、活性促進剤(MITF−M活性促進剤)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の様な事情に鑑み、本発明者は白髪化のメカニズムに着目して鋭意研究を重ねた結果、ベルゲニアリグラタ抽出物がメラノサイト(色素形成細胞)の細胞膜受容体であるTGFBR2(Transforming growth factor beta receptor II)、EDNRB(Endothelin receptor type B)、及びSCFR(Stem cell factor receptor、別名:c−Kit,CD117)の活性を促進させること、及びMITF−Mの活性を促進させることを見出して本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、ベルゲニアリグラタ抽出物を有効成分とする抗白髪剤を提供する。
【0010】
また、本発明は、ベルゲニアリグラタ抽出物を有効成分とするMITF−M活性促進剤についても提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗白髪剤は、MITF−Mの活性を強力に促進する結果、メラノサイトにおけるメラニン合成を促進し、高い抗白髪作用(白髪化の予防やその改善)を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】in vitro試験におけるベルゲニアリグラタ抽出物によるTGFBR2、EDNRB、及びSCFR遺伝子の発現量を示すグラフ
図2】in vitro試験におけるサンショウ果皮抽出物によるTGFBR2、EDNRB、及びSCFR遺伝子の発現量を示すグラフ
図3】in vitro試験におけるホップ花抽出物によるTGFBR2、EDNRB、及びSCFR遺伝子の発現量を示すグラフ
図4】in vitro試験におけるベルゲニアリグラタ抽出物、サンショウ果皮抽出物、及びホップ花抽出物によるMITF−M遺伝子の発現量を示すグラフ
図5】in vivo試験(被験者1)におけるベルゲニアリグラタ抽出物によるMITF−M遺伝子の発現量を示すグラフ
図6】in vivo試験(被験者2)におけるベルゲニアリグラタ抽出物によるMITF−M遺伝子の発現量を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ベルゲニアリグラタ抽出物を有効成分とする抗白髪剤に関する。また、ベルゲニアリグラタ抽出物を有効成分とするMITF−M活性促進剤に関する。なお、これらを「本発明の抗白髪剤」又は「本発明の活性促進剤」と称する場合がある。
【0014】
本発明の抗白髪剤及び活性促進剤は、ベルゲニアリグラタ抽出物が有効成分であることを特徴とする。ベルゲニアリグラタ抽出物は、メラノサイトの細胞膜受容体であるTGFBR2、EDNRB、及びSCFRの活性を促進する。また、これらの細胞質受容体を活性化させることにより、メラノサイトにおけるMITF−Mの活性を促進する。つまり、本発明の抗白髪剤及び活性促進剤は、TGFBR2、EDNRB、及びSCFRを活性化することにより、メラノサイトにおけるMITF−Mの活性を促進し、その結果、メラニン合成をはじめとする各種の生理作用を発揮する。この生理作用の一つとして、例えば、抗白髪作用(白髪化の予防やその改善)が挙げられる。
【0015】
なお、本発明の抗白髪剤及び活性促進剤がMITF−Mの活性を強力に促進する理由は、ベルゲニアリグラタ抽出物が、メラノサイトの細胞膜受容体であるTGFBR2、EDNRB、及びSCFRの全てに対して活性があることによるものであると推察される。つまり、本発明の抗白髪剤及び活性促進剤は、メラノサイトの細胞膜受容体であるTGFBR2、EDNRB、及びSCFRの全ての活性を促進する抗白髪剤及び活性促進剤といえる。また、本発明の抗白髪剤及び活性促進剤は、メラノサイトの細胞膜受容体であるTGFBR2、EDNRB、及びSCFRの全ての活性を促進することにより、メラノサイトにおけるMITF−Mの活性を促進する抗白髪剤及び活性促進剤といえる。
【0016】
