特許第6829726号(P6829726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6829726偏光フィルム用粘着剤組成物、偏光フィルム用粘着剤層の製造方法、粘着剤層付偏光フィルム、及び、画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829726
(24)【登録日】2021年1月26日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】偏光フィルム用粘着剤組成物、偏光フィルム用粘着剤層の製造方法、粘着剤層付偏光フィルム、及び、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20210128BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210128BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20210128BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20210128BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J11/06
   C09J7/38
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-542648(P2018-542648)
(86)(22)【出願日】2017年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2017034977
(87)【国際公開番号】WO2018062280
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-194931(P2016-194931)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 智之
(72)【発明者】
【氏名】小野 寛大
(72)【発明者】
【氏名】杉野 晶子
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/119884(WO,A1)
【文献】 特開2012−102276(JP,A)
【文献】 特開2006−183022(JP,A)
【文献】 特開2009−120805(JP,A)
【文献】 特開2014−031440(JP,A)
【文献】 特開2013−136670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
G02B5/30
G02F1/1335;1/13363
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ)アクリル系ポリマー(A)、及び、熱又は活性エネルギー線によりラジカルを発生する化合物(B)を含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、重合開始剤として、有機テルル化合物を用いて、リビングラジカル重合により得られるものであり、
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、前記化合物(B)の含有量が、0.01〜3重量部であることを特徴とする偏光フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記有機テルル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の偏光フィルム用粘着剤組成物。
(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【請求項3】
前記有機テルル化合物が、更に、下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の偏光フィルム用粘着剤組成物。
Te (2)
(式中、R及びRは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示し、R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記化合物(B)が、過酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の多分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、3.0以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光フィルム用粘着剤組成物を調製する工程と、
前記偏光フィルム用粘着剤組成物を支持体上に塗布した後、加熱処理又は活性エネルギー線照射処理し、偏光フィルム用粘着剤層を形成する工程と、を含むことを特徴とする偏光フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項7】
前記加熱処理における加熱温度が、100〜170℃であることを特徴とする請求項に記載の偏光フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項8】
偏光フィルムの少なくとも片面に、請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有することを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項9】
請求項に記載の粘着剤層付偏光フィルムを少なくとも1つ用いたことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルム用粘着剤組成物、及び、前記偏光フィルム用粘着剤組成物により得られる偏光フィルム用粘着剤層の製造方法に関する。また、本発明は、前記粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルム、及び、前記粘着剤層付偏光フィルムを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光子(偏光素子)を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光フィルムが貼着されている。また液晶パネルには偏光フィルムの他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。例えば、着色防止としての位相差フィルム、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。また、偏光子は、保護フィルムや、その他の光学フィルムと、接着剤や粘着剤(層)を介して貼り合せられ、積層フィルムとして使用されることが一般的である。
【0003】
前記光学フィルム等の光学部材を液晶セルに貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムと液晶セル、または光学フィルム間の接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片側に予め粘着剤層として設けられた粘着剤層付光学フィルムが一般的に用いられる。粘着剤層付光学フィルムの粘着剤層には、通常、セパレータ(離型フィルム)が貼り付けられている。
【0004】
前記粘着剤層に要求される必要特性としては、前記粘着剤層を光学フィルムに貼り合わせた状態や、更に、粘着剤層付光学フィルムを液晶パネルのガラス基板に貼り合わせた状態で、加熱・加湿条件下において、高い耐久性が求められており、例えば、環境促進試験として通常行われる加熱・加湿等による耐久試験において、粘着剤層に起因する発泡や剥がれ、浮き等の不具合が発生しない高い接着信頼性などが求められる。
【0005】
また、光学フィルム(例えば、偏光フィルム)は、加熱処理により収縮する傾向がある。光学フィルムの収縮によって、粘着剤層自体も変形する問題が発生している。
【0006】
特に、屋外で使用され、高温の車内が想定されるカーナビゲーションなどの車載用ディスプレイや携帯電話などに用いられる粘着剤層や粘着剤層付光学フィルムは、高い接着信頼性や、高温での耐久性が求められている。
【0007】
また、セパレータに対する剥離力(セパレータ剥離力)が大きすぎると、例えば、画像表示デバイスに、光学フィルムを貼合する工程において、光学フィルムからセパレータを剥離する際に、セパレータを剥離することができなかったり、光学フィルムを固定している吸着板から光学フィルムが脱離したりする不具合を生じ、画像表示パネルの生産性を著しく低下させることがあり、好ましくない。
【0008】
