(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、各成分の含有率は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計の含有率を意味する。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル系ポリマー」又は「(メタ)アクリル系オリゴマー」とは、これらを構成するモノマーのうち、少なくとも主成分であるモノマーが(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであるポリマー又はオリゴマーを意味する。ここでいう主成分であるモノマーとは、ポリマー又はオリゴマーを構成するモノマーの中で最も含有率(質量%)が大きいモノマーを意味する。本発明における(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーのある実施態様では、主成分である(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上である。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0015】
本明細書において、「リワーク性」とは、貼り直し作業時の剥離しやすさ、例えば、被着体から粘着フィルムを剥がす際、剥被着体に糊残りせずに貼り直しができることを意味し、リワーク性が優れるほど、貼り直し作業を容易に行うことができる。
【0016】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーと、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、かつ、重量平均分子量が0.2万〜1万である(メタ)アクリル系オリゴマーと、架橋剤と、を含有し、上記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する上記(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が20質量部〜120質量部である。
本発明の粘着剤組成物によれば、貼り付け直後に優れたリワーク性を示し、かつ、経時後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0017】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーと、重量平均分子量が0.2万〜1万である(メタ)アクリル系オリゴマーを含有するため、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する粘着フィルムを被着体に貼り付けると、貼り付けた直後は、粘着剤層の界面付近に(メタ)アクリル系オリゴマーが局在する。
本発明における(メタ)アクリル系オリゴマーは、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含むため、粘着剤層の界面付近に局在すると、粘着剤層の被着体への濡れ性が良好となる。そのため、粘着剤層は、被着体に対して一定の粘着力を示す。
【0018】
一般に、架橋剤の反応性基を介したカルボキシ基同士の架橋反応は、架橋剤の反応性基を介した水酸基同士の架橋反応、又は、架橋剤の反応性基を介したカルボキシ基と水酸基との架橋反応よりも早く進行する。また、一般に、カルボキシ基同士の架橋反応部位は、水酸基同士の架橋反応部位、又はカルボキシ基と水酸基との架橋反応部位よりも柔軟になる傾向がある。
本発明の粘着剤組成物は、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー及びイソシアネート化合物に代表される架橋剤を含有するため、被着体に貼り付けた直後の粘着フィルムの粘着剤層では、架橋剤を介したカルボキシ基同士の架橋反応が支配的となる。すなわち、被着体に貼り付けた直後の粘着フィルムの粘着剤層では、架橋反応が適度に進行し、凝集力を適度に保ちながらも、粘着剤層は柔軟性を有するため、一定の粘着力とリワーク性とを示す。
そして、被着体に貼り付けて一定時間経過した粘着フィルムの粘着剤層(即ち、経時後の粘着剤層)では、架橋剤を介した、水酸基同士の架橋反応及びカルボキシ基と水酸基との架橋反応が進行し、凝集力が向上するため、高い粘着力を示す。
【0019】
また、本発明の粘着剤組成物では、上記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する上記(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が20質量部〜120質量部であるため、経時後の粘着剤層は、高い粘着力を示す。
【0020】
本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、上記のような反応速度の異なる複数種の架橋反応が進行するため、貼り付け直後には優れたリワーク性を示し、かつ、経時後には高い粘着力を示すと推測される。
【0021】
なお、リワーク性と高い粘着性との両立は、例えば、光硬化と熱硬化とを併用する、所謂ハイブリッド粘着剤組成物により実現することもできる。しかしながら、このようなハイブリッド粘着剤組成物は、光を透過し難い部材を基材又は被着体とする場合には、適用できない。
本発明の粘着剤組成物によれば、光を透過し難い基材又は被着体にも適用できる。
【0022】
なお、上記の推測は、本発明の効果を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0023】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について説明する。
【0024】
<(メタ)アクリル系ポリマー>
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含む。
本明細書において「カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有するモノマーの付加重合反応により形成される構成単位を意味する。
【0025】
カルボキシ基を有するモノマーの種類は、特に制限されない。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシ基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
カルボキシ基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレングリコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの組み合わせ等が挙げられる。
【0027】
カルボキシ基を有するモノマーとしては、例えば、凝集力を向上させやすく、貼り付け直後により優れたリワーク性を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、及びω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0029】
(メタ)アクリル系ポリマーにおけるカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の割合は、例えば、凝集力を向上させやすく、貼り付け直後により優れたリワーク性を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全構成単位の合計質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。
また、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の割合は、例えば、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全構成単位の合計質量に対して、3.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が更に好ましい。
【0030】
さらに、本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことで、粘着力を容易に調整できる。
【0031】
本明細書において「アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位」とは、アルキル(メタ)アクリレートの付加重合反応により形成される構成単位を意味する。
【0032】
(メタ)アクリル系ポリマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を構成するアルキル(メタ)アクリレートは、無置換のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、その種類は特に制限されない。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜18の範囲が好ましく、1〜12の範囲がより好ましい。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、粘着剤層の被着体への濡れ性が向上し、粘着剤層の粘着力を高められるとの観点から、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、及びエチルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、及びエチルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマーにおけるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の割合は、例えば、粘着剤層の被着体への濡れ性が良好になるとの観点から、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全構成単位の合計質量に対して、97質量%以上が好ましく、97.5質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましい。
