特許第6829900号(P6829900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6829900データ生成方法、義歯製造方法、データ生成プログラム、データ生成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829900
(24)【登録日】2021年1月27日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】データ生成方法、義歯製造方法、データ生成プログラム、データ生成システム
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/36 20060101AFI20210208BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   A61C13/36
   A61C8/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-117509(P2019-117509)
(22)【出願日】2019年6月25日
(65)【公開番号】特開2021-3212(P2021-3212A)
(43)【公開日】2021年1月14日
【審査請求日】2019年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】518043830
【氏名又は名称】デンテックインターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山下 恒彦
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−515960(JP,A)
【文献】 特表2015−531652(JP,A)
【文献】 特開2018−192197(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/036853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/36
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャンボディをインプラント体に装着した状態で口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第1データと、
仮歯を前記インプラント体に装着した状態でオッセインテグレーションが進行した後に口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第2データと、
前記仮歯の形状を示す第3データと、に基づいて、
口腔内における前記インプラント体の位置及び姿勢と、前記インプラント体に前記仮歯を装着した状態における前記仮歯の周囲の歯肉の推定形状と、を示す第4データを生成してメモリに記憶させる生成工程を含むデータ生成方法。
【請求項2】
前記第2データは、義歯を作成する段階になってから口腔内を前記口腔内スキャナで撮影して得られたものである請求項1に記載のデータ生成方法。
【請求項3】
前記第2データに示される仮歯の位置と前記第3データに示される仮歯の位置とを一致させることにより、前記第2データにおける前記仮歯の位置に前記第3データが示す前記仮歯の形状を合成した第5データを生成してメモリに記憶させる合成工程を含み、
前記生成工程においてメモリに記憶された前記第5データに基づいて前記第4データを生成する請求項に記載のデータ生成方法。
【請求項4】
前記第1データに示される前記スキャンボディの外形に基づいて口腔内における前記インプラント体の位置を特定し、特定された前記インプラント体の位置を示す位置データをメモリに記憶させる特定工程を含み、
前記生成工程においてメモリに記憶された前記位置データに基づいて前記第4データを生成する請求項1から3のいずれか1項に記載のデータ生成方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のデータ生成方法により生成された前記第4データに基づいて義歯を製造する義歯製造方法。
【請求項6】
スキャンボディをインプラント体に装着した状態で口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第1データと、
仮歯を前記インプラント体に装着した状態でオッセインテグレーションが進行した後に口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第2データと、
