【文献】
J. Food Sci.,1984年,Vol.49, No.2,P.485-488
【文献】
特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料,日本国特許庁,2000年 1月14日,p.92-99, 113-116
【文献】
元ホテルパシフィック東京 監修,カクテル大全1000,株式会社永岡書店,2011年10月10日,p.230-239
【文献】
J. ASEV Jpn.,2009年,vol.20,p.23-34
【文献】
J. ASEV Jpn.,2005年,vol.16,p.22-32
【文献】
社団法人 全国清涼飲料工業会 監修,最新・ソフトドリンクス,株式会社光琳,2003年 9月30日,p.336-337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
(劣化臭生成抑制方法)
まず、本実施形態に係る劣化臭生成抑制方法について説明する。
本実施形態の劣化臭生成抑制方法は、以下に示されるものである。
リモネンを含有する製品における劣化臭生成抑制方法であって、
当該方法は、前記製品に対して、ポリフェノール成分を添加するものであり、
前記ポリフェノール成分は、プロアントシアニジン、エラジタンニンおよびガロタンニンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のポリフェノール成分である、劣化臭生成抑制方法。
【0017】
すなわち、本実施形態に係る劣化臭生成抑制方法は、リモネンを含有する製品に対して、特定のポリフェノール成分を添加するものであり、これによって、リモネンに対して加熱や長期保存を行った際に生じる劣化臭成分の生成を抑制することができる。
【0018】
ここで、本実施形態の劣化臭生成抑制方法に用いられる特定のポリフェノール成分は、極めて高い劣化臭生成抑制作用を示す。
一方、ポリフェノールは一般的に渋みを呈することが知られており、たとえば飲料や食品等のリモネン含有製品に対して、少量のポリフェノールを添加する場合は良好な後味を付与することができる。
すなわち、このポリフェノール成分は限られた添加量であっても十分な劣化臭生成抑制作用を示すことから、たとえば、飲料や食品等のリモネン含有製品に対して、ポリフェノール成分に由来する良好な後味を付与しつつ、リモネンの劣化を抑制することができる。
【0019】
(リモネンを含有する製品)
本実施形態に係るリモネンを含有する製品は、リモネンを含ませることのできる製品の中から適宜選択することができる(以下、この「リモネンを含有する製品」について「リモネン含有製品」または、単に「製品」とも称する。)。
このリモネンを含有する製品として、より具体的には、リモネンを含む飲料や食品、また、香粧品を挙げることができる。
本実施形態においては、後述する特定のポリフェノール成分を含有させることによりリモネンに由来する劣化臭成分の生成が抑制された製品が提供される。
【0020】
飲料としては、清涼飲料、アルコール飲料、乳酸菌飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料、紅茶、緑茶、栄養ドリンクなどの飲料が挙げられ、食品としては、アイスクリームや飴、ガム等の菓子類、ドレッシング等の調味料類等が挙げられる。また、香粧品としては、香水や化粧品、入浴剤、芳香剤、洗剤、洗口剤等を例示することができる。
これらのなかでも、本実施形態の劣化臭生成抑制方法は、製品が飲料である場合にとくに好ましく用いられる。
以下、リモネン含有製品が飲料である場合を例示して、説明を続ける。
【0021】
本実施形態に係る飲料としてはアルコール飲料であってもよく、またノンアルコール飲料であってもよい。なお、アルコール飲料としてのアルコール濃度の下限値は、たとえば1%以上であり、好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上である。
また、アルコール飲料としてのアルコール濃度の上限値は、たとえば25%以下であり、好ましくは20%以下である、より好ましくは18%以下である。
【0022】
本実施形態に係る飲料のpHに関して、リモネンは、飲料のpHが低くなるほど、変性を起こしやすくなり、結果として、劣化臭を招く化合物を生成しやすくなる傾向がある。
このことから、本実施形態に係る劣化臭生成抑制方法においては、飲料が酸性、すなわち、飲料のpHが7未満である場合に、その効果が顕著なものとなる。同様の観点から、飲料のpHを6未満とすることもできるし、pHを5未満とすることもできる。
なお、飲料のpHは公知の方法に従って測定することができ、例えば、東亜ディーケーケー社製のpHメーター HM−30R等を用いて測定することができる。
【0023】
また、上記のようなpHに調整するために、適宜、飲料に対してpH調整剤を添加することもできる。このpH調整剤としては、設計する製品に合わせて適宜選択すればよいが、例えばクエン酸のようなカルボン酸やクエン酸ナトリウムのようなカルボン酸塩等が挙げられる。
