特許第6830368号(P6830368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830368
(24)【登録日】2021年1月28日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ドレン中和器
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20060101AFI20210208BHJP
   F24H 9/16 20060101ALI20210208BHJP
   F23L 17/14 20060101ALI20210208BHJP
   C02F 1/66 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   F24H9/00 B
   F24H9/16 A
   F23L17/14 P
   C02F1/66 510Q
   C02F1/66 521D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-12088(P2017-12088)
(22)【出願日】2017年1月26日
(65)【公開番号】特開2018-119754(P2018-119754A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 直紀
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−137249(JP,A)
【文献】 特開2013−223839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
C02F 1/66
F23L 17/14
F24H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯器の筐体内部に設けられ、熱交換器で発生するドレンを中和するドレン中和器において、
上面が開放され、底壁及び該底壁の周縁から起立する周壁により箱状に形成されていて内部に前記ドレンを収容する容器本体と、該容器本体の上面を閉塞する蓋体とを備え、
前記容器本体は、前記給湯器の筐体内部に前記底壁が水平となるように取り付けられた状態で上面全面が水平に対して側面視直線状に傾斜していることを特徴とするドレン中和器。
【請求項2】
前記蓋体は、前記容器本体の開放された上面を覆うパネル部と、該パネル部から上方に突出する突出部とを備え、
前記パネル部の外周縁と前記容器本体の前記周壁上端とは溶着部を介して互いに溶着されており、
前記突出部は、前記パネル部を水平姿勢として平面視したとき、前記溶着部よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1記載のドレン中和器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器の筐体内部に設けられて熱交換器で発生するドレンを中和するドレン中和器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドレン中和器は、熱交換器で生じたドレンを収容する容器本体と、容器本体の上面を閉塞する蓋体とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
蓋体には、ドレン入口が形成されており、ドレン入口にはドレン管が接続される。ドレン管は、熱交換器から流下するドレンをドレン入口に案内する。
【0004】
容器本体の内部には、炭酸カルシウム等の中和剤が入れられており、ドレン入口から導入されたドレンは容器本体の内部の中和剤により中和される。中和されたドレンは、容器本体の底部に設けられたドレン出口から排出される。
【0005】
また、蓋体には、水位検知用の一対の電極が取り付けられている。ドレン出口の下流のドレン排出経路での凍結や詰りにより容器本体内のドレン水位が上昇して両電極がドレンに浸漬すると、両電極間の電気的導通を給湯器の制御部が検出する。
【0006】
容器本体は、底部の外周に起立する周壁の上端を輪郭として上面が開放されている。蓋体は、容器本体の開放された上面を覆うパネル部と、パネル部から上方に突出して前記ドレン入口及び前記一対の電極を設けた突出部とを備えている。
【0007】
容器本体と蓋体とは何れも熱可塑性合成樹脂を材料とする射出成型により各別に形成される。そして、蓋体は、熱板溶着によりパネル部の周縁が容器本体の周壁上端に溶着されて容器本体と一体に取り付けられる。これにより、ドレン中和器の製造を容易として中和前のドレンの漏れを確実に防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−137249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、給湯器の小型化が進められ、その影響により、給湯器の筐体内部のドレン中和器の取付けスペース内に他の部品が張り出した状態となることがある。そして、他の部品が張り出しているスペース内にドレン中和器を取り付ける場合には、ドレン中和器を、取付けスペース内に張り出す他部品に干渉しない形状とすることが考えられる。
【0010】
具体的には、例えば、ドレン中和器の一側上端が他部品と干渉する場合、図5に示すように、容器本体51の上面53の一部とそれに対応する蓋体52のパネル部54の一部とを傾斜面55として、他部品との接触を回避することが考えられる。これによれば、ドレン中和器50の容積を然程減少させることなく、他部品の張り出しによって縮小された取付スペースにドレン中和器50を収容することができる。
【0011】