特に近年、光学フィルムが薄型化することで、光学フィルム自体が曲がりやすく、セパレータの剥離方向に追従することで剥離しにくくなっている。そのため、従来以上にセパレータの剥離力が小さい粘着剤(粘着剤層)が求められている。
【0009】
このような中、特許文献1では、芳香環含有モノマーとアミド基含有モノマー等、極性モノマーを含むアクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤を4〜20重量部を配合した粘着剤組成物が提案されている。
【0010】
また、特許文献2では、リビングラジカル重合によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体やイソシアネート系架橋剤、有機スズ化合物を含有する粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する保護フィルムが提案され、重合開始剤として、有機テルル化合物を使用した場合に重剥離化が生じることや、有機スズ化合物を含有することで、重剥離化が抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−158702号公報
【特許文献2】特開2014−31442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の粘着剤組成物は、架橋剤の配合割合が多いため、耐久性試験で剥がれが発生しやすくなる傾向があり、特に車載用途で求められる高温での接着信頼性を満足するものではなかった。
【0013】
また、特許文献2のように、有機スズ化合物を含む粘着剤は、光学フィルムとの密着性が低い傾向があり、光学フィルムに適用して高温での耐久性試験を行った場合、光学フィルムと粘着剤との層間で剥がれが発生する傾向があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、被着体に対して、加熱・加湿条件下において、発泡や剥がれなどを生じず、耐久性(耐熱性)に優れるとともに、製造後、長期間保管された場合や長時間の加熱条件下に曝された場合であっても、セパレータ剥離力が上昇せず、セパレータの剥離性に優れる偏光フィルム用粘着剤層が得られる偏光フィルム用粘着剤組成物、及び、偏光フィルム用粘着剤層の製造方法、前記粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルム、及び、前記粘着剤層付偏光フィルムを含む画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記の偏光フィルム用粘着剤組成物等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明の偏光フィルム用粘着剤組成物は、有機テルル化合物、(メタ)アクリル系ポリマー(A)、及び、熱又は活性エネルギー線によりラジカルを発生する化合物(B)を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明の偏光フィルム用粘着剤組成物は、前記有機テルル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【0018】
本発明の偏光フィルム用粘着剤組成物は、前記有機テルル化合物が、更に、下記一般式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
Te (2)
(式中、R及びRは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示し、R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0019】
本発明の偏光フィルム用粘着剤組成物は、前記化合物(B)が、過酸化物であることが好ましい。
【0020】
本発明の偏光フィルム用粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、前記有機テルル化合物を用いて重合されたものであることが好ましい。
【0021】
本発明の偏光フィルム用粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、前記化合物(B)の含有量が、0.01〜3重量部であることが好ましい。
【0022】
本発明の偏光フィルム用粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の多分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、3.0以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の偏光フィルム用粘着剤層の製造方法は、前記偏光フィルム用粘着剤組成物を調製する工程と、前記偏光フィルム用粘着剤組成物を支持体上に塗布した後、加熱処理又は活性エネルギー線照射処理し、偏光フィルム用粘着剤層を形成する工程と、を含むことが好ましい。
【0024】
本発明の偏光フィルム用粘着剤層の製造方法は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)をリビングラジカル重合で製造することが好ましい。
【0025】
本発明の偏光フィルム用粘着剤層の製造方法は、前記加熱処理における加熱温度が、100〜170℃であることが好ましい。
【0026】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、偏光フィルムの少なくとも片面に、前記偏光フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有することが好ましい。
【0027】
本発明の画像表示装置は、前記粘着剤層付偏光フィルムを少なくとも1つ用いたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の偏光フィルム用粘着剤組成物は、有機テルル化合物、(メタ)アクリル系ポリマー(A)、及び、熱又は活性エネルギー線によりラジカルを発生する化合物(B)を含有することを特徴とする。当該偏光フィルム用粘着剤組成物を用いて形成される偏光フィルム用粘着剤層は、セパレータ剥離力を抑制でき、特に、製造後、長期間保管された場合であっても、セパレータ剥離力の上昇を抑えることができ、更に、高温加熱条件下や加熱・加湿条件下で曝された場合でも、耐久性(耐熱性)に優れ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の粘着剤層付偏光フィルムの概略断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)>
本発明の偏光フィルム用(偏光板用)粘着剤組成物(単に「粘着剤組成物」という場合がある。)は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含有することを特徴とする。前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0031】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
【0032】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、モノマー単位として、ヒドロキシル基含有モノマーを含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物であることが好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等が挙げられる。前記ヒドロキシル基含有モノマーのなかでも、耐久性の点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、アミド基含有モノマーを含有することが好ましい。前記アミド基含有モノマーは、その構造中にアミド基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物であることが好ましい。アミド基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−N−プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン等のN−アクリロイル複素環モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等のN−ビニル基含有ラクタム系モノマー等が挙げられる。アミド基含有モノマーは、耐久性を満足するうえで好ましく、アミド基含有モノマーのなかでも、特に、N−ビニル基含有ラクタム系モノマーは、耐久性を満足させるうえで好ましい。
【0034】
これら共重合モノマーは、粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合に、架橋剤との反応点になる。特に、ヒドロキシル基含有モノマーは、分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられ、リワーク性の点でも好ましい。
