(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、定額制のルートはあらかじめ固定されていた。つまり、顧客の乗車位置が定額制のルートから外れている場合、近くに定額制のルートがあっても利用することはできなかった。また、複数の定額制のルートの中から、乗客が所望のルートを選択することはできなかった。
【0006】
また、ルートが一旦設定されると、そのルートの定額料金は一律に決められていた。このため、ルートの一部を使用している場合でも、同一の定額料金しか提示されなかった。また、同じルートであっても、割増運賃や障害者割引等は、定額料金に反映されなかった。このように、従来の定額料金は、多様な運行形態に適したものとなっていなかった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、定額料金が設定された複数のルートの中から適切なルートを選択でき、多様な運行形態に適した定額料金を提示できるタクシーメータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るタクシーメータは、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 所定の条件に基づいて運賃を算出する運賃算出部と、車両の現在地を表す座標を取得する現在地取得部と、前記車両に乗客が乗車したと判定した場合に前記現在地の座標を乗車地座標として設定する乗車地設定部と、前記車両が降車地に着いたと判定した場合に前記現在地の座標を降車地座標として設定する降車地設定部と、区間に応じた定額料金が設定された複数のルートを記憶するルート記憶部と、を備え、前記運賃算出部は、前記所定の条件として前記定額料金を用いた運賃の算出が指定された場合には、前記乗車地座標および前記降車地座標と、各前記ルートとの位置関係に基づいて複数の前記ルートの中から使用ルートを選択し、前記乗車地座標、前記降車地座標および前記使用ルートに基づいて運賃を算出する、ことを特徴とするタクシーメータ。
【0009】
(2) 前記ルート記憶部は、各前記ルートと、各前記ルートの目的地を表すルート座標とを対応付けて記憶するルート記憶領域を有し、前記運賃算出部は、前記乗車地座標および前記降車地座標のうちの一方との距離が最も短くなる前記ルート座標に対応したルートを前記使用ルートとして選択する、ことを特徴とする上記(1)に記載のタクシーメータ。
【0010】
(3) 前記ルート記憶部は、各前記ルートと、各前記ルート上の複数の地点を表す地点座標とを対応付けて記憶する地点記憶領域を更に有し、前記運賃算出部は、前記使用ルートに対応付けられた地点座標のうち、前記乗車地座標および前記降車地座標のうちの他方との距離が最も短くなる地点座標に基づいて前記区間を選択する、ことを特徴とする上記(2)に記載のタクシーメータ。
【0011】
(4) 前記乗車地設定部は、前記運賃の算出開始に関するタリフボタンが操作された場合に前記乗客が乗車したと判定し、前記降車地設定部は、前記運賃の決定に関するタリフボタンが操作された場合に前記降車地に着いたと判定する、ことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のタクシーメータ。
【0012】
上記(1)の構成のタクシーメータによれば、複数のルートに応じた定額料金を設定することができる。また、乗客の乗車地と降車地とに基づいて、定額料金が設定された複数のルートの中から適切なルートを選択でき、多様な運行形態に適した定額料金を提示できる。
【0013】
上記(2)の構成のタクシーメータによれば、乗車地あるいは降車地の一方とルートの目的地との間の距離から、適切なルートを簡便に選択できる。
【0014】
上記(3)の構成のタクシーメータによれば、選択された使用ルートのうち、利用した区間の定額料金を簡便に算出できる。また、利用区間に応じた定額料金が設定されるので、乗客にとってタクシーを定額料金で利用する際の利便性が向上し、タクシー会社にとってもタクシー車両を利用する顧客の増加が期待される。また、定額料金が区間に応じて異なる場合でも正しい定額料金が算出されるので、乗務員にとっても利便性が向上する。
【0015】
