特許第6829892号(P6829892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6829892円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829892
(24)【登録日】2021年1月27日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/053 20060101AFI20210208BHJP
   B23K 9/035 20060101ALI20210208BHJP
   B23K 9/00 20060101ALN20210208BHJP
【FI】
   B23K37/053 B
   B23K9/035 A
   !B23K9/00 501L
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-114627(P2018-114627)
(22)【出願日】2018年6月15日
(65)【公開番号】特開2019-217511(P2019-217511A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2020年8月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599095159
【氏名又は名称】株式会社ムラタ溶研
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 彰久
(72)【発明者】
【氏名】村田 唯介
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−197246(JP,A)
【文献】 特開2009−082929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/00−37/08
B23K 9/035
B23K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴体(Wa)と皿状の鏡板(Wb)を突き合せてその突合せ部を外方から円周方向に溶接する際に用いられ、前記胴体(Wa)と鏡板(Wb)の突合せ部を内方から保持する内治具ユニット(1′)と、前記鏡板(Wb)を外方から保持する外治具ユニット(1″)とを備えた円周溶接用治具ユニット(1)であって、前記内治具ユニット(1′)は、胴体(Wa)と鏡板(Wb)の突合せ部の内方に挿入される円盤状の内治具ベース(26)と、内治具ベース(26)の外周位置に環状に配置され、胴体(Wa)と鏡板(Wb)の突合せ部の内周面に面接触状態で密着し得る複数の内治具片(27′)から成る縮拡径自在な環状の内治具(27)と、内治具ベース(26)と内治具(27)との間に設けられ、内治具(27)を縮拡径させる縮拡径機構(28)とを備え、前記環状の内治具(27)の各内治具片(27′)をそれぞれ内治具(27)の軸線方向に二分割して一方を鏡板(Wb)の端部内周面及び胴体(Wa)の端部内周面の何れか一方に密着し得る基準側内治具片(27A)とする共に、他方を鏡板(Wb)の端部内周面及び胴体(Wa)の端部内周面の何れか他方に密着し得る可動側内治具片(27B)とし、前記各基準側内治具片(27A)を、それぞれ縮拡径機構(28)に連動連結して内治具(27)の径方向へ移動可能とし、また、前記各可動側内治具片(27B)を、各内治具片(27′)の基準側内治具片(27A)にそれぞれ内治具(27)の径方向へ移動可能に支持すると共に、各可動側内治具片(27B)を、縮拡径機構(28)と各可動側内治具片(27B)との間に介設した弾性体(32)により外方へ付勢したことを特徴とする円周溶接用治具ユニット。
【請求項2】
前記各基準側内治具片(27A)の中央部に円形のピン穴(27A)を形成すると共に、前記各可動側内治具片(27B)の中央部に内治具(27)の径方向に沿う長穴(27e)を形成し、前記各基準側内治具片(27A)のピン穴(27A)と各可動側内治具片(27B)の長穴(27e)にそれぞれ連結ピン(33)を挿着し、前記各可動側内治具片(27B)を、各基準側内治具片(27A)にそれぞれ内治具(27)の径方向へ移動可能で且つ連結ピン(33)を支点して揺動可能に支持する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項3】
前記各基準側内治具片(27A)及び各可動側内治具片(27B)の外周面で且つ胴体(Wa)と鏡板(Wb)の突合せ面に対向する箇所に、胴体(Wa)と鏡板(Wb)の突合せ部の内周面側へシールドガスを流すガス溝(35)を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項4】
円周方向に隣接する基準側内治具片(27A)の何れか一方の基準側内治具片(27A)の外側面に、他方の基準側内治具片(27A)の外側面に摺動し得るガス逃げ防止板(34)を取り付け、また、円周方向に隣接する可動側内治具片(27B)の何れか一方の可動側内治具片(27B)の外側面に、他方の可動側内治具片(27B)の外側面に摺動し得るガス逃げ防止板34を取り付け、環状の内治具(27)が拡径したときに前記ガス逃げ防止板(34)により円周方向に隣接する内治具片(27′)間の隙間をシールする構成としたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項5】
前記縮拡径機構(28)は、内治具ベース(26)の中心部に内治具ベース(26)の軸線に沿って進退移動自在に設けたロッド(38)と、ロッド(38)の先端部に設けた縮拡径用円盤(39)と、内治具ベース(26)の一方の側面に等角度毎に配設した複数のコ字状のスライドガイド(40)と、内治具ベース(26)と各スライドガイド(40)との間に環状の内治具(27)の径方向へスライド自在に支持され、外方側の先端部に内治具片(27′)の基準側内治具片(27A)が取り付けられる複数の連結アーム(41)と、両端部が縮拡径用円盤(39)及び複数の連結アーム(41)の基端部にそれぞ
れ回動自在に取り付けられ、縮拡径用円盤(39)の前進時に環状の内治具(27)を拡径させ、縮拡径用円盤(39)の後退時に環状の内治具(27)を縮径させる複数のリンク部材(43)とを備え、前記各連結アーム(41)を交換可能としたことを特徴とする請求項1に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項6】
前記外治具ユニット(1″)は、複数の取り付け穴を同心円状で且つ所定の角度毎に設けた円盤状の外治具ベース(45)と、外治具ベース(45)の一方の側面に環状に配置され、鏡板(Wb)の外周面を保持し得る複数の円弧状の外治具片(46′)から成る環状の外治具(46)とを備え、前記外治具(46)の各外治具片(46′)を外治具ベース(45)に着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項7】
