(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されていないが、送受信装置は、質問波と応答波との間の時間領域での相互相関を算出してもよい。すると、送受信装置は、時間領域での相互相関のピーク時間に基づいて、ピーク時間に等しいSAW遅延時間を有する無線応答装置を識別することができる。そして、送受信装置は、時間領域での相互相関のピーク時間での振幅に基づいて、無線応答装置における外部からの刺激の有無を判定することができる。
【0008】
しかし、実際には、送受信アンテナ間で、質問波が回り込む。ここで、回り込み波は、短距離の空間伝搬による減衰を受けるのみであるため、電力レベルが高い。一方で、応答波は、長距離の空間伝搬及びSAW伝搬による減衰を受けるため、電力レベルが低い。なお、応答波について、長距離の空間伝搬の時間は、SAW伝搬の時間よりはるかに短い。
【0009】
すると、送受信装置は、質問波と受信波(応答波及び回り込み波を含む。)との間の時間領域での相互相関を算出することになる。よって、送受信装置は、時間領域での相互相関のピーク時間が、ピーク時間に等しいSAW遅延時間を有する無線応答装置によるものであるのか、質問波の送受信アンテナ間での回り込みによるものであるのか、識別することができない。そして、送受信装置は、時間領域での相互相関のピーク時間での振幅が、無線応答装置における外部からの刺激の有無によるものであるのか、質問波の送受信アンテナ間での回り込みによるものであるのか、識別することができない。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、センサ情報取得装置において、質問波の送受信アンテナ間での回り込みがあるとしても、センサ情報生成装置から受信した応答波からセンサ情報生成装置が生成したセンサ情報を高精度で抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、レーダシステムで用いられるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式を、センサ情報生成・取得システムで用いることとした。FMCW方式を用いるにあたり、信号長Tを長くすることで、及び/又は、帯域制限範囲内で信号帯域幅ΔFを広くすることで、パルス圧縮比TΔFを上げて、ノイズ耐性を高めることができる。帯域制限をさらに施すことにより、電力レベルを抑え過ぎなくても、無線チャネルマスク規格を満たすことができる。
【0012】
ここで、FMCW質問波のスペクトルは、信号帯域幅において、ほぼ平坦であるといえる。よって、FMCW質問波の自己相関は、信号帯域幅の逆数の自然数倍の時間において、0になるはずである。そして、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の相互相関は、信号帯域幅の逆数の自然数倍の時間において、0になるはずである。なぜならば、FMCW回り込み波の空間伝搬時間は、FMCW応答波の空間伝搬時間+意図的に施された遅延時間(例えば、SAW遅延時間)と比べて、ほぼ0であるといえるからである。
【0013】
そこで、センサ情報生成装置が施す遅延の時間を、信号帯域幅の逆数の自然数倍の時間に等しくする。すると、FMCW質問波とFMCW受信波(FMCW応答波及びFMCW回り込み波を含む。)との間の相互相関は、センサ情報生成装置が施す遅延の時間において、FMCW回り込み波からの寄与に影響されず、FMCW応答波からの寄与のみに影響されるはずである。よって、センサ情報取得装置において、FMCW質問波の送受信アンテナ間での回り込みがあるとしても、センサ情報生成装置から受信したFMCW応答波から、センサ情報生成装置が生成したセンサ情報を高精度で抽出することができるはずである。
【0014】
しかし、実際には、FMCW質問波のスペクトルは、信号帯域中心周辺においては、平坦なレベルを維持しているが、信号帯域端においては、平坦なレベルから減衰していることがある。すると、FMCW質問波の自己相関は、全信号帯域幅の逆数の自然数倍の時間において、0にならない。そして、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の相互相関は、全信号帯域幅の逆数の自然数倍の時間において、0にならない。
【0015】
よって、センサ情報生成装置が施す遅延の時間を、全信号帯域幅の逆数の自然数倍の時間に等しくしても、上述の効果を奏することができない。つまり、FMCW質問波とFMCW受信波(FMCW応答波及びFMCW回り込み波を含む。)との間の相互相関は、センサ情報生成装置が施す遅延の時間において、FMCW回り込み波からの寄与にも影響される。そして、センサ情報取得装置において、FMCW質問波の送受信アンテナ間での回り込みがあるときには、センサ情報生成装置から受信したFMCW応答波から、センサ情報生成装置が生成したセンサ情報を高精度で抽出することができない。