また、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の割合は、例えば、粘着剤層の粘着力を高められるとの観点から、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全構成単位の合計質量に対して、99.9質量%以下が好ましく、99.5質量%以下がより好ましく、99質量%以下が更に好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリロイル基を有するモノマー(以下、「アクリルモノマー」ともいう。)に由来する構成単位を、全構成単位に対して50質量%を超えて含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリルモノマーに由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて含むことにより、共重合性が良好となる。
また、カルボキシ基を有するモノマーが、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系モノマーである場合には、(メタ)アクリル系ポリマーが、アクリルモノマーに由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて含むと、カルボキシ基を(メタ)アクリル系ポリマー中により均一に分布させることができるため、架橋のムラがより抑制される。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリマーは、本発明の効果が発揮される範囲内において、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位、及び任意の構成単位であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外の構成単位(以下、「その他の構成単位」ともいう。)を含んでもよい。この場合、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位と、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位との合計の割合は、(メタ)アクリル系ポリマーの全構成単位に対して、99.8質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましい。
【0039】
その他の構成単位を構成するモノマーの種類は、特に制限されない。
その他の構成単位を構成するモノマーとしては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステル、これらのモノマーの各種誘導体等が挙げられる。
また、その他の構成単位を構成するモノマーとしては、カルボキシ基以外の官能基を有するモノマーが挙げられる。カルボキシ基以外の官能基としては、具体的には、グリシジル基、及び、アミド基又はN−置換アミド基が挙げられる。
なお、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点からは、(メタ)アクリル系ポリマーは、水酸基を有するモノマーを含まないことが好ましい。
【0040】
グリシジル基を有するモノマーとしては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0041】
アミド基又はN−置換アミド基を有するモノマーとしては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル系ポリマーの酸価は、1mgKOH/g〜20mgKOH/gが好ましく、3mgKOH/g〜18mgKOH/gがより好ましく、7mgKOH/g〜16mgKOH/gが更に好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が1mgKOH/g以上であると、凝集力が向上し、貼り付け直後により優れたリワーク性を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が20mgKOH/g以下であると、粘着剤層の被着体への濡れ性が良好となり、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
【0043】
(メタ)アクリル系ポリマーの酸価は、以下の計算式によって求められる。なお、以下の計算式において、56.1はKOHの分子量である。
【0045】
(メタ)アクリル系ポリマーに使用されるカルボキシ基を有するモノマーが2種以上である場合は、それぞれのモノマーについて上記の計算式に準じて酸価を求め、得られた値を合計して酸価を求める。
【0046】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10万〜200万が好ましく、25万〜150万がより好ましく、40万〜100万が更に好ましい。
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が10万以上であることは、ポリマーであることを示し、後述の(メタ)アクリル系オリゴマーと区別するための規定である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が10万以上であれば、後述する(メタ)アクリル系オリゴマーが粘着剤層の界面付近に局在しやすく、リワーク性が優れる傾向がある。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が200万以下であると、粘着剤組成物の粘度が適度に低くなり、塗布性が良好となる。
【0047】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系ポリマーを得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系ポリマーとテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0048】
〜条件〜
測定装置:高速GPC(型番:HLC−8220 GPC、東ソー(株)製)
検出器:示差屈折率計(RI)(HLC−8220に組込、東ソー(株)製)
カラム:TSK−GEL GMHXL(東ソー(株)製)を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
注入量:100μL
流量:0.6mL/分
【0049】
(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、例えば、−50℃〜−20℃が好ましく、−46℃〜−26℃がより好ましく、−42℃〜−32℃が更に好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−50℃以上であると、貼り付け直後により優れたリワーク性を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
また、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−20℃以下であると、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
【0050】
(メタ)アクリル系ポリマーのTgは、下記式から計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
【0052】
式中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k−1)、Tgkは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する各モノマーをホモポリマーとしたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。w1、w2、・・・、w(k−1)、wkは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する各モノマーの質量分率をそれぞれ表し、w1+w2+・・・+w(k−1)+wk=1である。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算でき、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算できる。
【0053】
「ホモポリマーとしたときのガラス転移温度」とは、そのモノマーを単独で重合して製造したホモポリマーのガラス転移温度をいう。ここでいうホモポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)(型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株))を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のTgとしたものである。
代表的なモノマーを使用したホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、2−エチルヘキシルアクリレートが−76℃、2−エチルヘキシルメタクリレートが−10℃、n−ブチルアクリレートが−57℃、n−ブチルメタアクリレートが21℃、t−ブチルアクリレートが41℃、t−ブチルメタクリレートが107℃、メチルアクリレートが5℃、エチルアクリレートが−27℃、メタクリル酸が185℃、4−ヒドロキシブチルアクリレートが−39℃、2−ヒドロキシエチルアクリレートが−15℃、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが55℃、アクリル酸が163℃である。
【0054】
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、1種のみであってもよく、モノマーの組成、重量平均分子量等が異なる2種以上であってもよい。
【0055】
