(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した天井構造では、吊りボルトが複数の天井バーの交差部分に連結されており、複数の天井バーの交差部分は、吊持金具及び固定金具によってビス止めで固定されている。
交差部分では、4本の天井バーの端部が固定されている。従って、交差部分で万が一落下が生じた場合、交差部分の全ての野縁が落下する可能性がある。また、前述の天井構造は、吊持金具及び固定金具の断面形状が特殊な形状とされており金具の構成が複雑であるため、汎用性の点において改善の余地がある。
【0006】
また、前述した天井構造では、吊りボルトの直下に4本の天井バーの交差部分が設けられる。よって、天井バーの位置に応じて吊りボルトの位置が決定されてしまうので、設置位置の自由度の点で改善の余地がある。更に、地震等が生じたときには、振動により生じる力が吊りボルト、吊持金具及び固定金具を介して複数の天井バーの交差部分に直接伝達する。地震等によって生じた力が局所的に伝達すると、天井構造を構成する部材等に局所的に力が付与されることにより、当該部材等が落下する懸念がある。従って、部材等の落下を抑制すると共に、天井構造において、振動により生じる力を均一に伝達させることが求められる。
【0007】
本発明は、落下を抑制すると共に、振動により生じる力を均一に伝達させることができる天井構造及び施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る天井構造は、第1方向に延びる複数の第1野縁と、2本の第1野縁を接続すると共に、第1方向に交差する第2方向に延びる複数の第2野縁と、2本の第2野縁を接続すると共に、第1方向に延びる第3野縁と、第1野縁及び第3野縁を接続すると共に、第2方向に延びる第4野縁と、を備え、第2野縁の一端及び他端は、第1野縁の側面に対向し、第3野縁の一端及び他端は、第2野縁の側面に対向し、第4野縁の一端は第3野縁の側面に対向し、第4野縁の他端は第1野縁の側面に対向する。
【0009】
この天井構造は、第1野縁、2本の第1野縁を接続する第2野縁、2本の第2野縁を接続する第3野縁、及び第1野縁と第3野縁を接続する第4野縁を備える。そして、第2方向に延びる第2野縁の一端及び他端が第1野縁の側面に対向し、第1方向に延びる第3野縁の一端及び他端が第2野縁の側面に対向する。第2方向に延びる第4野縁の一端は第3野縁の側面に対向し、第4野縁の他端は第1野縁の側面に対向する。よって、複数の野縁の交差部分では、一方の野縁が通されると共に他方の野縁は分断される。従って、各交差部分において一方の野縁を必ず通すことができるので、交差部分において一方の野縁が落下することを確実に防止できる。すなわち、交差部分の全ての野縁が落下する事態を確実に防止することができるので、天井の落下を抑制することができる。また、第1野縁及び第3野縁は第1方向に延在し、第2野縁及び第4野縁は第2方向に延在する。従って、第1方向及び第2方向の両方に面的に振動により生じる力を分散させることができるので、力を均一に伝達させることができる。
【0010】
また、前述した天井構造は、第1野縁と第2野縁との交差部分に設けられる金物を備え、金物は、第1野縁及び第2野縁の交差角度を保持してもよい。この場合、第2野縁は、金物によって第1野縁との交差角度が保持される。よって、金物により、第1野縁と、第1野縁に交差する第2野縁とを強固に接続することができるので、第1野縁及び第2野縁に振動により生じる力を面的に分散し、力を第1野縁及び第2野縁の両方に均一に伝達することができる。
【0011】
また、金物は、第1野縁及び第2野縁を上下から挟み込んでもよい。この場合、金物は、第1野縁及び第2野縁の交差角度を保持して第1野縁及び第2野縁を上下から挟み込む。第2野縁は、金物によって、第1野縁と共に上下から挟み込まれ、更に第1野縁との交差角度が保持されている。よって、第1野縁及び第2野縁は、上下から金物によって挟み込まれるので、面剛性を確保すると共に落下を抑制することができる。
【0012】
また、金物は、第1野縁及び第2野縁のそれぞれに嵌合する嵌合部を有し、嵌合部は、第1野縁及び第2野縁のそれぞれに対して2つ以上設けられており、金物は、2つ以上の嵌合部が第1野縁及び第2野縁のそれぞれに嵌合することにより、第1野縁及び第2野縁の交差角度を保持してもよい。この場合、2つ以上の嵌合部を第1野縁に嵌合させると共に、2つ以上の嵌合部を第2野縁に嵌合させることにより、第1野縁及び第2野縁の交差角度を保持することができる。よって、第1野縁及び第2野縁の交差角度を保持する構成を、嵌合によって容易に実現することができる。
