(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、いずれかの前記冷却室の室内温度がその冷却室に設定されている前記冷却温度範囲の上限温度より所定温度以上高い状態が所定時間以上継続すると前記優先冷却制御を実行してその冷却室以外の少なくとも1つの前記冷却室の前記冷却温度範囲を狭くする、請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
前記制御部は、前記優先冷却制御において、前記冷却温度範囲の下限温度を高くすることによって前記冷却温度範囲を狭くする、請求項1又は請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
前記制御部は、前記優先冷却制御を実行する場合は、前記圧縮機の回転速度を前記優先冷却制御の実行前より速くする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却貯蔵庫によると、冷凍室の温度が冷凍室高温閾値(すなわち冷却温度範囲より高い温度)以上に上昇している状態が所定時間継続したことが冷蔵室優先冷却モードを終了する条件であるので、冷凍室の温度が冷却温度範囲を超えてしまうという問題がある。
【0007】
本明細書では、いずれかの冷却室を、他の冷却室の室内温度を冷却温度範囲内に維持しつつ優先して冷却することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する冷却貯蔵庫は、複数の冷却室と、前記冷却室毎に設けられている蒸発器とを有し、圧縮機によって圧縮された冷媒を各前記蒸発器に分配供給する冷却貯蔵庫であって、前記圧縮機によって圧縮された冷媒の供給/停止を前記蒸発器毎に切り替える切替部と、各前記冷却室について、当該冷却室の室内温度が当該冷却室に設定されている冷却温度範囲より低くなると前記切替部を制御して当該冷却室に設けられている前記蒸発器への冷媒の供給を停止し、前記冷却温度範囲より高くなると前記切替部を制御して冷媒の供給を再開することにより、当該冷却室の室内温度が前記冷却温度範囲内に入るように制御する制御部と、を備え、前記制御部は、少なくとも1つの前記冷却室の前記冷却温度範囲を狭くすることによって他の前記冷却室を優先的に冷却する優先冷却制御を実行可能に構成されている。
【0009】
上記の冷却貯蔵庫によると、少なくとも1つの冷却室の冷却温度範囲を狭くすることによって他の冷却室を優先的に冷却するので、他の冷却室を優先的に冷却している間も当該少なくとも1つの冷却室の室内温度は冷却温度範囲内に維持される。すなわち、上記の冷却貯蔵庫によると、いずれかの冷却室(上述した他の冷却室に相当)を、他の冷却室(上述した少なくとも1の冷却室に相当)の室内温度を冷却温度範囲内に維持しつつ優先して冷却することができる。
【0010】
また、前記制御部は、いずれかの前記冷却室の室内温度がその冷却室に設定されている前記冷却温度範囲より所定温度以上高い状態が所定時間以上継続すると前記優先冷却制御を実行してその冷却室以外の少なくとも1つの前記冷却室の前記冷却温度範囲を狭くしてもよい。
【0011】
上記の冷却貯蔵庫によると、冷却室の室内温度がその冷却室に設定されている冷却温度範囲の上限温度より所定温度以上高い状態が所定時間以上継続した場合に、その冷却室を優先的に冷却することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記優先冷却制御において、前記冷却温度範囲の下限温度を高くすることによって前記冷却温度範囲を狭くしてもよい。
【0013】
冷却温度範囲を狭くする方法としては上限温度を低くする方向も考えられる。しかしながら、上限温度を低くすると下限温度を高くする場合に比べて前述した少なくとも1つの冷却室の室内温度を低く維持しなければならないので前述した他の冷却室の室内温度が速やかに低下しない虞がある。上記の冷却貯蔵庫によると、下限温度を高くすることによって冷却温度範囲を狭くするので、上限温度を低くする場合に比べ、他の冷却室の室内温度を速やかに下げることができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記優先冷却制御を実行する場合は、前記圧縮機の回転速度を前記優先冷却制御の実行前より速くしてもよい。