前記仮歯の形状を示す第3データと、に基づいて、
口腔内における前記インプラント体の位置及び姿勢と、前記インプラント体に前記仮歯を装着した状態における前記仮歯の周囲の歯肉の推定形状と、を示す第4データを生成してメモリに記憶させる生成機能をコンピュータに実現させるデータ生成プログラム。
【請求項7】
スキャンボディをインプラント体に装着した状態で口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第1データと、
仮歯を前記インプラント体に装着した状態でオッセインテグレーションが進行した後に口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第2データと、
前記仮歯の形状を示す第3データと、に基づいて、
口腔内における前記インプラント体の位置及び姿勢と、前記インプラント体に前記仮歯を装着した状態における前記仮歯の周囲の歯肉の推定形状と、を示す第4データを生成してメモリに記憶させる生成部を備えるデータ生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ生成方法、義歯製造方法、データ生成プログラム、及びデータ生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
喪失した歯の機能再獲得のために、口腔インプラント治療が普及している。口腔インプラント治療とは、喪失した歯部位の顎骨にチタン製のインプラント体を植立し、そのインプラント体に義歯を支持させる技術である。義歯を製作しインプラント体に取り付ける前に、仮歯が用いられる場合がある。特許文献1の図11には、歯槽骨に埋入されたインプラント体に義歯が取り付けられた状態が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−136428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮歯は、インプラント体の埋入手術と同時に作成され、インプラント体に取り付けられる。その状態で、オッセインテグレーションが進行するまで2〜6ヶ月間静置される。オッセインテグレーションが進行した後に、仮歯が取り外され、シリコン印象材で印象取得が行われる。取得された印象に基づいて石膏模型が作成され、石膏模型に基づいて義歯が作成される。義歯がインプラント体に取り付けられて、口腔インプラント治療が完了する。
【0005】
仮歯を取り付けてオッセインテグレーションが進行する間に、インプラント体の位置や角度、仮歯と他の歯との位置関係が変化する。その変化に応じて、仮歯の形状が何度か修正される。そしてオッセインテグレーション進行の間に仮歯の周囲に歯肉が形成され、その形状は仮歯の形状に沿ったものとなる。オッセインテグレーション期間の終わる頃には、仮歯及びその周囲に形成される歯肉の形状は患者にとって理想的なものとなる。
【0006】
しかし義歯作成の際に、印象取得のために仮歯を取り外すと、歯肉は即時に変形を開始し、理想的な形状から変化してしまう。従って、取得された印象に基づいて作成された石膏模型は、歯肉の理想形状を反映したものとはなり得ない。そのような石膏模型に基づいて作成される義歯は、患者にとって理想的な形状とはいえない。
【0007】
近年、シリコン印象材を用いた印象取得に換えて、口腔内スキャナにより患者の口腔内の形状を3Dデータとして取得し、その3Dデータに基づいて義歯を作成する技術が普及している。この方式においても、仮歯の取り外しに伴う歯肉の変形は発生し、取得された3Dデータにおける歯肉の形状は、変形後の形状となる。従って、取得された3Dデータにより作成された義歯は理想的な形状とはなり得ない。
【0008】
上述の事情に鑑み、本発明の目的は、口腔インプラント治療において患者にとってより良い義歯を作成できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔構成1〕
本発明のデータ生成方法は、
スキャンボディをインプラント体に装着した状態で口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第1データと、
仮歯を前記インプラント体に装着した状態でオッセインテグレーションが進行した後に口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第2データと、
前記仮歯の形状を示す第3データと、に基づいて、
口腔内における前記インプラント体の位置及び姿勢と、前記インプラント体に前記仮歯を装着した状態における前記仮歯の周囲の歯肉の推定形状と、を示す第4データを生成してメモリに記憶させる生成工程を含むことを特徴とする。
