【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本薬学会第137年会(仙台)ウェブサイト(掲載日:平成29年1月25日)ポスター発表一覧 http://nenkai.pharm.or.jp/137/web/pdf/2_4_poster.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、特許文献1〜2に記載の薬剤によれば、ユーメラニンの形成を阻害することができる可能性がある。しかし、これらの薬剤は、代わりに合成されるフェオメラニンの量を増大せしめるものであることから、人体へ悪影響を及ぼし得るという問題がある。
【0009】
そこで、フェオメラニンの量を低減するだけではなく、フェオメラニン及びユーメラニンからなる総メラニン量におけるフェオメラニンの量の割合を低減することができれば、細胞障害や人体への悪影響を回避することができるようになる。しかし、これまでに、総メラニン量におけるフェオメラニンの量とその割合を効果的に低減せしめる薬剤や有効成分はほとんど知られていない。
【0010】
そこで、本発明は、フェオメラニンの量を低減するだけではなく、総メラニン量におけるフェオメラニンの量の割合を低減することが可能である組成物を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決しようとして、フェオメラニンの量を低減する作用を有し得る物質の探索を試みた。一般的に生理的作用を有する物質としては数限りないものが知られている。また、美白剤として知られているものに限ったとしても、胎盤抽出液、グルタチオン、ユキノシタ抽出物、油溶性甘草エキス、レチノイド、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、アルブチン、コウジ酸、ビタミンE、トラネキサム酸、システイン、カミツレエキス、リノール酸、エラグ酸、ルシノール、α−ヒドロキシ酸などの多種多様なものが知られており、しかもこれらはそれぞれ特定の作用機序を有している。かかる状況にありながら、本発明者らは、検討を積み重ねることによって遂には、L−アスコルビン酸 2−グルコシドといったアスコルビン酸誘導体がフェオメラニンの量を低減する作用を有することを見出した。しかも、アスコルビン酸誘導体は、単にフェオメラニンの量を低減するのに留まらず、総メラニン量におけるフェオメラニンの量の割合を低減せしめ得るものであることを、本発明者らは見出した。
【0012】
一方で、本発明者らが見出した事実によれば、上記で挙げた美白剤として用いられ得る物質のうち、アルブチンといったハイドロキノン誘導体については、総メラニン量を低減する一方で、総メラニン量におけるフェオメラニンの量の割合については実質的に低減しなかった。かかる事実を鑑みれば、アスコルビン酸誘導体が有するフェオメラニンの量の割合を低減する作用は驚くべきものであり、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0013】
本発明者らは、さらに試行錯誤を積み重ねることにより、アスコルビン酸誘導体と、単独ではフェオメラニンの量の割合を低減する作用を確認できないアルブチンといったハイドロキノン誘導体とを組み合わせて用いることにより、相乗的にフェオメラニンの量の割合を低減せしめ得ることを見出した。アスコルビン酸誘導体とハイドロキノン誘導体とを組み合わせて用いることによるフェオメラニンの量を低減する作用は相加的であるという結果を鑑みれば、アスコルビン酸誘導体とハイドロキノン誘導体との組み合わせによるフェオメラニンの量の割合を相乗的に低減する作用があるという結果は非常に驚くべきものであり、やはり本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0014】
本発明者らは、このような知見を基に、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの塩と、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの塩とを含有する、フェオメラニン抑制作用を有する組成物を創作することに成功した。本発明は、これらの知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0015】
したがって、本発明の一態様によれば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びそれらの塩からなる群から選ばれる第1の成分を含有する、フェオメラニン抑制用組成物が提供される。
【0016】
本発明の別の一態様によれば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びそれらの塩からなる群から選ばれる第1の成分と、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体及びそれらの塩からなる群から選ばれる第2の成分とを含有する、フェオメラニン抑制用組成物が提供される。
【0017】
好ましくは、前記第1の成分は、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸脂肪酸エステル及びアスコルビン酸アルキルエーテルからなる群から選ばれる成分である。
【0018】
好ましくは、前記第2の成分は、置換又は非置換のハイドロキノンと糖との縮合物である。
【0019】
好ましくは、前記第2の成分は、アルブチンである。
【0020】
好ましくは、前記フェオメラニン抑制用組成物は、前記第1の成分及び前記第2の成分を、質量比(第1の成分:第2の成分)が1:0.005〜2になるように含有する。
【0021】