【0035】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、前記各モノマーを全構成モノマー(100重量%)の重量比率において所定量含有する。アルキル(メタ)アクリレートの重量比率は、アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマーの残部として設定でき、具体的には、アルキル(メタ)アクリレートの重量比率は、60重量%以上であることが好ましく、65〜99.8重量%がより好ましく、70〜99.6重量%が更に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの重量比率を前記範囲に設定することは、粘着特性を確保するうえで好ましい。
【0036】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの重量比率は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜8重量%がより好ましく、0.3〜6重量%が更に好ましく、0.3〜3.5重量%が特に好ましく、0.3〜1.5重量%が最も好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーの重量比率が0.01重量%未満では、粘着剤層が架橋不足になり、耐久性や粘着特性を満足できない恐れがあり、一方、10重量%を超える場合には、耐久性を満足できず、セパレータ剥離力が高くなる恐れがある。
【0037】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)中には、前記モノマーユニットの他に、特に、他のモノマーユニットを含有することは必要とされないが、粘着特性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。
【0038】
そのような共重合モノマーの具体例としては、;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノール(メタ)アクリレートフェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を有するもの;ヒドロキシエチル化β−ナフトールアクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−ナフトキシエチルアクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のナフタレン環を有するもの;ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を有するものなど、芳香環含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
また、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー等が挙げられる。
【0040】
また、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー、等も改質目的のモノマー例として挙げられる。
【0041】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のグリコール系(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー等も使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
さらに、前記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマー等が挙げられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
また、共重合モノマーとしては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタン等の骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
【0044】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)における前記共重合モノマーの割合は、芳香環含有モノマーの場合、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の全構成モノマー(100重量%)の重量比率において、3〜25重量%であることが好ましく、8〜22重量%がより好ましく、12〜18重量%が更に好ましい。芳香環含有モノマーの重量比率が前記範囲内であれば、光漏れによる表示ムラを十分に抑制でき、耐久性にも優れ、好ましい。なお、芳香環含有モノマーの重量比率が25重量%を超えると表示ムラが却って抑制が十分でなく、耐久性も低下する。また、その他の共重合モノマーについては、0〜10%程度、さらには0〜7%程度、さらには0〜5%程度であるのが好ましい。
【0045】
なお、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを含有しないことが好ましい。前記カルボキシル基含有モノマーを含有する場合、耐久性(例えば、耐金属腐食性)を満足できなくなる場合があり、またリワーク性の点からも好ましくない。なお、前記カルボキシル基含有モノマーを使用する場合、前記カルボキシル基含有モノマーとは、その構造中にカルボキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物であることが好ましい。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。前記カルボキシル基含有モノマーのなかでも、共重合性、価格、および粘着特性の観点からアクリル酸が好ましい。また、前記カルボキシル基含有モノマーを少量使用するのであれば、経時でのセパレータ剥離力の上昇の抑制を図ることができる。
【0046】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)が、70万〜300万であることが好ましい。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は80万〜250万であることがより好ましく、100万〜250万であることが更に好ましい。重量平均分子量が70万よりも小さいと、低分子量のポリマー成分が多くなり、ゲル(粘着剤層)の架橋密度が高くなり、これに伴い、粘着剤層が硬くなり、応力緩和性が損なわれ、好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると、粘度の上昇やポリマーの重合中にゲル化が生じ、好ましくない。
【0047】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の多分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、3.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.05〜2.5であり、さら好ましくは1.05〜2.0であるのが好ましい。多分散度(Mw/Mn)が2.5を超える場合、低分子量のポリマーが多くなり、粘着剤層のゲル分率を高くするために、多量の架橋剤を使用する必要があり、これにより、既にゲル化したポリマーに対して、余剰の架橋剤が反応し、ゲル(粘着剤層)の架橋密度が高くなり、これに伴い、粘着剤層が硬くなり、応力緩和性が損なわれ、好ましくない。また、低分子量のポリマーが多く、未架橋のポリマーやオリゴマー(ゾル分)が多くなると、加熱条件下などで、被着体(例えば、光学フィルムやガラス、ITO等)に接触している粘着剤層界面付近に偏析している未架橋ポリマー等により、粘着剤層の破壊が生じ、粘着剤層の剥がれの原因となることが推測され、耐久性に劣るため、多分散度(Mw/Mn)は3.0以下に調整することが好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値から求められる。
【0048】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択でき、中でも、溶液重合は、簡便性や汎用性の点から好ましく、また、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)をリビングラジカル重合で製造することは、簡便性や汎用性の点から好ましい。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0049】
