特許第6830009号(P6830009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6830009-冷蔵庫 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830009
(24)【登録日】2021年1月27日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/08 20060101AFI20210208BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20210208BHJP
   B67D 1/08 20060101ALN20210208BHJP
【FI】
   F25D17/08 302
   F25D11/00 101A
   F25D11/00 102G
   !B67D1/08 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-33875(P2017-33875)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138859(P2018-138859A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】足立 瑛
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 由秋
(72)【発明者】
【氏名】今岡 広樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 徹
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−019706(JP,A)
【文献】 特開2004−271017(JP,A)
【文献】 特開2016−118313(JP,A)
【文献】 特開2009−085538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/08
F25D 11/00
B67D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内にてビア樽のような飲料容器を収容可能とした冷蔵室と、
前記ハウジング内にて下部が前記冷蔵室側に突出する突出部によって上部よりも広く形成された機械室と、
前記冷蔵室の前記突出部の上側にて上下方向の中間部より下側の位置に吸気口を有するとともに上部に冷却風の吹出口を有した上下方向に延びる冷却風ダクトと、
前記冷却風ダクト内に配設されて通過する空気を冷却する冷却器とを備えた冷蔵庫であって、
前記冷蔵室には前記冷却風ダクトの冷却風の一部を前記冷蔵室の下部に送る下部用冷却風通路を設け、
前記下部用冷却風通路の冷却風の下部用吹出口を前記冷却風ダクトの吸気口よりも低い位置にて下方に向けて配置したことを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵室にビア樽のような飲料容器を収容して冷却する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、冷蔵室にビア樽(飲料容器)を収容可能とした冷蔵庫が開示されている。この冷蔵庫の上部には注出機構として注出コックが設けられており、注出コックには冷蔵室内のビア樽から導出された飲料供給管が接続されている。冷蔵室で冷却されたビア樽内のビールはガスボンベから供給された炭酸ガスの圧力により飲料供給管を通って注出コックから注出される。
【0003】
この冷蔵庫の冷蔵室には、底壁に吸気口を有するとともに後上部に冷却風の吹出口とを有し、冷蔵室の底部と後側部に連続して形成された冷却風ダクトが設けられている。冷蔵室の底部の空気は吸気口から冷却風ダクトに吸い込まれ、吸い込まれた空気は冷却風ダクト内に配設された冷却器によって冷却され、冷却された空気はファンによって吹出口から冷蔵室内に冷却風として吹き出される。冷蔵室内のビア樽は吹出口から吹き出される冷却風によって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−271017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の冷蔵庫においては、冷蔵室内のビア樽は冷蔵室の後上部に形成された吹出口からの冷却風によって冷却されているが、ビア樽の冷蔵時間が短いときに、ビア樽の上部は吹き出される冷却風によって十分に冷却されるものの、ビア樽の下部は上部と比して十分に冷却されないことがある。