(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の液面検知においては、測温抵抗体R1及びR2の電圧差のほぼ瞬間値を、予め定められた基準値(しきい値)と比較することにより、液相中又は気相中を判断するので、ノイズ等の影響による誤検知以外にも、使用する測温抵抗体の個体差、即ち特性値のばらつきによる影響を受けて誤検知する問題があった。例えば、測温抵抗体R1に高めの値を出力するものが使用され、且つ測温抵抗体R2に低めの値を出力ものが使用される場合、又は、測温抵抗体R1に低めの値を出力するものが使用され、且つ測温抵抗体R2に高めの値を出力ものが使用される場合が考えられる。前者の場合と後者の場合とにおいて、測温抵抗体R1及びR2と液面との位置関係が同じ状態であっても、前者の場合の測温抵抗体R1及びR2の電圧差は、後者の場合のそれよりは大きくなる。使用する測温抵抗体毎に、適切な基準値を設定することにより、検知精度を向上することはできるが、調整に手間がかかり、量産には向かない。
【0010】
また、同じ高さに配置した2つの測温抵抗体を使用するので、複数n(nは正の正数値)のレベルで液面位置を検知するためには、2nの測温抵抗体を設ける必要があり、nが大きい場合には、測温抵抗体が容器中の大きい空間を占める問題がある。
【0011】
測温抵抗体の数を減らすために、異なる高さに複数の測温抵抗体を配置することも考えられる。1つの測温抵抗体を基準温度の測定に用い(微弱電流を流す)、その他の測温抵抗体に関して、基準温度と一定の温度差が生じるように電流値を変化させる。変化させる各電流値の瞬間値を、予め定められた基準値(しきい値)と比較することにより、液面位置を検知することができる。しかし、その場合にも、上記したように測温抵抗体の特性値のばらつきによる影響を受け、誤検知する問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題を解決し、精度よく液面を検知することができる液面計、それを備えた気化器、及び液面検知方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第1の局面に係る液面計は、第1測温抵抗体と、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置に配置された温度測定体と、前記温度測定体及び前記第1測温抵抗体を用いて液面の位置を検知する制御部とを備えた液面計であって、前記制御部は、前記第1測温抵抗体に流れる電流値が、予め定められた一定時間内に予め定められた一定値以上変化したときに、前記液面の位置が、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置から、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置に変化したことを検知する、又は、前記液面の位置が、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置から、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置に変化したことを検知する。
【0014】
前記制御部は、温度検出部、液面検知部及び電流制御部を含み、前記温度検出部は、前記温度測定体及び前記第1測温抵抗体の温度を検出し、前記電流制御部は、前記温度検出部により検出された前記第1測温抵抗体の温度と前記温度測定体の温度との温度差が予め定められた第1の値となるように、前記第1測温抵抗体に流される電流値を決定し、前記液面検知部は、前記第1測温抵抗体に流れる電流値の変化から、前記液面の位置を検知してもよい。
【0015】
上記の液面計は、前記電流制御部により決定された前記電流値の電流を前記第1測温抵抗体に流す電源部をさらに備えることができる。
【0016】
前記液面検知部は、前記第1測温抵抗体に流れる前記電流値の前記一定時間内の変化幅が負の値であり、当該変化幅の絶対値が、正の予め定められた第2の値以上であれば、前記液面は、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置から、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置に変化したことを検知し、前記変化幅が正の値であり、当該変化幅の絶対値が、前記第2の値以上であれば、前記液面は、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置から、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置に変化したことを検知してもよい。
【0017】
前記第1測温抵抗体及び前記温度測定体は、支持部材により水平方向に固定されていてもよい。
【0018】
前記温度測定体は、前記第1測温抵抗体に流れる電流値よりも小さい値の電流が流れる測温抵抗体であってもよい。
【0019】
前記電流制御部は、前記温度差が前記第1の値となるように前記第1測温抵抗体に流される前記電流値が、予め定められた上限値より大きい場合には、前記第1測温抵抗体に流される前記電流値を前記上限値に維持し、前記温度差が前記第1の値となるように前記第1測温抵抗体に流される前記電流値が、予め定められた下限値より小さい場合には、前記第1測温抵抗体に流される前記電流値を前記下限値に維持することができる。
