特許第6830023号(P6830023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830023
(24)【登録日】2021年1月27日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】床版取替方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20210208BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20210208BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20210208BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   E01D22/00 Z
   E01D21/00 B
   E01D19/12
   E01D24/00
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-78997(P2017-78997)
(22)【出願日】2017年4月12日
(65)【公開番号】特開2018-178523(P2018-178523A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】山内 丈樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康輔
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳大
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−063796(JP,A)
【文献】 特開2004−285795(JP,A)
【文献】 特開2015−151768(JP,A)
【文献】 特開平08−003938(JP,A)
【文献】 特開2014−084590(JP,A)
【文献】 米国特許第04301565(US,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0094330(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
E01D 19/12
E01D 21/00
E01D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間部を隔てて互いに隣接する第1橋梁と第2橋梁とにおける前記離間部に、前記第1橋梁の第1床面と前記第2橋梁の第2床面とに連続するように仮設床面を架設する離間部架設工程と、
前記離間部架設工程により前記仮設床面が架設された後に、前記第1橋梁の前記第1床面と前記第2橋梁の前記第2床面とのいずれかの床版を取替える床版取替工程と
を備え、
前記床版取替工程では、車両を走行させる車線として前記仮設床面の区域、前記仮設床面と前記第1床面との区域及び前記仮設床面と前記第2床面との区域のいずれかの区域を区画し、前記車線として区画されていない前記第1床面及び前記第2床面のいずれかの区域の床版を取替える、床版取替方法。
【請求項2】
前記床版取替工程では、
前記車線として前記第1床面、前記第2床面及び前記仮設床面のいずれかの区域が区画され、前記車線として区画されていない前記第1床面及び前記第2床面のいずれかの区域の前記床版が取替えられた後に、
前記車線として前記床版が取替えられた前記第1床面及び前記第2床面のいずれかの区域を区画し、前記車線として区画されていた前記第1床面及び前記第2床面のいずれかの区域の前記床版を取替える、請求項に記載の床版取替方法。
【請求項3】
前記床版取替工程では、
前記車線として前記第2床面及び前記仮設床面の区域を区画し、前記第1床面の前記仮設床面とは反対側の側端部から前記床版を取替え、
前記車線として前記第2床面及び前記床版が取替えられた前記第1床面の区域を区画しつつ、前記第1床面の前記床版の取替が終了するまで前記第1床面の前記床版の取替を継続し、
前記第1床面の前記床版の取替の終了後に、前記車線として前記第1床面及び前記仮設床面の区域を区画し、前記第2床面の前記仮設床面とは反対側の側端部から前記床版を取替え、
前記車線として前記第1床面及び前記床版が取替えられた前記第2床面の区域を区画しつつ、前記第2床面の前記床版の取替が終了するまで前記第2床面の前記床版の取替を継続し、