【0016】
そこで、本開示は、FMCW質問波のスペクトルのうち、平坦なレベルを維持している信号帯域中心周辺のスペクトルのみを切り出して、時間領域での相関関数を算出することとした。すると、FMCW質問波の自己相関は、平坦な帯域幅の逆数の自然数倍の時間において、0になる。そして、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の相互相関は、平坦な帯域幅の逆数の自然数倍の時間において、0になる。
【0017】
よって、センサ情報生成装置が施す遅延の時間を、平坦な帯域幅の逆数の自然数倍の時間に等しくすれば、上述の効果を奏することができる。つまり、FMCW質問波とFMCW受信波(FMCW応答波及びFMCW回り込み波を含む。)との間の相互相関は、センサ情報生成装置が施す遅延の時間において、FMCW回り込み波からの寄与には影響されない。そして、センサ情報取得装置において、FMCW質問波の送受信アンテナ間での回り込みがあるとしても、センサ情報生成装置から受信したFMCW応答波から、センサ情報生成装置が生成したセンサ情報を高精度で抽出することができる。
【0018】
なお、平坦な帯域幅は、全信号帯域幅より狭い。よって、センサ情報生成装置が施す遅延の時間の分解能は、本開示では見かけ上悪化しているように思われる。しかし、FMCW回り込み波からの寄与の影響は、本開示ではほぼ見られない。よって、センサ情報生成装置が施す遅延の時間の分解能は、本開示では実質的に向上することができる。
【0019】
具体的には、本開示は、センサ情報をセンサ情報生成装置から取得するセンサ情報取得装置であって、帯域制限されたFMCW質問波を、前記センサ情報生成装置に送信する質問波送信部と、前記センサ情報による変調と、前記FMCW質問波のスペクトルが帯域中心周辺で平坦である帯域幅の逆数の自然数倍の時間だけの遅延と、が前記FMCW質問波に施されたFMCW応答波を、前記センサ情報生成装置から受信する応答波受信部と、前記FMCW質問波のスペクトルが帯域中心周辺で平坦である帯域幅において、前記FMCW質問波と、前記FMCW応答波及びFMCW回り込み波を含むFMCW受信波と、の間の時間領域での相互相関を算出する相互相関算出部と、前記時間領域での相互相関の振幅がピークをなす0以外の時間において、及び/又は、前記FMCW質問波のスペクトルが帯域中心周辺で平坦である帯域幅の逆数の自然数倍の時間において、前記時間領域での相互相関の振幅及び/又は位相を算出することにより、前記FMCW受信波のうち前記FMCW回り込み波を除く前記FMCW応答波から、振幅変調及び/又は位相変調に用いられた前記センサ情報を抽出するセンサ情報抽出部と、を備えることを特徴とするセンサ情報取得装置である。
【0020】
また、本開示は、センサ情報をセンサ情報取得装置に提供するセンサ情報生成装置であって、帯域制限されたFMCW質問波を、前記センサ情報取得装置から受信する質問波受信部と、前記センサ情報による変調を、前記FMCW質問波に施す質問波変調部と、前記FMCW質問波のスペクトルが帯域中心周辺で平坦である帯域幅の逆数の自然数倍の時間だけの遅延を、前記FMCW質問波に施す質問波遅延部と、前記センサ情報による変調と、前記FMCW質問波のスペクトルが帯域中心周辺で平坦である帯域幅の逆数の自然数倍の時間だけの遅延と、が前記FMCW質問波に施されたFMCW応答波を、前記センサ情報取得装置に送信する応答波送信部と、を備えることを特徴とするセンサ情報生成装置である。
【0021】
また、本開示は、以上に記載のセンサ情報取得装置と、以上に記載のセンサ情報生成装置と、を備えることを特徴とするセンサ情報生成・取得システムである。
【0022】
この構成によれば、センサ情報取得装置が、時間領域での相関関数を算出する帯域幅を適切に設定するとともに、センサ情報生成装置が、意図的に施す遅延時間(例えば、SAW遅延時間)を適切に設定することにより、システム全体として、上述の効果を奏することができる。つまり、センサ情報取得装置において、FMCW質問波の送受信アンテナ間での回り込みがあるとしても、センサ情報生成装置から受信したFMCW応答波から、センサ情報生成装置が生成したセンサ情報を高精度で抽出することができる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本開示によれば、センサ情報取得装置において、質問波の送受信アンテナ間での回り込みがあるとしても、センサ情報生成装置から受信した応答波からセンサ情報生成装置が生成したセンサ情報を高精度で抽出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0026】