また、このpH調整剤は、製品のpHを逐次観測しながら、添加量を調整すればよい。
【0024】
本実施形態の劣化臭生成抑制方法においては、加熱時や保存時において、劣化成分がリモネンから生成することを抑制する。
たとえば、本実施形態の劣化臭生成抑制方法においては、加熱時や保存時においてリモネンから発生するp−サイメンの生成を抑制する。
本発明者らは、このp−サイメンに由来する灯油のような臭いがリモネンの香気を損なう原因となることを見出した。また、本実施形態の劣化臭生成抑制方法によりこのp−サイメンの生成を効果的に抑制できることから、結果として、効果的にリモネンの香気を保つことができることを見出した。
【0025】
本実施形態において、製品の全体におけるリモネンの含有量は、設計する製品に合わせて適宜設定することができる。
このリモネンの含有量の下限値としては、たとえば製品の全体に対して0.05ppm以上であり、好ましくは0.1ppm以上であり、より好ましくは0.5ppm以上である。
また、リモネンの含有量の上限値は、たとえば製品の全体に対して3,000ppm以下であり、好ましくは2,000ppm以下であり、より好ましくは1,000ppm以下である。
【0026】
なお、本実施形態の劣化臭生成抑制方法は、製品の用途等に応じて、上記のリモネン以外にも各種フレーバーを組み合わせて加えることができる。
【0027】
(ポリフェノール成分)
続いて、本実施形態の劣化臭生成抑制方法に用いられるポリフェノール成分について説明する。
【0028】
本実施形態の劣化臭生成抑制方法に用いられるポリフェノール成分は、プロアントシアニジン、エラジタンニンおよびガロタンニンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のポリフェノール成分である。
【0029】
プロアントシアニジンは、エピカテキン、カテキン、エピガロカテキン、ガロカテキンが複数個重合した構造を有するポリフェノールであり、その具体例としては、プロシアニジンA1(Procyanidin A1)、プロシアニジンA2(Procyanidin A2)、プロシアニジンB1(Procyanidin B1)、プロシアニジンB2(Procyanidin B2)、プロシアニジンB3(Procyanidin B3)、プロシアニジンC1(Procyanidin C1)、プロシアニジンC2(Procyanidin C2)、プロデルフィニジンB1(ProdelphinidinB1)、プロデルフィニジンB2(ProdelphinidinB2)、プロデルフィニジンB3(ProdelphinidinB3)等が挙げられる。
また、本実施形態のプロアントシアニジンにおけるカテキンの重合態様としては、上で列挙した化合物群の態様に限定されるものでなく、その位置異性体も含まれるものである。また、プロアントシアニジンにはガロイル化されたもの、配糖体化されたものも存在しており、これらも同様の効果を示すと考えられる。
また、劣化臭生成抑制作用の向上等を目的として、プロアントシアニジンに対して特定の化学変換を行った誘導体も本実施形態の劣化臭生成抑制方法に適用することができる。
本実施形態の劣化臭生成抑制方法においては、上記のプロアントシアニジンのうち、プロシアニジンB2、プロシアニジンB1、プロシアニジンC1がとくに好ましく用いられる。
【0030】
エラジタンニンとしては加水分解によりエラグ酸を与える、ヘキサヒドロキシジフェニル基、サングイソルボイル基、ガロイル基を有する化合物が挙げられる。
具体的には、プニカラジン(Punicalagin)、プニカリン(Punicalin)、カスタラジン(Castalagin)、ベスカラジン(Vescalagin)オイゲニイン(Eugeniin)、サングイインH−1(Sanguiin H−1)、サングイインH−4(Sanguiin H−4)、2,3−ヘキサヒドロキシジフェノイルグルコース(2,3−hexahydroxydiphenoylglucose)、4,6−ヘキサヒドロキシジフェノイルグルコース(4,6−hexahydroxydiphenoylglucose)、ケブラグ酸(Chebulagic acid)、ゲラニイン(Geraniin)、グラナチンA(Granatin A)、グラナチンB(Granatin B)、エラエオカルプシン(Elaeocarpusin)、コリラギン(Corilagin)、コルヌシインA(Cornusiin A)、コルヌシインB(Cornusiin B)、アグリモニイン(Agrimoniin)、エンブリカニン(Emblicanin)、プニグルコニン(Punigluconin)、テリマグランジンI(Tellimagrandin I)、テリマグランジンII(Tellimagrandin II)、カスアリクチン(Casuarictin)、ペデュンクラギン(Pedunculagin)、ケブリン酸(Chebulic acid)等が挙げられる。
本実施形態の劣化臭生成抑制方法においては、上記のエラジタンニンのうち、プニカラジン、プニカリン、カスタラジン、ベスカラジン、オイゲニイン、テリマグランジンI、テリマグランジンIIが好ましく用いられる。また、これらの中でもプニカラジン、オイゲニイン、テリマグランジンIがとくに好ましく用いられる。
