特許第6829887号(P6829887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6829887固形粉体化粧料及び固形粉体化粧料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829887
(24)【登録日】2021年1月27日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】固形粉体化粧料及び固形粉体化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20210208BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20210208BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20210208BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20210208BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/19
   A61Q1/12
   A61Q1/10
   A61Q1/08
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-250369(P2017-250369)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-116432(P2019-116432A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2019年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】595137022
【氏名又は名称】東色ピグメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】津幡 和昌
(72)【発明者】
【氏名】吉武 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 靖宏
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−105626(JP,A)
【文献】 特開2005−220314(JP,A)
【文献】 特開2011−105605(JP,A)
【文献】 特開2009−167181(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146908(WO,A1)
【文献】 特開2003−246711(JP,A)
【文献】 特開2005−306844(JP,A)
【文献】 特開2004−067500(JP,A)
【文献】 特開2011−074023(JP,A)
【文献】 特開平10−330681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカを含む粉体相および油相を含む固形粉体化粧料であって、前記固形粉体化粧料中に前記コロイダルシリカを0.1〜5質量%含有しており、
前記粉体相がさらにタルクとマイカを含んでおり、タルクとマイカの合計含有量がコロイダルシリカの含有量1質量部に対して20〜80質量部である、固形粉体化粧料。
【請求項2】
前記粉体相と前記油相の合計量中の割合が、前記粉体相が70〜85質量%で残部が前記油相である、請求項1記載の固形粉体化粧料。
【請求項3】
固形粉体化粧料が下記の明度(L値)が56以下の濃色系のものである場合、タルク及びマイカの合計含有量は、コロイダルシリカの含有量1質量部に対して40〜60質量部であり、
固形粉体化粧料が下記の明度(L値)が56より大きい淡色系のものである場合、タルク及びマイカの合計含有量は、コロイダルシリカの含有量1質量部に対して20〜65質量部である、請求項1記載の固形粉体化粧料。
(固形粉体化粧料における濃色系又は淡色系)
分光測色計(Spectro Color Meter SE2000、日本電色製)により得られるL*a*b*表色系での明度(L値)の数値範囲によって定義される。濃色とは、乾燥後のプレス品の表面における明度(L値)が56以下で、淡色とは明度(L値)が56より大きい値の色をいうものとする。
【請求項4】
前記タルクの含有量と前記マイカの含有量比(前記タルクの含有量/前記マイカの含有量比)が1.2〜15の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項記載の固形粉体化粧料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の固形粉体化粧料の製造方法であって、
コロイダルシリカを含む粉体相と油相を混合して混合物を得る第1工程、
前記混合物100質量部に対して水30〜70質量部混合してスラリーを調製する第2工程、
前記スラリーを成形型に充填後、乾燥する第3工程を有している固形粉体化粧料の製造方法。
【請求項6】
第3工程が、前記スラリーを成形型に充填後、プレス成型して乾燥する工程である、請求項5記載の固形粉体化粧料の製造方法。
【請求項7】
第3工程においてバックインジェクションモールディング法を実施する、請求項5または6記載の固形粉体化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉体化粧料及び固形粉体化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形粉体化粧料は、化粧容器受皿への充填方法の一つに、化粧料基剤を溶媒によりスラリー化して、前記スラリーを受皿に充填した後で溶媒を除去して固化する、湿式充填・成型プロセスがある。