本発明の別の一態様によれば、本発明の一態様の組成物を含有する、化粧品又は医薬部外品に用いるための組成物が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様であるフェオメラニン抑制用組成物によれば、フェオメラニンの量を低減するだけでなく、総メラニン量におけるフェオメラニンの量の割合を低減することができる。
【0023】
また、本発明の一態様であるフェオメラニン抑制用組成物における第1の成分及び第2の成分は、化粧品成分などとして人体への使用実績が豊富であることから、使用者に日常的かつ安全に利用されることが期待できる。
【0024】
本発明の一態様である化粧品及び医薬部外品に用いるための組成物によれば、それぞれの利用態様に応じて、広く汎用的に利用され得る。例えば、本発明の一態様である化粧品用組成物及び医薬部外品用組成物は、化粧水、美容液、美容オイル、美白液、乳液、クリームなどの種々の態様をとることにより、使用者に対してフェオメラニンに基づく細胞障害性や人体への悪影響を低減しつつ、細胞保護効果、抗老化効果(アンチエイジング)、抗酸化効果、ラジカル消去効果、肌質維持効果、肌質改善効果、美白効果、肌色を明るくすること、肌色を薄くすること、肌色を均一にすることなどによる肌色改善効果などの生理的な効果をもたらすことが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一態様である組成物の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0027】
本発明の一態様の組成物は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びそれらの塩からなる群から選ばれる第1の成分を少なくとも含有する。本発明の別の一態様の組成物は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及びそれらの塩からなる群から選ばれる第1の成分と、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体及びそれらの塩からなる群から選ばれる第2の成分とを少なくとも含有する。本明細書においては、これらを総じて、「本発明の一態様の組成物」と称する。また、本明細書においては、第1の成分のみを、並びに第1の成分及び第2の成分の組み合わせを、「有用成分」として総称する場合がある。
【0028】
本発明の一態様の組成物は、フェオメラニン抑制用組成物である。本発明の技術的範囲はいかなる理論や推測にも拘泥されるものではないが、本発明の一態様の組成物は、有用成分を含有することによって、フェオメラニンの量を低減するだけでなく、フェオメラニンの量及びユーメラニンの量からなる総メラニン量におけるフェオメラニンの量の割合を低減することが可能である。本発明の一態様の組成物は、フェオメラニンの合成を抑制する作用に加えて、一度合成されたフェオメラニンを分解し、量又はその割合を低減する作用がある可能性がある。
【0029】
本明細書において、「フェオメラニン量の抑制作用」とは、フェオメラニンの量(絶対量)を低減しつつ、フェオメラニンの量及びユーメラニンの量からなる総メラニン量におけるフェオメラニンの量の割合(相対量)を低減する作用を意味する。
【0030】
第1の成分は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体若しくはそれらの塩又はこれらの組み合わせであれば特に限定されない。アスコルビン酸誘導体としては、アスコルビン酸を基本骨格とするものとして通常知られているとおりの意味のものであれば特に限定されず、例えば、生理的作用を有するものとして知られているアスコルビン酸誘導体などが挙げられ、具体的にはアスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸脂肪酸エステル、アスコルビン酸アルキルエーテルなどが挙げられる。フェオメラニン量の抑制作用を勘案すれば、アスコルビン酸グルコシドが好ましく、L−アスコルビン酸 2−グルコシドがより好ましい。アスコルビン酸の塩としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。アスコルビン酸の塩やアスコルビン酸誘導体は、上記例示したものなどの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。一般的に、アスコルビン酸グルコシドなどのアスコルビン酸誘導体やアスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸の塩は、生体内においてアスコルビン酸イオンとして存在することなどにより、アスコルビン酸と同様の生理的作用を有し得ることが知られている。
【0031】
第1の成分のより具体的な例としては、アスコルビン酸(BASFジャパン社)、アスコルビン酸(結晶)(DSMニュートリションズ社)、アスコルビン酸ナトリウム(BASFジャパン社)、アスコルビン酸ナトリウム(結晶)(DSMニュートリションズ社)、和光純薬工業社、林原社から市販されているアスコルビン酸 2−グルコシドなどのアスコルビン酸グルコシド、「VCエチル」(日本精化社)などの3−O−エチルアスコルビン酸、「NIKKOL(登録商標) VC−IP」(日光ケミカルズ社)などのテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、「NIKKOL(登録商標) VC−PMg」(日光ケミカルズ社)や「アスコルビン酸PM」(昭和電工社)などのリン酸アスコルビルマグネシウム;「NIKKOL(登録商標) CP」(日光ケミカルズ社)などのジパルミチン酸アスコルビル;「L−アスコルビン酸パルミチンエステル」(DSMニュートリションズ社)などのパルミチン酸アスコルビル;「NIKKOL(登録商標) VC−SS」(日光ケミカルズ社)などのアスコルビン酸硫酸2ナトリウム;「ステイC−50」(DSMニュートリションズ社)や「リン酸L−アスコルビルナトリウム」(BASFジャパン社)などのリン酸アスコルビルナトリウム;「アプレシエ(登録商標)(APPS)」(昭和電工社)などのパルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム;ステアリン酸アスコルビルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
