(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の洗濯機では、外槽を設けず、支持体の内側に貯水させることもできる。即ち、支持体を貯水可能な外槽として機能させることもできる。この場合、支持体である外槽には、その上面に形成された洗濯物の投入口から水が漏れないよう、投入口を塞ぐ外槽蓋が設けられる。
【0006】
しかしながら、このような構成において、外槽蓋が外槽に対して一方向にしか開くことができない場合、外槽の回転を停止させる位置が決められていないと、その停止位置によっては、開放した外槽蓋が邪魔になって外槽内、即ち洗濯槽内への洗濯物の出し入れが行いづらくなる虞がある。
【0007】
一方で、外槽を一定の位置に停止させるような構成とした場合には、外槽を駆動するモータの制御が複雑になったり、外槽の停止に要する時間が長くなったりする虞がある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、外槽の停止位置が決められていなくとも、外槽内への洗濯物の出し入れが良好に行え得る洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主たる態様に係る洗濯機は、筐体内に、垂直方向に沿うまたは垂直方向から傾いた第1の回転軸を中心に回転可能に配置され、貯水可能な外槽と、前記外槽内に、水平方向に沿うまたは水平方向から傾いた第2の回転軸を中心に回転可能に配置され、洗濯物が収容される内槽と、前記外槽の上部に形成され、洗濯物が投入される投入口と、前記投入口を覆う外槽蓋と、前記外槽蓋が前記投入口に対して
周囲360°何れの方向にも開放可能となるように、前記外槽蓋と前記外槽とを連結させる
パラレルリンク機構部と、を備える。
【0010】
上記の構成によれば、外槽が何れの位置に停止されても、ユーザは、外槽内への洗濯物の出し入れの邪魔にならない方向に外槽蓋を開放させることができる。よって、洗濯物のスムーズな出し入れが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外槽の停止位置が決められていなくとも、外槽内への洗濯物の出し入れが良好に行え得る洗濯機を提供できる。
【0014】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の洗濯機の一実施形態である全自動洗濯機1について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る、筐体10を断面にした状態の全自動洗濯機1の右側面図である。
図2は、本実施の形態に係る、全自動洗濯機1における、筐体10および防振装置130を除いた部分の右側面断面図である。
【0018】
図1および
図2を参照して、全自動洗濯機1は、外観を構成する直方体形状の筐体10を備える。筐体10の天面には、中央部に円形の開口部11が形成される。また、筐体10の底面には、四隅に脚台12が設けられる。
【0019】
筐体10内には、外槽20が垂直方向から前方に僅かに傾いた縦回転軸R1を中心に回転自在に配置される。外槽20内には、球状の内槽30が水平方向から前方に僅かに傾いた横回転軸R2を中心に回転自在に配置される。内槽30内に洗濯物が収容される。内槽30は、洗濯物の洗濯および脱水が行われる洗濯脱水槽である。なお、縦回転軸R1と横回転軸R2とは直交する。また、縦回転軸R1の垂直方向から傾斜角度および横回転軸R2の水平方向からの傾斜角度は、たとえば、10度から20度程度に設定される。なお、縦回転軸R1は、本発明の第1の回転軸に相当し、横回転軸R2は、本発明の第2の回転軸に相当する。
【0020】
内槽30は、槽本体31と、内蓋32とを含む。槽本体31は、たとえば、ステンレス鋼等の耐腐食性に優れる金属材料からなる。槽本体31には、多数の脱水孔33が形成される。また、槽本体31には、円形の内側投入口34が設けられ、内側投入口34が内蓋32によって開閉される。内蓋32は、たとえば、樹脂により形成され、凸湾曲する形状を有する。内蓋32の中央部には、指でつまむことが可能な持ち手部(図示せず)が形成される。槽本体31は内側投入口34の部分が平坦であり、内側投入口34が内蓋32で閉じられたときに、内槽30が全体として球体の形状をとる。
【0021】
内槽30の一方側、即ち
図2の状態での後側には、第1内槽軸35がネジ等により取り付けられる。また、内槽30の他方側、即ち
図2の状態での前側には、内槽30の中心を挟んで第1内槽軸35と反対側に第2内槽軸36がネジ等により取り付けられる。第1内槽軸35および第2内槽軸36は、横回転軸R2となる。