しかし、このような形状の容器本体51と蓋体52とを、熱板溶着によって一体化するときには、平坦な熱板を用いることができないだけでなく、溶着部分に対する押圧方向が複数方向となってしまい、容器本体51と蓋体52とを隙間なく確実に溶着させるためには熱板溶着を行う装置の構成が複雑となってコストが増大する不都合がある。
【0012】
そこで、図6に示すように、容器本体61の上面63を水平に維持して高さ位置を低く形成することが考えられる。これによれば、容器本体61と蓋体62との溶着に際しては、平坦な熱板を用いることができ、溶着部分に対する押圧方向も一方向となるので、既存の装置を用いて熱板溶着を行うことができ、コストの増加を抑えることができる。
【0013】
しかし、容器本体61の上面63を水平に維持して高さ位置を低く形成すると、ドレン中和器60の容積が減少する不都合がある。
【0014】
上記の点に鑑み、本発明は、給湯器の筐体内部での他部品との干渉を防止する形状としながら容器本体の容積の減少を抑えることができ、更に、容器本体と蓋体とを、既存の溶着装置を用いて容易且つ確実に溶着することができるドレン中和器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するために、本発明は、給湯器の筐体内部に設けられ、熱交換器で発生するドレンを中和するドレン中和器において、上面が開放され、底壁及び該底壁の周縁から起立する周壁により箱状に形成されていて内部に前記ドレンを収容する容器本体と、該容器本体の上面を閉塞する蓋体とを備え、前記容器本体は、前記給湯器の筐体内部に前記底壁が水平となるように取り付けられた状態で上面全面が水平に対して側面視直線状に傾斜していることを特徴とする。
【0016】
本発明のドレン中和器によれば、前記傾斜を備えることにより、給湯器の筐体内部で他部品への干渉を回避しながら容器本体の容積減少を最小限に抑えることができる。
【0017】
しかも、前記傾斜が容器本体の開放された上面全面にわたって側面視直線状に形成されていることにより、容器本体と蓋体とを熱板溶着する場合に従来と同様の平坦な熱板を用いることが可能となり、容器本体と蓋体とを容易且つ確実に溶着することができる。
【0018】
また、本発明において、前記蓋体は、前記容器本体の開放された上面を覆うパネル部と、該パネル部から上方に突出する突出部とを備え、前記パネル部の外周縁と前記容器本体の前記周壁上端とは溶着部を介して互いに溶着されており、前記突出部は、前記パネル部を水平姿勢として平面視したとき、前記溶着部よりも内側に位置していることを特徴とする。
【0019】
前記溶着部を形成するときには、パネル部の溶融された外周縁と容器本体の周壁の溶融された上端とを、前記直線状の傾斜に対して直交する方向から互いに圧接することが好ましい。そして、上記の圧接は、蓋体を保持する治具と容器本体を保持する治具とを互いに接近する方向に移動することにより行われる。
【0020】
しかし、蓋体がパネル部から上方に突出する突出部を備えていて、この突出部が比較的高い位置まで突出している場合には、突出部の一部が蓋体を保持する治具の圧接方向に張り出すおそれがある。即ちこの場合には、蓋体のパネル部を水平姿勢として蓋体を平面視したとき、前記溶着部よりも外側に突出部の一部がはみ出した状態となる。そして、前記溶着部よりも外側に突出部の一部がはみ出した状態となっていると、蓋体を保持する治具が突出部の一部に干渉してパネル部の外周縁を、傾斜に対して直交する方向から押圧することができない。
【0021】
そこで、本発明においては、突出部を、パネル部を水平姿勢として平面視したとき、溶着部よりも内側に位置するように設けた。これにより、前記溶着部を形成するとき、突出部が蓋体を保持する治具に干渉することがなく、パネル部の外周縁を傾斜に対して直交する方向から押圧することができる。よって、蓋体がパネル部から上方に突出する突出部を備えていても、確実に溶着部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態のドレン中和器を備えた給湯器の内部構造を示す説明図。
図2】本実施形態のドレン中和器の説明的断面図。
図3】蓋体の平面図。
図4】溶着の際の治具による蓋体の押圧状態を示す説明図。
図5】従来の、一部に傾斜面を備える形状のドレン中和器を示す側面図。
図6】従来の、全体の高さを低くした形状のドレン中和器を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、給湯器1の筐体2内には、バーナユニット3と、バーナユニット3の上方に位置してバーナユニット3から上昇する燃焼排気の顕熱を回収する顕熱熱交換器4と、顕熱熱交換器4を通過した燃焼排気の潜熱を回収する潜熱熱交換器5とが収容されている。この潜熱熱交換器5は本発明における熱交換器に相当する。
【0024】
更に、筐体2内におけるバーナユニット3の下方には、バーナユニット3への燃料ガスの供給量を調整する弁ユニット6が配設されている。
【0025】
筐体2の底部7には、給水配管接続口8、出湯配管接続口9およびガス配管接続口10が設けられている。給水配管接続口8は、筐体2内に延設される入水管11を介して潜熱熱交換器5の図示しない水入口へ繋がっており、出湯配管接続口9は、筐体2内に延設される出湯管12を介して顕熱熱交換器4の図示しない湯出口へ繋がっている。ガス配管接続口10は、弁ユニット6の図示しないガス入口へ繋がっている。
【0026】
バーナユニット3の下部の弁ユニット6に隣接するスペースには、本発明の実施形態に係るドレン中和器13が取り付けられている。ドレン中和器13の奥側には給湯器1の外部の空気を燃焼用空気としてバーナユニット3へ送るための図示しない給気ファンが配設されている。
