特許第6830483号(P6830483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830483
(24)【登録日】2021年1月28日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】中性子捕捉療法システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   A61N5/10 H
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-523819(P2018-523819)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公表番号】特表2018-534070(P2018-534070A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】CN2016102332
(87)【国際公開番号】WO2017080344
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】201510770609.1
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201520901136.X
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515153495
【氏名又は名称】南京中硼▲聯▼康医▲療▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Medtech Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼渊豪
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲韋▼霖
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−022920(JP,A)
【文献】 特開2009−204428(JP,A)
【文献】 特開2012−050698(JP,A)
【文献】 特開2007−240330(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0330084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム成形体を含み、前記ビーム成形体は、ビーム入口、ビーム成形体内に設けられた中性子発生部、中性子発生部に隣接する減速体、中性子発生部と減速体の外を囲む反射体、およびビーム出口を含み、前記中性子発生部は前記ビーム入口から入射する陽子ビームとの核反応により中性子を発生させ、前記減速体は前記中性子発生部から発生する中性子を減速させ、前記反射体はオフセット中性子を前記減速体にガイドし戻して熱外中性子ビーム強度を向上させ、前記ビーム成形体は、中性子発生部から離れる方向または中性子発生部に近づく方向へ移動する少なくとも1つの可動部材を含み、前記可動部材は第一位置と第二位置とを有し、前記可動部材は該第一位置と第二位置との間を移動し、可動部材が第一位置にある時には中性子発生部を交換することができ、可動部材が第二位置にある時には中性子発生部を交換することができず、
前記反射体は第一接続部を有し、前記可動部材は第二接続部を有し、前記可動部材が前記第一位置にある時、前記第一接続部と前記第二接続部とは離れており、前記可動部材が前記第二位置にある時、前記第一接続部と前記第二接続部とは接続されており
前記可動部材は、一部の反射体、または、一部の反射体と一部の減速体との組み合わせである、
ことを特徴とする、
中性子捕捉療法システム。
【請求項2】
前記可動部材は対称平面を有し、前記可動部材は該対称平面に沿って対称になり、前記中性子発生部は軸線を有し、前記可動部材の対称平面を前記中性子発生部の軸線が通り、前記反射体は第一直線高さを有し、前記可動部材は第二直線高さを有し、前記中性子発生部は第三直線高さを有し、前記第二直線高さは第一直線高さ以下であり、かつ第三直線高さより大きい、ことを特徴とする、
請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項3】
前記第一接続部は第一接続面と第一結合面とを有し、前記第二接続部は第二接続面と第二結合面とを有し、前記可動部材の第二直線高さが、反射体の第一直線高さより小さく、中性子発生部の第三直線高さより大きい時、前記反射体の第一接続面は第一結合面と重なり、前記可動部材の第二接続面は第二結合面と重なり、前記可動部材の第二結合面は反射体の第一結合面に接続され、かつ前記中性子発生部の軸線の位置がいずれか1つの平面と重なる、ことを特徴とする、