【0020】
上記の液面計は、前記第1測温抵抗体の両端の電圧を測定する電圧測定部をさらに備え、前記温度検出部は、前記電圧測定部により測定された前記第1測温抵抗体の両端の電圧から、前記第1測温抵抗体の温度を決定し、前記電流制御部は、前記温度差が、予め定められた基準値よりも大きい場合、前記第1測温抵抗体に流される前記電流値を、前記第1測温抵抗体に流れている電流値よりも小さい値に決定し、前記温度差が前記基準値よりも小さい場合、前記第1測温抵抗体に流される前記電流値を、前記第1測温抵抗体に流れている電流値よりも大きい値に決定し、前記温度差が前記基準値に等しい場合、前記第1測温抵抗体に流される前記電流値を、前記第1測温抵抗体に流れている電流値と同じ値に決定することができる。
【0021】
前記液面検知部は、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置に前記液面があると判断された場合、前記液面を上昇させるべき信号を出力し、前記液面検知部は、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置に前記液面があると判断された場合、前記液面の上昇を停止させるべき信号を出力することができる。
【0022】
上記の液面計は、任意の大きさの電流が印加される第2測温抵抗体をさらに備え、前記第2測温抵抗体は、前記温度測定体が配置された位置よりも低い位置であって、前記第1測温抵抗体が配置された位置と異なる高さの位置に配置され、前記温度検出部は、前記第2測温抵抗体の温度を検出し、前記電流制御部は、前記温度検出部により検出された前記第2測温抵抗体の温度と前記温度測定体の温度との温度差が前記第1の値となるように、前記第2測温抵抗体に流される電流値を決定し、前記電源部は、前記電流制御部により決定された前記第2測温抵抗体に流される前記電流値の電流を、前記第2測温抵抗体に流し、前記液面検知部は、前記第2測温抵抗体に流される前記電流値の変化幅が負の値であり、当該変化幅の絶対値が、前記第2の値以上であれば、前記液面は、前記第2測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置から、前記第2測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置に変化したことを検知し、前記第2測温抵抗体に流される前記電流値の変化幅が正の値であり、当該変化幅の絶対値が前記第2の値以上であれば、前記液面は、前記第2測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置から、前記第2測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置に変化したことを検知し、前記液面検知部は、前記第1測温抵抗体を用いた前記液面の位置の検知結果と、前記第2測温抵抗体を用いた当該液面の位置の検知結果とから、当該液面の位置を検知することができる。
【0023】
前記第2測温抵抗体は、鉛直方向に関して、前記第1測温抵抗体と前記温度測定体との間に配置され、前記液面検知部は、前記第1測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置に前記液面があると判断された場合、前記液面を上昇させるべき信号を出力し、前記液面検知部は、前記第2測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置に前記液面があると判断された場合、前記液面の上昇を停止させるべき信号を出力してもよい。
【0024】
前記第1測温抵抗体、前記第2測温抵抗体、及び前記温度測定体は、白金測温抵抗体であることができる。
【0025】
本発明の第2の局面に係る気化器は、上記の何れかの液面計が取り付けられ、収容する液体の液面が前記液面計により検知される容器を備え、気化させる液体が前記容器に収容される。
【0026】
本発明の第3の局面に係る液面検知方法は、測温抵抗体と、前記測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置に配置された温度測定体とを用いて液面を検知する方法であって、前記測温抵抗体に電流を流した状態で、前記測温抵抗体及び前記温度測定体の温度を検出するステップと、検出された前記測温抵抗体の温度と前記温度測定体の温度との温度差が予め定められた第1の値となるように、前記測温抵抗体に流される電流値を調整するステップと、前記測温抵抗体に流される電流値の、予め定められた一定時間内の変化幅から前記液面の位置を検知する検知ステップとを含み、前記検知ステップは、前記変化幅が負の値であり、当該変化幅の絶対値が、正の予め定められた第2の値以上であれば、前記液面は、前記測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置から、前記測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置に変化したことを検知するステップと、前記変化幅が正の値であり、当該変化幅の絶対値が前記第2の値以上であれば、前記液面は、前記測温抵抗体が配置された位置よりも低い位置から、前記測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置に変化したことを検知するステップとを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る液面計、それを備えた気化器及び液面検知方法によれば、使用する測温抵抗体の特性値のばらつきの影響を受けることなく、精度よく液面位置を検知することができる。