なお、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造は、リビングラジカル重合を使用した場合、通常のフリーラジカル重合と比較して、低分子量オリゴマーやホモポリマーの生成を抑制することができるため、接着信頼性を向上させられることができ、好ましい態様となる。
【0050】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0051】
<重合開始剤>
本発明の粘着剤組成物は、有機テルル化合物を含有することを特徴とする。前記有機テルル化合物は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)を重合する際の重合開始剤として使用することができ、重合開始剤としての役割を果たした後に、本発明の粘着剤組成物中に前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)と共に含まれることになる。有機テルル化合物を使用することにより、得られるポリマーの多分散度の調整が容易となり、更に得られる粘着剤層の耐久性向上に寄与でき、好ましい。
【0052】
前記有機テルル化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【0053】
また、前記有機テルル化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物に加えて、更に、下記一般式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
Te (2)
(式中、R及びRは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示し、R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0054】
特に、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)をリビングラジカル重合により調製する際には、例えば、上記一般式(1)で表される有機テルル化合物として、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル等が挙げられる。これらの有機テルル化合物中のメチルテラニル基は、エチルテラニル基、n−プロピルテラニル基、イソプロピルテラニル基、n−ブチルテラニル基、イソブチルテラニル基、t−ブチルテラニル基、フェニルテラニル基等であってもよい。
【0055】
上記一般式(2)で示される有機テルル化合物は、例えば、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等の有機テルリド化合物が挙げられる。これらの有機テルリド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが好ましい。
【0056】
本発明の粘着剤組成物の特性に特に問題がない範囲内で、前記有機テルル化合物以外のその他の重合開始剤を使用することができる。その他の重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜3重量部程度であることが好ましく、0.02〜1重量部程度であることがより好ましい。
【0058】
前記連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0059】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン系乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0060】
さらに、前記乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基等のラジカル重合性官能基が導入された反応性乳化剤を用いることができ、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)等がある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0061】
<熱又は活性エネルギー線によりラジカルを発生する化合物(B)>
本発明の粘着剤組成物は、熱又は活性エネルギー線によりラジカルを発生する化合物(B)を含有することを特徴とする。前記化合物(B)は、架橋剤として使用されるものであり、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋することで適度な凝集力を与えて耐熱性を付与すると同時に、経時でのセパレータ剥離力の上昇を抑制することができる点で、好ましい。特に、有機テルル化合物と共に、リビングラジカルポリマーを(メタ)アクリル系ポリマー(A)として用いて粘着剤を調製した場合、粘着剤とセパレータの間の密着力が経時で上昇し、保管後にセパレータの剥離が困難となる場合があるが、前記化合物(B)を使用することで、セパレータ剥離力の上昇を抑制でき、好ましい態様となる。また、粘着特性、特に車載用途で要求される高耐久性を考慮すれば、前記化合物(B)として、過酸化物や光重合開始剤を使用することが耐久性試験での剥がれを抑制できるため好ましく、特に過酸化物が好ましい。
【0062】
前記過酸化物としては、熱又は活性エネルギー線(加熱または光照射等)によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマー((メタ)アクリル系ポリマー(A))の架橋を進行させるものであれば、適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0063】
前記過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)、及び、前記パーオキシドのメチル誘導体の混合物等が挙げられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)等が好ましく用いられる。
【0064】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログ等に記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」等に記載されている。なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0065】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mLに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10mL加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μLをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0066】
前記化合物(B)として使用できる光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤等が挙げられる。
【0067】
ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
ケタール系光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・ジャパン社製品)]等が挙げられる。
アセトフェノン系光重合開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製品)]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。
ベンゾインエーテル系光重合開始剤の具体例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0068】
前記化合物(B)は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、前記化合物(B)の含有量が、0.01〜3重量部であることが好ましく、0.02〜2重量部であることがより好ましく、0.03〜1重量部であることが更に好ましい。前記範囲内であれば、経時でのセパレータ剥離力の上昇の抑制、架橋安定性、剥離性等の調整のために、この範囲内で適宜選択される。なお、前記化合物(B)の含有量が少なすぎると、セパレータ剥離力の上昇の抑制が不十分となり、多すぎると、粘着剤層が硬くなり、粘着剤層の剥離力(粘着力)が低下したり、粘着剤層自体の耐久性が劣る傾向があり、好ましくない。
【0069】
<架橋剤>