【0003】
湿式充填・成型プロセスを採用することで、受皿の開口部から充填するような従来の充填方法だけでなく、受皿の底部又は側面部にある充填孔から前記スラリーを充填してプレス成型する、バックインジェクションモールディング(BIM)法を適用することができる。
BIM法は、予め上型(金型)に開口部を覆われた金皿の底部又は側面部にある充填孔からポンプを使用してスラリーを充填する工程、スラリーを充填後に前記スラリーに含まれる溶媒の一部を真空抜去する工程および充填されたスラリーを前記上型によりプレス成型する工程からなる。
BIM法を用いることで、固形粉体化粧料の表面に模様を付けることができ、固形粉体化粧料に美観を持たせることができるため、近年では多く採用されている。
【0004】
特許文献1〜6には、化粧料粉体を含むスラリーを調製して容器に充填・成型する湿式成型法により製造する粉体化粧料が記載されている。
中でも、特許文献1には、メチルポリシロキサン2.0%処理タルク等を含む化粧料スラリーを調製し、バックインジェクションマシンを用いて加圧充填・成型したアイシャドウが記載されている。
また特許文献2には、一定量以上の吸油能を有するシリカ、タルク及びマイカ等を含む粉末化粧料に、軽質流動イソパラフィンを加えてスラリーを調製したあと、充填・成型により得られるパウダーファンデーションが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−74023号公報
【特許文献2】特開2011−105626号公報
【特許文献3】特開2012−193111号公報
【特許文献4】特開2014−65691号公報
【特許文献5】特開2014−101293号公報
【特許文献6】特開2015−86156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、固形粉体化粧料及び固形粉体化粧料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コロイダルシリカを含む粉体相および油相を含む固形粉体化粧料であって、前記固形粉体化粧料中に前記コロイダルシリカを0.1〜5質量%含有する、固形粉体化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、コロイダルシリカを含み、化粧料の湿式充填・成型プロセスを採用して固形粉体化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の固形粉体化粧料は、コロイダルシリカを含む粉体相および油相を含む固形粉体化粧料であって、前記固形粉体化粧料中に前記コロイダルシリカを0.1〜5質量%含有する。
【0010】
<粉体相>
コロイダルシリカは、市販のものを使用することができ、例えばサイリシア350、サイリシア740等(いずれも富士シリシア(株)製)が挙げられる。
なお、コロイダルシリカは、シリカ粒子が水や溶媒中にコロイド状に分散した液体の形態をとるが、本発明では粉体相に含まれるものとする。
【0011】
コロイダルシリカの含有量は、本発明の固形粉体化粧料中0.1〜5質量%であって、0.5〜5質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらにより好ましい。
【0012】
コロイダルシリカを含む粉体相は、タルク及び/又はマイカを含んでいることが好ましく、タルク及びマイカを含んでいることがより好ましい。
前記粉体相が、タルク及び/又はマイカを含む場合、タルク及び/又はマイカの合計含有量はコロイダルシリカの含有量1質量部に対して10〜600質量部であることが好ましく、20〜200質量部であることがより好ましく、20〜80質量部であることがさらにより好ましい。
【0013】
また、タルク及び/又はマイカを含む場合、その合計含有量は固形粉体化粧料の種類によって異なり、例えば、固形粉体化粧料が濃色系のものである場合、タルク及び/又はマイカの合計含有量は、コロイダルシリカの含有量1質量部に対して40〜60質量部であるのが好ましく、固形粉体化粧料が淡色系のものである場合、タルク及び/又はマイカの合計含有量は、コロイダルシリカの含有量1質量部に対して20〜65質量部であるのが好ましい。
【0014】
なお、本発明の固形粉体化粧料における濃色系又は淡色系とは、分光測色計(Spectro Color Meter SE2000、日本電色製)により得られるL表色系での明度(L値)の数値範囲によって定義される。本発明における濃色とは、乾燥後のプレス品の表面における明度(L値)が56以下で、淡色とは明度(L値)が56より大きい値の色をいうものとする。
【0015】
前記粉体相が、タルク及びマイカを含む場合、タルクの含有量/マイカの含有量(質量比)は1.2〜15の範囲にあることが好ましい。
【0016】
また、タルク及びマイカを含む場合、前記質量比は固形粉体化粧料の種類によって異なり、例えば、固形粉体化粧料が淡色系のものである場合、前記質量比は5〜12の範囲であるのが好ましく、固形粉体化粧料が濃色系のものである場合、前記質量比は1.5〜5の範囲であるのが好ましい。
【0017】
前記粉体相は、その他化粧料成分として、公知の粉体成分を使用することができる。
粉体として、例えば、カオリン、セリサイト、アルミナ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、無水ケイ酸、硫酸バリウム、化粧品用タール色素、有機色素、βカロチン、カルサミン、カルミン、クロロフィル、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、各種雲母(天然物および合成品)、酸化クロム、カーボンブラック、白色顔料、パール顔料などの顔料、