前記各外治具片(46′)に、位置決めピン(46a)をそれぞれ突出状態で設け、また、前記外治具ベース(45)の一方の側面に、各外治具片(46′)の位置決めピン(46a)が着脱自在に嵌合されると共に、各外治具片(46′)が環状に配置される位置決め穴(45b)を同心円状に形成したことを特徴とする求項6に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項8】
円筒状の胴体(Wa)と皿状の鏡板(Wb)を突き合せてその突合せ部を外方から円周方向に溶接する際に用いる円周溶接装置(2)であって、基台(4)上に設けられ、水平な軸線回りに回転自在な左回転テーブル(5)を有する左回転ユニット(6)と、基台(4)上に左回転ユニット(6)と対向状に設けられ、水平な軸線回りに回転自在な右回転テーブル(7)を有する右回転ユニット(8)と、基台(4)に設けられ、左回転ユニット(6)又は右回転ユニット(8)の少なくとも何れか一方の回転ユニットを他方の回転ユニット側へ進退移動させる走行ユニット(9)と、左回転ユニット(6)及び右回転ユニット(8)に設けられ、突き合された胴体(Wa)と鏡板(Wb)とを保持する請求項1〜請求項7の何れかに記載の円周溶接用治具ユニット(1)と、基台(4)上に設けられ、胴体(Wa)と鏡板(Wb)の突合せ部を外方から円周溶接するTIG溶接用トーチ(12)を備えた溶接ユニット(13)と、を備えていることを特徴とする円周溶接装置。
【請求項9】
前記円周溶接装置(2)は、前記基台(4)上に左回転ユニット(6)側及び右回転ユニット(8)側へ移動自在に設けられ、上面に胴体(Wa)を水平姿勢で且つ軸線方向へ移動自在に保持する複数の支持ローラ(10)を有するテーブルリフター(11)を更に備えていることを特徴とする請求項8に記載の円周溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ステンレス板や鋼板等の金属材から成る円筒状の胴体と皿状の鏡板とを突き合せ、胴体と鏡板の突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたタンクやハウジング、ドラム缶等を作製する際に用いる円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状の胴体の一端に皿状の鏡板を突き合せ、胴体と鏡板の突合せ部を外方から円周方向に溶接してタンク等の製品を作製する円周溶接装置しては、例えば、特開平8-224693号公報(特許文献1参照)に開示された円周溶接装置が知られている。
【0003】
前記円周溶接装置は、胴体と鏡板とを外方から溶接しているため、作業性や操作性等は良くなるものの、胴体と鏡板の突合せ部を内方から保持していないので、加熱中の膨張及び冷却中の収縮によって溶接後に収縮や変形を生じ、製品の仕上り精度が著しく低下すると云う問題があった。
【0004】
一方、本件発明者は、上述した問題を解決するため、胴体と鏡板との突合せ部を内方から保持して外方から円周溶接するようにした円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置を開発している(特許文献2及び特許文献3参照)。
【0005】
即ち、前記円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置は、図示していないが、胴体と鏡板の突合せ部を内方から保持する縮拡径自在な環状の内治具と鏡板を外方から保持する外治具とから成る円周溶接用治具ユニットを備えており、胴体と鏡板の突合せ部を外方から円周溶接する際に、胴体と鏡板の突合せ部を内治具により内方から保持すると共に、鏡板を外治具により保持し、この状態でTIG溶接用トーチにより胴体と鏡板の突合せ部を外方から円周溶接するようにしているため、内治具により溶接部が冷却され、溶接部の熱歪が抑制されて製品の仕上がり精度を向上させることができると言う利点を有する。
【0006】
ところで、タンクやハウジング等を形成する胴体及び鏡板は、その製造工程において内径に若干の誤差(0.5mm〜1.0mm程度)が生じるため、胴体と鏡板を突き合せたときに胴体の内周面と鏡板の内周面とが完全に面一になることがない。
また、環状の内治具は、胴体の内周面に密着する外周面部分の外径と鏡板の内周面に密着する外周面部分の外径とが同一径に形成されている。
【0007】
そのため、特許文献2及び特許文献3に記載された環状の内治具で胴体と鏡板の突合せ部を内方から保持すると、図20(A)及び(B)に示す如く、胴体Waの内周面と内治具60の外周との間又は鏡板Wbの内周面と内治具60の外周面との間に隙間が生じ、内治具60の外周面が胴体Waの内周面や鏡板Wbの外周面に完全に密着しないことになる。
尚、図20において、61は外治具、62はTIG溶接用トーチである。
【0008】
その結果、胴体と鏡板の溶接時に、環状の内治具60が熱を確実且つ良好に吸収することができず、溶接部が熱歪により変形、収縮したり、或いは、ビードの溶け落ちや穴あき等の溶接不良を引き起こすと言う問題があった。
【0009】
更に、従来の縮拡径自在な内治具は、構造が複雑でコスト高になり、また、胴体及び鏡板の直径が変わった場合には、内治具全体及び外治具全体を胴体や鏡板の直径に応じたものに交換しなければならず、そのため、胴体及び鏡板の直径に応じて多数の内治具及び外治具を容易しておかなければならず、収容スペースが必要になると共に、コスト面においても問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−224693号公報
【特許文献2】特許第4851980号公報
【特許文献2】特許第6222748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、胴体と鏡板の溶接時に熱を確実且つ良好に吸収して溶接による熱歪を大幅に抑制すると共に、ビードの溶け落ちや穴あき等の溶接不良を無くし、また、構造の簡略化及びコスト低減を図れるようにした円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の円周溶接用治具ユニットは、円筒状の胴体と皿状の鏡板を突き合せてその突合せ部を外方から円周方向に溶接する際に用いられ、前記胴体と鏡板の突合せ部を内方から保持する内治具ユニットと、前記鏡板を外方から保持する外治具ユニットとを備えた円周溶接用治具ユニットであって、前記内治具ユニットは、胴体と鏡板の突合せ部の内方に挿入される円盤状の内治具ベースと、内治具ベースの外周位置に環状に配置され、胴体と鏡板の突合せ部の内周面に面接触状態で密着し得る複数の内治具片から成る縮拡径自在な環状の内治具と、内治具ベースと内治具との間に設けられ、内治具を縮拡径させる縮拡径機構とを備え、前記環状の内治具の各内治具片をそれぞれ内治具の軸線方向に二分割して一方を鏡板の端部内周面及び胴体の端部内周面の何れか一方に密着し得る基準側内治具片とする共に、他方を鏡板の端部内周面及び胴体の端部内周面の何れか他方に密着し得る可動側内治具片とし、前記各基準側内治具片を、それぞれ縮拡径機構に連動連結して内治具の径方向へ移動可能とし、また、前記各可動側内治具片を、各内治具片の基準側内治具片にそれぞれ内治具の径方向へ移動可能に支持すると共に、各可動側内治具片を、縮拡径機構と各可動側内治具片との間に介設した弾性体により外方へ付勢したことに特徴がある。
