特許第6829639号(P6829639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6829639W/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829639
(24)【登録日】2021年1月26日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】W/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/08 20060101AFI20210128BHJP
   C11D 3/18 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B08B3/08 Z
   C11D3/18
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-62973(P2017-62973)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-164878(P2018-164878A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 辰也
(72)【発明者】
【氏名】青柳 功
(72)【発明者】
【氏名】吉田 瑞穂
【審査官】 今村 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5458583(JP,B2)
【文献】 特開2006−022167(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094528(WO,A1)
【文献】 特開2007−283191(JP,A)
【文献】 特開2017−185471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/08
C11D 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を、炭化水素系溶剤、界面活性剤および水を含んでなるW/Oエマルジョン洗浄液で洗浄する洗浄工程(A)と、
前記W/Oエマルジョン洗浄液を同伴する被洗浄物を、前記炭化水素系溶剤および前記界面活性剤からなるすすぎ液、または前記炭化水素系溶剤からなるすすぎ液ですすぐすすぎ工程(B)と、
前記すすぎ液から少なくとも水分の一部を除去する水分除去工程(C)と、
前記水分除去工程(C)後の前記すすぎ液から分離した分離物を除去する分離工程(D)と、を含むことを特徴とするW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法。
【請求項2】
前記水分除去工程(C)は、水を気化させることにより行われる請求項1に記載のW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法。
【請求項3】
前記分離工程(D)は、フィルターによるろ過、遠心分離または蒸留濃縮により行われる請求項1または2に記載のW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法。
【請求項4】
前記すすぎ工程(B)と前記水分除去工程(C)は、同一の槽内において行われる請求項1〜3のいずれか一つに記載のW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法。
【請求項5】
前記水分除去工程(C)と前記分離工程(D)は、同一の槽内において行われる請求項1〜4のいずれか一つに記載のW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法に関し、特に、自動車、機械、精密機器、電気、電子、光学等の各種工業分野において扱われる部品に付着した、極性の低い汚れと極性の高い汚れが複合した汚れを洗浄して除去することができるW/Oエマルジョョン洗浄液による洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性加工油が付着した部品の洗浄用として、炭化水素系溶剤、界面活性剤および水とを所定割合で含み、エマルジョンを形成する洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1および2参照)。汚れが水分を含む場合や、水分を含む洗浄剤組成物を使用する洗浄システムにおいて、洗浄槽での水分管理やその後のすすぎ槽での水分除去が適切に行われない場合、洗浄不良や水ジミが発生する原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−174106号公報