【0010】
仮歯の周囲に形成された歯肉の形状は、仮歯の形状に沿うものとなる。仮歯を装着した状態では、その歯肉の形状を口腔内スキャナで撮影することは不可能であるが、歯肉形状を仮歯形状から推測することが可能である。上記の特徴構成によれば、仮歯の形状を示す第3データと、仮歯を装着した状態でオッセインテグレーションが進行した後に撮影された第2データとに基づいて第4データを生成することにより、第4データに仮歯の周囲の歯肉の推定形状を含ませることができる。加えて第1データを用いることにより、口腔内におけるインプラント体の位置及び姿勢を第4データに含ませることができる。このようにして生成された第4データは、理想的な歯肉の形状を反映したものであり、かつ義歯が装着されるインプラント体の位置及び姿勢も含まれているので、この第4データを用いて患者の口腔に良く適合する義歯を作成することが可能となる。
〔構成2〕
本発明において、
前記第2データは、義歯を作成する段階になってから口腔内を前記口腔内スキャナで撮影して得られたものであると好適である。
【0011】
〔構成
本発明において、
前記第2データに示される仮歯の位置と前記第3データに示される仮歯の位置とを一致させることにより、前記第2データにおける前記仮歯の位置に前記第3データが示す前記仮歯の形状を合成した第5データを生成してメモリに記憶させる合成工を含み、
前記生成工程においてメモリに記憶された前記第5データに基づいて前記第4データを生成すると好適である。
【0012】
上記の特徴構成によれば、第2データにおける適切な位置に仮歯の形状を合成することができるので、第4データに含まれる仮歯の周囲の歯肉の推定形状が更に適切なものとなる。従って、第4データを用いて患者の口腔に更に良く適合する義歯を作成することが可能となる。
【0013】
〔構成
本発明において、
前記第1データに示される前記スキャンボディの外形に基づいて口腔内における前記インプラント体の位置を特定し、特定された前記インプラント体の位置を示す位置データをメモリに記憶させる特定工程を含み、
前記生成工程においてメモリに記憶された前記位置データに基づいて前記第4データを生成すると好適である。
【0014】
上記の特徴構成によれば、口腔内におけるインプラント体の位置が確実に特定されるので、第4データに含まれるインプラント体の位置及び姿勢が更に適切なものとなる。従って、第4データを用いて患者の口腔に更に良く適合する義歯を作成することが可能となる。
【0015】
〔構成
本発明の義歯製造方法は、
請求項1から3のいずれか1項に記載のデータ生成方法により生成された前記第4データに基づいて義歯を製造することを特徴とする。
【0016】
生成された第4データは、理想的な歯肉の形状を反映したものであり、義歯が装着されるインプラント体の位置及び姿勢も含まれている。上記の特徴構成によれば、生成された第4データに基づいて義歯に用いられる上部構造体が製造されるので、患者の口腔に良く適合する義歯を作成することが可能となる。
【0017】
〔構成
本発明のデータ生成プログラムは、
スキャンボディをインプラント体に装着した状態で口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第1データと、
仮歯を前記インプラント体に装着した状態でオッセインテグレーションが進行した後に口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第2データと、
前記仮歯の形状を示す第3データと、に基づいて、
口腔内における前記インプラント体の位置及び姿勢と、前記インプラント体に前記仮歯を装着した状態における前記仮歯の周囲の歯肉の推定形状と、を示す第4データを生成してメモリに記憶させる生成機能をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0018】
仮歯の周囲に形成された歯肉の形状は、仮歯の形状に沿うものとなる。仮歯を装着した状態では、その歯肉の形状を口腔内スキャナで撮影することは不可能であるが、歯肉形状を仮歯形状から推測することが可能である。上記の特徴構成によれば、仮歯の形状を示す第3データと、仮歯を装着した状態で撮影された第2データとに基づいて第4データを生成することにより、第4データに仮歯の周囲の歯肉の推定形状を含ませることができる。加えて第1データを用いることにより、口腔内におけるインプラント体の位置及び姿勢を第4データに含ませることができる。このようにして生成された第4データは、理想的な歯肉の形状を反映したものであり、かつ義歯が装着されるインプラント体の位置及び姿勢も含まれているので、この第4データを用いて患者の口腔に良く適合する義歯を作成することが可能となる。