第2の成分は、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体若しくはそれらの塩又はこれらの組み合わせであれば特に限定されない。ハイドロキノン誘導体としては、ハイドロキノンを基本骨格とするものとして通常知られているとおりの意味のものであれば特に限定されず、例えば、生理的作用を有するものとして知られているハイドロキノン誘導体などが挙げられ、具体的には置換又は非置換のハイドロキノンと糖との縮合物などが挙げられる。該糖としては、D−グルコ−ス、D−ガラクト−ス、D−マンノ−ス、D−タガト−ス、D−フルクト−ス、L−ソルボ−ス、D−プシコ−ス、L−アラビノ−ス、D−キシロ−ス、D−リボ−ス、D−キシルロ−ス、D−リキソ−ス、D−リブロ−ス、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、ムラミン酸、ウロン酸、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸、L−イズロン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。ハイドロキノン誘導体は、上記例示したものなどの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ハイドロキノン誘導体は、人体への適用実績を鑑みれば、アルブチン(ハイドロキノン−β−D−グルコピラノシド;β−アルブチン)及びα−アルブチン(ハイドロキノン−α−D−グルコピラノシド)が好ましく、アルブチンがより好ましい。一般的に、アルブチンなどのハイドロキノン誘導体は、ハイドロキノンと同様の生理的作用を有しながらも、ハイドロキノンよりも安定したものなどであり得ることが知られている。
【0033】
第2の成分のより具体的な例としては、「安定型徐放性ハイドロキノンSHQ」(環境経営ホールディングス社)やローディア社、三井化学社、イーストマンケミカル社、射陽化工社などから市販されているハイドロキノン;岩瀬コスファ社、日本精化社、三菱化学社、和光純薬工業社から市販されているアルブチン;DSMニュートリションズ社、江崎グリコ食品社などから市販されているα−アルブチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
第1の成分の含有量は、フェオメラニン量の抑制作用が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、組成物の総量に対して、0.03〜10%(w/v)であり、0.05〜6%(w/v)が好ましく、0.1〜2%(w/v)がより好ましく、0.5〜2%(w/v)がさらに好ましい。第1の成分の含有量がこれらの範囲内にあることにより、良好なフェオメラニン量の抑制作用が得られ、さらに安全性を有する組成物とすることができる。
【0035】
第2の成分の含有量は、第1の成分と組み合わせることによってフェオメラニン量の抑制作用が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、組成物の総量に対して、0.001〜10%(w/v)であり、0.01〜8%(w/v)が好ましく、0.05〜3%(w/v)がより好ましく、0.1〜3%(w/v)がさらに好ましい。第2の成分の含有量がこれらの範囲内にあることにより、第1の成分と相乗的なフェオメラニン量の抑制作用が得られ、さらに安全性を有する組成物とすることができる。
【0036】
第1の成分及び第2の成分のそれぞれの含有量は上記したとおりであるが、これらの総量及び質量比については、本発明の一態様の組成物がフェオメラニン量の抑制作用を示す限りにおいて特に限定されない。例えば、第1の成分及び第2の成分の質量比(第1の成分:第2の成分)は1:0.001〜10であり、良好なフェオメラニン量の抑制作用を得るためには、1:0.003〜5であることが好ましく、1:0.005〜2であることがより好ましい。
【0037】
本発明の一態様の組成物は、フェオメラニン量の抑制作用の程度については特に限定されないが、例えば、第1の成分を含有する系については第1の成分を含有しない系と比べて、又は第1の成分及び第2の成分を含有する系については第1の成分及び第2の成分の両方を含有しない系や第1の成分及び第2の成分のいずれか一方のみを含有する系と比べて、フェオメラニン量の抑制作用がみられる程度の作用である。
【0038】
本発明の一態様の組成物の具体的な態様は、組成物の総量に対して、第1の成分を0.1〜2%(w/v)で含有する組成物;組成物の総量に対して、第1の成分を0.1〜2%(w/v)で含有し、第2の成分を0.05〜3%(w/v)で含有し、かつ、第1の成分及び第2の成分の質量比(第1の成分:第2の成分)が1:0.003〜5である組成物などである。
【0039】
有用成分を含有する組成物は、それ自体として、又は他の成分とともに含有することにより、化粧品又は医薬部外品に用いるための組成物として利用され得る。したがって、本発明の別の一態様の組成物は、有用成分を少なくとも含有する、化粧品又は医薬部外品に用いるための組成物である。