【特許文献2】特開2015−40217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの提案では運用中の洗浄機から汚れである水溶性の汚れを排出する方法に大きな問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1の洗浄剤では、洗浄処理後に洗浄槽の洗浄剤の静置を行い、比重分離により得られた水層を排出することにより水溶性の汚れを系外に排出している。しかしながら、運転中に洗浄槽からすすぎ槽に持ち込まれる水分については、何ら考慮されておらず、持ち込まれる水分量が多くなると水ジミの原因となるおそれがある。
【0006】
また、特許文献2では洗浄処理後の洗浄剤を蒸留して、水溶性の汚れを含む界面活性剤を蒸留残渣として系外に排出し、回収したベース溶剤および水に必要量の界面活性剤を補充して、リザーブタンクに供給している。しかしながら、特許文献2では、すすぎ槽に持ち込まれる汚れについては蒸留再生により除去されるものの、持ち込まれる水分については何ら考慮されておらず、持ち込まれた水分はベース溶剤とともにすすぎ槽に再供給されるため、すすぎ槽の水分量が多くなると水ジミの原因となる。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、すすぎ槽から効率的に水分および水溶性の汚れを排出するW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる事情をふまえ、本発明者らは前述の問題点を解決すべく種々の検討を重ねた結果、被洗浄物に水ジミが発生しにくいW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法、およびW/Oエマルジョン洗浄液用の洗浄装置を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明に係るW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法は、被洗浄物を、炭化水素系溶剤、界面活性剤および水を含んでなるW/Oエマルジョン洗浄液で洗浄する洗浄工程(A)と、前記W/Oエマルジョン洗浄液を同伴する被洗浄物を、前記炭化水素系溶剤および前記界面活性剤からなるすすぎ液、または前記炭化水素系溶剤からなるすすぎ液ですすぐすすぎ工程(B)と、前記すすぎ液から少なくとも水分の一部を除去する水分除去工程(C)と、前記水分除去工程(C)後の前記すすぎ液から分離した分離物を除去する分離工程(D)と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の通り、本発明に係る洗浄方法によれば、すすぎ槽から水分および水溶性汚れを効率的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の実施の形態1にかかる洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
図2図2は本発明の実施の形態2にかかる洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
図3図3は本発明の実施の形態3にかかる洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
図4図4は本発明の実施の形態4にかかる洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
図5図5は本発明の実施の形態5にかかる洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