(本開示のセンサ情報生成・取得システムの概要)
本開示のセンサ情報生成・取得システムの概要を
図1に示す。センサ情報生成・取得システムSは、センサ情報取得装置1及びセンサ情報生成装置2−1、2−2、2−3から構成される。センサ情報生成・取得システムSは、例えば、橋梁Bの振動を検出する。センサ情報取得装置1は、例えば、橋梁Bの路肩に設置される。各センサ情報生成装置2−1、2−2、2−3は、例えば、橋梁Bの各車線の直下に設置される。
【0027】
センサ情報取得装置1は、センサ情報生成装置2−1、2−2、2−3に質問波を送信する。各センサ情報生成装置2−1、2−2、2−3は、センサ情報取得装置1から質問波を受信し、橋梁Bの各車線の振動に応じた変調及び各所定時間だけの遅延(例えば、SAW遅延)を施された質問波を、センサ情報取得装置1に各応答波として送信する。センサ情報取得装置1は、各センサ情報生成装置2−1、2−2、2−3から各応答波を受信し、橋梁Bの各車線の振動に応じた変調及び各所定時間だけの遅延(例えば、SAW遅延)を施された各応答波から、橋梁Bの各車線の振動の情報を抽出する。橋梁Bの各車線の振動の情報は、直接に、又は、インターネットI等を介して、管理者に通知される。
【0028】
このように、各センサ情報生成装置2−1、2−2、2−3が、各所定時間だけの遅延(例えば、SAW遅延)を質問波に施すことにより、センサ情報取得装置1は、各センサ情報生成装置2−1、2−2、2−3を識別することができる。そして、各センサ情報生成装置2−1、2−2、2−3が、橋梁Bの各車線の振動に応じた変調を質問波に施すことにより、センサ情報取得装置1は、橋梁Bの各車線の振動の情報を応答波から抽出することができる。さらに、各センサ情報生成装置2−1、2−2、2−3は、質問波及び橋梁Bの各車線の振動に応じて、パッシブに応答するのみであり、無電源で動作することができ、橋梁Bの各車線の直下での設置や保守を容易にすることができる。
【0029】
本開示では、レーダシステムで用いられるFMCW方式を、センサ情報生成・取得システムSで用いることとした。FMCW方式を用いるにあたり、信号長Tを長くすることで、及び/又は、帯域制限範囲内で信号帯域幅ΔFを広くすることで、パルス圧縮比TΔFを上げて、ノイズ耐性を高めることができる。帯域制限をさらに施すことにより、電力レベルを抑え過ぎなくても、無線チャネルマスク規格を満たすことができる。
【0030】
本開示のセンサ情報取得装置の構成を
図2に示す。センサ情報取得装置1は、質問波送信部11、応答波受信部12、相互相関算出部13及びセンサ情報抽出部14から構成される。相互相関算出部13は、FFT算出部131、帯域中心切出部132、複素共役部133、FFT算出部134、帯域中心切出部135、スペクトル乗算部136及びIFFT算出部137から構成される。センサ情報抽出部14は、ピーク検出部141、振幅/位相算出部142及び振動等情報抽出部143から構成される。
【0031】
本開示のセンサ情報生成装置の構成を
図3に示す。N台のセンサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが設置される。センサ情報生成装置2−1は、質問波受信部21−1、質問波変調部22−1、質問波遅延部23−1及び応答波送信部24−1から構成される。・・・センサ情報生成装置2−Nは、質問波受信部21−N、質問波変調部22−N、質問波遅延部23−N及び応答波送信部24−Nから構成される。
【0032】
質問波送信部11は、帯域制限されたFMCW質問波を、センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nに送信する。質問波受信部21−1、・・・、21−Nは、帯域制限されたFMCW質問波を、センサ情報取得装置1から受信する。
【0033】
各質問波変調部22−1、・・・、22−Nは、各センサ情報による変調を、FMCW質問波に施す。各センサ情報として、例えば、振動、圧力、温度及び湿度等の情報(より具体的には、橋梁Bの各車線の振動の情報)が挙げられる。各質問波遅延部23−1、・・・、23−Nは、各所定時間T
1、・・・、T
Nだけの遅延を、FMCW質問波に施す。各質問波遅延部として、例えば、電磁波を音波等に変換し、音波等を伝搬させ、音波等を電磁波に再変換する、音波等伝搬回路(より具体的には、SAW遅延回路)が挙げられる。
【0034】
各応答波送信部24−1、・・・、24−Nは、各センサ情報による変調と、各所定時間T
1、・・・、T
Nだけの遅延と、がFMCW質問波に施された各FMCW応答波を、センサ情報取得装置1に送信する。応答波受信部12は、各センサ情報による変調と、各所定時間T