特に、冷蔵室内に高さの低いビア樽を上下に2段以上積み上げたときに、上段のビア樽が十分に冷却されるのに対し、下段のビア樽が十分に冷却されない。このとき、上段のビア樽が空になった後で、下段のビア樽からビールを注出すると、下段のビア樽から十分に冷却されたビールを注出させることができないことがあった。本発明は、冷蔵室に収容した飲料容器の上部だけが局部的に冷却されるのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、ハウジング内にてビア樽のような飲料容器を収容可能とした冷蔵室と、ハウジング内にて下部が冷蔵室側に突出する突出部によって上部よりも広く形成された機械室と、冷蔵室の突出部の上側にて上下方向の中間部より下側の位置に吸気口を有するとともに上部に冷却風の吹出口を有した上下方向に延びる冷却風ダクトと、冷却風ダクト内に配設されて通過する空気を冷却する冷却器とを備えた冷蔵庫であって、冷蔵室には冷却風ダクトの冷却風の一部を冷蔵室の下部に送る下部用冷却風通路を設け、下部用冷却風通路の冷却風の下部用吹出口を冷却風ダクトの吸気口よりも低い位置にて下方に向けて配置したことを特徴とする冷蔵庫を提供するものである。
【0007】
上記のように構成した冷蔵庫においては、冷蔵室の上部に冷却風の吹出口を有した冷却風ダクトだけでなく、冷蔵室には冷却風ダクトの冷却風の一部を冷蔵室の下部に送る下部用冷却風通路を設けたので、冷蔵室の上部及び下部の両方を冷却することができるようになった。これにより、冷蔵室内の飲料容器の上部だけが局部的に冷却されるのを防ぐこと、飲料容器を上下に積み上げて収容したときに、上側の飲料容器だけが冷却されて下側の飲料容器が冷却されないのを防ぐことが可能となった。さらに、下部用冷却風通路の冷却風の下部用吹出口を冷却風ダクトの吸気口よりも低い位置に配置したので、下部用冷却風通路の下部用吹出口から吹き出される冷却風が冷蔵室の下部を通ってから吸気口に吸い込まれるため、飲料容器の下部、または、上下に積み重ねた下側の飲料容器を確実に冷却できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の冷蔵庫の一実施形態の側面図である。
図2図1の前後方向に沿った縦方向断面図である。
図3】冷蔵室内の正面図である。
図4図2の斜め下方から見た断面斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の冷蔵庫の一実施形態を添付図面を参照して説明する。図1及び図2に示したように、本実施形態の冷蔵庫10は、注出コック15からビール等の飲料を注出するのに用いるビア樽のような飲料容器を収容して冷却するものであり、ハウジング11の後側部を除いた部分に冷蔵室12と、ハウジング11の後側部に機械室13を備えている。
【0011】
図2に示したように、冷蔵室12は内部に収容したビア樽B(飲料容器)を冷却するものであり、この実施形態では高さの低いビア樽Bを上下に2段に積み上げて収容可能な大きさとなっている。冷蔵室12の外周面には発泡材よりなる断熱材(図示省略)が設けられている。図2及び図4に示したように、冷蔵室12の後壁下部には庫内側となる前側に突出する突出部12aと、突出部12aの上側に傾斜部12bが形成されており、機械室13の下部はこの突出部12aによって上部よりも広くなっている。
【0012】
冷蔵室12の前部には開口部が設けられており、冷蔵室12の前部には開口部を開閉する扉14が設けられている。冷蔵室12は扉14を開閉することによってビア樽Bを出し入れ可能としている。扉14の前面部には注出コック15が設けられており、注出コック15は飲料供給管16によって冷蔵室12内の上側のビア樽Bに接続されている。また、冷蔵室12内の上側のビア樽Bには冷蔵庫10の外部に設けた炭酸ガスボンベ(図示省略)から導出したガス供給管(図示省略)が接続されている。冷蔵室12内の上側のビア樽B内のビールは炭酸ガスボンベの炭酸ガスの圧力によって注出コック15に押し出され、注出コック15から注出されるようになっている。注出コック15に接続された上側のビア樽Bは注出コック15からビールを注出するにも用いられ、下側のビア樽Bは上側のビア樽Bが空になったときに直ぐに冷えたビールを供給するために予備用として用いられる。
【0013】