【0019】
〔構成
本発明のデータ生成システムは、
スキャンボディをインプラント体に装着した状態で口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第1データと、
仮歯を前記インプラント体に装着した状態でオッセインテグレーションが進行した後に口腔内を口腔内スキャナで撮影して得られる第2データと、
前記仮歯の形状を示す第3データと、に基づいて、
口腔内における前記インプラント体の位置及び姿勢と、前記インプラント体に前記仮歯を装着した状態における前記仮歯の周囲の歯肉の推定形状と、を示す第4データを生成してメモリに記憶させる生成部を備えることを特徴とする。
【0020】
仮歯の周囲に形成された歯肉の形状は、仮歯の形状に沿うものとなる。仮歯を装着した状態では、その歯肉の形状を口腔内スキャナで撮影することは不可能であるが、歯肉形状を仮歯形状から推測することが可能である。上記の特徴構成によれば、仮歯の形状を示す第3データと、仮歯を装着した状態で撮影された第2データとに基づいて第4データを生成することにより、第4データに仮歯の周囲の歯肉の推定形状を含ませることができる。加えて第1データを用いることにより、口腔内におけるインプラント体の位置及び姿勢を第4データに含ませることができる。このようにして生成された第4データは、理想的な歯肉の形状を反映したものであり、かつ義歯が装着されるインプラント体の位置及び姿勢も含まれているので、この第4データを用いて患者の口腔に良く適合する義歯を作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】データ生成システムの概略的な構成を示す模式図である。
図2】インプラント治療に用いられる器具の構成を示す概略図である。
図3】インプラント治療に用いられる器具の構成を示す概略図である。
図4】第1データの3次元画像の例を示す図である。
図5図4における平面Aによる、第1データの3次元画像の断面を示す図である。
図6】第2データの3次元画像の例を示す図である。
図7図6における平面Bによる、第2データの3次元画像の断面を示す図である。
図8】第3データの3次元画像の例を示す図である。
図9】第4データ生成処理を示すフローチャートである。
図10】第2中間データの例を示す図である。
図11】第3中間データの例を示す図である。
図12】第4データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔データ生成システムの概略〕
本発明によるデータ生成システムの概略を図1に基づいて説明する。ここで説明されるデータ生成システムは、口腔インプラント治療において、インプラント体に取り付けられる義歯を製造するために用いられる。
【0023】
歯科医院に、口腔内スキャナ1及び制御装置2が設置されている。口腔内スキャナ1は、患者の口腔内を撮影して、光学印象を取得する装置である。制御装置2は、口腔内スキャナ1の動作制御、取得された光学印象の電子データ化、当該電子データの保存、及び歯科技工士ラボへの電子データの送信を行う。制御装置2は例えば、デスクトップコンピュータである。
【0024】
歯科技工士ラボに、情報処理装置3、設計装置4、及び製造装置5が設置されている。情報処理装置3は、歯科医院の制御装置2から送信された電子データの保存、保存された電子データに対する画像処理を行う。設計装置4は、情報処理装置3から送信された電子データに基づいて、歯科技工士に操作されて義歯の設計データを生成する。製造装置5は、設計装置4から送信された設計データに基づいて、義歯の製造を行う。情報処理装置3及び設計装置4は例えば、デスクトップコンピュータである。情報処理装置3と設計装置4とが一つのデスクトップコンピュータで兼ねられてもよい。製造装置5は例えば、ミリングマシンである。
【0025】
情報処理装置3は、CPU等により構成される制御部10(生成部の一例)と、ROM、RAM、及びHDD等により構成される記憶部20(メモリの一例)とを備えている。制御部10は、制御プログラムにより構成される特定部11、合成部12、推定部13、及び画像処理部14を備えている。制御部10の各機能部の動作については後述する。
【0026】