図6図6は本発明の実施の形態6にかかる洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明するが、具体的な記載内容は本発明を限定するものではない。
【0013】
本発明に係るW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法は、被洗浄物を、炭化水素系溶剤、界面活性剤および水を含んでなるW/Oエマルジョン洗浄液で洗浄する洗浄工程(A)と、W/Oエマルジョン洗浄液を同伴する被洗浄物を、炭化水素系溶剤および界面活性剤からなるすすぎ液、または炭化水素系溶剤からなるすすぎ液ですすぐ工程(B)と、すすぎ液から少なくとも水分の一部を除去する水分除去工程(C)と、水分除去工程(C)後のすすぎ液から分離した分離物を除去する分離工程(D)と、を含むことを特徴とする。以下、工程ごとに順次説明する。
【0014】
洗浄工程(A)は、部品等の被洗浄物から、炭化水素系溶剤、界面活性剤および水を含んでなるW/Oエマルジョン洗浄液を用いて汚れを除去することを目的とする。汚れを除去する手法として特に限定するものではないが、W/Oエマルジョン洗浄液に物理力を付与して洗浄する方法が好ましい。例えば、超音波照射、撹拌機による撹拌、ポンプによる噴流、シャワー、ジェット、部品の揺動、回転、移動による洗浄などの手法から単独もしくは複数を組み合わせて使用すればよい。
【0015】
洗浄工程(A)で洗浄される被洗浄物には、汚れとして水溶性加工油が付着している。特に限定するものではないが、水溶性の汚れとしては、潤滑性を付与するための脂肪酸金属塩、さび止め性能を付与するための有機・無機インヒビタ、水溶性高分子、有機・無機アルカリ、水溶性防腐剤などの加工油原液に本来添加されている成分が含まれる。これ以外にも希釈に用いた工業用水中のカルシウム分や、加工に伴い被洗浄物から溶出したアルミニウムやマグネシウムなどの金属イオンなども含まれる。これらの水溶性の汚れは炭化水素系溶剤、または炭化水素系溶剤と界面活性剤の混合物には溶解しにくく、W/Oエマルジョン洗浄液の水分量が減少すると、洗浄液中に溶解されずに析出する特徴がある。
【0016】
洗浄工程(A)で用いるW/Oエマルジョン洗浄液は、特に限定するものではないが、炭化水素系溶剤、界面活性剤および水を含んでなるものであり、水は、炭化水素系溶剤と界面活性剤の混合物中に水滴として分散している。この水滴径により透明または不透明で白濁した外観を呈するものである。W/Oエマルジョン洗浄液は、物理力を加えなければ分離するものから、混合することで自然乳化するような安定的なものまで選択することができる。また、必要に応じて酸化防止剤、防腐剤などの添加剤を配合することもできる。
【0017】
洗浄工程(A)で用いる洗浄液のW/O化が不安定であるときには、洗浄液に超音波発振子による超音波照射、撹拌機やホモジナイザーによる撹拌、ポンプによる液循環を加えることによりW/Oエマルジョン化することができる。これらは単独または複数組み合わせて使用でき、また洗浄に必要な物理力と兼ねることもできる。
【0018】
本発明で使用するW/Oエマルジョン洗浄液のベースとなる炭化水素系溶剤は、特に限定されるものではないが、炭素数8以上のノルマルパラフィン溶剤、イソパラフィン溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族系溶剤から単独または複数種を混合して使用することができる。後段のすすぎ工程(B)で用いる炭化水素系溶剤と共通したものであるほうが望ましい。またアルコールやグリコールエーテルなどの有機溶剤が含まれていても、洗浄性を阻害しない範囲であれば問題ない。
【0019】
本発明に用いる界面活性剤は特に限定されるものではないが、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤から単独または複数組み合わせて使用される。界面活性剤の濃度も特に限定されるものではないが、炭化水素系溶剤に対して0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは各々0.1質量%以上4質量%未満である。含有量が0.01質量%未満の場合は、十分な洗浄効果を得ることができず、10質量%を越えて含有させても洗浄効果の向上は期待できない。