【0028】
測温抵抗体に流す電流値に上限を設けることにより、液相中にあるにもかかわらず変動幅が基準値を超えてしまうことによる誤検知を抑制することができる。また、測温抵抗体に流す電流値に下限を設けることにより、気相中にあるにもかかわらず変動幅が基準値を超えてしまうことによる誤検知を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る液面計、気化器及び液面検知方法の実施形態について、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、全図及び全実施形態を通じて、同一又は類似の構成部分には同符号を付した。
【0031】
図1に、本発明の実施に形態に係る液面計を備えた気化器の概略構造を示す。気化器は、液体を収容する容器1と、容器1を支持する支持部2と、液体供給装置(図示せず)から容器1に液体Lを供給するための液体供給管3と、容器1の壁面の異なる高さに配置された第1保護管4及び第2保護管5と、容器1内の液体Lを気化させるためのヒータ(図示せず)とを備えている。気化ガスは流量制御装置(図示せず)へ供給される。第1保護管4及び第2保護管5には、後述する測温抵抗体が封入され、温度を測定するために使用される。
図1では、液体Lの液面Sは、第1保護管4及び第2保護管5の間に位置している。液面Sは、液体Lの気化に伴い降下し、液体供給装置による液体Lの供給により、上昇する。液面Sの上方の空間は、気化ガスを含む気相Gである。
【0032】
図2に、本発明の実施の形態に係る液面計の概略構成を示す。本実施の形態に係る液面計20は、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12、制御部21、電源部22、電圧測定部23、記憶部24、タイマ25、及びクロック発生部26を備えている。
図2には図示していないが、液面計20は、各部に必要な電力を供給するための電源等、液面計として機能するために必要な構成要素をも備えている。
【0033】
第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12は何れも、日本工業規格(JIS)又はIEC規格で規定されたPt100に相当する白金測温抵抗体が用いられ、公称抵抗値(0℃の時)は100Ωである。白金測温抵抗体は、抵抗値と温度の関係がリニアに変化し、その変化率が大きく、再現性にも優れているため、測温抵抗体に適している。白金測温抵抗体は、一般に、白金抵抗素子、内部導線、絶縁物、保護管、端子などから構成され得る。
【0034】
図3を参照して、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12は、それぞれ第1保護管4及び第2保護管5に封入され、液相(液体)Lが収容された容器1に配置される。第2測温抵抗体R12は常に気相(気体)G中に配置されるように、第1測温抵抗体R11が配置される位置よりも高い位置に配置される。
図3では、初期液面S0は、第1測温抵抗体R11と第2測温抵抗体R12との間に位置している。液体Lが気化した気体が容器1から排出され、外部装置(流量制御装置等)に供給されることにより、液体Lの液面は、初期液面S0から降下する(降下した液面位置をSで示す)。
【0035】
制御部21は、液面計20全体を制御する。制御部21は、例えば、公知の半導体演算素子(CPU)及び半導体記憶素子(RAM等)により構成される。制御部21が実行する予め定められたプログラムは、記憶部24に記憶されている。液面計20の電源が投入されると、制御部21は、予め定められたプログラムを記憶部24から読出し、実行する。後述するように、制御部21は、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12により液面の変化を検出し、液面の位置に応じて、外部装置である液体供給装置が容器1内への液体の供給、又は供給の停止を行うことができるように、液体供給装置に液供給信号SGを出力する。
【0036】
電源部22は、制御部21から電流設定データを入力され、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12のそれぞれに、入力された電流設定データに応じた電流I11及びI12を流す。電源部22は、D/A変換器を備え、制御部21から受信したデジタルの電流設定データに応じたアナログの電流I11及びI12を生成する。電源部22は、2組の公知のD/Aコンバータ及びアンプを使用して構成することができる。
【0037】
電圧測定部23は、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12のそれぞれの両端の電圧V11及びV12を測定し、測定値V11及びV12を制御部21に出力する。電圧測定部23は、A/D変換器を備え、測定値V11及びV12は、アナログの電圧から生成されたデジタルデータである。電圧測定部23は、公知のデジタル電圧計ICを使用して、又は、2組の公知のアンプ及びA/Dコンバータを使用して構成することもできる。