上記(4)の構成のタクシーメータによれば、営業時における乗務員の通常の操作で乗車地及び降車地の設定が行える。したがって、乗務員にとって定額料金を利用する際の特別な操作が不要となる使い勝手が良いタクシーメータを提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、定額料金が設定された複数のルートの中から適切なルートを選択でき、多様な運行形態に適した定額料金を提示できる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は、タクシーメータ10の外観を示す斜視図である。タクシーメータ10は、箱形の筐体10zを有する。筐体10zの前面には、表示器15及び入力部16(
図2参照)を有するタッチパネルTP(
図2参照)が配置される。運賃等を表示する表示器15の画面には、入力部16(
図2参照)の一部である各種ボタンb1〜b5,b11〜b15が配置される。各種ボタンとして、表示器15の画面の右側には、空車ボタンb1、実車(賃走)ボタンb2、支払ボタンb3、合計ボタンb4及び迎車ボタンb5が配置される。また、表示器15の画面の下側には、高速ボタンb11、貸切ボタンb12、予約ボタンb13、定額ボタンb14及び障碍者割引ボタンb15が配置される。また、筐体10zの下方には、メモリカード14A(
図2参照)が挿抜自在に装着される挿入口14zが配置される。
【0020】
図2は、タクシーメータ10のハードウェア構成を示す図である。タクシーメータ10は、CPU11、ROM12、RAM13、カードリーダライタ(R/W)インタフェース14、表示器15、入力部16、インタフェース(I/F)17A、17B、及びRTC(時計IC)18を有する。I/F17Aには、GPS受信器20が接続される。I/F17Bには、ETC車載器19が接続される。
【0021】
CPU11は、タクシーメータ10の全体の動作を制御する。CPU11内部の入力ポートには、車両の速度を表す速度パルスを出力する車速センサ36が接続される。CPU11は、車速センサ36から出力される速度パルスを入力し、この速度パルスから得られる走行距離と、RTC18で計時される走行時間とから、運賃を算出する。通常の賃走時、CPU11は、走行距離または走行時間がそれぞれ一定値に達すると、課金をアップする。また、高速道路の賃走時、CPU11は、走行時間による課金を停止し、走行距離による課金アップだけを行う。同様に、乗客待ちや渋滞時、CPU11は、走行距離による課金を停止し、走行時間による課金アップだけを行う。
【0022】
また、CPU11は、タリフ状態の入力として、各種ボタンの選択を受け付ける。例えば、CPU11は、定額ボタンb14が選択されると、定額料金を計算し、表示器15に定額料金の画面を表示させる。なお、定額ボタンb14の押下は、営業状態(実車、賃走、割増、貸切、支払、合計の各状態)で可能である。
【0023】
ROM12は、CPU11が実行する動作プログラムを格納する。また、ROM12は、定額マスタファイル(定額マスタとも略する)40を保持する。定額マスタ40には、定額料金の計算に用いられる、ルート座標マスタファイル(ルート座標マスタとも略する)41、座標マスタファイル(座標マスタとも略する)42、及び料金マスタファイル(料金マスタと称する)43が含まれる。
【0024】
図3は、ルート座標マスタ41、座標マスタ42及び料金マスタ43の登録内容を示すテーブルである。ルート座標マスタ41には、
図3(A)に示すように、ルートを特定するために使用される緯度経度データが登録されている。具体的に、ルート座標マスタ41は、ルート毎に、ルート番号(No.)、深夜早朝割増時間設定、深夜時間設定、早朝時間設定、GPSデータ(緯度)、GPSデータ(経度)及びルート名称から構成されるデータを含む。GPSデータ(緯度)及びGPSデータ(経度)は、ルートの目的地の座標データである(
図12参照)。ルート座標マスタ41では、最大5ルートが設定可能である。ここで、ルートとは、定額料金が設定されているパターン(ユーザ毎に自由に設定可能で、例えば、東京駅定額、羽田空港定額等)を意味する。ルートは、各パターン(ルート)の目的地(東京駅、羽田空港)と、複数の降車地(または乗車地)を含むように決定される。
【0025】