【0020】
ノニオン系界面活性剤としては、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合したエステル型、高級アルコールやアルキルフェノールなど水酸基をもつ原料に酸化エチレン、酸化プロピレンや酸化ブチレンなどのアルキレンオキシドを付加させたエーテル型、多価アルコールと脂肪酸とからなるエステルに上記アルキレンオキシドを付加させたエステル・エーテル型、アルキルアミンと脂肪酸からなる脂肪酸アミン型、アルキルエタノールアミドと脂肪酸からなる脂肪酸エタノールアミド型などがあげられる。
【0021】
アニオン系界面活性剤としては石油スルホネート、ロート油等のスルホン酸塩型、硫酸エステル塩型などがあげられる。
【0022】
本発明に用いるW/Oエマルジョン洗浄液に使用する水は特に限定されるものではないが、イオン交換水、蒸留水、水道水などを使用することができ、アルコールやグリコールエーテル、無機塩類などが含まれていても、洗浄性を阻害しない範囲であれば使用することができる。水分濃度も特に限定されるものではないが、炭化水素系溶剤に対して0.1質量%以上70質量%以下であり、好ましくは各々1質量%以上20質量%未満である。含有量が0.1質量%未満の場合は、水溶性の汚れに対する十分な洗浄効果を得ることができず、70質量%を越えて含有させても洗浄効果の向上は期待できない。
【0023】
洗浄工程(A)で用いるW/Oエマルジョン洗浄液は、一般的には水溶性の汚れの許容濃度が2g/L以上のものが用いられ、さらには30g/L以上のものが好ましい。水溶性の汚れ濃度が2g/L未満で洗浄力がなくなるようなものは好ましくない。
【0024】
本発明においては洗浄工程(A)に被洗浄物が持ち込む水溶性の汚れ量と、洗浄後に洗浄工程(A)から被洗浄物が持ち出す水溶性の汚れ量とのバランスが保たれていることが好ましい。前者と後者が等量である場合は、W/Oエマルジョン洗浄液中の水溶性の汚れ濃度は平衡状態となる。
【0025】
この平衡状態での水溶性の汚れ濃度は以下のように計算される。
const = Mout ÷ Vout (1)
ここで
const:洗浄工程(A)のW/Oエマルジョン洗浄液中の水溶性の汚れ平衡濃度(g/L)
out:洗浄工程(A)から持ち出される単位時間当たりのW/Oエマルジョン中の水溶性の汚れ量(g/hr)
out:洗浄工程(A)から持ち出される単位時間当たりのW/Oエマルジョン洗浄液の量(L/hr)
【0026】
運転中のW/Oエマルジョン洗浄液の蒸発による減少分は十分に小さく無視できるため、(1)式はさらに(2)式として表される。
const ≒ Min ÷ Vsupplid (2)
ここで
in:被洗浄物に付着し、洗浄工程(A)に持ち込まれる水溶性の汚れ量(g/hr)
supplid:被洗浄物に付着し、洗浄工程(A)から持ち出された分を補充するW/Oエマルジョン洗浄液量(L/hr)
【0027】
一般的な数値として、例えばMinを2g/hr、Vsupplidを2L/hrとするとCconstは1g/Lとなる。この数値は本発明に用いられるW/Oエマルジョン洗浄液の水溶性の汚れ濃度(g/L)の一般的な汚れ許容量30g/L程度よりも十分小さいため、洗浄工程(A)は、例えば洗浄液の補充のみで運用できることがわかる。
【0028】
水溶性の汚れ量が許容濃度以上となるように持ち込まれる場合には、洗浄工程(A)を複数の洗浄槽で行い、必要に応じて汚れの許容濃度となった槽からW/Oエマルジョン洗浄液の一部の廃棄を行い、この後段の洗浄槽から前段の洗浄槽へW/Oエマルジョン洗浄液中をオーバーフローし、後段の洗浄槽へ新液を補充することにより、各槽を破綻することなく運用することができる。
【0029】
すすぎ工程(B)は、被洗浄物に付着するW/Oエマルジョン洗浄液を炭化水素系溶剤、または炭化水素系溶剤と界面活性剤からなるすすぎ液で置換することを目的とする。W/Oエマルジョン洗浄液を置換する手法として特に限定するものではないが、すすぎ液に物理力を与える手法が望ましい。例えば、超音波発振子による超音波照射、撹拌機による撹拌、ポンプによる噴流、シャワー、ジェット、被洗浄物の揺動、回転による洗浄などから単独もしくは複数を組み合わせて使用すればよい。
【0030】
