(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
前記雄端子被覆体には、係合部が設けられ、前記雌型コネクタには、前記フード部から離脱する方向で前記係合部と係合し、前記フード部からの離脱動作によって前記雄端子被覆体を前記保護位置へ向けて変位させる被係合部が設けられているとよい。
【0011】
雌型コネクタ及び雄型コネクタの離脱後、雄ハウジングから雄端子支持体及び雄端子被覆体を取り出す際に、雄端子被覆体が露出位置に置かれたままであると、雄タブが雄ハウジングなどと干渉する懸念がある。また、雄端子支持体及び雄端子被覆体の取り出し後、
雄端子被覆体を保護位置に変位させる作業を行うのでは、作業負担が大きいという問題もある。その点、上記構成によれば、雌型コネクタ及び雄型コネクタの離脱時に、雌型コネクタのフード部からの離脱動作によって係合部と係合した被係合部が雄端子被覆体を保護位置へ向けて変位させるため、雄端子支持体及び雄端子被覆体が雄ハウジングから取り出されると、雄端子被覆体が自動的に保護位置に戻ることができ、雄端子被覆体を保護位置に変位させる特別な作業や治具を省略することができるとともに、雄タブを迅速に保護することができる。
【0012】
前記雄端子支持体及び前記雄端子被覆体の一方に、撓み変形可能なセミロック部が設けられ、他方に、前記露出位置において前記セミロック部の干渉部に係止され、前記雄端子被覆体の前記保護位置への相対変位を規制する規制部が設けられ、前記規制部は、前記雄端子被覆体が前記保護位置にあるときに前記干渉部から離間して配置されるとよい。
【0013】
これによれば、雄端子被覆体が露出位置にあるときに、雄端子支持体及び雄端子被覆体が不用意に相対スライドするのを防止することができる。また、雄端子被覆体が保護位置にあるときには、規制部が干渉部から離間して配置されるため、雄端子被覆体が相対スライドする際に、雄端子支持体と雄端子被覆体との間に発生する摩擦抵抗が過大になるのを回避することができ、相対スライドの円滑性を担保することができる。
【0014】
<実施例1>
本発明の実施例1を
図1〜
図18によって説明する。実施例1は、自動車に搭載される通信システムを構成するコネクタを例示するものであって、
図2に示すように、互いに嵌合可能な雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10を備えている。
【0015】
雄型コネクタ10は、
図5及び
図6に示すように、雄端子金具20、雄端子支持体30、雄端子被覆体50及び雄ハウジング70を備えている。雄端子金具20は、雄端子支持体30に支持される。雄端子支持体30及び雄端子被覆体50は、前後方向に相対スライド可能に組み付けられる。組み付けられた雄端子支持体30及び雄端子被覆体50は、雄ハウジング70に挿入され、前後方向に沿って収容される。以下、それぞれの構造を具体的に説明する。
【0016】
雄端子金具20は導電性の金属材を曲げ加工などして一体に成形され、
図5に示すように、筒状の本体部分21から前方へ細長く突出する雄タブ22を有し、本体部分21の後方においてケーブル90の端末部に接続される。ケーブル90は、二本の電線91を対で撚り合わせたツイストペア線として構成される。二本の電線91は、被覆92が除去される部分で撚り戻され、撚り戻された部分に雄端子金具20が接続される。
【0017】
雄端子支持体30は合成樹脂製の誘電体であって、
図7及び
図8に示すように、前後方向に長い矩形板状の支持本体31を有している。
図7に示すように、支持本体31の上面の前部には、ハウジングロック部32が突設され、ハウジングロック部32の左右両側で且つ後方に一対の前進規制部33が突設されている。なお、説明中の上下方向の基準は、雄端子支持体30及び雄端子被覆体50が雄ハウジング70に収容された
図6の状態を基準とする。
【0018】
図8に示すように、支持本体31の下面には、左右両端部に一対のレール部34が前後方向に延出して設けられ、左右中央部に仕切部35が前後方向に延出して設けられている。雄端子支持体30には、各レール部34、仕切部35及び支持本体31の間に、左右一対の雄端子挿入空間36が区画されている。
【0019】
図5に示すように、雄端子支持体30の各雄端子挿入空間36には、それぞれ雄端子金具20が挿入されて収容される。