本発明の粘着剤組成物中における(メタ)アクリル系ポリマーの含有率は、例えば、貼り付け直後により優れたリワーク性を示し、かつ、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、粘着剤組成物の全固形分に対して、40質量%〜85質量%が好ましい。
【0056】
<(メタ)アクリル系オリゴマー>
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系オリゴマーは、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、かつ、重量平均分子量が0.2万〜1万である。
本明細書において「水酸基を有するモノマーに由来する構成単位」とは、水酸基を有するモノマーの付加重合反応により形成される構成単位を意味する。
【0057】
水酸基を有するモノマーの種類は、特に制限されない。
水酸基を有するモノマーとしては、置換基として水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート、水酸基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
置換基として水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル部位は、直鎖状、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよい。アルキル部位の炭素数は、1〜12の範囲が好ましく、2〜6の範囲がより好ましく、2〜4の範囲が更に好ましい。
【0059】
水酸基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレングリコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの組み合わせ等が挙げられる。
【0060】
水酸基を有するモノマーとしては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、貼り付け直後により優れたリワーク性を示し、かつ、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、置換基として水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及びポリエチレングリコールモノメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
特に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートは、他のモノマーとの相溶性及び共重合性が特に良好であり、イソシアネート化合物に代表される架橋剤との反応性も良好である点において好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0063】
(メタ)アクリル系オリゴマーにおける水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の割合は、例えば、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成する全構成単位の合計質量に対して、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましい。
また、(メタ)アクリル系オリゴマーにおける水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の割合は、例えば、粘着剤層の被着体との濡れ性が良好であるとの観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成する全構成単位の合計質量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0064】
さらに、本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことで、粘着力を容易に調整できる。
【0065】
(メタ)アクリル系オリゴマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を構成するアルキル(メタ)アクリレートは、無置換のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、その種類は特に制限されない。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜18の範囲が好ましく、1〜12の範囲がより好ましい。
【0066】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、粘着剤層の被着体への濡れ性が高まり、粘着剤層の粘着力が高まるとの観点から、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、i−ボルニルメタクリレート、エチルメタクレレート、t−ブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、及びメチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、t−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、及びメチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0068】
(メタ)アクリル系オリゴマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0069】
(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の割合は、例えば、粘着剤層の被着体への濡れ性を高められるとの観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成する全構成単位の合計質量に対して、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
また、(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の割合は、例えば、粘着剤層の粘着力を高められるとの観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成する全構成単位の合計質量に対して、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましい。
【0070】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アクリロイル基を有するモノマー(以下、「アクリルモノマー」ともいう。)に由来する構成単位を、全構成単位に対して50質量%を超えて含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アクリルモノマーに由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて含むことにより、共重合性が良好となる。
また、水酸基を有するモノマーが、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーである場合には、(メタ)アクリル系オリゴマーが、アクリルモノマーに由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%を超えて含むと、水酸基を(メタ)アクリル系オリゴマー中により均一に分布させることができるため、架橋のムラがより抑制される。
【0071】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、本発明の効果が発揮される範囲内において、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位、及び任意の構成単位であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外の構成単位(以下、「その他の構成単位」ともいう。)を含んでもよい。この場合、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位と、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位との合計の割合は、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して、99.8質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましい。
【0072】
その他の構成単位を構成するモノマーの種類は、特に制限されない。
その他の構成単位を構成するモノマーとしては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステル、これらのモノマーの各種誘導体等が挙げられる。
また、その他の構成単位を構成するモノマーとしては、水酸基以外の官能基を有するモノマーが挙げられる。水酸基以外の官能基としては、具体的には、グリシジル基、及びアミド基又はN−置換アミド基が挙げられる。
なお、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点からは、(メタ)アクリル系オリゴマーは、カルボキシ基を有するモノマーを含まないことが好ましい。
【0073】
グリシジル基を有するモノマー、及び、アミド基又はN−置換アミド基を有するモノマーの具体例は、既述のとおりであるため、ここでは記載を省略する。
【0074】