請求項に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項4】
前記第一接続部は第一接続面と第一結合面とを有し、前記第二接続部は第二接続面と第二結合面とを有し、前記可動部材の第二直線高さが反射体の第一直線高さに等しい時に、前記第一接続面は第一結合面と接続するが、異なる平面に位置し、前記第二接続面は第二結合面と接続するが、異なる平面に位置し、前記第一接続面は第二接続面と接続し、第一結合面は第二結合面と接続する、ことを特徴とする、
請求項に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項5】
前記中性子捕捉療法システムは、駆動アセンブリをさらに含み、前記駆動アセンブリは、可動部材を支持するゲートと、ゲートが中性子発生部から離れる方向または中性子発生部に近づく方向へ移動することを可能にするガイドレールと、を含み、前記ゲートはガイドレールに沿ってビーム成形体から離れる方向またはビーム成形体に近づく方向へ移動し、ゲートがビーム成形体から離れる方向へ移動する時に、前記可動部材は中性子発生部から離れる方向へ移動し、ゲートがビーム成形体に近づく方向へ移動する時に、前記可動部材は中性子発生部に近づく方向へ移動する、ことを特徴とする、
請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項6】
前記ガイドレールはビーム成形体の外に設けられ、前記駆動アセンブリは、支持フレームをさらに含み、前記支持フレームの一端はゲートを支持し、他端はガイドレールを移動し、前記ゲートは、支持フレームと共にガイドレールに沿って移動し、ビーム成形体から離れる方向またはビーム成形体に近づく方向へ移動する、ことを特徴とする、
請求項に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項7】
前記中性子捕捉療法システムは、駆動アセンブリをさらに含み、前記駆動アセンブリは、ゲートと、ゲートを支持してゲートの回転を可能にする回転部材と、を含み、前記ゲートは可動部材を支持し、ゲートが回転アセンブリ周りに上方へ回転する時に、前記可動部材は中性子発生部に近づく方向へ移動し、ゲートが回転部材周りに下方へ回転する時に、前記可動部材は中性子発生部から離れる方向へ移動する、ことを特徴とする、
請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項8】
前記中性子捕捉療法用のシステムは、駆動アセンブリをさらに含み、前記駆動アセンブリは第一リンクと、第二リンクと、第一リンク及び第二リンクに接続された第三リンクと、を含み、前記第一リンクはビーム成形体の外に固定され、前記第二リンクの一端は可動部材に固定され、他端は第一リンクに接続され、前記第一リンクは第三リンクを駆動し、第三リンクは第二リンクを駆動し、これにより、可動部材を中性子発生部から離れる方向または中性子発生部に近づく方向へ移動させる、ことを特徴とする、
請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項9】
前記可動部材の第二直線高さが前記反射体の第一直線高さより小さく、かつ中性子発生部の第三直線高さより大きい場合、前記反射体内にガイドレールが設けられ、前記可動部材は、ビーム成形体に取り付けられ、かつ、ガイドレールに沿って中性子発生部から離れる方向または中性子発生部に近づく方向へ移動可能である、ことを特徴とする、
請求項に記載の中性子捕捉療法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中性子捕捉療法システムに関し、特に中性子発生部を交換できる中性子捕捉療法システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、すでにがん治療の主な手段の一つとなった。しかし、従来の光子または電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路上の数多くの正常組織に損傷を与える。また、腫瘍細胞により放射線に対する感受性の度合いが異なっており、従来の放射線療法では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が良くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織への放射線損傷を軽減するすために、化学療法(chemotherapy)における標的療法が、放射線療法に用いられている。