特許第6830360号(P6830360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6830360-港湾荷役機械の自動退避装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830360
(24)【登録日】2021年1月28日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】港湾荷役機械の自動退避装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/60 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   B65G67/60 G
   B65G67/60 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-2556(P2017-2556)
(22)【出願日】2017年1月11日
(65)【公開番号】特開2018-111563(P2018-111563A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】阿久根 圭
(72)【発明者】
【氏名】川北 真斎喜
(72)【発明者】
【氏名】水崎 紀彦
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−084189(JP,A)
【文献】 特開平08−239124(JP,A)
【文献】 特開2014−084190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/60
B66C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
倉口を通じて荷役構造体を船倉の内部に挿入して船舶荷役作業を実施する港湾荷役機械の自動退避装置であって、
船舶荷役作業を実施する前の運転者の操作に基づいて、前記荷役構造体を前記船倉の外部に安全に退避させる事が出来る退避原点位置を特定する退避原点位置特定部と、
前記荷役構造体の現在位置を特定する現在位置特定部と、
前記退避原点位置特定部によって特定した退避原点位置と前記現在位置特定部によって特定した現在位置とに基づいて前記荷役構造体を前記船倉の外部に自動的に退避させる自動退避部と、
船舶荷役作業を実施している時の前記荷役構造体の移動軌跡に基づいて、前記退避原点位置特定部によって特定した退避原点位置を補正する退避原点位置補正部と、
を備えている
事を特徴とする港湾荷役機械の自動退避装置。
【請求項2】
前記退避原点位置特定部は、運転者の操作に応じて前記荷役構造体を前記倉口の特定位置に移動させると共に前記倉口の特定位置を記憶させる事によって、前記倉口の特定位置を学習すると共に学習した前記倉口の特定位置に基づいて退避原点位置を特定する
請求項1に記載の港湾荷役機械の自動退避装置。
【請求項3】
前記倉口の特定位置は、前記倉口に於ける角部の上方位置を意味する
請求項2に記載の港湾荷役機械の自動退避装置。
【請求項4】
前記退避原点位置特定部は、運転者の操作に応じて前記荷役構造体を前記倉口の輪郭に沿って移動させると共に前記倉口の輪郭を記憶させる事によって、前記倉口の輪郭を学習すると共に学習した前記倉口の輪郭に基づいて退避原点位置を特定する
請求項1に記載の港湾荷役機械の自動退避装置。
【請求項5】
前記退避原点位置補正部は、船舶荷役作業を実施している時の前記荷役構造体の移動軌跡から移動頻度の低い軌跡を省く
請求項1乃至4の何れか一項に記載の港湾荷役機械の自動退避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時に荷役構造体を船倉の外部に退避させる事によって荷役構造体と船舶との干渉を妨げる事が出来る港湾荷役機械の自動退避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾荷役機械は、例えば工業港に於ける船舶荷役作業に供されている。港湾荷役機械は、軌道走行式荷役機械と固定式荷役機械とに大別する事が出来る。軌道走行式荷役機械としては、例えばコンテナクレーンとジブクレーンとアンローダとを挙げる事が出来る。固定式荷役機械としては、例えばローティングアームを挙げる事が出来る。特に、船倉の内部に有るばら物貨物を陸揚げするアンローダは、原材料の大半を輸入に頼る我が国に於いて、極めて重要度の高い港湾荷役機械である。アンローダは、間欠式アンローダと連続式アンローダとに大別する事が出来る。間欠式アンローダは、グラブバケットを使用してばら物貨物を間欠的に陸揚げするアンローダであって、構造形式に応じて橋形クレーン式アンローダと引込クレーン式アンローダとに分類する事が出来る。連続式アンローダは、機械を使用してばら物貨物を連続的に陸揚げする機械式アンローダと、空気を使用してばら物貨物を連続的に陸揚げする空気式アンローダと、に分類する事が出来る。尚、アンローダは、揚荷メカニズムに応じて更に細かく分類する事も出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−084189号公報
