(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、光重合性化合物(C)と、エポキシ化合物(D)と、を含有する。以下、感光性樹脂組成物に含まれる各成分について、詳しく説明する。
【0013】
1.カルボキシル基含有樹脂(A)
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A−1)と、カルボキシル基含有樹脂(A−2)と、を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a11)と、不飽和カルボン酸(a12)及び多塩基酸(a13)との反応物である。カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、フェノールノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a21)と不飽和カルボン酸(a22)との反応物である中間体と、多塩基酸無水物(a23)との反応物である。
【0014】
感光性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A−1)を含有することによって、感光性樹脂組成物に優れたアルカリ現像性を付与されうるとともに、感光性樹脂組成物から形成されるソルダーレジスト層に、優れた電気絶縁信頼性と、PCT耐性とが、付与されうる。さらに、感光性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A−2)を含有することによって、感光性樹脂組成物の十分なUV感度を確保でき、白化耐性が付与されうる。
【0015】
このように、本実施形態の感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A−1)及びカルボキシル基含有樹脂(A−2)の両方を含有することによって、十分なアルカリ現像性とUV感度とを有することができるとともに、この感光性樹脂組成物から作製されるソルダーレジスト層に優れた電気絶縁信頼性と、PCT耐性と、白化耐性と、を付与できる。
【0016】
感光性樹脂組成物の固形分量に対するカルボキシル基含有樹脂(A)の割合は、例えば20〜60重量%の範囲内であり、好ましくは25〜55重量%の範囲内である。
【0017】
なお、カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A−1)及びカルボキシル基含有樹脂(A−2)のみを含有してもよく、カルボキシル基含有樹脂(A−1)及びカルボキシル基含有樹脂(A−2)に加えて、これら以外のカルボキシル基含有樹脂を含有してもよい。
【0018】
1−1.カルボキシル基含有樹脂(A−1)
上述の通り、カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a11)と、不飽和カルボン酸(a12)及び多塩基酸(a13)との反応物である。このカルボキシル基含有樹脂(A−1)は、エポキシ樹脂(a11)のエポキシ基のうちの一部に不飽和カルボン酸(a12)が付加し、エポキシ基のうちの別の一部に多塩基酸(a13)が付加した構造を有する。
【0019】
エポキシ樹脂(a11)は、例えば下記式(1)に示す構造を有する。式(1)中のXは二価の炭化水素基であり、Rは水素又はアルキル基である。エポキシ樹脂(a11)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、例えば式(1)中のR及びXがそれぞれメチル基及びメチレン基である構造を有する。フェノールノボラック型エポキシ樹脂は、例えば式(1)中のR及びXがそれぞれ水素及びメチレン基である構造を有する。ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂は、例えば式(1)中のR及びXがそれぞれ水素及びビフェニル基である構造を有していてもよく、R及びXがそれぞれ水素及びビフェニル基とその両端にそれぞれ接続された二つのメチレン基からなる構造を有していてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂(a11)は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とビフェニルノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することがより好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含有することが更に好ましい。
【0022】
なお、エポキシ樹脂(a11)は、上記式(1)に示す構造を有する樹脂に限定されず、例えば、シクロペンタジエン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノール骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0023】
不飽和カルボン酸(a12)に含まれる成分の例は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物及びエチレン性不飽和基を複数有する化合物を含む。エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及びω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレートを含む。エチレン性不飽和基を複数有する化合物の例は、ヒドロキシル基を有する多官能のアクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物、及びヒドロキシル基を有する多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含む。より具体的には、エチレン性不飽和基を複数有する化合物の例は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートを含む。不飽和カルボン酸(a12)は、これらの成分のうち1種又は2種以上を含有できる。特に不飽和カルボン酸(a12)は、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される一種以上の成分を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される湿潤塗膜のベタ付きが充分に抑制されると共に、ソルダーレジスト層の耐メッキ性、はんだ耐熱性が向上する。
【0024】
多塩基酸(a13)は、ポリカルボン酸であることが好ましく、ジカルボン酸であることがより好ましい。多塩基酸(a13)に含まれる成分の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メタントリカルボン酸、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸を含む。多塩基酸(a13)は、これらの成分のうち1種又は2種以上を含有できる。特に多塩基酸(a13)は、マロン酸、グルタル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸、及びフタル酸からなる群から選択される一種以上の成分を含むことが好ましく、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸及びフタル酸からなる群から選択される一種以上の成分を含むことがより好ましい。