【0013】
また、前述した天井構造は、第1野縁に接続されて第2方向に延びる野縁受けを備えてもよい。この場合、野縁受けは、第1野縁が交差する第2方向に延びるため、野縁受けに対する野縁の配置位置の自由度を高めることができる。従って、天井構造の施工を容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係る施工方法は、第1野縁、第2野縁、第3野縁及び第4野縁を用いて天井を施工する施工方法であって、第1方向に延びる2本の第1野縁の間に、複数の第2野縁のそれぞれを第1方向に交差する第2方向に延びるように配置する第1工程と、2本の第2野縁の間に、第3野縁を第1方向に延びるように配置する第2工程と、第1野縁及び第3野縁の間に、第4野縁を第2方向に延びるように配置する第3工程と、を備え、第1工程では、第2野縁の一端及び他端が第1野縁の側面に対向するように配置を行い、第2工程では、第3野縁の一端及び他端が第2野縁の側面に対向するように配置を行い、第3工程では、第4野縁の一端が第3野縁の側面に対向すると共に第4野縁の他端が第1野縁の側面に対向するように配置を行う。
【0015】
この施工方法は、第1方向に延びる2本の第1野縁の間に複数の第2野縁を配置し、第2方向に延びる2本の第2野縁の間に第3野縁を配置し、第1野縁と第3野縁の間に第4野縁を配置している。そして、これらの配置は、第2方向に延びる第2野縁の一端及び他端が第1野縁の側面に対向し、第1方向に延びる第3野縁の一端及び他端が第2野縁の側面に対向し、第2方向に延びる第4野縁の一端が第3野縁の側面に対向し、第4野縁の他端が第1野縁の側面に対向するように行われる。よって、複数の野縁の交差部分では、一方の野縁が通されると共に他方の野縁は分断される。従って、各交差部分において一方の野縁を必ず通すことができるので、交差部分において一方の野縁が落下することを確実に防止できる。すなわち、交差部分の全ての野縁が落下する事態を確実に防止することができるので、天井の落下を抑制することができる。また、第1野縁及び第3野縁は第1方向に延在し、第2野縁及び第4野縁は第2方向に延在する。従って、第1方向及び第2方向の両方に面的に振動により生じる力を分散させることができるので、力を均一に伝達させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、落下を抑制すると共に、振動により生じる力を均一に伝達させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る天井構造及び施工方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態に係る天井構造1は、スラブSから吊り下げられた複数の吊材Tと、吊材Tが支持すると共に建物の天井を構成する複数の天井面材8とを備えている。天井構造1は吊り天井を構成している。また、天井構造1は、野縁受け2、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6を備える。野縁受け2、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6は、例えばスチール製である。
【0020】
野縁受け2は、複数の吊材Tに接続されると共に、例えば一定間隔ごとに配置されている。吊材Tが設けられる位置は、例えば、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6を避けた位置とされている。この場合、吊材Tが設けられる位置は、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6に囲まれた領域(天井面材8の直上)とされている。
【0021】
野縁受け2は、第1野縁3に交差すると共に第1野縁3の上部に接続されている。第1野縁3は、天井構造1の天井面材8に沿って長く延びる、いわゆる通し野縁である。第1野縁3は、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6のいずれよりも長い。第2野縁4は、2本の第1野縁3を接続すると共に、第1野縁3に交差する方向、且つ野縁受け2に平行な方向に延びている。
【0022】