図8に示すように、支持本体31の下面には、各雄端子挿入空間36に収容された雄端子金具20の本体部分21を抜け止めする端子抜止部37が突設され、さらに、各雄端子金具20の雄タブ22を支持可能な支持片38が突設されている。
【0020】
雄端子支持体30には、支持本体31及び各レール部34の間で且つ仕切部35の後方に、1つのケーブル端挿入空間39が区画されている。ケーブル端挿入空間39には、ケーブル90の被覆92の端部が収容される。各雄端子挿入空間36はケーブル端挿入空間39の直前方に位置しているため、ケーブル90の被覆92の端部から雄端子金具20に接続されるまでの撚り戻し部分の長さが短くなり、通信性能の向上を図ることができるようになっている。なお、各雄端子挿入空間36に挿入された雄端子金具20は、雄端子支持体30に実質的に固定され、雄端子支持体30と一体に挙動するようになっている。
【0021】
図8に示すように、各レール部34の下端前部には、矩形板状の一対の規制部41が下方に突出して設けられている。さらに、各レール部34の左右外面には断面凹状のガイド溝42が前後方向に延出して設けられている。
【0022】
雄端子被覆体50は合成樹脂製の誘電体であって、
図9及び
図10に示すように、前後方向に長い矩形板状の被覆本体51を有している。
図9に示すように、被覆本体51の左右両端部には、前後方向に細長く延出する一対の通し溝52が貫通して設けられている。各通し溝52の左右外端は、被覆本体51における一対のセミロック部53によって区画されている。各セミロック部53は、前後方向に細長く延出する両持ち梁状をなし、前端寄りの位置に、通し溝52の溝幅を狭めるようにせり出す干渉部54を有している。各セミロック部53は、規制部41が干渉部54と干渉したときに、外側へ弓なりに撓み変形して、通し溝52内における規制部41の相対変位を許容する。
【0023】
各干渉部54の前面は、前後方向に対してテーパ状に傾斜し、各干渉部54の後面は、前後方向に対して略直角に配置される。各通し溝52における干渉部54を挟んだ前後両側の溝部分のうち、前側溝部分52Aは、後側溝部分52Bより前後長が十分に短くされ、干渉部54の前後長とほぼ同じ開口長に形成されている(
図14を参照)。
【0024】
図10に示すように、被覆本体51の上面には、左右両端部に一対の側壁部55が前後方向に延出して設けられ、左右中央部に隔壁部56が前後方向に延出して設けられ、且つ、前端部に、各側壁部55及び隔壁部56のそれぞれの前端に連なる前壁部57が左右方向に延出して設けられている。
【0025】
各側壁部55は、各セミロック部53と対応する部位が切り欠かれ、左右方向に関して各セミロック部53より外側に位置している。各セミロック部53は、各側壁部55の外面より内側に控えた空間に撓み変形することが可能とされている。各側壁部55の上端部には、ガイド部58が内側に突出して設けられている。
図4に示すように、各ガイド部58は、各ガイド溝42に進入して各ガイド溝42を摺動可能とされ、雄端子支持体30及び雄端子被覆体50の相対スライドを可能ならしめる。
【0026】
図10に示すように、雄端子被覆体50は、各側壁部55、隔壁部56、前壁部57及び被覆本体51の間に、左右一対の被覆空間59が区画されている。各被覆空間59には、それぞれ雄端子金具20が被覆して配置される。前壁部57には、各雄端子金具20の雄タブ22が貫通可能な左右一対のタブ挿通口61が貫通して設けられている。各タブ挿通口61には、上下方向に延出して前壁部57の上端に開口するスリット溝62が連通している。各スリット溝62は、各雄端子金具20の雄タブ22が各タブ挿通口61に導入される際の通路になるとともに、
図15に示すように、内側に雄端子支持体30の各支持片38が進入するようになっている。
【0027】
図10及び
図11に示すように、前壁部57の左右両端部には、一対の係合部63が前方に延出して設けられている。各係合部63は、前壁部57の前面に上下方向の略全長にわたって連なり、前壁部57の上下寸法(各側壁部55の上下寸法でもある)をもって延出する板片状のアーム部64と、アーム部64の前端部から内側に突出する爪状の掛止部65とを有している。各アーム部64の前部外面は、内向きにテーパ状に傾斜している。
【0028】