【0013】
本発明の請求項2に記載の円周溶接用治具ユニットは、請求項1に記載の円周溶接用治具ユニットにおいて、前記各基準側内治具片の中央部に円形のピン穴を形成すると共に、前記各可動側内治具片の中央部に内治具の径方向に沿う長穴を形成し、前記各基準側内治具片のピン穴と各可動側内治具片の長穴にそれぞれ連結ピンを挿着し、前記各可動側内治具片を、各基準側内治具片にそれぞれ内治具の径方向へ移動可能で且つ連結ピンを支点して揺動可能に支持する構成としたことに特徴がある。
【0014】
本発明の請求項3に記載の円周溶接用治具ユニットは、請求項1又は請求項2に記載の円周溶接用治具ユニットにおいて、前記各基準側内治具片及び各可動側内治具片の外周面で且つ胴体と鏡板の突合せ面に対向する箇所に、胴体と鏡板の突合せ部の内周面側へシールドガスを流すガス溝を形成したことに特徴がある。
【0015】
本発明の請求項4に記載の円周溶接用治具ユニットは、請求項1〜請求項3何れかに記載の円周溶接用治具ユニットにおいて、円周方向に隣接する基準側内治具片の何れか一方の基準側内治具片の外側面に、他方の基準側内治具片の外側面に摺動し得るガス逃げ防止板を取り付け、また、円周方向に隣接する可動側内治具片の何れか一方の可動側内治具片の外側面に、他方の可動側内治具片の外側面に摺動し得るガス逃げ防止板を取り付け、環状の内治具が拡径したときに前記ガス逃げ防止板により円周方向に隣接する内治具片間の隙間をシールする構成としたことに特徴がある。
【0016】
本発明の請求項5に記載の円周溶接用治具ユニットは、請求項1に記載の円周溶接用治具ユニットにおいて、前記縮拡径機構は、内治具ベースの中心部に内治具ベースの軸線に沿って進退移動自在に設けたロッドと、ロッドの先端部に設けた縮拡径用円盤と、内治具ベースの一方の側面に等角度毎に配設した複数のコ字状のスライドガイドと、内治具ベースと各スライドガイドとの間に環状の内治具の径方向へスライド自在に支持され、外方側の先端部に内治具片の基準側内治具片が取り付けられる複数の連結アームと、両端部が縮拡径用円盤及び複数の連結アームの基端部にそれぞれ回動自在に取り付けられ、縮拡径用円盤の前進時に環状の内治具を拡径させ、縮拡径用円盤の後退時に環状の内治具を縮径させる複数のリンク部材とを備え、前記各連結アームを交換可能としたことに特徴がある。
【0017】
本発明の請求項6に記載の円周溶接用治具ユニットは、請求項1に記載の円周溶接用治具ユニットにおいて、前記外治具ユニットは、複数の取り付け穴を同心円状で且つ所定の角度毎に設けた円盤状の外治具ベースと、外治具ベースの一方の側面に環状に配置され、鏡板の外周面を保持し得る複数の円弧状の外治具片から成る環状の外治具とを備え、前記外治具の各外治具片を外治具ベースに着脱自在に取り付けたことに特徴がある。
【0018】
本発明の請求項7に記載の円周溶接用治具ユニットは、請求項6に記載の円周溶接用治具ユニットにおいて、前記各外治具片に、位置決めピンをそれぞれ突出状態で設け、また、前記外治具ベースの一方の側面に、各外治具片の位置決めピンが着脱自在に嵌合されると共に、各外治具片が環状に配置される位置決め穴を同心円状に形成したことに特徴がある。
【0019】
本発明の請求項8に記載の円周溶接装置は、円筒状の胴体と皿状の鏡板を突き合せてその突合せ部を外方から円周方向に溶接する際に用いる円周溶接装置であって、基台上に設けられ、水平な軸線回りに回転自在な左回転テーブルを有する左回転ユニットと、基台上に左回転ユニットと対向状に設けられ、水平な軸線回りに回転自在な右回転テーブルを有する右回転ユニットと、基台に設けられ、左回転ユニット又は右回転ユニットの少なくとも何れか一方の回転ユニットを他方の回転ユニット側へ進退移動させる走行ユニットと、左回転ユニット及び右回転ユニットに設けられ、突き合された胴体と鏡板とを保持する請求項1〜請求項7の何れかに記載の円周溶接用治具ユニットと、基台上に設けられ、胴体と鏡板の突合せ部を外方から円周溶接するTIG溶接用トーチを備えた溶接ユニットと、を備えていることに特徴がある。
【0020】
本発明の請求項9に記載の円周溶接装置は、請求項8に記載の円周溶接装置おいて、前記円周溶接装置は、前記基台上に左回転ユニット側及び右回転ユニット側へ移動自在に設けられ、上面に胴体を水平姿勢で且つ軸線方向へ移動自在に保持する複数の支持ローラを有するテーブルリフターを更に備えていることに特徴がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の円周溶接用治具ユニットは、円盤状の内治具ベースと、縮拡径自在な環状の内治具と、内治具を縮拡径させる縮拡径機構とを有する内治具ユニットを備え、環状の内治具を形成する各内治具片を内治具の軸線方向にそれぞれ二分割して一方を鏡板の端部内周面及び胴体の端部内周面の何れか一方に密着し得る基準側内治具片とする共に、他方を鏡板の端部内周面及び胴体の端部内周面の何れか他方に密着し得る可動側内治具片とし、各基準側内治具片を、それぞれ縮拡径機構に連動連結して内治具ベースの径方向へ移動可能とし、また、各可動側内治具片を、各基準側内治具片にそれぞれ内治具ベースの径方向へ移動可能に支持すると共に、各可動側内治具片を、縮拡径機構と各可動側内治具片との間に介設した弾性体により外方へ付勢する構成としているため、胴体の内径と鏡板の内径に誤差があっても、各基準側内治具片及び各可動側内治具片が胴体及び鏡板の内周面に確実に密着することになる。
即ち、本発明の円周溶接用治具ユニットは、縮拡径機構に連動連結された各基準側内治具片を拡径して各基準側内治具片により鏡板(又は胴体)の芯を出し、環状の内治具の径方向へ移動可能な各可動側内治具片により各可動側内治具片と胴体(又は鏡板)との隙間を吸収するようにしている。
その結果、本発明の円周溶接用治具ユニットは、胴体と鏡板の溶接時に、内治具ユニットが熱を確実且つ良好に吸収することができるので、溶接による熱歪を大幅に抑制することができると共に、ビードの溶け落ちや穴あきを防止することができ、溶接不良を引き起こすと言うことがない。
【0022】
また、本発明の円周溶接用治具ユニットは、各基準側内治具片の中央部に円形のピン穴を形成すると共に、各可動側内治具片の中央部に内治具の径方向に沿う長穴を形成し、前記各基準側内治具片のピン穴と各可動側内治具片の長穴に連結ピンを挿着し、各可動側内治具片を、各基準側内治具片にそれぞれ内治具ベースの径方向へ移動可能で且つ連結ピンを支点して揺動可能に支持する構成としているため、各可動側内治具片がやじろべえ構造(天秤構造)を呈することになり、胴体(又は鏡板)の内周面に確実且つ良好に密着することになる。
【0023】