また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では生物学的効果比(relative biological effectiveness, RBE)の高い放射線源が積極的に開発されて、例えば、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法などがある。このうち、中性子捕捉療法は、上記の2つの構想を結びつけたものである。例えば、ホウ素中性子捕捉療法では、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度な中性子ビームの制御と合わせることで、従来の放射線と比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
加速器ホウ素中性子捕捉療法において、陽子ビームと核反応により中性子を発生させる中性子発生部には、加速陽子照射および放射線を受けてある程度の損傷が発生する可能性がある。中性子発生部は、発生した中性子ビームの品質に非常に重要な影響を持つ。中性子発生部の中性子ビームの品質への影響を低減させるために、中性子発生部を定期的に交換する必要がある。
【0005】
しかしながら、従来技術における加速器ホウ素中性子捕捉療法の減速体は円柱体であることが多い。中性子発生部は、一般に所定の深さの減速体に配置され、中性子発生部が損傷して交換する必要があるときに、複数のステップを経てそれを解体しなければならず、このため中性子発生部の交換が実行しにくくなる可能性がある。
【0006】
したがって,上記問題を解決する新しい技術的解決手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は中性子捕捉療法システムを提供し、中性子捕捉療法システムは、ビーム成形体を含み、前記ビーム成形体は、ビーム入口、ビーム成形体内に設けられた中性子発生部、中性子発生部に隣接する減速体、中性子発生部と減速体の外を囲む反射体、およびビーム出口を含む。前記中性子発生部は前記ビーム入口から入射する陽子ビームとの核反応により中性子を発生させ、前記減速体は前記中性子発生部から発生する中性子を減速させ、前記反射体はオフセット中性子を前記減速体にガイドし戻して熱外中性子ビーム強度を向上させる。前記ビーム成形体は、中性子発生部に近づく方向または中性子発生部から離れる方向へ移動する少なくとも1つの可動部材を含む。前記可動部材は第一位置と第二位置との間を移動し、可動部材が第一位置にある時には中性子発生部を交換することができ、可動部材が第二位置にある時には中性子発生部を交換することができない。
【0008】
さらに、中性子発生部の交換を容易にするために、好ましくは、前記可動部材は、一部の反射体または一部の反射体と一部の減速体との組み合わせである。
さらに、中性子発生部を取り出しやすくするために、前記可動部材は対称平面を有し、前記可動部材は該対称平面に沿って対称になり、前記中性子発生部は軸線を有し、前記可部材の対称平面を前記中性子発生部の軸線が通り、前記反射体は第一直線高さを有し、前記可動部材は第二直線高さを有し、前記中性子発生部は第三直線高さを有し、前記第二直線高さは第一直線高さ以下であり、かつ第三直線高さより大きい。
【0009】
さらに、前記可動部材の第二直線高さが反射体の第一直線高さに等しい時に、可動部材と反射体との間の結合面が平面と平面との間の接続である場合、中性子捕捉療法の実行中に発生した放射線は、該結合面によって漏洩し、好ましくは、前記反射体は第一接続部を有し、前記第一接続部は第一接続面と第一結合面とを有し、前記可動部材は第二接続部を有し、前記第二接続部は第二接続面と第二結合面とを有する。可動部材の第二直線高さが、反射体の第一直線高さより小さく、中性子発生部の第三直線高さより大きい時、前記反射体の第一接続面は第一結合面と重なり、前記可動部材の第二接続面は第二結合面と重なり、前記可動部材の第二結合面は反射体の第一結合面と接続され、かつ前記中性子発生部の軸線の位置がいずれか1つの平面と重なる。
【0010】
さらに、前記反射体は第一接続部を有し、前記第一接続部は第一接続面と第一結合面とを有し、前記可動部材は第二接続部を有し、前記第二接続部は第二接続面と第二結合面とを有し、前記可動部材の第二直線高さが反射体の第一直線高さに等しい時に、前記第一接続面は第一結合面と接続するが、異なる平面に位置し、前記第二接続面は第二結合面と接続するが、異なる平面に位置し、前記第一接続面は第二接続面と接続し、第一結合面は第二結合面と接続する。