【0025】
カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、例えば以下の方法によって製造されうる。
【0026】
まず、エポキシ樹脂(a11)に不飽和カルボン酸(a12)を反応させる。これにより、下記式(2)に示すように、エポキシ樹脂(a11)のエポキシ基のうち、一部に不飽和カルボン酸(a12)が付加して、第一の中間体が生成する。このため、第一の中間体は、下記式(3)に示す構造と、未反応のエポキシ基と、を有する。第一の中間体が下記式(3)に示す構造を有するため、第一の中間体は、側鎖に2級の水酸基を有する。下記式(2)の付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0029】
上記式(2)、(3)中のXは不飽和カルボン酸残基を示す。
【0030】
次に、第一の中間体と多塩基酸(a13)とを反応させる。これにより、下記式(4)に示すように、第一の中間体が有する未反応のエポキシ基に、多塩基酸(a13)が付加して、カルボキシル基含有樹脂(A−1)が生成する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、下記式(5)に示す構造を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、側鎖に2級の水酸基を有するとともに、側鎖の末端にカルボキシル基を有する。
【0033】
式(4)、(5)中のYは多塩基酸残基を示す。
【0034】
なお、第一の中間体と多塩基酸(a13)との反応時には、多塩基酸(a13)は、中間体の有する二級の水酸基ではなく、中間体の有する未反応のエポキシ基と優先的に反応する。そのため、カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、式(3)に示す構造と式(5)に示す構造とを有する。
【0035】
また、カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、上記のように式(3)に示す構造と式(5)に示す構造とを有する場合は、エポキシ樹脂(a11)に不飽和カルボン酸(a12)と同時に多塩基酸(a13)を反応させることにより製造されてもよく、あるいは、エポキシ樹脂(a11)に多塩基酸(a13)を反応させた後に不飽和カルボン酸(a12)を反応させることにより製造されてもよい。
【0036】
カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、上記式(3)に示す構造中の二級の水酸基と上記式(5)に示す構造中の側鎖の末端にあるカルボキシル基と、を備える。このことが、カルボキシル基含有樹脂(A−1)がアルカリ性溶液が現像液として用いられた場合に優れた現像性を発揮し得ることの理由であると推察される。またカルボキシル基含有樹脂(A−1)は、上記式(3)に示す構造中の側鎖の末端にあるエチレン性不飽和基と、上記式(5)に示す構造中の側鎖の末端にあるカルボキシル基とを有する。このことが、カルボキシル基が高い反応性を有することができることの理由であると推察される。そのため、感光性樹脂組成物から作製されるソルダーレジスト層は、高い電気絶縁信頼性と、高いPCT耐性とを有することができる。
【0037】
カルボキシル基含有樹脂(A−1)の合成時に使用される溶媒の例は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;及び石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤を含む。これらの有機溶剤のうち一種のみが使用されても、2種類以上が併用されてもよい。
【0038】
カルボキシル基含有樹脂(A−1)の合成時に使用される触媒の例は、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、及びナフテン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸やオクトエン酸のリチウム、クロム、ジルコニウム、カリウム、ナトリウム等の有機酸の金属塩を含む。これらの触媒のうち一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0039】
カルボキシル基含有樹脂(A−1)の合成時に使用される重合禁止剤の例は、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、及びフェノチアジンを含む。これらの重合禁止剤のうち一種のみが使用されても二種以上が併用されてもよい。
【0040】
エポキシ樹脂(a11)と不飽和カルボン酸(a12)を反応させる際のエポキシ樹脂(a11)のエポキシ基1molに対する不飽和カルボン酸(a12)の量は、0.2〜0.8molの範囲内であることが好ましく、0.3〜0.7molの範囲内であることがより好ましい。また、第一の中間体と多塩基酸(a13)を反応させる際のエポキシ樹脂(a11)のエポキシ基1molに対する多塩基酸(a13)の量は、0.2〜0.8molの範囲内であることが好ましく、0.3〜0.7molの範囲内であることがより好ましい。すなわち、エポキシ樹脂(a11)のエポキシ基1molに対して、不飽和カルボン酸(a12)が0.2〜0.8molの範囲内であり、多塩基酸(a13)が0.2〜0.8molの範囲内であることが好ましい。またエポキシ樹脂(a11)のエポキシ基1molに対して、不飽和カルボン酸(a12)が0.3〜0.7molの範囲内であり、多塩基酸(a13)が0.3〜0.7molの範囲内であることがより好ましい。この場合、感光性樹脂組成物のUV感度の向上と、アルカリ現像性の確保と、を容易に両立させることができる。
【0041】
カルボキシル基含有樹脂(A)全体に対するカルボキシル基含有樹脂(A−1)の割合は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上であり、特に好ましくは45質量%以上である。カルボキシル基含有樹脂(A)全体に対するカルボキシル基含有樹脂(A−1)の割合の上限は、特に限定されないが、例えば、92質量%以下であり、好ましくは84質量%以下である。
【0042】
1−2.カルボキシル基含有樹脂(A−2)
カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、フェノールノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a21)と不飽和カルボン酸(a22)との反応物である中間体(以下、第二の中間体ともいう)と、多塩基酸無水物(a23)との反応物である。
【0043】
フェノールノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a21)は、例えば上記式(1)中のXがメチレン基であり、Rが水素である構造を有する。
【0044】
不飽和カルボン酸(a22)に含まれる成分の例は、上記の不飽和カルボン酸(a12)に含まれる成分の例と同じである。
【0045】
多塩基酸無水物(a23)に含まれる成分の例は、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族又は芳香族二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族四塩基酸二無水物、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族四塩基酸二無水物を含む。多塩基酸無水物(a23)は、これらの成分のうち1種又は2種以上を含有できる。