1、・・・、T
Nだけの遅延と、がFMCW質問波に施された各FMCW応答波を、各応答波送信部24−1、・・・、24−Nから受信する。
【0035】
実際には、質問波送信部11と応答波受信部12と間で、FMCW質問波が回り込む。ここで、FMCW回り込み波は、短距離の空間伝搬による減衰を受けるのみであるため、電力レベルが高い。一方で、各FMCW応答波は、長距離の空間伝搬及び各質問波遅延部23−1、・・・、23−Nによる減衰を受けるため、電力レベルが低い。なお、各FMCW応答波について、
図8、10、12、14、16で示すように、長距離の空間伝搬の時間は、各質問波遅延部23−1、・・・、23−Nの伝搬の時間よりはるかに短い。
【0036】
相互相関算出部13は、FMCW質問波と、各FMCW応答波及びFMCW回り込み波を含むFMCW受信波と、の間の時間領域での相互相関を算出する。センサ情報抽出部14は、FMCW受信波のうちFMCW回り込み波を除く各FMCW応答波から、各変調に用いられた各センサ情報を抽出する。相互相関算出部13及びセンサ情報抽出部14については、以下の段落で比較例と本開示とを比較しながら詳述する。
【0037】
以下の段落では、等価低域系を用いて説明する。本開示の帯域制限前のFMCW質問波を
図4に示す。質問波送信部11は、1msecにわたり−500kHzから+500kHzまで、振幅を一定にしながら周波数を掃引することにより、
図4に示したFMCW質問波を生成する。本開示の帯域制限後のFMCW質問波を
図5に示す。質問波送信部11は、
図4に示したFMCW質問波に対して、信号帯域外の電力を減らす窓関数を時間領域で乗算することにより、
図5に示したFMCW質問波を生成する。信号帯域外の電力を減らす窓関数として、Cosine−Tukey窓関数、Hamming窓関数、Hanning窓関数及びBlackmann窓関数等が挙げられる。本開示のFMCW質問波のスペクトルを
図6に示す。
図6の縦軸は、FMCW質問波のスペクトルの電力レベルを対数表示dBで示す。FMCW質問波のスペクトルの電力レベルは、後述する数1、5に記載のU(k)に比例する。帯域制限後の信号帯域幅は、1MHzである。
【0038】
図6に示したように、FMCW質問波のスペクトルは、信号帯域幅1MHzにおいて、信号帯域端を除いて、ほぼ平坦であるといえる。よって、FMCW質問波の自己相関は、信号帯域幅1MHzの逆数1μsecの自然数1、・・・、N倍の時間1、・・・、Nμsecにおいて、0になるはずである。そして、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の相互相関は、信号帯域幅1MHzの逆数1μsecの自然数1、・・・、N倍の時間1、・・・、Nμsecにおいて、0になるはずである。なぜならば、FMCW回り込み波の空間伝搬時間は、各FMCW応答波の各空間伝搬時間+意図的に施された各遅延時間(例えば、各SAW遅延時間)と比べて、ほぼ0であるといえるからである。
【0039】
そこで、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが施す各遅延の時間T
1、・・・、T
Nを、信号帯域幅1MHzの逆数1μsecの自然数1、・・・、N倍の時間1、・・・、Nμsecに等しくする。すると、FMCW質問波とFMCW受信波(各FMCW応答波及びFMCW回り込み波を含む。)との間の相互相関は、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが施す各遅延の時間T
1、・・・、T
Nにおいて、FMCW回り込み波からの寄与に影響されず、各FMCW応答波からの寄与のみに影響されるはずである。よって、センサ情報取得装置1において、FMCW質問波の質問波送信部11と応答波受信部12との間での回り込みがあるとしても、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nから受信した各FMCW応答波から、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが生成した各センサ情報を高精度で抽出することができるはずである。しかし、実際には上述の効果を奏することができないことを、まず比較例として説明する。そして、上述の効果を奏することができるための方法を、次に本開示として説明する。
【0040】
(比較例の時間相関の算出方法及びFMCW質問波の自己相関の算出結果)
比較例では、FMCW質問波のスペクトルのうち、帯域中心周辺で平坦である帯域幅とともに、信号帯域端で減衰する帯域幅において、時間領域での相関関数を算出する。
【0041】