前記第2床面の前記床版の取替の終了後に、前記離間部から前記仮設床面を撤去する離間部撤去工程をさらに備えた、請求項に記載の床版取替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川部、山間部及び高速道路等の橋梁の床版の更新及び補修のために、施工中に車両を走行させる車線を仮設しつつ橋梁の床版を取替える技術が提案されている。例えば、特許文献1には、橋梁の床版の上方に車両が走行可能な仮橋を架設しつつ、仮橋の下方の床版を取替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014‐194110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、仮橋の架設においては、仮橋の組立のための資材の搬入、仮橋の組立及び仮橋の撤去等に多大な労力を要するため、より容易に車線を仮設しつつ橋梁の床版を取替えることが望まれている。
【0005】
そこで本発明は、より容易に車線を仮設しつつ橋梁の床版を取替えることが可能な床版取替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、離間部を隔てて互いに隣接する第1橋梁と第2橋梁とにおける第1橋梁の第1床面と第2橋梁の第2床面とのいずれかの床版を取替える床版取替工程と、離間部に、第1橋梁の第1床面と第2橋梁の第2床面とに連続するように仮設床面を架設する離間部架設工程とを備え、床版取替工程では、車両を走行させる車線として仮設床面の区域、仮設床面と第1床面との区域及び仮設床面と第2床面との区域のいずれかの区域を区画し、車線として区画されていない第1床面及び第2床面のいずれかの区域の床版を取替える床版取替方法である。
【0007】
この構成によれば、床版取替工程により、離間部を隔てて互いに隣接する第1橋梁と第2橋梁とにおける第1橋梁の第1床面と第2橋梁の第2床面とのいずれかの床版が取替えられ、離間部架設工程により、離間部に、第1橋梁の第1床面と第2橋梁の第2床面とに連続するように仮設床面が架設され、床版取替工程では、車両を走行させる車線として仮設床面の区域、仮設床面と第1床面との区域及び仮設床面と第2床面との区域のいずれかの区域を区画し、車線として区画されていない第1床面及び第2床面のいずれかの区域の床版が取替えられる。離間部への仮設床面の架設は比較的に容易であるため、より容易に車線を仮設しつつ橋梁の床版を取替えることが可能となる。
【0008】
この場合、床版取替工程では、離間部架設工程により仮設床面が架設された後に第1床面及び第2床面の床版を取替えることが好適である。
【0009】
この構成によれば、床版取替工程では、離間部架設工程により仮設床面が架設された後に第1床面及び第2床面の床版が取替えられるため、車両を走行させる車線として第1床面、第2床面及び仮設床面のいずれかの区域を区画する自由度が大きくなる。
【0010】
この場合、床版取替工程では、車線として第1床面、第2床面及び仮設床面のいずれかの区域が区画され、車線として区画されていない第1床面及び第2床面のいずれかの区域の床版が取替えられた後に、車線として床版が取替えられた第1床面及び第2床面のいずれかの区域を区画し、車線として区画されていた第1床面及び第2床面のいずれかの区域の床版を取替えることが好適である。
【0011】
この構成によれば、床版取替工程では、車線として第1床面、第2床面及び仮設床面のいずれかの区域が区画され、車線として区画されていない第1床面及び第2床面のいずれかの区域の床版が取替えられた後に、車線として床版が取替えられた第1床面及び第2床面のいずれかの区域が区画され、車線として区画されていた第1床面及び第2床面のいずれかの区域の床版が取替えられるため、第1床面、第2床面及び仮設床面の外側に車線を別途仮設する必要が無く、河川部、山間部及び都市部における作業中の幅員拡張の制限に対応することができる。
【0012】
この場合、床版取替工程では、車線として第2床面及び仮設床面の区域を区画し、第1床面の仮設床面とは反対側の側端部から床版を取替え、車線として第2床面及び床版が取替えられた第1床面の区域を区画しつつ、第1床面の床版の取替が終了するまで第1床面の床版の取替を継続し、第1床面の床版の取替の終了後に、車線として第1床面及び仮設床面の区域を区画し、第2床面の仮設床面とは反対側の側端部から床版を取替え、車線として第1床面及び床版が取替えられた第2床面の区域を区画しつつ、第2床面の床版の取替が終了するまで第2床面の床版の取替を継続し、第2床面の床版の取替の終了後に、離間部から仮設床面を撤去する離間部撤去工程をさらに備えることが好適である。
【0013】
