(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記推定部は、前記抵抗測定部によって測定された前記帯電部材の抵抗値と、前記感光体の劣化の度合いに応じて決定される、前記補正値と測定された前記抵抗値との対応関係を示す設定情報とに基づいて、前記周辺温度の補正値を決定する、
請求項2に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の画像形成装置及び画像形成装置の制御方法を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の画像形成装置100の全体構成例を示す外観図である。画像形成装置100は、例えば複合機である。画像形成装置100は、ディスプレイ1、コントロールパネル2、画像読取部3、プリンタ部4及びシート収容部5を備える。画像形成装置100は、トナー等の現像剤を用いてシート上に画像を形成する。シートは、例えば紙やラベル用紙である。シートは、その表面に画像形成装置100が画像を形成できる物であればどのような物であってもよい。
【0011】
ディスプレイ1は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。ディスプレイ1は、画像形成装置100に関する種々の情報を表示する。
【0012】
コントロールパネル2は、複数のボタンを有する。コントロールパネル2は、ユーザの操作を受け付ける。コントロールパネル2は、ユーザによって行われた操作に応じた信号を、画像形成装置100の制御部に出力する。なお、ディスプレイ1とコントロールパネル2とは一体のタッチパネルとして構成されてもよい。
【0013】
画像読取部3は、読み取り対象の画像情報を光の明暗として読み取る。画像読取部3は、読み取られた画像情報を記録する。記録された画像情報は、ネットワークを介して他の情報処理装置に送信されてもよい。記録された画像情報は、プリンタ部4によってシート上に画像形成されてもよい。
【0014】
プリンタ部4は、画像読取部3によって生成された画像情報、又は通信路を介して受信された画像情報に基づいて、シート上に画像を形成する。プリンタ部4は、例えば以下のような処理によって画像を形成する。プリンタ部4の画像形成部は、画像情報に基づいて感光体ドラム上に静電潜像を形成する。プリンタ部4の画像形成部は、静電潜像に現像剤を付着させることによって可視像を形成する。現像剤の具体例として、トナーがある。プリンタ部4の転写部は、可視像をシート上に転写する。プリンタ部4の定着部は、シートに対して加熱及び加圧を行うことによって、可視像をシート上に定着させる。なお、画像が形成されるシートは、シート収容部5に収容されているシートであってもよいし、手指しされたシートであってもよい。
【0015】
シート収容部5は、プリンタ部4における画像形成に用いられるシートを収容する。
【0016】
図2は、本実施形態におけるプリンタ部4の画像形成プロセスに関する構成の具体例を示す図である。プリンタ部4は、画像形成のプロセスに関する構成として、帯電ローラ41、感光体ドラム42、現像器43、温度検知センサ44、転写ベルト45、二次転写ローラ46及び定着器47を備える。これらの機能部のうち帯電ローラ41、感光体ドラム42及び現像器43は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各トナー色ごとに備えられる。以下では、各トナー色ごとに備えられるこれらの機能部を総称してステーションと呼ぶ。また、以下では、各ステーションの機能部を、各機能部の符号に「Y」、「M」、「C」又は「K」を付すことで区別する。温度検知センサ44(周辺温度測定部の一例)は、各トナー色のステーション200のうち、ブラック(K)のステーション200−Kにのみ備えられる。
【0017】
一般に画像形成プロセスは、主に帯電、露光、現像、転写及び定着の各プロセスに分けられる。帯電プロセスでは、帯電ローラ41(帯電部材の一例)が感光体ドラム42の表面をマイナスに帯電させる。露光プロセスでは、マイナスに帯電した感光体ドラム42の表面にレーザー光が照射されることにより静電潜像が形成される。現像プロセスでは、現像器43が感光体ドラム42の表面にトナーを付着させる。転写プロセスでは、画像形成の対象となるシート上に画像が形成される。具体的には、各ステーションの感光体ドラム42から転写ベルト45上にトナー像が転写され(一次転写)、二次転写ローラ46によって転写ベルト45上のトナー像がシート上に転写される(二次転写)。定着プロセスでは、定着器47がシート上に転写されたトナー像をシートに定着させる。