更に、本発明の円周溶接用治具ユニットは、各基準側内治具片及び各可動側内治具片の外周面で且つ胴体と鏡板の突合せ面に対向する箇所に、胴体と鏡板の突合せ部の内周面側へシールドガスを流すガス溝を形成しているため、溶接部の酸化を防止することができる。
【0024】
更に、本発明の円周溶接用治具ユニットは、円周方向に隣接する基準側内治具片の何れか一方の基準側内治具片の外側面に、他方の基準側内治具片の外側面に摺動し得るガス逃げ防止板を取り付け、また、円周方向に隣接する可動側内治具片の何れか一方の可動側内治具片の外側面に、他方の可動側内治具片の外側面に摺動し得るガス逃げ防止板を取り付け、環状の内治具が拡径したときに前記ガス逃げ防止板により円周方向に隣接する内治具片間の隙間をシールする構成としているため、胴体と鏡板の突合せ部全周に亘ってシールドガスを流すことができ、溶接部の酸化をより確実に防止することができる。
【0025】
更に、本発明の円周溶接用治具ユニットは、縮拡径機構が、進退移動自在なロッドと、ロッドの先端部に設けた縮拡径用円盤と、内治具ベースの一方の側面に等角度毎に配設した複数のコ字状のスライドガイドと、内治具ベースと各スライドガイドとの間に内治具の径方向へスライド自在に支持され、外方側の先端部に内治具片の基準側内治具片が取り付けられる複数の連結アームと、両端部が縮拡径用円盤及び複数の連結アームの基端部にそれぞれ回動自在に取り付けられ、縮拡径用円盤の前進時に環状の内治具を拡径させ、縮拡径用円盤の後退時に環状の内治具を縮径させる複数のリンク部材とを備え、前記各連結アームを交換可能としているため、胴体及び鏡板の直径が変わった場合には、連結アームを長さの異なるものに取り替えると共に、各内治具片を異なる大きさのものに取り替えることによって対応することができ、一部の部品を交換するだけで良い。その結果、本発明の円周溶接用治具ユニットは、従来の内治具のように胴体及び鏡板の直径に応じたものを多数用意し、胴体及び鏡板の直径が変わった場合に内治具全体を交換したりする必要もなく、設置スペース及びコストの削減を図ることができる。
【0026】
更に、本発明の円周溶接用治具ユニットは、外治具ユニットが、複数の取り付け穴を同心円状で且つ所定の角度毎に設けた円盤状の外治具ベースと、外治具ベースの一方の側面に環状に配置され、鏡板の外周面を保持し得る複数の円弧状の外治具片から成る環状の外治具とを備え、前記内治具の各内治具片を外治具ベースに着脱自在に取り付けているため、胴体及び鏡板の直径が変わった場合には、各外治具片を異なる大きさのものに取り替えることによって対応することができる。その結果、本発明の円周溶接用治具ユニットは、従来の外治具のように胴体及び鏡板の直径に応じたものを多数用意し、胴体及び鏡板の直径が変わった場合に外治具全体を交換したりする必要もなく、設置スペース及びコストの削減を図ることができる。
【0027】
更に、本発明の円周溶接用治具ユニットは、環状の外治具を形成する各外治具片に、位置決めピンをそれぞれ突出状態で設け、また、外治具ベースの一方の側面に、各外治具片の位置決めピンが着脱自在に嵌合されると共に、各外治具片が環状に配置される位置決め穴を同心円状に形成しているため、外治具ベースの所定の位置に環状の外治具を正確に簡単且つ容易にセットすることができる。
【0028】
本発明の円周溶接装置は、上述した円周溶接用治具ユニットを備えているため、胴体と鏡板の溶接時に、溶接による熱歪を大幅に抑制することができると共に、ビードの溶け落ちや穴あきを防止することができ、溶接不良を引き起こすと言うことがない。
【0029】
また、本発明の円周溶接装置は、基台上に左回転ユニット側及び右回転ユニット側へ移動自在に設けられ、上面に胴体を水平姿勢で且つ軸線方向へ移動自在に保持する複数の支持ローラを有するテーブルリフターを備えているため、胴体の直径や長さが異なっても、胴体を所定の位置に簡単且つ容易にセットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る円周溶接用治具ユニットを用いた円周接装置の正面図である。
図2】円周溶接用治具ユニットの内治具ユニットを示し、内治具ユニットの環状の内治具が縮径した状態の正面図である。
図3】同じく内治具ユニットの環状の内治具が縮径した状態の側面図である。
図4】同じく内治具ユニットの環状の内治具が縮径した状態の縦断側面図である。
図5】同じく内治具ユニットの環状の内治具が拡径した状態の正面図である。
図6】同じく内治具ユニットの環状の内治具が拡径した状態の縦断側面図である。
図7】円周溶接用治具ユニットの外治具ユニットの正面図である。
図8】同じく外治具ユニットの縦断側面図である。
図9】内治具ユニットの内治具ベースを示し、(A)は内治具ベースの正面図、(B)は内治具ベースの縦断側面図である。
図10】環状の内治具を形成する各内治具片の基準側内治具片を環状に並べた状態の正面図である。
図11】各内治具片の基準側内治具片を示し、(A)は基準側内治具片の平面図、(B)は基準側内治具片の正面図、(C)は基準側内治具片の側面図、(D)は基準側内治具片の縦断側面図である。
図12】環状の内治具を形成する各内治具片の可動側内治具片を環状に並べた状態の正面図である。
図13】各内治具片の可動側内治具片を示し、(A)は可動側内治具片の平面図、(B)は可動側内治具片の正面図、(C)は可動側内治具片の側面図、(D)は可動側内治具片の縦断側面図である。
図14】内治具ユニットの縮拡径機構の縮拡径用円盤とリンク部材の関係を示し、(A)は縮拡径用円盤に複数のリンク部材を回動自在に取り付けた状態の正面図、(B)は縮拡径用円盤に複数のリンク部材を回動自在に取り付けた状態の縦断側面図である。
図15】縮拡径機構のスライドガイドを示し、(A)はスライドガイドの平面図、(B)はスライドガイドの正面図、(C)はスライドガイドの縦断側面図である。
図16】縮拡径機構の連結アームを示し、(A)は連結アームの正面図、(B)は連結アームの側面図、(C)は連結アームの縦断側面図である。
図17】外治具ユニットの環状の外治具を形成する外治具片を示し、(A)は外治具片の正面図、(B)は外治具片の側面図、(C)は外治具片の縦断側面図、(D)外治具片の縦断側面図である。
図18】円周溶接用治具ユニットを用いて胴体と鏡板を円周溶接する状態の縦断面図である。
図19】内治具ユニットを用いて胴体と鏡板の突合せ部を内方から保持した状態を示し、(A)は胴体の内径が鏡板の内径よりも大きい場合の縦断面図、(B)は胴体の内径が鏡板の内径よりも小さい場合の縦断面図である。
図20】従来の内治具を用いて胴体と鏡板の突合せ部を内方から保持した状態を示し、(A)は胴体の内径が鏡板の内径よりも大きい場合の縦断面図、(B)は胴体の内径が鏡板の内径よりも小さい場合の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る円周溶接用治具ユニット1を用いた円周溶接装置2を示し、当該円周溶接装置2は、ステンレス板や鋼板等の金属材から成る円筒状の胴体Waと皿状の鏡板Wbとを突き合せ、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたタンクやハウジング、ドラム缶等を作製する際に用いるものである。