天井構造1は、一例として、2種類の金物、すなわち第1金物10(金物)と第2金物20とを備える。なお、天井構造1に用いられる金物の種類は、1種類であってもよいし、3種類以上であってもよい。本実施形態において、第1金物10は、第1野縁3と第2野縁4とを接続する。第2金物20は、例えば、第1野縁3と第4野縁6、第2野縁4と第3野縁5、及び第3野縁5と第4野縁6、のそれぞれを接続する。
【0023】
以下では、第1野縁3が延びる方向を第1方向D1、野縁受け2及び第2野縁4が延びる方向を第2方向D2として説明する。第1方向D1及び第2方向D2は、例えば互いに直交している。野縁受け2、第2野縁4及び第4野縁6は第2方向D2に延びており、第1野縁3及び第3野縁5は第1方向D1に延びている。
【0024】
第3野縁5は、2本の第2野縁4を接続する。すなわち、第3野縁5の一端及び他端のそれぞれが第2野縁4に接続されている。第3野縁5の長さは、例えば、第2野縁4の長さと同一であってもよく、第3野縁5は第2野縁4と同一の部材であってもよい。また、第3野縁5の一端及び他端が第2野縁4の中点位置に接続されていてもよく、第3野縁5は2本の第1野縁3の中間位置に配置されていてもよい。
【0025】
第4野縁6は第1野縁3と第3野縁5を接続し、第4野縁6の一端は第1野縁3に接続され、第4野縁6の他端は第3野縁5に接続されている。第4野縁6の長さは、例えば、第2野縁4の長さ、又は第3野縁5の長さの半分であってもよい。また、第4野縁6の一端は第3野縁5の中点に接続されていてもよく、第4野縁6は2本の第2野縁4の中間位置に配置されていてもよい。
【0026】
第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6の高さは、例えば、互いに同一である。また、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6は、同一平面内に配置されていてもよい。例えば、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6は、共に、天井面材8にビス止めされている。また、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6は、タッカー等、ビス止め以外の手段によって天井面材8に固定されてもよい。
【0027】
天井面材8は、例えば正方形状とされている。天井面材8は、ポリエステル製の不織布基材を備えた天井材であってもよい。この場合、従来の天井材よりも軽量化することが可能である。また、天井面材8は、膜状又は繊維状の天井材であってもよい。天井面材8が軽量化されている場合には、万が一地震等で天井面材8が落下しても天井面材8の落下に対する安全性が高められる。また、天井面材8の重量は石膏ボードの重量より軽くてもよい。
【0028】
図2に示されるように、吊材Tは、野縁取付金物7によって野縁受け2に連結される。例えば、吊材Tは、その下端にボルト部T1を備える。ボルト部T1が野縁取付金物7を貫通してナットで野縁取付金物7(後述する上面部7aの下部)に固定されることにより、吊材Tは野縁取付金物7に連結される。
【0029】
野縁取付金物7は、例えば、ボルト部T1が貫通する四角形状の上面部7aと、上面部7aの一辺から下方に折り曲げられた第1側面部7bと、第1側面部7bに平行に延びる第2側面部7cと、第1側面部7bの下端及び第2側面部7cの下端を接続する下面部7dと、を備える。また、第1側面部7bと第2側面部7cの間には、野縁受け2を挿入するための開口7eが形成されている。
【0030】
例えば、第1側面部7b、第2側面部7c及び下面部7dに囲まれた領域に野縁受け2が保持される。また、平面視における吊材T及び野縁受け2の位置は互いにずれている。これにより、容易に野縁受け2を設置できるので施工性が向上する。また、野縁受け2は、例えば、その断面が長方形状の空洞2aを備えた閉断面構造を有する角パイプである。野縁受け2を、野縁受け2の長手方向に直交する面で切断したときの断面は、例えば、縦長の長方形状とされている。
【0031】
