特許第6830601号(P6830601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830601
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】高圧容器のシール構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 13/12 20060101AFI20210208BHJP
   F16B 39/12 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   F16J13/12 A
   F16B39/12 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-79764(P2017-79764)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-179151(P2018-179151A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】東條 千太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純三
(72)【発明者】
【氏名】眞田 誠
(72)【発明者】
【氏名】西脇 秀晃
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−263290(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/055553(WO,A1)
【文献】 実開昭51−043408(JP,U)
【文献】 実開平01−178281(JP,U)
【文献】 特開2007−303648(JP,A)
【文献】 特表2008−525734(JP,A)
【文献】 特開2013−068232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00
F16J 13/12
F16B 39/12
F17C 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口金部を形成する金属製の筒体に、蓋体を挿入して前記筒体をシールする高圧容器のシール構造であって、
前記筒体の内周面には、筒体の軸方向に沿って筒体開口側に平行雌ネジが刻設され、筒体内部側に当該平行雌ネジより小径のテーパー雌ネジが刻設され、
前記蓋体の外周面には前記筒体のテーパー雌ネジに螺合してメタルタッチシールを形成するテーパー雄ネジが刻設され、
前記蓋体とは別に、前記筒体の平行雌ネジに螺合して軸力を前記筒体との間に生じさせる平行雄ネジが刻設された軸力付与部材が設けられ、
前記筒体のテーパー雌ネジに前記蓋体のテーパー雄ネジを螺合させた状態で、前記筒体の平行雌ネジに前記軸力付与部材の平行雄ネジを螺合していくことにより、前記蓋体に対し前記軸力付与部材を圧接させることを特徴とする高圧容器のシール構造。
【請求項2】
前記蓋体を圧接する前記軸力付与部材が前記筒体との間に生じさせる軸力は、前記蓋体が前記筒体との間に生じさせる軸力よりも大きくなるように構成される請求項1に記載の高圧容器のシール構造。
【請求項3】
前記蓋体は前記テーパー雄ネジの位置よりも先端側の位置に、環状の弾性部材によるエラストマシール部が形成され、前記筒体のテーパー雌ネジに螺合させた状態で筒体のテーパー雌ネジよりもさらに筒体内部側の位置でエラストマシールを行う請求項1〜請求項2のいずれか1項に記載の高圧容器のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧容器のシール構造に関し、特に、ガス充填後は長期間にわたってガスの再充填を行わずに高圧状態のまま維持され続ける高圧容器に好適なシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧ガスや液化ガス等を充填する高圧容器はさまざまな分野で使用されている。近年では充填圧力を高めてガス充填量を増やすことが求められており、そのためにガス漏れが生じにくく高圧充填に耐えうる構造の高圧容器が必要になっている。
【0003】
一般に、高圧容器にはガス充填、ガス放出を行う弁機構を取り付ける口金部が設けられている。また、容器の種類によっては、弁機構とは別に封止プラグを取り付ける第二の口金部を設けた高圧容器も用いられている。例えば図3に示すように、円筒状の胴部20の両端に椀部21、22が形成され、片側の椀部21に弁機構23を取り付ける口金部24が形成され、他方側の椀部22に封止プラグ25を取り付ける第二の口金部26が形成され、胴部20から両側の口金部24、26の根元まで耐圧性を高めるための補強繊維層(図示せず)が巻回された複合容器と称される高圧容器Cも用いられている。
【0004】
これらの高圧容器では、弁機構や封止プラグ(以下、弁機構や封止プラグを「蓋体」と称する)を口金部に固定するためのシール構造として、ガス漏れが生じにくく、また、容器内の高圧ガスによって、口金部に取り付ける蓋体が大気側に向かう圧力によって押し出されないように十分な軸力を備えたシール構造が求められている。
【0005】
高圧容器のシール構造には、ゴムパッキン等の弾性部材によるエラストマシールが採用されているものが多い。これは、ガス充填された高圧状態とガス放出された低圧状態との圧力サイクルが繰り返されるような使用用途にはエラストマシールが適しているためである。しかしながら充填圧力が高圧になり、エラストマシールに大きな変形を与えるような用途では、圧力サイクルが何度も繰り返されるとシール性が不十分になることがある。