【0031】
ガロタンニンとしては、タンニン酸(tannic acid)、ハマメリタンニン(Hamamelitannin)、モノガロイルグルコース(monogalloylglucose)、ジガロイルグルコース(digalloylglucose)、トリガロイルグルコース(trigalloylglucose)、テトラガロイルグルコース(tetragalloylglucose)、ペンタガロイルグルコース(pentagalloylglucose)、ヘキサガロイルグルコース(hexagalloylglucose)、ヘプタガロイルグルコース(heptagalloylglucose)、オクタガロイルグルコース(octagalloylglucose)、ノナガロイルグルコース(nonagalloylglucose)、デカガロイルグルコース(decagalloylglucose)、ウンデカガロイルグルコース(undecagalloylglucose)、ドデカガロイルグルコース(dodecagalloylglucose)等が挙げられる。
本実施形態の劣化臭生成抑制方法においては、上記のガロタンニンのうち、タンニン酸、ハマメリタンニンがとくに好ましく用いられる。
【0032】
本実施形態の劣化臭生成抑制方法においては、上記のポリフェノール成分をリモネン含有製品に対して添加することで達成される。
その添加量は、適用させる製品の種類等に応じ適宜設定することができるが、リモネン含有製品全体に対して、たとえば0.01ppm以上であり、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.5ppm以上、さらに好ましくは1ppm以上である。ポリフェノール成分の添加量をこのように設定することでリモネンの劣化を十分に抑制することができる。
また、ポリフェノール成分の添加量の上限値はとくに限定されないが、たとえばリモネン含有製品全体に対して30,000ppm以下である。
また、リモネン含有製品が飲料や食料品である場合、良好な後味を付与する観点から、このポリフェノール成分の添加量の上限値を3,000ppm以下とすることができ、より好ましくは1,000ppm以下とすることができ、さらに好ましくは500ppm以下とすることができる。
【0033】
(香料組成物)
上述の劣化臭生成抑制方法においては、リモネンを含有する製品に対して、特定のポリフェノールを添加する態様を示したが、他の実施形態として、事前にリモネンと、ポリフェノール成分とを含有する香料組成物を調製しておき、この香料組成物を各種製品に添加することで所望の効果を発現することもできる。
【0034】
このような香料組成物は、たとえばリモネン100質量部に対して、上記のポリフェノール成分を0.001質量部以上含むものであり、より好ましくは0.01質量部以上含むものであり、さらに好ましくは0.1質量部以上、殊更好ましくは1質量部以上、特に好ましくは10質量部以上含むものである。
なお、本実施形態に係る香料組成物は、必ずしも全体として均一である必要はなく、ポリフェノール成分が固体状で混合されていてもよい。
また、本実施形態に係る香料組成物に含まれるポリフェノール成分の上限値は、たとえば、リモネン100質量部に対して、60,000,000質量部以下であり、好ましくは6,000,000質量部以下である。
【0035】
ここで、先述の通り、リモネンは加熱時や長期保存時、また、pHの低い環境におかれることにより、変性を招きやすくなる。これに対し、本実施形態の香料組成物においては、ポリフェノール成分を添加することで十分にリモネンの劣化を抑制することができる。
この香料組成物に関する具体的な態様として、香料組成物を不活性ガスとともに容器に収容した上で密閉し、冷暗所に保管することが、シトラスフレーバー固有の香気を保つ観点から好ましい態様である。
【0036】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
リモネンと、ポリフェノール成分とを含むリモネン含有製品であって、
前記ポリフェノール成分は、プロアントシアニジン、エラジタンニンおよびガロタンニンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のポリフェノール成分である、リモネン含有製品。
<2>
<1>に記載のリモネン含有製品であって、
前記製品の全体に対して、前記リモネンを0.05ppm以上3,000ppm以下含む、リモネン含有製品。
<3>
<1>または<2>に記載のリモネン含有製品であって、
前記製品全体に対して、前記ポリフェノール成分を0.01ppm以上30,000ppm以下含むことを特徴とする、リモネン含有製品。
<4>
<1>ないし<3>のいずれか一つに記載のリモネン含有製品であって、
飲料又は食品である、リモネン含有製品。
<5>
リモネンと、ポリフェノール成分とを含有する香料組成物であって、