前記粘着剤組成物は、前記化合物(B)に加えて、更に、その他架橋剤を含有することも可能である。前記架橋剤としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレート(金属キレート系架橋剤)を用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。中でも、前記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。特に、イソシアネート系架橋剤と、前記化合物(B)として過酸化物を併用することにより、高分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを調製でき、応力緩和性に優れた粘着剤層が得られ、通常使用されるイソシアネート系架橋剤のみを使用した粘着剤層と比較して、初期のセパレータ剥離力、及び、経時でのセパレータ剥離力の上昇抑えることができ、好ましい。
【0070】
前記イソシアネート系架橋剤としては、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を用いることができる。たとえば、一般にウレタン化反応に用いられる公知の脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が用いられる。
【0071】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0072】
前記脂環族イソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソソアネート、2,6−トリレンジイソソアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0074】
また、前記イソシアネート系架橋剤としては、前記ジイソシアネートの多量体(2量体、3量体、5量体等)、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させたウレタン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、アルファネート変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。
【0075】
前記イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、商品名「ミリオネートMT」「ミリオネートMTL」「ミリオネートMR−200」「ミリオネートMR−400」「コロネートL」「コロネートHL」「コロネートHX」[以上、日本ポリウレタン工業社製];商品名「タケネートD−110N」「タケネートD−120N」「タケネートD−140N」「タケネートD−160N」「タケネートD−165N」「タケネートD−170HN」「タケネートD−178N」「タケネート500」「タケネート600」[以上、三井化学社製];等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0076】
前記イソシアネート系架橋剤としては、脂肪族ポリイソシアネートおよびその変性体である脂肪族ポリイソシアネート系化合物が好ましい。脂肪族ポリイソシアネート系化合物は、他のイソシアネート系架橋剤に比べて、架橋構造が柔軟性に富み、光学フィルムの膨張/収縮に伴う応力を緩和しやすく、耐久性試験で剥がれが発生をしにくい。脂肪族ポリイソシアネート系化合物としては、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその変性体が好ましい。
【0077】
前記架橋剤の使用量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、さらには0.02〜2重量部が好ましく、特に0.05〜1重量部が好ましい。なお、架橋剤が0.01重量部未満では、粘着剤層が架橋不足になり、耐久性や粘着特性を満足できないおそれがあり、一方、3重量部より多いと、粘着剤層が硬くなりすぎて耐久性が低下する傾向が見られる。
【0078】
本発明の粘着剤組成物には、シランカップリング剤を含有することできる。シランカップリング剤を用いることにより、耐久性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、具体的には、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。前記例示のシランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0079】
また、シランカップリング剤として、分子内に複数のアルコキシシリル基を有するものを用いることもできる。具体的には、たとえば、信越化学社製X−41−1053、X−41−1059A、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810、X−40−2651などが挙げられる。これらの分子内に複数のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、揮発しにくく、アルコキシシリル基を複数有することから耐久性向上に効果的であり好ましい。特に、粘着剤層付偏光フィルムの被着体が、ガラスに比べてアルコキシシリル基が反応しにくい透明導電層(例えば、ITO等)の場合にも耐久性が好適である。また、分子内に複数のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、分子内にエポキシ基を有するものが好ましく、エポキシ基は分子内に複数有することがさらに好ましい。分子内に複数のアルコキシシリル基を有し、かつエポキシ基を有するシランカップリング剤は、被着体が透明導電層(例えば、ITO等)の場合にも耐久性が良好な傾向がある。分子内に複数のアルコキシシリル基を有し、かつエポキシ基を有するシランカップリング剤の具体例としては、信越化学社製X−41−1053、X−41−1059A、X−41−1056が挙げられ、特に、エポキシ基含有量の多い、信越化学社製X−41−1056が好ましい。
【0080】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.001〜5重量部が好ましく、さらには0.01〜1重量部が好ましく、さらには0.02〜1重量部がより好ましく、さらには0.05〜0.6重量部が好ましい。前記範囲内であれば、耐久性を向上させ、ガラスおよび透明導電層への接着力を適度に保持する量となり、好ましい。
【0081】
さらに、前記粘着剤組成物には、特性を損なわない範囲内において、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、帯電防止剤(イオン液体やアルカリ金属塩などのイオン性化合物)、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。これら添加剤は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して5重量部以下、さらには3重量部以下、さらには1重量部以下の範囲で用いるのが好ましい。
【0082】
<粘着剤層>
本発明の偏光フィルム用粘着剤層(単に「粘着剤層」という場合がある。)の製造方法は、前記偏光フィルム用粘着剤組成物を調製する工程と、前記偏光フィルム用粘着剤組成物を支持体上に塗布した後、加熱処理又は活性エネルギー線照射処理し、偏光フィルム用粘着剤層を形成する工程と、を含むことが好ましい。
【0083】
前記粘着剤組成物により、粘着剤層を形成するが、粘着剤層の形成にあたっては、架橋剤全体の使用量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮することが好ましい。
【0084】
使用する架橋剤によって、架橋処理温度や架橋処理時間は、調整が可能である。
【0085】
架橋処理温度としては、170℃以下であることが好ましい。特に、加熱処理により粘着剤層を形成する場合は、架橋処理温度(加熱処理における加熱温度)としては、100〜170℃がより好ましく、120〜170℃が更に好ましく、130〜160℃が特に好ましい。前記範囲内であれば、ポリマーの分解を抑制しつつ、粘着剤層が得られるため、好ましい。なお、加熱温度が高すぎると、支持体(セパレータ)の熱収縮によって、貼付する光学フィルム(例えば、偏光フィルム)に生じるカールが大きくなり、好ましくない。
【0086】
架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0087】
また、活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好ましい。また、上記活性エネルギー線を照射するための装置(活性エネルギー線照射装置)としては、特に限定されず、公知慣用の活性エネルギー線照射装置を使用できる。例えば、紫外線発生用ランプ(UVランプ)、EB(電子線)照射装置などが挙げられる。上記UVランプとしては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプなどの高圧放電ランプや、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、捕虫用蛍光ランプなどの低圧放電ランプなどが好ましい。