【0006】
そこで、高圧容器のシール構造として、メタルタッチシールを備えた高圧側1次シールゾーンと、エラストマシールを備えた大気側2次シールゾーンとを有する円筒固定フランジ構造を備えた高圧容器が開示されている(特許文献1参照)。
この文献に記載のシール構造では、高圧側1次シールゾーンのメタルタッチシールに、フランジ端面シール、テーパーフランジ端面シール、円筒フランジ固定締め付け用ネジ、メタルガスケットシール等から1種または2種以上の組み合わせ構造が採用され、これにより気密性とエラストマシールの高圧ストレスに対する耐久性を向上させることが記載されている。円筒フランジ固定締め付け用ネジには、容器内から大気側へ向かう圧力によって押し出されないようにするため十分な軸力が得られる平行ネジが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−89138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
消火用ガスの充填を行う消火設備用の高圧容器では、消火剤として二酸化炭素、ハロンガス等の不活性ガスが30MPa以上に加圧されて充填される。充填圧力が高いほど消火剤の充填量を増やすことができるので、昨今では充填圧力は60MPa以上、好ましくは70MPa以上の圧力にすることが求められている。そしてガス充填された高圧容器は、火災が発生するまで消火設備内に収納される。したがって火災が発生しなければいつまでも使用されることなく高圧状態で保持され続ける。
このような用途では、圧力サイクルによる影響はあまり考慮する必要はなく、その一方で、容器内に充填した消火剤を、例えば15年以上の長期間にわたって再充填でガス補充を行うことなく高圧のままで維持できる高圧容器であることが望まれている。
【0009】
そのため、高圧容器の口金部の蓋体(弁機構や封止プラグ)のシール構造についても、15年以上の長期間にわたって確実にガス漏れしない完全シール性を実現でき、しかも高圧ガスにより生じる大気側に向かう圧力に対し蓋体が十分に耐えうる軸力を有するシール構造にすることが求められている。
【0010】
そこで本発明は、高圧ガスあるいは液化ガスを一旦充填した後は、長期間にわたってガスの再補充を行う必要がなく完全シールを維持することができ、長期間にわたり高圧状態が維持され続けても口金部で大気側に向かう圧力によって蓋体(弁機構や封止栓)が押し出されることがない高圧容器のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明の高圧容器のシール構造は、容器本体の口金部を形成する金属製の筒体に、蓋体を挿入して前記筒体をシールする高圧容器のシール構造であって、前記筒体の内周面には、筒体の軸方向に沿って筒体開口側に平行雌ネジが刻設され、筒体内部側に当該平行雌ネジより小径のテーパー雌ネジが刻設され、前記蓋体の外周面には前記筒体のテーパー雌ネジに螺合してメタルタッチシールを形成するテーパー雄ネジが刻設され、前記蓋体とは別に、前記筒体の平行雌ネジに螺合して軸力を前記筒体との間に生じさせる平行雄ネジが刻設された軸力付与部材が設けられ、前記筒体のテーパー雌ネジに前記蓋体のテーパー雄ネジを螺合させた状態で、前記筒体の平行雌ネジに前記軸力付与部材の平行雄ネジを螺合していくことにより、前記蓋体に対し前記軸力付与部材を圧接させるようにしている。
【0012】
本発明によれば、筒体のテーパー雌ネジと蓋体のテーパー雄ネジとのテーパーネジによるメタルタッチシールを行う。これにより、テーパーネジのネジ溝がシール面となり、フランジ端面シールやテーパーフランジ端面シールのような平坦面からなるシール面に比べて接触面積を大きくすることができ、シール性が高められる。また、テーパーネジの先細り形状による先端側のネジ溝では密着性が増し、平行ネジでのネジ溝では得られない密着性による高いシール性を得ることもできる。
その一方で、蓋体が容器内の高圧ガスによる圧力を受けると、テーパーネジの先細り部分は径に応じてせん断力が小さくなるので、テーパーネジ単独で高圧ガスの圧力に耐える軸力を持たせるには軸長を長くする必要がある。本発明では、筒体にテーパー雌ネジとは別に平行雌ネジを形成し、シール性は必要ないが軸力を筒体との間に生じさせる平行雄ネジが刻設された軸力付与部材を蓋体とは別に螺合させ、これにより高圧ガスの圧力に耐える軸力を確保するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、口金部の筒体に対し、テーパーネジによるメタルタッチシールで蓋体をシールして完全シールを行うとともに、軸力が大きい平行ネジを設けた軸力付与部材を蓋体に直列に取り付けるようにして高圧に耐える軸力を確保するようにしたので、長期間にわたりガスの再充填を行うことなく高圧状態のまま保持することができる。
また、軸力付与部材が蓋体を開口側から軸部内部側に圧接することで、蓋体と筒体とのメタルタッチシールのシール面を軸方向に押圧することができるようになり、シール面がさらに密着することにより強いシール構造にすることができる。
【0014】
このとき、蓋体を圧接する軸力付与部材が筒体との間に生じさせる軸力は、蓋体が筒体との間に生じさせる軸力よりも大きくなるように構成してもよい。
ネジ径を大きくすることで軸力を大きくすることができ、また、ネジの軸長を長くすることでも軸力を大きくすることができる。よって高圧ガスの圧力に耐えるための蓋体と軸力付与部材との軸力の分担比を、軸力付与部材のネジ径、締め付けトルク、および、軸長の調整により軸力付与部材の方が大きくなるようにすることができる。