【0040】
本発明の一態様の組成物の好適な具体的態様は、化粧品用組成物である。化粧品用組成物は、皮膚に適用される態様であれば、その使用態様については特に限定されず、例えば、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、フレグランス化粧品、ボディケア化粧品などが挙げられ、より具体的には化粧水、美容液、美容オイル、美白液、乳液、クリーム、ファンデーション、サンスクリーン、ローション、パック、BBクリーム、フェースパウダー、ハンドクリーム、クレンジング、洗顔、化粧下地、コンシーラー、ほほ紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、リップ、マスカラ、アイカラー、口紅、オールインワン化粧品などが挙げられる。化粧品用組成物は、フェオメラニン量の抑制作用を示し、細胞保護効果、抗老化効果(アンチエイジング)、抗酸化効果、ラジカル消去効果、肌質維持効果、肌質改善効果、美白効果及び/又は肌色改善効果を発揮することが望まれる、化粧水、美容液、美容オイル、美白液、乳液及びクリームであることがより好ましい。
【0041】
化粧品用組成物は、本発明の課題を解決し得る限り、有用成分に加えて、化粧品に通常用いられ得るその他の成分を含有し得る。
【0042】
化粧品に通常用いられ得るその他の成分は特に限定されず、例えば、水や有機溶媒などの溶媒、油性成分、乳化剤、保湿剤、清涼剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、美白剤、可溶化剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材などが挙げられる。化粧品に通常用いられ得るその他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。その他の成分のいくつかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0043】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ブチレングリコール(BG)、ポリエチレングリコール、トレハロース、グリチルリチン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、ジプロピレングリコール(DPG)、ジグリセリン、1,2−ペンタンジオール、セリン、甘草エキス、ローカストビーンガム、グリセリンモノ2−エチルヘキシルエーテル、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、加水分解エラスチン、乳酸及びその塩、シクロデキストリン、ピロリドンカルボン酸及びその塩などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。保湿剤の含有量は、0〜15質量%程度が好ましい。
【0044】
油性成分としては、例えば、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、コハク酸ジエチルヘキシル、炭素数12〜15のアルキルベンゾエートなどのエステル油;オクチルドデカノール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、2−デシルテトラデシノール、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セタノールなどの高級アルコール;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性シリコーン油などのシリコーン油;流動パラフィン、軽質イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、ワセリンなどの直鎖及び分岐鎖の炭化水素油;ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸などの高級脂肪酸;アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルなどのグリセライド油;ホホバ油、オリーブ油、ノバラ油、大豆油、オレンジ花油、カミツレ花油、ラベンダー油などの植物油;液状ラノリン、サラシミツロウなどの動物油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーンなどのフッ素油などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。油性成分の含有量は、0〜40質量%程度が好ましい。
【0045】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ヒドロキシエタンジホスホン酸などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。pH調整剤の含有量は、0〜1質量%程度が好ましい。
【0046】
防腐剤としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。防腐剤の含有量は、0〜5質量%程度が好ましい。
【0047】
乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤などが挙げられ、より具体的にはステアリン酸ソルビタン、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、水素添加大豆リン脂質、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。乳化剤の含有量は、0〜5質量%程度が好ましい。
【0048】
