【課題を解決するための手段】
【0011】
  本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、小径シールドトンネルの均等配置が可能で施工範囲も小さくて済みなおかつ経済性に優れた小径シールドの発進エリア構築方法を提供することを目的とする。
【0012】
  上記目的を達成するため、本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法は請求項1に記載したように、大断面トンネルが構築される構築予定領域の周縁に沿って該大断面トンネルの外殻の先受け構造体となる複数本の小径シールドトンネルを該大断面トンネルのトンネル軸線方向に延設する際に、該小径シールドトンネル構築のための小径シールドの発進エリアを構築する方法において、
  前記構築予定領域がシールドトンネルの拡幅予定領域、該シールドトンネルが本線トンネル又は該本線トンネルに分岐合流するランプトンネルであって、それらのうち、既に構築されている構築済トンネルのトンネル内空間と連通する形で導坑を構築し、
  該導坑を構築開始点として、前記本線トンネルが取り囲まれるように又は前記本線トンネル及び前記ランプトンネル若しくはそれらの構築範囲が取り囲まれるように
、前記導坑から推進方式で函体を環状に押し出すことで円筒体を構築し、
  該円筒体の内側に拡がる地山を掘削除去して環状空間を形成し、
  前記構築済トンネルのトンネル内空間と前記環状空間とを隔てるシールドセグメントを切除することにより、該トンネル内空間と該環状空間とが一体化されてなる発進エリアを構築する
小径シールドの発進エリア構築方法であって、
  前記導坑を前記構築済トンネルの軸線廻りに複数配置するとともに、該各導坑から前記函体をそれぞれ押し出すことで前記円筒体を所定の角度範囲ごとに分割構築するものである。
【0013】
  また、本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法は、前記函体を前記本線トンネル又は前記ランプトンネルのトンネル軸線に沿って複数列となるようにかつ各列が互いに隣接するように押し出して前記円筒体を構築するものである。
【0014】
  また、本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法は請求項3に記載したように、大断面トンネルが構築される構築予定領域の周縁に沿って該大断面トンネルの外殻の先受け構造体となる複数本の小径シールドトンネルを該大断面トンネルのトンネル軸線方向に延設する際に、該小径シールドトンネル構築のための小径シールドの発進エリアを構築する方法において、
  前記構築予定領域がシールドトンネルの拡幅予定領域、該シールドトンネルが本線トンネル又は該本線トンネルに分岐合流するランプトンネルであって、それらのうち、既に構築されている構築済トンネルのトンネル内空間と連通する形で導坑を構築し、
  該導坑を構築開始点として、前記本線トンネルが取り囲まれるように又は前記本線トンネル及び前記ランプトンネル若しくはそれらの構築範囲が取り囲まれるように、前記導坑から推進方式で函体を環状に押し出すことで円筒体を構築し
(但し、先導掘進機を用いる場合を除く)、
  該円筒体の内側に拡がる地山を掘削除去して環状空間を形成し、
  前記構築済トンネルのトンネル内空間と前記環状空間とを隔てるシールドセグメントを切除することにより、該トンネル内空間と該環状空間とが一体化されてなる発進エリアを構築するものである。
【0015】
  また、本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法は請求項4に記載したように、大断面トンネルが構築される構築予定領域の周縁に沿って該大断面トンネルの外殻の先受け構造体となる複数本の小径シールドトンネルを該大断面トンネルのトンネル軸線方向に延設する際に、該小径シールドトンネル構築のための小径シールドの発進エリアを構築する方法において、
  前記構築予定領域がシールドトンネルの拡幅予定領域、該シールドトンネルが本線トンネル又は該本線トンネルに分岐合流するランプトンネルであって、それらのうち、既に構築されている構築済トンネルのトンネル内空間と連通する形で導坑を構築し、
  該導坑を構築開始点として、前記本線トンネルが取り囲まれるように又は前記本線トンネル及び前記ランプトンネル若しくはそれらの構築範囲が取り囲まれるように円筒体を構築し、
  該円筒体の内側に拡がる地山を掘削除去して環状空間を形成し、
  前記構築済トンネルのトンネル内空間と前記環状空間とを隔てるシールドセグメントを切除することにより、該トンネル内空間と該環状空間とが一体化されてなる発進エリアを構築する
小径シールドの発進エリア構築方法であって、
  前記導坑を、前記構築済トンネルから掘削形成された立坑から掘削することで、該構築済トンネルのトンネル軸線にほぼ平行にかつ該本線トンネルから離隔した位置となるように構築するものである。
【0016】
  また、本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法は、前記導坑から推進方式で函体を環状に押し出すことで前記円筒体を構築するものである。
  また、本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法は、前記函体を前記本線トンネル又は前記ランプトンネルのトンネル軸線に沿って複数列となるようにかつ各列が互いに隣接するように押し出して前記円筒体を構築するものである。
  また、本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法は、前記導坑を前記構築済トンネルの軸線廻りに複数配置するとともに、該各導坑から前記函体をそれぞれ押し出すことで前記円筒体を所定の角度範囲ごとに分割構築するものである。