図2図3を参照して、インプラント治療に用いられる器具等について説明する。インプラント治療において、患者の歯槽骨Hにインプラント体30が埋入される。図2に示されるように、インプラント体30の先端部に仮歯40又は義歯50が取り付けられる。仮歯40は、インプラント体30に取り付けられるアバットメント41と、アバットメント41に取り付けられる上部構造体42とにより構成される。義歯50は、インプラント体30に取り付けられるアバットメント51と、アバットメント51に取り付けられる上部構造体52とにより構成される。仮歯40及び義歯50の周囲には、歯肉Sが形成される。インプラント体30の位置及び姿勢を特定するために、図3に示されるように、インプラント体30にスキャンボディ60を取り付けた状態で光学印象の取得が行われる。仮歯40、義歯50、及びスキャンボディ60は、多角形のはめ合い構造等とネジ機構とによって、インプラント体30に対して所定の位置関係及び角度にて取り付けられる。従って、口腔内スキャナ1により取得された光学印象において、スキャンボディ60の位置及び姿勢を特定することにより、インプラント体30の位置及び姿勢を特定することができる。
【0027】
〔第1データ、第2データ、第3データ〕
口腔インプラント治療において、インプラント体に仮歯が取り付けられてオッセインテグレーションが進行し、義歯を作成する段階になったとする。歯科医院にて、口腔内スキャナ1により第1データ、第2データ、及び第3データの取得が行われる。
【0028】
図4図5に第1データの例が示されている。図5は、図4における平面Aによる、第1データの3次元画像の断面を示す図である。第1データは、スキャンボディ60をインプラント体30に装着した状態で、患者の口腔内を口腔内スキャナ1で撮影して得られる3次元画像データである。第1データの画像には、患者の歯Tの表面、歯肉Sの表面、及びスキャンボディ60の表面が現れている。インプラント体30は口腔内に露出せず歯槽骨H及び歯肉Sに埋没しているため、第1データの画像に現れない。
【0029】
図6図7に第2データの例が示されている。図7は、図6における平面Bによる、第2データの3次元画像の断面を示す図である。第2データは、仮歯40をインプラント体30に装着した状態で、患者の口腔内を口腔内スキャナ1で撮影して得られる3次元画像データである。第2データの画像には、患者の歯Tの表面、歯肉Sの表面、及び仮歯40の表面が現れている。インプラント体30は口腔内に露出せず歯槽骨H及び歯肉Sに埋没しているため、第2データの画像に現れない。
【0030】
図8に第3データの例が示されている。第3データは、仮歯40の形状を示すデータである。第3データの画像には、仮歯40の表面が現れている。本実施形態では、第3データは仮歯40を口腔内スキャナ1で撮影して得られる3次元画像データである。
【0031】
図1に示されるように、歯科医院にて取得された第1データ、第2データ、及び第3データが歯科技工士ラボの情報処理装置3に送信され、これらのデータに基づいて歯科技工士ラボにて義歯の製造が行われる。まず、情報処理装置3が第4データを生成し、設計装置4に送信する。第4データは、口腔内におけるインプラント体30の位置及び姿勢と、インプラント体30に仮歯40を装着した状態における仮歯40の周囲の歯肉Sの推定形状S1と、を示す3次元画像データである。歯科技工士が、第4データが示す3次元画像を参照しながら、設計装置4を操作して義歯50の形状を設計する。設計装置4は、歯科技工士の設計した義歯50の形状を示す設計データを生成し、情報処理装置3へ送信する。情報処理装置3は、製造装置5へ設計データを送信する。製造装置5は、送信された設計データに基づいて義歯50を製造する。製造された義歯50が、歯科技工士ラボから歯科医院へ納入され、患者のインプラント体30へ取り付けられる。
【0032】
〔第4データ生成処理〕
図9のフローチャートを参照しながら、歯科技工士ラボの情報処理装置3にて行われる第4データ生成処理を説明する。
【0033】
特定部11は、第1データに示されるスキャンボディ60の外形に基づいて口腔内におけるインプラント体30の位置を特定し、特定されたインプラント体30の位置を示す位置データを記憶部20に記憶させる(ステップ#01、#02)。詳しくは、特定部11は、第1データに示される歯Tの位置と第2データに示される歯Tの位置とが一致するように、第2データに第1データを重ね合せて、第1中間データとして記憶部20に記憶させる(ステップ#01)。ここで第1データの3次元画像には、図4図5に示されるように、歯Tの表面、歯肉Sの表面、及びスキャンボディ60の表面が現れている。第2データの3次元画像には、図6図7に示されるように、歯Tの表面、歯肉Sの表面、及び仮歯40の表面が現れている。第2データに第1データを重ね合せることにより、第2データにおける仮歯40の位置に、第1データのスキャンボディ60が現れることになる。