このように、野縁受け2が延びる方向に直交する面で野縁受け2を切断したときの断面は、閉断面とされている。よって、振動によって生じる力が野縁受け2から特定の方向に伝達する問題を回避することができるので、力をより均一に伝達させることができる。また、平面視において、吊材Tに対する開口7eの向きは、隣接する他の野縁取付金物7の開口7eの向きと反対側にされている。すなわち、吊材Tに対する開口7eの位置は、野縁受け2に沿って交互に逆向きとされている。吊材Tに対する開口7eの位置が野縁受け2に沿って交互に逆向きにされると共に、野縁受け2の断面が閉断面であることにより、野縁受け2と天井に生じるねじれを抑制することができる。
【0032】
図1及び
図3に示されるように、第1金物10は、第1野縁3及び第2野縁4の交差部分C1に配置される。なお、
図3に示される第1金物10の形状は、あくまで一例であり、第1金物10の形状は適宜変更することが可能である。第1金物10は、例えば、第1野縁3及び第2野縁4の火打ちとしての機能を有する。
【0033】
第1金物10は、第1野縁3及び第2野縁4の交差部分C1を緊結して補強する。交差部分C1において、第2野縁4は2本に分断されており、各第2野縁4の第2方向D2の端部4bは第1野縁3の側面3bに対向している。第1金物10は、一の第2野縁4の端部4bと、第1野縁3と、他の第2野縁4の端部4bとを接続する。すなわち、第1金物10は、第1方向D1に延びる第1野縁3、及び、分断された2本の第2野縁4を接続する。
【0034】
第1野縁3を、その長手方向に直交する面で切断したときの断面は、上方に開口した形状とされている。この断面の形状は、例えば、上方に開口するコの字状である。また、第1野縁3は、その上端で内側に折り返された折り返し部3aを、第1野縁3の幅方向に一対に備える。
【0035】
第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6の形状についても同様である(
図4参照)。すなわち、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6は、それぞれ、折り返し部4a、折り返し部5a及び折り返し部6aを備える。なお、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6の形状は、上記に限られず適宜変更可能である。
【0036】
例えば、第1金物10は、全体として八角形状とされている。第1金物10は、第1野縁3及び第2野縁4を上方から覆うと共に側面14を備えた箱状の第1被覆部11と、第1野縁3及び第2野縁4に下方から当てられると共に第1被覆部11を下から塞ぐ第2被覆部12と、第1被覆部11から下方に突出し第1野縁3及び第2野縁4のそれぞれに嵌合する嵌合部13と、を備える。
【0037】
嵌合部13は、例えば、第1被覆部11の8か所に形成されている。各嵌合部13は、第1野縁3の一対の折り返し部3aの間、及び第2野縁4の一対の折り返し部4aの間に嵌合する形状とされている。具体例として、嵌合部13は、左右両側に突出すると共に折り返し部3a,4aの内側(下側)に嵌り込む突出部を左右一対に備えている。
【0038】
第1野縁3に沿うように4つの嵌合部13が設けられ、一方の第2野縁4に沿うように2つの嵌合部13が設けられると共に、他方の第2野縁4に沿うように2つの嵌合部13が設けられる。また、第1野縁3に嵌合する4つの嵌合部13のうち、2つは第1被覆部11の中心から見て一方側に設けられており、他の2つは第1被覆部11の中心から見て他方側(上記一方側の反対側)に設けられている。
【0039】
第2被覆部12は、各嵌合部13が第1野縁3及び第2野縁4のそれぞれに嵌合した状態で第1野縁3、第2野縁4及び第1被覆部11を下方から被覆する。第2被覆部12の平面形状は、例えば、第1被覆部11の平面形状と同様とされており、第2被覆部12の各辺及び第1被覆部11の各辺には、ビスを打ち込むための突出部12a,11aがそれぞれ設けられている。各突出部12a,11aが上下に位置合わせされた状態で突出部12a,11aにビスが打ち込まれることにより、第1被覆部11に第2被覆部12が固定される。
【0040】
このように、第1金物10は、第1野縁3及び第2野縁4を上下から挟み込む第1被覆部11及び第2被覆部12を備える。また、少なくとも2つの嵌合部13が第1野縁3及び第2野縁4のそれぞれに嵌合することにより、第1野縁3及び第2野縁4の回転が抑制されると共に、第1野縁3及び第2野縁4の交差角度が、例えば直角に保持される。
【0041】
図1及び
図4に示されるように、第2金物20は、第1野縁3及び第4野縁6の交差部分C2、第2野縁4及び第3野縁5の交差部分C3、並びに、第3野縁5及び第4野縁6の交差部分C4、のそれぞれに配置される。すなわち、第2金物20は、第1野縁3及び第2野縁4の交差部分C1以外の交差部分C2,C3,C4のそれぞれに配置される。