【0027】
給湯器1の小型化により筐体2内のスペースも狭くなるが、特にドレン中和器13の取付けスペースSは、給気ファンやバーナユニット3へ連なる弁ユニット6の一部の張り出しにより一層狭くなっている。
【0028】
ドレン中和器13は、図2に示すように、熱可塑性合成樹脂により形成された容器本体14と蓋体15とを備えて中空に形成されている。容器本体14は、上面16が開放された箱状に形成されており、底壁17と、底壁17の周縁から起立する周壁18とを備えている。蓋体15は、容器本体14の開放された上面16を覆うパネル部19と、パネル部19から上方に突出する突出部20とを備えている。
【0029】
容器本体14は、開放された上面16の全面が水平に対して側面視直線状に傾斜している。蓋体15は、容器本体14の上面16の傾斜に対応して、パネル部19が傾斜して設けられている。
【0030】
そして、パネル部19の外周縁に形成されている蓋フランジ19aの全周と容器本体14の周壁18の上端に形成されている容器フランジ18aの全周とは、溶着部21を介して強固に溶着されて、容器本体14と蓋体15とが一体化されている。
【0031】
蓋体15の突出部20は、その天面が水平とされており、水位検知用の電極22を支持している。また、突出部20には、その内側の空間を介して容器本体14の内部へ繋がるドレン入口23が立設されている。図1に示すように、ドレン入口23には、潜熱熱交換器5から筐体2内に延設されたドレン管24が接続される。これにより、潜熱熱交換器5で生じたドレンは、ドレン管24を通じてドレン入口23から容器本体14内に導入される。
【0032】
また、突出部20は、図3に示すように、蓋体15を水平姿勢として平面視したとき、溶着部21となるパネル部19の外周縁の蓋フランジ19aよりも内側に形成され、図4に示すように、蓋体15を水平姿勢として側面視したとき、溶着部21となるパネル部19の外周縁の蓋フランジ19aの直上に張り出さないように形成されている。
【0033】
容器本体14は、図2に示すように、その内部空間が中和室25とドレン導出室26とに区分けされている。中和室25には、ドレンを中和するための炭酸カルシウム等の中和剤(図示省略)が装填されている。
【0034】
ドレン入口23から導入されたドレンは、中和室25に入り、中和剤により中和される。ドレン導出室26は、中和室25から溢れたドレンを容器本体14の底壁17に設けられたドレン出口27へ導く。ドレン出口27には、図示しない排水管が接続されており、中和されたドレンは排水管を通じて給湯器1の外部へ排出される。
【0035】
また、容器本体14の底壁17には、水抜き栓28が設けられている。水抜き栓28は、筐体2の底部7から下方に突出し、開栓することで容器本体14内に滞留したドレンを給湯器1の外部へ排出できる。
【0036】
以上の構成による本実施形態のドレン中和器13は、容器本体14の開放された上面16の全面とそれを閉塞する蓋体15のパネル部19とが水平に対して側面視直線状に傾斜している。これにより、給湯器1の小型化の影響で、弁ユニット6の一部がドレン中和器13の取付けスペースSに張り出していても、これに干渉することなく、ドレン中和器13を取付けスペースSに収めることができる。しかも、それに伴う容器本体14の容積の減少も、例えば、ドレン中和器13の高さ寸法を小さくした場合に比べて小さく抑えることができる。
【0037】
また、以上の構成によれば、平坦な既存の熱板を用いて、蓋体15と容器本体14との溶着を容易に且つ確実に行うことができる。ここで、蓋体15と容器本体14との熱板溶着について説明する。
【0038】
先ず、図示しないが、容器本体14の容器フランジ18a(周壁18の上端)と蓋体15の蓋フランジ19a(パネル部19の外周縁)とを、平坦な熱板を介して対向させて、該熱板に同時に接触させる。これにより、容器本体14の容器フランジ18aの上面と蓋体15の蓋フランジ19aの下面とは何れも溶融された状態となる。
【0039】
このとき、容器本体14の上面の傾斜を形成している容器本体14の容器フランジ18aと蓋体15の蓋フランジ19aとの接触面(溶着部21となる部分)は何れも側面視直線状であることにより、既存の平坦な熱板を用いて溶融させることができる。
【0040】
次いで、容器本体14と蓋体15とを熱板から離反させ、熱板を取り除いた状態で容器本体14の容器フランジ18aと蓋体15の蓋フランジ19aとを互いに圧接させる。
【0041】
このとき、蓋体15の突出部20が、図3に示すように、パネル部19の外周縁(溶着部21となる部分)の内側に位置していることにより、図4に示すように、蓋体15を保持した治具29(図中仮想線により示す)への突出部20の干渉を防止することができる。そして、治具29の押圧により、容器本体14の容器フランジ18aの接触面(溶着部21が形成される面)に対して直交する方向に、蓋体15の蓋フランジ19aを押圧することができる。
【0042】
これにより、容器本体14の容器フランジ18aと蓋体15の蓋フランジ19aとの境界に溶着部21を確実に形成することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、パネル部19に突出部20が形成されている蓋体15を例として説明したが、突出部20が極度に小さい、或いは、突出部20が設けられていない蓋体であっても採用できる。
【符号の説明】
【0044】
1…給湯器、2…筐体、5…潜熱熱交換器(熱交換器)、13…ドレン中和器、14…容器本体、15…蓋体、16…上面、17…底壁、18…周壁、19…パネル部、20…突出部、21…溶着部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6