ベルゲニアリグラタ抽出物は、ベルゲニアリグラタの各部位から抽出溶媒を用いて抽出することにより得られるものである。抽出方法は特に限定されず、公知の各種抽出方法を用いることができる。抽出原料としては、ベルゲニアリグラタの葉、枝、材部、樹皮、根等の部位や、これらを乾燥したものが用いられる。この中でも、特にベルゲニアリグラタの根が好ましい。抽出方法としては、常温で、又は加温して、抽出溶媒により抽出すること等が挙げられる。
【0017】
抽出溶媒としては、通常の植物の抽出に用いられる溶媒であれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール等の低級一価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステル、水等が例示され、これらの一種又は二種以上の混合溶媒を用いることができる。この中でも、水及び1,3−ブチレングリコールからなる抽出溶媒が好ましい。
【0018】
ベルゲニアリグラタ抽出物は、そのまま用いてもよいが、必要に応じてろ過、濃縮してもよい。また、ベルゲニアリグラタ抽出物をカラムクロマト法等により、分画、精製して用いることもできる。また、ベルゲニアリグラタ抽出物は、減圧乾燥又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製し、適宜製剤化して用いることもできる。なお、ベルゲニアリグラタ抽出物としては、例えば、「パシャンベエキスSK」(香栄興業株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0019】
本発明の活性促進剤は、頭皮に塗布されることにより経皮的に吸収されて毛根部位に達し、メラノサイトの細胞膜受容体であるTGFBR2、EDNRB、SCFR、MITF−Mの活性を促進させる。本発明の活性促進剤はこれらの作用を有することにより、抗白髪剤として用いることができる。さらに、本発明の抗白髪剤及び活性促進剤は、スカルプケア剤等の皮膚外用品や、シャンプー、トリートメント剤等の頭髪料に配合して用いることができる。
【0020】
本発明の皮膚外用品及び頭髪料は、例えば、液状、ミスト状、霧状、乳液状、クリーム状、ジェル状、ワックス状、フォーム状等の各種剤形に調製して使用できる。また、本発明の所望の効果の発現が阻害されない範囲であれば、例えば、低級アルコール、多価アルコール、糖アルコール、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、キレート剤、抗菌剤、酸化防止剤、保湿剤、清涼剤、ビタミン類、カチオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマー、植物抽出液、噴射剤、pH調整剤、アミノ酸、抗炎症剤、収斂剤、色素、増粘剤等のその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0021】
皮膚外用品又は頭髪料におけるベルゲニアリグラタ抽出物の配合量は、その使用態様に応じて適宜調整されるが、製剤全体の0.00005〜0.05質量%の範囲で配合することが好ましく、0.0001〜0.025質量%の範囲で配合することがより好ましく、0.0005〜0.01質量%の範囲で配合することが更に好ましい。なお、ベルゲニアリグラタ抽出物の配合量は固形分換算を基準とする。
【0022】
なお、本発明の活性促進剤は、抗白髪剤以外にも、皮膚の抗白斑治療剤、抗皮膚黒色化剤、美白剤といった皮膚化粧料としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0024】
<in vitro試験>
[被験物質1(1.0体積%のベルゲニアリグラタ抽出物を含む培地)の調製]
15μLのパシャンベエキスSK(0.5質量%のベルゲニアリグラタ根エキスを含むベルゲニアリグラタ抽出物;香栄興業株式会社製)を1485μLのMedium254(HMGSを1.0体積%含む表皮メラニン細胞用増殖培地;以下、「Medium254(HMGS含)」と称する)に添加し、混和後にフィルター濾過処理を行うことにより1.0体積%のベルゲニアリグラタ抽出物を含む培地を調製した。
【0025】
[被験物質2(1.0体積%のサンショウ果皮抽出物を含む培地)の調製]