【特許文献2】特開2014−084190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然し乍ら、何れのアンローダに於いても、船舶荷役作業時は、倉口を通じて荷役構造体を船倉の内部に挿入する必要が有る為、地震発生時にアンローダが揺動したり、津波発生時に船舶が揺動したりすると、荷役構造体と船舶とが干渉し易く成る。尚、アンローダに限らず、荷役構造体を船倉の内部に挿入する必要の有る他の港湾荷役機械に於いても、同様に荷役構造体と船舶とが干渉し易く成る。
【0005】
以上の事情を鑑みて、本発明は、災害発生時に荷役構造体を船倉の外部に自動的に退避させる事によって荷役構造体と船舶との干渉を効果的に妨げる事が出来る港湾荷役機械の自動退避装置を提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、倉口を通じて荷役構造体を船倉の内部に挿入して船舶荷役作業を実施する港湾荷役機械の自動退避装置であって、船舶荷役作業を実施する前の運転者の操作に基づいて、前記荷役構造体を前記船倉の外部に安全に退避させる事が出来る退避原点位置を特定する退避原点位置特定部と、前記荷役構造体の現在位置を特定する現在位置特定部と、前記退避原点位置特定部によって特定した退避原点位置と前記現在位置特定部によって特定した現在位置とに基づいて前記荷役構造体を前記船倉の外部に自動的に退避させる自動退避部と、船舶荷役作業を実施している時の前記荷役構造体の移動軌跡に基づいて、前記退避原点位置特定部によって特定した退避原点位置を補正する退避原点位置補正部と、を備えている港湾荷役機械の自動退避装置を提供する。
【0007】
前記退避原点位置特定部は、運転者の操作に応じて前記荷役構造体を前記倉口の特定位置に移動させると共に前記倉口の特定位置を記憶させる事によって、前記倉口の特定位置を学習すると共に学習した前記倉口の特定位置に基づいて退避原点位置を特定する事が望ましい。
【0008】
前記倉口の特定位置は、前記倉口に於ける角部の上方位置を意味する事が望ましい。
【0009】
前記退避原点位置特定部は、運転者の操作に応じて前記荷役構造体を前記倉口の輪郭に沿って移動させると共に前記倉口の輪郭を記憶させる事によって、前記倉口の輪郭を学習すると共に学習した前記倉口の輪郭に基づいて退避原点位置を特定しても構わない。
【0011】
前記退避原点位置補正部は、船舶荷役作業を実施している時の前記荷役構造体の移動軌跡から移動頻度の低い軌跡を省く事が望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、災害発生時に荷役構造体を船倉の外部に自動的に退避させる事によって荷役構造体と船舶との干渉を効果的に妨げる事が出来る港湾荷役機械の自動退避装置を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】バケットエレベータ式連続アンローダの概略側面図である。
図2】港湾荷役機械の自動退避装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に順って説明する。
【0015】
先ず、港湾荷役機械に関して簡単に説明する。
【0016】
本明細書に於いては、港湾荷役機械の一例としてバケットエレベータ式連続アンローダを説明するが、本発明は、バケットエレベータ式連続アンローダの他、倉口を通じて荷役構造体を船倉の内部に挿入して船舶荷役作業を実施する如何なる港湾荷役機械にも適用する事が出来る。尚、本明細書に於いては、船舶荷役作業時に倉口を通じて船倉の内部に挿入される事によって船倉の内部に有るばら物貨物を陸揚げする様に構成されている構造体を荷役構造体と指称する事とする。
【0017】
図1に示す様に、港湾荷役機械たるバケットエレベータ式連続アンローダ100は、例えば工業港に於ける埠頭の岸壁101に敷設されている軌条102に沿って走行可能に設置されている走行フレーム103と、走行フレーム103の上部に旋回可能に支持されている旋回フレーム104と、旋回フレーム104の上部に俯仰可能に支持されているバランシングレバー105と、旋回フレーム104の側部に俯仰可能に連結されているブーム106と、バランシングレバー105の先端部とブーム106の先端部とに連結されているトップフレーム107を介して回転可能に支持されているバケットエレベータ108と、を備えている。
