特許第6829979号(P6829979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6829979
(24)【登録日】2021年1月27日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】目封止ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20210208BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20210208BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   F01N3/022 C
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-205262(P2016-205262)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-65091(P2018-65091A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 崇志
(72)【発明者】
【氏名】安井 理
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−243274(JP,A)
【文献】 特開2014−200741(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0298779(US,A1)
【文献】 特開2011−102557(JP,A)
【文献】 特開2011−224973(JP,A)
【文献】 特開2004−162537(JP,A)
【文献】 特開2007−138747(JP,A)
【文献】 特開2012−200625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00−41/04
B01D46/00−46/54
F01N3/01;3/02−3/038
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造部は、複数個の角柱状のハニカムセグメントと、当該ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、を有するハニカムセグメント接合体によって構成されたものであり、
複数個の前記ハニカムセグメントは、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面における外周部分に配置された複数個の外周セグメントと、前記外周セグメント以外のハニカムセグメントであって、前記断面における中央部分に配置された中央セグメントと、を含み、
前記外周セグメントは、ススの堆積量が4g/Lでのスス付き圧損が、前記中央セグメントの前記スス付き圧損に対して15%以上高く、且つ、当該外周セグメントの開口率が、前記中央セグメントの開口率と同一又はそれ以上である特定外周セグメントを少なくとも1個含み、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記外周セグメント及び前記中央セグメントが占める総面積に対して、前記特定外周セグメントが占める面積の比率が、4%以上であり、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設された前記セルを流入セルとし、及び前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設された前記セルを流出セルとし、
前記特定外周セグメント以外の前記ハニカムセグメントにおいて、
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記流入セルの形状が、六角形であり、
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記流出セルの形状が、正方形であり、
複数の前記セルは、所定の前記流入セルの1辺と、隣接する前記流出セルの1辺とが、同一の長さを有するとともに平行となるよう、1つの前記流出セルの周囲を4つの前記流入セルが取り囲む構造となっており、
前記流出セルの第1の辺を形成する前記隔壁と、前記流出セルの前記第1の辺と対向する第2の辺を形成する前記隔壁との距離である距離aは、0.8mmを超え、2.4mm未満の範囲であり、
前記流出セルの1辺と平行に隣接する前記流入セルの第3の辺を形成する前記隔壁と、前記流入セルの前記第3の辺と対向する第4の辺を形成する前記隔壁との距離である距離bの、前記距離aに対する比率は、0.4を超え、1.1未満の範囲である、目封止ハニカム構造体。
【請求項2】
前記特定外周セグメント以外の前記ハニカムセグメントにおける前記流入セルには、前記第3の辺の中央部と前記第4の辺の中央部とを、前記セルの延びる方向に直交する方向に結ぶ分割壁が更に設けられている、請求項に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項3】
前記特定外周セグメント以外の前記ハニカムセグメントが、前記中央セグメントである、請求項又はに記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項4】
前記特定外周セグメントにおいて、
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記セルの形状が、四角形、又は、前記流入セルと前記流出セルとで異なる、請求項のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目封止ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、隔壁によって捕集されたススを燃焼して除去する再生時の再生効率に優れた目封止ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境への影響や、資源節約の観点から、自動車の燃費低減が近年求められている。このため、直接噴射式ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の熱効率の良い内燃機関が、自動車用の動力源として使用される傾向にある。
【0003】
一方、これらの内燃機関では、燃料の燃焼の際に生じる燃えかすの発生が問題となっている。大気環境の観点から、排ガスに含まれる有毒成分の除去と同時に、スス(煤)等の粒子状物質(以下、「PM」ということがある)を大気に放出しないための対策が必要とされている。
【0004】