【0038】
記憶部24は、制御部21が液面計20全体を制御するために必要なパラメータの初期値をも記憶している。制御部21は、上記のプログラムの実行直後に記憶部24から初期パラメータを読み出す。
【0039】
タイマ25は、入力されるクロックから時刻データを生成して、制御部21に出力する。クロック発生部26は、各部の動作に必要なクロックを生成し、各部に供給する。
【0040】
液面計20の動作原理を以下に示す。第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12は、通電されると温度が上昇する。白金測温抵抗体の抵抗値の温度直線性により、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12の両端の電圧V11及びV12から、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12のそれぞれの温度T1及びT2を算出することができる。具体的には、R1j(j=1又は2)の温度Tj(℃)は、0℃における抵抗値R1j(0)及び現在の電流値I1jを用いて、
Tj={(V1j/I1j)−R1j(0)}/(α×R1j(0))・・・(式1)
により算出できる。ここで、αは、抵抗値を温度の1次関数とした場合の温度係数(1/℃)である。
【0041】
白金測温抵抗体Pt100であれば、α=0.003851である。また、Pt100の0℃における抵抗値R1j(0)は100Ωであるので、V1j/I1j=Rjと表記すれば、上記の式1は、
Tj=(Rj−100)/0.3851・・・(式2)
と記載することもできる。
【0042】
第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12のうち、第2測温抵抗体R12には、微小な一定電流(例えば2mA)を流す。一方、第1測温抵抗体R11には、第2測温抵抗体R12よりも大きい電流(加熱電流)を流し、自己発熱により第1測温抵抗体R11を周囲温度より高温に保ち、T1−T2(T1>T2)が予め定められた値(例えば、T1−T2=10(℃))になるように、第1測温抵抗体R11に流す電流値を調整する(フィードバック制御)。第2測温抵抗体R12は気相中に配置されるのに対して、第1測温抵抗体R11は、液面の上下に伴う周囲環境(熱伝導性)の変化による影響を受ける。即ち、一定の電流を流した状態では、T1は、第1測温抵抗体R11が液相L中にあれば小さく(放熱効果が高い)、第1測温抵抗体R11が気相G中にあれば大きい(放熱効果が低い)。T1−T2が予め定められた値になるようにするには、第1測温抵抗体R11が液相L中にあれば電流値を大きくし、第1測温抵抗体R11が気相G中にあれば電流値を小さく調整することが必要である。したがって、T1−T2を予め定められた値に維持するために第1測温抵抗体R11に通電すべき電流値により、液面Sを特定することができる。
【0043】
具体的には、
図4に示す制御部21の機能ブロック図を参照して、温度検出部27は、電圧V1j(j=1又は2)及び上記の式1又は式2から、現在の温度Tj(j=1又は2)を算出し、算出結果を受けて電流制御部28は、T1−T2=ΔTが満たされるように、電流I11の値を変化させる。即ち、電流制御部28は、T1−T2>ΔTであれば電流I11を減少し、T1−T2<ΔTであれば電流I11を増大し、T1−T2=ΔTであれば現在の電流値を維持するように、電源部22を制御する。そして、温度検出部27、電流制御部28及び電源部22は、上記のフィードバック制御を繰返し、液面検知部29は、第1測温抵抗体R11の電流値の変動を予め定められた期間記憶し、記憶されたデータを用いて第1測温抵抗体R11が液相中にあるか気相中にあるかを特定し、現在の液面Sを特定する。即ち、液面検知部29は、第1測温抵抗体R11が配置された位置よりも高い位置にある液面、又は、第1測温抵抗体R11が配置された位置よりも低い位置にある液面を検知する。液面検知部29は、特定された液面の位置に応じて液体供給装置を制御する。
【0044】
図5に、容器1内の液体の液面位置の変化と、それに伴う第1測温抵抗体R11の電流値I11の変化を模式的に示す。
図5は、
図3に示したように液面S0が、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12の間に位置する状態から、液体が気化することにより液面が降下し、一旦、第1測温抵抗体R11が気相中に位置するようになり、その後、液体供給装置から液体が供給されて、再度、第1測温抵抗体R11が液相中に位置するようになる場合の第1測温抵抗体R11の電流変化を示している。
図5の最下の記載は、第1測温抵抗体R11の周囲環境を表す。気相中に配置された第2測温抵抗体R12の電流値I12は、時間経過によらず一定の微弱電流I0(例えば2mA)に維持されている。
【0045】
最初、第1測温抵抗体R11は液相中にあり、第2測温抵抗体R12に対して予め定められた温度差の高温に維持するために、第1測温抵抗体R11の電流I11の値は大きい。
