(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のものでは、重ね部分と非重ね部分とによって一定面積の濃淡のある1枚の布の画像を用い、同じ画像を基材に表裏面でずらして印刷しているので、例えば1枚の大型パネルを小割り(分割)し、その一部を取り出して使用する場合、その小割りされた模様が小割り前の大型パネルのどの位置にあったかが容易に識別されてしまうことになる。そのため、その小割り模様の位置を明確に把握してレイアウトする必要があり、位置を誤ると違和感が生じることになり、その分、レイアウトやデザインの設計、施工性に難がある。
【0005】
また、布の重ね部分と非重ね部分とによって濃淡が生じる画像の模様とはいえ、元々1枚の布を出所としているので、模様には布特有の折り皺や重ね状態等を含む素材感が残存し、施工箇所や用途が限定されるという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のように基材の表裏両面に模様が形成される意匠パネルの構成に技術的な特徴を加えることにより、そのパネルに奥行き感や立体感が得られるようにしつつ、模様の規則性を不明確にして小割りの使用でも違和感をなくし、レイアウトやデザインの設計、施工を容易化するとともに、模様の素材感も不明瞭にして施工箇所や用途の限定をなくすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成すべく、この発明では、基材の表裏面に形成される模様として大きさ及び種類の異なる複数の多角形模様部が不規則に分散配置されたものを用い、その各多角形模様部の内部で濃度の差を生じさせるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明
は、小割りされて建物の開口部に施工される建築用意匠パネルであって、この建築用意匠パネルは、透明ないし半透明の板材からなる基材の表面に表面模様が、また裏面に裏面模様がそれぞれ設けられており、表面及び裏面模様は、大きさ及び種類の異なる複数の多角形模様部が不規則に分散して隣接するように配置された模様
からなり、上記各多角形模様部は
、該各多角形模様部の内部で色の濃度差が生成されて
おり、上記表面及び裏面模様の各々は、基材の所定方向に分割された複数の分割模様からなり、それら複数の分割模様は、少なくとも2種類の基本模様がそのままの状態及び反転した状態の少なくとも一方の配置状態で基材の所定方向に連続して並べられ、かつ隣接する分割模様間の基本模様の種類及び配置状態の少なくとも一方が互いに異なっていることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明では、
小割りされて建物の開口部に施工される建築用意匠パネルは、透明ないし半透明の基材の表裏面にそれぞれ表面及び裏面模様が形成され、これら表面及び裏面模様は、いずれも大きさ及び種類の異なる複数の多角形模様部が不規則に分散して隣接状態で配置された模様
からなり、各多角形模様部は、直線からなる複数の辺で囲まれていて
該多角形模様部の内部に色の濃度差(グラデーション)が生成されている。そのため、パネルを例えば表方向から見たときに表面模様の複数の多角形模様部が見えるだけでなく裏面模様の多角形模様部も基材を通して表面模様の多角形模様部と重なって見え、逆に裏方向から見たときにも裏面模様の多角形模様部だけでなく表面模様の多角形模様部も裏面模様の多角形模様部と重なって見えるようになり、表裏どちら側からでも反対側の多角形模様部を視認することができる。その表面及び裏面模様の多角形模様部の見え方のずれによってパネルに奥行き感や立体感が得られる。しかも、表面及び裏面模様のいずれにおいても、各多角形模様部の内部に色の濃度差が生成されているので、その濃度差のある多角形模様部が表面及び裏面模様で重なって、より数の多い多角形模様部が生じて規則性が目立ち難くなり、パネルの奥行き感や立体感がより効果的に得られる。
【0010】
また、表面及び裏面模様は、いずれも大きさ及び種類の異なる複数の多角形模様部が不規則に分散して配置された模様であり、この複数の多角形模様部による不規則な分散配置模様に目立った特異部分がなく、表面及び裏面模様は同様な調子の模様となる。従って、パネルを小割りによりその一部を取り出して使用する場合、小割りされた模様が小割り前のパネルのどの位置にあったかが不明確になり、その小割りされた模様の位置を把握してレイアウトする必要がなくなり、位置を誤っても違和感が生じることはない。このことで、レイアウトやデザインの設計、施工が容易になる。