【0032】
即ち、前記円周溶接装置2は、図1に示す如く、複数のアジャスターボルト3を有する基台4と、基台4上に固定状態で設けられ、水平な軸線回りに回転自在な左回転テーブル5を有する左回転ユニット6と、基台4上に左回転ユニット6と対向状に設けられ、水平な軸線回りに回転自在な右回転テーブル7を有する右回転ユニット8と、基台4に設けられ、右回転ユニット8を左回転ユニット6側へ進退移動させる走行ユニット9と、基台4上に左回転ユニット6側及び右回転ユニット8側へ移動自在に設けられ、上面に胴体Waを水平姿勢で且つ軸線方向(図1の左右方向)へ移動自在に保持する複数の支持ローラ10を有するテーブルリフター11と、左回転ユニット6及び右回転ユニット8に設けられ、突き合された胴体Waと鏡板Wbとを保持する円周溶接用治具ユニット1と、基台4上に設けられ、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部を外方から円周溶接するTIG溶接用トーチ12を備えた溶接ユニット13と、を備えていることに特徴がある。
【0033】
前記左回転ユニット6は、図1に示す如く、操作盤14を設けたボックス状の固定台15と、固定台15に水平な軸線回りに回転自在に支持された円盤状の左回転テーブル5と、固定台15の内方に配設され、左回転テーブル5を水平な軸線回りに回転させるモータ(図示省略)及び伝動機構(図示省略)から成る駆動装置(図示省略)とを備えており、左回転テーブル5が右側(図1の右側)を向く姿勢で基台4上の左側位置に配設されている。
【0034】
前記右回転ユニット8は、図1に示す如く、操作盤16を設けたボックス状の移動台17と、移動台17に水平な軸線回りに回転自在に支持された円盤状の右回転テーブル7と、移動台17の内方に配設され、右回転テーブル7を水平な軸線回りに回転させるモータ(図示省略)及び伝動機構(図示省略)から成る駆動装置(図示省略)と、移動台17に固定した水平姿勢の支持フレーム18と、移動台17及び右回転テーブル7の中心部に回転自在且つ摺動自在に貫通支持され、左回転テーブル5側へ進退移動自在な支持筒19と、支持フレーム18上に敷設したガイドレール20に左回転テーブル5側へ走行自在に支持され、支持筒19を回転駆動するロータリーアクチュエータ21と、ロータリーアクチュエータ21を左回転テーブル5側へ進退移動させるモータ(図示省略)、ラック(図示省略)及びピニオンギア(図示省略)から成る駆動装置(図示省略)とを備えており、右回転テーブル7が左側(図1の左側)を向く姿勢で且つ左回転ユニット6の左回転テーブル5と対向するように基台4上の右側位置に配設固定されている。
【0035】
また、右回転ユニット8の右回転テーブル7の前面には、胴体Waの端面を左回転テーブル5側へ押圧する押圧部材22が等角度毎に設けられている。
【0036】
前記走行ユニット9は、図1に示す如く、基台4上に左右方向に沿って敷設した一対のガイドレール23と、ガイドレール23に走行自在に支持され、右回転ユニット8の移動台17が固定される走行台24と、走行台24をガイドレール23に沿って往復移動させるサーボモータ25及びボールネジ機構(図示省略)から成る駆動装置(図示省略)とを備えており、駆動装置により走行台24をガイドレール23に沿って往復移動させることによって、走行台24に固定した右回転ユニット8が左回転ユニット6側へ進退移動するようになっている。
【0037】
尚、上記の実施形態においては、走行ユニット9により右回転ユニット8を左回転ユニット6側へ進退移動させるようにしたが、他の実施形態においては、走行ユニット9により左回転ユニット6を右回転ユニット8側へ進退移動させるようにしても良く、或いは、走行ユニット9により左回転ユニット6及び右回転ユニット8の両方を進退移動させるようにしても良い。
【0038】
前記テーブルリフター11は、図1に示す如く、走行ユニット9のガイドレール23に左回転ユニット6側及び右回転ユニット8側へ走行自在に支持されており、昇降自在なテーブル11aの上面には、胴体Waを水平姿勢で且つ軸線方向へ移動自在に保持する複数の支持ローラ10が回転自在に設けられている。
【0039】
前記円周溶接用治具ユニット1は、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部を内方から保持する内治具ユニット1′と、前記鏡板Wbを外方から保持する外治具ユニット1″とを備えており、内治具ユニット1′は、右回転ユニット8に設けられ、また、外治具ユニット1″は、左回転ユニット6に設けられている(図1参照)。
【0040】
前記内治具ユニット1′は、図2図8に示す如く、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内方に挿入される円盤状の内治具ベース26と、内治具ベース26に環状に配置され、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面に面接触状態で密着し得る複数の内治具片27′から成る縮拡径自在な環状の内治具27と、内治具ベース26と内治具27との間に設けられ、内治具27を縮拡径させる縮拡径機構28とを備えている。
【0041】
具体的には、前記内治具ベース26は、図9に示す如く、アルミ合金等の金属材により円盤状に形成されており、右側回転ユニット8の支持筒19の先端部に設けた環状のフランジ部材29に固定ボルト30により同心円状に固定されている(図4参照)。
【0042】
また、内治具ベース26の中心部には、右側回転ユニット8の支持筒19の先端部に設けた縮拡径機構28を構成するロッド38が挿通されるロッド挿通穴26aが貫通状に形成されている。尚、ロッド38は、支持筒19の先端部に内蔵した流体圧シリンダ(全体は図示省略)のピストンロッドから成り、内治具ベース26のロッド挿通穴26aに内治具ベース26の軸線に沿って進退移動自在に挿通されている。
【0043】
更に、内治具ベース26の一方の側面(前面)には、縮拡径機構28を構成する縮拡径用円盤39を収容し得る凹部26bが形成されている。尚、縮拡径用円盤39は、ロッド38の先端面に固定ボルト31により固定されている。
【0044】
前記環状の内治具27は、内治具ベース26の外周位置に環状に配置され、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面に面接触状態で密着し得ると共に、環状の内治具27の径方向へ移動自在な複数の内治具片27′から成り、胴体Waと鏡板Wbを突合せ溶接する際に、各内治具片27′の外周面が胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面に面接触状態で密着し、溶接部を冷却して溶接部の熱歪を抑制すると共に、ビードの溶け落ちや穴あきを防止し、また、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するものである。本実施形態では、環状の内治具27は、六つの内治具片27′から成る。