図5では、上限値Imaxに制限されている。即ち、第1測温抵抗体R11には、上限値Imaxを超える電流は流さない。その後、しばらく一定の電流値Imaxが維持される(この間、第1測温抵抗体R11は液相中にある)が、時刻t1になると、電流I11の値が減少し始める。これは、液体が気化して液面が降下し、第1測温抵抗体R11が気相中に位置するようになるからである。第1測温抵抗体R11が気相中に位置するようになると、第1測温抵抗体R11を、第2測温抵抗体R12に対して予め定められた温度差の高温に維持するために、第1測温抵抗体R11の電流I11は小さい電流値で十分になる。
図5では、下限値Iminに制限されている。即ち、第1測温抵抗体R11には、下限値Iminよりも小さい電流は流さない。
【0046】
第1測温抵抗体R11は安定状態(例えば、液相中にあり比較的大電流が通電されている状態)から、別の安定状態(例えば、気相中にあり比較的小電流が通電されている状態)に遷移する間、電流値が過渡的に変化する。第1測温抵抗体R11の周囲環境の変化(液相中から気相中への変化、又はその逆の変化)による第1測温抵抗体R11の電流値の変化を、過渡電流値変化という。
【0047】
従来は、予め定められたしきい値を設定し、測温抵抗体の電流値(瞬間値)がしきい値Ithより大きければ、液相中にあると判断していた。測温抵抗体の電流値(瞬間値)がしきい値Ithより小さければ、気相中にあると判断し、液面が、測温抵抗体よりも低下したと判断していた。
【0048】
これに対して、本実施の形態では、予め定められた期間Δt、電流値I11を記憶し、期間Δt内のI11の過渡電流値変化の幅ΔIを算出し、その幅を予め定められたしきい値ΔAと比較する。具体的には、過渡電流値変化が減少であり、その幅ΔI(ΔI<0)が、ΔI≦−ΔAを満たせば、第1測温抵抗体R11の周囲環境は、液相から気相に変化したと判断する。
【0049】
図5では、時刻t1から電流I11が減少し始めるが、時刻t2になるまでは、変化幅が小さく、ΔI>−ΔAであり、時刻t2になると、ΔI≦−ΔAとなり、第1測温抵抗体R11が気相中にあると判断される。第1測温抵抗体R11が気相中にあると判断されたことを受けて、液体供給装置から液体を気化器内に供給することができる。
【0050】
液体が気化器内に供給されると、液面が上昇し、第1測温抵抗体R11は再度、液相中に位置することになる。これは、
図5において、時刻t3以降の電流値I11の増大として示されている。時刻t3から電流値I11が増大し始めるが、時刻t4になるまでは、変化幅が小さく、ΔI<+ΔAであり、時刻t4になると、ΔI≧+ΔAとなり、第1測温抵抗体R11の周囲環境は、気相から液相に変化したと判断される。第1測温抵抗体R11が気相中にあると判断されたことを受けて、液体の供給を停止することができる。
【0051】
したがって、予め定められたしきい値ΔAを適切に設定すれば、過渡電流値変化の幅ΔIと、予め定められたしきい値ΔAとを、それらの符号を含めて比較することにより、第1測温抵抗体R11の現在の周囲環境(液相中又は気相中)を特定することができる。
【0052】
測温抵抗体が予め定められた温度差を維持するために通電すべき電流量は、同じ周囲環境であっても、測温抵抗体によってばらつく。したがって、電流値の瞬間値をしきい値と比較する方法では、課題として上記したのと同様に、測温抵抗体の特性のばらつき(例えば、高めの値を出力するものが使用される場合、又は、低めの値を出力するものが使用される場合)の影響を受ける。本発明では、電流値の瞬間値を使用するのではなく、予め定められた期間中の1つの測温抵抗体(上記では、第1測温抵抗体R11)の測定データ(電流値)の変化幅を用いるので、測温抵抗体の特性のばらつきの影響を受けることがなく、精度よく液相/気相を判断することができる。
【0053】
なお、第1測温抵抗体R11の電流I11を、上限値Imaxより大きい値に設定しないのは、第1測温抵抗体R11に大電流が流れることを防止するためと、第1測温抵抗体R11が液相中にあるにもかかわらず変動幅が基準値を超えてしまうことによる誤検知を防止するためである。また、第1測温抵抗体R11の電流I11を、下限値Iminより小さい値に設定しないのは、第1測温抵抗体R11が気相中にあるにもかかわらず変動幅が基準値を超えてしまうことによる誤検知を防止するためである。したがって、上限値Imax及び下限値Iminを設けることが好ましいが、液面の検知に不可欠ではない。
【0054】
図6に、制御部21が行う処理のフローチャートを示す。以下、
図6を参照して、液面計20全体の動作をより具体的に説明する。ここでは、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12が
図3に示したように配置され、初期液面S0が、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12の間にあるとする。
【0055】
ステップ30において、制御部21は、記憶部24から制御パラメータ(初期値等)を読み出し、制御パラメータのうち、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12の初期電流値を特定するためのデータを、電流設定データとして電源部22に出力する。
【0056】
また、制御部21は、記憶部24に変数領域を確保する。変数としては、第1測温抵抗体R11の周囲環境を表す変数がある。ここでは、液相であれば“0”、気相であれば“1”がセットされるとする。