図12に示すように、各掛止部65の前面及び後面は、前後方向に対してテーパ状に傾斜している。各掛止部65の前側斜面は、各掛止部65の後側斜面よりも、前後方向に対する傾斜角度が小さくされ、且つ、前後方向に長く形成されている。また、
図15に示すように、各係合部63の前端上下部は、テーパ状に切り欠かれた形態とされている。
【0029】
続いて、雄ハウジング70について説明する。雄ハウジング70は合成樹脂製であって、
図5及び
図6に示すように、全体として前後方向に貫通する筒状をなし、収容部71と、収容部71に連設されて前方に突出するフード部72とを有している。
【0030】
収容部71は、前後方向に貫通する雄ユニット収容空間73を有している。
図6に示すように、収容部71の内壁上面(雄ユニット収容空間73の内壁上面)には、撓み変形可能なランス74が前方へ片持ち梁状に突出して設けられている。ランス74の前端部には、爪状の係止突起75が下向きに突出して設けられている。収容部71の下面側には、図示しない車体側のブラケットに取り付けるための取付部76が設けられている。
【0031】
フード部72は、収容部71よりも前後長が短く且つ径方向に一回り大きくされ、前後方向に貫通して雄ユニット収容空間73に連通する嵌合空間77を有している。
図6に示すように、フード部72の上壁内面の前端部には、爪状のロック部78が下向きに突出して設けられている。
【0032】
続いて、雌型コネクタ100について説明する。
図17に示すように、雌型コネクタ100は、雌端子金具120、雌端子支持体130、雌端子被覆体150及び雌ハウジング170を備えている。雌端子金具120は、雌端子金具120と同様、ケーブル190のツイストペア線からなる電線91の端部に対をなして接続されている。雌端子金具120は、雄端子金具20の雄タブ22を受容する筒状部分121を有し、筒状部分121の内側に雄タブ22と弾性的に接触する接触部分122を有している。
【0033】
雌端子支持体130及び雌端子被覆体150は、合成樹脂製の誘電体であって、基本構造は上述した雄端子支持体30及び雄端子被覆体50と同様である。雌端子支持体130は、各雌端子金具120を支持し、雌端子被覆体150は、各雌端子金具120を覆うように、雌端子支持体130に上方から組み付けられる。もっとも、雌端子支持体130及び雌端子被覆体150は、雄端子支持体30及び雄端子被覆体50と異なり、相対スライドする構造にはなっていない。
【0034】
図18に示すように、雌端子支持体130は、各雌端子金具120を前止め可能な前壁131を有している。前壁131には、各雄端子金具20の雄タブ22が貫通するタブ貫通口132が対をなして設けられている。前壁131の前面は、雌端子支持体130が後述する雌ユニット収容空間171に収容された状態で、雌ハウジング170の前端とほぼ同じ前後位置に上下方向に沿って配置され、
図3に示すように、雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10の嵌合過程で雄端子被覆体50を押圧する押圧面133として構成される。
【0035】
図18に示すように、雌端子被覆体150は、雌端子支持体130の上方を覆う上板部151と、雌端子支持体130の両側方を覆う一対の側板部152とを有している。各側板部152には、被係合部153が対をなして設けられている。各被係合部153は、各側板部152の前部において、上下方向に延出して上方に開口するノッチ溝状をなし、各側板部152を板厚方向に貫通する形態とされている。具体的には、各被係合部153は、各側板部152の内面から外面にかけて略テーパ状に拡開する断面形状をなし、後側斜面の前後方向に対する傾斜角度が前側斜面のそれより小さくされ、後側斜面が前側斜面より長くされている。端的には、各被係合部153は、各掛止部65に対応する断面形状を呈している(
図2及び
図3を参照)。
【0036】
雌ハウジング170は合成樹脂製であって、
図17に示すように、内側に、雌端子支持体130及び雌端子被覆体150を収容可能な雌ユニット収容空間171が前後方向に貫通して設けられている。雌ハウジング170の内壁両側面(雌ユニット収容空間171の内壁両側面)には、一対の凹部172が設けられている。各凹部172の内側は、後述する雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10の嵌合離脱過程で、各係合部63の撓み動作を許容する空間になっている。