また、上記発明において、前記蓋体は前記テーパー雄ネジの位置よりも先端側の位置に、環状の弾性部材によるエラストマシール部が形成され、前記筒体のテーパー雌ネジに螺合させた状態で筒体のテーパー雌ネジよりもさらに筒体内部側の位置でエラストマシールを行うようにしてもよい。
テーパーネジによるメタルタッチシールとともに、補助的にエラストマシールを併用することでさらにシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る高圧容器のシール構造を示す断面図。
図2】本発明の他の実施形態に係る高圧容器のシール構造を示す断面図。
図3】本発明のシール構造が採用される高圧容器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である高圧容器のシール構造1Aを示す概略断面図である。このシール構造は図3で説明した高圧容器Cにおいて、口金部24、26に取り付けられる弁機構23、封止プラグ25のシール構造として採用されるものであり、必要に応じて図3についても参照することとする。
【0017】
図1に示すように、シール構造1Aは、筒体2と、蓋体3と、軸力付与部材4とからなる。
筒体2は、アルミ、鉄等の金属製の高圧容器C(図3参照)の容器本体の一部分であり、口金部24、26に相当する部分である。筒体2の内周面には開口端2aから平行雌ネジ2bが刻設してあり、その奥側にテーパー雌ネジ2cが刻設してある。平行雌ネジ2bはテーパー雌ネジ2cより大径となるように加工してある。
【0018】
蓋体3は弁機構23または封止プラグ25に相当する部分であり、筒体2と同様に金属で製造され、中心線に沿って貫通孔3aが形成してある。なお、封止プラグ25については、貫通孔3aは閉塞栓(図示せず)で閉じてある。
蓋体3の軸線方向の前方側は大径部3b、後方側は小径部3cとなるようにして、これらの間に段差面3dが設けてある。大径部3bの外周面にはテーパー雄ネジ3eが刻設してあり、筒体2のテーパー雌ネジ2cと螺合するようにしてある。筒体2のテーパー雌ネジ2cと蓋体3のテーパー雄ネジ3eとが螺合することで先細りのテーパーネジによるメタルタッチシールが形成されている。小径部3cでは後述する円環状の軸力付与部材4が外嵌される。
【0019】
軸力付与部材4は、蓋体3とともに弁機構23または封止プラグ25に相当する部分であり、蓋体3と同様に金属で製造され、円環状に加工してある。軸力付与部材の4の内孔4aには蓋体3の小径部3cが挿入され、軸力付与部材4の外周面には平行雄ネジ4bが刻設してあり、筒体2の平行雌ネジ2bと螺合するようにしてある。そして、軸力付与部材4をねじ込んでいくと、やがて前方側の円環面4cが蓋体3の段差面3dに当接し、この面を圧接することができるようにしてある。なお軸力付与部材4の開口側の円環面4dには凹孔(図示せず)が形成してあり、ねじ込み用冶具を凹孔に固定してねじ込むことができるようにしてある。
【0020】
次にシール構造1Aの取付動作について説明する。まず、蓋体3を筒体2に挿入し、テーパー雄ネジ3eをテーパー雌ネジ2cに対し最後までねじ込む。これによりテーパーネジによるメタルタッチシールが形成される。
続いて、軸力付与部材4を蓋体3の小径部3cに挿入し、平行雄ネジ4bを平行雌ネジ2bに対してねじ込み、円環面4cが段差面3dに当接し、圧接状態になるまで強くねじ込む。
このとき、蓋体3のテーパー雄ネジ3eは押圧され、特に先細りの先端部分近傍でテーパー雌ネジ2cと強く密着するようになり、強固なシール構造が完成して漏れの生じない完全シールが実現できる。
【0021】
その後、高圧容器C内に高圧ガスを充填すると、筒体2内において、高圧ガスによる圧力によって、蓋体3の先端面3fが大気側に向けて押圧される。これに対し、蓋体3のテーパーネジよりも大径に形成された軸力付与部材4の平行ネジにより、大気側への押圧力に平行ネジの強い軸力で抗することができるので、ガス充填圧を高くしても十分に耐える構造にすることができる。
【0022】
図2は、本発明の他の一実施形態である高圧容器のシール構造1Bを示す概略断面図である。図1と同じ構成部分については同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。
この実施形態では、蓋体3のメタルタッチシールが行われるテーパー雄ネジ3eよりも先端側に円周溝3gを形成し、これにゴムパッキン5を取り付けてエラストマシールを形成する。これにより、メタルタッチシールとエラストマシールとを併用することができ、さらにシール性を向上させることができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
例えば、テーパーネジおよび平行ネジの雄ネジの表面にシール用テープまたは特殊液を含浸したシール用テープを巻きつけてねじ込むようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の高圧容器のシール構造は、消火用の高圧容器に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1A、1B シール構造
2 筒体(口金部24、26)
2b 平行雌ネジ
2c テーパー雌ネジ
3 蓋体(弁機構23、封止プラグ25)
3a 貫通孔
3b 大径部
3c 小径部
3d 段差面
3e テーパー雄ネジ
3f 先端面
3g 円周溝
4 軸力付与部材
4a 内孔
4b 平行雄ネジ
4c、4d 円環面
5 ゴムパッキン
図1
図2
図3