【0057】
制御パラメータには、例えば、次のようなものが含まれる。
・第1測温抵抗体R11の周囲環境を表す変数の初期値:ここでは、“0”が設定されているとする。
・温度差の基準値ΔT:ΔTは正の値であり、例えば10℃である。
・電流変化幅の基準値ΔA:ΔAは正の値であり、例えば6mAである。
・第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12の電流I11及びI12の初期値:例えば、I11=25(mA)、I12=2(mA)である。
・電流I11の上限値Imax及び下限値Imin:例えば、Imax=30(mA)、Imin=16(mA)である。
・第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12の0℃における抵抗値R11(0)及びR12(0):Pt100であれば、何れも100Ωである。
【0058】
第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12の初期電流値のデータが入力された電源部22は、内部のD/A変換器により、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12に、対応する電流(アナログ)I11及びI12を流す。ここで、電流I12は、上記したように微小な一定電流(例えば2mA)であり、その値が維持される。
【0059】
ステップ31において、制御部21は、電圧測定部23から、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12のそれぞれの両端の電圧V11及びV12(アナログ)がA/D変換されたデジタルデータを取得する。電圧測定部23は、予め定められたタイミング(例えば、50ミリ秒間隔)で、上記したように第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12のそれぞれの両端の電圧V11及びV12(アナログ)を測定し、A/D変換器によりデジタルデータに変換して、制御部21に出力する。
【0060】
ステップ32において、制御部21は、ステップ31で取得した電圧V11及びV12から、第1測温抵抗体R11及び第2測温抵抗体R12のそれぞれの温度T1及びT2を、上記の式1又は式2により算出する。
【0061】
ステップ33において、制御部21は、ステップ32で求めた温度T1及びT2から、第1測温抵抗体R11に流すべき電流値を決定する。具体的には、制御部21は、T1−T2=ΔTになるようにフィードバック制御するために、第1測温抵抗体R11に流す電流値を決定する。例えば、T1−T2<ΔTであれば、制御部21は、現在の電流値I11よりも大きい値であって、上限値Imax以下の値を次に流すべき第1測温抵抗体R11の電流値として決定する。T1−T2>ΔTであれば、制御部21は、現在の電流値I11よりも小さい値であって、下限値Imin以上の値を次に流すべき第1測温抵抗体R11の電流値として決定する。T1−T2=ΔTであれば、制御部21は、現在の電流値I11と同じ値を次に流すべき第1測温抵抗体R11の電流値として決定する。
【0062】
ステップ34において、制御部21は、ステップ33で決定された電流値を記憶部24に記憶し、その電流値に対応する電流設定データを電源部22に出力する。これにより、電源部22は、上記したように、入力された電流設定データに応じた電流を第1測温抵抗体R11に流す。このとき、第2測温抵抗体R12の電流値は、初期値が維持される。後述するように、ステップ34が繰り返されることにより、予め定められた期間Δt、電流値I11が記憶される。
【0063】
ステップ35において、制御部21は、液面位置を判定する時間(判定時間)になったか否かを判断する。具体的には、測定開始時刻から、又は、前回の液面位置を判定した時刻から予め定められた時間が経過したか否かを判断する。予め定められた時間は例えば500ミリ秒である。予め定められた時間が経過した(判定時間になった)と判断された場合、制御はステップ36に移行する。予め定められた時間が経過していない(判定時間になっていない)と判断された場合、制御はステップ31に戻り、上記のステップ31〜34が繰り返され、50ミリ秒間隔の第1測温抵抗体R11の電流値が記憶部24に記憶される。ここでは、記憶部24の容量のうち、一定期間の測定値(電流値)を記憶できる容量が使用されるとし、測定データがその容量を超える場合、新たな測定データは、最も古いデータに上書き記憶される。例えば、測定データを記憶する一定期間は30秒である。記憶されている測定データは全て、後述するステップ36における電流値の変化の算出に使用される。即ち、Δt=30(秒)である。
【0064】
予め定められた時間の経過は、予めタイマ25から現在時刻を取得して基準時刻として記憶しておき、その後タイマ25から取得した時刻を基準時刻と比較することにより行うことができる。予め定められた時刻が経過したと判定された場合には、記憶している基準時刻を、その時の時刻で更新することにより、繰返し予め定められた時間の経過を判定することができる。
【0065】