【0011】
さらに、前記中性子捕捉療法システムは、駆動アセンブリをさらに含み、前記駆動アセンブリは、可動部材を支持するゲートと、ゲートが中性子発生部から離れる方向または中性子発生部に近づく方向へ移動することを可能にするガイドレールとを含み、前記ゲートはガイドレールに沿ってビーム成形体から離れる方向またはビーム成形体に近づく方向へ移動し、ゲートがビーム成形体から離れる方向へ移動する時に、前記可動部材は中性子発生部から離れる方向へ移動し、ゲートがビーム成形体に近づく方向へ移動する時に、前記可動部材は中性子発生部に近づく方向へ移動する。
【0012】
さらに、前記ガイドレールはビーム成形体の外に設けられ、前記駆動アセンブリは、支持フレームをさらに含み、前記支持フレームの一端はゲートを支持し、他端はガイドレールを移動し、前記ゲートは、支持フレームと共にガイドレールに沿って移動し、ビーム成形体から離れる方向またはビーム成形体に近づく方向へ移動する。
【0013】
さらに、前記中性子捕捉療法システムは、駆動アセンブリをさらに含み、前記駆動アセンブリは、ゲートと、ゲートを支持してゲートの回転を可能にする回転部材と、を含み、前記ゲートは可動部材を支持し、ゲートが回転部材周りに上方へ回転する時に、前記可動部材は中性子発生部に近づく方向へ移動し、ゲートが回転部材周りに下方へ回転する時に、前記可動部材は中性子発生部から離れる方向へ移動する。
【0014】
さらに、前記中性子捕捉療法システムは、駆動アセンブリをさらに含み、前記駆動アセンブリは第一リンクと、第二リンクと、第一リンクおよび第二リンクに接続された第三リンクと、を含む。前記第一リンクはビーム成形体の外に固定され、前記第二リンクの一端は可動部材に固定され、他端は第一リンクに接続される。前記第一リンクは第三リンクを駆動し、第三リンクは第二リンクを駆動し、これにより、可動部材を中性子発生部から離れる方向または中性子発生部に近づく方向へ移動させる。
【0015】
さらに、前記可動部材の第二直線高さが前記反射体の第一直線高さより小さく、かつ中性子発生部の第三直線高さより大きい場合、前記反射体内にガイドレールが設けられ、前記可動部材は、ビーム成形体に取り付けられ、かつ、ガイドレールに沿って中性子発生部から離れる方向または中性子発生部に近づく方向へ移動することができる。
【0016】
従来技術に比べ、本願は以下の有益な効果を有する。本願では、中性子発生部から離れる方向または中性子発生部に近づく方向へ移動可能な可動部材を設けることによって、中性子発生部を交換しやすく、構造がシンプルであり、柔軟に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本願に係る中性子捕捉療法システムの概略図である。
図2a図2aは第二位置にある本願に係る可動部材の概略図である。
図2b図2bは第一位置にある本願に係る可動部材の概略図である。
図3a図3aは本願に係る前記可動部材の第二結合面と反射体の第一結合面とが接続し前記中性子発生部の軸線が位置する平面と重なる概略図である。
図3b図3bは本願に係る可動部材の対称平面Aに沿う断面図である。
図4a図4aは反射体の第一接続面と第一結合面とが傾斜角を有するように設置される概略図である。
図4b図4bは可動部材の溝面と反射体の突出面とが互いに嵌合した状態を示す概略図である。
図5a図5aは可動部材の一部がゲートに嵌着された状態を示す概略図である。
図5b図5bは駆動アセンブリが支持フレームを有する概略図である。
図6図6は本願に係る実施例2の概略図である。
図7図7は本願に係る実施例3の概略図である。
図8図8は本願に係る実施例4の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
中性子捕捉療法は効果的ながん治療の手段として、近年ではその適用が増加しており、そのうち、ホウ素中性子捕捉療法が最も一般的なものとなった。ホウ素中性子捕捉療法に用いられる中性子は原子炉または加速器で供給できる。本発明の実施形態は加速器ホウ素中性子捕捉療法(Accelerated-based Boron Neutron Capture Therapy)を例とする。加速器ホウ素中性子捕捉療法の基本モジュールは、一般的に荷電粒子(陽子、デューテリウム原子核など)の加速に用いられる加速器、ターゲット、熱除去システム及びビーム整形アセンブリを含む。加速後の荷電粒子と金属ターゲットとの作用により中性子が生成され、必要な中性子収率及びエネルギー、提供可能な加速荷電粒子のエネルギー及び電流、及び、金属ターゲットの物理的・化学的特性などにより、適切な原子核反応が選定される。よく検討されている原子核反応は7Li(p,n)7Be及び9Be(p,n)9Bであり、この両方はすべて吸熱反応でエネルギー閾値がそれぞれ1.881MeVと2.055MeVである。ホウ素中性子捕捉療法の理想的中性子源はkeVエネルギーレベルの熱外中性子なので、理論的には、エネルギーが閾値よりやや高い陽子によるリチウムターゲットへの衝撃で、比較的低いエネルギーの中性子が生成され、あまり多くの減速処理を要しないで臨床適用が可能になる。しかし、リチウム(Li)及びベリリウム(Be)の2種のターゲットは、閾値エネルギーの陽子と作用する断面が大きくないので、十分な中性子束を確保するために、一般的には比較的高いエネルギーを持つ陽子で原子核反応を引き起こされる。