(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価は、10mgKOH/g〜100mgKOH/gが好ましく、15mgKOH/g〜90mgKOH/gがより好ましく、20mgKOH/g〜80mgKOH/gが更に好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価が10mgKOH/g以上であると、(メタ)アクリル系オリゴマーが十分な架橋点を有し、(メタ)アクリル系オリゴマーを含む架橋体がより硬くなるため、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価が100mgKOH/g以下であると、架橋点が多すぎないため、極性の高い被着体に対しても、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
【0075】
(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価は、以下の計算式によって求められる。なお、以下の計算式において、56.1はKOHの分子量である。
【0077】
(メタ)アクリル系オリゴマーに使用される水酸基を有するモノマーが2種以上である場合は、それぞれのモノマーについて上記の計算式に準じて水酸基価を求め、得られた値を合計して水酸基価を求める。
【0078】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、0.2万〜1万であり、0.25万〜0.9万が好ましく、0.3万〜0.8万がより好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が0.2万以上であると、既述の(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性が向上し、粘着剤層の耐久性が高まるとともに、貼り付け直後に優れたリワーク性を示す。
なお、(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が1万以下であることは、オリゴマーであることを示し、既述の(メタ)アクリル系ポリマーと区別するための規定である。
【0079】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、既述の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様にして測定される。
【0080】
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、例えば、0℃〜107℃が好ましく、15℃〜105℃がより好ましく、25℃〜103℃が更に好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上であると、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
また、(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)が107℃以下であると、被着体への濡れ性が良好な粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
【0081】
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、既述の(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度の計算方法と同様にして計算される。
【0082】
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系オリゴマーは、1種のみであってもよく、モノマーの組成、重量平均分子量等が異なる2種以上であってもよい。
【0083】
本発明の粘着剤組成物中における(メタ)アクリル系オリゴマーの含有率は、例えば、貼り付け直後により優れたリワーク性を示し、かつ、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、粘着剤組成物の全固形分に対して、16質量%〜54質量%が好ましい。
【0084】
(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量は、20質量部〜120質量部であり、好ましくは25質量部〜100質量部であり、より好ましくは30質量部〜80質量部である。
(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が20質量部以上であることで、経時後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
また、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が120質量部以下であることで、貼り付け直後に優れたリワーク性を示し、かつ、経時後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現し得る。
【0085】
<(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの製造方法>
本発明の粘着剤組成物における(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの製造方法は、特に制限されない。例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合に代表される公知の重合方法で、単量体を重合して製造できる。これらの中でも、重合方法としては、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合が好ましい。
【0086】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、モノマー、重合開始剤、及び必要に応じて連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、モノマー、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0087】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪系又は脂環族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル類、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールに代表されるアルコール類等が挙げられる。
重合反応時には、これらの有機溶媒を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
(メタ)アクリル系ポリマーの製造に際しては、エステル類、ケトン類等の重合反応中に連鎖移動を生じにくい有機溶媒の使用が好ましく、特に、(メタ)アクリル系ポリマーの溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
また、(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に際しては、ケトン類、芳香族炭化水素類等の有機溶媒の使用が好ましく、例えば、重合反応の容易さの観点から、メチルエチルケトン、トルエン等の使用が好ましい。
【0089】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等を使用できる。
有機過酸化物としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ−i−プロピルペルオキシジカルボナト、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカルボナト、t−ブチルペルオキシビバラト、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン等が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等が挙げられる。
【0090】
(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特にアゾビス系の重合開始剤の使用が好ましい。
【0091】
重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーの製造に際しては、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーの合計量100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下が好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がより好ましい。
また、重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に際しては、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーの合計量100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0092】
(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて連鎖移動剤を使用できる。
連鎖移動剤としては、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類、α‐メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9−フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物類、p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、及びp−ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物類、ベンゾキノン及び2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体類、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3−クロロ−1−プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素類、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド類、炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン類、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類、炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類、ビネン及びターピノレンに代表されるテルペン類等が挙げられる。