【0042】
交差部分C2においては第4野縁6が2本に分断されており、交差部分C3においては第3野縁5が2本に分断されており、交差部分C4においては第4野縁6が2本に分断されている。交差部分C2においては第1野縁3が通されており、交差部分C3においては第2野縁4が通されており、交差部分C4においては第3野縁5が通されている。第2金物20は、交差部分C2で第1方向D1に延びる第1野縁3と2本の第4野縁6を接続し、交差部分C3で第2方向D2に延びる第2野縁4と2本の第3野縁5を接続し、交差部分C4で第1方向D1に延びる第3野縁5と2本の第4野縁6を接続する。
【0043】
図4は、第3野縁5及び第4野縁6の交差部分C4を接続する第2金物20を示している。この
図4と同様に、各第2金物20は、交差部分C2及び交差部分C3においても各野縁3,4,5,6を接続している。第2金物20の形状は、あくまで一例であり適宜変更することが可能である。第2金物20の形状を交差部分ごとに変更することも可能である。各第4野縁6の第2方向D2の端部6bは、第3野縁5の側面5bに対向している。第2金物20は、一の第4野縁6の端部6bと、第3野縁5と、他の第4野縁6の端部6bとを接続する。
【0044】
例えば、第2金物20は、全体として長方形状とされている。第2金物20は、第3野縁5及び第4野縁6を上方から覆う被覆部21と、被覆部21から下方に突出し第3野縁5及び第4野縁6のそれぞれに嵌合する嵌合部23と、を備える。例えば、嵌合部23は、被覆部21の4箇所に形成されており、各嵌合部23の形状は前述した嵌合部13の形状と同様であってもよい。
【0045】
第3野縁5に沿うように2つの嵌合部23が第3野縁5に嵌合すると共に、各第4野縁6に対して1つの嵌合部23が嵌合する。第3野縁5に嵌合する2つの嵌合部23のうち、1つは被覆部21の中心から見て一方側に設けられており、他方は被覆部21の中心から見て他方側(上記一方側の反対側)に設けられている。本実施形態において、第2金物20は、各野縁3,4,5,6を上下から挟み込む形状とはされておらず、第2金物20は、各野縁3,4,5,6を接続して力を伝達させる機能を有する。第2金物20は、材軸方向、すなわち接続されている野縁が延びる方向に力を伝える機能を有する。
【0046】
次に、第1〜第4野縁3,4,5,6に金物10,20を取り付けて各野縁3,4,5,6を接続し、天井構造1を施工する施工方法について説明する。まず、スラブSに吊材Tを吊り下げて吊材Tに野縁取付金物7を介して野縁受け2を配置する。このとき、第2方向D2に延びるように野縁受け2を配置して、野縁受け2に第1野縁3を接続する。
【0047】
また、第1方向D1に延びる複数本の第1野縁3が設けられた状態において、2本の第1野縁3の間に、複数の第2野縁4のそれぞれを第2方向D2に延びるように配置する(第1工程)。そして、2本の第2野縁4の間に第3野縁5を第1方向D1に延びるように配置して(第2工程)、第1野縁3と第3野縁5の間に第4野縁6を第2方向D2に延びるように配置する(第3工程)。
【0048】
なお、前述したように、交差部分C1では2本の第2野縁4が分断され、交差部分C2,C4では2本の第4野縁6が分断され、交差部分C3では2本の第3野縁5が分断されるように、各野縁3,4,5,6の配置が行われる。すなわち、前述の第1工程では、第2野縁4の一端及び他端が第1野縁3の側面に対向するように配置を行い、第2工程では、第3野縁5の一端及び他端が第2野縁4の側面に対向するように配置を行い、第3工程では、第4野縁6の一端が第3野縁5の側面に対向すると共に第4野縁6の他端が第1野縁3の側面に対向するように配置を行う。
【0049】
このとき、分断される各野縁5,6の配置位置を適宜調整することが可能となるため、施工を容易に行うことが可能である。なお、このとき各野縁3,4,5,6を天井面材8にビス止めしてもよい。
【0050】
また、第1金物10の嵌合部13を第1野縁3及び第2野縁4に上から嵌合し、上下から第1被覆部11及び第2被覆部12で第1野縁3及び第2野縁4を挟み込むことにより、第1野縁3及び第2野縁4に第1金物10を固定する(第1金物を固定する工程)。そして、第2金物20の各嵌合部23を各野縁3,4,5,6に上から嵌合させる。これにより、各嵌合部23で各野縁3,4,5,6を固定して各野縁3,4,5,6の接続を行う(第2金物を固定する工程)。以上の工程を経て天井構造1の施工が完了する。なお、前述した各工程の順序は、上記に限定されず適宜変更可能である。