【0019】
理想的な中性子発生部は、中性子収率が高い、発生する中性子エネルギー分布が熱外中性子エネルギー領域に近い、過剰な放射線の発生がない、安全で操作しやすい、耐高温があるなどの特性を備えるべきであるが、実際には、全ての要件を満たす核反応がない。中性子発生部はホウ素中性子捕捉療法中に加速陽子の衝撃、放射を受けるため必然的に破損され、中性子発生部はビーム成形体が発生する中性子ビームの品質に大きな影響を与える。したがって、定期的にまたは中性子発生部への損傷に基づいて中性子発生部を交換する必要がある。以下に中性子発生部を交換可能な中性子捕捉療法システムを説明する。
【0020】
図1は、本願に係る中性子捕捉療法システム100の概略図である。前記中性子捕捉療法システム100は、ビーム成形体10と駆動アセンブリ20を含む。
前記ビーム成形体10は、ビーム入口11、中性子発生部12、中性子発生部12に隣接する減速体13、中性子発生部12と減速体13の外を囲む反射体14、およびビーム出口15を含む。前記中性子発生部12は、前記ビーム入口11から入射する陽子ビームとの核反応により中性子を発生させ、前記減速体13は前記中性子発生部12から発生する中性子を減速させ、前記反射体14はオフセット中性子を前記減速体13にガイドして戻して熱外中性子ビーム強度を向上させる。
【0021】
前記反射体14は、中性子発生部12から離れる方向または中性子発生部12に近づく方向へ移動可能な少なくとも1つの可動部材16を含む(図2aと図2b参照)。前記可動部材16は第一位置L1と第二位置L2との間を移動し、可動部材16が第一位置L1にある時には中性子発生部12を交換することができ、可動部材16が第二位置L2にある時には中性子発生部12を交換することができない。具体的には、前記可動部材16が中性子発生部12から離れた方向へ第一位置L1に移動する時に、中性子発生部12はビーム成形体10から露出し、中性子発生部12が取り出されて中性子発生部12が交換される。交換された中性子発生部12がビーム成形体10内に取り付けられた後に、前記可動部材16は中性子発生部12に近づく方向へ、(可動部材16が中性子発生部12の周囲を囲み、中性子発生部12を交換できない)第二位置L2に移動され、引き続く中性子捕捉療法中に該可動部材16は反射体14と共にオフセット中性子をガイドして戻す。
【0022】
前記可動部材16は、一部の反射体、または、一部の反射体と一部の減速体との組み合わせであることが可能である。可動部材16が一部の反射体である場合、中性子発生部12は減速体13の前方に設けられて反射体14により囲まれ、減速体13は中性子発生部12の後方に隣接し、この時に一部の反射体が可動構造(すなわち可動部材)に設置さればよく、可動部材が離れることで中性子発生部が交換される。可動部材16が一部の反射体と一部の減速体との組み合わせである場合に、中性子発生部12の一部は減速体13の前方に位置して反射体14により囲まれ、一部は減速体13に嵌着されて減速体13により囲み込まれ、この時に中性子発生部12を交換することができ、中性子発生部12の外に囲み込まれた一部の反射体と一部の減速体とを可動構造(すなわち可動部材)に設置し、これにより中性子発生部12の交換が実現される。
【0023】
図3aと図3bに示すように、中性子発生部12を交換しやすいように、好ましくは、前記可動部材16は対称部材であり、対称平面Aを有し、前記可動部材16は該対称平面Aに沿って対称である。前記対称平面Aを前記中性子発生部12の軸線Iが通り、前記反射体14は第一直線高さH1を有し、前記可動部材16は第二直線高さH2を有し、前記中性子発生部12は第三直線高さH3を有する。前記可動部材16の第二直線高さH2は反射体14の第一直線高さH1以下であり、かつ前記中性子発生部12の第三直線高さH3より大きい。
【0024】