アルミニウム粉末、球状ナイロン、球状ポリスチレン、雲母チタン、金雲母鉄、二酸化チタン、酸化チタン、酸化鉄などの無機粉体;
ナイロンパウダー、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル、ウールパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、シリコーンパウダー、ポリウレタンパウダー、でんぷん粉などの有機粉末などを挙げることができる。
【0018】
<油相>
油相は、公知の化粧料成分のうち、前記粉体相に含まれる以外のものであり、以下のものが挙げられる。
例えば、炭化水素、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、ワセリン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、アルキッド、アクリル、スルホンアミド樹脂、ニトロセルロース;
ミネラルオイル、オリーブ油、アーモンド油、カカオ脂、マカデミアナッツ油、アボカド油、硬化パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、月見草油、合成トリグリセライド、ロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル、直鎖・環状シリコーンオイル、ジメチルポリシロキサン、モノステアリン酸グリセリン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジメチコン(30CS)、ロジンペンタエリスリトットエステル、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリイソオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、モノラウリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸デカグリジセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルなどの油剤;
エタノール、イソプロパノール、多価アルコール、水溶性高分子、ベントナイト、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノールなどの非水性溶媒、等が挙げられる。
【0019】
本発明の固形粉体化粧料は、前記粉体相と前記油相の合計量中の割合が、粉体相70〜85質量%が好ましく、73〜80質量%がより好ましく、油相は合計で100質量%となる残部割合である。
【0020】
本発明の固形粉体化粧料は、その他公知の化粧料成分を含んでいてもよい。
例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール、POEメチルグリコシド、生体高分子、蔗糖などの保湿剤;
エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルなどのエモリエント成分;
クインスシード、ペクチン、セルロース誘導体、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ソアギーナ、カルボキシビニルポリマー;
ミリスチン酸オクチルドデシル、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、モノオレイン酸ソルビタン、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルメトキシシンナメート、モノオレイン酸POEソルビタン、イソセチル、イソステアリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル、クエン酸アセチルトリブチル、ジ安息香酸トリメチルペンタンジイル、ステアリルコニウムベントナイト;
増粘剤、防腐剤、乳化剤、安定化剤、可塑剤;
陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、蛋白質系界面活性剤;
薬効成分、ビタミンCジパルミテート、ビタミン類、トコフェロール、アミノ酸、美白剤、殺菌剤;
pH調整剤、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、金属イオン封止剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、
紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、分散剤、褐色防止剤、緩衝剤、沈殿防止成分、ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、使用性改質剤、等が挙げられる。
【0021】
本発明の固形粉体化粧料は、
コロイダルシリカを含む粉体相と油相を混合して混合物を得る第1工程、
前記混合物100質量部に対して水30〜70質量部混合してスラリーを調製する第2工程、
前記スラリーを成形型に充填後、乾燥する第3工程、を有する固形粉体化粧料の製造方法により得られる。
【0022】
<第1工程>
本工程では、コロイダルシリカを含む粉体相と油相とを混合して混合物を得る。
【0023】
コロイダルシリカと公知の化粧料成分の中の粉体成分とをミキサー等で攪拌混合して粉体相を調製する。
【0024】
前記粉体相が入ったミキサー等に、公知の化粧料成分(前記粉体相に含まれる粉体を除く)からなる油相を添加して、均一になるまで攪拌混合することで、本工程の混合物が得られる。