【0051】
次に、本実施形態に係る天井構造1及び施工方法の作用効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係る天井構造1及び施工方法は、第1野縁3、2本の第1野縁3を接続する第2野縁4、2本の第2野縁4を接続する第3野縁5、及び第1野縁3と第3野縁5を接続する第4野縁6を備える。そして、第2方向D2に延びる第2野縁4の一端及び他端が第1野縁3の側面に対向し、第1方向D1に延びる第3野縁5の一端及び他端が第2野縁4の側面に対向する。第2方向D2に延びる第4野縁6の一端は第3野縁5の側面に対向し、第4野縁6の他端は第1野縁3の側面に対向する。
【0053】
よって、複数の野縁3,4,5,6の交差部分C1,C2,C3,C4では、一方の野縁が通されると共に他方の野縁は分断される。従って、各交差部分C1,C2,C3,C4において一方の野縁を必ず通すことができるので、交差部分C1,C2,C3,C4において一方の野縁が落下することを確実に防止できる。
【0054】
すなわち、交差部分C1,C2,C3,C4の全ての野縁が落下する事態を確実に防止することができるので、天井の落下を抑制することができる。また、第1野縁3及び第3野縁5は第1方向D1に延在し、第2野縁4及び第4野縁6は第2方向D2に延在する。従って、第1方向D1及び第2方向D2の両方に面的に振動により生じる力を分散させることができるので、力を均一に伝達させることができる。
【0055】
また、天井構造1は、第1野縁3と第2野縁4との交差部分C1に設けられる第1金物10を備え、第1金物10は、第1野縁3及び第2野縁4の交差角度を保持する。この場合、第2野縁4は、第1金物10によって第1野縁3との交差角度が保持される。よって、第1金物10により、第1野縁3と、第1野縁3に交差する第2野縁4とを強固に接続することができる。従って、第1野縁3及び第2野縁4に振動により生じる力を面的に分散し、力を第1野縁3及び第2野縁4の両方に均一に伝達することができる。
【0056】
また、第1金物10は、第1野縁3及び第2野縁4を上下から挟み込む。よって、第1金物10は、第1野縁3及び第2野縁4の交差角度を保持して第1野縁3及び第2野縁4を上下から挟み込む。第2野縁4は、第1金物10によって、第1野縁3と共に上下から挟み込まれ、更に第1野縁3との交差角度が保持されている。よって、第1野縁3及び第2野縁4は、上下から第1金物10によって挟み込まれるので、面剛性を確保すると共に落下を抑制することができる。
【0057】
また、第1金物10は、第1野縁及び第2野縁のそれぞれに嵌合する嵌合部13を有し、嵌合部13は、第1野縁3及び第2野縁4のそれぞれに対して2つ以上設けられており、第1金物10は、2つ以上の嵌合部13が第1野縁3及び第2野縁4のそれぞれに嵌合することにより、第1野縁3及び第2野縁4の交差角度を保持してもよい。この場合、2つ以上の嵌合部13を第1野縁3に嵌合させると共に、2つ以上の嵌合部13を第2野縁4に嵌合させることにより、第1野縁3及び第2野縁4の交差角度を保持することができる。よって、第1野縁3及び第2野縁4の交差角度を保持する構成を、嵌合によって容易に実現することができる。
【0058】
また、天井構造1は、第1野縁3に接続されて第2方向D2に延びる野縁受け2を備える。野縁受け2は、第1野縁3が交差する第2方向D2に延びるため、野縁受け2に対する野縁の配置位置の自由度を高めることができる。従って、天井構造1の施工を容易に行うことができる。また、第1野縁3の上に野縁受け2が設けられることにより、天井の面外方向への変形を抑制することができる。
【0059】
また、第1野縁3に接続される野縁受け2は、第1野縁3、第2野縁4、第3野縁5及び第4野縁6を避けた位置で吊り下げられる。よって、野縁受け2に対する野縁の配置位置の自由度を高めることができるので、天井構造1の施工を容易に行うことができる。
【0060】
更に、本実施形態では、通し野縁である第1野縁3に2本の第2野縁4を第1金物10によって接続し、第1野縁3に2本の第4野縁6を第2金物20によって接続する。そして、第2野縁4に2本の第3野縁5を第2金物20によって接続し、第3野縁5に2本の第4野縁6を第2金物20によって接続する。