FFT算出部131は、数1に示すように、時間領域でのFMCW質問波u(n)を、周波数領域でのFMCW質問波U(k)にフーリエ変換する。ここで、nは、サンプリング周期を用いて正規化された時間を表わす。帯域中心切出部132は、
図7、9に示すように、周波数領域でのFMCW質問波U(k)から、帯域中心周辺で平坦である帯域幅とともに、信号帯域端で減衰する帯域幅において、周波数領域でのFMCW質問波U
B(k)を切り出す。複素共役部133は、周波数領域でのFMCW質問波U
B(k)を、周波数領域でのFMCW質問波U
B*(k)に複素共役化する。
【数1】
【0042】
時間領域でのFMCW受信波x(n)は、時間領域での各FMCW応答波v(n)とFMCW回り込み波w(n)とを重畳したものである。FFT算出部134は、数2に示すように、時間領域でのFMCW受信波x(n)=v(n)+w(n)を、周波数領域でのFMCW受信波X(k)=V(k)+W(k)にフーリエ変換する。帯域中心切出部135は、周波数領域でのFMCW受信波X(k)=V(k)+W(k)から、帯域中心切出部132が周波数領域でのFMCW質問波U
B(k)を切り出す帯域幅と同様の帯域幅において、周波数領域でのFMCW受信波X
B(k)=V
B(k)+W
B(k)を切り出す。
【数2】
【0043】
スペクトル乗算部136は、数3に示すように、周波数領域でのFMCW質問波U
B*(k)と、周波数領域でのFMCW受信波X
B(k)=V
B(k)+W
B(k)と、を乗算して、周波数領域での相互相関Y
B(k)を算出する。IFFT算出部137は、数4に示すように、周波数領域での相互相関Y
B(k)を、時間領域での相互相関y
B(n)に逆フーリエ変換する。時間領域での相互相関y
B(n)は、y
B,v(n)及びy
B,w(n)を含む。y
B,v(n)は、FMCW質問波と各FMCW応答波との間の時間領域での相互相関を表わす。y
B,w(n)は、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の時間領域での相互相関を表わし、FMCW質問波の時間領域での自己相関に比例する。
【数3】
【数4】
【0044】
ここで、FMCW質問波と各FMCW応答波との間の時間領域での相互相関y
B,v(n)を算出して、各FMCW応答波の遅延時間及びセンサ情報を抽出したい。すると、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の時間領域での相互相関y
B,w(n)を低減する必要がある。つまり、FMCW質問波の時間領域での自己相関を低減する必要がある。
【0045】
第1の比較例の時間相関の算出方法を
図7に示す。
図7の縦軸は、FMCW質問波のスペクトルの電力レベルを対数表示dBで示す。FMCW質問波のスペクトルの電力レベルは、上述した数1に記載のU(k)に比例する。時間相関の算出に用いる帯域幅は、帯域中心周辺で平坦である帯域幅とともに、信号帯域端で減衰する帯域幅を含めて、1MHzである。サンプリング周波数は、4MHzである。
【0046】
第1の比較例のFMCW質問波の自己相関の算出結果を
図8に示す。
図8の縦軸は、第1の比較例のFMCW質問波の自己相関の電力レベルを対数表示dBで示す。第1の比較例のFMCW質問波の自己相関の電力レベルは、上述した数4に記載のy
B,w(n)に比例する。このように、FMCW質問波の自己相関は、全信号帯域幅1MHzの逆数1μsecの自然数1、・・・、N倍の時間1、・・・、Nμsecにおいて、0にならない。つまり、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の相互相関y
B,w(n)は、全信号帯域幅1MHzの逆数1μsecの自然数1、・・・、N倍の時間1、・・・、Nμsecにおいて、0にならない。
【0047】
第2の比較例の時間相関の算出方法を
図9に示す。
図9の縦軸は、FMCW質問波のスペクトルの電力レベルを対数表示dBで示す。FMCW質問波のスペクトルの電力レベルは、上述した数1に記載のU(k)に比例する。時間相関の算出に用いる帯域幅は、帯域中心周辺で平坦である帯域幅とともに、信号帯域端で減衰する帯域幅を含めて、1MHzである。サンプリング周波数も、1MHzである。
【0048】
第2の比較例のFMCW質問波の自己相関の算出結果を
図10に示す。
図10の縦軸は、第2の比較例のFMCW質問波の自己相関の電力レベルを対数表示dBで示す。第2の比較例のFMCW質問波の自己相関の電力レベルは、上述した数4に記載のy
B,w(n)に比例する。このように、FMCW質問波の自己相関は、全信号帯域幅1MHzの逆数1μsecの自然数1、・・・、N倍の時間1、・・・、Nμsecにおいて、0にならない。つまり、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の相互相関y