すすぎ工程(B)で用いるすすぎ液は、W/Oエマルジョン洗浄液が溶解または分散する炭化水素系溶剤を主成分とし、かつ、水分が少ないものであればよい。炭化水素系溶剤に界面活性剤が添加されたものでも、界面活性剤が添加されていない炭化水素系溶剤であってもよい。W/Oエマルジョン洗浄液の持ち込みが多い場合や被洗浄物に付着する粒子状の汚れが多い場合は、界面活性剤が添加された炭化水素系溶剤が好ましく、W/Oエマルジョン洗浄液の持ち込みが少ない場合は、装置の槽数を減ずるために界面活性剤を含まない炭化水素系溶剤をすすぎ液とすることが好適である。
【0031】
水分除去工程(C)は、W/Oエマルジョン洗浄液を含有するすすぎ液から水分の一部を除去する工程である。W/Oエマルジョン洗浄液の成分として持ち込まれた水分をすすぎ液から除去することにより、W/Oエマルジョン洗浄液に含まれる水溶性の汚れを析出することを目的とする。水分除去工程(C)は、すすぎ液中の水を気化させて除去することが好ましい。水分除去の手法として特に限定するものではないが、減圧、加温、気液接触、超音波照射などから単独もしくは複数を組み合わせて使用すればよい。
【0032】
分離工程(D)は、水分除去工程(C)後のすすぎ液から分離した水溶性の汚れを除去することを目的とする。上述したように、水溶性の汚れは炭化水素系溶剤、または炭化水素系溶剤と界面活性剤の混合物には溶解しにくく、すすぎ液中の水分量が減少すると、すすぎ液中に溶解されずに析出する。分離工程(D)では、水分除去工程(C)によりすすぎ液中から析出・分離した水溶性の汚れを除去する。水溶性汚れの除去方法として特に限定するものではないが、フィルターによるろ過、吸着、膜分離、重力沈降、遠心分離、蒸留濃縮などの固液濃縮分離によるものであればよく、特にフィルターによるろ過、遠心分離または蒸留濃縮が経済的に好ましい。このとき必要であれば凝集剤やろ過助剤などを用いることもできる。
【0033】
フィルターとしては、特に限定するものではないが、糸巻フィルター、不織布、スポンジなどのデプスフィルターや金網、ろ紙、メンブランフィルターなどのサーフェスフィルターなどから単独もしくは複数を組み合わせて使用することができる。水溶性の汚れもしくは微粒子などの異物が多い場合は、捕集保持量が多いデプスフィルターが好ましく、ろ過精度が求められる場合はサーフェスフィルターが好ましい。
【0034】
遠心分離としては、特に限定するものではないが、デカンター型、バスケット型、ディスク型、サイクロン型などから単独もしくは複数を組み合わせて使用することができる。中でもサイクロン型は構造が簡単で可動部を持たず小型化しやすく、ディスク型は高遠心力を得やすく微粒子を除去しやすい特徴がある。
【0035】
蒸留濃縮としては、特に限定するものではないが、常圧蒸留、水蒸気蒸留、減圧蒸留などが用いられるが、中でも減圧蒸留は蒸留再生液が劣化しにくく、好適である。
【0036】
本発明においては、すすぎ工程(B)と水分除去工程(C)を同一の槽で行うこともできる。ただし、この場合は分離した水溶性の汚れが被洗浄物へ再付着しないように配慮しておく必要がある。すすぎ工程(B)と水分除去工程(C)を同一の槽で行う場合、すすぎ液として炭化水素系溶剤と界面活性剤からなるすすぎ液を使用することが好ましい。すすぎ液が界面活性剤を含むことにより、析出・分離した水溶性の汚れが界面活性剤により分散され、被洗浄物への再付着を防止できるためである。
【0037】
また、水分除去工程(C)と分離工程(D)を同一の槽で行うこともできる。例えば、蒸留により水分と炭化水素系溶剤とを分留して、水分を除去すると同時に、釜残である水溶性汚れ、または水溶性汚れを含む界面活性剤を除去し、得られた炭化水素系溶剤、または炭化水素系溶剤に界面活性剤を添加した混合物をすすぎ槽に供給する工程を例示することができる。
【0038】
次に、図を参照して、本発明に係るW/Oエマルジョン洗浄液を使用する洗浄方法について詳細に説明する。図1〜6は、本発明の実施の形態1〜6にかかる洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
【0039】
図1に示す実施の形態1において、水溶性の汚れが付着した被洗浄物は、洗浄槽1、第1すすぎ槽2、第2すすぎ槽3、第3すすぎ槽4および減圧乾燥槽5の順番に移送され、洗浄、乾燥されて清浄な被洗浄物となる。