この構成によれば、床版取替工程では、車線として第2床面及び仮設床面の区域が区画され、第1床面の仮設床面とは反対側の側端部から床版が順次取り換えられ、第1床面の床版が取替えられた区域から車線が順次仮設され、第1床面の床版の取替の終了後に、車線として第1床面及び仮設床面の区域が区画され、第2床面の仮設床面とは反対側の側端部から床版が順次取り換えられ、第2床面の床版が取替えられた区域から車線が順次仮設され、第2床面の床版の取替の終了後に、離間部撤去工程により離間部から仮設床面が撤去されるため、第1床面及び第2床面の一部の区域ごとに床版が取替えられる場合において、床版の取替の作業における車線の仮設、既設床版、新設床版、作業機械及び資材等の移動、並びに新設床版へのポストテンション方式によるプレストレスの付与等の効率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の床版取替方法によれば、より容易に車線を仮設しつつ橋梁の床版を取替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の床版取替方法が行われる前の橋梁を示す横断面図である。
図2図1の平面図である。
図3図1の橋梁に離間部架設工程の準備工程が行われた状態を示す横断面図である。
図4図3の橋梁に離間部架設工程が行われ、仮設床面の仮設桁と第2橋梁の支持桁とが仮設桁連結部材により接合された状態を示す横断面図である。
図5図4の平面図である。
図6図4の橋梁に床版取替工程の上り線一次施工の準備工程が行われた状態を示す横断面図である。
図7図6の平面図である。
図8図6の橋梁に床版取替工程の上り線一次施工が行われた状態を示す横断面図である。
図9図8の橋梁に床版取替工程の上り線二次施工の準備工程が行われた状態を示す横断面図である。
図10図9の平面図である。
図11図9の橋梁に床版取替工程の上り線二次施工が行われた状態を示す横断面図である。
図12図11の橋梁に床版取替工程の上り線三次施工の準備工程が行われた状態を示す横断面図である。
図13図12の橋梁の仮設床面の仮設桁と第2橋梁の支持桁とを連結していた仮設桁連結部材が取り外され、仮設床面の仮設桁と第1橋梁の支持桁とが仮設桁連結部材により連結された状態を示す横断面図である。
図14図13の橋梁に床版取替工程の上り線三次施工が行われた状態を示す横断面図である。
図15図14の橋梁に床版取替工程の下り線一次施工の準備工程が行われた状態を示す横断面図である。
図16図15の平面図である。
図17図15の橋梁に床版取替工程の下り線一次施工が行われた状態を示す横断面図である。
図18図17の橋梁に床版取替工程の下り線二次施工の準備工程が行われた状態を示す横断面図である。
図19図18の平面図である。
図20図18の橋梁に床版取替工程の下り線二次施工が行われた状態を示す横断面図である。
図21図20の橋梁に床版取替工程の下り線三次施工の準備工程が行われた状態を示す横断面図である。
図22図21の橋梁に床版取替工程の下り線三次施工が行われた状態を示す横断面図である。
図23図22の橋梁に離間部撤去工程が行われている状態を示す横断面図である。
図24図23の仮設分離帯を撤去し、壁高欄を設置し、車線を復旧した状態を示す横断面図である。
図25図6に示す橋梁に床版取替工程の上り線一次施工の準備工程が行われたときに第1橋梁の仮設床面とは反対側の側端部に仮設桟橋が架設された状態を示す横断面図である。
図26図25の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る床版取替方法について詳細に説明する。本実施形態の床版取替方法は、例えば、河川部、山間部及び都市部において、上り線の車線と下り線の車線とをそれぞれ有する二つの橋梁が離間部を隔てて互いに隣接している状況で適用される。図1及び図2に示すように、第1橋梁10と第2橋梁20とが離間部30を隔てて互いに隣接している。第1橋梁10は、離間部30とは反対側の側端部12と離間部30の側の側端部13との間に第1橋梁10の天端である第1床面11を有する。第2橋梁20は、離間部30とは反対側の側端部22と離間部30の側の側端部23との間に第2橋梁20の天端である第2床面21を有する。第1床面11は、車両を走行させる車線として上り走行車線41と上り追越車線42とを含む。第2床面21は、車両を走行させる車線として下り走行車線43と下り追越車線44とを含む。第1床面11は支持桁15により支持されている。第2床面21は支持桁25により支持されている。
【0017】
図3に示すように、本実施形態の床版取替方法の離間部架設工程の準備工程が行われる。離間部架設工程の準備工程では、第1床面11に仮設分離帯51が設置され、第1床面11の上り走行車線41と上り追越車線42とが、離間部30とは反対側の側端部12の方に移動させられる。また、離間部架設工程の準備工程では、第2床面21に仮設分離帯52が設置され、第2床面21の下り走行車線43と下り追越車線44とが、離間部30とは反対側の側端部22の方に移動させられる。第1床面11及び第2床面21の離間部30の側に作業帯45が区画される。