特に、ディーゼルエンジンから排出されるPMの除去に関する規制は世界的に強化される傾向にある。そして、PMを除去するための捕集フィルタ(以下、「DPF」ということがある)として、ハニカム構造のウォールフロー型排ガス浄化フィルタの使用が注目され、種々のシステムが提案されている。上記DPFは、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたものであり、セルを交互に目封止することで、セルを形成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。多孔質の隔壁によって複数のセルが区画形成された柱状の構造体を、「ハニカム構造体」ということがある。また、ハニカム構造体に形成されたセルの開口部が目封止部によって目封止されたものを、「目封止ハニカム構造体」ということがある。目封止ハニカム構造体は、DPFのような捕集フィルタとして広く用いられている。目封止ハニカム構造体の流入端面(第1の端面)から、粒子状物質を含有する排ガスが流入すると、排ガスが隔壁を通過する際に、当該排ガス中の粒子状物質が濾過され、目封止ハニカム構造体の流出端面(第2の端面)から、浄化された排ガスが排出される。
【0005】
DPF等に用いられるハニカム構造体としては、例えば、複数のハニカムセグメントが接合されて形成された、セグメント構造のハニカム構造体も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
DPF等のハニカムフィルタにおいては、フィルタ内部に経時的に堆積したPMによって圧損が徐々に増大するため、定期的な間隔で、ハニカムフィルタの内部に堆積したPMを燃焼させて除去する再生を行うことがある。例えば、DPFを再生する方法としては、エンジンから排出される排ガスの温度を上昇させ、その高温の排ガスを利用してDPFを加熱する再生方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−10616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のようなセグメント構造のハニカム構造体は、フィルタの内部に堆積したPMを燃焼させて除去する再生する際に、再生効率が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、隔壁によって捕集されたススを燃焼して除去する再生時の再生効率に優れた目封止ハニカム構造体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、セグメント構造のハニカム構造体において、上述した再生効率が悪い理由について種々の検討を行った。セグメント構造のハニカム構造体は、再生時において、ハニカム構造体の外周部分の温度が上昇し難く、この外周部分におけるススの燃え残りが、再生効率を悪化させている大きな要因になっていることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す、目封止ハニカム構造体が提供される。
【0011】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造部は、複数個の角柱状のハニカムセグメントと、当該ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、を有するハニカムセグメント接合体によって構成されたものであり、
複数個の前記ハニカムセグメントは、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面における外周部分に配置された複数個の外周セグメントと、前記外周セグメント以外のハニカムセグメントであって、前記断面における中央部分に配置された中央セグメントと、を含み、
前記外周セグメントは、ススの堆積量が4g/Lでのスス付き圧損が、前記中央セグメントの前記スス付き圧損に対して15%以上高く、且つ、当該外周セグメントの開口率が、前記中央セグメントの開口率と同一又はそれ以上である特定外周セグメントを少なくとも1個含み、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記外周セグメント及び前記中央セグメントが占める総面積に対して、前記特定外周セグメントが占める面積の比率が、4%以上であり、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設された前記セルを流入セルとし、及び前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設された前記セルを流出セルとし、
前記特定外周セグメント以外の前記ハニカムセグメントにおいて、
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記流入セルの形状が、六角形であり、
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記流出セルの形状が、正方形であり、
複数の前記セルは、所定の前記流入セルの1辺と、隣接する前記流出セルの1辺とが、同一の長さを有するとともに平行となるよう、1つの前記流出セルの周囲を4つの前記流入セルが取り囲む構造となっており、
前記流出セルの第1の辺を形成する前記隔壁と、前記流出セルの前記第1の辺と対向する第2の辺を形成する前記隔壁との距離である距離aは、0.8mmを超え、2.4mm未満の範囲であり、
前記流出セルの1辺と平行に隣接する前記流入セルの第3の辺を形成する前記隔壁と、前記流入セルの前記第3の辺と対向する第4の辺を形成する前記隔壁との距離である距離bの、前記距離aに対する比率は、0.4を超え、1.1未満の範囲である、目封止ハニカム構造体。
【0013】
] 前記特定外周セグメント以外の前記ハニカムセグメントにおける前記流入セルには、前記第3の辺の中央部と前記第4の辺の中央部とを、前記セルの延びる方向に直交する方向に結ぶ分割壁が更に設けられている、前記[]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0014】
] 前記特定外周セグメント以外の前記ハニカムセグメントが、前記中央セグメントである、前記[]又は[]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0015】
] 前記特定外周セグメントにおいて、
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記セルの形状が、四角形、又は、前記流入セルと前記流出セルとで異なる、前記[]〜[]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の目封止ハニカム構造体は、所謂、セグメント構造の目封止ハニカム構造体であり、ハニカム構造部の外周部分に配設された外周セグメントが、特定のスス付き圧損を示す特定外周セグメントを含んでいる。このため、本発明の目封止ハニカム構造体においては、特定外周セグメントが、他のハニカムセグメントに比して、ススが溜まらないように構成されている。このため、本発明の目封止ハニカム構造体は、従来のセグメント構造の目封止ハニカム構造体に比して、再生効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の目封止ハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図2図1に示す目封止ハニカム構造体の流入端面側からみた平面図である。