図4aと図4bに示すように、前記反射体14は第一接続部140をさらに有し、前記可動部材16は第二接続部160を有する。前記第一接続部140は第一接続面141および第一接続面141に接続された第一結合面142を有し、前記第二接続部160は第二接続面161および第二接続面161に接続された第二結合面162を有する。
【0025】
前記可動部材16の第二直線高さH2が反射体14の第一直線高さH1より小さく、前記中性子発生部12の第三直線高さH3より大きい時に、前記反射体14の第一接続面141は第一結合面142と重なり、前記可動部材16の第二接続面161は第二結合面162と重なり、前記可動部材16の第二結合面162は反射体14の第一結合面142に接続され、かつ前記中性子発生部12の軸線の位置がいずれか1つの平面と重なる(図3a参照)。この時、前記可動部材16はすなわち反射体14の一部分であり、この場合、前記可動部材16は中性子発生部12から離れる方向へ第一位置L1に移動する時に、可動部材16は前記反射体14にノッチを形成し、前記中性子発生部12は該ノッチから露出され、該ノッチ箇所で中性子発生部12が交換される。前記可動部材16が中性子発生部12に近づく方向へ第二位置L2に移動する時に、前記可動部材16は前記中性子発生部12の周囲を囲み、引き続く中性子捕捉療法中に可動部材16は反射体14と共にオフセット中性子をガイドして戻す。
【0026】
可動部材16の第二直線高さH2が反射体14の第一直線高さH1に等しい時、前記可動部材16は、中性子発生部12の周囲を取り囲む反射体14の半分である。後続の中性子捕捉療法中に可動部材16と反射体14との接続箇所から漏れた粒子または放射線を低減するために、好ましくは、前記反射体14の第一接続面141と第一結合面142は異なる平面に位置し、前記可動部材16の第二接続面161と第二結合面162は異なる平面に位置し、前記第一接続面141は第二接続面161と接合され、第一結合面142は第二結合面162と接合される。第一接続部140と第二接続部160とは具体的に以下のように設置することができる(図4a参照)。第三接続面161と第二結合面162とは傾斜角度があるように設置され、前記第一結合面142と第一接続面141とは傾斜角度があるように設置され、前記2つの傾斜角度の和は180度である。可動部材16が前記中性子発生部12の周囲を取り囲む時に、前記第二結合面162は第一結合面142と接合され、第二接続面161は第一接続面141と接合される。第一接続部140と第二接続部160とは以下のように設置することができる(図4b参照)。前記第二結合面162は第二接続面161に凹設された凹部面であり、前記第一結合面142は第一接続面141から突出する突出面であり、可動部材16が前記中性子発生部12の周囲を取り囲む時に、凹部面と突出面とは互いに嵌合する。
【0027】
以下は駆動アセンブリ20の構造を詳細に説明する。また、以上で可動部材16の構造を詳細に説明したので、以下では繰り返し説明しないが、実際の適用においては、具体的な必要に応じて、上記可動部材の構造と以下の前記駆動アセンブリ20と組み合わせることができる。以下の実施例では、いずれも反射体が2つの可動部材を備える例を示すが、実際の適用で1つの可動部材16を設置することで中性子発生部12が交換しやすくできるならば、1つの可動部材を設置すればよい。
【0028】
図2aと図2bに示すものは本願の実施例1であり、該実施例では、反射体14が、中性子発生部12の両側に位置して互いに接続された2つの可動部材16(すなわち第一可動部材163と第二可動部材164)を有する場合を例にして説明する。前記駆動アセンブリ20は、ビーム成形体10の外に設けられたガイドレール21と、可動部材16を支持するゲート22とを含み、前記ゲート22はガイドレール21で移動して、可動部材16を中性子発生部12から離れる方向または中性子発生部12に近づく方向へ移動させる。可動部材16は第一可動部材163と第二可動部材164とを含み、前記ゲート22はガイドレール21に沿って移動する第一ゲート221と第二ゲート222とを含み、前記第一ゲート221は第一可動部材163を支持し、前記第二ゲート222は第二可動部材164を支持する。前記第一ゲート221と第二ゲート222はガイドレール21で移動して、第一可動部材163と第二可動部材164とのそれぞれを中性子発生部12から離れる方向または中性子発生部12に近づく方向へ移動させる。第一ゲート221と第二ゲート222とがそれぞれビーム成形体10から離れた方向へ第一位置L1に移動する時に、前記第一可動部材163及び第二可動部材164もそれぞれ中性子発生部12から離れる方向へ移動し、この時に中性子発生部12はビーム成形体10から露出し、中性子発生部12が交換される。第一ゲート221と第二ゲート222とがそれぞれ中性子発生部12に近づく方向へ第二位置L2に移動する時に、前記第一可動部材163及び第二可動部材164も中性子発生部12に近づく方向へ移動し、第一可動部材163と第二可動部材164とは中性子発生部12の周囲を取り囲み、その後の中性子捕捉療法中に、前記第一可動部材163と第二可動部材164とはオフセット中性子をガイドして戻すために用いられる。