B,w(n)は、全信号帯域幅1MHzの逆数1μsecの自然数1、・・・、N倍の時間1、・・・、Nμsecにおいて、0にならない。
【0049】
よって、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが施す各遅延の時間T
1、・・・、T
Nを、全信号帯域幅1MHzの逆数1μsecの自然数1、・・・、N倍の時間1、・・・、Nμsecに等しくしても、上述の効果を奏することができない。つまり、FMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関y
B(n)は、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが施す各遅延の時間1、・・・、Nμsecにおいて、FMCW回り込み波からの寄与にも影響される。そして、センサ情報取得装置1において、FMCW質問波の質問波送信部11と応答波受信部12との間での回り込みがあるときには、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nから受信した各FMCW応答波から、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが生成した各センサ情報を高精度で抽出することができない。
【0050】
(本開示の時間相関の算出方法及びFMCW質問波の自己相関の算出結果)
本開示では、FMCW質問波のスペクトルのうち、信号帯域端で減衰する帯域幅を除いて、帯域中心周辺で平坦である帯域幅において、時間領域での相関関数を算出する。
【0051】
FFT算出部131は、数5に示すように、時間領域でのFMCW質問波u(n)を、周波数領域でのFMCW質問波U(k)にフーリエ変換する。ここで、nは、サンプリング周期を用いて正規化された時間を表わす。帯域中心切出部132は、
図11、13に示すように、周波数領域でのFMCW質問波U(k)から、信号帯域端で減衰する帯域幅を除いて、帯域中心周辺で平坦である帯域幅において、周波数領域でのFMCW質問波U
C(k)を切り出す。複素共役部133は、周波数領域でのFMCW質問波U
C(k)を、周波数領域でのFMCW質問波U
C*(k)に複素共役化する。
【数5】
【0052】
時間領域でのFMCW受信波x(n)は、時間領域での各FMCW応答波v(n)とFMCW回り込み波w(n)とを重畳したものである。FFT算出部134は、数6に示すように、時間領域でのFMCW受信波x(n)=v(n)+w(n)を、周波数領域でのFMCW受信波X(k)=V(k)+W(k)にフーリエ変換する。帯域中心切出部135は、周波数領域でのFMCW受信波X(k)=V(k)+W(k)から、帯域中心切出部132が周波数領域でのFMCW質問波U
C(k)を切り出す帯域幅と同様の帯域幅において、周波数領域でのFMCW受信波X
C(k)=V
C(k)+W
C(k)を切り出す。
【数6】
【0053】
スペクトル乗算部136は、数7に示すように、周波数領域でのFMCW質問波U
C*(k)と、周波数領域でのFMCW受信波X
C(k)=V
C(k)+W
C(k)と、を乗算して、周波数領域での相互相関Y
C(k)を算出する。IFFT算出部137は、数8に示すように、周波数領域での相互相関Y
C(k)を、時間領域での相互相関y
C(n)に逆フーリエ変換する。時間領域での相互相関y
C(n)は、y
C,v(n)及びy
C,w(n)を含む。y
C,v(n)は、FMCW質問波と各FMCW応答波との間の時間領域での相互相関を表わす。y
C,w(n)は、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の時間領域での相互相関を表わし、FMCW質問波の時間領域での自己相関に比例する。
【数7】
【数8】
【0054】
ここで、FMCW質問波と各FMCW応答波との間の時間領域での相互相関y
C,v(n)を算出して、各FMCW応答波の遅延時間及びセンサ情報を抽出したい。すると、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の時間領域での相互相関y
C,w(n)を低減する必要がある。つまり、FMCW質問波の時間領域での自己相関を低減する必要がある。
【0055】
第1の本開示の時間相関の算出方法を
図11に示す。
図11の縦軸は、FMCW質問波のスペクトルの電力レベルを対数表示dBで示す。FMCW質問波のスペクトルの電力レベルは、上述した数5に記載のU(k)に比例する。時間相関の算出に用いる帯域幅は、信号帯域端で減衰する帯域幅を除いて、帯域中心周辺で平坦である帯域幅を含めて、0.8MHzである。サンプリング周波数は、4MHzである。