【0088】
また、架橋処理時間(加熱時間、又は活性エネルギーの照射時間)に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常0.2〜20分間程度であり、0.5〜10分間程度であることが好ましい。
【0089】
<粘着剤層付偏光フィルム>
本発明において、粘着剤層付偏光フィルムとしては、偏光フィルムの少なくとも片面に、前記粘着剤層を形成したものであることが好ましい。さらに、前記粘着剤層は、前記偏光フィルムだけでなく、偏光フィルムに貼付されて使用できるものであり、前記光学フィルムとしては、前記偏光子を含む偏光フィルム(偏光板)に加えて、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが、接着剤や粘着剤層を介して、積層されているものを用いることができる。なお、本発明においては、偏光子は、保護フィルムや、その他の光学フィルムと、接着剤や粘着剤(層)を介して貼り合せられ、積層フィルムとして使用されるものを指し、偏光子を含む積層フィルムに使用される粘着剤組成物(粘着剤)や粘着剤層を、偏光フィルム用粘着剤組成物、偏光フィルム用粘着剤層と呼ぶ。
【0090】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を支持体(例えば、剥離処理したセパレータ等)に塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を形成した後に光学フィルム(例えば、偏光フィルム)に転写する方法、または光学フィルムに前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を光学フィルムに形成する方法等により作製される。なお、粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0091】
<支持体(セパレータ)>
前記支持体(例えば、剥離処理したセパレータ等)としては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。
【0092】
また、光学フィルムの表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理等の各種易接着処理を施したりした後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0093】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0094】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0095】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0096】
前記支持体(セパレータ)の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等を挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0097】
前記プラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0098】
前記支持体(セパレータ)の厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記支持体には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、前記支持体の表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0099】
なお、前記粘着剤層付偏光フィルム(更には、偏光フィルムに加えて、その他光学フィルムを含む粘着剤層付光学フィルム)の作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着剤層付偏光フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0100】
<画像表示装置>
また、本発明において、前記粘着剤層付偏光フィルムを少なくとも1つ用いた画像表示装置とすることが好ましい。前記偏光フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、偏光子を含んだ偏光フィルム(偏光板)や偏光フィルムに加えて、その他光学フィルムを含んだものが挙げられる。前記偏光フィルムは、偏光子を含み、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを有するものを用いることができる(例えば、図1参照)。
【0101】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に80μm程度以下である。
【0102】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0103】
前記偏光子の厚みとしては、30μm以下であることが好ましい。薄型化の観点から言えば、前記厚みは25μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましく、15μm以下が特に好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため、加熱・加湿条件下においても、耐久性に優れ、発泡や剥がれが生じにくくなり、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
【0104】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51−069644号公報や特開2000−338329号公報や、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
【0105】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
【0106】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。透明保護フィルム中の前記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の前記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0107】
前記偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型、カチオン硬化型の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤またはラジカル硬化型接着剤が好適である。
【0108】
また、光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差フィルム(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは偏光子と共に、光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光フィルムに、実用に際して、前記粘着剤層などを用いて、積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0109】
偏光フィルムに前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置等の製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光フィルムと他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性等に応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0110】
本発明における粘着剤層付偏光フィルム(更には、偏光フィルムに加えて、その他光学フィルムを含む粘着剤層付光学フィルム)は、液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成等に好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着剤層付偏光フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により形成されるが、本発明においては本発明による粘着剤層付偏光フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型等の任意なタイプ等のものを用いうる。