  また、本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法は、前記導坑を発進到達スペースとしたシールド工法によって前記円筒体を構築するものである。
【0017】
  本発明に係る小径シールドの発進エリア構築方法においては、まず、本線トンネル又はランプトンネルのうち、既に構築されている構築済トンネルのトンネル内空間と連通する形で、換言すれば構築済トンネルのシールドセグメントを切り開いてそのトンネル内空間から掘り進める形で導坑を構築する。導坑は、構築済トンネルから離隔した位置であって、そのトンネル軸線にほぼ平行になるように構築される構成が典型例となる。
【0018】
  次に、導坑を構築開始点として、本線トンネルが取り囲まれるように又は本線トンネル及びランプトンネル若しくはそれらの構築範囲が取り囲まれるように円筒体を構築する。
【0019】
  円筒体の構築形態は、小径シールドを、ランプトンネルが設置されるトンネル区間から発進させるのか、それともランプトンネルが設置されないトンネル区間から発進させるのかによって、さらには本線トンネルやランプトンネルの施工状況に応じて、以下のように分類される。すなわち、
(a)  ランプトンネルが設置されない区間から発進させる場合には、本線トンネルが取り囲まれるように該本線トンネルを構築済トンネルとして導坑を構築する。
(b)  ランプトンネルが設置される区間から発進させる場合であって、本線トンネルのみが構築済である場合には、該本線トンネルを構築済トンネルとして、本線トンネルとランプトンネルの構築範囲とが取り囲まれるように導坑を構築する。
(c)  ランプトンネルが設置される区間から発進させる場合であって、ランプトンネルのみが構築済である場合には、該ランプトンネルを構築済トンネルとして、本線トンネルの構築範囲とランプトンネルとが取り囲まれるように導坑を構築する。
(d)  ランプトンネルが設置される区間から発進させる場合であって、本線トンネル、ランプトンネルともに構築済である場合には、それらのいずれかを構築済トンネルとして、本線トンネル及びランプトンネルが取り囲まれるように導坑を構築する。
【0020】
  次に、円筒体の内側に拡がる地山を掘削除去して環状空間を形成する。
【0021】
  環状空間を形成する具体例としては、地山強度が高い場合であれば、掘削後に該環状空間に露出することとなる地山位置、換言すれば円筒体の各開口端から構築済トンネルの外周面にそれぞれ延びる一対の環状平面近傍に必要に応じて薬液注入を行って止水性を予め確保し、その上で円筒体の内側に拡がる地山を上から下に向けて掘削しつつ、掘削が終了した箇所から順にその露出面にロックボルトの挿入及びコンクリートの吹付けを行えばよい。
【0022】
  一方、地山強度が低い場合には、必要に応じて同様に薬液注入で止水性を予め確保した上、円筒体の内側に拡がる地山を上から下に向けて掘削しつつ、掘削が終了した箇所からRC躯体を逆巻きで順次構築することで環状空間の形成が可能である。
【0023】
  次に、構築済トンネルのトンネル内空間と環状空間とを隔てるシールドセグメントを切除することにより、該トンネル内空間と該環状空間とが一体化されてなる発進エリアを構築する。
【0024】
  なお、上述した(d)の場合には、本線トンネルとランプトンネルの両方でシールドトンネルの切り開きが行われる。
【0025】
  発進エリアが構築された後は、その環状空間に小径シールドを配置して構築済トンネルのトンネル軸線方向に発進させるとともに、該小径シールドにより、本線トンネルとそれに分岐合流するランプトンネルとの分岐合流部の構築予定領域の周縁に沿って複数本の小径シールドトンネルを先受け構造体として構築し、次いで、該複数本の小径シールドトンネルのシールドセグメントを切り開きつつ、それらを貫通する形で周方向に連続する外殻を構築した後、その内側に拡がる地山を掘削除去して分岐合流部を構築すればよい。
【0026】
  本発明において小径シールドトンネルとは、大断面トンネルに対する相対的概念を表した表現であって、その径がシールド工法における当業者の認識に拘束されるものではなく、本発明の小径シールドトンネルとして、シールド工法分野で中口径と呼ばれる大きさ、例えばφ4m程度のシールドトンネルを用いる場合も本発明に包摂される。
【0027】
  円筒体は、導坑を構築開始点として構築される限り、どのような施工手順で構築するかは任意であるが、導坑から推進方式で函体を環状に押し出すいわゆる函体推進工法や、導坑を発進到達スペースとしたシールド工法が典型例となる。
【0028】
  ここで、函体推進工法の場合においては、たとえば横断面の縦横比が大きい矩形断面の函体を一列で環状に押し出して円筒体を構築することも可能であるが、この構成では、トンネル軸線方向に沿った発進エリアの内法寸法を一つの函体の幅で確保する必要が生じ、函体の製作が困難になる場合が想定される。
【0029】
  かかる場合には、函体を構築済トンネルのトンネル軸線に沿って複数列となるようにかつ各列が互いに隣接するように押し出して円筒体を構築するようにすればよい。
【0030】
  この構成によれば、上述した発進エリアの内法寸法を複数個の函体の全幅で確保すれば足りるため、函体の製作が容易になるとともに、その結果として、小径シールドを余裕をもって発進させることも可能となる。
【0031】
  また、導坑を構築済トンネルの軸線廻りに複数配置するとともに、該各導坑から函体をそれぞれ押し出すことで円筒体を所定の角度範囲ごと、たとえば120゜ごとに分割構築するようにすれば、推進方式による円筒体の構築を合理的に行うことが可能となる。