パシャンベエキスSKの代わりにサンショウ抽出液−J(0.18質量%のサンショウ果皮エキスを含むサンショウ果皮抽出物;丸善製薬株式会社製)を用い、終濃度が1.0体積%となるように使用したこと以外は被験物質1の調製と同様の操作を行うことにより1.0体積%のサンショウ果皮抽出物を含む培地を調製した。
【0026】
[被験物質3(1.0体積%のホップ花抽出物を含む培地)の調製]
パシャンベエキスSKの代わりにホップ抽出液BG−JN(1.8質量%のホップ花エキスを含むホップ花抽出物;丸善製薬株式会社製)を用い、ホップ花抽出物の終濃度が1.0体積%となるように使用したこと以外は被験物質1の調製と同様の操作を行うことにより1.0体積%のホップ花抽出物を含む培地を調製した。
【0027】
[陰性対照1の調製]
ブタンジオールを終濃度が1.0体積%となるようにMedium254(HMGS含)に添加し、陰性対照1を調製した。
【0028】
[メラノサイトの調製]
ヒトメラノサイトはMedium254(HMGS含)を培養液とし、T75フラスコを用いてCO2インキュベーター(5体積%CO2、37℃)内で必要細胞数に達するまで培養した。その後、T75フラスコから培地を除き、10mLのHEPESを添加、細胞を洗浄後に3mLのトリプシン/EDTA溶液を加え、すぐに2mLの添加したトリプシン/EDTA溶液を除去、室温にて1〜2分静置し、細胞を剥離した。その後、10mLのHEPESを加え細胞を回収し、さらに10mLのトリプシン中和液を添加・混合し、その細胞溶液を170×g、5分間遠心した。沈殿(細胞)にMedium254(HMGS含)を添加、懸濁後に細胞数を血球計算板にて測定することによりヒトメラノサイトを調製した。
【0029】
[被験物質等の活性試験]
培養して得られたヒトメラノサイトを1.5×105cells/0.5mL/ウェルの24ウェルプレートに播種し、CO2インキュベーター内(5体積%CO2、37℃)で、24時間培養後、ウェルに被験物質1〜3、陰性対照1をそれぞれ0.5mLずつ添加した。その後、24時間培養し、細胞を回収した。
【0030】
上記試験から得られた各細胞からトータルRNAを回収した。RNA抽出はISOGEN(ニッポンジーン株式会社製)を用いて行った。具体的には、ISOGEN溶液によりサンプルの細胞を溶解した後、クロロホルムを加えて遠心分離し、水相に溶解しているRNAを得た。その後、水相にイソプロパノールを加えてRNAを沈殿させRNAを単離した。
【0031】
cDNA合成は、SuperScript III First−Strand Synthesis System(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて行った。具体的には、RNAが入ったチューブにcDNA合成に必要な試薬(random hexamers、dNTP mix、MgCl2、DTT、RNaseOUT、SuperScript III RT)を加えた後、25℃にて10分間、50℃にて50分間、85℃にて5分間の条件で順次反応させてcDNAを合成した。Real−time PCRチューブにサンプル(合成させたcDNA)を調製し、Applied Biosystems リアルタイムPCRシステムを用いて、TGFBR2、EDNRB、SCFR、MITF−Mの遺伝子の発現量を定量した。PCR反応終了後にPCR産物の解離曲線を求めた。各遺伝子の発現量はΔΔCt値として算出した。
【0032】
増幅曲線と閾値線との交点より、Ct値(PCRサイクル数)を算出した。目的遺伝子のCt値より内部標準GAPDH2遺伝子のCt値を引いたCt(目的遺伝子)−Ct(GAPDH2)=ΔCt値である。さらにΔCt値より溶媒対照区の平均ΔCt値を引いたΔCt(サンプル処理区)−ΔCt(ブランク区)=ΔΔCt値とする。ΔΔCt値を乗数項に代入した2−ΔΔCt値が相対発現量となる。
【0033】
以上の結果を図1〜4に纏めた。得られた結果から、1.0体積%のベルゲニアリグラタ抽出物を含む培地は、メラノサイトの細胞膜受容体であるTGFBR2、EDNRB、及びSCFRの全てに対する活性を有し、その相乗効果により強力なMITF−M活性促進作用を発揮することが明らかとなった。その一方で、サンショウ果皮抽出物、及びホップ花抽出物のMITF−M活性促進作用は低いことが明らかとなった。