また、各パターンの目的地は、到着地であっても、出発地であってもよい。例えば、東京駅定額は、東京駅に向かうパターンと、東京駅から出発するパターンとの両方に用いられる。但し、タクシーメータは、乗客が目的地から出発したのか、目的地に向かっているかを判断できない。このため、タクシーメータは、乗車地および降車地のそれぞれと、目的地との距離が最短になるものを選択する。つまり、乗客がある地点から東京駅に向かった場合、降車地と東京駅との距離が最も短くなるので、タクシーメータは、目的地を到着地とする。一方、乗客が羽田空港からある地点に向かった場合、乗車地と羽田空港との距離が最も短くなるので、タクシーメータは、目的地を出発地とする。
【0026】
座標マスタ42には、
図3(B)に示すように、ルート特定後、区間を特定するために使用される各地点の緯度経度データが登録されている。具体的に、座標マスタ42は、座標番号(No.)、座標名称、GPSデータ(緯度)及びGPSデータ(経度)から構成されるデータを含む。GPSデータ(緯度)及びGPSデータ(経度)は、特定されたルートに対し登録された地点の座標データである。1つのルートに対し、30か所の地点座標を登録可能である(
図13参照)。ここで、登録された地点とは、特定されたルートに対し定額料金が設定された地点であり、例えば、各市区町村の役所、各鉄道駅、各市区町村の中央付近等の場所を表す。
【0027】
また、料金マスタ43は、
図3(C)に示すように、ルートと地点毎に分類された料金系のテーブルを有する。具体的に、料金マスタ43は、ルートNo.、座標No.、通常料金、割引料金、深夜料金、深夜+割引料金を含む。ここで、利用する区間の定額料金は、「乗車地に最短の地点−目的地」、「目的地−降車地に最短の地点」等のように、各ルートに対し登録された地点毎に設定される(
図14参照)。
【0028】
RAM13は、CPU11が動作プログラムを実行する際のワーキングメモリとして使用される。
【0029】
カードリーダライタ(R/W)インタフェース(I/F)14には、乗務員によって所持され、各種データの読み書きが行われるメモリカード14Aが挿抜自在に装着される。メモリカード14Aには、接触で読み書きを行うSDカードやCF(登録商標)カード等のメモリカードの他、非接触で読み書き可能なICカードや磁気カード等が用いられる。このメモリカード14Aは、事務所側のデータ処理装置に対しても、挿抜自在に装着可能である。
【0030】
GPS受信器20は、I/F17Aに接続されており、GPS衛星から時刻データを受信し、タクシー車両8の現在位置を算出可能である。ETC車載器19は、I/F17Bに接続されている。RTC(時計IC)18は、現在時刻を計時する。RTC18によって計時される時刻は、車両の運転状態を表す走行データとともにRAM13に記録される。
【0031】
表示器15は、前述したように、タクシーメータ10における各種データを表示する。また、入力部16は、乗務員等による入力操作を受け付ける。本実施形態では、表示器15と入力部16は、重なるように一体に組み合わされたタッチパネルTPで構成される。タッチパネルを用いた場合、乗務員がタッチパネルTPに表示された各種ボタンをタッチ操作することで、タクシーメータ10は、入力された情報を受け付ける。なお、表示器15と入力部16とは、それぞれ単体のデバイスとして設けられていてもよい。この場合、表示器は、液晶表示器(LCD)、有機EL、プラズマディスプレイ、LED等の表示デバイスにより構成される。また、入力部は、タッチセンサ、タッチパッド、マウス、キーボード、トラックボール等の入力デバイスにより構成される。
【0032】
上記構成を有するタクシーメータ10の動作を示す。
図4及び
図5は、料金表示動作手順を示すフローチャートである。タクシーメータ10のCPU11は、実車ボタンb2が押下されるまで待つ(S1)。実車ボタンb2の押下は、運賃の算出開始に関するタリフボタンの操作である。CPU11は、実車ボタンb2が押下されると、乗客が乗車したと判定する。実車ボタンb2が押下されて賃走が開始されると、CPU11は、賃走後に支払ボタンb3が押下されるまで待つ(S2)。支払ボタンb3の押下は、運賃の決定に関するタリフボタンの操作である。CPU11は、支払ボタンb3が押下されると、降車地に着いたと判定する。
【0033】
支払ボタンb3が押下されると、CPU11は、賃走中に定額ボタンb14が押下されたか否かを判別する(S3)。定額ボタンb14が押下されていない場合、CPU11は、走行距離と走行時間とから通常料金の運賃を算出し、この通常料金による支払画面(