【0046】
カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、例えば以下の反応によって、製造される。
【0047】
まず、エポキシ樹脂(a21)と不飽和カルボン酸(a22)とを反応させる。これにより、下記式(6)に示すように、エポキシ樹脂(a21)のエポキシ基に、不飽和カルボン酸(a22)が付加し、第二の中間体が生成する。このため、第二の中間体は、下記式(7)に示す構造と、未反応のエポキシ基とを有する。なお、エポキシ基はすべて反応させてもよく、すなわち第二の中間体は未反応のエポキシ基を有さなくてもよい。第二の中間体は、下記式(7)に示す構造中の側鎖に2級の水酸基を有する。この付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0050】
式(6)、(7)中のXは不飽和カルボン酸残基を示す。
【0051】
次に、第二の中間体と多塩基酸無水物(a23)とを反応させる。これにより、下記式(8)に示すように、第二の中間体が有する二級の水酸基と、多塩基酸無水物(a23)とのエステル化反応により、二級の水酸基と多塩基酸無水物(a23)とのエステル結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A−2)が生成する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、下記式(9)に示す構造を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、式(9)に示す構造中の側鎖にカルボキシル基を有する。
【0052】
なお、第二の中間体が未反応のエポキシ基を有することがあるが、第二の中間体と多塩基酸無水物(a23)との反応時には、多塩基酸無水物(a23)は、エポキシ基ではなく二級の水酸基と優先的に反応する。これは、二級の水酸基とエポキシ基とが共存する場合、多塩基酸酸無水物(a23)は、エポキシ基とは非常に反応し難く、二級の水酸基とは非常に反応しやすいからである。
【0055】
式(8)及び(9)中、Aは不飽和カルボン酸残基を示し、Bは多塩基酸無水物残基を示す。なお、多塩基酸無水物が酸二無水物である場合には、多塩基酸無水物が2つの水酸基と反応することで架橋構造が形成されるとともに2つのカルボキシル基が生成する。
【0056】
カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、上記式(9)に示す構造中の側鎖にエチレン性不飽和結合とカルボキシル基とを有する。このカルボキシル基含有樹脂(A−2)は、ベンゼン環上に、側鎖以外にメチル基などの置換基を有しないため、立体障害が少ない。そのため、カルボキシル基含有樹脂(A−2)は感光性樹脂組成物のUV感度を高くすることができる。さらに、カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、重合することで3次元立体構造をとりやすいため、カルボキシル基含有樹脂(A−2)は感光性樹脂組成物のUV硬化により生成する硬化物の架橋密度を高くすることができ、高い白化耐性を有することができる。
【0057】
カルボキシル基含有樹脂(A−2)の合成時に使用される溶剤の例には、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;及び酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらの溶剤のうち一種のみが使用されても、二種類以上が併用されてもよい。
【0058】
カルボキシル基含有樹脂(A−2)の合成時に使用される重合禁止剤の例には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、及びフェノチアジンが含まれる。これらの重合禁止剤のうち一種のみが使用されても、二種以上が併用されてもよい。
【0059】
カルボキシル基含有樹脂(A−2)の合成時に使用される触媒の例には、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、及びトリフェニルホスフィン等のリン化合物が含まれる。これらの触媒のうち一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0060】
エポキシ樹脂(a21)と不飽和カルボン酸(a22)を反応させる際のエポキシ樹脂(a21)のエポキシ基1molに対する不飽和カルボン酸(a22)の量は、0.8〜1.2molの範囲内であることが好ましく、0.9〜1.1molの範囲内であることがより好ましい。また、第二の中間体と多塩基酸無水物(a23)を反応させる際のエポキシ樹脂(a21)のエポキシ基1molに対する多塩基酸無水物(a23)の量は、0.2〜0.8molの範囲内であることが好ましく、0.3〜0.7molの範囲内であることが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂(a21)のエポキシ基1molに対して、不飽和カルボン酸(a22)が0.8〜1.2molの範囲内であり、多塩基酸無水物(a23)が0.2〜0.8molの範囲内であることが好ましい。また、エポキシ樹脂(a21)のエポキシ基1molに対して、不飽和カルボン酸(a22)が0.9〜1.1molの範囲内であり、多塩基酸無水物(a23)が0.3〜0.7molの範囲内であることがより好ましい。この場合、感光性樹脂組成物のUV感度の向上と、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性の確保と、を容易に両立させることができる。
【0061】
カルボキシル基含有樹脂(A)全体に対するカルボキシル基含有樹脂(A−2)の割合は、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、さらに好ましくは16質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。カルボキシル基含有樹脂(A)全体に対するカルボキシル基含有樹脂樹脂(A−2)の割合の上限値は、特に限定されないが、例えば、85質量%以下であり、70質量%以下であることが好ましい。
【0062】
2.光重合開始剤(B)
光重合開始剤(B)は、紫外線又は電子線が照射されることで、ラジカル、カチオン、あるいはアニオン等を生成し、重合反応のきっかけになる化合物である。光重合開始剤(B)は、紫外線が照射されることで、ラジカルを生成する化合物であることが好ましい。光重合開始剤(B)は、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の窒素を含む開始剤;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4-メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のα-アミノアルキルフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−ホスフィネート等のモノアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;並びに、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン系光重合開始剤;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成されるソルダーレジスト層の絶縁信頼性を向上させることができるとともに、感光性樹脂組成物のUV感度を向上させることができる。特に光重合開始剤(B)が、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することがより好ましい。この場合、感光性樹脂組成物のUV感度を特に向上させることができる。