【0015】
上記の冷却貯蔵庫によると、圧縮機の回転速度を優先冷却制御の実行前より速くしない場合に比べ、他の冷却室の室内温度をより速やかに下げることができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記優先冷却制御を実行する場合は、前記圧縮機を最高回転速度で回転させてもよい。
【0017】
上記の冷却貯蔵庫によると、他の冷却室の室内温度をより速やかに下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、実施形態を
図1ないし
図6によって説明する。
【0020】
(1)冷却貯蔵庫の構成
先ず、
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る冷却貯蔵庫1の構成について説明する。
図1に示すように、冷却貯蔵庫1は複数の冷却室(冷凍室17、冷蔵室18)と、冷却室毎に設けられている蒸発器(冷凍室用蒸発器42、冷蔵室用蒸発器37)とを有し、圧縮機30によって圧縮された冷媒を各蒸発器に分配供給するものである。
【0021】
具体的には、冷却貯蔵庫1は業務用の横型(テーブル型)冷凍冷蔵庫であり、前面に開口した横長の断熱箱体により構成された貯蔵庫本体11(
図1)、貯蔵庫本体11の底面に設けられた4つの脚部12(
図1では2つのみを図示)、冷却ユニット13(
図2)、制御部14(
図2)、操作部15(
図2)などを備えている。
【0022】
図1に示すように、貯蔵庫本体11の内部は後付けされる断熱性の仕切壁16によって左右に仕切られており、左の相対的に狭い側が冷凍室17(冷却室の一例)、右の広い側が冷蔵室18(冷却室の一例)となっている。なお、図示はしないが、冷凍室17の前面の開口及び冷蔵室18の前面の開口には回動式の断熱扉がそれぞれ開閉可能に装着されている。
【0023】
貯蔵庫本体11の正面から見た左側には機械室19が設けられている。機械室19には冷却ユニット13の一部(後述する圧縮機30や凝縮器31など)が出し入れ可能に収納されている。機械室19の上部には冷凍室17側の蒸発器室20が形成されている。蒸発器室20は冷凍室17から張り出した空間であり、ダクト22を張ることで冷凍室17と仕切られている。蒸発器室20には冷凍室用蒸発器42、冷凍室用庫内ファン43、冷凍室用温度センサ44などが収容されている。また、仕切壁16の冷蔵室18側にはダクト24を張ることで冷蔵室18側の蒸発器室23が形成されている。蒸発器室23には冷蔵室用蒸発器37、冷蔵室用庫内ファン38、冷蔵室用温度センサ39などが収容されている。
【0024】
次に、
図2を参照して、冷却ユニット13、制御部14及び操作部15について説明する。ここで、
図2において複数の矢印25は冷却ユニット13内を冷媒が流れる方向を示している。
冷却ユニット13は冷蔵室18及び冷凍室17を冷却するものであり、インバータモータを有する圧縮機30、凝縮器31、凝縮器31を冷却する凝縮器ファン32、ドライヤ33、ストレーナ34、冷蔵室用電磁弁35(切替部の一例)、冷蔵室用キャピラリチューブ36、冷蔵室用蒸発器37(蒸発器の一例)、冷蔵室用庫内ファン38、冷蔵室用温度センサ39、冷凍室用電磁弁40(切替部の一例)、冷凍室用キャピラリチューブ41、冷凍室用蒸発器42(蒸発器の一例)、冷凍室用庫内ファン43、冷凍室用温度センサ44、チェックバルブ45(所謂逆流防止弁)などを備えている。
【0025】
圧縮機30、凝縮器31、ドライヤ33及びストレーナ34は配管によってこの順で接続されている。ストレーナ34の出口側に接続されている配管46は途中で2つに分岐しており、分岐した一方が冷蔵室用電磁弁35に接続されているとともに、分岐した他方が冷凍室用電磁弁40に接続されている。