図1参照)を表示器15に表示させる(S4)。なお、支払画面の代わりに合計画面に通常料金が表示されてもよい。CPU11は、乗務員によって賃走後に定額ボタンb14が押下されたか否かを判別する(S5)。定額ボタンb14が押下されない場合、CPU11は本動作を終了する。
【0034】
一方、ステップS3で賃走中に定額ボタンb14が押下された場合、あるいはステップS5で賃走後に定額ボタンb14が押下された場合、CPU11は、定額マスタ40の有無を判別する(S6)。定額マスタ40が無い場合、CPU11は、通常料金の支払画面のまま遷移せず(S7)、本動作を終了する。
【0035】
また、ステップS6で定額マスタ40が有る場合、CPU11は、自動検索画面GM1を表示する(S8)。
図6は自動検索画面GM1を示す図である。この自動検索画面GM1では、出発地が千代田区、到着地(目的地)が羽田空港である。また、自動検索画面GM1には、出発地および到着地を選択する項目が設けられる。ここでは、出発地の候補地として、台東区、文京区が挙げられ、それぞれ変更ボタンb51,b52を押下することで変更可能である。また、到着地の候補として、成田空港、TDRが挙げられ、それぞれ変更ボタン53,b54を押下することで変更可能である。また、自動検索画面GM1には、戻るボタンb21、置換ボタンb22、手動ボタンb23及び確定ボタンb24が配置される。
【0036】
CPU11は、この自動検索画面GM1において、確定ボタンb24が押下されたか否かを判別する(S9)。確定ボタンb24が押下されると、CPU11は、定額料金を算出し(S10)、この定額料金を支払画面または合計画面に表示する(S11)。自動検索画面GM1において、定額料金を算出する具体的な手順については、
図12〜
図14を用いて後述する。この後、CPU11は、本動作を終了する。なお、定額料金を確定した後、定額ボタンb14が例えば長押し操作されると、定額料金はキャンセル扱いとなる。
【0037】
一方、ステップS9で確定ボタンb24が押下されない場合、CPU11は、手動ボタンb23あるいは戻るボタンb21が押下されたか、それともこれらのボタンが押下されないかを判別する(S12)。これらのボタンが押下されない場合、CPU11は、ステップS8の処理に戻る。また、戻るボタンb21が押下された場合、CPU11は、支払画面あるいは合計画面に通常料金を表示する(S13)。この後、CPU11は、本動作を終了する。なお、定額料金から通常料金への表示は、定額料金の確定前であれば、戻るボタンb21の押下の他、実車ボタンb2の押下によっても可能である。
【0038】
また一方、ステップS12で手動ボタンb23が押下された場合、ルート及び目的地を選択する手動検索画面GM2,GM3を表示する(S14)。
図7は手動検索画面GM2,GM3を示す図である。
図7(A)は、ルートタブtb1が選択された場合の手動検索画面GM2を示す。手動検索画面GM2では、手動でルートを選択することが可能である。
図7(A)に示すように、現在設定されている定額ルートは、羽田空港定額である。乗務員は、ルートの候補地として、選択ボタンb61,b62,b63,b64を押下することで、それぞれ成田空港定額、東京駅定額、TDR定額、新宿駅定額を選択可能である。また、上矢印キー65、下矢印キー66を押下することで、登録されているルートの候補地が選択可能に表示される。
【0039】
図7(B)は、乗車・目的地タブtb2が選択された場合の手動検索画面GM3を示す。手動検索画面GM3では、手動で乗車・目的地を選択することが可能である。
図7(B)に示すように、羽田空港定額のルートに対し、現在設定されている乗車・目的地は、港区である。乗務員は、乗車・目的地の候補地として、選択ボタンb71,b72,b73,b74を押下することで、それぞれ千代田区、中央区、新宿区、文京区を選択可能である。また、上矢印キー75、下矢印キー76を押下することで、登録されている乗車・目的地の候補地が選択可能に表示される。
【0040】
これらの選択によってルート及び乗車・目的地が設定されると、定額ルートとして、乗車・目的地とルートが特定される。なお、乗車・目的地とルートの選択は、どちらが先に行われてもよい。また、手動検索画面GM2,GM3のいずれにおいても、戻るボタンb31、確定ボタンb34が配置される。
【0041】