【0063】
カルボキシル基含有樹脂(A)に対する光重合開始剤(B)の割合は、好ましくは0.01〜50質量%の範囲内であり、より好ましくは0.1〜25質量%の範囲内であり、さらに好ましくは1〜20質量%の範囲内である。
【0064】
3.光重合性化合物(C)
光重合性化合物(C)は、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。光重合性化合物(C)は、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与できる。光重合性化合物(C)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0065】
光重合性化合物(C)は、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含有してもよい。この場合、樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上すると共に、樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート及びε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0066】
光重合性化合物(C)は、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有してもよい。この場合、樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10-オキサイド)との付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0067】
光重合性化合物(C)は、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させた後にエチレン性不飽和基を付加することで得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。
【0068】
カルボキシル基含有樹脂(A)に対する光重合性化合物(C)の割合は、好ましくは5〜50質量%の範囲内であり、より好ましくは7〜40質量%の範囲内であり、さらに好ましくは9〜35質量%の範囲内である。
【0069】
4.エポキシ化合物(D)
エポキシ化合物(D)は、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。エポキシ化合物(D)は、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有することが好ましく、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有することも好ましい。エポキシ化合物(D)は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物であってもよい。エポキシ化合物(D)の種類は特に限定されない。エポキシ化合物(D)は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、及び前記以外のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0070】
本実施形態では、エポキシ化合物(D)が結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜のアルカリ性水溶液による現像性を向上させることができ、感光性樹脂組成物をアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ水溶液で現像することができる。結晶性エポキシ樹脂の例には、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX−4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR−1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として式(7)に示す構造を有するエポキシ樹脂)が含まれる。
【0071】
カルボキシル基含有樹脂(A)に対するエポキシ化合物(D)の割合は、好ましくは3〜70質量%の範囲内であり、より好ましくは5〜60質量%の範囲内であり、さらに好ましくは10〜50質量%の範囲内である。またエポキシ化合物(D)が、結晶性エポキシ樹脂を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A)に対する結晶性エポキシ樹脂の割合は、1質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、3質量%〜60質量%の範囲内であることがより好ましく、5質量%〜50質量%の範囲内であることが更に好ましく、10質量%〜40質量の範囲内であることが特に好ましい。
【0072】
5.成分(E)
感光性樹脂組成物は、上記のカルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、光重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)以外の成分(以下、成分(E)ともいう)を含んでいてもよい。成分(E)の例には、着色剤、密着性付与剤、有機溶剤、無機充填材、硬化剤、その他の樹脂、及び添加剤が含まれる。
【0073】
5−1.着色剤
感光性樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される皮膜に色を付与できる。着色剤は、例えば、青色着色剤及び黄色着色剤を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される皮膜の色を緑色にすることができる。着色剤は、顔料と染料のいずれも含み得る。このため、青色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。また黄色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。また緑色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料は、無機粒子や有機金属粒子などであってもよい。顔料は、ソルダーレジスト組成物中に分散されるものであってもよい。染料は、有機化合物であってもよい。染料は、ソルダーレジスト組成物中で溶解するものであってもよい。
【0074】