【0018】
軌条102は、基本的に岸壁法線と平行に敷設されている。走行フレーム103は、平行に敷設されている二本の軌条102を跨ぐ様に架け渡されている。旋回フレーム104に電気室及び油圧室が設置されている。バランシングレバー105は、油圧シリンダ109を介して旋回フレーム104の上部に支持されている。油圧シリンダ109を伸縮させる事によってバランシングレバー105を俯仰させる事が出来る。バランシングレバー105を俯仰させる事によってトップフレーム107を介してバランシングレバー105に連結されているブーム106をバランシングレバー105と共に俯仰させる事が出来る。バランシングレバー105とブーム106は、旋回フレーム104を固定リンクとする平行リンクを構成している。バランシングレバー105は、先端部に支持されているバケットエレベータ108と後端部に配置されているカウンタウエイト110とによって均衡が保たれている。カウンタウエイト110を設置する事によってバランシングレバー105を俯仰させる時に必要と成る力を最小限に低減する事が出来る。
【0019】
バケットエレベータ108は、バケットエレベータ108の下端部に於いて露出されている掻取部111によって船倉112の内部に有るばら物貨物113を掻き取ると共に、掻取部111によって掻き取ったばら物貨物113をバケットエレベータケーシング114によって覆われているバケットエレベータ108の中央部及び上端部を通じて陸揚げする様に構成されている。故に、バケットエレベータ108は、船舶荷役作業時に倉口115を通じて船倉112の内部に挿入される事によって船倉112の内部に有るばら物貨物113を陸揚げする様に構成されている構造体に該当する。従って、バケットエレベータ108は、バケットエレベータ式連続アンローダ100に於ける荷役構造体に該当する。掻取部111は、前方スプロケット116と後方スプロケット117との間に掛け渡されているバケットチェーン118を駆動スプロケット119によって駆動させる事によってばら物貨物113を掻き取る様に構成されている。前方スプロケット116と後方スプロケット117は、バケットエレベータ108の下端部に配置されている。前方スプロケット116と後方スプロケット117は、リンク機構120を介して連結されている。リンク機構120によって前方スプロケット116と後方スプロケット117とを隣接させたり離間させたりする事によって船倉112の形状に応じて掻取部111を伸縮させる事が出来る。駆動スプロケット119は、バケットエレベータ108の上端部に配置されている。バケットチェーン118は、前方スプロケット116と後方スプロケット117と駆動スプロケット119とを介してバケットエレベータ108の上下方向の全体に亘って掛け渡されている。従って、バケットエレベータ式連続アンローダ100に於いては、バケットチェーン118を駆動させる事によってばら物貨物113をバケットエレベータ108の下端部から上端部に掛けて連続的に陸揚げする事が出来る。
【0020】
次に、港湾荷役機械の自動退避装置に関して詳細に説明する。
【0021】
図2に示す様に、倉口115を通じてバケットエレベータ108を船倉112の内部に挿入して船舶荷役作業を実施するバケットエレベータ式連続アンローダ100の自動退避装置(以下、単に自動退避装置と指称する事とする。)200は、船舶荷役作業を実施する前の運転者の操作に基づいて、バケットエレベータ108を船倉112の外部に安全に退避させる事が出来る退避原点位置を特定する退避原点位置特定部201と、バケットエレベータ108の現在位置を特定する現在位置特定部202と、退避原点位置特定部201によって特定した退避原点位置と現在位置特定部202によって特定した現在位置とに基づいてバケットエレベータ108を船倉112の外部に自動的に退避させる自動退避部203と、を備えている。
【0022】
退避原点位置特定部201は、運転者の操作に応じてバケットエレベータ108を倉口115の特定位置に移動させると共に倉口115の特定位置を記憶させる事によって、倉口115の特定位置を学習すると共に学習した倉口115の特定位置に基づいて退避原点位置を特定する様に構成されている。倉口115の大半が四角形状の外観を呈している事に鑑みると、倉口115の特定位置は、倉口115に於ける角部の上方位置を意味する。退避原点位置特定部201によって退避原点位置を特定する手順を具体的に説明すると、退避原点位置特定部201は、タッチスクリーン204を通じて運転者に対してバケットエレベータ108を倉口115の四箇所の角部の何れか一箇所の上方位置に移動させる様に指示する。