図3図1に示す目封止ハニカム構造体の特定外周セグメントの流入端面の平面図である。
図4図1に示す目封止ハニカム構造体の特定外周セグメントの流出端面の平面図である。
図5図1に示す目封止ハニカム構造体の中央セグメントの流入端面の平面図である。
図6図1に示す目封止ハニカム構造体の中央セグメントの流出端面の平面図である。
図7図3のA−A’断面を模式的に示す断面図である。
図8図5に示す中央セグメントの一部を拡大した拡大平面図である。
図9図6に示す中央セグメントの一部を拡大した拡大平面図である。
図10】本発明の目封止ハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた平面図である。
図11】本発明の目封止ハニカム構造体の更に他の実施形態における中央セグメントの流入端面の平面図である。
図12図11に示す中央セグメントの一部を拡大した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0019】
(1)目封止ハニカム構造体:
図1図9に示すように、本発明の目封止ハニカム構造体の第一実施形態は、ハニカム構造部9と、目封止部3と、を備えた、目封止ハニカム構造体100である。ハニカム構造部9は、流入端面6aから流出端面6bまで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。目封止部3は、上述したセル2の流入端面6a側又は流出端面6b側のいずれか一方の端部に配設されている。目封止ハニカム構造体100の外周には、ハニカム構造部9を囲繞するように配設された外壁10を更に備えている。
【0020】
ここで、図1は、本発明の目封止ハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図2は、図1に示す目封止ハニカム構造体の流入端面側からみた平面図である。図3は、図1に示す目封止ハニカム構造体の特定外周セグメントの流入端面の平面図である。図4は、図1に示す目封止ハニカム構造体の特定外周セグメントの流出端面の平面図である。図5は、図1に示す目封止ハニカム構造体の中央セグメントの流入端面の平面図である。図6は、図1に示す目封止ハニカム構造体の中央セグメントの流出端面の平面図である。図7は、図3のA−A’断面を模式的に示す断面図である。図8は、図5に示す中央セグメントの一部を拡大した拡大平面図である。図9は、図6に示す中央セグメントの一部を拡大した拡大平面図である。
【0021】
ハニカム構造部9は、複数個の角柱状のハニカムセグメント7と、ハニカムセグメント7の側面同士を互いに接合する接合層18と、を有するハニカムセグメント接合体によって構成されたものである。即ち、本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、所謂、セグメント構造の目封止ハニカム構造体である。
【0022】
図1及び図2に示すように、ハニカムセグメント7は、流体が流入する流入端面6aから、流体が流出する流出端面6bまで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1、及び最外周に配設されたセグメント外周壁を有するものである。複数個のハニカムセグメント7は、互いの側面同士が接合層18を介して接合されている。
【0023】
複数個のハニカムセグメント7は、外周セグメント7bと、中央セグメント7aと、を含んでいる。外周セグメント7bは、ハニカム構造部9のセル2の延びる方向に直交する断面における外周部分に配置されたハニカムセグメント7である。別言すれば、外周セグメント7bは、ハニカム構造部9を囲繞するように配設された外壁10と接するように配置されたハニカムセグメント7であり、通常、複数個存在する。外周セグメント7bは、角柱状に形成されたハニカムセグメント7の一部が、外壁10の形状に沿って研削された柱状に形成されている。
【0024】
中央セグメント7aは、外周セグメント7b以外のハニカムセグメント7であって、上記した断面における中央部分に配置されたハニカムセグメント7である。中央セグメント7aは、通常、1個、又は2個以上存在する。中央セグメント7aは、流入端面6aから流出端面6bに向かう方向を軸方向とする、角柱状に形成されている。
【0025】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、外周セグメント7bが、以下に示すような特定外周セグメント7baを少なくとも1個含んでいることを重要な特徴とする。特定外周セグメント7baは、ススの堆積量が4g/Lでのスス付き圧損が、中央セグメント7aのスス付き圧損に対して15%以上高い。即ち、中央セグメント7aのスス付き圧損を100%とした場合に、特定外周セグメント7baのスス付き圧損が115%以上となる。以下、本明細書において、単に、「スス付き圧損」という場合は、「ススの堆積量が4g/Lでのスス付き圧損」のことを意味する。更に、特定外周セグメント7baの開口率が、中央セグメント7aの開口率と同一又はそれ以上である。
【0026】
特定外周セグメント7baは、他のハニカムセグメント7に比して、ススが溜まらないように構成されている。このため、本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、従来のセグメント構造の目封止ハニカム構造体に比して、再生効率を向上させることができる。中央セグメント7aのスス付き圧損を100%とした場合に、特定外周セグメント7baのスス付き圧損が115%未満であると、中央セグメント7aと特定外周セグメント7baとで、ススの溜まり具合に差が生じ難く、再生効率を向上させることが困難である。この際、特定外周セグメント7baの開口率が、中央セグメント7aの開口率よりも低いと、目封止ハニカム構造体全体のスス付き圧損が悪化してしまう。このため、本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、特定外周セグメント7baの開口率を、中央セグメント7aの開口率と同一又はそれ以上とすることで、目封止ハニカム構造体全体のスス付き圧損の悪化を抑制している。
【0027】
特定外周セグメント7baのスス付き圧損は、中央セグメント7aのスス付き圧損に対して、15〜50%高いことが好ましく、30〜43%高いことが更に好ましい。このように構成することによって、再生効率を更に向上させることができる。