冷蔵室用電磁弁35には冷蔵室用キャピラリチューブ36と冷蔵室用蒸発器37とが配管によってこの順で接続されており、冷蔵室用蒸発器37の出口側に接続されている配管47が圧縮機30の入口側に接続されている。また、冷凍室用電磁弁40には冷凍室用キャピラリチューブ41、冷凍室用蒸発器42及びチェックバルブ45が配管によってこの順で接続されており、チェックバルブ45の出口側に接続されている配管48が配管47と合流して圧縮機30の入口側に接続されている。
【0026】
なお、ここでは圧縮機30としてインバータモータを有する圧縮機30を例に説明するが、圧縮機30はインバータモータを有するものに限定されるものではない。また、ここでは冷媒を絞る絞り装置として冷蔵室用キャピラリチューブ36及び冷凍室用キャピラリチューブ41を例に説明するが、絞り装置はキャピラリチューブに限定されるものではない。
【0027】
制御部14はCPU、ROM、RAMなどを備えており、冷却貯蔵庫1の各部を制御する。なお、制御部14はCPUに替えてASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などを備えていてもよい。
【0028】
操作部15はオペレータが冷蔵室18の目標温度や冷凍室17の目標温度などを設定するためのものであり、各種の操作ボタン、設定されている目標温度や現在の室内温度などを表示する表示装置などを備えている。
【0029】
(2)冷蔵室及び冷凍室の冷却温度範囲
次に、
図3を参照して、冷蔵室18及び冷凍室17の冷却温度範囲について説明する。なお、
図3では冷蔵室18の冷却温度範囲のみを示している。冷却温度範囲は冷蔵室18や冷凍室17の許容される温度範囲であり、本実施形態では設定された目標温度(以下、設定温度という)を基準にして設定される。
【0030】
具体的には、本実施形態では冷蔵室18の冷却温度範囲の上限温度は「冷蔵室18の設定温度+2.0K」に設定され、下限温度は「冷蔵室18の設定温度−2.0K」に設定される。同様に、冷凍室17の冷却温度範囲の上限温度は「冷凍室17の設定温度+2.0K」に設定され、下限温度は「冷凍室17の設定温度−2.0K」に設定される。なお、冷却温度範囲をどのように設定するかは適宜に選択可能である。
【0031】
(3)制御部による冷却ユニットの運転
図3を参照して、制御部14による冷却ユニット13の運転について説明する。制御部14による冷却ユニット13の運転には、電源を投入した直後のように室内温度が相当に高い状態から室内温度を下げるプルダウン運転と、室内温度が冷却温度範囲内に入るように制御するコントロール運転とがある。以下、プルダウン運転及びコントロール運転について、冷蔵室18を例に説明する。
【0032】
プルダウン運転では、制御部14は室内温度が目標温度カーブに沿って低下するように圧縮機30の回転数を調整し、冷蔵室18の室内温度が冷蔵室18の冷却温度範囲の上限温度に達するとコントロール運転に移行する。ここで回転数とは単位時間当たりの回転数のことをいう。なお、単位時間当たりの回転数は回転速度と言い換えることもできる。
【0033】
コントロール運転では、制御部14は圧縮機30の回転数を落として運転する。そして、制御部14は、冷蔵室18の室内温度が冷蔵室18の冷却温度範囲の下限温度より低くなるとそれ以上室内温度が低下しないようにするために冷蔵室用電磁弁35を閉じる(すなわち冷蔵室用蒸発器37への冷媒の供給を停止する)。冷蔵室用電磁弁35を閉じると室内温度が徐々に上昇する。制御部14は冷蔵室18の室内温度が冷却温度範囲の上限温度より高くなると室内温度を下げるために冷蔵室用電磁弁35を開く(すなわち冷蔵室用蒸発器37への冷媒の供給を再開する)。冷蔵室用電磁弁35を開くと室内温度が再び下降する。これを繰り返すことによって冷蔵室18の室内温度がほぼ冷却温度範囲内に維持される。冷凍室17についても同様である。
【0034】