【0093】
連鎖移動剤の使用量は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーの合計量100質量部に対して0.005質量部以上10.0質量部以下の範囲にできる。
【0094】
重合温度は、(メタ)アクリル系ポリマーの製造に際しては、30℃以上180℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下がより好ましく、50℃以上100℃以下が更に好ましい。
また、重合温度は、(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に際しては、30℃以上180℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下がより好ましく、50℃以上130℃以下が更に好ましい。
【0095】
<架橋剤>
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有する。
架橋剤によれば、貼り付け直後に優れたリワーク性を示し、かつ、経時後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる。
架橋剤の種類は、特に制限されない。
架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、尿素化合物、金属キレート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、架橋剤としては、貼り付け直後により優れたリワーク性を示し、かつ、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、イソシアネート化合物が好ましい。
【0096】
イソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネートに代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、既述の芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のビウレット体、2量体、3量体又は5量体、これらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体などが挙げられる。
これらの中でも、イソシアネート化合物としては、貼り付け直後により優れたリワーク性を示し、かつ、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、トリレンジイソシアネートであることが好ましい。
【0097】
イソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
架橋剤としてのイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、東ソー(株)の「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネートL」、「コロネート2031」、「コロネート2030」、「コロネート2234」、「コロネート2785」、「アクアネート200」、及び「アクアネート210」、コベストロ(株)の「スミジュールN3300」、「デスモジュールN3400」、及び「スミジュールN−75」、旭化成(株)の「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、及び「デュラネートTSE−100」、並びに、三井武田ケミカル(株)の「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」及び「MT−オレスターNP1200」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0098】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤としてイソシアネート化合物を用いる場合、イソシアネート化合物を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0099】
本発明の粘着剤組成物が架橋剤としてエポキシ化合物を用いる場合、エポキシ化合物としては、市販品を使用できる。
架橋剤としてのエポキシ化合物の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「TETRAD−X」及び「TETRAD−C」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0100】
本発明の粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は、特に制限されず、例えば、貼り付け直後により優れたリワーク性を示し、かつ、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるとの観点から、既述の(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜7質量部がより好ましい。
【0101】
<シランカップリング剤>
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果が発揮される範囲内において、更にシランカップリング剤を含有していてもよい。
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、粘着剤層とした際の耐久性がより向上し得る。
【0102】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン系化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0103】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)の商品名「KBM−803」、「KBM−802」、「X−41−1810」、「X−41−1805」、及び「X−41−1818」に代表されるチオール基含有シラン化合物、並びに、信越化学工業(株)の商品名「KBM−403」、「KBM−303」、「KBM−402」、「KBE−402」、及び「KBE−403」に代表されるエポキシ基含有シラン化合物が挙げられる。
【0104】
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0105】
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部〜3質量部が好ましく、0.05質量部〜1質量部がより好ましく、0.05質量部〜0.5質量部が更に好ましい。
粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量が、上記の範囲内であると、経時後により高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる。
【0106】
<他の成分>
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含有していてもよい。
他の成分としては、架橋触媒、粘着付与剤、溶媒、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤、フィラー等の各種添加剤が挙げられる。
【0107】
<用途>
本発明の粘着剤組成物は、貼り付け直後に優れたリワーク性を示し、かつ、経時後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できることから、マーキングフィルム、ステッカー、再帰反射シート等に用いられる粘着剤組成物として好適である。
本発明の粘着剤組成物をマーキングフィルムに用いられる粘着剤組成物として使用した場合には、被着体へのマーキングフィルムの貼り付けミスが生じても容易に貼り直すことができ、かつ、屋外でマーキングフィルムを使用しても経時で剥離し難い。
また、本発明の粘着剤組成物をステッカーに用いられる粘着剤組成物として使用した場合には、複雑な立体形状を有する被着体に複雑な形状を有するステッカーを貼り付けた際、又は仮接着した後に、一度ステッカーを剥がし、再度貼り直す作業において、被着体表面に糊残りが生じず、かつ、屋外で貼り直したステッカーを使用しても経時で剥離し難い。なお、ステッカーは、例えば、四輪車及び二輪車に代表される各種車輛の装飾に用いられる。
さらに、本発明の粘着剤組成物を再帰反射シートに用いられる粘着剤組成物として使用した場合には、例えば、曲面及び/又は凹凸を有する被着体への再帰反射シートの貼り付けミスが生じても容易に貼り直すことができ、かつ、屋外で再帰反射シートを使用しても経時で剥離し難い。再帰反射シートとしては、ビーズ型再帰反射シート、プリズム型再帰反射シート等が挙げられる。なお、再帰反射シートは、交通標識、ライセンスプレート等に用いられる。
その他、本発明の粘着剤組成物は、オーバーラミネートフィルムに用いられる粘着剤組成物としても好ましく使用できる。
【0108】
<粘着フィルム>
本発明の粘着フィルムは、基材と、上記基材上に設けられ、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。すなわち、本発明の粘着フィルムは、基材と、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層とが、積層されている。