ステップ36において、制御部21は、記憶部24に記憶されている電流値を読出し、電流値の変化(過渡電流値変化)の最大変化幅ΔIを、符号を含めて算出する。符号は、最大変化幅となる2つの電流値の大小と、それらを測定した時間の前後関係から決定する。最大変化幅となる2つの電流値のうち、測定時間が後の値が大きければ、符号は「正」とし、測定時間が後の値が小さければ、符号は「負」とする。
【0066】
ステップ37において、制御部21は、ステップ36で決定された電流値の最大変化幅ΔIを用いて、第1測温抵抗体R11が液相中にあるか、気相中にあるかを判定する。具体的には、制御部21は、ΔI>0であり、ΔI≧+ΔAであれば、第1測温抵抗体R11の周囲環境が気相から液相に変化したと判断し、ΔI<0であり、ΔI≦−ΔAであれば、第1測温抵抗体R11の周囲環境が液相から気相に変化したと判断する。変化後の周囲環境が、液相であれば、周囲環境を表す変数に“0”がセットされ、気相であれば、周囲環境を表す変数に“1”がセットされる。制御部21は、ΔIが上記のどちらの条件をも満たさない場合には、何もせず、周囲環境を表す変数に記憶されている値が維持される。
【0067】
ステップ38において、制御部21は、周囲環境を表す変数を読出し、その値に応じた液供給信号SGを出力する。具体的には、周囲環境を表す変数が“1”であれば、第1測温抵抗体R11が気相中にあるので、制御部21は、液体供給装置に容器1に液体Lを供給させるレベル(例えば、ハイレベル)の液供給信号SGを出力する。周囲環境を表す変数が“0”であれば、第1測温抵抗体R11が液相中にあるので、制御部21は、液体供給装置に容器1への液体Lの供給を停止させるレベル(例えば、ローレベル)の液供給信号SGを出力する。
【0068】
ステップ38の後、制御はステップ31に戻る。ステップ31〜38の一連の処理は、液面計20の電源がオフされることにより終了する。
【0069】
以上、ステップ30〜38により、液面計20は、500ミリ秒毎に、その前の30秒間、50ミリ秒間隔で測定されたデータを用いて、第1測温抵抗体R11の位置を基準として、液面位置を検知することができる。したがって、液面計20は、500ミリ秒毎に繰返し液面の位置を監視し、液面Sが、第1測温抵抗体R11が配置された位置よりも低下すれば、外部の液体供給装置から容器1内に液体を供給させ、液面Sが、第1測温抵抗体R11が配置された位置を超えると、外部の液体供給装置から容器1内への液体供給を停止させることが可能となる。これにより、容器1内の液体Lの液面を適切な範囲に維持することができる。
【0070】
上記では、2つの測温抵抗体を使用する場合を説明したがこれに限定されない。用途に応じて、3つ以上の測温抵抗体を使用してもよい。例えば、4つの測温抵抗体を使用し、そのうちの1つを、基準温度を測定するために気相中に配置し、残りの3つを、それぞれ異なる高さに配置すれば、液面の下限、上限、及びオーバーフローを検知することができる。そのような使用例の実験結果を
図7に示す。
【0071】
実験では、気相中に配置され、基準温度を測定するための測温抵抗体と、それが配置された位置よりも低い位置で、異なる高さに配置された3つの測温抵抗体とを、容器内に配置した。3つの測温抵抗体のうち、最も高い位置に配置された測温抵抗体は、液面のオーバーフローを検知するためのものである。最も低い位置に配置された測温抵抗体は、液面が下限位置に達したことを検知するためのものである。それらの中間に配置された測温抵抗体は、液面が上限位置に達したことを検知するためのものである。
【0072】
容器が空の状態で、容器内の温度を約200℃に設定した状態で、液体の供給を開始し、液面がオーバーフロー検知用測温抵抗体の上に位置するまで液体を供給した後、液体の供給を停止し、液体の気化ガスを外部に排出した。その間、3つの測温抵抗体の各電流値を、
図6と同様に、上限値及び下限値の間で制御した。
【0073】
図7において、「基準温度」と付記したグラフは、基準温度を測定するための測温抵抗体の検出温度である(左側のスケール)。「下限検知用」、「上限検知用」及び「オーバーフロー検知用」と付記したグラフは、それぞれに対応する測温抵抗体の電流値である(右側のスケール)。
【0074】
液体が供給されると、液面は上昇し、順次3つの測温抵抗体が配置された位置よりも高い位置になり、基準温度に対して予め定められた温度差を維持するために、3つの測温抵抗体の電流値は順次増大する(約2分経過後)。したがって、3つの測温抵抗体のそれぞれの電流値の最大変化幅ΔI(ΔI>0)は、電流変化量の基準値ΔAよりも大きくなり(ΔI≧+ΔA)、気相中から液相中に変化したことが検知され、液面が、オーバーフロー検知用測温抵抗体が配置された位置よりも上に位置したと判断される。このとき、基準温度が低下しているのは、比較的低温の液体が供給されたことによるものである。
【0075】
その後、時間経過とともに、気化により液面が降下し、約4分経過した頃、オーバーフロー検知用測温抵抗体の電流値が急激に低下し、その最大変化幅ΔI(ΔI<0)は、ΔI≦−ΔAとなり、オーバーフロー検知用測温抵抗体が液相中から気相中に出た(液面位置が、オーバーフロー検知用測温抵抗体が配置された位置よりも低くなった)ことが検知される。この間、上限検知用測温抵抗体及び下限検知用測温抵抗体の電流値も変動するが、変動幅の絶対値はΔAよりも小さく、それらの周囲環境は変化していない(何れも液相中にある)と判断することができる。
【0076】