青色着色剤の例には、フタロシアニン系青色着色剤、及びアントラキノン系青色着色剤がまれる。フタロシアニン系青色着色剤の例には、例えば、金属置換又は無置換のフタロシアニン化合物が含まれる。青色着色剤は、顔料であることが好ましい。青色着色剤の具体例として、Pigment Blue 15;Pigment Blue 15:1;Pigment Blue 15:2;Pigment Blue 15:3;Pigment Blue 15:4;Pigment Blue 15:6;Pigment Blue 16;Pigment Blue 60が挙げられる。
【0075】
黄色着色剤の例には、モノアゾ系黄色着色剤、ジスアゾ系黄色着色剤、縮合アゾ系黄色着色剤、ベンズイミダゾロン系黄色着色剤、イソインドリノン系黄色着色剤、及びアントラキノン系黄色着色剤が含まれる。黄色着色剤(E2)の具体例として、Pigment Yellow 24;Pigment Yellow 108;Pigment Yellow 193;Pigment Yellow 147;Pigment Yellow 150;Pigment Yellow 199;Pigment Yellow 202;Pigment Yellow 110;Pigment Yellow 109;Pigment Yellow 139;Pigment Yellow 179;Pigment Yellow 185;Pigment Yellow 93;Pigment Yellow 94;Pigment Yellow 95;Pigment Yellow 128;Pigment Yellow 155;Pigment Yellow166;Pigment Yellow 180; Pigment Yellow 120;Pigment Yellow 151;Pigment Yellow 154;Pigment Yellow 156;Pigment Yellow 175;及びPigment Yellow 181、が挙げられる。また黄色着色剤の具体例として、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,及び183;並びにPigment Yellow12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,及び198も挙げられる。
【0076】
着色剤は、目的とする皮膜の色味や、プリント配線基板の絶縁層の色などに応じて適宜される。着色剤は、例えば青色着色剤、黄色着色剤、黒色着色剤、白色着色剤、赤色着色剤、緑色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、及び茶色着色剤からなる群から選択される一種以上の材料を含んでいてもよい。
【0077】
5−2.密着性付与剤
感光性樹脂組成物は、密着性付与剤を含んでいてもよい。密着性付与剤の例には、メラミン、アナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、並びに2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体が含まれる。この場合、感光性樹脂組成物から形成されるソルダーレジスト層の基板との密着性を向上できる。
【0078】
5−3.有機溶剤
感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤の例には、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールアセテート類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類が含まれる。有機溶剤の量は、感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥させる際に、有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤が皮膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、感光性樹脂組成物全量に対して、有機溶剤が0〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜60質量%の範囲内であることがより好ましい。なお有機溶剤の好適な割合は、塗膜の形成方法によって異なるため、塗膜の形成方法に応じて適宜調整することが好ましい。
【0079】
5−4.無機充填材
感光性樹脂組成物は、無機充填材を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の硬化収縮を低減できる。無機充填材の例には、硫酸バリウム、結晶性シリカ、微粉シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト、クレー、珪酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チッ化アルミニウム、チッ化硼素、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、モンモリロナイト、セピオライトが含まれる。無機充填材に酸化チタン、酸化亜鉛等の白色の材料を含有させることで、感光性樹脂組成物及びその硬化物を白色化してもよい。
【0080】
5−5.硬化剤
感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂のための硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤の例には、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
【0081】
5−6.その他の樹脂
感光性樹脂組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
【0082】
5−7.添加剤
感光性樹脂組成物は、硬化促進剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の添加剤を含有してもよい。
【0083】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記のカルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、光重合性化合物(C)、及びエポキシ化合物(D)と、必要に応じて、成分(E)とを混合することによって、製造できる。
【0084】
具体的には、上記のような感光性樹脂組成物の原料を配合し、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練することにより、感光性樹脂組成物を調製できる。感光性樹脂組成物の原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、感光性樹脂組成物を調製してもよい。
【0085】
保存安定性等を考慮して、感光性樹脂組成物の成分の一部を混合することで第一剤を調製し、成分の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、感光性樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。この場合、例えば、感光性樹脂組成物の成分のうち光重合性化合物(C)と、エポキシ化合物(D)と、有機溶剤の一部と、を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、感光性樹脂組成物の成分のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合して混合液を調製し、この混合液を硬化させて硬化物を得ることができる。