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有するので、貼り付け直後に優れたリワーク性を示し、かつ、経時後に高い粘着力を示す。
【0109】
本発明の粘着フィルムの具体例としては、粘着剤組成物を塗布して形成された粘着剤層を有するマーキングフィルム、ステッカー、再帰反射シート、オーバーラミネートフィルム等が挙げられる。
【0110】
本発明の粘着フィルムにおける基材は、特に制限されない。
基材としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、アセテート系樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂を含む基材、及びガラス材料、各種金属材料等の無機材料を含む基材が挙げられる。
これらの中でも、基材としては、施工性及び柔軟性の観点から、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む基材であることが好ましい。
【0111】
本発明の粘着フィルムにおける基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、充填材、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
また、基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0112】
基材上には、コロナ処理機又はプラズマ処理機による表面処理が施されていてもよい。
【0113】
基材の厚さは、特に制限されないが、例えば、粘着フィルムの強度の観点から、5μm〜500μm程度が好ましい。
【0114】
基材上に設けられる粘着剤層の形成方法は、特に制限されず、通常用いられる方法を採用できる。
基材上への粘着剤層の形成方法としては、例えば、本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、シリコーン樹脂等により離型処理が施された紙、ポリエステルフィルム等の離型フィルム上に塗布し、乾燥して溶媒を除去し、粘着剤組成物の層を形成した後、離型フィルムの粘着剤組成物の層が形成された側の面を基材に接触させて加圧して貼り合わせ、養生を行い、粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0115】
離型フィルムに粘着剤組成物を塗布する方法は、特に制限されず、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いた方法が挙げられる。
【0116】
養生は、例えば、23℃、50%RHの環境下で1日間〜10日間行う。
【0117】
粘着剤層の厚さは、被着体の種類、被着体の表面粗さ等に応じて、適宜設定できる。
一般的には、粘着剤層の厚さは、1μm〜100μmの範囲であり、好ましくは10μm〜80μmの範囲であり、より好ましくは20μm〜60μmの範囲である。
なお、粘着剤層の厚さが20μm以上であると、貼り付け直後のリワーク性がより良好となる傾向があり、粘着剤層の厚さが60μm以下であると、経時後の粘着力がより高くなる傾向がある。
【0118】
本発明の粘着フィルムの被着体の種類は、特に制限されない。
被着体としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、アセテート系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びセルロースに代表される各種樹脂、並びに、ガラス、各種セラミック、及び各種金属材料(アルミニウム、ステンレス鋼等)に代表される各種無機材料が挙げられる。
本発明の粘着フィルムは、被着体が塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂のような各種樹脂である場合に加え、金属材料である場合でも、優れた粘着力を示す。例えば、本発明の粘着フィルムは、極性が高く、貼り付けた際の粘着力が特に低下する傾向を示すステンレス鋼であっても、優れた粘着力を示す。
【0119】
被着体上には、コロナ処理機又はプラズマ処理機による表面処理が施されていてもよい。
【0120】
本発明の粘着フィルムの被着体の形状は、特に制限されない。
本発明の粘着フィルムは、平面のみならず、従来、貼り合わせが難しかった曲面及び/又は凹凸を有する被着体に対しても、優れた粘着力を示す。
本発明の粘着フィルムは、貼り付け直後に優れたリワーク性を示すことから、従来、貼付作業が難しく、貼り直しが求められる複雑な立体形状を有する被着体、例えば、凹部と凸部とを有する被着体に対しても好適である。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0122】
[(メタ)アクリル系ポリマーの製造]
〔製造例1〕
温度計、撹拌機、還流冷却器、及び逐次滴下装置を備えた反応容器内に、酢酸エチル150質量部と、アルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(n−BA)69.0質量部及びメチルアクリレート(MA)30.0質量部と、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしてアクリル酸(AA)1.0質量部と、重合開始剤として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(商品名:V−60、和光純薬工業(株))0.05質量部と、を入れ、撹拌しながら、反応容器内の温度を還流が発生するまで上昇させた。還流開始から20分後、n−BAを211.8質量部と、MAを92.1質量部と、AAを3.1質量部と、V−60を0.5質量部と、を酢酸エチル100質量部に溶解させた溶液を90分かけて滴下した。滴下終了後、更に60分間、還流温度を保った後、V−60 1.0質量部を酢酸エチル100質量部に溶解させた溶液を60分間かけて逐次滴下し、更に120分かけて反応を完結させた。反応完結後、固形分が35質量%となるように酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を調製した。なお、「固形分」とは(メタ)アクリル系ポリマーの溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する。
【0123】
得られた(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万)、酸価(単位:mgKOH/g)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び固形分(単位:質量%)を表1に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
酸価及びガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
製造例1で得られた(メタ)アクリル系ポリマーの酸価は、具体的には、次のようにして計算した。なお、(メタ)アクリル系ポリマーに使用された全モノマー中のAAの含有率は、1.0質量%であり、AAの分子量は、72である。また、AA1分子中に含まれるカルボキシ基の数は1である。
製造例1で得られた(メタ)アクリル系ポリマーの酸価(mgKOH/g)={(1.0/100)÷72}×56.1×1000×1=7.8
【0124】
〔製造例2〜製造例8〕
製造例2〜製造例8では、製造例1におけるモノマーの組成を表1に示すように変更するとともに、溶媒の量、重合開始剤の量等を調整することで、表1に示すように、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量を調整したこと以外は、製造例1と同様の方法により、(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られた(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万)、酸価(単位:mgKOH/g)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び固形分(単位:質量%)を表1に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
酸価及びガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
【0125】
〔製造例9〕
製造例9では、製造例1におけるモノマーの組成を表1に示すように変更するとともに、溶媒の量、重合開始剤の量等を調整することで、表1に示すように、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量を調整したこと以外は、製造例1と同様の方法により、(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られた(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万)、水酸基価(単位:mgKOH/g)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び固形分(単位:質量%)を表1に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
ガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
水酸基価は、既述の(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価を求める方法で計算したものである。
製造例9で得られた(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価は、具体的には、次のようにして計算した。なお、(メタ)アクリル系ポリマーに使用された全モノマー中の2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)の含有率は、1.0質量%であり、2HEAの分子量は、116である。また、2HEA1分子中に含まれる水酸基の数は1である。