【0056】
第1の本開示のFMCW質問波の自己相関の算出結果を
図12に示す。
図12の縦軸は、第1の本開示のFMCW質問波の自己相関の電力レベルを対数表示dBで示す。第1の本開示のFMCW質問波の自己相関の電力レベルは、上述した数8に記載のy
C,w(n)に比例する。このように、FMCW質問波の自己相関は、平坦な帯域幅0.8MHzの逆数1.25μsecの自然数1、2、・・・、N倍の時間1.25、2.50、・・・、1.25Nμsecにおいて、ほぼ0になる。つまり、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の相互相関y
C,w(n)は、平坦な帯域幅0.8MHzの逆数1.25μsecの自然数1、2、・・・、N倍の時間1.25、2.50、・・・、1.25Nμsecにおいて、ほぼ0になる。
【0057】
第2の本開示の時間相関の算出方法を
図13に示す。
図13の縦軸は、FMCW質問波のスペクトルの電力レベルを対数表示dBで示す。FMCW質問波のスペクトルの電力レベルは、上述した数5に記載のU(k)に比例する。時間相関の算出に用いる帯域幅は、信号帯域端で減衰する帯域幅を除いて、帯域中心周辺で平坦である帯域幅を含めて、0.8MHzである。サンプリング周波数も、0.8MHzである。
【0058】
第2の本開示のFMCW質問波の自己相関の算出結果を
図14に示す。
図14の縦軸は、第2の本開示のFMCW質問波の自己相関の電力レベルを対数表示dBで示す。第2の本開示のFMCW質問波の自己相関の電力レベルは、上述した数8に記載のy
C,w(n)に比例する。このように、FMCW質問波の自己相関は、平坦な帯域幅0.8MHzの逆数1.25μsecの自然数1、2、・・・、N倍の時間1.25、2.50、・・・、1.25Nμsecにおいて、ほぼ0になる。つまり、FMCW質問波とFMCW回り込み波との間の相互相関y
C,w(n)は、平坦な帯域幅0.8MHzの逆数1.25μsecの自然数1、2、・・・、N倍の時間1.25、2.50、・・・、1.25Nμsecにおいて、ほぼ0になる。
【0059】
よって、各センサ情報生成装置2−1、2−2、・・・、2−Nが施す各遅延の時間T
1、T
2、・・・、T
Nを、平坦な帯域幅0.8MHzの逆数1.25μsecの自然数1、2、・・・、N倍の時間1.25、2.50、・・・、1.25Nμsecに等しくすれば、上述の効果を奏することができる。つまり、FMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関y
C(n)は、各センサ情報生成装置2−1、2−2、・・・、2−Nが施す各遅延の時間1.25、2.50、・・・、1.25Nμsecにおいて、FMCW回り込み波からの寄与には影響されない。そして、センサ情報取得装置1において、FMCW質問波の質問波送信部11と応答波受信部12との間での回り込みがあるとしても、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nから受信した各FMCW応答波から、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが生成した各センサ情報を高精度で抽出することができる。
【0060】
なお、平坦な帯域幅0.8MHzは、全信号帯域幅1MHzより狭い。よって、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが施す各遅延の時間T
1、・・・、T
Nの分解能は、本開示では見かけ上悪化しているように思われる(比較例での1μsec→本開示での1.25μsec)。しかし、FMCW回り込み波からの寄与の影響は、本開示ではほぼ見られない。よって、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが施す各遅延の時間T
1、・・・、T
Nの分解能は、本開示では実質的に向上することができる。
【0061】
(本開示のFMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関の算出結果)
本開示のFMCW受信波のスペクトルを
図15に示す。
図15の縦軸は、FMCW受信波のスペクトルの電力レベルを対数表示dBで示す。FMCW受信波のスペクトルの電力レベルは、上述した数6に記載のX(k)に比例する。時間領域でのFMCW受信波x(n)は、時間領域での各FMCW応答波v(n)とFMCW回り込み波w(n)とを重畳したものである。時間領域での各FMCW応答波v(n)として、センサ情報生成装置2−3が遅延時間T
3=3.75μsecを施したFMCW応答波のみを取り上げる。