【0018】
このような画像形成プロセスにおいて、温度検知センサ44は、感光体ドラム42表面の電位制御に用いられる。一般に有機感光体(OPC:Organic Photoconductor)は温度依存性を持つ。そのため、一般に画像形成装置は、感光体ドラムの周辺温度を計測する温度検知センサを備え、温度検知センサによって計測された感光体ドラムの周辺温度に基づいて帯電ローラに対する印加電圧を制御することで感光体ドラムの表面電位を制御する。
【0019】
しかしながら、複数のステーションを備える画像形成装置において、温度検知センサは一部のステーションにのみ備えられることが多い。
図2の例では、4つのステーション200のうちブラック(K)のステーション200−Kにのみ温度検知センサ44が備えられている。そのため、従来は、温度検知センサを備えないステーションの感光体ドラムの表面電位は、温度検知センサを備えるステーションの感光体ドラムの周辺温度に基づいて制御されていた。しかしながら、各ステーションの感光体ドラムの周辺温度は必ずしも常に同じであるとは限らない。そのため、従来の制御方法では、感光体ドラムの表面電位を適切に制御することができない可能性があった。
【0020】
図3は、本実施形態における帯電ローラの抵抗値の温度依存性の例を示す図である。
図3の横軸は温度を表し、縦軸は帯電ローラの抵抗値を表す。
図3は、感光体ドラム表面の感光体が有する温度依存性によって、帯電ローラの抵抗値も温度に依存して変化することを表している。また、
図4は、本実施形態における帯電ローラの抵抗値のライフ依存性の例を示す図である。ライフとは、感光体ドラムの劣化又は劣化の度合いを意味する言葉である。ライフは、通紙枚数や感光体ドラムの回転数、稼働時間などの増加によって進行する。
図4の横軸は、ライフの一例としての通紙枚数を表し、縦軸は帯電ローラの抵抗値を表す。
図4は、通紙枚数の増加に伴って帯電ローラの抵抗値が低下することを表している。
【0021】
帯電ローラの抵抗値は、帯電ローラ自身の劣化や感光体ドラムの劣化に応じて変化する。ライフが進行すると感光体ドラム表面の膜厚が減少するとともに感光層そのものも劣化する。こうした点を考慮し、本実施形態の画像形成装置100は、以下に説明する制御部48を備えることにより、より適切に感光体ドラムの表面電位を制御することができる。
【0022】
図5は、本実施形態における制御部48の機能構成の具体例を示すブロック図である。制御部48は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、制御プログラムを実行する。制御部48は、制御プログラムの実行によって、設定情報記憶部481、抵抗値取得部482、環境測定部483、推定部484及び帯電ローラ制御部485として機能する。制御部48は、推定された周辺温度又は周辺湿度に基づいて、周辺温度又は前記周辺湿度が測定されていない感光体に対して画像を形成するプリンタ部4(画像形成部の一例)の画像形成条件を決定する。
【0023】
設定情報記憶部481は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。設定情報記憶部481は、感光体ドラム42の表面電位の制御に必要な各種の設定情報を記憶する。
【0024】
抵抗値取得部482は、帯電ローラの抵抗値(通電状態の一例)を示す情報(以下「抵抗値情報」という。)を取得する。具体的には、抵抗値取得部482は、各帯電ローラ41に一定の電圧を印加し、その電圧の印加によって流れた電流量を測定する。抵抗値取得部482は、印加した電圧と測定された電流量とに基づいて各帯電ローラ41の抵抗値を算出することにより抵抗値情報を取得する。抵抗値取得部482は、取得した抵抗値情報を推定部484に出力する。
【0025】
環境測定部483は、温度検知センサを備えるステーションの感光体ドラムの周辺温度を示す情報(以下「周辺温度情報」という。)を取得する。具体的には、環境測定部483は、ブラック(K)のステーション200−Kの感光体ドラム42−Kの周辺温度情報を温度検知センサ44から取得する。環境測定部483は、取得した周辺温度情報を制御部484に出力する。
【0026】