【0045】
また、前記各内治具片27′は、図2及び図4に示す如く、環状の内治具27の軸線方向にそれぞれ二分割されており、二分割された一方を鏡板Wb及び胴体Waの端部内周面の何れか一方に面接触状態で密着し得る基準側内治具片27Aとする共に、他方を鏡板Wb及び胴体Waの端部内周面の何れか他方に面接触状態で密着し得る可動側内治具片27Bとしている。本実施形態では、基準側内治具片27Aの外周面が鏡板Wbの端部内周面に面接触状態で密着すると共に、可動側内治具片27Bの外周面が胴体Waの端部内周面に面接触状態で密着するようになっている。
【0046】
更に、前記各基準側内治具片27Aは、図2及び図4に示す如く、それぞれ縮拡径機構28に連動連結して環状の内治具27の径方向へ移動可能となっており、また、前記各可動側内治具片27Bは、各内治具片27′の基準側内治具片27Aにそれぞれ環状の内治具27の径方向へ移動可能に支持されており、縮拡径機構28と各可動側内治具片27Bとの間に介設した弾性体32により外方へ付勢されている。
【0047】
具体的には、各基準側内治具片27Aは、図10及び図11に示す如く、何れも熱伝導性に優れた銅材により円弧状の厚肉板状に形成されており、各基準側内治具片27Aの中央部には、基準側内治具片27Aに可動側内治具片27Bを連結するための連結ピン33が挿着される円形のピン穴27aと、縮拡径機構28を構成する連結アーム41の先端部が嵌合される窪み部27bとがそれぞれ形成されている。
【0048】
また、各基準側内治具片27Aの内側外周面には、基準側内治具片27Aの内側面(図3の右側面)を可動側内治具片27Bの内側面(図3の左側面)に当接させたときに、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面側へアルゴンガス等のシールドガスを流すガス溝35を形成するための段部27cが形成されている。
【0049】
更に、各基準側内治具片27Aの両端部外側面には、切欠き部27dがそれぞれ設けられている。一方の切欠き部27dは、環状の内治具27が拡径したときに、隣接する内治具片27′間の隙間をシールするガス逃げ防止板34を取り付けるためのものであり、また、他方の切欠き部27dは、隣接する基準側内治具片27Aの端部に取り付けたガス逃げ防止板34が摺動するためのものである。このガス逃げ防止板34は、熱伝導性に優れた銅材により形成されており、外周面が基準側内治具片27Aの外周面と同じ曲率に形成されている。
【0050】
一方、各可動側内治具片27Bは、図12及び図13に示す如く、何れも熱伝導性に優れた銅材により円弧状の厚肉板状に形成されており、各可動側内治具片27Bの中央部には、可動側内治具片27Bを基準側内治具片27Aに連結するための連結ピン33が挿着される長穴27eが形成されている。この長穴27eは、基準側内治具片27Aのピン穴27aに合致し且つ環状の内治具27の径方向に沿って形成されている。
【0051】
また、各可動側内治具片27Bの内側外周面には、可動側内治具片27Bの内側面(図3の左側面)を基準側内治具片27Aの内側面(図3の右側面)に当接させたときに、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面側へアルゴンガス等のシールドガスを流すガス溝35を形成するための段部27fが形成されている。この段部27fは、可動側内治具片27Bに形成したガス通路27gに連通しており、ガス通路27gの入口に接続したシールドガス供給ホース36から供給されたシールドガスがガス通路27gを経てガス溝35へ流入するようになっている。
【0052】
更に、各可動側内治具片27Bの両端部外側面には、切欠き部27hがそれぞれ設けられている。一方の切欠き部27hは、環状の内治具27が拡径したときに、隣接する内治具片27′間の隙間をシールするガス逃げ防止板34を取り付けるためのものであり、また、他方の切欠き部27hは、隣接する可動側内治具片27Bの端部に取り付けたガス逃げ防止板34が摺動するためのものである。このガス逃げ防止板34は、熱伝導性に優れた銅材により形成されており、外周面が可動側内治具片27Bの外周面と同じ曲率に形成されている。
【0053】
そして、各基準側内治具片27A及び各可動側内治具片27Bは、両内治具片27A,27Bの内側面同士を当接させ、基準側内治具片27Aのピン穴27aと可動側内治具片27Bの長穴27eに連結ピン33を挿着して抜け止めすることによりそれぞれ連結される。これにより、可動側内治具片27Bは、基準側内治具片27Aにそれぞれ環状の内治具27の径方向へ移動可能で且つ連結ピン33を支点して揺動可能に支持されることになる。
【0054】
また、各可動側内治具片27Bは、各可動側内治具片27Bと後述する縮拡径機構28との間に介設した弾性体32により外方へ常時付勢されており、各可動側内治具片27Bの外周面が各基準側内治具片27Aの外周面よりも外方へ位置するようになっている。即ち、各可動側内治具片27Bは、縮拡径機構28を構成する複数の連結アーム41に形成した収容穴41cに収容されて先端部が収容穴41cから突出して各可動側内治具片27Bの内周面に当接する弾性体32により外方へ常時付勢されている。本実施形態では、弾性体32は、圧縮コイルスプリングから成り、一つの連結アーム41に一対設けられている。また、各可動側内治具片27Bは、環状の内治具27の径方向へ2mm動くようになっている。
【0055】
更に、環状に配置した各内治具片27′の一方の端部には、ガス逃げ防止板34がビス37により取り付け固定されている。即ち、円周方向に隣接する基準側内治具片27Aの何れか一方の基準側内治具片27Aの外側面に形成した切欠き部27dに、他方の基準側内治具片27Aの外側面に形成した切欠き部27dに摺動し得るガス逃げ防止板34をビス37により取り付け、また、円周方向に隣接する可動側内治具片27Bの何れか一方の可動側内治具片27Bの外側面に形成した切欠き部27hに、他方の可動側内治具片27Bの外側面に形成した切欠き部27hに摺動し得るガス逃げ防止板34をビス37により取り付けている。これにより、環状の内治具27が拡径したときに、ガス逃げ防止板34により円周方向に隣接する内治具片27′間の隙間をシールすることができる(図5参照)。
【0056】
加えて、各内治具片27′を環状に配置したときには、各基準側内治具片27A及び各可動側内治具片27Bの外周面で且つ胴体Waと鏡板Wbの突合せ面に対向する箇所に、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面側へシールドガスを流すガス溝35が形成される(図3及び図4参照)。
【0057】
尚、環状の内治具27は、直径が異なる内治具27が数種類用意されており、胴体Wa及び鏡板Wbの内径に応じて交換できるようになっている。