【0061】
よって、交差部分C1,C2,C3,C4のうち、通し野縁である第1野縁3と第2野縁4を第1金物10で接続する交差部分C1の強度が最も強い。また、通し野縁である第1野縁3と第4野縁6を第2金物20で接続する交差部分C2、及び、通し野縁に接続された第2野縁4と第3野縁5を第2金物20で接続する交差部分C3の強度が2番目に強い。そして、第3野縁5と第4野縁6を第2金物20で接続する交差部分C4の強度が最も弱い。すなわち、交差部分C1の耐力が最も高く、交差部分C2,C3の耐力が2番目に高く、交差部分C4の耐力が最も低い。
【0062】
このように、天井構造1では、交差部分C1,C2,C3,C4の間で強度(耐力)に差を設けているので、万が一地震等によって接続が外れる場合であっても、交差部分C4の接続が優先的に外れることにより、第4野縁6のみが第1野縁3からぶら下がるだけとなる。よって、野縁3,4,5,6及び天井面材8の落下を抑制することができる。従って、天井構造1の部材等の脱落をより確実に回避することができる。
【0063】
更に、第1金物10は、第1方向D1に延びる1本の第1野縁3と2本の第2野縁4を接続する。従って、万が一地震等が生じても、交差部分C1で通されている第1野縁3、及び第1金物10に下から支えられる第2野縁4の脱落をより確実に防止できる。この第2野縁4に第3野縁5の両端が接続されているので、第3野縁5の両端の脱落を確実に防止できる。そして、第4野縁6については、少なくとも第1野縁3に接続されている側の端部の脱落は確実に防止される。更に、第4野縁6の第3野縁5側の端部が脱落しても、第4野縁6の第1野縁3側、及び他の野縁3,4,5が天井面材8に固定されていることにより、全ての野縁及び天井の落下は確実に阻止される。
【0064】
ところで、第2方向D2に延びる複数の第4野縁6は、他の野縁3,4,5と比較して、節の数が多いので強度が弱い。しかしながら、野縁受け2は、第4野縁6が延びる方向である第2方向D2に沿うように設置される。すなわち、野縁受け2は、第4野縁6と平行に延びている。よって、第2方向D2に入力される力を野縁受け2に伝達させることにより、強度が弱い第4野縁6を補完することができる。
【0065】
以上、本発明に係る天井構造及び施工方法の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【0066】
例えば、前述の実施形態では、断面が縦長の長方形状とされた野縁受け2について説明したが、野縁受けの断面形状は適宜変更可能であり、野縁の断面形状も適宜変更可能である。また、野縁受けを吊る吊材及び野縁取付金物の形状、大きさ、数、材料及び配置態様については適宜変更可能である。更に、第1金物及び第2金物の形状、大きさ、数、材料及び配置態様についても適宜変更可能である。
【0067】
また、前述の実施形態では、ポリエステル製の不織布基材を備え、重量が石膏ボードの重量よりも軽い天井面材8を例示したが、天井面材の形状、大きさ、数、材料及び配置態様についても適宜変更可能である。
【0068】
また、前述の実施形態では、交差部分C1に第1金物10が設けられ、交差部分C2,C3,C4のそれぞれに第2金物20が設けられる例について説明した。しかしながら、本発明で用いられる金物の種類は、1種類又は3種類以上であってもよい。また、交差部分ごとに金物の種類を適宜変更してもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、突出部12a,11aにビスが打ち込まれることにより、第1被覆部11に第2被覆部12が固定される第1金物10について説明した。しかしながら、第1金物10の組み立て手段はビス以外のものであってもよい。例えば、折り曲げ、又は嵌合によって、第1金物10が組み立てられてもよい。
【0070】
また、第1金物10及び第2金物20の配置態様については適宜変更可能である。例えば、全ての交差部分に第1金物10が設けられてもよいし、全ての交差部分に第2金物20が設けられてもよい。全ての交差部分に第1金物10が設けられる場合には強度が一層高い天井構造を構成でき、全ての交差部分に第2金物20が設けられる場合には一層軽量な天井構造を構成できる。更に、前述の実施形態のように、交差部分の一部に第1金物10が設けられると共に、交差部分の残部に第2金物20が設けられる場合には、強度を高める効果、及び軽量化の効果の両方を実現させることができる。