【0034】
<in vivo試験>
[被験物質4(2.0質量%のベルゲニアリグラタ抽出物を含むサンプル)の調製]
エタノールを50.00質量%、l−メントールを0.40質量%、リン酸二水素ナトリウムを0.04質量%、リン酸一水素ナトリウムを0.03質量%、パシャンベエキスSKを2.0質量%、及び精製水を47.53質量%となる様に配合し、被験物質4を調製した。
【0035】
[陰性対照2の調製]
パシャンベエキスSKを用いず、精製水を49.53質量%使用したこと以外は被験物質4と同様にして、陰性対照2を調製した。
【0036】
[被験物質等の活性試験]
2名の被験者(被験者1及び2)から頭皮に被験物質4を塗布した後、それぞれ5本の毛髪をピンセットで抜去し、チューブに入れた。得られた毛根部の細胞からトータルRNAを回収した。また、陰性対照2についても同様の操作を行った。
【0037】
検体からのRNA抽出はPower SYBRGreen Cell−to−Ct Kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて行った。具体的には、Lysis solutionとDNaseIを99:1で混合した溶液を50uL/tubeずつ検体に加え、ピペッティングで混和した。その後5分間室温で反応させた後、Xeno RNA controlとStop Solutionとを1:5で混合した溶液を5uL/tubeずつ検体に加え、ピペッティングで混合し、2分間室温で反応させた。
【0038】
cDNA合成は、SuperScript III First−Strand Synthesis System(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いて行った。具体的には、RNAが入ったチューブにcDNA合成に必要な試薬(random hexamers、dNTP mix、MgCl2、DTT、RNaseOUT、SuperScript III RT)を加えた後、25℃にて10分間、50℃にて50分間、85℃にて5分間の条件で順次反応させてcDNAを合成した。Real−time PCRチューブにサンプル(合成させたcDNA)を調製し、Applied BiosystemsリアルタイムPCRシステムを用いて、MITF−Mの遺伝子の発現量を定量した。PCR反応終了後にPCR産物の解離曲線を求めた。各遺伝子の発現量はΔΔCt値として算出した。
【0039】
増幅曲線と閾値線との交点より、Ct値(PCRサイクル数)を算出した。目的遺伝子のCt値より内部標準GAPDH2遺伝子のCt値を引いたCt(目的遺伝子)−Ct(GAPDH2)=ΔCt値である。さらにΔCt値より溶媒対照区の平均ΔCt値を引いたΔCt(サンプル処理区)−ΔCt(ブランク区)=ΔΔCt値とする。ΔΔCt値を乗数項に代入した2−ΔΔCt値が相対発現量となる。
【0040】
以上の結果を図5(被験者1)及び図6(被験者2)に纏めた。なお、図5及び6におけるMITF−Mの相対発現量は、5つの検体の平均値を示す。また、図中の「なし」とは頭皮に陰性対照2を塗布した場合、「あり」とは頭皮に被験物質4を塗布した場合を意味している。得られた結果から、2.0質量%のベルゲニアリグラタ抽出物を含むサンプルは、顕著なMITF−M活性促進作用を発揮することが明らかとなった。
【0041】
以上の結果から、in vivo試験においてもベルゲニアリグラタ抽出物がMITF−Mの活性を強力に促進することが明らかとなった。つまり、ベルゲニアリグラタ抽出物がMITF−M活性促進剤として有効な効果を発揮する成分であることが示された。そして、ベルゲニアリグラタ抽出物によってMITF−Mが活性化されることにより、メラノサイトにおけるメラニン合成が促進され、その結果、高い抗白髪作用(白髪化の予防やその改善)が発揮されることとなる。つまり、ベルゲニアリグラタ抽出物が抗白髪剤として有効な効果を発揮する成分であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6