【0011】
さらに、表面及び裏面模様は、いずれも複数の多角形模様部を有するものであるので、布を用いるような素材感等が出ることはなく、パネルの施工箇所や用途が限定されることはない。
【0012】
しかも、上記表面及び裏面模様の各々における複数の分割模様は、少なくとも2種類の基本模様がそのままの状態及び反転した状態の少なくとも一方の配置状態で基材の所定方向に連続して並べられ、隣接する分割模様間の基本模様の種類及び配置状態の少なくとも一方が互いに異なっているので、表面及び裏面模様の調子はより一層同様なものとなり、上記のように意匠パネルを小割し、その一部を取り出して使用する場合の違和感の発生を抑制でき、レイアウトやデザインの設計、施工もより一層容易になる。
【0013】
また、表面及び裏面模様の各々における複数の分割模様は、少なくとも2種類の基本模様を、そのままの状態及び反転した状態の少なくとも一方の配置状態で基材に並べられるだけで形成される。このことで、表面及び裏面模様の各々につき少ない種類の基本模様を形成するだけで済み、模様の創作が容易となる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、各多角形模様部は細長状の多角形とされ、複数の多角形模様部は、各々の長さ方向に沿った長軸線が同じ方向(例えば基材の幅方向や長さ方向)に向くように配向されていることを特徴とする。
【0015】
この第2の発明では、各多角形模様部は細長状の多角形であり、複数の多角形模様部が、各々の長軸線を同じ方向に向けて配向されているので、その各々の長軸線の向きが不特定である場合に乱雑感が生じるのに対し、表面及び裏面模様に整列感や安定感が得られる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、基材を表裏方向から見たときに、表面及び裏面模様の多角形模様部は、それら両多角形模様部周縁の各辺同士が直線状に重ならないように配置されていることを特徴とする。
【0017】
この第3の発明では、表面及び裏面模様の多角形模様部間で周縁の各辺同士が全体的に直線状に重なっていないので、基材を表裏方向から見たときに、反対側の多角形模様部が明確に視認できるようになり、パネルの奥行き感や立体感がさらに効果的に得られる
。
【0018】
第
4の発明は、第1〜第
3の発明のいずれか1つにおいて、表面及び裏面模様はインクジェット印刷により印刷されていることを特徴とする。このことで、基材に上記表面及び裏面模様を容易に形成することができる。
【0019】
第
5の発明はドアに係り、このドアは第1〜第
4の発明のいずれか1つの建築用意匠パネルが
小割りされて採光開口部に取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
この第
5の発明では、ドアの採光開口部に取り付けられたパネルが奥行き感や立体感を有し、違和感のないデザインとなるので、デザイン性の高いドアが得られる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明のように、本発明によると、
小割りされて建物の開口部に施工される建築用意匠パネルとして、透明ないし半透明の基材の表裏面に、大きさ及び種類が異なり内部の色の濃度差が異なる複数の多角形模様部を不規則に分散配置した模様を形成し
、表面及び裏面模様の各々は複数の分割模様とし、それらの複数の分割模様は、少なくとも2種類の基本模様がそのままの状態及び反転した状態の少なくとも一方の配置状態で基材の所定方向に連続して並べられ、かつ隣接する分割模様間の基本模様の種類及び配置状態の少なくとも一方が互いに異なるようにしたことにより、パネルの表裏どちら側からでも反対側の多角形模様部を視認して、パネルの奥行き感や立体感が得られる。また、表裏面模様の多角形模様部に特異部分がないので、表裏模様が同様な調子となり、パネルを小割りして使用する
に当たり、小割り模様の位置を明確に把握してレイアウトする必要がなく、位置が異なっても違和感が生じず、レイアウトやデザインの設計、施工の容易化を図ることができる。さらに、表裏模様に素材感等が出ることはなく、パネルの施工箇所や用途を拡げることができる。