【0025】
<第2工程>
本工程では、前工程で得られた混合物100質量部に対して分散媒である水を好ましくは30〜70質量部添加して混合し、スラリーを調製する。
前工程で得られた混合物は、20メッシュの濾布等で濾したものを用いるのが好ましい。
【0026】
前工程で得られた混合物に、水を加えて再びミキサー等で混合して、スラリーを調製する。使用する水は、衛生上の観点から精製水が好ましい。
スラリーを調製するための水の添加量は、前記混合物100質量部に対して好ましくは30〜70質量部、より好ましくは40〜60質量部である。
【0027】
<第3工程>
本工程では、前工程で得られたスラリーを成形型に充填後、乾燥して、固形粉体化粧料を得る。
【0028】
前記スラリーを充填する成形型は、金型や樹脂皿等、通常使用される固形粉体化粧料の型を使用する。
【0029】
前記スラリーを充填する方法は、型の開口部から前記スラリーを注入する方法のほか、型である金皿の開口部に上型(金型)を覆った後、金皿の底部又は側面部に設けた充填孔よりスラリーを充填して、充填されたスラリーを上型によりプレス成型するBIM法を使用することができる。
【0030】
成形型に充填されたスラリーは、型ごと乾燥機等に入れられ、加熱乾燥によって水や化粧料成分中の溶剤を除去される。BIM法を使用する場合、スラリーが充填されてプレス成型された金皿ごと、乾燥機等に入れられる。
加熱温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であって、スラリーが完全に固化するまで加熱乾燥する。
前工程でスラリー調製に用いた水や、コロイダルシリカをはじめとする各化粧料成分に含まれる水は、本工程での加熱乾燥により除去されるため、本発明の固形粉体化粧料はほとんど水を含まない。
【0031】
本発明の固形粉体化粧料の製造方法で調製されたスラリーは、流動性が高く、BIM法による充填方法が適している。そのため、型である金皿の開口部を覆う上型として、化粧料表面模様や立体形状が反転した形に彫刻された上型を用いることで、模様を付した固形粉体化粧料を得ることができる。
【0032】
本発明の化粧料は、前記粉体化粧料、特にアイシャドウ、ファンデーション、チーク、粉白粉等などにすることができる。
【実施例】
【0033】
使用成分
シリカ1:コロイダルシリカ、製品名「サイリシア 740」、富士シリシア(株)製
比較成分
シリカ2:湿式沈降法で得られる球状シリカ、製品名「サンスフェア H51」、AGCエスアイテック(株)製
シリカ3:乾式法で得られるヒュームドシリカ、製品名「アエロジル 200」、日本アエロジル(株)製
【0034】
<固形粉体化粧料の製造方法>
(1)表1の粉体相に示す各成分をミキサーで混合した後、前記ミキサー内の粉体相に表1の油相に示す各成分を添加して、攪拌混合し、化粧料成分の混合物を調製した。
(2)前工程の混合物100gを20メッシュの濾布をとおした後、水50質量部を添加し、ミキサーで均一に混合してスラリーを調製した。
(3)前記スラリーをBIM法により金皿内にプレス成型した。ここでBIM法とは、プレス型にセットされた皿(成形型)の底部又は側面部にある充填孔よりスラリーを充填した後に、プレス成型する方法をいう。その後、金皿ごと50℃の乾燥機で20時間乾燥させ、表1に示す固形粉体化粧料が得られた。
得られた固形粉体化粧料を用いて、下記について評価した。
【0035】
スラリー安定性
調製直後のスラリーを目視観察して、下記基準により評価した。
○:室温(20〜25℃)下で10時間以上静置しても分離しなかった。
△:室温(20〜25℃)下30分間以内で静置しても分離しなかった。
×:すぐに分離した。
【0036】
プレス成型性
BIM法により金皿内にプレス成型した直後及び乾燥後のプレス成型品(固形粉体化粧料)の外観を、目視観察して、下記基準により評価した。
○:プレス成型品にヒビや割れが見られなかった。
△:プレス成型品にヒビや割れは見られなかったが、外観(スラリーの流れムラ跡等)が劣る。
×:プレス成型品にヒビや割れが確認できた。
【0037】
プレス成型品(固形粉体化粧料)の落下強度
金皿に入った表1に示す各固形粉体化粧料を、コンパクトに装着した状態で30cmの高さから床(コンクリートの床)に落下させ、下記基準で評価した。
○:5回落としてもプレス成型品(固形粉体化粧料)の表面は正常だった。
×:1〜4回落としたところで、プレス成型品(固形粉体化粧料)の表面にヒビ又は割れが見られた。
「−」は、プレス成型性が劣るため、評価しなかった。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例1〜5の固形粉体化粧料は、コロイダルシリカを使用しており、スラリー安定性及びプレス成型性に優れ、また成形型に入った状態で落下させても固形粉体化粧料の表面にヒビや割れは見られなかった。
球状シリカやフュームドシリカを使用した比較例4、5は、スラリー安定性やプレス成型性が低いため、BIM法を採用できる固形粉体化粧料としては適当でなかった。
また、シリカを使用しない比較例1〜3も、スラリー安定性やプレス成型性が劣り、BIM法を採用できる固形粉体化粧料としては適当でなかった。
【0040】
本発明の固形粉体化粧料の製造方法によると、化粧料の色の濃淡に拘らず、安定した固形粉体化粧料を得ることができる。
表2には、濃色アイシャドウ(処方例1)及び淡色アイシャドウ(処方例2)を示す。
【0041】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の固形粉体化粧料は、アイシャドウ、ファンデーション、チーク、粉白粉等として好適に利用することができる。