前記ポリフェノール成分は、プロアントシアニジン、エラジタンニンおよびガロタンニンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のポリフェノール成分である、香料組成物。
<6>
リモネンを含有する製品における劣化臭生成抑制方法であって、
当該方法は、前記製品に対して、ポリフェノール成分を添加するものであり、
前記ポリフェノール成分は、プロアントシアニジン、エラジタンニンおよびガロタンニンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のポリフェノール成分である、劣化臭生成抑制方法。
<7>
<6>に記載の劣化臭生成抑制方法であって、
前記製品は、前記リモネンを前記製品の全体に対して0.05ppm以上3,000ppm以下含む、劣化臭生成抑制方法。
<8>
<6>または<7>に記載の劣化臭生成抑制方法であって、
前記製品全体に対して、前記ポリフェノール成分を0.01ppm以上30,000ppm以下添加することを特徴とする、劣化臭生成抑制方法。
<9>
<6>ないし<8>のいずれか一つに記載の劣化臭生成抑制方法であって、
前記製品は飲料又は食品である、劣化臭生成抑制方法。
<10>
<6>ないし<9>のいずれか一つに記載の劣化臭生成抑制方法であって、
当該方法は、p−サイメンの生成を抑制するものである、劣化臭生成抑制方法。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0038】
まず、本実施例項において、飲料中に含まれる成分の量はガスクロマトグラフィ(GC)分析を用いて定量を行っている。この分析の手順は以下に示す通りである。
(サンプル作製方法)
試料を50.0g秤量し、内部標準として2−オクタノールを100μL添加した上で、50mLの水で希釈を行う。これとは別にジクロロメタン(5mL)、エタノール(5mL)、水(20mL)にて順次コンディショニングを行った固相(Waters社製Oasis HLB 200mg/6cc)を準備し、上で得られた希釈試料に含まれる有機成分を全量吸着させる。その後、ジクロロメタン5mLにて溶出を行い、この溶出液を無水硫酸ナトリウムで脱水し、その上清をスピッツ管に移注して窒素パージにて200μLまで濃縮し、分析用のサンプルを作製する。なお、試料調製は2点並行して行う。
(定量方法)
この分析用のサンプルは以下に示す条件にて、GC分析を行う。試料中の成分量は内部標準として用いた2−オクタノールのピークとの面積比から計算する。また、同一試料について2点並行で行った分析値の平均値を試料中の成分量であるものとして定量を行う。
(GC条件)
機器名:Agilent Technologies社製 5973inert Mass Selective Detector
カラム:DB−WAX(60m×0.25mm,0.25μm)
オーブン温度:40℃(1min)−(3℃/min)−210℃(3min)
流量:1mL/min
インジェクション温度:250℃
インジェクション量:1μL
スプリット比:10:1
【0039】
(実施例1)
モデル液として、アルコール濃度5.0%、リモネン10ppmを含む飲料を用意し、この飲料のpHを、クエン酸およびクエン酸三ナトリウムを用いてpHが3.0となるように調整した。なお、ここでpHは東亜ディーケーケー社製のpHメーター HM−30Rを用いて測定した。
この飲料に対し、プロアントシアニジンに属するポリフェノールであるプロシアニジンB2を飲料全体の0.1ppmとなるように添加し、密栓した上で、37℃の温度にて7日間静置した。静置後、飲料に含まれるp−サイメンの量を定量した。
このp−サイメンの含有量について、後述する比較例1における含有量との比として表1に示した。
【0040】
(実施例2)
実施例1の方法において、プロシアニジンB2の添加量を1.0ppmに調整する以外は、実施例1と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれるp−サイメンの量を定量した。結果は表1に示した。
【0041】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で調製した飲料に対して、エラジタンニンに属するポリフェノールであるプニカラジンを、飲料全体の0.1ppmとなるように添加し、密栓した上で、37℃の温度にて7日間静置した。静置後、飲料に含まれるp−サイメンの量を定量した。
このp−サイメンの含有量について、後述する比較例1における含有量との比として表1に示した。
【0042】
(実施例4)
実施例3の方法において、プニカラジンの添加量を1.0ppmに調整する以外は、実施例3と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれるp−サイメンの量を定量した。結果は表1に示した。
【0043】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で調製した飲料に対して、ガロタンニンに属するポリフェノールであるタンニン酸を、飲料全体の0.1ppmとなるように添加し、密栓した上で、37℃の温度にて7日間静置した。静置後、飲料に含まれるp−サイメンの量の量を定量した。