図1及び図2に示したように、機械室13には、冷却器21を除いた冷凍装置20が収容されており、冷凍装置20の冷却器21は冷蔵室12の後側部に配設した冷却風ダクト30内に配置されている。冷凍装置20の圧縮機22は冷蔵室12の突出部12aにより広くなった機械室13の下部に配設されている。圧縮機22が奥行き方向の長さが長い機械室13の下部に配置されているので、冷蔵庫10の奥行き方向の長さを短くすることが可能となっている。冷凍装置20の凝縮器23は機械室13の上部の奥行き方向の長さが短い部分に斜めに配置されている。冷凍装置20は、圧縮機22により圧縮した冷媒ガスを凝縮器23により冷却して液化させ、この液化冷媒をキャピラリーチューブを通して冷却器21に導き、冷却器21で気化させることによって冷却風ダクト30を通過する空気を冷却する。
【0014】
図2及び図4に示したように、冷蔵室12の後側部(一側部)には上下に延びる冷却風ダクト30が設けられており、図3に示したように、冷蔵室12の後側部と左側部の角部には下部用冷却風通路38が配設されている。図2及び図4に示したように、冷蔵室12の後側部(一側部)には後壁の前側に第1隔壁板31と、第1隔壁板31の前側に第2隔壁板32とが設けられている。第1隔壁板31は冷蔵室12の突出部12aよりも少し上側で冷蔵室12の後壁の前側に配設されており、冷却風ダクト30は冷蔵室12の突出部12aより上側の後壁と第1隔壁板31との間に形成されている。第2隔壁板32は第1隔壁板31の前側で冷蔵室12の突出部12aの上縁を覆うように配設され、下部用冷却風通路38は第1隔壁板31と第2隔壁板32と冷蔵室12の左側壁との間に形成されている。また、冷蔵室12の後側部は第2隔壁板32と突出部12aとによって実質的に面一となっている。
【0015】
冷蔵室12の突出部12aの上縁と第1隔壁板31の下縁との間には第1吸気口33が形成され、第2隔壁板32の下部には第2吸気口34が形成されている。第1及び第2吸気口33,34は冷蔵室12の後側部の上下方向の中間部より少し下側に配置されている。冷蔵室12内の空気は第1及び第2吸気口33,34を通って冷却風ダクト30内に導入され、導入された空気は傾斜部12bによって上側に案内されて冷却風ダクト30内を上昇しやすくなっている。第1及び第2隔壁板31,32の上部には第1及び第2吹出口35,36が形成されており、冷却風ダクト30内の空気は第1及び第2吹出口35,36を通って冷蔵室12内の上部に吹き出される。
【0016】
図2及び図4に示したように、冷却風ダクト30内には上述した冷凍装置20の冷却器21が配設されており、冷却風ダクト30内の空気は冷却器21によって冷却される。冷却風ダクト30の上部には第1吹出口35の後側にファン37が設けられている。冷蔵室12内の空気はファン37の作動によって第1及び第2吸気口33,34から冷却風ダクト30内に吸い込まれ、吸い込まれた空気は冷却風ダクト30内を上昇するときに冷却器21によって冷却され(冷却風ダクト30内の空気の流れを図3及び図4のW1にて示した)、図3及び図4に示したように、冷却された空気は第1及び第2吹出口35,36から冷蔵室12に冷却風W2となって吹き出される。
【0017】
図3に示したように、下部用冷却風通路38は冷却風ダクト30から吹き出される冷却風の一部を冷蔵室12の下部に導くためものである。第1隔壁板31と第2隔壁板32との間には下部用冷却風通路38を形成するための仕切部39が設けられている。仕切部39は第1及び第2吹出口35,36の右側、下側及び吹出口35,36の下側にて第1及び第2隔壁板31,32の左側部に配置されており、第1及び第2吹出口35,36の周囲を含むように第1及び第2隔壁板31,32の間の左側部を他の部分と仕切っている。第1及び第2隔壁板31,32と仕切部39と冷蔵室12の左側壁により仕切られる空間によって下部用冷却風通路38が形成されている。第2隔壁板32の左下部には下部用冷却風通路38の下部用吹出口40が形成されている。下部用吹出口40は第1及び第2吸気口33,34より下側に形成されているとともに、冷蔵室12の底部となる下側に向けて開口している。図3及び図4に示したように、冷却風ダクト30内を上昇して冷却器21により冷却された空気は第1及び第2吹出口35,36から冷蔵室12に冷却風W2となって吹き出されるが、第1吹出口35から吹き出された冷却風の一部W3は第1及び第2隔壁板31,32との間の下部用冷却風通路38を通り、下部用吹出口40から冷蔵室12の下部に吹き出される(下部用吹出口40から吹き出された冷却風をW4にて示した)。なお、上側のビア樽Bが過剰に冷却されるのを防ぐとともに、下側のビア樽Bを下部用吹出口40からの十分な風量の冷却風W4によって冷却するために、第1及び第2吹出口35,36の開口面積が広くならないように適宜調整されている。
【0018】