【0022】
外槽20は、たとえば、樹脂材料により形成され、内槽30を半分よりも上まで覆うような球状を有する。外槽20には、その上部を水平方向に切断するようにして、円形の外側投入口21が形成される。外槽20には、その中心を挟んで対向する位置に、円形の第1軸受装着口22および第2軸受装着口23が形成される。
【0023】
外槽20は、上外槽部材20aと下外槽部材20bとを結合することにより構成される。上外槽部材20aと下外槽部材20bとの分割面Sは、外槽20の中心部を通り且つ第1軸受装着口22および第2軸受装着口23に掛からない。即ち、外槽20は、第2軸受装着口23より上の位置から第1軸受装着口22より下の位置に向かうよう、横回転軸R2に対して斜めに分割される。これにより、上外槽部材20aに第1軸受装着口22が形成され、下外槽部材20bに第2軸受装着口23が形成される。
【0024】
上外槽部材20aの第1軸受装着口22に第1軸受部41が装着される。第1軸受部41は、円筒状の軸受ケース41aと、軸受ケース41aに収容された転がり軸受41bとを含み、外側から第1軸受装着口22に挿入され、ネジ等により外槽20に固定される。また、下外槽部材20bの第2軸受装着口23に第2軸受部42が装着される。第2軸受部42は、円筒状の軸受ケース42aと、軸受ケース42aに収容された転がり軸受42bとを含み、外側から第2軸受装着口23に挿入され、ネジ等により外槽20に固定される。
【0025】
内槽30は、上外槽部材20aと下外槽部材20bとの結合により外槽20が組み上げられる際に外槽20内に収容される。この際、第1内槽軸35および第2内槽軸36が、それぞれ、第1軸受部41および第2軸受部42に挿入される。第1内槽軸35は、第1軸受部41によって回転自在に支持され、第2内槽軸36は、第2軸受部42によって回転自在に支持される。
【0026】
外槽20の外側投入口21は、たとえば樹脂材料で形成された外蓋50によって開閉可能に覆われる。外蓋50は、開口部11を通じて筐体10の上方に露出する。外側投入口21は本発明の投入口に相当し、外蓋50は本発明の外槽蓋に相当する。外蓋50と外槽20とはパラレルリンク機構部60によって連結される。パラレルリンク機構部60は、本発明の連結機構部に相当する。パラレルリンク機構部60の詳細な構成については、追って説明する。
【0027】
内槽30は、内槽モータ70により回転駆動される。内槽モータ70は、たとえば、アウターロータ型モータであり、ロータ71とステータ72とを含む。ロータ71は、外槽20の外側へ突き出した第1内槽軸35の先端部に固定され、ステータ72は、第1軸受部41の外面に固定される。
【0028】
外槽20の底部中央には、円板状の軸取付部24が形成され、軸取付部24の側方に排水口25が形成される。軸取付部24には、所定形状を有する取付板80が固定され、外槽軸90が、取付板80を介して軸取付部24に固定される。外槽軸90は、縦回転軸R1となる。また、取付板80には、外槽20内から排水を行うための排水装置100が固定される。排水装置100は、排水口25に接続される排水管101と、排水管101に設けられると排水弁102とを含む。排水管101には、図示しない排水ホースが接続される。
【0029】
外槽軸90は、外槽軸受部110により回転自在に支持される。外槽軸受部110は、軸受ケース111と、軸受ケース111内に上下方向に所定の間隔を開けて配置された上転がり軸受112および下転がり軸受113とを含む。外槽軸受部110は、筐体10の底部に配置された方形板状の外槽取付板120に取り付けられる。外槽取付板120は、その四隅に取り付けられた防振装置130によって弾性的に支持される。
【0030】
外槽20は、外槽モータ140により回転駆動される。外槽モータ140は、たとえば、アウターロータ型モータであり、ロータ141とステータ142とを含む。ロータ141は、外槽軸受部110から下方に突き出した外槽軸90の先端部に固定され、ステータ142は、外槽軸受部110の下部に固定される。
【0031】
次に、パラレルリンク機構部60よる外蓋50の開閉構造について説明する。
【0032】
図3(a)は、本実施の形態に係る、外蓋50が閉じられた状態の外槽20の上部を示す図であり、
図3(b)は、本実施の形態に係る、外蓋50が開かれた状態の外槽20の上部を示す図である。
図4(a)は、本実施の形態に係る、リンク機構部200の斜視図であり、
図4(b)は、本実施の形態に係る、リンク機構部200の分解斜視図である。