【0058】
前記縮拡径機構28は、図2図4図6に示す如く、内治具ベース26の中心部に内治具ベース26の軸線に沿って進退移動自在に設けたロッド38と、ロッド38の先端部に設けた縮拡径用円盤39と、内治具ベース26の一方の側面(前面)に等角度毎に配設した複数のコ字状のスライドガイド40と、内治具ベース26と各スライドガイド40との間に環状の内治具27の径方向へスライド自在に支持され、外方側の先端部に内治具片27′の基準側内治具片27Aが取り付けられる複数の連結アーム41と、両端部が縮拡径用円盤39及び複数の連結アーム41の基端部に連結軸42を介してそれぞれ回動自在に取り付けられ、縮拡径用円盤39の前進時に環状の内治具27を拡径させ、縮拡径用円盤39の後退時に環状の内治具27を縮径させる複数のリンク部材43とを備え、前記各連結アーム41を交換可能としたものである。
【0059】
具体的には、前記ロッド38は、右側回転ユニットの支持筒19の先端部に内蔵した流体圧シリンダのピストンロッドから成り、内治具ベース26のロッド挿通穴26aに内治具ベース26の軸線に沿って進退移動自在に挿通されている。
【0060】
前記縮拡径用円盤39は、アルミ合金等の金属材により形成されており、外周縁部には、連結アーム41の基端部を連結するための二股部39aが等角度毎に設けられている(図14参照)。この縮拡径用円盤39は、ロッド38の先端面に固定ボルト31により鉛直姿勢で固定されている(図4参照)。本実施形態では、縮拡径用円盤39の外周縁部に六つの二股部39aが等角度毎に形成されている。
【0061】
前記スライドガイド40は、アルミ合金等の金属材によりコ字状に形成されており、内治具ベース26の一方の側面(前面)に同心円上で且つ等角度毎に配設され、複数の固定ボルト44により内治具ベース26の前面に固定されている(図5及び図15参照)。本実施形態では、スライドガイド40は、内治具ベース26の前面に六つ配設されている。
【0062】
前記連結アーム41は、アルミ合金等の金属材により形成されており、基端部には、縮拡径用円盤39の二股部39aに連結される二股部41aが形成されていると共に、先端部には、基準側内治具片27Aのピン穴27aに合致するピン穴41bが形成されている(図16参照)。また、連結アーム41の先端部には、内治具片27′の可動側内治具片27Bを外方へ付勢する弾性体32を収容するための収容穴41cが連結アーム41の長手方向に沿って二つ形成されている(図4及び図16参照)。更に、連結アーム41は、基端部が内治具ベース26と各スライドガイド40との間にスライド自在に支持されており、環状の内治具27の径方向へスライドするようになっている。加えて、連結アーム41の先端部は、内治具片27′の基準側内治具片27Aの窪み部27bに嵌合されており、連結ピン33により内治具片27′の基準側内治具片27Aに連結されている。本実施形態では、連結アーム41は、六つ使用されている。
【0063】
尚、連結アーム41は、長さが異なる連結アーム41が数種類用意されており、胴体Wa及び鏡板Wbの内径に応じて交換できるようになっている。
【0064】
前記リンク部材43は、アルミ合金等の金属材により形成されており、一端部が縮拡径用円盤39の二股部39aに連結軸42を介して回動自在に連結されていると共に、他端部が連結アーム41の二股部41aに連結軸42を介して回動自在に連結されている(図2図4及び図5参照)。これにより、縮拡径用円盤39と連結アーム41とは、リンク部材43を介して連動連結されることになる。本実施形態では、リンク部材43は、六つ使用されている。
【0065】
而して、前記縮拡径機構28によれば、ロッド38を前進させて縮拡径用円盤39を前方へ押し出すと、リンク部材43により連結アーム41が内治具ベース26の外方へ摺動移動して環状の内治具27が拡径し(図5及び図6参照)、また、ロッド38を後退させて縮拡径用円盤39を内治具ベース26側へ引き戻すと、リンク部材43により連結アーム41が内治具ベース26の内方へ摺動移動して環状の内治具27が縮径するようになっている(図2及び図4参照)。
【0066】
前記外治具ユニット1″は、図7及び図8に示す如く、円盤状の外治具ベース45と、外治具ベース45の一方の側面に環状に配置され、鏡板Wbの外周面を保持し得る複数の円弧状の外治具片46′から成る環状の外治具46とを備えており、外治具46の各外治具片46′を外治具ベース45に着脱自在に取り付けている。本実施形態では、環状の外治具46は、六つの外治具片46′から成る。
【0067】
具体的には、前記外治具ベース45は、図7及び図8に示す如く、アルミ合金等の金属材により環状の円盤に形成された外治具ベース板45′と、アルミ合金等の金属材により円盤状に形成され、外治具ベース板45′の中心部に嵌合されて固定ボルト47により固定された外治具ベース中板45″とを備えており、外治具ベース45の一方の側面(前面)には、外治具46の各外治具片46′を取り付けるための取り付け穴45a(雌ネジ穴)と各外治具片46′を位置決めするための位置決め穴45bとが同心円状で且つ所定の角度毎に設けられている。
【0068】
一方、前記環状の外治具46は、図7及び図17に示す如く、熱伝導性に優れた銅材により円弧状の厚肉板状に形成された六つの外治具片46′から成り、各外治具片46′の外治具ベース45に対向する面には、外治具ベース45に形成した位置決め穴45aに着脱自在に挿着される位置決めピン46aが突出状態で一対設けられている。また、各外治具片46′には、外治具ベース45に形成した取り付け穴45aに合致するボルト挿通孔46bが一対設けられている。
【0069】
尚、環状の外治具46は、曲率半径及び大きさの異なる環状の外治具46が数種類用意されており、胴体Wa及び鏡板Wbの外径に応じて交換できるようになっている。
【0070】
而して、外治具ユニット1″は、外治具ベース45の同一円周上に各外治具片46′を環状に配置し、各外治具片46′の位置決めピン46aを外治具ベース45の位置決め穴45bに挿着して各外治具片46′を位置決めし、この状態で各外治具片46′を固定ボルト48により外治具ベース45に固定することにより組み立てられる。
【0071】
また、外治具ユニット1″は、複数本の取り付けシャフト49により左回転ユニット6の左回転テーブル5の前面(図1の右側面)に対向状に取り付けられており、環状の外治具46が内治具ユニット1′側を向いている。
【0072】