可溶化剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレステロールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。可溶化剤の含有量は、0〜5質量%程度が好ましい。
【0049】
キレート剤としては、例えば、アラニン、エデト酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。キレート剤の含有量は、0〜1質量%程度が好ましい。
【0050】
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンE、p−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、フィチン酸、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、L−システイン塩酸塩などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、0〜1質量%程度が好ましい。
【0051】
粘度調整剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、カラギーナン、ガラクタン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプン、寒天、キサンタンガム、クインスシード、グアーガム、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、トラガカントガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウムペクチン、プルラン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。粘度調整剤の含有量は、0〜1質量%程度が好ましい。
【0052】
清涼剤としては、例えば、エタノールなどの低級アルコール、L−メントール、カンフル、メントキシプロピルジオールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。清涼剤の含有量は、0〜10質量%程度が好ましい。
【0053】
化粧品用組成物には、有用成分以外の美肌用成分が含まれていてもよい。美肌用成分としては、例えば、胎盤抽出液、グルタチオン、ユキノシタ抽出物、油溶性甘草エキス、レチノイド、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、コウジ酸、ビタミンE、トラネキサム酸、システイン、カミツレエキス、リノール酸、エラグ酸、ルシノール、α−ヒドロキシ酸などの美白剤;ロイヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体、幼牛血液抽出液などの細胞賦活剤;肌荒れ改善剤;ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノールなどの血行促進剤;酸化亜鉛、タンニン酸などの皮膚収斂剤;イオウ、チアントロールなどの抗脂漏剤などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0054】
本発明の一態様の組成物のその他の具体的態様は、医薬部外品用組成物である。医薬部外品は、通常知られているとおりのものであれば特に限定されないが、例えば、人体に対する作用が緩和なものであり、医療機器ではなく、かつ、厚生労働大臣の指定するものということができ、具体的には育毛剤、染毛剤、ビタミン剤などが挙げられる。
【0055】
医薬部外品用組成物は、本発明の課題を解決し得る限り、第1の成分及び第2の成分に加えて、医薬部外品に通常用いられ得るその他の成分を含有し得る。その他の成分としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、流動化剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤、滑沢剤などの通常の医薬部外品の加工に使用される添加物などを挙げることができる。添加物の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜設定され得る。
【0056】
本発明の一態様の組成物のその他の具体的態様は、薬用化粧品用組成物である。薬用化粧品は、医薬部外品に属す、いわゆる薬用化粧品をいう。薬用化粧品用組成物の使用態様、その他の成分の種類及び含有量などは、化粧品用組成物や医薬部外品用組成物と同様に、当業者により適宜設定し得る。
【0057】
本発明の一態様の組成物は、その製造方法について特に限定されず、本発明の一態様の組成物の使用態様に応じて当業者に通常知られる方法にて製造できる。
【0058】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0059】
[1.ASG溶液及びArb溶液の調製]
市販されているL−アスコルビン酸 2−グルコシド及びアルブチンをそれぞれ精製水に溶解し、段階希釈して各種濃度のASG溶液とArb溶液を調製した。また、得られたASG溶液にArbを溶解することにより、ASG+Arb溶液を調製した。ASG溶液、Arb溶液及びASG+Arb溶液は、メンブレンフィルターを用いてそれぞれろ過滅菌した。
【0060】
[2.B16−F10マウスメラノーマ細胞の培養]
下記に示す2つの文献に記載の試験方法に準じて、B16−F10マウスメラノーマ細胞の培養を実施した。以下に、試験手順の概要を示す。
(1)岩手大学教育学部研究年報 第40巻第1号(1980.10)93−102