【0040】
洗浄槽1は、W/Oエマルジョン洗浄液により洗浄工程(A)を行うためのものであり、W/Oエマルジョン洗浄液6が槽内に貯められている。被洗浄物をW/Oエマルジョン洗浄液6内に浸漬し、超音波発振子7にて超音波が照射されて水溶性の汚れ等が除去される。
【0041】
第1すすぎ槽2は、すすぎ工程(B)を行うためのものであり、界面活性剤と炭化水素系溶剤からなるすすぎ液8が槽内に貯められている。洗浄槽1での洗浄工程(A)によりW/Oエマルジョン洗浄液6が付着した被洗浄物をすすぎ液8内に浸漬し、超音波発振子7にて超音波を照射する。このすすぎ工程(B)により、被洗浄物に付着しているW/Oエマルジョン洗浄液6はすすぎ液8内に分散され、被洗浄物に付着しているW/Oエマルジョン6はすすぎ液8に置換される。
【0042】
エアーバブリング槽9は水分除去工程(C)を行うためのものである。第1すすぎ槽2に持ち込まれたW/Oエマルジョン洗浄液6が分散したすすぎ液8は、エアーバブリング槽9に移送され、エアーもしくは窒素ガス10でバブリングされる。炭化水素系溶剤に比べて水の蒸気圧は高いため、バブリングにより水分は水蒸気として優先的に系外に気化除去される。W/Oエマルジョン洗浄液6とともに第1すすぎ槽2に持ち込まれてすすぎ液8中に溶解している水溶性の汚れは、すすぎ液8中の水分の低下によりすすぎ液8中に溶解していることができず、すすぎ液8中に析出・分離する。
【0043】
フィルターエレメント11は、分離工程(D)を行うためのものである。エアーバブリング槽9で水分が除去されたすすぎ液8は、ポンプ12によりエアーバブリング槽9からフィルターエレメント11に送液され、析出・分離した水溶性の汚れがろ過される。水溶性の汚れが除去されたすすぎ液8は、第1すすぎ槽2に戻される。
【0044】
第2すすぎ槽3および第3すすぎ槽4は、すすぎ工程(B)を経た被洗浄物表面に残存する界面活性剤を除去するためのものである。第2すすぎ槽3および第3すすぎ槽4には、炭化水素系溶剤がすすぎ液13として貯められている。被洗浄物をすすぎ液13内に浸漬し、超音波発振子7にて超音波を照射することにより、被洗浄物に付着している界面活性剤を除去する。
【0045】
減圧乾燥槽5は、被洗浄物表面に残存するすすぎ液13を気化させて乾燥するためのものである。真空ポンプ14にて減圧乾燥槽5内が減圧となり、すすぎ液13が気化して被洗浄物表面から除去される。必要に応じて、すすぎ液13の蒸気を導入する工程を設けて、乾燥前に被洗浄物を予熱することもできる。
【0046】
蒸留再生槽15は、第2すすぎ槽3および第3すすぎ槽4内のすすぎ液13に溶解する界面活性剤やその他の汚れを除去するためのものである。汚れを含むすすぎ液13は、第2すすぎ槽3から蒸留再生槽15に引き込まれ、加熱気化されて蒸気となり、これを冷却器16で液化される。清澄となったすすぎ液13は、第3すすぎ槽4に供給される。また、すすぎ液13は、第3すすぎ槽4から第2すすぎ槽3へオーバーフローされるため、第2すすぎ槽3内のすすぎ液13の汚れ濃度の上昇も抑制できる。
【0047】
図2に示す実施の形態2は、図1に示す実施の形態1の第1すすぎ槽2を減圧すすぎ槽17に、フィルターエレメント11をサイクロン型遠心分離器18に替えたものである。水溶性の汚れが付着した被洗浄物は、洗浄槽1、減圧すすぎ槽17、第2すすぎ槽3、第3すすぎ槽4および下夏乾燥槽5の順番に移送され、洗浄、乾燥されて清浄となる。
【0048】
減圧すすぎ槽17は、すすぎ工程(B)と水分除去工程(C)を行うためのものである。減圧すすぎ槽17には、界面活性剤と炭化水素系溶剤とからなるすすぎ液8が貯められている。洗浄槽1での洗浄工程(A)によりW/Oエマルジョン洗浄液6が付着した被洗浄物をすすぎ液8内に浸漬した後、真空ポンプ14を用いて減圧すすぎ槽17内を減圧とした状態で、超音波発振子7にて超音波を照射する。このすすぎ工程(B)により、被洗浄物に付着しているW/Oエマルジョン洗浄液6はすすぎ液8に置換される。一方、すすぎ液8に持ち込まれる水分は、すすぎ液8を構成する炭化水素系溶剤に比べて蒸気圧が高いため、減圧すすぎ槽17内を減圧とすることにより、水分は水蒸気として優先的に系外に気化除去される。W/Oエマルジョン洗浄液6とともに減圧すすぎ槽17に持ち込まれ、すすぎ液8中に溶解している水溶性の汚れは、すすぎ液8中の水分の低下によりすすぎ液8中に溶解していることができず、すすぎ液8中に析出・分離する。すすぎ液8中に析出した水溶性の汚れは、すすぎ液8に含まれる界面活性剤の働きにより分散された状態となり、被洗浄物への再付着は生じない。