【0037】
図16に示すように、雌ハウジング170には、上壁外面の前端部から後方へ延出する撓み変形可能なロックアーム173が設けられている。ロックアーム173には、ロック突起174が上方に突出して設けられ、ロック突起174の後方に解除操作部176が一段高く設けられている。また、雌ハウジング170には、解除操作部176の周囲を包囲するアーチ部175が設けられている。
【0038】
次に、本実施例1のコネクタの作用を説明する。
雄型コネクタ10の組み付けに際し、雄端子支持体30の各雄端子挿入空間36に雄端子金具20が収容されて保持される。続いて、雄端子被覆体50が雄端子支持体30に被せ付けられる。雄端子被覆体50の各側壁部55のガイド部58が雄端子支持体30の各レール部34のガイド溝42に弾性的に進入することにより、雄端子支持体30及び雄端子被覆体50が離脱規制状態に保持されるようになっている。
【0039】
また、
図12に示すように、雄端子支持体30の各規制部41が雄端子被覆体50の各通し溝52の後側溝部分52Bの後端側に進入し、各規制部41が各通し溝52の溝面との摩擦抵抗によって前後方向にほぼ移動規制状態に配置される。このとき、
図11に示すように、各雄端子金具20の雄タブ22は、雄端子支持体30の前方に突出するが、各雄タブ22の下方、両側方及び前方は、雄端子被覆体50における被覆本体51、両側壁部55及び前壁部57(以下、被覆部分66)によって覆われる。このようにして、雄端子被覆体50は、雄端子支持体30に対して雄タブ22を保護する保護位置に留め置かれる。雄端子被覆体50が保護位置にあるときには、各雄端子金具20の雄タブ22は被覆部分66によって外部異物から保護される。
【0040】
続いて、上記組み付けられた雄端子支持体30及び雄端子被覆体50(以下、雄ユニット80という)が雄ハウジング70の収容部71の雄ユニット収容空間73に挿入される。このとき、雄端子支持体30から後方へ延出するケーブル90を持ちながら、雄ユニット80が収容部71の雄ユニット収容空間73に押し込まれるとよい。各雄端子金具20の雄タブ22は保護位置にある雄端子被覆体50の被覆部分66によって覆われた状態にあるため、各雄タブ22に雄ハウジング70の壁面が直接干渉することがなく、各雄タブ22が折損、破損するのが防止される。
【0041】
雄ユニット80が雄ユニット収容空間73に挿入される過程で、雄端子支持体30のハウジングロック部32がランス74を押圧して撓み変形させ、さらに雄端子支持体30が雄ユニット収容空間73に正規挿入されるに伴い、ランス74が弾性復帰して、
図6に示すように、係止突起75がハウジングロック部32に係止可能に配置される。また、雄端子支持体30の各前進規制部33が雄ハウジング70に設けられた図示しないストッパに当接することで、雄端子支持体30のフード部72側への移行が規制される。これにより、雄端子支持体30が雄ユニット収容空間73に前後方向に移動規制状態に保持される。
【0042】
雄端子支持体30が雄ユニット収容空間73に正規挿入されると、雄端子被覆体50の被覆部分66がフード部72の嵌合空間77に突出して配置される。これにより、同じく嵌合空間77に突出する各雄タブ22が被覆部分66によって嵌合空間77においても保護される。なお、雄端子被覆体50は、雄ユニット収容空間73及び嵌合空間77において、雄端子支持体30に対して相対スライド可能に配置される。
【0043】
一方、
図18に示すように、雌端子金具120を支持した雌端子支持体130に雌端子被覆体150が被せ付けられ、この雌端子支持体130及び雌端子被覆体150(以下、雌ユニット180という)が雌ハウジング170の雌ユニット収容空間171に挿入されて保持されることにより、
図16に示す雌型コネクタ100が組み立てられる。
【0044】
雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10の嵌合に際し、雄型コネクタ10のフード部72の嵌合空間77に、雌型コネクタ100の雌ハウジング170が挿入される。
雌ハウジング170がフード部72の嵌合空間77に挿入される過程では、ロックアーム173の撓み動作が開始される前に、