このp−サイメンの含有量について、後述する比較例1における含有量との比として表1に示した。
【0044】
(実施例6)
実施例5の方法において、タンニン酸の添加量を1.0ppmに調整する以外は、実施例5と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれるp−サイメンの量を定量した。結果は表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
(実施例7)
実施例1と同様の方法で調製した飲料に対し、プロアントシアニジンに属するポリフェノールであるプロシアニジンB1を飲料全体の0.1ppmとなるように添加し、密栓した上で、37℃の温度にて7日間静置した。静置後、飲料に含まれるp−サイメンの量を定量した。
このp−サイメンの含有量について、後述する比較例1における含有量との比として表2に示した。
【0047】
(実施例8)
実施例7の方法において、プロシアニジンB1の添加量を1.0ppmに調整する以外は、実施例7と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれるp−サイメンの量を定量した。結果は表2に示した。
【0048】
(実施例9)
実施例1と同様の方法で調製した飲料に対して、プロアントシアニジンに属するポリフェノールであるプロシアニジンC1を、飲料全体の0.1ppmとなるように添加し、密栓した上で、37℃の温度にて7日間静置した。静置後、飲料に含まれるp−サイメンの量を定量した。
このp−サイメンの含有量について、後述する比較例1における含有量との比として表2に示した。
【0049】
(実施例10)
実施例9の方法において、プロシアニジンC1の添加量を1.0ppmに調整する以外は、実施例9と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれるp−サイメンの量を定量した。結果は表2に示した。
【0050】
(実施例11)
実施例1と同様の方法で調製した飲料に対して、エラジタンニンに属するポリフェノールであるオイゲニインを、飲料全体の0.1ppmとなるように添加し、密栓した上で、37℃の温度にて7日間静置した。静置後、飲料に含まれるp−サイメンの量の量を定量した。
このp−サイメンの含有量について、後述する比較例1における含有量との比として表2に示した。
【0051】
(実施例12)
実施例11の方法において、オイゲニインの添加量を1.0ppmに調整する以外は、実施例11と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれるp−サイメンの量を定量した。結果は表2に示した。
【0052】
(実施例13)
実施例1と同様の方法で調製した飲料に対して、エラジタンニンに属するポリフェノールであるテリマグランジンIを、飲料全体の0.1ppmとなるように添加し、密栓した上で、37℃の温度にて7日間静置した。静置後、飲料に含まれるp−サイメンの量の量を定量した。
このp−サイメンの含有量について、後述する比較例1における含有量との比として表2に示した。
【0053】
(実施例14)
実施例13の方法において、テリマグランジンIの添加量を1.0ppmに調整する以外は、実施例13と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれるp−サイメンの量を定量した。結果は表2に示した。
【0054】
(実施例15)
実施例1と同様の方法で調製した飲料に対して、ガロタンニンに属するポリフェノールであるハマメリタンニンを、飲料全体の0.1ppmとなるように添加し、密栓した上で、37℃の温度にて7日間静置した。静置後、飲料に含まれるp−サイメンの量の量を定量した。
このp−サイメンの含有量について、後述する比較例1における含有量との比として表2に示した。
【0055】
(実施例16)
実施例15の方法において、ハマメリタンニンの添加量を1.0ppmに調整する以外は、実施例15と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれるp−サイメンの量を定量した。結果は表2に示した。
【0056】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で調製した飲料に対して、何も添加することなく、実施例1と同様の方法で静置を行い、飲料中に含まれる各成分の量を定量した。この比較例1の結果を対照(100%)として表1および表2に示した。
【0057】
【表2】
【0058】
以上の表1、2の結果から、リモネンを有する飲料に対して、プロアントシアニジン、エラジタンニン、ガロタンニンのいずれかのポリフェノール成分を加えることで、リモネンの劣化を顕著に抑制することができることが認められる。このポリフェノール成分の添加量は従来提案されていたものよりも少ないものであり、本願で用いられるポリフェノール成分の効果の顕著性が認められる。