【0028】
以下、特定外周セグメントのスス付き圧損の測定方法について説明する。まず、測定対象となる特定外周セグメントと同様のセル構造を有するハニカムセグメントを複数個用意する。次に、用意した複数個のハニカムセグメントを用いて、測定対象となる特定外周セグメントを有する目封止ハニカム構造体と同様に構成された目封止ハニカム構造体を作製する。次に、作製した目封止ハニカム構造体を、排気量2Lの乗用車用ディーゼルエンジンの排気系に搭載し、このディーゼルエンジンを運転して、目封止ハニカム構造体にススを堆積させる。なお、ディーゼルエンジンは、エンジンの回転数を2000[回転数/分]とし、排気温度が250℃となるように運転する。目封止ハニカム構造体については、ディーゼルエンジンの運転開始時から、継続的に、ススの堆積による質量増加及びその圧損について測定する。そして、目封止ハニカム構造体のススの堆積量が4g/Lとなったときの圧損を、特定外周セグメントのスス付き圧損とする。本明細書における、ススの堆積量(g/L)は、目封止ハニカム構造体単位容積(L)当たりに堆積されるススの量(g)を示す。なお、目封止ハニカム構造体単位容積(L)とは、目封止ハニカム構造体の外壁を除く部分の容積(セルの容積を含む)のことである。
【0029】
中央セグメントのスス付き圧損の測定方法については、上述した特定外周セグメントのスス付き圧損の測定方法に準じて行うことができる。即ち、まず、測定対象となる中央セグメントと同様のセル構造を有するハニカムセグメントを複数個用意する。次に、用意した複数個のハニカムセグメントを用いて、測定対象となる中央セグメントを有する目封止ハニカム構造体と同様に構成された目封止ハニカム構造体を作製する。以降は、上述した特定外周セグメントのスス付き圧損の測定方法と同様にして、中央セグメントのスス付き圧損を測定する。
【0030】
特定外周セグメントのスス付き圧損と、中央セグメントのスス付き圧損とを比較する場合には、上述したように、同一形状の単一ハニカムセグメントを用いて、同一形状の目封止ハニカム構造体をそれぞれ作製し、同一の方法でスス付き圧損を測定する。測定したスス付き圧損を比較することで、中央セグメントのスス付き圧損に対する、特定外周セグメントのスス付き圧損の増大比率を求めることができる。
【0031】
本実施例の目封止ハニカム構造体は、特定外周セグメントの開口率が、中央セグメントの開口率と同一又はそれ以上である。特定外周セグメントの開口率は、中央セグメントの開口率を100%とした場合、100〜150%であることが好ましく、100〜120%であることが更に好ましい。特定外周セグメントの開口率が、中央セグメントの開口率よりも低いと、再生時において、目封止ハニカム構造体の外周部分の温度が上昇し難くなり、再生効率を上昇させることが困難となる。特定外周セグメントの開口率は、セルの延びる方向に直交する断面における特定外周セグメントの面積S1に対する、特定外周セグメント内の流入セルの総面積S1a及び流出セルの総面積S1bの比率として求めることができる。即ち、特定外周セグメントの開口率は、下記式(1)により求めることができる。中央セグメントの開口率は、セルの延びる方向に直交する断面における中央セグメントの面積S2に対する、当該中央セグメント内の流入セルの総面積S2a及び流出セルの総面積S2bの比率として求めることができる。即ち、中央セグメントの開口率は、下記式(2)により求めることができる。
式(1):(S1a+S1b)/S1×100
式(2):(S2a+S2b)/S2×100
【0032】
目封止部3は、それぞれのハニカムセグメント7に形成されたセル2の開口部に配設され、セル2の流入端面6a側又は流出端面6b側のいずれか一方の開口部を封止するものである。即ち、目封止部3は、それぞれのハニカムセグメント7の流入端面6aにおける所定のセルの開口部、及び流出端面6bにおける所定のセル以外の残余のセル2の開口部に配設されている。以下、ハニカムセグメント7の流出端面6b側の端部に目封止部3が配設されたセル2を、「流入セル2a」ということがある。また、ハニカムセグメント7の流入端面6a側のセル2の端部に目封止部3が配設されたセル2を、「流出セル2b」ということがある。
【0033】
ハニカム構造部9のセル2の延びる方向に直交する断面において、外周セグメント7b及び中央セグメント7aが占める総面積に対して、特定外周セグメント7baが占める面積の比率が、4%以上である。このように構成することによって、目封止ハニカム構造体100の再生効率をより向上させることができる。特定外周セグメント7baが占める面積の比率については、4〜60%であることが好ましい。
【0034】
図1図9に示す目封止ハニカム構造体100においては、ハニカム構造部9において、外周部分に配置された12個の外周セグメント7bのうち、四隅に配置された4個の外周セグメント7bが、特定外周セグメント7baとなっている。特定外周セグメント7baは、外周セグメント7bのうちの一部のハニカムセグメント7であってもよいが、図10に示す目封止ハニカム構造体200のように、外周セグメント7bの全てが、特定外周セグメント7baであってもよい。図10は、本発明の目封止ハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた平面図である。
【0035】
図10に示す目封止ハニカム構造体200は、ハニカム構造部9において、外周部分に配置された12個の外周セグメント7bの全てが、特定外周セグメント7baとなっている。図10に示す目封止ハニカム構造体200において、上記したように、外周セグメント7bの全てが、特定外周セグメント7baであること以外は、図1図9に示す目封止ハニカム構造体100と同様に構成されていることが好ましい。図10において、図1図9に示す目封止ハニカム構造体100と同様に構成されている構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
図1図9に示す目封止ハニカム構造体100においては、特定外周セグメント7ba以外のハニカムセグメント7が、以下のように構成されたものであることが好ましい。ここで、特定外周セグメント7ba以外のハニカムセグメント7とは、中央セグメント7a、及び特定外周セグメント7ba以外の外周セグメント7bbのことである。特定外周セグメント7ba以外のハニカムセグメント7が、中央セグメント7aのみであってもよい。
【0037】