【0049】
実施の形態2では、すすぎ工程(B)と水分除去工程(C)を兼ねた減圧すすぎ槽17を用いることにより、袋穴を持つ部品が被洗浄物であっても、界面活性剤を含むすすぎ液8でW/Oエマルジョン洗浄液6をすすぎ液8に置換しやすく、水ジミは発生しにくいというメリットがある。
【0050】
サイクロン型遠心分離器18は、分離工程(D)を行うためのものであり、水分が除去されたすすぎ液8はポンプ12によりサイクロン型遠心分離機18に送液される。析出した水溶性の汚れは、このサイクロン型遠心分離器18にて除去された後に、減圧すすぎ槽17に戻される。
【0051】
図3に示す実施の形態3は、図1に示す実施の形態1のエアーバブリング槽9を減圧脱水槽19に、減圧乾燥槽5を温風乾燥槽20に替えたものである。水溶性の汚れが付着した被洗浄物は、洗浄槽1、第1すすぎ槽2、第2すすぎ槽3、第3すすぎ槽4および温風乾燥槽20の順番に移送され、洗浄、乾燥されて清浄となる。
【0052】
減圧脱水槽19は、水分除去工程(C)を行うためのものである。第1すすぎ槽2内の界面活性剤と炭化水素系溶剤からなるすすぎ液8には、洗浄槽1から持ち込まれたW/Oエマルジョン洗浄液6が分散している。W/Oエマルジョン洗浄液6が分散したすすぎ液8は、減圧脱水槽19に移送され、減圧脱水槽19内は真空ポンプ14を用いて減圧にされる。炭化水素系溶剤に比べて水の蒸気圧は高いため、すすぎ液8中の水分は水蒸気として優先的に系外に気化除去される。すすぎ液8中の水分が低下することにより、水溶性の汚れはもはや溶解していることができず、すすぎ液8中に析出・分離する。減圧脱水槽19内のすすぎ液8は、必要であれば、スチーム、熱媒油などを通じた加熱コイル21を用いて水分の気化を促すこともできる。
【0053】
温風乾燥槽20は、被洗浄物表面に残った炭化水素系溶剤からなるすすぎ液13を乾燥するためのものであり、温風送風機22からの温風により、すすぎ液13を気化して被洗浄物表面から除去する。
【0054】
図3に示す実施の形態2では、洗浄槽1、第1すすぎ槽2、第2すすぎ槽3、第3すすぎ槽4および温風乾燥槽20が大気圧下で運用されるため、例えば帯状の部品を連続的に引き出しての洗浄が可能である。
【0055】
図4に示す実施の形態4は、図1に示す実施の形態1の第1すすぎ槽2を略したものである。水溶性の汚れが付着した被洗浄物は、洗浄槽1、第2すすぎ槽3、第3すすぎ槽4および減圧乾燥槽5の順番に移送され、洗浄、乾燥されて清浄となる。
【0056】
第2すすぎ槽3はすすぎ工程(B)を行うためのものであり、炭化水素系溶剤からなるすすぎ液13が貯められている。洗浄槽1での洗浄工程(A)によりW/Oエマルジョン洗浄液6が付着した被洗浄物をすすぎ液13内に浸漬した後、超音波発振子7にて超音波が照射する。このすすぎ工程(B)により、被洗浄物に付着しているW/Oエマルジョン洗浄液6はすすぎ液13に置換される。
【0057】
実施の形態4にかかる洗浄装置では、図1の第1すすぎ槽2を略したことにより、装置サイズが小さくなるメリットがある。
【0058】
図5に示す実施の形態5は、W/Oエマルジョン洗浄液6およびすすぎ液13の出し入れ、減圧乾燥を1つの槽で行う洗浄乾燥槽23を設けたものである。水溶性の汚れが付着した被洗浄物が洗浄乾燥槽23内にセットされると、W/Oエマルジョン洗浄液6を貯留するタンク24から洗浄乾燥槽23にW/Oエマルジョン洗浄液6が移送されて洗浄工程(A)が行われる。その後炭化水素系溶剤からなるすすぎ液13が貯留されたタンク25から洗浄乾燥槽23にすすぎ液13が移送されてすすぎ工程(B)が行われる。ついで洗浄乾燥槽23内は真空ポンプ14で減圧し、被洗浄物は乾燥され、清浄となる。
【0059】
タンク24には洗浄工程(A)を行うためのW/Oエマルジョン洗浄液6が貯留されており、必要に応じて撹拌子26により撹拌される。
【0060】