CPU11は、手動検索画面GM2,GM3において、確定ボタンb34が押下されたか否かを判別する(S15)。ステップS15で確定ボタンb34が押下された場合、CPU11は、定額料金を算出し(S16)、この定額料金を支払画面または合計画面に表示する(S17)。この後、CPU11は、本動作を終了する。一方、ステップS15で戻るボタンb31が押下された場合、CPU11は、支払画面あるいは合計画面に、走行距離と走行時間に基づく通常料金を表示する(S13)。なお、定額料金を確定した後、定額ボタンb14が例えば長押し操作されると、定額料金はキャンセル扱いとなる。
【0042】
図8は、ステップS10及びS16における定額料金算出手順を示すフローチャートである。CPU11は、まず、ルート及び利用した区間を特定する(S21)。CPU11は、ルート座標マスタ41を用いて、確定したルートのルート番号(ルートNo.)を参照する(S22)。CPU11は、座標マスタ42を用いて、確定した区間の座標番号(座標No.)を参照する(S23)。
【0043】
CPU11は、ステップS21,S22で参照したルート番号と座標番号の組み合わせで料金マスタ43を検索して定額料金を算出する(S24)。CPU11は、RTC18で計時される現在時刻、障碍者割引ボタンb15の押下等の情報を元に、料金系を判定する(S25)。
図9は料金系を示す図である。料金系は、全区間割引の有無、及び深夜早朝割増時間帯の有無によって、4つの区分に大別される。具体的に、全区間割引あり、かつ深夜早朝割増時間帯である場合、深夜料金と割引料金が適用されて定額料金が変更される。また、全区間割引あり、かつ深夜早朝割増時間帯でない場合、割引料金が適用されて定額料金が変更される。また、全区間割引なし、かつ深夜早朝割増時間帯である場合、深夜料金が適用されて定額料金が変更される。また、全区間割引なし、かつ深夜早朝割増時間帯でない場合、変更されることなく通常の定額料金(通常料金)が適用される。
【0044】
CPU11は、判定した料金系に基づき、ステップS24で料金マスタ43を検索した結果得られた定額料金を料金系の料金で置き換える(S26)。なお、ここでは、一旦、通常の定額料金を算出してから料金系の料金で置き換えたが、通常の定額料金を算出することなく料金系に合わせた定額料金を直接算出してもよい。この後、CPU11は、本動作を終了する。
【0045】
図10は、ステップS21におけるルート・区間特定手順を示すフローチャートである。CPU11は、まず、タクシー車両8の乗車地及び降車地(乗降車地)のGPSデータと、ルート座標マスタ41に登録された全てのルートの目的地のGPSデータとを用い、各2点間距離を求める(S31)。CPU11は、2点間距離が短い目的地を持つ上位3つのルートを候補として検索結果に上げる(S32)。定額ルートの第1候補として、2点間距離が最も短い目的地を持つルートが特定される。検索結果に上がった残りのルートは、第2、第3候補のルートとして手動で選択可能である。
【0046】
図11は、2点間距離の求め方を説明する図である。本来、GPS座標から2点間距離を求める場合、地球の形状を加味して計算する必要があり、単純な三角関数から2点間距離を求めることはできない。しかし、2点間距離が地球規模から比べると小さいこと、正確な長さを必要とせず、比が分かればよい場合、数式(1)に示すように、単純な三角関数で2点間距離を求めてもよい。
Δx = λ2 − λ1
Δy = φ2 − φ1
L = (Δx
2 + Δy
2)
1/2 …… (1)
ここで、(λ1,φ1)は、A地点の経度・緯度データである。(λ2,φ2)は、B地点の経度・緯度データである。Δxは経度差である。Δyは緯度差である。LはA地点とB地点間の距離である。
【0047】
また、CPU11は、ルート検索で使用しなかった乗車地または降車地のGPSテータと、座標マスタ42に登録された、特定されたルートに対応する全地点のGPSデータとの2点間距離を求める(S33)。ここで、ルート検索で使用しなかった乗車地または降車地のGPSデータとは、S31で降車地のGPSデータを使用した場合には乗車地のGPSデータであり、S31で乗車地のGPSデータを使用した場合には降車地のGPSデータである。また、座標マスタ42に登録された全地点のGPSデータとは、特定されたルートに対し、定額料金が設定された全ての地点のGPSデータである。
【0048】
CPU11は、2点間距離が短い、上位3地点をルートの基点である乗車・目的地(