【0018】
図4及び図5に示すように、クレーン61により、互いに隣接する第1橋梁10と第2橋梁20との間の離間部30に、第1橋梁10の第1床面11と第2橋梁20の第2床面21とにその高さが連続するように仮設床面31を架設する離間部架設工程が行われる。離間部架設工程では、作業帯45にクレーン61が搬入される。離間部架設工程では、クレーン61により、仮設支持杭32が打設され、仮設支持杭32の上部に仮設床面31を支持する仮設桁33が設置される。また、離間部架設工程では、クレーン61により、仮設支持杭32と第2橋梁20の支持桁25との間が仮設桁連結部材34により連結される。また、離間部架設工程では、クレーン61により、仮設支持杭32及び仮設桁33の上に仮設床面31が設置される。仮設床面31は、例えば、鋼製覆工桁、コンクリート製覆工桁、鋼版、コンクリート版、鋼・コンクリート合成構造の覆工桁及び鋼・コンクリート合成構造の版等が用いられる。離間部架設工程では、仮設床面31の設置の終了後にクレーン61が搬出される。
【0019】
なお、本実施形態では、交通量の変化や地震によって、第1橋梁10と第2橋梁20との動きが異なるため、仮設床面31の仮設桁33と第2橋梁20の支持桁25との間のみが仮設桁連結部材34により連結され、第1橋梁10の支持桁15と第2橋梁20の支持桁25とは直接に連結されない。また、離間部架設工程では、仮設床面31は第1橋梁10の第1床面11と第2橋梁20の第2床面21とに連続して形成されればよく、例えば、車線として区画される区域が平坦であれば、車線として区画される区域同士の境界部に段差が有ってもよい。
【0020】
次に、車両を走行させる車線として仮設床面31の区域、仮設床面31と第1床面11との区域及び仮設床面31と第2床面21との区域のいずれかの区域が区画され、車線として区画されていない第1床面11及び第2床面21のいずれかの区域の床版が取替えられる床版取替工程が行われる。以下に説明するように、床版取替工程では、車線として第1床面11、第2床面21及び仮設床面31のいずれかの区域が区画され、車線として区画されていない第1床面11及び第2床面21のいずれかの区域の床版が取替えられた後に、車線として床版が取替えられた第1床面11及び第2床面21のいずれかの区域が区画され、車線として区画されていた第1床面11及び第2床面21のいずれかの区域の床版が取替えられる。
【0021】
また、以下に説明するように、床版取替工程では、車線として第2床面21及び仮設床面31の区域を区画し、第1床面11の仮設床面31とは反対側の側端部12から床版が取替えられる。また、床版取替工程では、車線として第2床面21及び床版が取替えられた第1床面11の区域が区画されつつ、第1床面11の床版の取替が終了するまで第1床面11の床版の取替が継続される。
【0022】
また、床版取替工程では、第1床面11の床版の取替の終了後に、車線として第1床面11及び仮設床面31の区域を区画し、第2床面21の仮設床面31とは反対側の側端部22から床版が取替えられる。車線として第1床面11及び床版が取替えられた第2床面21の区域が区画されつつ、第2床面21の床版の取替が終了するまで第2床面21の床版の取替が継続される。
【0023】
図6及び図7に示すように、床版取替工程の上り線一次施工の準備工程が行われる。床版取替工程の上り線一次施工の準備工程では、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31において、仮設分離帯51が移動され、仮設分離帯53が設置され、上り走行車線41と上り追越車線42とが第2床面21の仮設床面31とは反対側の側端部22の方に移動させられ、第1床面11の仮設床面31とは反対側の側端部12の区域に作業帯45が区画される。
【0024】
図8に示すように、床版取替工程の上り線一次施工が行われる。床版取替工程の上り線一次施工では、門型クレーン等の床版取替機71が、第1床面11の仮設床面31とは反対側の側端部12の区域の作業帯45に搬入される。床版取替工程の上り線一次施工では、図中に斜線で示すように、床版取替機71により、作業帯45の床版が取替えられる。床版取替工程の上り線一次施工では、作業帯45の床版が取替の終了後に床版取替機71が搬出される。なお、床版の取替の終了とは、必ずしも区画された区域の全ての床版が取替えられる場合に限定されず、区画された区域の一部の床版が取替えられる場合も含まれる。
【0025】