時間経過とともに、気化により液面がさらに降下し、約5分半経過した頃、上限検知用測温抵抗体の電流値が急激に低下し、その最大変化幅ΔI(ΔI<0)は、ΔI≦−ΔAとなり、上限検知用測温抵抗体が液相中から気相中に出た(液面位置が、上限検知用測温抵抗体が配置された位置よりも低くなった)ことが検知される。この間、下限検知用測温抵抗体及びオーバーフロー検知用測温抵抗体の電流値も変動するが、変動幅の絶対値はΔAよりも小さく、それらの周囲環境は変化していない(オーバーフロー検知用測温抵抗体は気相中にあり、下限検知用測温抵抗体は液相中にある)と判断することができる。
【0077】
その後、時間経過とともに、気化により液面がさらに降下し、約8分半経過した頃、下限検知用測温抵抗体の電流値が急激に低下し、その最大変化幅ΔI(ΔI<0)は、ΔI≦−ΔAとなり、下限検知用測温抵抗体が液相中から気相中に出た(液面位置が、下限検知用測温抵抗体が配置された位置よりも低くなった)ことが検知される。この間、上限検知用測温抵抗体及びオーバーフロー検知用測温抵抗体の電流値も変動するが、変動幅の絶対値はΔAよりも小さく、それらの周囲環境は変化していない(何れも気相中にある)と判断することができる。
【0078】
このように、3つ以上の測温抵抗体を異なる高さに配置することにより、液体の気化及び供給による液面の変化をより細かく検知することができ、より正確に液面位置を制御することができる。
【0079】
上記に挙げた数値は、一例に過ぎず、それに限定する意図ではない。判断に使用される制御パラメータ(ΔA、ΔT、Imax、Imin)は、使用する液体の種類、気化器中の気相温度及び液相温度等を考慮して適宜決定すればよい。サンプリング時間、判定時間、Δt、及び、その間のデータ記憶容量等も同様に決定すればよい。
【0080】
図2に示した構成は一例であり、上記の動作原理(測温抵抗体の過渡電流値変化幅による判断)にしたがって、測温抵抗体の周囲環境(液相又は気相)を判断し、液面位置を検知できる構成であればよい。
【0081】
また、制御部21が、記憶部24から読出したプログラムを実行する場合を説明したが、制御部21をASIC、FPGA等の専用ICにより実現してもよい。その場合、制御部21を1つのICにより実現しても、複数のICにより実現してもよい。例えば、
図4に示した機能ブロックのそれぞれをICにより実現してもよい。
【0082】
上記では、制御の開始時に液相に位置する(周囲環境を表す変数の初期値が“0”)と仮定して、液面を検知し、液体の供給を制御する場合を説明した。初期の周囲環境を液相とすることは、液体の過剰供給を防止するためには好ましいが、これに限定されない。制御開始時に気相に位置する(周囲環境を表す変数の初期値が“1”)と仮定してもよい。
【0083】
上記した、
図6のフローチャートは一例であり、種々変更され得る。例えば、マルチタスクが可能な環境であれば、データを測定し記憶する処理ステップ31〜34)と、液相/気相を判断する処理(ステップ36〜38)とを別のプログラムとして実現してもよい。複数のプログラムは、割り込み処理等により、相互にタイミングを調整しながら、並列して実行することができる。
【0084】
上記では、タイマ25から現在時刻を取得して、経過時間を判断する場合を説明したが、これに限定されない。制御部21は、クロック発生部26から供給されるクロックCLKの数をカウントすることにより、経過時間を判断してもよい。
【0085】
また、一定の温度差ΔTになるように測温抵抗体の電流値をフィードバック制御する方法には任意の方法を採用することができる。
【0086】
また、温度差ΔTは、予め定められた幅を持った値であってもよい。即ち、T1−T2がΔTに等しいか否かは、予め定められた誤差の範囲内で判断されてもよい。例えば、δを微小な値として、T1−T2=ΔTは、ΔT−δ<T1−T2<ΔT+δを意味するとしてもよい。
【0087】
基準温度測定用の第2測温抵抗体R12は、測温抵抗体に限定されず、温度を測定可能なもの(温度測定体)であればよい。例えば、公知の熱電対であってもよい。熱電対を使用して温度を測定する場合には冷接点補償が必要であるが、それには周知の技術(例えば、中村黄三、「数mVの直流信号を1万分の1まで高精度に分解」、トランジスタ技術SPECIAL、CQ出版社、2015年7月1日発行、No.131、pp.47-62)を使用すればよい。冷接点補償回路を内蔵したA/DコンバータIC(例えば、MAXIM社製のMAX6675又はMAX31855)を使用してもよい。
【0088】
また、基準温度は、気化器(容器)内であれば、どの場所で測定されてもよく、センサ(例えば、測温抵抗体が封入された棒状の保護管)を水平に固定し、容器の中央から外れた位置の温度を測定してもよい。また、センサの途中の場所、又は、気化器内部の内面上部若しくは側面等の温度を測定してもよい。
【0089】
気化器には、液体貯蔵用のタンク等も含まれる。液体供給系(液体供給装置)のタンクであれば、常温で使用されるものであっても、高温で使用されるものであってもよい。それらにも本願発明を適用可能である。
【0090】
今回開示された実施の形態は例示であり、本発明は上記した実施の形態に制限されない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌して、特許請求の範囲の各請求項により特定され、各請求項に記載された文言の均等の範囲内の全ての変更を含む。