なお、制御部14は、冷蔵室18の室内温度が冷蔵室18の冷却温度範囲の下限温度に達すると冷蔵室用電磁弁35を閉じ、上限温度に達すると冷蔵室用電磁弁35を開いてもよい。すなわち、「下限温度より低くなると」は「下限温度以下になると」と言い換えることができ、同様に「上限温度より高くなると」は「上限温度以上になると」と言い換えることができる。
【0035】
ここで、
図3には示されていないが、制御部14は、冷蔵室18の室内温度が下限温度に達してから上限温度まで上昇する期間(言い換えると冷蔵室用電磁弁35が閉じている期間)と、冷凍室17の室内温度が下限温度に達してから上限温度まで上昇する期間(言い換えると冷凍室用電磁弁40が閉じている期間)とが重なった場合には圧縮機30を停止させるものとする。そして、制御部14はいずれか一方の冷却室の室内温度が上限温度に達すると当該一方の冷却室の電磁弁を開いて圧縮機30の運転を再開する。
【0036】
(4)冷蔵室の優先冷却制御
次に、
図4を参照して、冷蔵室18の優先冷却制御について説明する。冷蔵室18の優先冷却制御は、コントロール運転時に冷蔵室18の断熱扉が開けられたり冷蔵室18に大量の食材が収容されたりすることによって冷蔵室18の室内温度が一時的に上昇した場合に、冷蔵室18の室内温度を速やかに下げるために冷蔵室18を優先して冷却する制御である。
【0037】
ここで、本実施形態では冷蔵室18の冷却温度範囲の上限温度より+1.0K高い温度から冷蔵室18の冷却温度範囲の下限温度までの温度領域をバランス領域といい、冷蔵室18の冷却温度範囲の上限温度より+1.0K高い温度のことをバランス領域上限温度というものとする。また、本実施形態ではバランス領域上限温度より上の温度領域をプルダウン領域というものとする。なお、バランス領域上限温度は冷蔵室18の冷却温度範囲の上限温度より+1.0K高い温度に限定されるものではなく、適宜に決定することができる。
【0038】
図4に示す例では時点T1において冷蔵室18の室内温度が冷蔵室18の冷却温度範囲の下限温度に達しており、時点T2において冷蔵室18の室内温度が上限温度に達している。この場合、制御部14は時点T1で冷蔵室用電磁弁35を閉じ、時点T2で冷蔵室用電磁弁35を開ける。
【0039】
ここで、
図4に示す例では、時点T1から時点T2までの間に冷蔵室18の断熱扉が開けられた(あるいは大量の食材が収容された)ものとする。このため、
図4では時点T2で冷蔵室用電磁弁35を開いても冷蔵室18の室内温度は上昇し続けており、時点T3で冷蔵室18の室内温度がバランス領域上限温度に達している。
【0040】
そして、
図4に示す例では、冷蔵室18の室内温度がバランス領域上限温度以上である状態(言い換えるとプルダウン領域にある状態)が、時点T3から所定時間(ここでは3分)が経過した時点T4まで継続している。制御部14は、冷蔵室18の室内温度がプルダウン領域にある状態が3分以上継続した場合は、冷蔵室18を優先して冷却するために優先冷却制御を開始する。優先冷却制御では制御部14は以下の2つの処理を実行する。
【0041】
(a1)冷凍室17の冷却温度範囲の下限温度を設定温度まで上げることによって冷凍室17の冷却温度範囲を狭くする。
(a2)圧縮機の回転数を最高回転数にする。
【0042】
図4に示す例では、時点T4において冷凍室17の室内温度は設定温度と元の下限温度(=設定温度−2.0K)との間にあり、冷凍室用電磁弁40は開かれている。通常時であれば下限温度に達する前の冷却途中であるので冷凍室用電磁弁40はそのまま開状態が維持されて冷凍室用蒸発器42への冷媒の供給が継続されるが、優先冷却制御によって冷凍室17の下限温度を設定温度まで上げると時点T4において冷凍室17の室内温度は冷凍室17の冷却温度範囲の下限温度(=設定温度)より低くなるので、制御部14は時点T4において冷凍室用電磁弁40を閉じる(すなわち冷凍室用電磁弁40への冷媒の供給を停止する)。冷凍室用電磁弁40を閉じると圧縮機30によって圧縮された冷媒が全て冷蔵室用蒸発器37に送られるので、冷蔵室18が優先的に冷却される。ただし、冷凍室17の室内温度は上昇する。
【0043】