【0086】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、プリント配線板用の電気絶縁性材料として適している。特に感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の、電気絶縁性の層を形成するために適している。
【0087】
以下、感光性樹脂組成物から形成されたソルダーレジスト層を備える被覆プリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
【0088】
まず、コア材を用意する。コア材は、例えば少なくとも一つの絶縁層と少なくとも一つの導体配線とを備える。コア材の導体配線が設けられている面上に、感光性樹脂組成物から皮膜を形成する。皮膜の形成方法は、塗布法であることが好ましい。塗布法では、例えばコア材上に感光性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。感光性樹脂組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、湿潤塗膜中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60〜120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させ、これによって、皮膜を得ることができる。
【0089】
皮膜を露光することで部分的に硬化させる。露光方法として、例えば、ネガマスクを皮膜に当ててから、皮膜に紫外線を照射する方法が挙げられる。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備える。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。なお、露光方法は、ネガマスクを用いる方法以外の方法であってもよい。例えば光源から発せられる紫外線を皮膜の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で皮膜を露光してもよい。例えば、現像工程前の露光工程における好ましい露光量の範囲は、30〜1000mJ/cm
2の範囲であることが好ましく、30〜600mJ/cm
2の範囲内であることがより好ましく、30〜400mJ/cm
2の範囲内であることがより好ましい。
【0090】
続いて、皮膜に現像処理を施すことで、皮膜の露光されていない部分を除去する。現像処理では、感光性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0091】
続いて、現像処理後の皮膜を加熱する。加熱の条件は、例えば加熱温度120〜200℃の範囲内、加熱時間30〜150分間の範囲内である。このようにして皮膜を硬化させると、ソルダーレジスト層の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜にさらに紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜の光硬化をさらに進行させることができる。
【0092】
以上により、コア材上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるソルダーレジスト層が設けられる。これにより、ソルダーレジスト層を備える被覆プリント配線板が得られる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0094】
(1)カルボキシル基含有樹脂の合成
(合成例A−1(i))
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート105質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸43.2質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、加熱温度100℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。続いて、混合物にテトラヒドロフタル酸68質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート65質量部を加えてから、加熱温度110℃、加熱時間6時間の条件で加熱した。これにより、エポキシ当量は約8300g/eq.であるカルボキシル基含有脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A−1(i))を得た。
【0095】
(合成例A−1(ii))
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC−3000−H、エポキシ当量288)288質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸36質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、加熱温度100℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。続いて、混合物にテトラヒドロフタル酸85質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート40質量部を加えてから、加熱温度110℃、加熱時間10時間の条件で加熱した。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート27質量部を加えた。これにより、エポキシ当量は約7800g/eq.であるカルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A−1(ii))を得た。
【0096】
(合成例A−2(i))
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、品番EPICLON N−775、エポキシ当量189)189質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート71.5質量部を加えてから、さらに混合物を加熱温度90℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A−2(i))を得た。
【0097】
(合成例A−2(ii))
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、品番EPICLON N−770、エポキシ当量188)188質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸76質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.8質量部を加えてから、さらに混合物を加熱温度90℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A−2(ii))を得た。
【0098】
(合成例A−3(i))
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、ク
レゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加えてから、さらに混合物を加熱温度90℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A−3(i))を得た。
【0099】
(合成例A−3(ii))
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、品番jER1001、エポキシ当量472)472質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート202質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルホスフィン3質量部を加えることで、反応溶液を調製した。この反応溶液を、四つ口フラスコ中に空気を吹き込みながら115℃で12時間加熱することで付加反応を進行させた。続いて、四つ口フラスコ中の液にシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物(三菱ガス化学株式会社製、品番H−TMAn−S)118.9質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート158質量部を加えて、110℃で5時間加熱することで反応させた。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A−3(ii))を得た。
【0100】
(2)感光性樹脂組成物の調整
後掲の表に示す成分を三本ロールで混錬してから、フラスコ内で撹拌することで、実施例1〜12及び比較例1〜7の感光性樹脂組成物を製造した。なお、表に示される成分の詳細は次の通りである。
・光重合開始剤B−1:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製の品番Irgacure TPO。
・光重合開始剤B−2:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、BASF社製の品番Irgacure 819。
・光重合開始剤B−3:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製の品番Irgacure 907。
・光重合開始剤B−4:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製、品番Irgacure 184。
・光重合開始剤B−5:2−ヒドロキシ−2−メチル−4−フェニル−プロパン−1−オン、BASF社製の品番Darocur 1173。
・光重合開始剤B−6:2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬株式会社製の品番カヤキュアDETX−S。
・光重合開始剤B−7:4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、保土ヶ谷化学工業株式会社製の品番EAB。
・光重合開始剤B−8:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、BASF社製の品番Irgacure OXE02。
・光重合性化合物C:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬株式会社製の品番KAYARAD DPHA。
・エポキシ化合物D−1(結晶性):ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製の品番YX−4000。
・エポキシ化合物D−2(結晶性):ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80XY。
・エポキシ化合物溶液D−3:非晶性のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製の品名EPICLON N−695を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解した溶液。
・エポキシ化合物D−4:フェノールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製、品番EPICLON N−775とジイソシアン酸イソホロンの反応物を固形分75%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解した溶液。
・有機ベントナイト:レオックス社製の品番ベントンSD−2。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製の品番バリエースB30。
・タルク:東新化成株式会社製の品番SG2000。
・メラミン;日産化学工業社製の品番メラミンHM。
・消泡剤:ジメチコン(ジメチコンとケイ酸の混合物)、信越シリコーン株式会社製、品番KS−66。
・青色着色剤:Pigment Blue 15:3。
・黄色着色剤:Pigment Yellow 147。
・有機溶剤1:芳香族系混合溶剤(石油ナフサ)。
・有機溶剤2:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
【0101】
(3)テストピースの作製
各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を用いて、次のようにしてテストピースを作製した。
【0102】
まず、厚み17.5μmの銅箔を備えるガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板にエッチング処理を施すことで銅箔をパターニングし、これによりプリント配線板を得た。
【0103】
続いて、銅箔における厚み1μm程度の表層部分を、メック株式会社製の品番CZ−8101で溶解除去することにより、銅箔を粗化した。
【0104】
このプリント配線板上に、各実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法で塗布することで、プリント配線板上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を、加熱温度80℃、加熱時間20分の条件で加熱することで予備乾燥した。これにより銅箔上において厚み20μmの皮膜を形成した。
【0105】
この皮膜上にネガマスクを直接当てがい、このネガマスクを介して皮膜に250mJ/cm
2の紫外線を照射した。これにより、皮膜を選択的に露光した。続いて、露光後の皮膜に、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を施すことで、皮膜のうち露光により硬化した部分(硬化膜)をプリント配線板上に残存させた。この硬化膜をさらに150℃で60分間加熱して熱硬化させた後、1000mJ/cm
2の紫外線を照射した。これにより、プリント配線板上にソルダーレジスト層を形成し、このソルダーレジスト層を備えるプリント配線板をテストピースとした。
【0106】
(4)評価試験
(4−1)現像性
まず、厚み17.5μmの銅箔を備えるガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板にエッチング処理を施すことで銅箔をパターニングし、これによりプリント配線板を得た。
【0107】
続いて、銅箔における厚み1μm程度の表層部分を、メック株式会社製の品番CZ−8101で溶解除去することにより、銅箔を粗化した。