【0111】
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着剤層付偏光フィルム(更には、偏光フィルムに加えて、その他光学フィルムを含む粘着剤層付光学フィルム)を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたもの等の適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による粘着剤層付偏光フィルムは液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルム(例えば、偏光フィルム)を設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散層、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散シート、バックライト等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0112】
以下に、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0113】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)の測定>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の多分散度(Mw/Mn)についても、同様に測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:10mM-リン酸/テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0114】
<偏光フィルム(偏光板)の作製>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ28μmの偏光子を得た。当該偏光子の両面に、けん化処理した厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光フィルム(偏光板)を作製した。
【0115】
<実施例1>
((メタ)アクリル系ポリマー(A1)の調製:リビングラジカル重合)
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル0.035部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0025部、酢酸エチル1部を投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。
続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、ブチルアクリレート95部、4−ヒドロキシブチルアクリレート5部と、重合溶媒として酢酸エチル50部を投入し、反応容器内の液温を60℃付近に保って20時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)180万、Mw/Mn=2.00の(メタ)アクリル系ポリマー(A1) の溶液を調製した。
【0116】
(粘着剤組成物の調製)
得られた前記(メタ)アクリル系ポリマー(A1)の溶液の固形分100部に対して、化合物(B)に相当する過酸化物系架橋剤(日本油脂社製のナイパーBMT、ベンゾイルパーオキシド)0.1部、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製のタケネートD−160N、トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート)0.3部、シランカップリング剤(信越化学社製のX−41−1810)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0117】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
次いで、前記アクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム:三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、MRF38、厚み:38μm)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、155℃で1分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成した。次いで、作製した前記偏光フィルムに、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、セパレータフィルムを貼付した状態の粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0118】
((メタ)アクリル系ポリマー(A2)の調製:リビングラジカル重合)
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル0.07部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.005部、酢酸エチル1部を投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。
続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、ブチルアクリレート95部、4−ヒドロキシブチルアクリレート5部と、重合溶媒として酢酸エチル50部を投入し、反応容器内の液温を60℃付近に保って20時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)84万、Mw/Mn=1.60の(メタ)アクリル系ポリマー(A2) の溶液を調製した。
【0119】
((メタ)アクリル系ポリマー(A3)の調製:リビングラジカル重合)
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル0.035部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0025部、酢酸エチル1部を投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。
続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、ブチルアクリレート99部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1部と、重合溶媒として酢酸エチル50部を投入し、反応容器内の液温を60℃付近に保って20時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)130万、Mw/Mn=1.75の(メタ)アクリル系ポリマー(A3)の溶液を調製した。
【0120】
((メタ)アクリル系ポリマー(A4)の調製)
撹持羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル85部、トルエン15部と共に仕込み、緩やかに撹枠しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って6時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)179万、Mw/Mn=4.15の(メタ)アクリル系ポリマー(A4)の溶液を調製した。
【0121】
((メタ)アクリル系ポリマー(A5)の調製:リビングラジカル重合)
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル0.035部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0025部、酢酸エチル1部を投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。
続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、ブチルアクリレート81部、フェノキシエチルアクリレート16部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3部と、重合溶媒として酢酸エチル50部を投入し、反応容器内の液温を60℃付近に保って20時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)137万、Mw/Mn=2.12の(メタ)アクリル系ポリマー(A5)の溶液を調製した。