特定外周セグメント7ba以外のハニカムセグメント7は、セル2の延びる方向に直交する断面における流入セル2aの形状が、六角形である。本明細書において、上述した「六角形」とは、後述する「略六角形」のことを意味する。また、セル2の延びる方向に直交する断面における流出セル2bの形状が、正方形である。本明細書において、上述した「正方形」とは、後述する「略正方形」のことを意味する。更に、複数のセル2は、所定の流入セル2aの1辺と、隣接する流出セル2bの1辺とが、同一の長さを有するとともに平行となるよう、1つの流出セル2bの周囲を4つの流入セル2aが取り囲む構造となっている。本明細書において、上述した「同一の長さ」及び「平行」とは、後述する「略同一の長さ」及び「略平行」のことを意味する。即ち、略正方形の断面形状を有する流出セル2bの4辺のそれぞれに対して、略六角形の断面形状を有する流入セル2aの1辺が隣接しており、隣接する辺同士は、略同一の長さを有するとともに略平行となっている。このような構造においては、流出セル2b同士が隣接することはなく、流出セル2bは、周囲すべてを4つの流入セル2aによって取り囲まれることになる。このような構造とすることによって、流出セル2bの開口率を大きくするとともに、流出セル2bの数を流入セル2aの数と比べて少なくできるため、初期の圧損を低減させることができる。
【0038】
本明細書において、「略六角形」とは、六角形、六角形の少なくとも1つの角部が曲線状に形成された形状、及び六角形の少なくとも1つの角部が直線状に面取りされた形状を意味する。「略正方形」とは、正方形、正方形の少なくとも1つの角部が曲線状に形成された形状、及び正方形の少なくとも1つの角部が直線状に面取りされた形状を意味する。「略同一の長さ」とは、同一の長さ、及びその長さの±20%の長さのことを意味する。「略平行」とは、平行、及び平行な二辺のうちの一辺が±15°の範囲内において傾いた状態の二辺の位置関係のことを意味する。
【0039】
また、図8及び図9に示す通り、流入セル2aの6辺のうち、流出セル2bと略平行に隣接する2辺13,14を除く4辺4は、当該流出セル2bと隣接する別の流入セル2aの辺4とそれぞれ隣接していることが好ましい。即ち、流入セル2aにおける隣り合う2辺4の形成する頂点同士が4つ集合する部分においては、図8及び図9に示す通り、2つの隔壁1が互いに直交する構造となっていることが好ましい。このような構造とすることによって、隔壁1の熱容量を高く維持することができ、PMの堆積しやすい頂点部分におけるPM燃焼時の熱応力を緩和させることができる。
【0040】
流出セル2bの第1の辺11を形成する隔壁1と、流出セル2bの第1の辺11と対向する第2の辺12を形成する隔壁1との距離である距離aは、0.8mmを超え、2.4mm未満の範囲である。ここで、距離aとは、第1の辺11を形成する隔壁1の厚さ方向の中心から、対向する第2の辺12を形成する隔壁1の厚さ方向の中心とを結ぶ最短距離を指す。また、流出セル2bの1辺と略平行に隣接する流入セル2aの第3の辺13を形成する隔壁1と、流入セル2aの第3の辺13と対向する第4の辺14を形成する隔壁1との距離である距離bとした場合、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、距離bの、距離aに対する比率は、0.4を超え、1.1未満の範囲である。ここで、距離bとは、第3の辺13を形成する隔壁1の厚さ方向の中心から、対向する第4の辺14を形成する隔壁1の厚さ方向の中心とを結ぶ最短距離を指す。距離a及び距離bの関係を上記の範囲とすることによって、初期の圧損及びPM堆積時における圧損がバランス良く低減されるため好ましい。
【0041】
また、特定外周セグメント7ba以外のハニカムセグメント7は、例えば、図11及び図12に示すように構成された中央セグメント17aのように構成されたものであってもよい。図11は、本発明の目封止ハニカム構造体の更に他の実施形態における中央セグメントの流入端面の平面図である。図12は、図11に示す中央セグメントの一部を拡大した拡大平面図である。図11及び図12に示す中央セグメント17aにおける流入セル2aには、第3の辺の中央部と第4の辺の中央部とを、セル2の延びる方向に直交する方向に結ぶ分割壁21が更に設けられていてもよい。このような流入セル2aは、分割壁21によって、実質的に、略五角形の断面形状を有する2つの空間に分割されることになる。
【0042】
分割壁21の材料は特に制限はなく、濾過能を有する多孔質材料の中から適宜好適なものを選択することができる。作製時の容易性を鑑み、隔壁1と同じ材料を採用することが好ましい。また、分割壁21の厚さについても、特に限定されるものではないが、熱容量及び強度の観点から0.1〜0.5mmの範囲であることが好ましい。0.1mmよりも小さいと、熱容量及び強度の観点から好ましくない。また、0.5mmよりも大きいと、濾過面積確保の観点から好ましくない。なお、本明細書においては、分割壁21が形成されている場合であっても、流入セル2aは「見かけ上」略六角形であるとみなす。
【0043】
特定外周セグメント7baにおいて、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形、又は、流入セル2aと流出セル2bとで異なることが好ましい。このように構成することによって、排気中の灰(アッシュ:Ash)が堆積する容積を確保する観点、および、中央部に対し適度にスス堆積圧損が高い点で好ましい。セル2の形状が、流入セル2aと流出セル2bとで異なる場合とは、例えば、流入セル2aの形状が四角形で、流出セル2bの形状が八角形の場合などを挙げることができる。
【0044】
目封止ハニカム構造体100の全体形状については、特に制限はない。例えば、図1に示す目封止ハニカム構造体100の全体形状は、流入端面6a及び流出端面6bが円形の円柱形状である。その他、図示は省略するが、目封止ハニカム構造体の全体形状としては、流入端面及び流出端面が、楕円形やレーストラック形や長円形等の略円形の柱形状であってもよい。また、目封止ハニカム構造体の全体形状としては、流入端面及び流出端面が、四角形や六角形等の多角形の角柱形状であってもよい。
【0045】
ハニカムセグメントを構成する材料に特に制限はないが、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、主成分は、酸化物又は非酸化物の各種セラミックスや金属等であることが好ましい。具体的には、例えば、セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素、窒化珪素、及びチタン酸アルミニウム等が考えられる。金属としては、Fe−Cr−Al系金属、及び金属珪素等が考えられる。これらの材料の中から選ばれた1種又は2種以上を主成分とすることが好ましい。高強度、高耐熱性等の観点から、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、コージェライト、炭化珪素、及び窒化珪素からなる群から選ばれた1種又は2種以上を主成分とすることが特に好ましい。また、高熱伝導率や高耐熱性等の観点からは、炭化珪素、又は珪素−炭化珪素複合材料が特に適している。ここで、「主成分」とは、ハニカムセグメントの50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上を構成する成分のことを意味する。