製造例9で得られた(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価(mgKOH/g)={(1.0/100)÷116}×56.1×1000×1=4.8
【0126】
表1中、「2EHA]は「2−エチルヘキシルアクリレート」、「EA」は「エチルアクリレート」、「MAA」は「メタクリル酸」を表す。
表1中の各モノマーについて記載されたガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で測定した、そのモノマーをホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)である。
表1中、「−」は、該当成分を配合していないことを意味する。
【0127】
【表1】
【0128】
[(メタ)アクリル系オリゴマーの製造]
〔製造例A〕
温度計、撹拌機、還流冷却器、及び逐次滴下装置を備えた反応容器内に、トルエン50質量部及びメチルエチルケトン(MEK)50質量部を入れ、撹拌しながら、反応容器内の温度を還流が発生するまで上昇させた。還流開始から10分後、アルキル(メタ)アクリレートとしてt−ブチルメタクリレート(t−BMA)を90質量部と、水酸基を有するモノマーとして2−ヒドロキシエチルメタクリレート2HEMAを10質量部と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(商品名:V−601、和光純薬工業(株))を13.3質量部と、をトルエン50質量部及びMEK50質量部に溶解させた溶液を180分かけて滴下し、滴下終了後、更に230分かけて反応を完結させた。反応完結後、固形分が35質量%となるようにトルエンで希釈し、(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液を調製した。なお、「固形分」とは(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する。
【0129】
得られた(メタ)アクリル系オリゴマーのモノマー組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万)、水酸基価(単位:mgKOH/g)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び固形分(単位:質量%)を表2に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
水酸基価及びガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
製造例Aで得られた(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価は、具体的には、次のようにして計算した。なお、(メタ)アクリル系オリゴマーに使用された全モノマー中の2HEMAの含有率は、10.0質量%であり、2HEMAの分子量は、130である。また、2HEMA1分子中に含まれる水酸基の数は1である。
製造例Aで得られた(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価(mgKOH/g)={(10.0/100)÷130}×56.1×1000×1=43.2
【0130】
〔製造例B〜製造例G、製造例I、及び製造例J〕
製造例B〜製造例G、製造例I、及び製造例Jでは、製造例Aにおけるモノマーの組成を表2に示すように変更するとともに、溶媒の量、重合開始剤の量等を調整することで、表2に示すように、(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量を調整したこと以外は、製造例Aと同様の方法により、(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液を調製した。
得られた(メタ)アクリル系オリゴマーのモノマー組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万)、水酸基価(単位:mgKOH/g)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び固形分(単位:質量%)を表2に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
水酸基価及びガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
【0131】
〔製造例H〕
製造例Hでは、製造例Aにおけるモノマーの組成を表2に示すように変更するとともに、溶媒の量、重合開始剤の量等を調整することで、表2に示すように、(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量を調整したこと以外は、製造例Aと同様の方法により、(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液を調製した。
得られた(メタ)アクリル系オリゴマーのモノマー組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万)、酸価(単位:mgKOH/g)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び固形分(単位:質量%)を表2に示す。
重量平均分子量(Mw)は、既述の方法で測定したものである。
ガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で計算したものである。
酸価は、既述の(メタ)アクリル系ポリマーの酸価を求める方法で計算したものである。
製造例Hで得られた(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価は、具体的には、次のようにして計算した。なお、(メタ)アクリル系オリゴマーに使用された全モノマー中のMAAの含有率は、10.0質量%であり、MAAの分子量は、86である。また、MAA1分子中に含まれるカルボキシ基の数は1である。
製造例Hで得られた(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価(mgKOH/g)={(10.0/100)÷86}×56.1×1000×1=65.2
【0132】
表2中、「n−BMA]は「n−ブチルメタクリレート」、「2EHMA」は「2−エチルへキシルメタクリレート」、「MMA」は「メチルメタクリレート」を表す。
表2中の各モノマーについて記載されたガラス転移温度(Tg)は、既述の方法で測定した、そのモノマーをホモオリゴマーとしたときのガラス転移温度(Tg)である。
表2中、「−」は、該当成分を配合していないことを意味する。
【0133】
【表2】
【0134】
[実施例1]
(粘着剤組成物の作製)
製造例1で調製した(メタ)アクリル系ポリマーの溶液(固形分:35質量%)100.0質量部(固形分換算値)と、製造例Aで調製した(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液(固形分:35質量%)20.0質量部(固形分換算値)と、架橋剤としてのイソシアネート化合物(商品名:コロネート(登録商標)L−45E、トリレンジイソシアネート(TDI)、固形分:45質量%、東ソー(株))3.0質量部(固形分換算値)と、を混合し、十分に撹拌して実施例1の粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物の組成等の詳細を表3に示す。
【0135】
(評価用粘着フィルムの作製)
上記にて得られた粘着剤組成物を用い、以下のようにして、評価用粘着フィルムを作製した。シリコーン系離型剤で表面保護された離型フィルム(商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E−0010NO23、藤森工業(株))の上に、乾燥後の膜厚が40μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、熱風循環式乾燥機にて100℃で60秒間乾燥して粘着剤組成物の層を形成した。次いで、粘着剤組成物の層の上に、基材としてのPVCフィルム(商品名:00178M7、アジピン酸系可塑剤を30質量%含む軟質塩化ビニルフィルム、厚さ:75μm、日本カーバイド工業(株))を、粘着剤組成物の層と接するように載置し、加圧ニップロールで圧着して貼り合わせた。その後、23℃、50%RHの環境下で48時間養生を行い、粘着剤層を有する評価用粘着フィルムを作製した。
【0136】
(評価)
1.経時後の粘着力
上記にて作製した評価用粘着フィルムを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着フィルム片を2枚準備した。
準備した評価用粘着フィルム片のうち、1枚については、離型フィルムを剥離し、粘着剤層をSUS(ステンレス鋼)板に、高温ラミネーターを用いて、50℃で熱圧着し、試験片A−1とした。
また、準備した評価用粘着フィルム片のうち、もう1枚については、離型フィルムを剥離し、粘着剤層をアクリル系樹脂板(商品名:アクリライト(登録商標)MR−200、厚さ:2mm、日本テストパネル(株))に、高温ラミネーターを用いて、50℃で熱圧着し、試験片B−1とした。
そして、試験片A−1及び試験片B−1を、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置した。
放置後の試験片A−1及び試験片B−1について、それぞれSUS板及びアクリル系樹脂板から評価用粘着フィルムを長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として、(株)エー・アンド・デイのシングルコラム型材料試験機(型番:STA−1225)を用い、剥離速度300mm/minの条件にて測定し、下記の評価基準に従って、経時後の粘着力を評価した。なお、被着体にジッピングが生じた場合は、最大値を粘着力とした。結果を表3に示す。
評価基準が「A」、「B」又は「C」であれば、粘着力が十分に高いと判断した。