図3に示すように、雌ユニット180の押圧面133が被覆部分66の前壁部57に対面状態で当接する。このとき、各係合部63の掛止部65が各被係合部153に弾性的に嵌まり込み、各係合部63が被覆部分66を抱持するようにして各被係合部153と係合する。これにより、雌ユニット180及び雄端子被覆体50が実質的に連結された状態になる。
【0045】
さらに、雌ハウジング170の挿入動作が進むと、雄端子被覆体50が、雌ユニット180の押圧面133に押圧されて後退し、雄端子支持体30に対して露出位置へ向けて相対変位する。このとき、雄端子支持体30の各規制部41は、雄端子被覆体50の各通し溝52の前側溝部分52Aへ向けて変位する。
【0046】
雌ハウジング170がフード部72の嵌合空間77に正規挿入されると、各規制部41が各干渉部54を弾性的に乗り越えて各通し溝52の前側溝部分52Aに嵌合状態で挿入され、雄端子被覆体50が雄端子支持体30に対して露出位置に至る(
図14を参照)。各規制部41は、露出位置において各通し溝52と各干渉部54との間に前後方向に移動規制状態に配置される。また、
図2に示すように、雌ユニット180の押圧面133は、雄端子支持体30を含む雄ユニット80に対面状態で当接する。さらに、各雄端子金具20の雄タブ22は、各タブ挿通口61から各タブ貫通口132を経て雌ユニット180内に進入し、各雌端子金具120の筒状部分121に挿入接続される。
【0047】
雄端子被覆体50の被覆部分66が雌ユニット180に押圧されて露出位置へ向けて変位する間、各係合部63と各被係合部153との係合状態(引っ掛け状態)は維持される一方、雌ハウジング170のロックアーム173はフード部72のロック部78と干渉して撓み変形させられる。その後、雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10が正規嵌合されるに伴い、ロックアーム173が弾性復帰し、ロック突起174がロック部78に係止可能に配置される。これにより、雌ハウジング170がフード部72に離脱規制された状態に保持される。このとき、
図1に示すように、ロックアーム173の解除操作部176及びアーチ部175は、フード部72の嵌合空間77に進入せず、外部に露出して配置される。
【0048】
一方、メンテナンスなどの事情により、収容部71の雄ユニット収容空間73から雄ユニット80を取り出す際には、まず、解除操作部176が上方から押圧され、ロックアーム173が係止解除方向に撓み変形させられる。こうしてロックアーム173とロック部78との係止が解除された状態で、雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10が互いに引き離される。
【0049】
雌型コネクタ100がフード部72の嵌合空間77から離脱する過程においては、
図3に示すように、各係合部63の掛止部65が各被係合部153に掛け止められ、雌型コネクタ100と雄端子被覆体50との連結状態が維持されることから、雄端子被覆体50が雌型コネクタ100に連動して保護位置へ向けて相対スライドする。雄端子被覆体50が相対スライドし始めたときに、各規制部41が各干渉部54の前面傾斜に沿って摺動することで各セミロック部53が撓み変形させられ、各規制部41が各通し溝52の後側溝部分52Bに移行し、それに伴い各セミロック部53が弾性復帰する。
【0050】
各規制部41が各干渉部54を乗り越える際にも各係合部63と各被係合部153との係合状態が維持され、雄端子被覆体50は雌型コネクタ100に追従して保護位置へ向けて変位する。この間、各規制部41は、各干渉部54と干渉することなく各通し溝52の後側溝部分52Bの後端側へ向けてスムーズに変位する。
【0051】
雌型コネクタ100がフード部72から離脱する過程で、各規制部41が各通し溝52の後側溝部分52Bの後端に当接する位置に至ると、雄端子被覆体50のそれ以上の追従変位が規制される(
図12を参照)。それに伴い、各係合部63が各被係合部153から離間する方向に撓み変形し、雌型コネクタ100と雄端子被覆体50との連結状態が解除される。
【0052】