図7(B)参照)の候補として検索結果に上げる(S34)。検索の結果、利用した区間を求めるための乗車・目的地の第1候補として、2点間距離が最も短い地点が特定される。検索結果に上がった残りの地点は、第2、第3候補の乗車・目的地として手動で選択可能である。このように、2点間距離が最も短い目的地を持つルート、及び2点間距離が最も短い地点から、ルート及び区間が特定される。この後、CPU11は、本動作を終了する。
【0049】
ルート及び区間の特定及び定額料金の算出について具体的に説明する。例えば、乗客がタクシー車両に乗車した乗車地の座標データは、(緯度15,経度30)であると想定する。
図12は、ルート座標マスタ41に登録されたルートを説明する図である。図中、縦軸は緯度を表し、横軸は経度を表す。ここでは、ルート座標マスタ41に4つのルートが登録されている。ルートAの目的地は、(緯度3,経度2)の座標データを有する。同様に、ルートB,C,Dの目的地は、それぞれ(緯度−1,経度4)、(緯度−4,経度−4)、(緯度2,経度−4)の座標データを有する。
【0050】
タクシーメータ10は、ルート座標マスタ41に登録された4つのルートの目的地の座標データと、乗車地・降車地の座標データとを比較し、比較の結果、ルートAの目的地の座標(緯度3,経度2)と降車地の座標(緯度3,経度3)との2点間距離が最も短いので、ルートAを特定する。このように、定額ルートの目的地は、「羽田空港」、「成田空港」、「TDR」等、広く離れた場所であるので、この方法でルートを確定することができる。
【0051】
図13は、
図12で特定されたルートに対し利用する区間を特定する地点を説明する図である。図中、縦軸は緯度を表し、横軸は経度を表す。ここでは、特定されたルートAに対し、座標マスタ42には、5つの地点Aa,Ab,Ac,Ad,Aeの座標データ(図中、丸印)が登録されている。なお、図中、左下隅には、降車地点の座標データ(図中、丸印)が示されている。タクシーメータ10は、ルートAの特定に使用しなかった方の座標、ここでは乗車地の座標データ(緯度15,経度30)と、座標マスタ42に登録された5つの地点の座標データとを比較し、これらの2点間距離が最も短くなる地点Acを選択する。この結果、定額料金に用いられるルートと利用した区間とが確定する。
【0052】
タクシーメータ10は、ルート座標マスタ41を用いて得られたルートAと、座標マスタ42を用いて得られた地点Acとに基づき、料金マスタ43を用いて定額料金を算出する。
図14は、料金マスタ43に登録された定額料金の料金系を示すテーブルである。
図14(A)は、ルートAの各地点における定額料金の料金系を示す。
図14(B)は、ルートBの各地点における定額料金の料金系を示す。前述したように、ルートA及び地点Acが確定し、また、障碍者割引ボタンb15が押下無し、かつ、通常時間帯である場合、タクシーメータ10で算出される定額料金は、通常料金の7000円となる。
【0053】
本実施形態のタクシーメータ10では、CPU11(運賃算出部)は、所定の条件に基づいて運賃を算出する。CPU11(現在地取得部)は、タクシー車両8の現在地を表す座標を取得する。CPU11(乗車地設定部)は、タクシー車両8に乗客が乗車したと判定した場合に現在地の座標を乗車地座標として設定する。CPU11(降車地設定部)は、タクシー車両8が降車地に着いたと判定した場合に現在地の座標を降車地座標として設定する。タクシーメータ10は、区間に応じた定額料金が設定された複数のルートを記憶する定額マスタ40(ルート記憶部)を備える。CPU11は、定額料金を用いた運賃の算出が指定された場合には、乗車地座標および降車地座標と、各ルートとの位置関係に基づいて複数のルートの中から使用ルートを選択し、乗車地座標、降車地座標および使用ルートに基づいて運賃を算出する。これにより、複数のルートに応じた定額料金を設定することができる。また、乗客の乗車地と降車地とに基づいて、定額料金が設定された複数のルートの中から適切なルートを選択でき、多様な運行形態に適した定額料金を提示できる。
【0054】
また、定額マスタ40は、各ルートと、各ルートの目的地を表すルート座標とを対応付けて記憶するルート座標マスタ41(ルート記憶領域)を有する。CPU11は、乗車地座標および降車地座標のうちの一方との距離が最も短くなるルート座標に対応したルートを使用ルートとして選択する。これにより、乗車地あるいは降車地の一方とルートの目的地との間の距離から、適切なルートを簡便に選択できる。