図9及び図10に示すように、床版取替工程の上り線二次施工の準備工程が行われる。床版取替工程の上り線二次施工の準備工程では、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31において、仮設分離帯51が移動され、上り走行車線41が床版の取替が終了した第1床面11の仮設床面31とは反対側の側端部12の方に移動させられ、上り追越車線42と移動させられた上り走行車線41との間に作業帯45が区画される。
【0026】
図11に示すように、床版取替工程の上り線二次施工が行われる。床版取替工程の上り線二次施工では、床版取替機71が、上り走行車線41と上り追越車線42との間の作業帯45に搬入される。床版取替工程の上り線二次施工では、図中に斜線で示すように、床版取替機71により、作業帯45の床版が取替えられる。床版取替工程の上り線二次施工では、作業帯45の床版の取替の終了後に床版取替機71が搬出される。
【0027】
図12に示すように、床版取替工程の上り線三次施工の準備工程が行われる。床版取替工程の上り線三次施工の準備工程では、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31において、仮設分離帯51が移動され、仮設分離帯53が撤去され、上り追越車線42が床版の取替が終了した上り走行車線41の隣に移動させられ、下り追越車線44と移動させられた上り追越車線42との間に作業帯45が区画される。
【0028】
図13に示すように、上り追越車線42と下り追越車線44との間の作業帯45にクレーン61が搬入される。クレーン61により、仮設床面31の仮設桁33と第2橋梁20の支持桁25とを連結していた仮設桁連結部材34が取り外され、仮設床面31の仮設桁33と第1橋梁10の支持桁15とが仮設桁連結部材34により連結される。なお、上述したように、交通量の変化や地震によって、第1橋梁10と第2橋梁20との動きが異なるため、仮設床面31の仮設桁33と第1橋梁10の支持桁15との間のみが仮設桁連結部材34により連結され、第1橋梁10の支持桁15と第2橋梁20の支持桁25とは直接に連結されない。なお、仮設桁33と支持桁25とを連結していた仮設桁連結部材34が取り外され、仮設桁33と支持桁15とが仮設桁連結部材34により連結される工程は省略されてもよい。
【0029】
図14に示すように、床版取替工程の上り線三次施工が行われる。床版取替工程の上り線三次施工では、床版取替機71が、上り追越車線42と下り追越車線44との間の作業帯45に搬入される。床版取替工程の上り線三次施工では、図中に斜線で示すように、床版取替機71により、作業帯45の床版が取替えられる。床版取替工程の上り線三次施工では、作業帯45の床版が取替の終了後に床版取替機71が搬出される。以上のようにして、第1床面11の床版の取替が終了する。なお、上述した仮設桁33と支持桁25とを連結していた仮設桁連結部材34が取り外され、仮設桁33と支持桁15とが仮設桁連結部材34により連結される工程は、床版取替工程の上り線三次施工の後に行われてもよい。
【0030】
また、上述した離間部架設工程は、第1床面11の床版の取替が終了した後に行われてもよい。つまり、床版取替工程で第1床面11の床版の取替が終了した後に離間部架設工程により仮設床面31が架設され、再度、床版取替工程が行われ、当該床版取替工程では、車両を走行させる車線として仮設床面31と第1床面11との区域が区画され、車線として区画されていない第2床面21の区域の床版が取替えられてもよい。
【0031】
図15及び図16に示すように、床版取替工程の下り線一次施工の準備工程が行われる。床版取替工程の下り線一次施工の準備工程では、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31において、仮設分離帯52が移動され、仮設分離帯53が設置され、下り走行車線43と下り追越車線44とが第1床面11の仮設床面31とは反対側の側端部12の方に移動させられ、第2床面21の仮設床面31とは反対側の側端部22の区域に作業帯45が区画される。
【0032】
図17に示すように、床版取替工程の下り線一次施工が行われる。床版取替工程の下り線一次施工では、床版取替機71が、第2床面21の仮設床面31とは反対側の側端部22の区域の作業帯45に搬入される。床版取替工程の下り線一次施工では、図中に斜線で示すように、床版取替機71により、作業帯45の床版が取替えられる。床版取替工程の下り線一次施工では、作業帯45の床版の取替の終了後に床版取替機71が搬出される。
【0033】