運転者は、タッチスクリーン204を通じた指示に応じてバケットエレベータ式連続アンローダ100を操作する事によってバケットエレベータ108を倉口115の四箇所の角部の何れか一箇所の上方位置に移動させる。退避原点位置特定部201は、タッチスクリーン204を通じて運転者に対してバケットエレベータ108を倉口115の四箇所の角部の何れか一箇所の上方位置に移動した後のバケットエレベータ108の位置を記憶させる様に更に指示する。運転者は、タッチスクリーン204を通じた指示に応じてタッチスクリーン204を操作する事によってバケットエレベータ108を倉口115の四箇所の角部の何れか一箇所の上方位置に移動した後のバケットエレベータ108の位置を退避原点位置特定部201に記憶させる。尚、バケットエレベータ108の位置は、例えば、走行フレーム103の走行量と旋回フレーム104の旋回量とバランシングレバー105及びブーム106の俯仰量とを監視する事によって特定する事も出来るし、グローバルポジショニングシステムを利用する事によって特定する事も出来る。退避原点位置特定部201は、以上の手順を繰り返す事によって倉口115の四箇所の角部の全ての上方位置を学習する事が出来る。最終的に、退避原点位置特定部201は、学習した倉口115の四箇所の角部の全ての上方位置に基づいて退避原点位置を特定する事が出来る。一般的に、倉口115の中心位置は、退避原点位置としての役割を果たす事が出来ると考えられる為、退避原点位置特定部201は、倉口115の中心位置を退避原点位置として特定する様に構成されている。
【0023】
現在位置特定部202は、例えば、走行フレーム103の走行量と旋回フレーム104の旋回量とバランシングレバー105及びブーム106の俯仰量とを監視する事によってバケットエレベータ108の現在位置を特定する様に構成されていても構わないし、グローバルポジショニングシステムを利用する事によってバケットエレベータ108の現在位置を特定する様に構成されていても構わない。
【0024】
自動退避部203は、退避原点位置特定部201によって特定した退避原点位置と現在位置特定部202によって特定した現在位置とに基づいて、バケットエレベータ108を船倉112の外部に安全に退避させる事が出来る退避経路を特定すると共に、特定した退避経路に沿ってバケットエレベータ108を船倉112の外部に自動的に退避させる様に構成されている。尚、自動退避部203は、バケットエレベータ108を船倉112の外部に安全に退避させる事が出来る経路の中でも、バケットエレベータ108を船倉112の外部に最も速く安全に退避させる事が出来る最短の経路を退避経路として特定する事が出来る。退避経路としては、バケットエレベータ108の長手軸と退避原点位置を通る垂直軸とを一致させる様にバケットエレベータ108を移動させると共にバケットエレベータ108を船倉112の外部に向けて垂直に抜き取る経路を挙げる事が出来る。勿論、最終的にバケットエレベータ108を岸壁101に位置している所定の退避位置に移動させる様にしても構わない。更に、自動退避部203は、緊急地震速報と津波注意報と津波警報とを受信すると共に受信した緊急地震速報と津波注意報と津波警報とに基づいてバケットエレベータ108を船倉112の外部に自動的に退避させる様に構成されていても構わない。
【0025】
自動退避装置200は、退避原点位置特定部201によって退避原点位置を特定する迄は船舶荷役作業を実施する事を禁止する船舶荷役作業禁止部205を更に備えている。船舶荷役作業禁止部205は、例えば、バケットエレベータ108を船倉112の内部に挿入しない様に運転者に警告したり、バケットエレベータ108を船倉112の内部に挿入する動作を物理的又は機械的に妨げたりする事によって、船舶荷役作業の実施を禁止する事が出来る。船舶荷役作業禁止部205を更に備えている事によって、船舶荷役作業を実施する前に退避原点位置を退避原点位置特定部201によって確実に特定する事が出来る。従って、災害発生時にバケットエレベータ108を船倉112の外部に自動的に退避させる操作を自動退避部203によって確実に試行する事が出来る為、バケットエレベータ108と船舶121との干渉を最大限に抑制する事が出来る。
【0026】