図4に示す例では、時点T5で冷凍室17の室内温度が冷凍室17の冷却温度範囲の上限温度に達している。このため、制御部14は時点T5において冷凍室用電磁弁40を開いて冷凍室用蒸発器42への冷媒の供給を再開する。ただし、冷凍室17の下限温度は優先冷却制御を実行する前に比べて高くなっていることから、冷凍室17の室内温度は比較的短い時間で冷凍室17の下限温度(=設定温度)に達する。
図4では時点T6で冷凍室17の室内温度が下限温度(=設定温度)に達しているので、制御部14は時点T6で冷凍室用電磁弁40を閉じる。
【0044】
そして、
図4では時点T7において冷蔵室18の室内温度が冷蔵室18の下限温度まで下がっている。制御部14は冷蔵室18の室内温度が下限温度に達すると優先冷却制御を終了する。優先冷却制御の終了では、制御部14は冷凍室17の冷却温度範囲の下限温度を元の下限温度(=設定温度−2.0K)に戻す。
【0045】
図4に示す例では、優先冷却制御を終了した時点T7において冷蔵室18の室内温度が冷蔵室18の下限温度まで下がっているとともに、冷凍室用電磁弁40が閉じているので、冷凍室用蒸発器42及び冷蔵室用蒸発器37のどちらにも冷媒を供給しなくてよい状態となる。このため、制御部14は時点T7で圧縮機30を停止させる。圧縮機30を停止させた場合は、制御部14は冷却ユニット13内の圧力を均一にするために冷蔵室用電磁弁35及び冷凍室用電磁弁40を開く(既に開いている場合は開状態を維持する)。
【0046】
なお、
図4に示す例では時点T7において冷凍室用電磁弁40が閉じているが、時点T7において冷凍室用電磁弁40が開いている場合もある。その場合は圧縮機30は停止されず、冷凍室17の冷却が継続される。なお、その場合は冷蔵室用電磁弁35が閉じられる。
【0047】
図4に示す例では、時点T7において圧縮機30を停止させた後、時点T8で冷凍室17の室内温度が冷凍室17の上限温度に達している。このため、制御部14は冷凍室17を冷却するために時点T8で圧縮機30の運転を再開する。ここで、時点T8では冷蔵室用電磁弁35も冷凍室用電磁弁40も開けられているので、そのままでは冷蔵室用蒸発器37にも冷媒が送られてしまう。時点T8では冷蔵室18の室内温度はまだ冷蔵室18の上限温度に達していないので、制御部14は冷蔵室用蒸発器37に冷媒が送られないようにするために時点T8において冷蔵室用電磁弁35を閉じる。
【0048】
ここで、
図4において点線50は冷凍室17の冷却温度範囲を狭くしなかった場合(すなわち冷凍室17の冷却温度範囲は狭くせずに圧縮機30の回転数を最高回転数にしただけの場合)の冷蔵室18の室内温度の変化を比較例として示している。冷却温度範囲を狭くしなかった場合は時点T4において冷凍室用電磁弁40は閉じられないので冷凍室用蒸発器42にも継続して冷媒が送られる。このため、点線50で示すように冷蔵室18の室内温度の低下は緩やかとなり、時点T7においても下限温度より高くなっている。そして、時点T9において漸く下限温度に達している。
【0049】
これに対し、優先冷却制御では圧縮機30の回転数を最高回転数にすることに加えて冷凍室17の冷却温度範囲も狭くするので、冷蔵室18の室内温度は時点T9より大幅に早い時点T7で冷却温度範囲の下限温度に達している。すなわち冷蔵室18の室内温度が速やかに低下してい
る。
【0050】
(5)優先冷却制御の後に圧縮機を停止させた場合に、その後に最初に圧縮機の運転を再開するときの圧縮機の回転数の制御
制御部14は、圧縮機30を停止させた後に圧縮機30の運転を再開するときは、最初の15秒間は所定の周波数(例えば27Hz)で回転させ、その後の一定時間は、基本的には圧縮機30を停止させる前の回転数を引き継いで圧縮機30を運転する。しかしながら、優先冷却制御が終了した後に圧縮機30を停止させた場合は、圧縮機30を停止させる前の回転数は最高回転数であるので、最高回転数を引き継ぐことになってしまう。最高回転数を引き継いでしまうと次に説明する液圧縮によって圧縮機30が故障してしまう虞がある。
【0051】