【0108】
このプリント配線板上に、各実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法で塗布することで、プリント配線板上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を、加熱温度80℃、加熱時間20分の条件で加熱することで予備乾燥した。これにより銅箔上において厚み20μmの皮膜を形成した。この皮膜に、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を施すことで、サンプルを作製した。
【0109】
また、予備乾燥時の加熱時間を80分に変更した以外は、同じ方法でサンプルを作製した。
【0110】
サンプルを観察し、次に示すように評価した。
A:予備乾燥時の加熱時間が20分、80分のいずれの場合でも、サンプルには皮膜が残存しなかった。
B:予備乾燥時の加熱時間が20分であった場合のサンプルには皮膜が残存しなかったが、予備乾燥時の加熱時間が80分であったサンプルには皮膜の一部が残存していた。
C:予備乾燥時の加熱時間が20分、80分のいずれの場合でも、サンプルには皮膜の一部が残存していた。
【0111】
(4−2)密着性
JIS D0202で規定される試験方法に従って、上記(3)で作製したテストピースのソルダーレジスト層に碁盤目状にクロスカットを入れ、続いてセロハン粘着テープを用いたピーリング試験をおこなった。試験後の剥がれの状態を目視により観察した。その結果を次に示すように評価した。
A:100個のクロスカット部分のうち全てに全く変化がみられない。
B:100個のクロスカット部分のうち1〜10箇所に剥がれを生じた。
C:100個のクロスカット部分のうち11〜100箇所に剥がれを生じた。
【0112】
(4−3)鉛筆硬度
上記(3)で作製したテストピースのソルダーレジスト層の鉛筆硬度を、JIS K5400の規定に準拠して、鉛筆として三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて測定した。
【0113】
(4−4)耐酸性
上記(3)で作製したテストピースを、室温下で、10%の硫酸水溶液に30分間浸漬した後、このテストピースのソルダーレジスト層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
A:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
B:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
C:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
【0114】
(4−5)はんだ耐熱性1
上記(3)で作製したテストピースのソルダーレジスト層に、水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355−11)を塗布し、続いてソルダーレジス層を260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬してから水洗した。この処理を3回繰り返してから、ソルダーレジスト層の外観を観察し、その結果を次に示すように評価した。
A:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離等の異常が認められない。
B:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離等の異常が僅かに認められる。
C:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離等の異常が顕著に認められる。
【0115】
(4−6)はんだ耐熱性2
上記(3)で作製したテストピースのソルダーレジスト層に、水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355−11)を塗布し、続いてソルダーレジス層を260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬してから水洗した。この処理を3回繰り返してから、ソルダーレジスト層の外観を観察し、その結果を次に示すように評価した。
A:ソルダーレジスト層に白化は見られない。
B:ソルダーレジスト層に若干の白化が見られる。
C:ソルダーレジスト層に強い白化が見られる。
【0116】
(4−7)耐メッキ性1
上記(3)で作製したテストピースに、市販のメッキ液を用いて、無電解ニッケルメッキと無電解金メッキを順次施してから、このテストピースのソルダーレジスト層のセロハン粘着テープ剥離試験を行うことで、メッキ後のソルダーレジスト層の密着状態を確認した。
【0117】
その結果を、次のようにして評価した。
A:セロハン粘着テープ剥離試験でソルダーレジスト層の剥離は認められなかった。
B:セロハン粘着テープ剥離試験でソルダーレジスト層の一部剥離が認められる。
C:セロハン粘着テープ剥離試験でソルダーレジスト層の大きな剥離が認められる。
【0118】
(4−8)耐メッキ性2
上記(3)で作製したテストピースに、市販のメッキ液を用いて、無電解ニッケルメッキと無電解金メッキを順次施してから、このテストピースのソルダーレジスト層の状態を確認した。
【0119】
その結果を、次のようにして評価した。
A:ソルダーレジスト層に白化は見られない。
B:ソルダーレジスト層に若干の白化が見られる。
C:ソルダーレジスト層に強い白化が見られる。
【0120】
(4−9)PCT耐性
上記(3)で作製したテストピースを、温度121℃の飽和水蒸気中に168時間放置した後、このテストピースのソルダーレジスト層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
A:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常は認められない。
B:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
C:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
【0121】
(4−10)電気絶縁性
FR−4タイプの銅張積層板に、ライン幅/スペース幅が50μm/50μmである櫛形電極を形成することで、評価用のプリント配線板を得た。このプリント配線板上に、上記(3)と同様の作製方法及び条件で、ソルダーレジスト層を形成した。続いて、櫛形電極にDC12Vのバイアス電圧を印加しながら、プリント配線板を121℃、97%R.H.の試験環境下に150時間暴露した。この試験環境下におけるソルダーレジスト層の電気抵抗値を常時測定した。その結果を次の評価基準により評価した。
A:試験開始時から150時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に10
6Ω以上であった。
B:試験開始時から少なくとも100時間経過するまでは、電気抵抗値が10
6Ω以上であったが、150時間経過するまでに電気抵抗値が10
6Ω未満となった。
C:試験開始時から100時間経過する以前に、電気抵抗値が10
6Ω未満となった。
【0122】
以上の評価試験の結果を下記の表1及び表2に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】