図18及び図19に示すように、床版取替工程の下り線二次施工の準備工程が行われる。床版取替工程の下り線二次施工の準備工程では、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31において、仮設分離帯52が移動され、下り走行車線43が床版の取替が終了した第2床面21の仮設床面31とは反対側の側端部22の方に移動させられ、下り追越車線44と移動させられた下り走行車線43との間に作業帯45が区画される。
【0034】
図20に示すように、床版取替工程の下り線二次施工が行われる。床版取替工程の下り線二次施工では、床版取替機71が、下り走行車線43と下り追越車線44との間の作業帯45に搬入される。床版取替工程の下り線二次施工では、図中に斜線で示すように、床版取替機71により、作業帯45の床版が取替えられる。床版取替工程の下り線二次施工では、作業帯45の床版の取替の終了後に床版取替機71が搬出される。
【0035】
図21に示すように、床版取替工程の下り線三次施工の準備工程が行われる。床版取替工程の下り線三次施工の準備工程では、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31において、仮設分離帯52が移動され、仮設分離帯53が撤去され、下り追越車線44が床版の取替が終了した下り走行車線43の隣に移動させられ、上り追越車線42と移動させられた下り追越車線44との間に作業帯45が区画される。
【0036】
図22に示すように、床版取替工程の下り線三次施工が行われる。床版取替工程の下り線三次施工では、床版取替機71が、上り追越車線42と下り追越車線44との間の作業帯45に搬入される。床版取替工程の上り線三次施工では、図中に斜線で示すように、床版取替機71により、作業帯45の床版が取替えられる。床版取替工程の上り線三次施工では、作業帯45の床版の取替の終了後に床版取替機71が搬出される。以上のようにして、第2床面21の床版の取替が終了する。
【0037】
図23に示すように、クレーン61により、第2床面21の床版の取替の終了後に、離間部30から仮設床面31を撤去する離間部撤去工程が行われる。離間部撤去工程では、作業帯45にクレーン61が搬入される。離間部撤去工程では、クレーン61により、仮設床面31が撤去される。また、離間部撤去工程では、クレーン61により、第1橋梁10の支持桁15との間の仮設桁連結部材34と仮設桁33とが撤去される。また、離間部撤去工程では、クレーン61により、仮設支持杭32が撤去される。離間部架設工程では、仮設床面31、仮設桁連結部材34、仮設桁33及び仮設支持杭32の撤去の終了後にクレーン61が搬出される。
【0038】
図24に示すように、仮設分離帯51,52が撤去され、壁高欄14,24が設置され、上り走行車線41、上り追越車線42、下り走行車線43及び下り追越車線44が復旧させられることにより、床版の取替の作業が終了する。
【0039】
本実施形態によれば、床版取替工程により、離間部30を隔てて互いに隣接する第1橋梁10と第2橋梁20とにおける第1橋梁10の第1床面11と第2橋梁20の第2床面21とのいずれかの床版が取替えられ、離間部架設工程により、離間部30に、第1橋梁10の第1床面11と第2橋梁20の第2床面21とに連続するように仮設床面31が架設され、床版取替工程では、車両を走行させる車線として仮設床面31の区域、仮設床面31と第1床面11との区域及び仮設床面31と第2床面21との区域のいずれかの区域を区画し、車線として区画されていない第1床面11及び第2床面21のいずれかの区域の床版が取替えられる。離間部30への仮設床面31の架設は比較的に容易であるため、より容易に車線を仮設しつつ橋梁の床版を取替えることが可能となる。例えば、本実施形態では、上り車線と下り車線とを跨いで容易に車線を仮設することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態によれば、床版取替工程では、離間部架設工程により仮設床面31が架設された後に第1床面11及び第2床面21の床版が取替えられるため、車両を走行させる車線として第1床面11、第2床面21及び仮設床面31のいずれかの区域を区画する自由度が大きくなる。
【0041】