推定部484は、設定情報と、取得された抵抗値情報及び周辺温度情報とに基づいて、周辺温度が測定されない感光体ドラムの周辺温度を推定する。具体的には、推定部484は、感光体ドラム42(Y、M、C)の周辺温度を推定する。以下では、周辺温度が測定された感光体ドラム42(K)の周辺温度を測定温度といい、周辺温度が測定されない感光体ドラム42(Y、M、C)について推定される周辺温度を推定温度という。すなわち、本実施形態では、感光体ドラム42−Kの周辺温度が測定温度となり、感光体ドラム42−Y、42−M及び42−Cの周辺温度が推定温度となる。推定温度は、設定情報、抵抗値情報及び周辺温度情報に基づいて決定される補正値で測定温度を補正することにより取得される。推定部484は、推定温度を示す情報(以下「推定温度情報」という。)を帯電ローラ制御部485に出力する。
【0027】
帯電ローラ制御部485は、周辺温度情報及び推定温度情報に基づいて、各帯電ローラ41−Y、41−M及び41−Cの印加電圧(画像形成条件の一例)を決定する。具体的には、帯電ローラ制御部485は、周辺温度情報に基づいて帯電ローラ41−Kの印加電圧を決定し、推定温度情報に基づいて帯電ローラ41−Y、41−M及び41−Cの印加電圧を決定する。
【0028】
帯電ローラ制御部485は、決定した印加電圧を各帯電ローラ41に印加することにより、各感光体ドラム42の表面電位を制御する。
【0029】
図6は、本実施形態における設定情報テーブルの具体例を示す図である。例えば、設定情報テーブルは、各帯電ローラ41の抵抗値Rが取る値の範囲(抵抗値範囲)ごとに温度補正値を有する。温度補正値は、帯電ローラの抵抗値Rが、対応する抵抗値範囲内に含まれる場合における、測定温度に対する周辺温度の補正値を表す。ここで抵抗範囲値は、以下を考慮して求められた値である。帯電ローラの抵抗値は、上述した通り、ライフや温度環境に応じて変動する。従って、初期抵抗値R0をもつ帯電ローラについて、2つの係数f
(a)及びf
(b)を用いて、ライフや温度変化を考慮した帯電ローラの抵抗値を予め求めておく(これを標準抵抗値という)。ここでf
(a)はライフの進行度を表す係数(以下「ライフ係数」という。)を表し、f
(b)は温度依存性を表す係数(以下「温度係数」という。)である。こうして得られた標準抵抗値は、RLn(n=1,2,…,10)及びRHn(n=1,2,…,10)の値をとり、以下の式(1)及び(2)を満たす。
【0032】
この場合、推定部484は、抵抗値RがRL1未満である場合には抵抗値Rの大きさに応じた10段階の負値で測定温度を補正する。また、推定部484は、抵抗値RがRH1より大きい場合には抵抗値Rの大きさに応じた10段階の正値で測定温度を補正する。また、推定部484は、抵抗値RがRL1以上かつRH1以下である場合には測定温度を補正しない。この場合、測定温度をT0、抵抗値Rに対応する各温度補正値をΔTとすると、推定部484は、次の式(3)によって推定温度Tを算出する。
【0034】
なお、設定情報は、上述した設定情報テーブルの他、推定温度を推定するための数式を示す情報として記憶されてもよい。例えば、推定温度Tが抵抗値Rに比例する場合、次の式(4)を示す情報が設定情報として記憶されてもよい。
【0036】
式(4)において、βは抵抗値Rの係数を表し、cは切片を表す。なお、β及びcは、ライフ係数や温度係数、測定温度の関数として定義されてもよい。
【0037】
図7は、本実施形態の画像形成装置100が感光体ドラム42の表面電位を制御する処理の流れを示すフローチャートである。まず、抵抗値取得部482が各帯電ローラ41の抵抗値情報を取得する(ACT101)。抵抗値取得部482は、取得した抵抗値情報を推定部4845に出力する。その一方で、環境測定部483が、温度検知センサ44を備えるステーションの感光体ドラム42(K)の周辺温度情報を取得する(ACT102)。環境測定部483は、取得した周辺温度情報を制御部484に出力する。
【0038】
続いて、推定部484が、測定された抵抗値情報、設定情報記憶部に記憶された設定情報に基づいて、周辺温度が測定されない感光体ドラム42(Y、M、C)の周辺温度を推定する(ACT103)。具体的には、推定部484は、設定情報と抵抗値情報とに基づいて周辺温度の補正値を決定し、決定した補正値で測定された周辺温度を補正することにより推定温度を取得する。
【0039】
例えば、測定された抵抗値Rが、RL1>R≧RL2を満たす場合、推定部484は、設定情報テーブルを参照し、抵抗値範囲にRL1>R≧RL2を持つ設定情報レコードを選択する。推定部484は、選択した設定情報レコードから温度補正値の値“−2”を取得する。推定部484は、取得した“−2”(℃)の温度補正値を測定温度に加算することにより推定温度を取得する。推定部484は、このようにして取得された推定温度情報を帯電ローラ制御部485に出力する。
【0040】