上記のように構成した冷蔵庫10においては、冷蔵室12内に収容したビア樽Bは冷凍装置20とファン37の作動による冷却風によって冷却されている。詳述すると、冷蔵室12内の空気はファン37の作動によって第1及び第2吸気口33,34から冷却風ダクト30内に吸い込まれ、吸い込まれた空気は冷却器21を通過するときに冷却され(冷却風ダクト30を上昇する空気をW1にて示した)、冷却された空気の大部分は第1及び第2吹出口35,36から冷蔵室12内の上部に冷却風W2となって吹き出される。吹き出された冷却風W2は冷蔵室12内の上段のビア樽Bに吹き付けられて、上段のビア樽Bは第1及び第2吹出口35,36から吹き出される冷却風によって冷却される。また、第1吹出口35から吹き出された冷却風の一部W3は下部用冷却風通路38を通って下部用吹出口40から冷蔵室12内の底部に吹き出され、下段のビア樽Bは下部用吹出口40から吹き出される冷却風W4によって冷却される。
【0019】
上記のように構成した冷蔵庫10においては、冷蔵室12の上部に冷却風の吹出口35,36を有した冷却風ダクト30だけでなく、冷蔵室12には冷却風ダクト30の冷却風の一部を冷蔵室12の下部に送る下部用冷却風通路38を設けたので、冷蔵室12の上部及び下部の両方を冷却することができるようになった。これにより、冷蔵室12内でビア樽Bを上下に積み上げて収容したときに、上側のビア樽Bだけが冷却されて下側のビア樽Bが冷却されないこと防ぐことが可能となった。なお、この実施形態では、冷蔵室12内にビア樽Bを上下2段に積み上げるように収容したが、冷蔵室12内に高さの高いビア樽を収容したときには、ビア樽の上部及び下部の両方を冷却風により冷却して、ビア樽の上部だけが局部的に冷却されるのを防ぐことができる。
【0020】
また、下部用冷却風通路38の冷却風の下部用吹出口40は冷却風ダクト30の第1及び第2吸気口33,34よりも低い位置に配置されている。下部用冷却風通路38の下部用吹出口40から吹き出される冷却風W4は冷蔵室12の下部を通ってから第1及び第2吸気口33,34に吸い込まれるため、下部用吹出口40から吹き出された冷却風W4が下側のビア樽Bの周囲を通過せずに第1及び第2吸気口33,34に吸い込まれるのを防ぐことができ、下側のビア樽Bを確実に冷却できるようになった。なお、この場合においても、冷蔵室12内に高さの高いビア樽を収容したときには、ビア樽の下部の確実に冷却でき、ビア樽の上部だけが局部的に冷却されるのを防ぐことができる。
【0021】
この実施形態の冷蔵庫10は、冷蔵室12の後壁下部には庫内側となる前側に突出する突出部12aを形成し、機械室13の下部をこの突出部12aによって奥行き方向に広くするようにしている。奥行き方向に広くなった機械室13の下部に冷凍装置20の圧縮機22を配置するとともに、冷蔵室12の突出部12aの上側の空間を冷却風ダクト30として用いるようにしたため、冷蔵庫10の奥行き方向の長さをできるだけ短くすることができた。また、冷蔵室12の下部に突出部12aを形成したために、冷蔵室12の下部に吸気口を形成することができず、冷蔵室12の下部を冷却しにくくなったものの、冷蔵室12内に下部用冷却風通路38を設けることで、冷蔵室12の下部に冷却風を送出することができ、冷蔵室12の下部が冷却されにくい課題を解決できるようになった。
【0022】
上述した実施形態では、冷却風ダクト30及び下部用冷却風通路38を冷蔵室12の後側部に配設したが、本発明はこれに限られるものでなく、冷却風ダクト30及び下部用冷却風通路38を冷蔵室12の右側部、左側部または前側部に配設してもよい。
【0023】
上述した実施形態においては、飲料容器の一例としてビア樽Bを用いて説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、飲料容器にジュースや酎ハイ等の他の飲料を貯えたものであってもよい。
【0024】
上述した実施形態においては、注出機構として扉14の前部に注出コック15を備えた冷蔵庫10について説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、ハウジング11の上部に注出コックを備えるようにしたものであってもよいし、注出機構として冷蔵庫10とは別に設けたドラフトタワーを用いたものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
10…冷蔵庫、12…冷蔵室、21…冷却器、30…冷却風ダクト、33,34…吸気口(第1吸気口33,第2吸気口34)、35,36…吹出口(第1吹出口35,第2吹出口36)、38…下部用冷却風通路、40…下部用吹出口、B…飲料容器(ビア樽)。
図1
図2
図3
図4