前記溶接ユニット13は、図1に示す如く、先端部からアルゴンガス等のシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒12aを挿着したTIG溶接用トーチ12と、TIG溶接用トーチ12を上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在に支持するトーチ支持ユニット50と、溶接条件等を設定して溶接電流や溶接速度等を表示するタッチパネル51及び設定用の各種スイッチ52を設けた主操作盤53と、溶接用電源装置(図示省略)と、溶接用ガスボンベ(図示省略)等を備えており、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部を外方から円周溶接する際に、TIG溶接用トーチ12が胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の近傍位置まで移動し、この位置でTIG溶接用トーチ12が先端部からシールドガスを流しながら、軸線を中心にして回転する胴体Waと鏡板Wbの突合せ部をシールドガスの雰囲気中でアークにより円周溶接するようになっている。
【0073】
尚、TIG溶接用トーチ12には、シールドガスを外側と内側に分流し且つ内側のシールドガスを外側のシールドガスより高速で噴出させるようにシールドノズルの内側に狭窄ノズルを備えたTIG溶接用トーチ12が使用されている。このTIG溶接用トーチ12には、特許第5602974号公報及び特許第5887445号公報に記載されたものが使用されている。
【0074】
次に、上述した円周溶接用治具ユニット1を用いた円周溶接装置2により円筒状の胴体Waと皿状の鏡板Wbを円周溶接する場合について説明する。
【0075】
尚、胴体Wa及び鏡板Wbは、ステンレス材により形成されている。また、溶接電流、アーク長さ、胴体Wa及び鏡板Wbの回転速度、シールドガスの供給量等の溶接条件は、胴体Wa及び鏡板Wbの材質、厚み等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。
【0076】
先ず、鏡板Wbを外治具ユニット1″の環状の外治具46内に嵌め込むと共に、胴体Waをテーブルリフター11のテーブル11a上の支持ローラ10にセットして水平姿勢で保持し、この状態でテーブルリフター11を上昇させて胴体Waの一端部(左回転ユニット6に対向する端部)を鏡板Wbの端部に対向させる。
【0077】
次に、胴体Waを手動により鏡板Wb側へスライドさせて胴体Waの端部を鏡板Wbの端部に当接させ、この状態で右回転ユニット8を前進させて右回転テーブル7に設けた押圧部材により胴体Waを鏡板Wb側へ押圧し、胴体Waの端部を鏡板Wbの端部に密着させる。
【0078】
引き続き、支持筒19を前進させてその先端部に取り付けた内治具ユニット1′の環状の内治具27を胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内方に位置させ、この状態で内治具ユニット1′の環状の内治具27を縮拡径機構28により拡径させて胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面近傍へ面接触状態で密着させる。
【0079】
このとき、環状の内治具27は、各内治具片27′を内治具27の軸線方向にそれぞれ二分割して一方を鏡板Wbの端部内周面に密着し得る基準側内治具片27Aとする共に、他方を胴体Waの端部内周面に密着し得る可動側内治具片27Bとし、各基準側内治具片27Aを、それぞれ縮拡径機構28に連動連結して内治具ベース26の径方向へ移動可能とし、また、各可動側内治具片27Bを、各基準側内治具片27Aにそれぞれ内治具27の径方向へ移動可能に支持すると共に、各可動側内治具片27Bを、縮拡径機構28と各可動側内治具片27Bとの間に介設した弾性体32により外方へ付勢する構成としているため、図19(A)及び(B)に示すように、胴体Waと内径と鏡板Wbの内径に誤差があっても、各基準側内治具片27A及び各可動側内治具片27Bが胴体Wa及び鏡板Wbの内周面に確実に密着することになる。
【0080】
胴体Waと鏡板Wbが突き合された状態でその突合せ部が内治具ユニット1′により内方から保持されると、テーブルリフター11が下降し、この状態で左回転ユニット6、右回転ユニット8及び溶接ユニット13が作動して胴体Waと鏡板Wbの突合せ部が外方から円周方向に溶接される。
【0081】
即ち、左回転テーブル5、右回転テーブル7及び支持筒19により胴体Waと鏡板Wbが一定の速度で同期的に同じ方向へ回転すると共に、シールドガス供給ホース36及びガス通路27gにより胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面側にシールドガスが供給され、この状態で溶接装置ユニットのTIG溶接用トーチ12が前進・下降してアークを発生させ、胴体Waと鏡板Wbの突合せ部を外方から円周溶接する。
【0082】
このとき、内治具ユニット1′の環状の内治具27が拡径して胴体Waと鏡板Wbの突合せ部の内周面に面接触状態で密着しているため、円周溶接するときに環状の内治具27により溶接部が冷却され、溶接部の熱歪が大幅に抑制されると共に、ビードの溶け落ちや穴あきが防止されることになり、溶接不良を引き起こすと言うことがない。
【0083】
そして、胴体Waと鏡板Wbの円周溶接が終了すれば、左回転テーブル5、右回転テーブル7及び支持筒19の回転が停止されると共に、アーク及びシールドガスがストップされて溶接ユニット13のTIG溶接用トーチ12が上昇・後退して元の位置へ復帰する。
【0084】
その後、テーブルリフター11が上昇して円周溶接された胴体Waと鏡板Wbを保持し、環状の内治具27が縮径すると共に、右回転ユニット8を後退させて胴体Wa内から内治具ユニット1′を引き抜く。
【0085】
最後に、鏡板Wbを外治具46から取り外し、テーブルリフター11を下降させてテーブルリフター11から円周溶接された胴体Wa及び鏡板Wbを取り出す。
【0086】
尚、上記の実施形態においては、環状の内治具27の各内治具片27′を形成する基準側内治具片27A及び可動側内治具片27Bのうち、基準側内治具片27Aを鏡板Wbの端部内周面に密着させ、また、可動側内治具片27Bを胴体Waの端部内周面に密着させるようにしたが、他の実施形態においては、基準側内治具片27Aを胴体Waの端部内周面に密着させ、また、可動側内治具片27Bを鏡板Wbの端部内周面に密着させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0087】
1は円周溶接用治具ユニット、1′は内治具ユニット、1″は外治具ユニット、2は円周溶接装置、4は基台、5は左回転テーブル、6は左回転ユニット、7は右回転テーブル、8は右回転ユニット、9は走行ユニット、10は支持ローラ、11はテーブルリフター、12はTIG溶接用トーチ、13は溶接ユニット、26は内治具ベース、27は環状の内治具、27′は内治具片、27Aは基準側内治具片、27Bは可動側内治具片、27aはピン穴、27eは長穴、28は縮拡径機構、33は連結ピン、34はガス逃げ防止板、35はガス溝、38はロッド、39は縮拡径用円盤、40はスライドガイド、41は連結アーム、43はリンク部材、45は外治具ベース、45bは位置決め穴、46は環状の外治具、46′は外治具片、46aは位置決めピン、Waは胴体、Wbは鏡板。
図1
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