【実施例】
【0028】
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。例中、各種測定は下記の方法で実施した。
【0029】
(1)HPLC純度
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体の結晶に含まれる、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物のHPLC純度は下記条件に基づく液体クロマトグラフィーの面積百分率である(但し、ゲスト分子由来のピークは除した修正面百値に基づく)。
装置 :島津製作所製 LC−2010A、
カラム:SUMIPAX ODS A−211(5μm、4.6mmφ×250mm)、
移動相:純水/アセトニトリル(アセトニトリル30%→100%)、
流量 :1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 254nm。
【0030】
(2)ゲスト分子の含量及び精製で用いた有機化合物含量の分析
ゲスト分子の含量、及び精製にて用いた有機化合物の含量については下記条件に基づくガスクロマトグラフィーにより定量を行った。
装置 :島津製作所製 GC−2014、
カラム:DB−1(0.25μm、0.25mmID×30m)、
昇温:40℃(10分保持)→20℃/min→300℃(20分保持)、
Inj温度:200℃、Det温度:300℃、スプリット比 1:10、
キャリアー:窒素55.0kPa(一定)、
サンプル調製方法:十分に乾燥させた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶100mgを10mlメスフラスコに量り取り、そこへあらかじめ調製していた1,2−ジメトキシエタンのアセトニトリル溶液(1,2−ジメトキシエタン400mgをアセトニトリル200mlに溶解したもの)をホールピペットで5ml加え、アセトニトリルでメスアップさせ溶解したものを試料溶液とした。
一方、含量を測定したい化合物10mgを10mlメスフラスコに量り取り、上述と同量の1,2−ジメトキシエタンのアセトニトリル溶液を加え、アセトニトリルでメスアップさせ溶解したものを標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液を上述の条件にて分析し、得られた各成分のピーク面積をデータ処理装置で求め、各成分の含量(重量%)を算出した(内部標準法)。
なお、精製を実施する際に有機化合物としてアセトニトリルを用いた場合、上記の試料溶液および標準溶液の作成の際にアセトニトリルの代わりにトリエチレングリコールジメチルエーテルを用いた。
【0031】
<比較例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン120.0g(0.240mol)、エチレンカーボネート48.3g(0.549mol)、炭酸カリウム2.4g(0.018mol)およびトルエン120.0gを仕込み、110℃で11時間撹拌し反応液を得た。
得られた反応液を85℃まで冷却した後、水204gを加え、80〜85℃で30分撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層をディーンスターク装置を用いて還流下で脱水することで晶析溶液を得た。
得られた晶析溶液を冷却した所、65℃で結晶が析出し、結晶析出後、同温度で2時間撹拌した。更に26℃まで冷却した後、濾過し、結晶を得た。得られた結晶を、12時間、内圧1.1kPaの減圧下、110℃〜112℃で乾燥した。
【0032】
得られた結晶を上述した方法により分析した所、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、トルエンをゲスト分子とする包接体であることを確認した。以下に分析結果を示す。
得られた結晶の重さ:118.2g
HPLC純度:97.2%
トルエン(ゲスト分子)含量:4.83重量%
【0033】
<比較例2>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン90.0g(0.180mol)、エチレンカーボネート36.0g(0.408mol)、炭酸カリウム2.1g(0.015mol)、およびシクロヘキサノン90.0gを仕込み、140℃で7時間撹拌し反応液を得た。
得られた反応液を90℃まで冷却した後、シクロヘキサノン69g、ノルマルヘプタン81gを加え、有機溶媒層を90℃に保ちながら洗浄水が中性となるまで水洗を行った。水洗後、得られた有機溶媒層をディーンスターク装置を用いて還流下で脱水することで、晶析溶液を得た。
その後、得られた晶析溶液を70℃まで冷却し、70℃で1時間保温することで結晶を析出させた後、同温度で2時間撹拌した。撹拌後、更に19℃まで冷却した後、濾過し、結晶を得た。 得られた結晶を内圧1.1kPaの減圧下、90℃で3時間乾燥した。
【0034】
得られた結晶を上述した方法により分析した所、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、シクロヘキサノンをゲスト分子とする包接体であることを確認した。以下に分析結果を示す。
得られた結晶の重さ:99.6g
HPLC純度:97.5%
シクロヘキサノン(ゲスト分子)含量:15.3重量%
【0035】
<実施例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、比較例1で得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、トルエンをゲスト分子とする包接体10g、メタノール70gを仕込んだ後、25℃で3時間撹拌を行った。撹拌中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は完全に溶解していなかった。
撹拌後、25℃でろ過し、結晶を得た。得られた結晶を内圧0.13kPaの減圧下、90℃で3時間乾燥し、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。
【0036】
得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:9.2g(回収率92%)
トルエン(ゲスト分子)含量:0.01重量%
メタノール(精製で用いた有機化合物)含量:0.10重量%
【0037】
<実施例2>
撹拌温度を68℃(メタノール還流下)、メタノールの使用量を50gとする以外は実施例1と同様に実施して上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:8.6g(回収率86%)
トルエン(ゲスト分子)含量:0.01重量%
メタノール(精製で用いた有機化合物)含量:0.08重量%
【0038】
<実施例3>