自動退避装置200は、船舶荷役作業を実施している時のバケットエレベータ108の移動軌跡(以下、単に荷役軌跡と指称する事とする。)に基づいて、退避原点位置特定部201によって特定した退避原点位置を補正する退避原点位置補正部206を更に備えている。荷役軌跡の外郭は、長時間に亘って船舶荷役作業を実施する程、倉口115の輪郭と一致していく為、荷役軌跡の外郭を検出する事によって倉口115の輪郭を正確に特定する事が出来る。従って、例えば退避原点位置特定部201によって特定した退避原点位置が運転者毎の操作バラツキに起因する誤差を含んでいる場合であっても、退避原点位置を正しく修正する事が出来る。尚、荷役軌跡の外郭は、例えば荷役軌跡を描画した画像を処理する事によって検出する事が出来る。更に、荷役軌跡を三次元の軌跡データとして収集する事によって荷役軌跡に基づいて船倉112の形状をも把握する事が出来る。故に、荷役軌跡を利用する事によって船倉112の形状を反映しながら退避経路を特定する事が出来る。従って、船倉112の内部に障害物が存在していても、障害物を避けながらバケットエレベータ108を船倉112の外部に退避させる事が出来る。退避原点位置補正部206は、荷役軌跡を頻度因子によって最適化して移動頻度の低い軌跡を省く様に構成されている。荷役軌跡の中でも移動頻度の低い軌跡は特異的であると言える為、荷役軌跡を頻度因子によって最適化して移動頻度の低い軌跡を省く事によって退避原点位置を正しく補正する事が出来る。
【0027】
退避原点位置特定部201と現在位置特定部202と自動退避部203と船舶荷役作業禁止部205と退避原点位置補正部206は、例えばプログラマブルロジックコントローラ207によって実現する事が出来る。
【0028】
自動退避装置200に於いては、退避原点位置特定部201によって倉口115の四箇所の角部の全ての上方位置を学習する様にしたものの、必ずしも退避原点位置特定部201によって倉口115の四箇所の角部の全ての上方位置を学習する必要は無い。倉口115が四角形状の外観を呈している事を前提とすると、倉口115の対角に位置している二箇所の角部の上方位置のみを学習する事によって倉口115の中心位置を特定する事も出来る。尚、倉口115が四角形状の外観を呈している場合に限らず、倉口115が他の多角形状の外観を呈している場合であっても、同様に倉口115の中心位置を特定する事が出来る。倉口115の中心位置に限らず、バケットエレベータ108を船倉112の外部に安全に退避させる事が出来る他の位置を退避原点位置として特定する事も出来る。本明細書に於いては、説明の都合上、バケットエレベータ108を船倉112の外部に安全に退避させる事が出来る位置を退避原点位置と表現しているものの、退避原点位置は、バケットエレベータ108を船倉112の外部に安全に退避させる事が出来る領域を意味する退避原点領域を含む事とする。一般的に、倉口115の中心領域は、退避原点領域としての役割を果たす事が出来ると考えられる為、退避原点位置特定部201は、倉口115の中心領域を退避原点領域として特定する事も出来る。勿論、倉口115の中心領域に限らず、バケットエレベータ108を船倉112の外部に安全に退避させる事が出来る他の領域を退避原点領域として特定する事も出来る。自動退避装置200に於いては、タッチスクリーン204を通じて指示したり操作したりするとしたものの、例えば音声によって指示したりボタンによって操作したりする様にしても構わない。自動退避装置200に於いては、退避原点位置特定部201は、運転者の操作に応じてバケットエレベータ108を倉口115の特定位置に移動させると共に倉口115の特定位置を記憶させる事によって、倉口115の特定位置を学習すると共に学習した倉口115の特定位置に基づいて退避原点位置を特定する様に構成されているとしたものの、退避原点位置特定部201は、運転者の操作に応じてバケットエレベータ108を倉口115の輪郭に沿って移動させると共に倉口115の輪郭を記憶させる事によって、倉口115の輪郭を学習すると共に学習した倉口115の輪郭に基づいて退避原点位置を特定する様に構成されていても構わない。倉口115の輪郭に基づいて退避原点位置を特定する事によって倉口115が円形状であっても退避原点位置を特定する事が出来る。
【0029】
以上に説明した様に、本発明は、災害発生時に荷役構造体を船倉の外部に自動的に退避させる事によって荷役構造体と船舶との干渉を効果的に妨げる事が出来る港湾荷役機械の自動退避装置を提供する事が出来る。
【符号の説明】
【0030】
100 バケットエレベータ式連続アンローダ
101 岸壁
102 軌条
103 走行フレーム
104 旋回フレーム
105 バランシングレバー
106 ブーム
107 トップフレーム
108 バケットエレベータ
109 油圧シリンダ
110 カウンタウエイト
111 掻取部
112 船倉
113 ばら物貨物
114 バケットエレベータケーシング
115 倉口
116 前方スプロケット
117 後方スプロケット
118 バケットチェーン
119 駆動スプロケット
120 リンク機構
121 船舶
200 自動退避装置
201 退避原点位置特定部
202 現在位置特定部
203 自動退避部
204 タッチスクリーン
205 船舶荷役作業禁止部
206 退避原点位置補正部
207 プログラマブルロジックコントローラ
図1
図2