その後、雌型コネクタ100がフード部72から引き離されると、雄端子被覆体50が雄端子支持体30に対して再び保護位置に戻った状態で雄ハウジング70内に配置されることになる。あとは、ランス74がハウジングロック部32との係止を解除する方向に撓み変形させられ、その状態で、雄端子金具20に接続されたケーブル90が後方へ引っ張られることにより、雄端子被覆体50が保護位置にある雄ユニット80がフード部72から取り出される。したがって、フード部72から雄ユニット80を取り出す際に、雄タブ22が雄ハウジング70などと干渉して折損、破損するのが防止される。また、フード部72から雄ユニット80を取り出した後、雄端子被覆体50を保護位置に変位させる作業を行わずに済み、作業負担が軽減される。
【0053】
以上説明したように、本実施例1によれば、雄端子被覆体50が保護位置にあるときに、雄タブ22が雄端子被覆体50の被覆部分66で保護されるため、雄タブ22が折損、破損するのを防止することができる。
【0054】
また、雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10の嵌合時には、雄端子被覆体50の被覆部分66が露出位置に退いて、雌端子金具120及び雄端子金具20が接続可能な状態になる。この場合に、雄端子被覆体50の被覆部分66は、雌型コネクタ100がフード部72の嵌合空間77に嵌合される過程で雌型コネクタ100の押圧面133に押圧されて露出位置へ向けて変位させられる。したがって、
雄端子被覆体50の露出位置への変位動作が雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10の嵌合動作に連動することになり、
雄端子被覆体50を露出位置に変位させる特別な作業や治具を省略することができ、作業性を向上させることができる。
【0055】
また、雄端子被覆体50には係合部63が設けられ、雌型コネクタ100にはフード部72から離脱する方向で係合部63と係合する被係合部153が設けられ、雌型コネクタ100及び雄型コネクタ10の離脱時に、雌型コネクタ100のフード部72からの離脱動作によって係合部63と係合した被係合部153が雄端子被覆体50を保護位置へ向けて変位させることができる。このため、雄ユニット80が雄ハウジング70から取り出されたときに、雄端子被覆体50が自動的に保護位置に戻ることができ、雄端子被覆体50を保護位置に変位させる特別な作業や治具を省略することもできるとともに、雄タブ22を迅速に保護することができる。
【0056】
さらに、雄端子被覆体50に撓み変形可能なセミロック部53が設けられ、雄端子支持体30に露出位置においてセミロック部53の干渉部54に係止され、雄端子被覆体50の保護位置への相対変位を規制する規制部41が設けられているため、雄端子被覆体50が露出位置にあるときに、雄端子支持体30及び雄端子被覆体50が不用意に相対スライドするのを防止することができる。
【0057】
さらにまた、規制部41が雄端子被覆体50が保護位置にあるときに干渉部54から離間して配置されるため、雄端子被覆体50が相対スライドする際に、雄端子支持体30と雄端子被覆体50との間に発生する摩擦抵抗が過大になるのを回避することができ、相対スライドの円滑性を担保することができる。
【0058】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、雄ハウジングに対し、雄端子支持体が上側に、雄端子被覆体が下側に配置されていたが、それとは逆に、雄ハウジングに対し、雄端子支持体が下側に、雄端子被覆体が上側に配置されるものであってもよい。また、雄端子支持体及び雄端子被覆体が雄ハウジングに対して左右両側に配置されるものであってもよい。これは、雌ハウジング、雌端子支持体及び雌端子被覆体についても同様のことが言える。
(2)押圧面は、雌型コネクタのうち、嵌合過程で雄端子被覆体に対向する位置に配置されていればよく、構造によっては、例えば、雌端子被覆体又は雌ハウジングに設けられていてもよい。
(3)上記実施例1では、セミロック部が雄端子被覆体に設けられ、規制部が雄端子支持体に設けられていたが、それとは逆に、セミロック部が雄端子支持体に設けられ、規制部が雄端子被覆体に設けられるものであってもよい。
(4)上記実施例1では、
雄端子被覆体の係合部がアーム部を有する撓み変形可能な形態になっていたが、それとは逆に、雌型コネクタの被係合部がアーム部を有する撓み可能な形態になっていてもよい。
(5)被係合部は、
雄端子被覆体の係合部と係合可能な位置に配置されていればよく、構造によっては、例えば、雌端子支持体又は雌ハウジングに設けられていてもよい。