(2)Journal of Applied Pharmaceutical Science Vol.4(01),pp.166−169
【0061】
ウシ胎児血清(FBS;Life technologies社)、α−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH;ペプチド研究所社)及びAntibiotic−Antimycotic(Life technologies社)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Life technologies社)を用いてB16−F10マウスメラノーマ細胞を懸濁し、6ウェル培養プレートに1.0×10
5cells/ウェルになるように播種した。その後、6ウェル培養プレートを、37℃、CO
2濃度5%の条件下で24時間培養した。
【0062】
培養後の培養上清を除去した各ウェルに、後述の表1及び2に示したASG濃度及び/又はArb濃度になるように、ASG溶液、Arb溶液又はASG+Arb溶液 0.02mLと、ウシ胎児血清、α−メラノサイト刺激ホルモン及びAntibiotic−Antimycoticを含むダルベッコ改変イーグル培地 1.98mLとを混合して調製した被験溶液 2mLを添加して、さらに48時間培養した。培養後の各ウェルについて、後述するMTTアッセイ及びメラニン分析を実施した。
【0063】
[3.MTTアッセイ(細胞生存率の測定)]
(2)の文献に記載の試験方法に準じて、MTTアッセイ(細胞生存率の測定)を実施した。以下に、上記文献との変更点を示す。
3−(4,5−ジメチル−2−チアゾニル)−2,5−ジフェニル−2−H−テトラゾリウムブロマイド(MTT;同仁化学社)溶液の濃度は、2mg/mlではなく2.5mg/mlとし、MTT溶液添加後の培養時間は、3時間ではなく2時間とした。また、ホルマザン抽出は、ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide)ではなく、0.04mol/l 塩酸イソプロパノールを2mL添加して行った。
【0064】
[4.メラニン分析]
細胞内のユーメラニンの含有量は、下記(3)に示す伊藤らの文献に記載の分析方法に従って測定した。細胞内のフェオメラニンの含有量は、下記(4)に示す伊藤らの文献に記載の分析方法に準じて、測定した。以下に、フェオメラニン分析における(4)の文献との変更点を示す。
(3)ユーメラニンの分析方法:Pigment Cell Melanoma Research(PCMR),2011,Vol 24,pp.605−613
(4)フェオメラニンの分析方法:PCMR,2002,Vol 15,pp.Pages 225−232
【0065】
フェオメラニン分析については、ホモジナイズして得られた検体に添加するH
3PO
2の条件を、濃度:50%(w/v)、添加量:20μLとした。
【0066】
[5.解析方法]
上記4のメラニン分析で得られたユーメラニンマーカー(PTCA)及びフェオメラニンマーカー(4−AHP)の定量値に基づいて、以下の式(I)及び(II)によりユーメラニン量及びフェオメラニン量を算出した。
(I)ユーメラニン量=PTCA量×25(ユーメラニンから得られるPTCAの収率4%から逆算して求めた係数)
(II)フェオメラニン量=4−AHP量×7(フェオメラニンから得られる4−AHPの収率15%から逆算して求めた係数)
【0067】
なお、式(I)及び式(II)の係数は文献PCMR,2013,Vol 26,Pages 616−633を参照した。
【0068】
算出したユーメラニン量及びフェオメラニン量を、上記3で得られたMTTアッセイの結果としての吸光度で除すことにより、細胞あたりのユーメラニン量及びフェオメラニン量を算出した。また、ユーメラニン量及びフェオメラニン量の合計量を100%としたときのユーメラニン比率及びフェオメラニン比率を算出した。
【0069】
[6.結果(1)]
例1〜例3及びコントロールの被験溶液を用いて、上記5の解析方法にて評価した結果をまとめたものを
図1及び
図2に示す。これらの図が示すように、ASGの含有量が多くなるほどにフェオメラニン量及びフェオメラニン比率が減少した。また、ASG及びArbを組み合わせて用いることにより、さらにフェオメラニン量及びフェオメラニン比率が減少した。なお、培養細胞の生存率は、上記被験溶液の間で有意な差はみられなかった。
【0070】
【表1】
【0071】
[7.結果(2)]
例2、例4〜例6及びコントロールの被験溶液を用いて、上記5の解析方法にて評価した結果をまとめたものを
図3及び
図4に示す。
図1及び
図2と同様に、ASGの含有量が多くなるほどにフェオメラニン量及びフェオメラニン比率が減少し、ASG及びArbを組み合わせて用いることにより、フェオメラニン量及びフェオメラニン比率がさらに減少した。一方、Arbの含有量が多くなるほどにメラニン全体の量が減少した。しかし、メラニン全体に対するフェオメラニンの比率は減少しなかった。なお、培養細胞の生存率は、上記被験溶液の間で有意な差はみられなかった。
【0072】
【表2】
【0073】
Arb単独では総メラニン中のフェオメラニンの比率は減少しなかったことを加味すると、ASG及びArbの組み合わせによるフェオメラニン比率の減少効果は、相加効果というよりも、相乗効果といえることがわかった。また、例1〜例6の被験溶液については、いずれもコントロールとの間に培養細胞の生存率について有意な差がみられなかった。
【0074】
以下に本発明の種々の態様の処方例を挙げるが、本発明の技術的範囲はこれらの処方例に限定されない。
【0075】
(処方例1〜6)化粧水
【表3】
【0076】
(処方例7〜10)乳液
【表4】
【0077】
(処方例11〜16)美容液
【表5】
【0078】
(処方例17〜18)クリーム
【表6】