なお、推定部484は、周辺温度が測定されない感光体ドラム42(Y、M、C)に共通の設定情報を用いて周辺温度を推定してもよいし、周辺温度が測定されない感光体ドラム42(Y、M、C)ごとの設定情報を用いて、周辺温度が測定されない感光体ドラム42(Y、M、C)ごとに周辺温度を推定してもよい。
【0041】
帯電ローラ制御部485は、推定温度情報に基づいて、帯電ローラ41の印加電圧を決定する(ACT104)。具体的には、帯電ローラ制御部485は、感光体ドラム42−Y、42−M及び42−Cを帯電させる各帯電ローラ41−Y、41−M及び41−Cの印加電圧を決定する。例えば、印加電圧の算出式をfとした場合、fは感光体上の帯電電位V0と、感光体上の露光電位VLとに基づいて与えられる。帯電電位V0及び露光電位VLはいずれも感光体ドラム42の周辺温度によって変化する。そのため、fは推定温度Tを用いて次の式(5)のように表すことができる。
【0042】
f(T)=F{V0(T),VL(T)} 式(5)
【0043】
帯電ローラ制御部485は、このように算出した印加電圧を各帯電ローラ41に印加する。各感光体ドラム42(Y、M、C)の周辺温度が推定温度に制御されることで、画像形成装置100は、温度検知センサ44が備えられていないステーション200についても、感光体ドラム42の表面電位をライフの進行に応じた適切な電位に制御することができる。
【0044】
このように構成された実施形態の画像形成装置100は、感光体のライフの進行状況に応じて帯電ローラの印加電圧を決定することができる。そのため、実施形態の画像形成装置は、周辺温度の測定機構を個々の感光体ドラムごとに備えない場合であっても、帯電ローラの印加電圧をより適切に制御することが可能となる。
【0045】
例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンのステーションを有し、ブラックステーションのみに温度測定部を持つ画像形成装置を想定する。この場合、イエロー、マゼンタ及びシアンの感光体ドラムは、従来、ブラックの感光体ドラムの周辺温度に基づいて制御されていた。しかしながら、各ステーションは、ライフの進行状況が異なる可能性がある。一般に、画像形成装置ではブラックのトナーを用いた画像形成処理が行われる可能性が高く、ブラックのステーション200−Kにおいてライフが進行しやすい傾向にある。そのため、従来の制御方法では、イエロー、マゼンタ及びシアンの感光体ドラムにおいて、制御しようとする温度と実際の周辺温度との間にずれが生じる可能性がある。そして、このずれにより、帯電ローラの印加電圧が実際に必要な電圧値から乖離してしまう可能性があった。
【0046】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、一以上の画像形成部が有する帯電部材の通電状態に基づいて、環境測定部によって測定された周辺温度又は周辺湿度を補正することにより、周辺温度又は周辺湿度が測定されていない他の感光体の周辺温度又は周辺湿度を推定する推定部と、推定部によって推定された周辺温度又は周辺湿度に基づいて、周辺温度又は前記周辺湿度が測定されていない感光体に対して画像を形成する帯電部材の画像形成条件を決定する制御部と、を持つことにより、感光体ドラムの周辺温度をより精度良く推定することができる。その結果、感光体ドラムを帯電させる帯電ローラの制御電位をより適切に制御することができる。
【0047】
なお、実施形態の画像形成装置100は、温度検知センサを必ずしも1つの感光体ドラムにのみ備える必要はない。例えば、画像形成装置100は、ブラックのステーション200−Kに1つと、他のカラーステーション200−Y、200−M及び200−Cに1つの、合計2つの温度検知センサを備えてもよいし、全てのステーション200に温度検知センサを備えてもよい。この場合、画像形成装置100は、各温度検知センサが測定した周辺温度のいずれかを用いて帯電ローラ41の印加電圧を制御してもよい。また、この場合、画像形成装置100は、各周辺温度の平均値、最大値、最小値等の統計値に基づいて帯電ローラ41の印加電圧を制御してもよい。このような構成により、感光体ドラム41−Y、41−M及び41−Cの周辺温度をより精度良く補正することができる。
【0048】
また上記の実施例では、温度検知センサ44を用いて、帯電ローラ41の印加電圧を制御する例について説明したが、画像形成装置100は、温度検知センサ44に代えて感光体周辺の湿度を測定する湿度検知センサを備え、湿度を補正することによって帯電ローラ41の印加電圧を決定してもよい。また制御する対象を、現像ローラ43に供給する現像バイアス電圧としてもよい。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。