メタノールをオクタノールに変え、オクタノールの使用量を20g、撹拌温度を100℃とする以外は実施例2と同様に実施して上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:6.3g(回収率63%)
トルエン(ゲスト分子)含量:0.01重量%
オクタノール(精製で用いた有機化合物)含量:0.07重量%
【0039】
<実施例4>
撹拌子を入れた試験管に、比較例1で得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、トルエンをゲスト分子とする包接体1g、ジイソブチルケトンを5g仕込んだ後、27℃で48時間撹拌を行った。撹拌中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は完全に溶解していなかった。
その後、結晶をろ過し、得られた結晶をろ紙状で十分乾燥させた後、得られた結晶をガスクロマトグラフィーにて分析を行った。分析値を表1に示す。
【0040】
<実施例5〜21>
用いる有機化合物、使用量、撹拌温度、撹拌時間を表1〜3に示すものに変更した以外は実施例4と同様の方法にて実施し、得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶をガスクロマトグラフィーにて分析を行った。分析値を表1〜3に示す。なお、すべての実施例において、撹拌中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は完全に溶解していなかった。
【0041】
<比較例3〜6>
用いる有機化合物、使用量、撹拌温度、撹拌時間を表4に示すものに変更した以外は実施例4と同様の方法にて実施し、得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶をガスクロマトグラフィーにて分析を行った。分析値を表4に示す。なお、すべての比較例において、撹拌中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は完全に溶解していなかった。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
上記結果から明らかな通り、分岐を有しても良い脂肪族鎖状である、炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エーテル類、ニトリル類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を用いて上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、トルエンをゲスト分子とする包接体を精製した場合、包接されていたトルエンが減少、あるいは殆ど検出されなくなるまで除去可能であることが判明した。
【0047】
一方、分岐を有しても良い脂肪族鎖状である、炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エーテル類、ニトリル類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物以外の有機化合物を用いた場合、包接されていたトルエンに変わり、用いた有機化合物が包接され、新たな包接体となることが判明した。
【0048】
<実施例22>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、比較例2で得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、シクロヘキサノンをゲスト分子とする包接体10g、メタノール50gを仕込んだ後、25℃で3時間撹拌を行った。撹拌中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は完全に溶解していなかった。
撹拌後、25℃でろ過し、結晶を得た。得られた結晶を内圧0.13kPaの減圧下、90℃で3時間乾燥し、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。
【0049】
得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:8.1g(回収率81%)
シクロヘキサノン(ゲスト分子)含量:1.56重量%
メタノール(精製で用いた有機化合物)含量:0.10重量%
【0050】
<実施例23>
撹拌温度を68℃(メタノール還流下)とする以外は実施例22と同様に実施して上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶を得た。得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:5.1g(回収率51%)
シクロヘキサノン(ゲスト分子)含量:0.53重量%
メタノール(精製で用いた有機化合物)含量:0.10重量%
【0051】
<実施例24>
撹拌子を入れた試験管に、比較例2で得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とし、シクロヘキサノンをゲスト分子とする包接体1g、ジイソブチルケトンを5g仕込んだ後、27℃で72時間撹拌を行った。撹拌中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は完全に溶解しなかった。
その後、ろ過し、得られた結晶をろ紙状で十分乾燥させた後、得られた結晶をガスクロマトグラフィーにて分析を行った。分析値を表5に示す。
【0052】
<実施例25〜29>
用いる有機化合物、使用量、撹拌温度、撹拌時間を表5に示すものに変更した以外は実施例24と同様の方法にて実施し、得られた上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶をガスクロマトグラフィーにて分析を行った。分析値を表1〜3に示す。なお、すべての実施例において、撹拌中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の結晶は完全に溶解していなかった。
【0053】
【表5】
【0054】
トルエンを包接する、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物をホスト分子とする包接体と同様、シクロヘキサノンを包接した結晶であっても、分岐を有しても良い脂肪族鎖状である、炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エーテル類、ニトリル類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を用いると、包接されていたシクロヘキサノンが減少、あるいは殆ど検出されなくなるまで除去可能であることが判明した。