図5(a)および(b)は、本実施の形態に係る、リンク機構部200の動きについて説明するための図であり、それぞれ、リンク機構部200の側面図および平面図である。
【0033】
外蓋50の中央部には、ユーザが外蓋50を開閉する際に持つ取手部51が形成される。また、外蓋50の周縁部には、裏側に、鉄等の磁性体からなる4つの吸着板52が、ほぼ90°の間隔を置いて取り付けられる。外槽20における外側投入口21の開口縁部には、外蓋50が閉じられたときに各吸着板52と整合する位置に磁石26が取り付けられる。吸着板52が磁力によって磁石26に吸着されることにより、外蓋50による外側投入口21の閉鎖状態が保持される。
【0034】
パラレルリンク機構部60は、外蓋50と外槽20との間に、ほぼ120°の間隔で並列に設置された3つのリンク機構部200により構成される。
【0035】
図4(a)および(b)に示すように、各リンク機構部200は、第1リンク210と、第2リンク220と、第3リンク230と、第4リンク240と、第1ジョイント250と、第2ジョイント260と、第3ジョイント270とにより構成される。これら第1リンク210、第2リンク220、第3リンク230、第4リンク240、第1ジョイント250、第2ジョイント260および第3ジョイント270は、その強度が適切であれば、金属または樹脂の何れの材料で形成されてもよい。
【0036】
第1リンク210と第2リンク220とが第1ジョイント250により連結される。第1ジョイント250は、第1リンク210に設けられた回転軸251と、第2リンク220に設けられ、回転軸251が挿入される軸孔252とを含む。なお、回転軸251と軸孔252との間にベアリングを介在させるようにしてもよい。
【0037】
第2リンク220と第3リンク230とが第2ジョイント260により連結される。第3リンク230は2本のロッド231で構成される。第2ジョイント260は、いわゆるボールジョイントであり、第3リンク230の各ロッド231の端部に形成された球状のリングボール261と、第2リンク220に設けられ、各リングボール261に球面接触する2つのソケット262とを含む。
【0038】
第3リンク230と第4リンク240とが第3ジョイント270により連結される。第3ジョイント270は、第2ジョイント260と同様、いわゆるボールジョイントであり、第3リンク230の各ロッド231の端部に形成された球状のリングボール271と、第4リンク240に設けられ、各リングボール271に球面接触する2つのソケット272とを含む。
【0039】
図5(a)の矢印Aに示すように、第2リンク220は、第1リンク210に対して、回転軸251まわりに回動させることができる。また、
図5(a)の矢印Bに示すように、第3リンク230は、第2リンク220に対して、2本のロッド231の並び方向に垂直な面内方向に回動させることができる。さらに、
図5(b)の矢印Gに示すように、第3リンク230は、第2リンク220に対して、2本のロッド231の並び方向と平行な面内方向にも回動させることができる。ここで、第4リンク240は、第3リンク230が2本のロッド231によって構成されていることから、第3リンク230に対して
図5(a)の矢印Cの方向以外へ回転運動をすることが不可能となる。
【0040】
しかしながら、
図5(a)の矢印Dおよび
図5(b)の矢印E、Fに示すように、第4リンク240は、任意の3次元方向に、平行に移動させることができる。このことは、第4リンク240が外蓋50と一体として動くことから、外蓋50も任意の3次元方向に、平行に移動することが可能となることを意味している。
【0041】
リンク機構部200は、第1リンク210が外槽20にネジ等により固定され、第4リンク240が外蓋50にネジ等により固定される。なお、第1リンク210が外槽20と一体形成されてもよく、第4リンク240が外蓋50と一体形成さてもよい。
【0042】
ユーザは、外槽20内の内槽30に対して洗濯物の出し入れを行う際、外側投入口21を開放すべく、取手部51を持って外蓋50を外側投入口21の周囲に向けて移動させる。このとき、外蓋50はパラレルリンク機構部60によって外槽20に連結されているので、ユーザは、外側投入口21に対して周囲360°何れの方向にも外蓋50を移動させることができ、外蓋50を何れの方向にも開放させることができる。
【0043】
なお、パラレルリンク機構部60では、外蓋50が最も開放されたときに、少なくとも外側投入口21の半分以上、望ましくは全部が開放されるような可動領域を有するよう、3つのリンク機構部200が構成される。
【0044】