また、複数の分割模様は少なくとも2種類の基本模様を用いるので、表面及び裏面模様の調子がより一層同様なものとなり、パネルの一部を取り出して使用する場合の違和感の発生をより一層抑制することができ、レイアウトやデザインの設計、施工もより一層容易になるとともに、複数の分割模様は、少なくとも2種類の基本模様を、そのままの状態及び反転した状態の少なくとも一方の配置状態で基材に並べるだけよく、表面及び裏面模様の各々につき少ない種類の基本模様を形成するだけで済み、模様の創作が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
図1〜
図3は本発明の実施形態に係る建築用意匠パネルPを示す。このパネルPは製造時に形成される最大の大きさのフルサイズのもので、例えば必要に応じて小割り(分割)して用いられる。建築用意匠パネルPは、例えば樹脂パネル材やガラス板材等の透明ないし半透明の板材からなる基材1を備え、この基材1は長さ(高さ)が例えば最大で1600mm、幅(左右幅)が例えば最大で600mm、厚さが例えば2mm程度とされて、幅及び長さを有する矩形状の細長板材からなっている。上記樹脂パネル材としては、例えばスチレン系樹脂やアクリル系樹脂、PET樹脂等が用いられる。
【0025】
上記板状の基材1の表面(
図1で下面)には表面模様3が、また裏面(同上面)には裏面模様4がそれぞれ設けられている。この表面及び裏面模様3,4は、基材1に対しインクジェット印刷、装飾模様を施した印刷フィルムの貼り付け、サンドブラストやエッチングによる彫り込み等によって形成されている。特に、インクジェット印刷により表面及び裏面模様3,4を形成するのが容易であり、生産性の点で好ましい。尚、
図1では、表面及び裏面模様3,4を厚さの厚い層状物として記載しているが、これは説明のために示しているだけで、当該構造を特定するものではない。
【0026】
図4は上記表面模様3を、また
図5は裏面模様4をそれぞれ示している。詳しくは
図4は表面模様3を基材1の表側から裏側に向かう方向に見た状態で示し、
図5は、裏面模様4を基材1の裏側から表側に向かう方向(表面模様3を見る方向とは逆の方向)に見た状態で示している。
【0027】
図2〜
図5において、その上側を上部とし、下側を下部とする。
図4及び
図5に示すように、上記表面及び裏面模様3,4は、いずれも僅かな領域の地色部8と、不規則に分散して隣接するように配置された殆どの領域を占める複数の多角形模様部10,10,…とを有する。表面及び裏面模様3,4の地色部8は、多角形模様部10,10,…の形成されていない部分(模様3,4を印刷する場合は印刷されていない部分)の基材1そのものか、或いは互いに同じ色に着色されたものであり、この地色部8の色(透明を含む)に対し各多角形模様部10,10,…の色が異なっている。
【0028】
図8に拡大して示すように、上記表面及び裏面模様3,4における複数の多角形模様部10,10,…の各々は、複数の直線状の辺10a,10a,…で囲まれた例えば三角形、四角形(矩形)、五角形、六角形等の複数の異なる種類の多角形が組み合わされており、多角形の大きさも大小複数の種類に異なっている。また、互いに隣接する多角形模様部10,10は辺10a,10の一部又は全部が共通の辺となっている。
【0029】
また、複数の多角形模様部10,10,…は、いずれも細長状の変形の多角形とされ、各々の長さ方向に沿った長軸線L(
図8で一点鎖線にて示す)が上記基材1の幅方向に向いて左右方向に延びるように配向されている。
【0030】
そして、上記表面及び裏面模様3,4の各多角形模様部10は、その辺10a,10a,…で囲まれた内部において色の濃度が変化していて濃度差が生成されている。図では、記載の都合上、各多角形模様部10の濃度をグレイの濃淡で現しており、灰色の濃い(黒に近い)部分は薄い(白に近い)部分よりも色が薄くなっている。尚、上記地色部8は黒で現されている。
【0031】
図4に示すように、表面模様3は、基材1の上下方向(長さ方向)に等分に分割された例えば3つの分割模様3a〜3cからなる。また、
図5に示すように、裏面模様4も同様に、上下方向(長さ方向)に等分に分割された例えば3つの分割模様4a〜4cからなっている。