【0034】
特定部11は、第1中間データに示されるスキャンボディ60の外形に基づいて、口腔内におけるインプラント体30の位置を特定し、特定されたインプラント体30の位置を示す位置データを記憶部20に記憶させる(ステップ#02)。インプラント体30の位置の特定は、例えば次のようにして行われる。記憶部20には、複数種類のスキャンボディ60の外形、スキャンボディ60に対応するインプラント体30の外形、及びスキャンボディ60と係合した状態でのスキャンボディ60とインプラント体30との位置関係を示す対応データが記憶されている。特定部11は、画像認識の技術を用いて、記憶部20に記憶された対応データに基づき、第1中間データに示されるスキャンボディ60の外形から、スキャンボディ60の型番を特定する。特定部11は、特定されたスキャンボディ60の型番から、記憶部20に記憶された対応データに基づき、スキャンボディ60と係合した状態のインプラント体30の位置及び姿勢を特定し、位置データとして記憶部20に記憶させる。
【0035】
合成部12は、記憶部20に記憶された位置データに基づいて、第1中間データに、スキャンボディ60に対応するインプラント体30の外形を合成して、第2中間データとして記憶部20に記憶させる(ステップ#03)。インプラント体30の外形は、記憶部20に記憶された対応データから読み出される。図10に、第2中間データの例が示されている。
【0036】
画像処理部14は、第2中間データの画像から、スキャンボディ60に対応する部分を削除する(ステップ#04)。
【0037】
合成部12は、第2中間データに示される仮歯40の位置と第3データに示される仮歯40の位置とを一致させることにより、第2中間データにおける仮歯40の位置に第3データが示す仮歯40の形状を合成して、第3中間データ(第5データの一例)として記憶部20に記憶させる(ステップ#05)。ここで第2中間データの3次元画像には、図10に示されるように、仮歯40の表面形状が現れている。第3データの3次元画像には、図8に示されるように、仮歯40の表面形状が現れている。合成部12は、第3データが示す仮歯40の表面形状が、第2中間データが示す仮歯40の表面形状と一致するような、第2中間データの画像における第3データの画像(仮歯40の画像)の位置を決定する。これにより、第2中間データに示される仮歯40の位置と第3データに示される仮歯40の位置とが一致する。合成部12は、第2中間データにおける決定した位置に第3データの画像を合成して、第3中間データを生成し、記憶部20へ記憶させる。
【0038】
図11に、第3中間データの例が示されている。第3中間データの画像には、患者の歯肉Sの表面、仮歯40の表面、及びインプラント体30の外形が現れている。第3中間データの画像には、第2中間データには現れていなかった仮歯40の首部43の表面が、第3データを合成したことにより現れている。
【0039】
推定部13は、第3中間データに基づいて、インプラント体30に仮歯40を装着した状態における仮歯40の周囲の歯肉の形状を推定する(ステップ#06)。本実施形態では、推定部13は、第3中間データに示される仮歯40の首部43の表面形状を、歯肉Sの推定形状S1とする。これは、インプラント体30に仮歯40が取り付けられてオッセインテグレーションが進行する間に、歯肉Sが仮歯40の首部43の表面に接触するように形成されることによる。
【0040】
画像処理部14は、第3中間データの画像から、仮歯40の表面のうち不要な部分を削除して、第4データとして記憶部20に記憶させる(ステップ#07)。詳しくは、画像処理部14は、第3中間データの画像から仮歯40の首部43を除く部分を削除する。図12に、第4データの例が示されている。第4データには、口腔内におけるインプラント体30の位置及び姿勢と、インプラント体30に仮歯40を装着した状態における仮歯40の周囲の歯肉Sの推定形状S1と、が示されている。
【0041】
以上のようにして生成された第4データは、設計装置4に送信される。送信された第4データを参照して、義歯50が設計され、設計データが生成される。生成された設計データは、製造装置5へ送信される。送信された設計データに基づいて、製造装置5によって義歯50が製造される。
【0042】
〔他の実施形態〕〔1〕上記の実施形態では、第3データが仮歯40を口腔内スキャナ1で撮影して得られる3次元画像データである例が説明された。第3データは、撮影して得られたデータでなくてもよい。例えば、第3データが3D−CADで生成された3Dモデルを示すデータであってもよい。
【0043】