図6は、圧縮機30を最初の15秒間は所定の周波数で回転させた後、直ちに最高回転数で運転した場合の、圧縮機30の入口側に接続されている配管49の温度変化を示している。優先冷却制御では圧縮機30を最高回転数で運転するので冷蔵室用蒸発器37や冷凍室用蒸発器42の温度が低下しており、最高回転数を引き継ぐと冷蔵室用蒸発器37や冷凍室用蒸発器42に残っている冷媒が液の状態で圧縮機30に戻ってしまう可能性がある。具体的には、
図6に示す例では配管49の温度が−20℃であり、冷蔵室用蒸発器37や冷凍室用蒸発器42に残っている冷媒が液の状態で圧縮機30に戻ってしまう。冷媒が液の状態で戻ると液圧縮となって圧縮機30が故障する虞がある。
【0052】
そこで、制御部14は、優先冷却制御の後に圧縮機30を停止させた場合に、その後に最初に圧縮機30の運転を再開するとき、最初の15秒間は所定の周波数で回転させ、その後の一定時間は、最高回転数ではなく、優先冷却制御を除いて前回圧縮機30を停止させたときの直前の回転数で圧縮機30を運転する。ここで優先冷却制御を除いて前回圧縮機30を停止させたときとは、優先冷却制御を除いて、前回、冷蔵室18の室内温度が下限温度に達してから上限温度まで上昇する期間(すなわち冷蔵室用電磁弁35が閉じている期間)と、冷凍室17の室内温度が下限温度に達してから上限温度まで上昇する期間(すなわち冷凍室用電磁弁40が閉じている期間)とが重なって圧縮機30を停止させたときのことをいう。
【0053】
図5は、優先冷却制御を除いて前回圧縮機30を停止させたときの直前の回転数で圧縮機30を運転した場合の、圧縮機30の入口側に接続されている配管49の温度変化を示している。
図5に示すように、この場合は配管49の温度がプラスとなり、冷媒は液の状態で戻らない。このため、液圧縮による圧縮機30の故障を抑制することができる。
【0054】
(6)実施形態の効果
以上説明した実施形態に係る冷却貯蔵庫1によると、冷凍室17(少なくとも1つの冷却室の一例)の冷却温度範囲を狭くすることによって冷蔵室18(他の冷却室の一例)を優先的に冷却するので、冷蔵室18を優先的に冷却している間も冷凍室17の室内温度は冷却温度範囲内に維持される。すなわち、冷却貯蔵庫1によると、いずれかの冷却室(ここでは冷蔵室18)を、他の冷却室(ここでは冷凍室17)の室内温度を冷却温度範囲内に維持しつつ優先して冷却することができる。
【0055】
また、冷却貯蔵庫1によると、通常の断熱扉の開閉頻度では優先冷却制御は働かないので、JIS(日本工業規格)の消費電力量試験を実施した場合、消費電力量は従来の制御と変わらないという利点もある。ここでいう従来の制御とは、コントロール運転中に冷蔵室18の室内温度がプルダウン領域まで上昇した場合に、本実施形態のように冷却温度範囲を狭くしたり圧縮機の回転数を最高回転数にしたりするのではなく、プルダウン運転によって室内温度が目標温度カーブに沿って下降するように圧縮機の回転数を調整する制御のことをいう。
【0056】
また、冷却貯蔵庫1によると、冷蔵室18の室内温度がプルダウン領域にある状態が3分以上継続した場合に、冷蔵室18を優先的に冷却することができる。
【0057】
また、冷却貯蔵庫1によると、優先冷却制御において、冷凍室17の冷却温度範囲の下限温度を高くすることによって冷却温度範囲を狭くする。冷却温度範囲を狭くする方法としては上限温度を低くする方向も考えられるが、上限温度を低くすると下限温度を高くする場合に比べて冷凍室17の室内温度を低く維持しなければならないので冷蔵室18の室内温度が速やかに低下しない虞がある。冷却貯蔵庫1によると、下限温度を高くすることによって冷却温度範囲を狭くするので、上限温度を低くする場合に比べ、冷蔵室18の室内温度を速やかに下げることができる。
【0058】
また、冷却貯蔵庫1によると、優先冷却制御を実行する場合は圧縮機30の回転数を優先冷却制御の実行前より速くするので、優先冷却制御の実行前より速くしない場合に比べ、冷蔵室18の室内温度をより速やかに下げることができる。
【0059】
また、冷却貯蔵庫1によると、優先冷却制御を実行する場合は圧縮機30を最高回転数で運転するので、冷蔵室18の室内温度をより速やかに下げることができる。
【0060】