図4及び
図5では、分割模様3a〜3c,4a〜4cの境界位置を二点鎖線にて示している。
【0032】
尚、
図4は、表面模様3を基材11の表側から裏側に向かう方向に見た状態で示しているので、分割模様3a〜3cは同方向に見て上側から下側に向かって順に並んでいる。一方、
図5は、裏面模様4を基材1の裏側から表側に向かう方向に見た状態で示しているので、分割模様4a〜4cは同方向に見て上側から下側に向かって順に並んでいる。
【0033】
表面及び裏面模様3,4の3つの分割模様3a〜3c,4a〜4cは、第1及び第2の2種類の基本模様A1,A2がそのままの状態及び反転した状態で基材1の長さ方向に連続して並べられたものとされ、隣接する分割模様3a〜3c,4a〜4c間の基本模様A1,A2の種類及び配置状態の両方が互いに異なっている。
図6は第1基本模様A1を、また
図7は第2基本模様A2をそれぞれ拡大して示している。そして、
図4に示すように、表面模様3の3つの分割模様3a〜3cは第1及び第2基本模様A1,A2からなり、上側の分割模様3aは第1基本模様A1で、また上下中央の分割模様3bは第2基本模様A2でそれぞれ構成されている。下側の分割模様3cは、第1基本模様A1を上下方向及び左右方向に反転させた模様で構成されている。ここでいう第1基本模様A1を上下方向及び左右方向に反転するとは、第1基本模様A1からなる分割模様3aの領域の面を左右側部で折り返し、さらに上端部又は下端部で折り返すようにして裏返すことを示す。
【0034】
一方、
図5に示すように、裏面模様4についても同様に上記第1及び第2の2種類の基本模様A1,A2からなり、表面模様3とは異なり、上側の分割模様4aは第2基本模様A2で、また上下中央の分割模様4bは第1基本模様A1でそれぞれ構成されている。下側の分割模様4cは、第2基本模様A2を上下方向及び左右方向に反転させた模様で構成されている。
【0035】
上記表面及び裏面模様3,4の多角形模様部10,10,…は、そのパターンをデータ上で作成するようになっており、そのデータに基づいてインクジェット印刷や彫り込み加工等を行う。
【0036】
そして、
図2は上記建築用意匠パネルPを表側から見た状態を、また
図3は同パネルPを裏側から見た状態をそれぞれ示し(このとき、表面模様3の分割模様3a,3b,3cがそれぞれ裏面模様4の分割模様4a,4b,4cに重なる)、基材1を表裏方向から見たときに、表面及び裏面模様3,4の各多角形模様部10,10は、該多角形模様部10,10周縁の各辺10a,10a,…が交差はしても全体として直線状に重ならないように配置されている。
【0037】
図9〜
図13は本発明の実施形態に係るドアD1〜D5の例を示し、これらのドアD1〜D5はいずれも採光のための採光開口部15が形成され、その開口部15に、上記フルサイズの建築用意匠パネルPを小割り(分割)した小割りパネルP1〜P5が取り付けられて、その採光開口部15が閉鎖されている。
【0038】
図9は例1のドアD1を示し、ドアD1の左右中央部に全高さに亘って縦長の採光開口部15が開口され、その開口部15に建築用意匠パネルPを左右幅方向に分割した縦長の小割りパネルP1が取り付けられている。
図9(a)及び(b)に示すドアD1は互いに同じであるが、同じ縦長の小割りパネルP1が上下逆にして取り付けられている。尚、19はドアレバーハンドルである。
【0039】
図10は例2のドアD2を示し、ドアD2の左右中央部の上側に採光開口部15が、また下側に鏡板開口部16がそれぞれ開口され、その採光開口部15に建築用意匠パネルPを分割した矩形状の小割りパネルP2が取り付けられ、閉鎖開口部16に鏡板17が取り付けられている。
図10(a)及び(b)に示すドアD2は互いに同じで、採光開口部15に同じ小割りパネルP2が上下逆にして取り付けられている。
【0040】
図11は例3のドアD3を示し、ドアD3の左右中央部に縦長の狭い採光開口部15が開口され、その開口部15に建築用意匠パネルPを分割した縦長の小割りパネルP3が取り付けられている。
図11(a)及び(b)に示すドアD3は互いに同じで、同じ小割りパネルP3が上下逆にして取り付けられている。
【0041】
図12は例4のドアD4を示し、ドアD4の左右中央部に縦長で広幅の採光開口部15が開口され、その開口部15に建築用意匠パネルPを分割した小割りパネルP4が取り付けられている。