また、本実施形態によれば、床版取替工程では、車線として第1床面11、第2床面21及び仮設床面31のいずれかの区域が区画され、車線として区画されていない第1床面11及び第2床面21のいずれかの区域の床版が取替えられた後に、車線として床版が取替えられた第1床面11及び第2床面21のいずれかの区域が区画され、車線として区画されていた第1床面11及び第2床面21のいずれかの区域の床版が取替えられるため、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31の外側に車線を別途仮設する必要が無く、河川部、山間部及び都市部における作業中の幅員拡張の制限に対応することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、床版取替工程では、車線として第2床面21及び仮設床面31の区域が区画され、第1床面11の仮設床面31とは反対側の側端部12から床版が順次取り換えられ、第1床面11の床版が取替えられた区域から車線が順次仮設され、第1床面11の床版の取替の終了後に、車線として第1床面11及び仮設床面31の区域が区画され、第2床面21の仮設床面31とは反対側の側端部22から床版が順次取り換えられ、第2床面21の床版が取替えられた区域から車線が順次仮設され、第2床面21の床版の取替の終了後に、離間部撤去工程により離間部30から仮設床面31が撤去されるため、第1床面11及び第2床面21の一部の区域ごとに床版が取替えられる場合において、床版の取替の作業における車線の仮設、既設床版、新設床版、作業機械及び資材等の移動、並びに新設床版へのポストテンション方式によるプレストレスの付与等の効率をより向上させることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態では、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31の外側に車線が別途仮設されず、第1床面11及び第2床面21により囲われた領域のみで床版の取替の作業が行われた。しかし、本発明では、図25及び図26に示すように、例えば、離間部架設工程の終了後であって、床版取替工程の上り線一次施工の準備工程が行われたときに、第1橋梁10の仮設床面31とは反対側の側端部12に仮設桟橋80が架設されてもよい。仮設桟橋80の架設は、例えば、既存の第1橋梁10の第1床面11の側端部12に区画された作業帯45から、小型のクレーンにより仮設支持杭81を打設し、仮設支持杭81の上部に仮設桟橋80を支持する仮設支持桁82を設置することにより行われる。
【0044】
本発明では、第1床面11、第2床面21及び仮設床面31の外側に車線が別途仮設される場合でも、従来の床版取替方法に比べて利点がある。従来の床版取替方法では、既存の車線の線形(車線位置)をそのまま保存され、最低でも1車線が閉鎖されつつ床版の取替が行われるため、既存幅員の外側に別途の幅員を確保しなければならない。2車線とも通行止めがなされる場合もある。一方、河川部の橋梁においては、流路断面確保の観点から杭の本数も制約される。既存幅員の外側に別途の幅員を確保するためには、仮設桟橋を別途構築する必要があり、このためには、杭を打設しなければならない。杭本数に制約がある場合は、杭打設間隔が長くなるため、桟橋上からの架設には大型のクレーンが必要となる。
【0045】
しかし、本発明の床版取替方法を図25及び図26に示すように実施し、既存の橋梁の外縁から仮設支持杭81を打設することができれば、小型のクレーンでも作業でき、床版の取替に関する他の作業も並行して行うことができるため、作業効率も向上する。つまり、仮設桟橋80を架設するための作業スペースとして、既存の橋梁の外縁を確保することは、仮設桟橋80の構築の面で大きな利点がある。本発明では、離間部30を間詰することで、この空間を車線として利用できれば、既存線形を横にずらして、既存の橋梁の外縁を作業スペースとして確保することができる。これによって、既設の橋梁の外側に別途の仮設桟橋80を構築する場合においても、離間部30を利用できる利点は大きい。
【0046】
また、上記実施形態では、互いに離間部を隔てて隣接する橋梁の床面のそれぞれが2つの車線を含む場合について説明したが、本発明は互いに隣接する橋梁の床面のそれぞれが3以上の車線を含む場合にも適用可能である。また、互いに離間部を隔てて隣接する橋梁の車線は必ずしも上り方向及び下り方向の反対方向でなくてもよく、互いに離間部を隔てて隣接する橋梁の車線が全て同じ方向に車両が走行するものでも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…第1橋梁、11…第1床面、12…側端部、13…側端部、14…壁高欄、15…支持桁、20…第2橋梁、21…第2床面、22…側端部、23…側端部、24…壁高欄、25…支持桁、30…離間部、31…仮設床面、32…仮設支持杭、33…仮設桁、34…仮設桁連結部材、41…上り走行車線、42…上り追越車線、43…下り走行車線、44…下り追越車線、45…作業帯、51,52,53…仮設分離帯、61…クレーン、71…床版取替機、80…仮設桟橋、81…仮設支持杭、82…仮設支持桁。
図1
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