W/Oエマルジョン洗浄液6をバルブ27、バルブ28を通じて洗浄乾燥槽23に移送し、洗浄乾燥槽23に設けられた洗浄ノズル29から被洗浄物にW/Oエマルジョン洗浄液6を吹き付け、さらに溜まったW/Oエマルジョン洗浄液6内に被洗浄物を浸漬した状態でW/Oエマルジョン洗浄液6をバブリングすることにより、被洗浄物の洗浄を行う。
【0061】
洗浄工程(A)後、W/Oエマルジョン洗浄液6は、洗浄乾燥槽23からバルブ30、ポンプ12、バルブ31を通じてタンク24に回収される。
【0062】
タンク25にはすすぎ工程(B)を行うための炭化水素系溶剤からなるすすぎ液13が潮流されている。
【0063】
すすぎ液13をバルブ32、バルブ28を通じて洗浄乾燥槽23に移送し、洗浄乾燥槽23に設けられた洗浄ノズル29から被洗浄物にすすぎ液13を吹き付け、さらに溜まったすすぎ液13内に被洗浄物を浸漬した状態ですすぎ液13をバブリングすることにより被洗浄物のすすぎを行う。
【0064】
すすぎ工程(B)後のすすぎ液13は、洗浄乾燥槽23からバルブ30、ポンプ12、バルブ33を通じてタンク25に回収される。すすぎ工程(B)終了後、洗浄乾燥槽23内は真空ポンプ14により減圧され、被洗浄物表面に残ったすすぎ液13を気化・乾燥する。必要に応じて、洗浄乾燥槽23内にすすぎ液13の蒸気を導入する工程を設けて、乾燥前に被洗浄物を予熱することもできる。
【0065】
すすぎ工程(B)後、タンク25内のすすぎ液13を、スチーム、熱媒油などを通じた加熱コイル21により加温し、真空ポンプ35を用いて減圧とし、水分除去工程(C)を行う。炭化水素系溶剤に比べて水の蒸気圧は高いため、水分は水蒸気として優先的に系外に気化除去される。すすぎ液13中の水分が低下することにより、水溶性の汚れはもはや溶解していることができず、液中に析出・分離する。
【0066】
フィルターエレメント11は分離工程(D)を行うためのものであり、析出した水溶性の汚れが析出したすすぎ液13は、ポンプ36によりフィルターエレメント11に送液され、ろ過される。また送液されるすすぎ液13の一部は、蒸留再生槽15で界面活性剤や水溶性汚れが濃縮され、系外に除去される。
【0067】
図5に示す実施の形態5の装置では、被洗浄物の移送が少なくなるので、搬送系を最小とすることができるメリットがある。
【0068】
図6に示す実施の形態6は、図4に示す実施の形態4のエアーバブリング槽9とフィルターエレメント11を蒸留再生槽15、冷却器16、油水分離槽34に替えたものである。水溶性の汚れが付着した部品は、洗浄槽1、第2すすぎ槽3、第3すすぎ槽4および減圧乾燥槽5の順番に移送され、洗浄、乾燥されて清浄となる。
【0069】
蒸留再生槽15は、水分除去工程(C)と水溶性の汚れの分離工程(D)を行うためのものであり、またすすぎ液13に溶解する汚れを除去するためのものでもある。汚れを含むすすぎ液13は第2すすぎ槽3から蒸留再生槽15に送液される。蒸留再生槽15で加熱気化されたすすぎ液13は、蒸気となり、冷却器16で液化され、油水分離槽34に注がれる。蒸留再生槽15で加熱気化され、冷却器16で液化されたすすぎ液13は清澄である。油水分離槽34では留出したすすぎ液13を構成する炭化水素系溶剤は上澄みに、持ち込まれた水分はドレンとして排出される。蒸留再生槽15では、すすぎ液13に持ち込まれた水溶性の汚れは、蒸留により濃縮され系外に除去される。
【符号の説明】
【0070】
1 洗浄漕
2 第1すすぎ槽
3 第2すすぎ槽
4 第3すすぎ槽
5 減圧乾燥槽
6 W/Oエマルジョン洗浄液
7 超音波発振子
8 すすぎ液(界面活性剤が添加された炭化水素系溶剤)
9 エアーバブリング槽
10 エアーもしくは窒素ガス
11 フィルターエレメント
12 ポンプ
13 すすぎ液(炭化水素系溶剤)
14 真空ポンプ
15 蒸留再生槽
16 冷却器
17 減圧洗浄槽
18 サイクロン型遠心分離器
19 減圧脱水槽
20 温風乾燥槽
21 加熱コイル
22 温風送風機
23 洗浄乾燥槽
24 タンク
25 タンク
26 撹拌子
27 バルブ
28 バルブ
29 洗浄ノズル
30 バルブ
31 バルブ
32 バルブ
33 バルブ
34 油水分離槽
35 真空ポンプ
36 ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6