【0122】
((メタ)アクリル系ポリマー(A6)の調製:リビングラジカル重合)
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル0.035部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0025部、酢酸エチル1部を投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。
続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、ブチルアクリレート76部、フェノキシエチルアクリレート16部、N−ビニルピロリドン7部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1部と、重合溶媒として酢酸エチル50部を投入し、反応容器内の液温を60℃付近に保って20時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)124万、Mw/Mn=1.74の(メタ)アクリル系ポリマー(A6)の溶液を調製した。
【0123】
<実施例2〜5、7〜8、及び、比較例1〜2>
実施例2〜5、7〜8、及び比較例1、2においては、実施例1と同様に、表1に示すように、モノマーや化合物(B)などの種類や配合量、使用の有無を変え、表1に示すポリマー物性の(メタ)アクリル系ポリマー(A)、及び、アクリル系粘着剤組成物溶液を調製した。また、前記アクリル系粘着剤組成物溶液を用いて、実施例1と同様に、セパレータフィルムを貼付した状態の粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0124】
<実施例6>
(粘着剤組成物の調製)
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A1)の溶液の固形分100部に対して、化合物(B)に相当するベンゾフェノン系架橋剤(和光純薬社製のベンゾフェノン)0.04部、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製のタケネートD−160N、トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート)0.1部、シランカップリング剤(信越化学社製のX−41−1810)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0125】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
次いで、前記アクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム:三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、MRF38、厚み:38μm)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、90℃で1分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成した後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射した。次いで、作製した前記偏光フィルムに、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、セパレータフィルムを貼付した状態の粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0126】
前記実施例および比較例で得られた、セパレータフィルムを貼付した状態の粘着剤層付偏光フィルムを用いて、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0127】
<セパレータ剥離力の測定>
作製した粘着剤層表面にセパレータフィルムを貼付した状態の粘着剤層付偏光フィルムから、長さ100mm、幅50mmのシート片を切り出し、これを、23℃、50%RHの雰囲気下で、1時間静置し、サンプルとした。
引張試験機(装置名「オートグラフ AG−IS」、株式会社島津製作所製)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、サンプルからセパレータフィルムを引きはがし、180°引き剥がし接着強さ(N/50mm)を測定した。そして、この180°引き剥がし接着強さを、初期のセパレータ剥離力(N/50mm)とした。
また、粘着剤層付偏光フィルムを60℃で500時間静置後、23℃、50%RHの雰囲気下で、初期のセパレータ剥離力と同様に、180°引き剥がし接着強さ(N/50mm)を測定した。そして、この180°引き剥がし接着強さを、加熱経過後のセパレータ剥離力(N/50mm)とした。
【0128】
前記セパレータ剥離力としては、初期、及び、加熱経過後、いずれにおいても、好ましくは、2N/50mm以下が好ましく、0.01〜1N/50mmがより好ましく、0.05〜0.5N/50mmが更に好ましく、0.05〜0.2N/50mmが特に好ましく、0.05〜0.15N/50mmが最も好ましい。前記セパレータ剥離力が、前記範囲内であれば、セパレータを剥離する作業において剥離不良を生じないため、好ましい。
【0129】
<ITOガラスでの耐久性試験>
粘着剤層付偏光フィルムを37インチサイズに切断したものをサンプルとした。当該サンプルを、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、EG−XG)に非晶性ITO層を形成し、これを被着体として、前記粘着剤層付偏光フィルムをラミネーターを用いて非晶性ITO層表面に貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、前記サンプルを完全に被着体に密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、95℃(高温加熱)、65℃/95%RH(加熱・加湿)の各雰囲気下で、500時間処理を施した後、偏光フィルムと非晶性ITO層の間の外観を下記基準で目視し、対ITOガラス耐久性を評価した。なお、前記ITO層はスパッタリングで形成した。ITOの組成は、Sn比率3重量%であり、サンプルの貼り合せ前に、それぞれ140℃×60分の加熱工程を実施した。なお、ITOのSn比率は、Sn原子の重量/(Sn原子の重量+In原子の重量)から算出した。
(評価基準)
◎:発泡、剥がれ等の外観上の変化が全くなし。
○:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし。
△:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0130】
【表1】
【0131】
表1における略語等について以下に説明する。
BA:ブチルアクリレート
HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
NVP:N−ビニルピロリドン
イソシアネート:三井化学社製のタケネートD−160N(トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、架橋剤)
ナイパーBMT:日本油脂社製のナイパーBMT(ジベンゾイルパーオキシド、及び、そのメチル誘導体の混合物、化合物(B))
ベンゾフェノン:和光純薬工業社製、(化合物(B))
シランカップリング剤:信越化学社製のX−41−1810(チオール基含有シリケートオリゴマー)
【0132】
【表2】

【0133】
表2の評価結果より、実施例において、熱又は活性エネルギー線によりラジカルを発生する化合物(B)を使用することにより、初期のセパレータ剥離力に加え、経時でのセパレータ剥離力の上昇を抑えられることが確認された。また、実施例において、高温加熱条件下、及び、加熱・加湿条件下で長時間経過後においても、実用上問題ないレベルの耐久性(耐熱性)が得られることも確認できた。一方、比較例1においては、前記化合物(B)を使用せず、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤のみを使用した場合、加熱条件下で長時間曝された場合、セパレータ剥離力が非常に上昇し更に、高温加熱条件下で、長時間曝された場合に、耐久性(耐熱性)に劣ることが確認された。また、比較例2においては、有機テルル化合物を使用せず、通常のラジカル重合でポリマーを調製したため、ポリマーの多分散度(Mw/Mn)が大きくなり、加熱条件下での耐久性に劣ることが確認された。
【符号の説明】
【0134】
1 粘着剤層
2 セパレータ
3 偏光子
4、4´保護フィルム
5 偏光フィルム(偏光板)
10 粘着剤層付偏光フィルム
図1