【0046】
特定外周セグメントと、特定外周セグメント以外のハニカムセグメントとで、例えば、ハニカムセグメントを構成する材料が相違してもよい。これまでに説明した本実施形態においては、セル形状が相違するハニカムセグメントを使用することで、それぞれのハニカムセグメントのスス付き圧損を異ならせていたが、例えば、ハニカムセグメントを構成する材料を異ならせることで、それぞれのハニカムセグメントのスス付き圧損を変化させてもよい。
【0047】
また、特定外周セグメントと、特定外周セグメント以外のハニカムセグメントとで、隔壁の気孔率や細孔径を変えることで、スス付き圧損の値を調節することも可能である。ただし、隔壁の気孔率や細孔径によってスス付き圧損の値を調節した場合には、目封止ハニカム構造体全体の圧損が増加し易くなることがある。また、目封止ハニカム構造体の耐熱衝撃性(ロバスト(robust)性)の低下を招くこともある。このため、特定外周セグメントと、特定外周セグメント以外のハニカムセグメントとについては、流入セルの開口率を同一又は比較的に近い値として、各ハニカムセグメントのセル構造によって、スス付き圧損の値を調節することが好ましい。
【0048】
目封止部の材料については特に制限はない。目封止部の材料は、上述のハニカムセグメントの好適な材料として挙げた各種セラミックス及び金属等の中から選択された1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0049】
本実施形態の目封止ハニカム構造体は、複数個のハニカムセグメントが接合層を介して相互に接合されたものである。このように構成することによって、目封止ハニカム構造体にかかる熱応力を分散させることができ、局所的な温度上昇によるクラックの発生を有効に防止することができる。
【0050】
ハニカムセグメントの大きさについては、特に制限はない。ただし、1個のハニカムセグメントの大きさが大きすぎると、クラックの発生を防止する効果が十分に発揮されないことがある。また、1個のハニカムセグメントの大きさが小さすぎると、ハニカムセグメントの接合層による接合作業が煩雑になることがある。
【0051】
ハニカムセグメントの形状については、特に制限はない。例えば、ハニカムセグメントの形状として、当該ハニカムセグメントの軸方向に直交する断面形状が四角形や六角形等の多角形の角柱形状を挙げることができる。なお、目封止ハニカム構造体の最外周に配設されるハニカムセグメントは、目封止ハニカム構造体の全体形状に応じて、角柱形状の一部が研削等により加工されたものであってもよい。
【0052】
接合層の厚さが、0.5〜2mmであることが好ましく、0.8〜1.5mmであることが更に好ましい。接合層の厚さが、0.5mm未満であると、耐熱衝撃性が低下することがある点で好ましくない。接合層の厚さが、2mm超であると、圧損が高くなることがある点で好ましくない。
【0053】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、それぞれのハニカムセグメントが以下のように構成されたものを好適例の1つとして挙げることができる。流入セルにおいて、幾何学的表面積GSAが、10〜30cm/cmであることが好ましく、12〜18cm/cmであることが更に好ましい。ここで、上述した「幾何学的表面積GSA」とは、流入セルの全内表面積(S)を、ハニカムセグメントの全容積(V)で除した値(S/V)のことをいう。一般に、フィルタの濾過面積が大きいほど、隔壁へのPM堆積厚さを低減できるため、上述した幾何学的表面積GSAの数値範囲とすることにより、目封止ハニカム構造体の圧損を低く抑えることができる。よって、流入セルの幾何学的表面積GSAが10cm/cmより小さいと、PM堆積時の圧損の増加につながることがあるため好ましくない。また、30cm/cmより大きいと、初期の圧損が増加することがあるため好ましくない。
【0054】
本実施形態の目封止ハニカム構造体では、複数のセル2のそれぞれの水力直径が0.5〜2.5mmであることが好ましく、0.8〜2.2mmであることが更に好ましい。複数のセルのそれぞれの水力直径が0.5mmより小さいと、初期の圧損が増加することがあるため好ましくない。また、複数のセルのそれぞれの水力直径が2.5mmより大きいと、排ガスと隔壁との接触面積が減少し、浄化効率が低下することがあるため好ましくない。ここで、複数のセルのそれぞれの水力直径とは、各セルの断面積及び周長に基づき、4×(断面積)/(周長)によって計算される値である。セルの断面積とは、目封止ハニカム構造体の中心軸方向に垂直な断面に現れるセルの形状(断面形状)の面積を指し、セルの周長とは、そのセルの断面形状の周囲の長さ(当該断面を囲む閉じた線の長さ)を指す。
【0055】
初期の圧損、PM堆積時の圧損、及び捕集効率のトレードオフを鑑み、本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、流入セルの幾何学的表面積GSAが10〜30cm/cmであること、流入セルの開口率が20〜70%であること、及び複数のセルのそれぞれの水力直径が0.5〜2.5mmであることを同時に満たすことが好ましい。また、流入セルの幾何学的表面積GSAが12〜18cm/cmであること、流入セルの開口率が25〜65%であること、及び複数のセルのそれぞれの水力直径が0.8〜2.2mmであること、を同時に満たすことが更に好ましい。
【0056】
本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、複数のセルを形成する隔壁に触媒が担持されていてもよい。隔壁に触媒を担持するとは、隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。触媒の種類としては、SCR触媒(ゼオライト、チタニア、バナジウム)や、Pt、Rh、Pdのうち少なくとも2種の貴金属と、アルミナ、セリア、ジルコニアの少なくとも1種を含む三元触媒等が挙げられる。このような触媒を担持することにより、直接噴射式ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスに含まれるNOx、CO、HC等を無毒化するとともに、隔壁の表面に堆積したPMを触媒作用により燃焼除去させ易くすることが可能となる。
【0057】
本実施形態の目封止ハニカム構造体において、上記のような触媒を担持させる方法は、特に制限はなく、当業者が通常行う方法を採用することができる。具体的には、触媒スラリーをウォッシュコートして乾燥、焼成する方法等が挙げられる。
【0058】
(2)目封止ハニカム構造体の製造方法:
図1図9に示す本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法により製造することができる。まず、ハニカムセグメントを作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカムセグメントを作製するための坏土は、原料粉末として、前述のハニカムセグメントの好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって調製することができる。原料粉末としては、例えば、炭化珪素粉末を使用することができる。バインダとしては、例えば、メチルセルロース(Methylcellulose)や、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methylcellulose)等を挙げることができる。また、添加剤としては、界面活性剤等を挙げることができる。
【0059】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及び最外周に配設されたセグメント外周壁を有する、角柱状のハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体は、複数個作製する。なお、ハニカム成形体を作製する際には、特定外周セグメントとなるハニカム成形体と、特定外周セグメント以外のハニカムセグメントとなるハニカム成形体との、2種類のハニカム成形体を作製してもよい。
【0060】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥し、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を作製する。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0061】
次に、目封止部を作製したハニカム成形体を焼成することにより、目封止部を有するハニカムセグメントを得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。次に、得られたハニカムセグメントを、接合材を用いて互いに接合し、乾燥硬化させた後、所望の形状となるよう外周を加工することによって、セグメント構造の目封止ハニカム構造体を得ることができる。接合材としては、セラミックス材料に、水等の溶媒を加えてペースト状にしたものを用いることができる。また、ハニカムセグメントの接合体の外周を加工した後の加工面は、セルが露出した状態となっているため、図1に示すように、その加工面に外周コート材を塗工して外壁10を形成してもよい。外周コート材の材料としては、例えば、接合材の材料と同じ材料を用いることができる。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
セラミックス原料として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合した混合原料を準備した。炭化珪素(SiC)粉末の平均粒子径は、20μmであった。この混合原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加するとともに、水を添加して成形原料を作製した。得られた成形原料を、ニーダーを用いて混練し、坏土を得た。
【0063】
次に、得られた坏土を、押出成形機を用いて成形し、図12に示すハニカムセグメント17と同様のセルの配列パターンを有する四角柱形状のハニカムセグメント成形体を12個作製した。なお、「図12に示すハニカムセグメントと同様の繰り返し配列パターン」とは、断面形状が正方形の流出セルの周りを、断面形状が五角形の8個の流入セルが取り囲むように配列された配列パターンのことである。ここで作製したハニカムセグメント成形体が、中央セグメントとなる。
【0064】
また、得られた坏土を、押出成形機を用いて成形し、四角形と八角形のセルが交互に配列した配列パターンを有する四角柱形状のハニカムセグメント成形体を4個作製した。ここで作製したハニカムセグメント成形体が、特定外周セグメントとなる。そして、このように作成した4個のハニカムセグメント成形体を、外周4隅の小セグメントに用いた。
【0065】
次に、得られた2種類のハニカムセグメント成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて更に乾燥した。
【0066】
乾燥後のハニカムセグメント成形体に、目封止部を形成した。まず、ハニカムセグメント成形体の流入端面にマスクを施した。次に、マスクの施された端部(流入端面側の端部)を目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル(流出セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。このようにして、ハニカムセグメント成形体の流入端面側に、目封止部を形成した。そして、乾燥後のハニカムセグメント成形体の流出端面についても同様にして、流入セルにも目封止部を形成した。
【0067】
そして、目封止部の形成されたハニカムセグメント成形体を脱脂し、焼成し、ハニカムセグメントを得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とし、焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。
【0068】
中央セグメントとして使用するハニカムセグメントは、図12に示すようなセルの配列パターンを有するものであった。特定外周セグメントとして使用するハニカムセグメントは、四角形と八角形のセルが交互に配列した配列パターンを有するものであった。表1の「形状」の欄に、実施例1に使用したハニカムセグメントのセルの配列パターンを示す。なお、表1の「形状」の欄に、図12等の図面の番号が記載されている場合には、使用したハニカムセグメントのセルの配列パターンが、対応する図面に示される構造であることを意味する。また、表1の「形状」の欄に、「四角、八角」等の形状が記載されている場合には、使用したハニカムセグメントのセルの配列パターンが、記載された形状であることを意味する。
【0069】
作製したハニカムセグメントは、軸方向に直交する断面が正方形で、その正方形の一辺の長さ(セグメントサイズ)が35mmであった。また、ハニカムセグメントは、その軸方向の長さが152mmであった。表1に、各ハニカムセグメントの隔壁厚さ(mm)、セル密度(個/cm)、及び開口率(%)を示す。
【0070】