【0055】
また、定額マスタ40は、各ルートと、各ルートに対し設定された複数の地点を表す地点座標とを対応付けて記憶する座標マスタ42(地点記憶領域)を更に有する。CPU11は、使用ルートに対応付けられた地点座標のうち、乗車地座標および降車地座標のうちの他方との距離が最も短くなる地点座標に基づいて区間を選択する。これにより、選択された使用ルートのうち、利用した区間の定額料金を簡便に算出できる。また、利用区間に応じた定額料金が設定されるので、乗客にとってタクシーを定額料金で利用する際の利便性が向上し、タクシー会社にとってもタクシー車両を利用する顧客の増加が期待される。また、定額料金が区間に応じて異なる場合でも正しい定額料金が算出されるので、乗務員にとっても利便性が向上する。
【0056】
また、CPU11は、実車ボタンb2が押下された場合(運賃の算出開始に関するタリフボタンが操作された場合)に乗客が乗車したと判定し、支払ボタンb3が押下された場合(運賃の決定に関するタリフボタンが操作された場合)に降車地に着いたと判定する。これにより、営業時における乗務員の通常の操作で乗車地及び降車地の設定が行える。したがって、乗務員にとって定額料金を利用する際の特別な操作が不要となる使い勝手が良いタクシーメータを提供できる。
【0057】
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態は、本発明の技術的範囲内で種々の変形や改良等を伴うことができる。
【0058】
例えば、上記実施形態では、運賃の算出開始に関するタリフボタンの操作として、実車ボタンの押下を示したが、割増ボタン、貸切ボタン等の押下であってもよい。また、運賃の決定に関するタリフボタンの操作として、支払ボタンの押下を示したが、合計ボタンの押下であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、定額マスタは、ルート座標マスタと座標マスタの両方を有していたが、ルート座標マスタだけを有してもよく、定額料金が設定された複数のルートの中から使用ルートを選択することで、適切なルートの選択だけも可能である。
【0060】
ここで、上述した本発明に係るタクシーメータの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 所定の条件に基づいて運賃を算出する運賃算出部と、
車両の現在地を表す座標を取得する現在地取得部と、
前記車両に乗客が乗車したと判定した場合に前記現在地の座標を乗車地座標として設定する乗車地設定部と、
前記車両が降車地に着いたと判定した場合に前記現在地の座標を降車地座標として設定する降車地設定部と、
区間に応じた定額料金が設定された複数のルートを記憶するルート記憶部と、
を備え、
前記運賃算出部は、前記所定の条件として前記定額料金を用いた運賃の算出が指定された場合には、前記乗車地座標および前記降車地座標と、各前記ルートとの位置関係に基づいて複数の前記ルートの中から使用ルートを選択し、前記乗車地座標、前記降車地座標および前記使用ルートに基づいて運賃を算出する、
ことを特徴とするタクシーメータ。
[2] 前記ルート記憶部は、各前記ルートと、各前記ルートの目的地を表すルート座標とを対応付けて記憶するルート記憶領域を有し、
前記運賃算出部は、前記乗車地座標および前記降車地座標のうちの一方との距離が最も短くなる前記ルート座標に対応したルートを前記使用ルートとして選択する、
ことを特徴とする[1]に記載のタクシーメータ。
[3] 前記ルート記憶部は、各前記ルートと、各前記ルート上の複数の地点を表す地点座標とを対応付けて記憶する地点記憶領域を更に有し、
前記運賃算出部は、前記使用ルートに対応付けられた地点座標のうち、前記乗車地座標および前記降車地座標のうちの他方との距離が最も短くなる地点座標に基づいて前記区間を選択する、
ことを特徴とする[2]に記載のタクシーメータ。
[4] 前記乗車地設定部は、前記運賃の算出開始に関するタリフボタンが操作された場合に前記乗客が乗車したと判定し、
前記降車地設定部は、前記運賃の決定に関するタリフボタンが操作された場合に前記降車地に着いたと判定する、
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載のタクシーメータ。