【0029】
構造を設計しやすくするために、好ましくは、前記第一可動部材163と第二可動部材164の構造が同じであり、前記第一ゲート221と第二ゲート222の構造が同じである。以下では説明の便宜上、いずれも可動部材16及びゲート22と総称して説明する。
【0030】
前記ゲート22の構造は様々なものがあるが、本実施例では、前記可動部材16の第二直線高さH2が反射体14の第一直線高さH1に等しい時に、ゲート22は可動部材16の周囲を取り囲み、可動部材16がゲート22に嵌合されると理解することができ、前記ゲート22のガイドレール21での移動はゲート22の開閉に相当し、前記可動部材16はゲート22の開閉と共に中性子発生部12から離れるまたは中性子発生部12に近づく。好ましくは、前記ゲート22はコンクリートで製造される。当然、空間またはコストを節約するために、ゲート22の設計が前記可動部材16を支持可能で、かつ可動部材16を中性子発生部12から離れる方向または中性子発生部12に近づく方向へ移動させることができれば、可動部材16の半分またはそれより少ない部分がゲート22内に嵌着されてもよい(図5a参照)。可動部材16の第二直線高さH2が反射体14の第一直線高さより小さい時には、ゲート22とガイドレール21との間に支持フレーム23を設置してもよい(図5b参照)。前記支持フレーム23の一端はゲート22に固定され、他端はガイドレール21で中性子発生部12から離れる方向または中性子発生部12に近づく方向へ移動する。前記可動部材16はゲート22の移動と共にガイドレール21に沿って中性子発生部12から離れる方向または中性子発生部12に近づく方向へ移動する。つまり、前記ゲート22は、支持フレーム23のガイドレール21での移動によりゲート22を移動させることによって、ゲート22を十分に大きなサイズとしてそれを直接ガイドレール21で移動させる必要がなくなり、これによりゲート22のサイズが減少する。
【0031】
図6に示すものは本願実施例2の概略図である。前記駆動アセンブリ20は、回転部材24(例えば軸部材)と、回転部材24上に固定されたゲート22’とを含む。前記回転部材24はビーム成形体10の直下に位置し、かつ、該回転部材24の軸線は前記中性子発生部12の軸線と平行である。前記ゲート22’は回転部材24周りに上下回転し、前記ゲート22’が下向きに移動する時に、前記ゲート22’は可動部材16を中性子発生部12から離れる方向へ移動させ、前記中性子発生部12を露出させ、中性子発生部12が交換される。ゲート22’が上向きに回転する時に、可動部材16は中性子発生部12に近づく方向へ回転し、前記可動部材16は中性子発生部12の周囲を取り囲み、その後の中性子捕捉療法中にオフセット中性子をガイドして戻すために用いられる。
【0032】
図7は本願の実施例3の概略図である。本実施例において、前記駆動アセンブリ20はビーム成形体10外に固定された第一リンク25と、可動部材16に接続された第二リンク26と、第一リンク25と第二リンク26とに接続された第三リンク27と、を含む。前記第三リンク27が移動して第二リンク26を移動させ、前記可動部材16は第二リンク26の移動と共に中性子発生部12から離れる方向または中性子発生部12に近づく方向へ移動する。
【0033】
図8は本願の実施例4の概略図である。可動部材16の第二直線高さH2が前記反射体14の第一直線高さH1より小さい時に(特に、可動部材16の第二直線高さH2が中性子発生部12の第三直線高さH3より小さい時に)、反射体14内にガイドレール28を設置し、かつ可動部材16の外壁面にハンドル165を設置することができ、ハンドル165をプッシュすることによって可動部材16が中性子発生部12から離れる方向または中性子発生部12に近づく方向へ移動する。当然、ハンドルに代えて上記実施例1から実施例3中の駆動アセンブリを本実施例に適用することもできるが、ここで詳細な説明を省略する。
【0034】
本願に開示する中性子捕捉療法システムは、以上の実施例における前記内容および図面に示される構造に限定されない。本願に基礎として、構成要素の材料、形状および位置に対する自明な変更、置換または変更は、いずれも本願の保護されるべき範囲内にある。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8