次に、作製した16個のハニカムセグメントを、接合材(セラミックスセメント)を用いて接合し一体化した。接合材は、無機粒子、無機接着剤を主成分とし、副成分として、有機バインダ、界面活性剤、発泡樹脂、水等を含むものとした。16個のハニカムセグメントが一体化に接合されたハニカムセグメント接合体の外周を円柱形状に研削加工し、その外周面にコート材を塗布して、実施例1の目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の目封止ハニカム構造体は、端面の直径が144mmであった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1のハニカムセグメントの作製に用いた坏土と同様に調製された坏土を用いて、四角形と八角形のセルが交互に配列した配列パターンを有する四角柱形状のハニカムセグメントを16個作製した。作製したハニカムセグメントは、実施例1において、特定外周セグメントに使用したものと同じセル構造のものとした。比較例1においては、全てのハニカムセグメントを、上記したハニカムセグメントとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で目封止ハニカム構造体を作製した。
【0074】
(実施例2〜12、及び比較例2〜7)
中央セグメント及び外周セグメントに使用するハニカムセグメントを表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜12、及び比較例2〜7の目封止ハニカム構造体を作製した。
【0075】
実施例1〜12、及び比較例1〜7の目封止ハニカム構造体について、以下の方法で、「ススの堆積量が4g/Lでのスス付き圧損」を測定した。「ススの堆積量が4g/Lでのスス付き圧損」の測定については、以下に示すように、中央セグメントのみでの測定、外周セグメントのみでの測定、及び目封止ハニカム構造体全体での測定の、3種類行った。
【0076】
外周セグメントのスス付き圧損の測定方法について説明する。まず、測定対象となる外周セグメントと同様のセル構造を有するハニカムセグメントを複数個用意した。次に、用意した複数個のハニカムセグメントを用いて、測定対象となる外周セグメントを有する目封止ハニカム構造体と同様に構成された目封止ハニカム構造体を作製した。次に、作製した目封止ハニカム構造体を、排気量2Lの乗用車用ディーゼルエンジンの排気系に搭載し、このディーゼルエンジンを運転して、目封止ハニカム構造体にススを堆積させた。ディーゼルエンジンは、エンジンの回転数を2000[回転数/分]とし、排気温度が250℃となるように運転した。ディーゼルエンジンの運転開始時から、継続的に、ススの堆積による質量増加及びその圧損について測定し、ススの堆積量が4g/Lとなったときの圧損を、外周セグメントのスス付き圧損とした。
【0077】
中央セグメントのスス付き圧損の測定方法について説明する。まず、測定対象となる中央セグメントと同様のセル構造を有するハニカムセグメントを複数個用意した。次に、用意した複数個のハニカムセグメントを用いて、測定対象となる中央セグメントを有する目封止ハニカム構造体と同様に構成された目封止ハニカム構造体を作製した。以降は、上述した外周セグメントのスス付き圧損の測定方法と同様にして、中央セグメントのスス付き圧損を測定した。
【0078】
目封止ハニカム構造体全体のスス付き圧損については、各実施例及び比較例にて作製した目封止ハニカム構造体を用いて、上述した外周セグメントのスス付き圧損の測定方法と同様にして、スス付き圧損を測定した。
【0079】
表1の中央セグメントにおける「スス付き圧損A(Ratio)」の欄に、比較例1の中央セグメントのスス付き圧損の値を「1」とした場合の、各実施例及び比較例の中央セグメントの「スス付き圧損」の比率を示す。表1の外周セグメントにおける「スス付き圧損B(Ratio)」の欄に、比較例1の外周セグメントのスス付き圧損の値を「1」とした場合の、各実施例及び比較例の外周セグメントの「スス付き圧損」の比率を示す。表2の「全体圧損(Ratio)」の欄に、比較例1の目封止ハニカム構造体全体のスス付き圧損の値を「1」とした場合の、各実施例及び比較例の目封止ハニカム構造体全体の「スス付き圧損」の比率を示す。
【0080】
表2の「内外圧損比B/A」の欄に、「スス付き圧損A(Ratio)」に対する「スス付き圧損B(Ratio)」の比率を示す。表2の「内外開口率比D/C」の欄に、「開口率C(%)」に対する「開口率D(%)」の比率を示す。表2の「外周部面積比」の欄に、セルの延びる方向に直交する断面における、外周セグメント及び中央セグメントが占める総面積に対する、特定外周セグメントが占める面積の比率を示す。
【0081】
実施例1〜12、及び比較例1〜7の目封止ハニカム構造体について、以下の方法で、再生効率の測定を行った。また、この再生効率の測定結果に基づいて、以下の方法で総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
[再生効率]
目封止ハニカム構造体の隔壁に対して、6g/Lのススを堆積させた状態で、目封止ハニカム構造体の流入端面より高温のガスを通気して、ススを堆積させた目封止ハニカム構造体の強制再生を行った。強制再生の条件は、流入端面におけるガス温度を650℃とし、ガスの通気時間を15分間とした。また、強制再生の前に、ススを堆積させた状態の目封止ハニカム構造体の質量を測定した。強制再生後に、目封止ハニカム構造体の質量を測定し、強制再生により消失したススの質量を求めた。堆積させたススの質量M1と、強制再生により消失したススの質量M2とから、強制再生時の再生効率(M2/M1×100)を求めた。表2においては強制再生時の再生効率を「再生効率(%)」と表記した。
【0083】
[総合評価]
表2の「全体圧損(Ratio)」が、1以下で、且つ、「再生効率(%)」が70%以上の場合を「合格」とした。総合評価が「合格」の場合、表2の「総合評価」の欄に、「OK」と記す。表2の「全体圧損(Ratio)」が、1を超える、又は、「再生効率(%)」が70%未満の場合を「不合格」とした。総合評価が「不合格」の場合、表2の「総合評価」の欄に、「NG」と記す。
【0084】
(結果)
実施例1〜12の目封止ハニカム構造体は、「全体圧損(Ratio)」が、1以下で、且つ、「再生効率(%)」が70%以上であり、総合評価において「合格」の評価を得ることができた。一方、比較例2〜7の目封止ハニカム構造体は、「全体圧損(Ratio)」が、1を超え、再生効率についても、いずれも低い値となった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の目封止ハニカム構造体は、排ガスに含まれる微粒子等を除去するための捕集フィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:目封止部、3a:流入側目封止部、3b:流出側目封止部、4:辺、6a:流入端面、6b:流出端面、7,17:ハニカムセグメント、7a,17a:中央セグメント、7b:外周セグメント、7ba:特定外周セグメント、7bb:特定外周セグメント以外の外周セグメント、8:角部、9:ハニカム構造部、10:外壁、11:第1の辺、12:第2の辺、13:第3の辺、14:第4の辺、18:接合層、21:分割壁、100,200:目封止ハニカム構造体、a:距離a、b:距離b。
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