【0137】
−評価基準−
A:粘着力が50N/25mm以上である。
B:粘着力が40N/25mm以上50N/25mm未満である。
C:粘着力が26N/25mm以上40N/25mm未満である。
D:粘着力が26N/25mm未満である。
【0138】
2.リワーク性
上記にて作製した評価用粘着フィルムを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着フィルム片を2枚準備した。
準備した評価用粘着フィルム片のうち、1枚については、離型フィルムを剥離し、粘着剤層を被着体としてのSUS(ステンレス鋼)板に、高温ラミネーターを用いて、50℃で熱圧着し、試験片A−2とした。
また、準備した評価用粘着フィルム片のうち、もう1枚については、離型フィルムを剥離し、粘着剤層を被着体としてのアクリル系樹脂板(商品名:アクリライト(登録商標)MR−200、厚さ:2mm、日本テストパネル(株))に、高温ラミネーターを用いて、50℃で熱圧着し、試験片B−2とした。
熱圧着の直後の試験片A−2及び試験片B−2について、それぞれSUS板及びアクリル系樹脂板から評価用粘着フィルムを手剥離した。そして、被着体への糊残りの有無について確認し、下記の評価基準に従って、リワーク性を評価した。結果を表3に示す。
評価結果が「A」、「B」又は「C」であれば、リワーク性が良好であると判断した。
【0139】
−評価基準−
A:糊残りは確認されなかった。
B:エッジ部にのみわずかな糊残りが確認された。
C:貼付面のエッジ部以外にもわずかな糊残りが確認された。
D:貼付面の全面に糊残りが確認された。
【0140】
[実施例2〜実施例20]
実施例2〜実施例20では、実施例1における(メタ)アクリル系ポリマーの種類及び配合量、(メタ)アクリル系オリゴマーの種類及び配合量、並びに架橋剤の種類及び配合量を、表3に示すものにしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着剤組成物を得た。次いで、得られた粘着剤組成物を用い、実施例1と同様の操作を行い、試験用粘着フィルムを作製した。そして、作製した試験用粘着フィルムについて、実施例1と同様の操作を行い、経時後の粘着力及びリワーク性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0141】
[実施例21]
実施例21では、実施例12の粘着剤組成物に、シランカップリング剤(商品名:KBM−403、信越化学工業(株))を、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し0.1質量部を加えたこと以外は、実施例12と同様の操作を行い、粘着剤組成物を得た。次いで、得られた粘着剤組成物を用い、実施例12と同様の操作を行い、試験用粘着フィルムを作製した。作製した試験用粘着フィルムには、コロナ処理機(機器名:ASA−4、信光電気(株))を用いて、基材であるPVCフィルムの、粘着剤組成物と圧着する面にコロナ表面処理を行った。そして、コロナ表面処理を行った試験用粘着フィルムについて、実施例12と同様の操作を行い、経時後の粘着力及びリワーク性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0142】
[比較例1〜比較例9]
比較例1〜比較例9では、実施例1における(メタ)アクリル系ポリマーの種類及び配合量、(メタ)アクリル系オリゴマーの種類及び配合量、並びに架橋剤の種類及び配合量を、表3に示すものにしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着剤組成物を得た。次いで、得られた粘着剤組成物を用い、実施例1と同様の操作を行い、試験用粘着フィルムを作製した。そして、作製した試験用粘着フィルムについて、実施例1と同様の操作を行い、経時後の粘着力及びリワーク性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0143】
表3中、「−」は、該当成分を配合していないことを意味する。
表3中の成分の詳細は、以下のとおりである。
<架橋剤>
HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート):デュラネート(登録商標)D−201(商品名、固形分:100質量%、旭化成(株))
XDI(キシリレンジイソシアネート):タケネート(登録商標)D−110N(商品名、固形分:75質量%、三井化学(株))
エポキシ化合物:TETRAD−X(商品名、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、固形分:100質量%、三菱ガス化学(株))
<シランカップリング剤>
KBM−403(商品名、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、信越化学工業(株))
表3中、「zip」は、ジッピングが生じたことを意味する。
【0144】
【表3】
【0145】
表3の結果より、実施例1〜実施例21の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、貼り付け直後には優れたリワーク性を示し、かつ、経時後には高い粘着力を示すことが明らかとなった。特に、架橋剤がイソシアネート化合物である実施例1〜実施例19及び実施例21の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、貼り付け直後にはより優れたリワーク性を示し、かつ、経時後にはより高い粘着力を示すことが明らかとなった。
【0146】
一方、(メタ)アクリル系オリゴマーを含有しない比較例1の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例1)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、経時後の粘着力が劣っていた。
(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が20質量部未満である比較例2の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例1)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、経時後の粘着力が劣っていた。
(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が120質量部を超える比較例3の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例4)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、貼り付け直後のリワーク性及び経時後の粘着力の両方が劣っていた。
【0147】
(メタ)アクリル系ポリマーがカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の代わりに水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含む比較例4の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例2)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、経時後の粘着力及び経時後の粘着力の両方が顕著に劣っていた。
(メタ)アクリル系オリゴマーが水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の代わりにカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含む比較例5の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例2)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、経時後の粘着力が顕著に劣っていた。
(メタ)アクリル系ポリマーがカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の代わりに水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、かつ、(メタ)アクリル系オリゴマーが水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の代わりにカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含む比較例6の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例2)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、経時後の粘着力が顕著に劣っていた。
【0148】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量が0.2万未満である比較例7の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例2)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、貼り付け直後のリワーク性が顕著に劣っていた。
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量が1万を超える比較例8の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例2)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、経時後の粘着力が顕著に劣っていた。
【0149】
架橋剤を含まない比較例9の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、実施例(例えば、実施例12)の粘着剤組成物から得られた粘着剤層と比較して、貼り付け直後のリワーク性及び経時後の粘着力の両方が劣っていた。