また、冷却貯蔵庫1によると、優先冷却制御の後に圧縮機30を停止させた場合は、その後に最初に圧縮機30の運転を再開するとき、最初の15秒間は所定の周波数で回転させ、その後の一定時間は、最高回転数ではなく、優先冷却制御を除いて前回圧縮機30を停止させたときの直前の回転数で圧縮機30を運転するので、液圧縮による圧縮機30の故障を抑制することができる。
【0061】
<関連技術>
次に、関連技術を
図7によって説明する。
関連技術に係る冷却貯蔵庫は冷蔵室のみを備える冷却貯蔵庫、又は、冷蔵室と冷凍室とを備えており、それぞれに圧縮機が独立して設けられている冷却貯蔵庫である。なお、関連技術に係る冷却貯蔵庫は冷凍室のみを備える冷却貯蔵庫であってもよい。
【0062】
従来は、コントロール運転中に断熱扉が開けられるなどによって冷蔵室の室内温度がプルダウン領域まで上昇した場合は、室内温度が目標温度カーブに沿って下降するように圧縮機の回転数を調整していた。このため圧縮機の回転数が最高回転数にならない場合があり、使用環境によっては冷却スピードが遅くなってしまう虞があった。
【0063】
そこで、
図7に示すように、関連技術に係る制御部は、冷蔵室の室内温度がプルダウン領域にある状態が所定時間(ここでは3分)以上経過した場合は、圧縮機の回転数を最高回転数にする急速冷却制御を実行する。そして、制御部は、冷蔵室の室内温度が下限温度に達すると急速冷却制御を終了して圧縮機を停止させる。
【0064】
また、
図7に示すように、制御部は急速冷却制御を終了して圧縮機を停止させた場合は、その後に圧縮機の回転を再開するとき、最初の15秒間は所定の周波数で回転させ、その後、最高回転数で運転するのではなく、急速冷却制御を除いて前回圧縮機を停止させたときの直前の回転数で圧縮機を回転させる。このため、液圧縮による圧縮機の故障を抑制することができる。
【0065】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0066】
(1)上記実施形態では優先冷却制御において冷凍室17の冷却温度範囲を狭くするとともに圧縮機30の回転数を最高回転数にしているが、冷凍室17の冷却温度範囲を狭くするだけであってもよい。
【0067】
(2)上記実施形態ではいずれかの冷却室の室内温度がその冷却室に設定されている冷却温度範囲の上限温度より所定温度以上高い状態(すなわちプルダウン領域にある状態)が所定時間以上継続した場合に優先冷却制御を実行する場合を例に説明した。しかしながら、優先冷却制御を実行する契機はこれに限定されるものではなく、適宜に選択可能である。例えば、室内温度がバランス領域上限温度ではなく冷却温度範囲の上限温度より高い状態が所定時間以上継続すると優先冷却制御を実行してもよいし、バランス領域上限温度に達すると直ちに優先冷却制御を実行してもよい。
【0068】
(3)上記実施形態では優先冷却制御において冷却温度範囲の下限温度を設定温度まで上げる場合を例に説明したが、冷却温度範囲の下限温度を上げる場合の温度は設定温度に限られるものではなく、適宜に選択可能である。例えば冷却温度範囲の下限温度を設定温度より高い温度にしてもよいし、設定温度より低い温度にしてもよい。
【0069】
(4)上記実施形態では冷蔵室18を優先的に冷却する場合を例に説明したが、冷凍室17を優先的に冷却してもよい。
【0070】
(5)上記実施形態では優先冷却制御を実行する場合は圧縮機30を最高回転数で回転させる場合を例に説明したが、圧縮機30の回転数は優先冷却制御の実行前より速ければよく、必ずしも最高回転数でなくてもよい。
【0071】
(6)上記実施形態では冷却室が冷蔵室18と冷凍室17との2つである場合を例に説明したが、冷却室は3つ以上あってもよい。その場合、2以上の冷却室の冷却温度範囲を狭くすることによって他の冷却室を優先的に冷却してもよい。
【0072】
(7)上記実施形態では切替部として冷蔵室用電磁弁35と冷凍室用電磁弁40とを例に説明したが、切替部は圧縮機30によって圧縮された冷媒の供給/停止を蒸発器毎に切り替えることができるものであればこれらに限られるものではない。