図12(a)及び(b)に示すドアD4は互いに同じで、同じ小割りパネルP4が上下逆にして取り付けられている。
【0042】
図13は例5のドアD5を示し、ドアD5の左右中間部の左右両側に縦長の2つの狭い採光開口部15,15が間隔をあけて開口され、その各開口部15に建築用意匠パネルPを分割した縦長の小割りパネルP5が取り付けられている。
図13(a)及び(b)に示すドアD5は互いに同じで、同じ小割りパネルP5,P5が上下逆にして取り付けられている。
【0043】
したがって、上記実施形態においては、建築用意匠パネルPの基材1の表裏面にそれぞれ表面及び裏面模様3,4が形成され、これら表面及び裏面模様3,4は、いずれも地色部8と、不規則に分散して隣接状態で配置され、大きさ及び種類の異なる複数の多角形模様部10,10,…とを有し、各多角形模様部10は、直線からなる複数の辺10a,10a,…で囲まれていて、その内部に色の濃度差(グラデーション)が生成されている。そのため、
図2に示すように、パネルPを表方向から見たときに、表面模様3の複数の多角形模様部10,10,…が見えるだけでなく、裏面模様4の多角形模様部10,10,…も基材1を通して表面模様3の多角形模様部10,10,…と重なって見えるようになる。一方、
図3に示すように、逆に裏方向から見たときにも、裏面模様4の多角形模様部10,10,…だけでなく、表面模様3の多角形模様部10,10,…も裏面模様4の多角形模様部10,10,…と重なって見えるようになる。こうしてパネルPの表裏どちら側からでも反対側の多角形模様部10,10,…を視認することができ、その表面及び裏面模様3,4における多角形模様部10,10,…の見え方のずれによってパネルPに奥行き感や立体感が得られる。
【0044】
また、表面及び裏面模様3,4のいずれにおいても、各多角形模様部10,10の内部に色の濃度差が生成されているので、この濃度差のある多角形模様部10,10が表面及び裏面模様3,4で重なり、より数の多い多角形模様部10,10,…が生じて規則性が目立ち難くなり、このことによってもパネルPの奥行き感や立体感がより効果的に得られる。
【0045】
しかも、基材1を表裏方向から見たときに、表面及び裏面模様3,4の多角形模様部10,10間で周縁の各辺10a,10a同士は全体として直線状に重なっていないので、基材1を表裏方向から見たときに、反対側の辺10a,10a,…で囲まれた多角形模様部10が明確に視認できるようになり、パネルPの奥行き感や立体感がさらに効果的に得られる。
【0046】
そして、表面及び裏面模様3,4は、いずれも大きさ及び種類の異なる複数の多角形模様部10,10,…が不規則に分散して配置された模様であり、この複数の多角形模様部10,10,…による不規則な分散配置模様に目立った特異部分はなく、表面及び裏面模様3,4は同様な調子の模様となる。そのため、
図9〜
図13に示すように、パネルPを小割りしてその一部を取り出し、小割りパネルP1〜P5として使用する場合、小割パネルP1〜P5の模様が小割り前のパネルPのどの位置にあったかを不明確にでき、その小割りパネルP1〜P5の模様の位置を明確に把握してレイアウトする必要がなくなり、位置を誤っても違和感が生じることはない。すなわち、
図9〜
図13に示すように、ドアD1〜D5の採光開口部15に小割りパネルP1〜P5を取り付ける場合に、
図9(a)〜
図13(a)に示すレイアウトと、
図9(b)〜
図13(b)に示すレイアウトとは、同じ小割りパネルP1〜P5を上下逆にしたものであるにも拘わらず、両レイアウトは互いに同様の模様が生じていて、両レイアウトの識別性が不明瞭となっており、両レイアウトを逆にしてもドアD1〜D5全体の外観はさほど変わらない。このことから、レイアウトやデザインの設計、施工が容易になる。
【0047】
また、上記表面及び裏面模様3,4の各々は、上下方向に複数の分割模様3a〜3c,4a〜4cに分割され、その複数の分割模様3a〜3c,4a〜4cは、第1及び第2の2種類の基本模様A1,A2がそのままの状態及び反転して基材1の長さ方向に連続して並べられたものであり、隣接する分割模様3a〜3c,4a〜4c間の基本模様A1,A2の種類及び配置状態が互いに異なっているので、表面及び裏面模様3,4の調子はより一層同様の調子となり、上記パネルPを小割りしてその一部を取り出して使用する場合の違和感の発生を抑制でき、レイアウトやデザインの設計、施工もより一層容易になる。