〔2〕上記の実施形態では、第1中間データ、第2中間データ、及び第3中間データを経て、第4データが生成される例が説明された。これらの中間データの生成は省略されてもよい。例えば、第2データに対して画像合成等の処理が順次施され、第4データが生成されてもよい。上記の実施形態では、例えばステップ#05において、合成部12が、第2データに直接、第3データが示す仮歯40の形状を合成してもよい。
【0044】
〔3〕上記の実施形態では、第2データに第1データを重ね合せて第1中間データを生成した後(ステップ#01)、スキャンボディ60の外形に基づくインプラント体30の位置の特定が行われた(ステップ#02)。このステップ#01を省略して、第1データに示されるスキャンボディ60の外形に基づいてインプラント体30の位置の特定を行ってもよい。また、合成部12が、第2データにおける決定した位置に第3データの画像を合成してもよい。
【0045】
〔4〕ステップ#01における第2データへの第2データの重ね合せ、及びステップ#05における第2中間データへの第3データの重ね合わせは、特定部11又は合成部12によって自動的に行われてもよいし、情報処理装置3のオペレータの操作に基づいて行われてもよい。例えば、オペレータが2つの画像上の対応する3点を指定し、その3点を重ね合せることで、画像の重ね合わせが行われてもよい。
【0046】
〔5〕ステップ#05は省略されてもよい。つまり、第3データが示す仮歯40の形状の第2中間データ(又は第2データ)への合成を行わずに、歯肉形状の推定(ステップ#06)を行うことも可能である。例えば、推定部13は、上記実施形態と同様に、仮歯40の首部43の表面形状を、歯肉Sの推定形状S1とする。ここで、仮歯40はインプラント体30に対して所定の位置関係で取り付けられる。従って、特定部11が特定したインプラント体30の位置に基づいて、第1データ又は第2データに対して推定形状S1を適切な位置に配置することができる。
【0047】
〔6〕上記の実施形態では、推定部13が、第3中間データに示される仮歯40の首部43の表面形状を歯肉Sの推定形状S1とする例が説明された。これを改変し、推定部13が、首部43の表面形状から所定距離だけ外側に位置する曲面を歯肉Sの推定形状S1としてもよい。
【0048】
〔7〕上記の実施形態では、画像処理部14により画像から不要部分(スキャンボディ60、仮歯40)が削除されたが(ステップ#04、#07)、このステップは省略されてもよい。
【0049】
〔8〕上記の実施形態では、歯科技工士が、第4データが示す3次元画像を参照しながら、設計装置4を操作して義歯50の形状を設計する例が説明された。歯科技工士が、第4データに基づいて作成された石膏模型を用いて、義歯50を製造してもよい。
【0050】
〔9〕上記の実施形態では、義歯50が製造装置5によって製造される例が説明された。製造装置5が義歯50の上部構造体52の全体を製造してもよいし、製造装置5が上部構造体52の内部骨格を製造し、歯科技工士がその内部骨格に樹脂等を塗布して上部構造体52を仕上げてもよい。
【0051】
〔10〕上記の実施形態では、歯科技工士ラボに情報処理装置3、設計装置4、及び製造装置5が設けられ、歯科医院から送信された第1データ、第2データ、及び第3データに基づいて、歯科技工士ラボにて第4データの生成、義歯50の設計及び製造が行われる例が説明された。情報処理装置3、設計装置4、及び製造装置5の一部又は全体が歯科医院に設けられてもよい。第4データの生成、義歯50の設計及び製造の一部又は全体が歯科医院にて行われてもよい。第4データの生成が、歯科医院及び歯科技工士ラボ以外の場所、例えばデータセンターやクラウド上で行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、口腔インプラント治療に用いるデータ生成方法、義歯製造方法、データ生成プログラム、及びデータ生成システムに適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 :口腔内スキャナ
2 :制御装置
3 :情報処理装置
4 :設計装置
5 :製造装置
10 :制御部(生成部)
11 :特定部
12 :合成部
13 :推定部
14 :画像処理部
20 :記憶部
30 :インプラント体
40 :仮歯
41 :アバットメント
42 :上部構造体
43 :首部
50 :義歯
51 :アバットメント
52 :上部構造体
60 :スキャンボディ
H :歯槽骨
S :歯肉
S1 :推定形状
T :歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図12