ユーザは、外槽20内への洗濯物の出し入れが終わると、開放した外蓋50を戻して外側投入口21を閉鎖する。このとき、外蓋50は、開放前と同じ位置に戻される。
【0045】
全自動洗濯機1では、各種運転コースの洗濯運転が行われる。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。
【0046】
洗い工程およびすすぎ工程では、外槽20内に所定の水位まで水が溜められる。所定の水位は、内槽30が水に浸かる位置であって、内槽30の中心位置、即ち横回転軸R2の位置よりも低い位置に設定され得る。なお、洗い工程では、溜められた水に洗剤が含まれる。
【0047】
外槽20内に水が貯められた状態で、外槽モータ140が一方向に回転するよう駆動され、外槽20が縦回転軸R1を中心に一方向に回転し、外槽20と一体的に内槽30が回転する。また、内槽モータ70が正方向および逆方向に交互に回転するよう駆動され、内槽30が、外槽20の動きとは別個独立して横回転軸R2を中心に正方向および逆方向に交互に回転する。
【0048】
外槽20の回転により外槽20内では水流が発生する。また、水流が発生した外槽20内において、内槽30が横方向に回転しつつ縦方向に反転回転することにより、内槽30内で撹拌される洗濯物が複雑な動きを行う。これにより、外槽20内で発生する水流と洗濯物の複雑な動きとが相まって洗濯物が良好に洗われ、あるいは、すすがれる。
【0049】
また、内槽30が球状である場合、横回転軸R2の方向においても周面が円弧状となるため、内槽30内の両端部分に位置する洗濯物は水面より高い位置を取りやすくなり、両端部分の洗濯物が水に浸されにくくなる。しかしながら、本実施の形態では、外槽20が横方向に回転するため、外周側の水が遠心力によってせり上がり、両端部分の洗濯物にも水が行き渡りやすくなる。
【0050】
なお、外槽モータ140を正逆方向に反転回転させることで、外槽20が正方向と逆方向とに交互に回転するようにしてもよい。さらに、外槽モータ140、即ち外槽20の回転速度を変化させ、外槽20内の水流の速さを変化させるようにしてもよい。
【0051】
中間脱水工程および最終脱水工程では、外槽20内から排水が行われた後に、外槽20が停止した状態で、内槽30が一方向に高速に垂直回転する。内槽30に発生する遠心力の作用により、洗濯物が脱水される。
【0052】
本実施の形態の全自動洗濯機1では、内槽30のみならず外槽20も回転するが、外槽20が停止する位置は決められていない。しかしながら、外槽20がどのような位置に停止しても、外蓋50が外側投入口21に対して周囲360°何れの方向にも開放可能であるため、ユーザは、外槽20内への洗濯物の出し入れの邪魔にならない適宜の方向に外蓋50を開放させることができる。よって、洗濯物のスムーズな出し入れが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0054】
たとえば、上記実施の形態では、外蓋50と外槽20とがパラレルリンク機構部60で連結されることにより、外蓋50が外側投入口21に対して周囲360°何れの方向にも開放可能とされた。しかしながら、外蓋50は、外側投入口21に対して少なくとも前側、後側、右側および左側の周囲4方向に開放可能となればよく、このような外蓋50の開放が実現できれば、パラレルリンク機構部60以外の連結機構部が用いられてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、リンク機構部200の第2ジョイント260および第3ジョイント270が、いわゆるボールジョイントとされた。しかしながら、第2ジョイント260および第3ジョイント270が、いわゆるユニバーサルジョイントとされてもよい。
【0056】
さらに、上記実施の形態では、外槽20が垂直方向から傾く縦回転軸R1を中心に回転し、内槽30が水平方向から傾く横回転軸R2を中心に回転する。しかしながら、外槽20が垂直方向に沿う縦回転軸を中心に回転するような構成とされてもよい。同様に、内槽30が水平方向に沿う横回転軸を中心に回転するような構成とされてもよい。
【0057】
さらに、上記実施の形態では、外槽モータ140および内槽モータ70がアウターロータ型モータとされたが、インナーロータ型モータとされてもよい。
【0058】
さらに、上記実施の形態では、全自動洗濯機1が例示されたが、本発明は、洗濯機能に加えて乾燥機能を有する全自動洗濯乾燥機に適用することもできる。
【0059】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。