【0048】
しかも、表面及び裏面模様3,4の各々は、分割模様3a〜3c,4a〜4cとして2種類の基本模様A1,A2が用いられたものであるので、その2種類の基本模様A1,A2をそのまま及び反転させるだけでよいこととなる。このことで、表面及び裏面模様3,4の各々につき2種類の基本模様A1,A2を形成して、その基本模様A1,A2を隣接させるか交互に反転させれば済み、模様の創作が容易となる。
【0049】
さらに、表面及び裏面模様3,4は、いずれも複数の多角形模様部10,10,…を有するものであるので、模様に布の折り皺や重ね状態等を含んだ素材感が出るようなことはなく、パネルPの施工箇所や用途が限定されることはない。
【0050】
また、表面及び裏面模様3,4の多角形模様部10,10,…は細長状の多角形とされ、複数の多角形模様部10,10,…は、各々の長さ方向に沿った長軸線Lが基材1の幅方向に向いて左右方向に延びるように配向されている。このことから、その各々の長軸線Lの向きが不特定である場合には乱雑感が生じるが、それに比べ、表面及び裏面模様3,4に整列感や安定感が得られる。
【0051】
そして、表面及び裏面模様3,4は基材1にインクジェット印刷により印刷されていることで、基材1に表面及び裏面模様3,4を容易に形成することができる。
【0052】
このような建築用意匠パネルPを小割りした小割りパネルP1〜P5が採光開口部15に取り付けられたドアD1〜D5は、その小割りパネルP〜P5によって違和感のないデザインとなり、よってデザイン性の高いドアが得られる。
【0053】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、表面及び裏面模様3,4の複数の多角形模様部10,10,…は、いずれも細長状の変形多角形で、その長軸線Lが基材1の幅方向(左右方向)に沿って延びるように配向されているが、長軸線Lが基材1の長さ方向(上下方向)に沿って延びるように配向してもよく、或いは、長軸線Lが基材1の幅方向又は長さ方向とは異なる方向に沿って延びるように配向してもよい。さらに、複数の多角形模様部10,10,…の長軸線Lの向きをランダムにしてもよいが、模様3,4に整列感や安定感が得られる点では一定方向に向くように配向するのが望ましい。
【0054】
また、上記実施形態では、多角形模様部10,10,…の各種類の多角形は、細長状の変形多角形であったが、長軸線Lを設定できない正多角形であってもよく、大きさ及び種類の異なる多角形であればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、表面及び裏面模様3,4の3つの分割模様3a〜3c,4a〜4cは、2種類の基本模様A1,A2がそのままの状態及び反転した状態で基材1の長さ方向に連続して並べられたものとされ、隣接する分割模様3a〜3c,4a〜4c間の基本模様A1,A2の種類及び配置状態の両方が互いに異なっているが、これに限定されず、3つの分割模様3a〜3c,4a〜4cは、2種類の基本模様A1,A2をそのままの状態又は反転した状態の一方の配置状態で基材1の長さ方向に連続して並べ、隣接する分割模様3a〜3c,4a〜4c間の基本模様A1,A2の種類及び配置状態の少なくとも一方を互いに異ならせるようにすればよい。
【0056】
また、上記実施形態では、表面及び裏面模様3,4は、複数の分割模様3a〜3c,4a〜4cに分割され、それら分割模様3a〜3c,4a〜4cを2種類の基本模様A1,A2で構成しているが、3種類以上の基本模様で構成してもよい
。
【0057】
また、上記実施形態では、基材1を表裏方向から見たときに、表面及び裏面模様3,4の多角形模様部10,10間で周縁の各辺10a,10a同士が全体として直線状に重ならないように配置しているが、この配置は必須ではない。しかし、基材1を表裏方向から見たときに、反対側の辺10a,10a,…で囲まれた多角形模様部10が明確に視認できて、パネルPの奥行き感や立体感がさらに効果的に得られる点では上記の配置が好ましい。
【0058】
また、上記実施形態では、建築用意匠パネルPはドアD1〜D5の採光開口部15に取り付けられているが、建築物の他の開口部に取り付けられるようにしてもよいのは勿論である。