【0062】
本開示のFMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関の算出結果を
図16に示す。
図16の縦軸は、本開示のFMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関の電力レベルを対数表示dBで示す。本開示のFMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関の電力レベルは、上述した数8に記載のy
C(n)=y
C,v(n)+y
C,w(n)に比例する。時間相関の算出に用いる帯域幅は、FMCW質問波における信号帯域端で減衰する帯域幅を除いて、FMCW質問波における帯域中心周辺で平坦である帯域幅を含めて、0.8MHzである。サンプリング周波数も、0.8MHzである。
【0063】
ピーク検出部141は、FMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関y
C(n)の振幅|y
C(n)|のピーク位置を検出する。一般的には、|y
C(n)|のピーク位置は、時間T=T
1、・・・T
Nに対応する正規化時間n=n
1、・・・n
Nである。
図16では、|y
C(n)|のピーク位置は、時間T=T
3に対応する正規化時間n=n
3である。ただし、|y
C(n)|のピーク位置として、
図12に示したような、FMCW質問波の自己相関の振幅のピーク位置を採用するべきではなく、つまり、時間T
N−1<T<T
Nに対応する正規化時間n
N−1<n<n
Nを採用するべきではない。
【0064】
次に、振幅/位相算出部142は、FMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関y
C(n)の振幅|y
C(n)|がピークをなす0以外の正規化時間n=n
1、・・・n
Nにおいて、FMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関y
C(n)の振幅|y
C(n)|及び/又は位相θ
C(n)を算出する。又は、振幅/位相算出部142は、FMCW質問波のスペクトルU(k)が帯域中心周辺で平坦である帯域幅の逆数の自然数倍の正規化時間n=n
1、・・・n
Nにおいて、FMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関y
C(n)の振幅|y
C(n)|及び/又は位相θ
C(n)を算出する。
【0065】
振動等情報抽出部143は、FMCW質問波とFMCW受信波との間の相互相関y
C(n)の振幅|y
C(n)|及び/又は位相θ
C(n)(n=n
1、・・・n
N)に基づいて、FMCW受信波のうちFMCW回り込み波を除く各FMCW応答波から、各振幅変調及び/又は各位相変調に用いられた各センサ情報s(n)(n=n
1、・・・n
N)を抽出する。
【0066】
そして、振動等情報抽出部143は、各々単数回抽出した各センサ情報s(n)(n=n
1、・・・n
N)を、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが設置される橋梁Bの各車線の直下における加速度についての情報として抽出する。さらに、振動等情報抽出部143は、各々複数回抽出した各センサ情報s(n)(n=n
1、・・・n
N)に対するFFT結果を、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが設置される橋梁Bの各車線の直下における振動についての情報として抽出する。各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nが設置される橋梁Bの各車線の直下における加速度及び振動についての情報は、直接に、又は、インターネットI等を介して、管理者に通知される。
【0067】
ここで、センサ情報取得装置1は、各FMCW応答波を振幅復調するにあたり、各FMCW応答波の振幅が、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nとの間の空間伝搬で減衰されたものであるのか、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nでの各センサ情報で生成されたものであるのか、区別することが望ましい。よって、各センサ情報生成装置2−1、・・・、2−Nは、
図3で示した構成を設置するのみならず、各センサ情報と無関係なリファレンス素子を設置することが望ましい。そして、センサ情報取得装置1は、
図2で示した構成からの各FMCW応答波と、各センサ情報と無関係なリファレンス素子からのリファレンス信号と、の差分を計測することが望ましい。